JP3551786B2 - 偏平薄型有底角筒体の製造方法及び製造用パンチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、断面が長方形状の偏平薄型で対面の肉厚が均一のアルミニウム製有底角筒体を衝撃押し出しによって製造する方法及びそれによって製造された固有の構造を有する断面が長方形状の偏平薄型で対面の肉厚が均一のアルミニウム製有底角筒体に関する。より詳細にはリチウムイオン2次電池のケース等の小型ケースに好適に使用できる断面が長方形状の偏平薄型で肉厚均一のアルミニウム製有底角筒体を後方に押し出す衝撃押し出しによって製造する方法及びそれによって製造された固有の構造を有する断面が長方形状の偏平薄型で肉厚均一のアルミニウム製有底角筒体に関する。さらに、この発明はこの衝撃押し出しに使用するパンチ及び製造された固有の構造を持つ有底角筒体をケースとして使用するリチウムイオン電池等の2次電池あるいはコンデンサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウムイオン電池やコンデンサーなどのケースに使用するアルミニウム製有底筒体の製造方法には、衝撃押し出し法あるいは深絞り法が従来技術として知られている。その衝撃押し出し方法には、後方押し出し法、前方押し出し法、前後押し出し法の3方法があるが、前記ケースの製造方法には後方押し出し法が利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このアルミニウム製有底筒体をケースとして利用するリチウムイオン電池については、それが使用されているノートパソコンあるいは携帯電話がますます小型化され、それに伴って電池も一層の薄型化が要望されている。その結果電池ケースとして利用されるアルミニウム製有底角筒体も更なる薄型化が要求されており、本発明者も該要望に応えるべく、このアルミニウム製の薄型有底角筒体製造技術の開発を試みた。またこのような薄型有底角筒体の出現が期待されるのはリチウムイオン電池ばかりなくニッケル・水素電池等の2次電池あるいは電気2重層コンデンサー等においても同様であった。
【0004】
以上のようなことから、本発明者も従前の方法である衝撃押し出し方法の1である後方押し出し法によって、この断面が長方形の小型有底角筒体の製造をまず試した。その結果短径が9.0mm、長径が33.0mmの場合には、不良率は高いが製造可能であることがわかった。またその際には対面する角筒体壁面の間で肉厚の差が大きくなることがわかった。さらに短径を6.0mm、長径を29.0mmとした場合には所定の形状を形成することが不可能となることもわかった。
【0005】
そこで、本発明者らは、このような薄く小さな角筒体の場合においても、不良率が低く、より薄い形状になっても良好な製品を製造すべく開発を進めたところ、意外にもパンチ端面に簡単な工夫をすることにより所望の製品ができることが判明した。またその結果製造された小型有底角筒体は、従来の後方押し出し法によって製造した角筒体に比し、肉厚特に対向する筒壁面間の肉厚が均一であると同時に、底部に固有の形状が形成されることが判明した。
【0006】
以上のとおりであるから、このパンチの構造も従来のものとは異なっており、新規な構造となっている。またこの角筒体をケースとして使用することにより従来にない薄型のリチウムイオン2次電池あるいはコンデンサー等の製造も可能となった。したがって、本発明では以上のように各種の発明を提供することを可能としたものであり、本発明は、偏平薄型で小型の有底角筒体の製造をも可能とする偏平薄型有底角筒体の製造方法、それに使用する新規な構造のパンチ、それによって製造される新規な構造の偏平薄型有底角筒体、この角筒体をケースとして使用する薄型2次電池あるいはコンデンサー等の各発明を提供することを解決すべき課題とするものであり、目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明が上記目的を達成するために採用した手段である、アルミニウム製有底角筒体を製造する方法は、ダイのキャピティ内にアルミニウム成形材料を挿入し、この材料を先端部に膨出部を形成したパンチによってキャピティとパンチの隙間からパンチに沿って後方に押し出す衝撃押し出しによって断面が長方形状の偏平薄型で対面する肉厚が均一のアルミニウム製有底角筒体を製造する方法であって、そのパンチとして、膨出部先端面にその形状より僅かに小さい形状の薄板状凸面部を形成したパンチを使用することを特徴とするものである。
【0008】
そして、そのための手段である有底角筒体はそれによって得られたものであり、それは断面が長方形状の偏平薄型で対面する肉厚が均一のアルミニウム製有底角筒体であって、長方形状の底面外周に肉厚部を有する底を持つ新規な構造を有するものである。
さらに、そのための手段であるパンチは前記したとおりの構造を持つものであり、またリチウムイオン電池等の2次電池もしくはコンデンサーは前記した有底角筒体をケースとして使用するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法を図面に基づいて具体的に説明するが、本発明はこの具体的に説明した内容に限定されるものではなく特許請求の範囲の記載に基づいて把握されるものであることはいうまでもない。本発明の断面が長方形状の偏平薄型で肉厚均一のアルミニウム製有底角筒体1を製造する当たっては、図4(A)に図示するように、まずダイ11のキャピティ12内にアルミニウム成形材料8を挿入し、その後このキャピティ12内の成形材料8にパンチ15をインパクト(衝撃突入)する。
【0010】
その結果成形材料8は図4(B)に図示するようにパンチ15の先端部16に形成された他の部分より若干大きめの膨出部17とキャピティ12との隙間からパンチに沿って後方に衝撃押し出しされ、偏平薄型のアルミニウム製有底角筒体1を形成する。その際に本発明ではパンチ先端部の膨出部17先端面にその形状より僅かに小さい形状の薄板状凸面部18が形成されており、それにより従来技術では製造不可能であった小型のアルミニウム製有底角筒体1でも製造可能となった。また該角筒体1の筒部の肉厚も均一であり、偏肉が回避できることになった。
【0011】
特に角筒体1の対向する一対の筒壁面(例えば2A2B面、3A3B面)間での偏肉を回避することができ、この角筒体をリチウム電池のケースに採用する際に破裂原因になるということで問題視されていた点を解消することができた。この解消できた理由は定かではないが、薄板状凸面部18を形成したことにより、パンチ底面周縁部に成形材料8がパンチに沿って押し出される際の通路が確保でき、その結果インパクト時にアルミニウム成形材料が円滑に、かつむらなく均一に流れことができるようになったことにあるものと推測している。なお、これらの問題点は、薄板状凸面部18の表面に図6に図示するように、中心から外方に向かう放射状の溝18aを形成することで、より良く回避することができる。その際の溝の形成は砥石による研削加工によって簡単に行うことができる。
【0012】
そして、製造されたアルミニウム製有底角筒体1は、製造時に使用したパンチが先端面に薄板状凸面部18を形成した独特の構造を有していることから、図1に図示するような固有の構造を持っており、それは長方形状の底面外周に肉厚部5を有する底4及びその底4から立ち上がる対向する一対の筒壁面(2A2B、3A3B)を2対有する断面が長方形状の偏平薄型で肉厚均一のアルミニウム製有底角筒体1となっている。またその際に使用するパンチ15も前記したとおり固有の構造を有するものであり、この角筒体1を使用したリチウムイオン電池もケース内部が前記したとおりの固有の構造のものとなっている。なお薄板状凸面部18に溝18aを形成した場合には、製造した角筒体1の底4にもそれが転写され、底部に溝4aが発現する。
【0013】
この製造に使用するアルミニウムについては、鍛造用のものであれば特に制限されることなく使用可能であり、それはアルミニウムあるいはその合金であってよく、具体的にはJIS 1100、1070、3003、5056等があるが、好ましくはJIS 3003がよい。衝撃押し出し時には潤滑剤を併用することが好ましいが、特に不使用でも角筒体の製造は可能である。その際に使用する潤滑剤としては不飽和カルボン酸金属塩系、グラファイト、ステアリン酸亜鉛等があるが、好ましくはステアリン酸亜鉛がよい。
【0014】
製造する角筒体1の全体形状については、その用途が第1にリチウム電池のケースにあることから断面がほぼ細長い長方形のもの、即ち薄型偏平状の直方体(l1がl2より相当長いもの)がよく、その際には断面は完全な長方形である必要はなく、隅取り(すなわち隅部をカット)あるいは隅部にアールを形成したものであってもよい。筒部の面積が小さい側の面3の面形状は平面である必要はなく丸みのある球面状のものであってもよい。角筒体の形状は以上の形状に特に限定されるものではなく、断面が楕円形、多角形、多筒形等のものであってもよく、要は全体形状が薄型偏平状のものであればよい。なおここにおける多筒体とは図9に断面図で図示するように円筒を複数連結し、その際に連結部分の筒壁を欠除したような構造のものをいう。
【0015】
そして、その大きさについては特に制限はなく、大きなものであっもよく、その場合にも本発明の製造技術を使用した方が従来技術によるよりも簡便に偏平薄型で肉厚均一のアルミニウム製有底角筒体が製造可能である。本発明の長所を特に有効に活用できる大きさは長径l1が10〜70mm、短径l2が2〜10mmの場合であり、好ましくは長径l1が20〜50mm、短径l2が4〜10mmの場合である。
また、筒壁の肉厚の均一性については前記したことから明らかなように筒壁全面で均一である必要はなく、少なくとも対向する筒壁間で均一であればよい。
【0016】
次に、パンチ15の先端部の形状について言及する。パンチ15の先端部16にはパンチ15と成型品の抜けを良好にするために膨出部17を形成するのがよく、本発明においてもそのようになっている。この膨出部17の先端は平面になっており、側面との接点は面取りするのがよい。この膨出部17の先端平面には、その平面より僅かに小さく、かつほぼ相似形の形状の薄板状凸面部18が形成されており、この存在が本発明の最大の特徴である。本発明では、この薄板状凸面部18の存在によって、製造された断面が長方形状の偏平薄型のアルミニウム製有底角筒体は対向する筒壁面の肉厚を均一にすることができるのであり、また同時にこの存在によって角筒体1の底面は、その外周が肉厚になるという固有の構造を持つものとなる。
【0017】
この薄板状凸面部18の形成については、パンチ材料と一体の材料から削り出して一体に形成するのがよいが、それに制限されるものではない。すなわち別に製造し後に結合したものでもよいがパンチ上に高精度、かつ水平面を形成するように配置するのが非常に難しいものであり、前者が優れている。その厚さについては0.1〜0.5mmがよく、成形品である角筒体1の小さい筒壁面3の面積が小さいものほど厚くなる。大きさについては膨出部17先端の平面形状より全周面において0.1〜5mm小さいのがよく、好ましくは0.5〜3mm小さいのがよい。この場合にも成型物である角筒体1の面積の小さい面3が小さいほど大きくするのがよい。
【0018】
そして、衝撃押し出し時のプレス圧力に関しては、特に制限はないが、それは成型物の大きさによっても異なり、大なるものほど大きな圧力を要するものの20〜500トン/cm2がよく、好ましくは80〜300トン/cm2がよい。 ダイ及びパンチの素材についても特に制限されることはないが、超硬合金、熱間ダイス鋼、高速度鋼等を使用するのがよい。
また、リチウムイオン電池、ニッケル・水素電池等の2次電池あるいはコンデンサーのケースとして使用する際の内部構造については、これも特に限定されるものではなく、従前のものがそのまま採用できる。
【0019】
【実施例】
[実施例1]
415℃で2時間連続焼鈍し、空冷したJIS 3003のアルミニウム合金である成形素材、すなわちスラグ(32.9×8.9×10.0mm)を潤滑剤のステアリン酸亜鉛と共に33.0×9.0×11.0mmのキャピティに挿入し、厚さ0.5mmで、外周の各位置においてパンチ外周より1.0mm小さい薄板状凸面部18を形成したパンチ15を使用し、広幅面すなわち大きな面積の筒壁面(2A.2B)の肉厚が約0.6mm、狭幅面すなわち小さい面積の面(3A.3B)の肉厚が約0.8mmとなるように後方押し出し法によって100トン/cm2の圧力で衝撃押し出しを実施した。
【0020】
製造された20個のアルミニウム製有底角筒体について、口元、中央部、底部において対向する一対の筒壁面の対向する位置の肉厚(a、b)を測定して、その差(a−b)を求めそれを図9及び図10に表示した。結果は広幅面の肉厚が0.6mm前後であり、狭幅面の肉厚が0.8mm前後であった。図9は広幅面の肉厚の差(a−b)を示すものであり、図10は狭幅面の肉厚の差(a−b)を示すものである。図9(A)(B)(C)は上から順に口元、中央部、底部における肉厚の差を示し、図10についても同様である。なおそれらの図においては縦軸は肉厚の差を、横軸はサンプル番号を示している。
【0021】
[比較例1]
薄板状凸面部18を形成していないパンチを使用した点を除き実施例1と同様に後方押し出し法によってアルミニウム製角筒体を製造した。製造された20個のアルミニウム製有底角筒体について、実施例1と同様に、口元、中央部、底部において対向する一対の壁面の肉厚の差を求めそれを図10及び図11に表示した。図11及び図12が表示する内容ついても図9及び図10がそれぞれ表示する内容と同様である。
【0022】
実施例1及び比較例1に記載の結果を対比すると、薄板状凸面部18を形成したパンチ15を使用する本発明の方が、それを使用しない比較例の場合に比し、面積の大きい側の筒壁面(広幅面)で肉厚に大きなばらつきが生じ均一性に欠けるものなっていることが一目瞭然となる。またそれは口元、中央部、底部のいずれの位置においても生じていることがわかる。それに比し、面積の小さい側の筒壁面(狭幅面)では両者とも肉厚のばらつきはほんどなく、両者間で差のないことが判明した。この角筒体をリチウム電池のケースに使用した場合には、特に問題となる面積の大きい側における肉厚不均一による外部短絡での内圧上昇による偏膨張又はケース破裂を回避することができる優れたものとなっている。
【0023】
[実施例2]
スラグの大きさを28.9×5.9×10.0mmとし、キャピティの大きさをそれに対応するものとした点を除き実施例1と同様に後方押し出し法によって衝撃押し出しを実施した。実施例1と同様に各位置において一対の筒壁面の対向する位置の肉厚が均一の角筒体が得られた。
【0024】
[比較例2]
スラグ及びキャピティの大きさを実施例2と同様とした点を除き、比較例1と同様にして後方押し出し法によって衝撃押し出しを実施したが、角筒体が形成できなかった。この方法では、この大きさのものは正常の形状のものを形成することはできなかった。
【0025】
【発明の効果】
本発明では、衝撃押し出し法によって有底角筒体を製造するに当たり、パンチ先端部の膨出部先端面にその形状より僅かに小さい形状の薄板状凸面部を形成することにより、従来法の衝撃押し出し法では製造が不可能であった薄型の有底角筒体及び偏肉のない有底角筒体を製造可能としたものである。
【0026】
そして、製造された有底角筒体は、底面外周が肉厚となっている固有の構造を有すると共に対向する一対の筒壁間で偏肉がなく肉厚が均一のものとなっている。その結果リチウムイオン電池のケース等に使用した場合に偏肉に伴って発生する、内圧上昇による偏膨張発生も回避することができ、該ケースにも支障なく使用するできるものとなった。
【0027】
また、成形材料は特殊な素材を使用する必要もなく、従前の衝撃押し出し用のものがそのまま使用できるし、製造装置もパンチ先端を僅かに改変しただけですみ簡便な変更だけである。以上のとおりであるから、本発明は卓越した効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有底角筒体の断面図
【図2】本発明の有底角筒体の平面図
【図3】本発明の有底角筒体の斜視図
【図4】ダイのキャピティ内の成形材料をパンチにより衝撃押し出しする前後の状態を示す図。(A)は押し出し前の状態。(B)は押し出し後の状態。
【図5】パンチの正面図。
【図6】パンチの下面の図。
【図7】成形材料の斜視図。
【図8】多筒体を筒に直交する方向で切断した断面図。
【図9】実施例1で製造した20個のサンプルの角筒体について、広幅面(2a.2b)の口元、中央部、底部の対向する位置において測定した肉厚の差を図示する。(A)(B)(C)は、それぞれ上から順に口元、中央部、底部における対向する広幅面の肉厚の差を示す。
【図10】実施例1で製造した20個のサンプルの角筒体について、狭幅面(3a.3b)の口元、中央部、底部の対向する位置において測定した肉厚の差を図示する。(A)(B)(C)は、それぞれ上から順に口元、中央部、底部における対向する狭幅面の肉厚の差を示す。
【図11】比較例1で製造した20個のサンプルの角筒体について、広幅面(2a.2b)の口元、中央部、底部の対向する位置において測定した肉厚の差を図示する。(A)(B)(C)は、それぞれ上から順に口元、中央部、底部における対向する広幅面の肉厚の差を示す。
【図12】比較例1で製造した20個のサンプルの角筒体について、狭幅面(3a.3b)の口元、中央部、底部の対向する位置において測定した肉厚の差を図示する。(A)(B)(C)は、それぞれ上から順に口元、中央部、底部における対向する狭幅面の肉厚の差を示す。
【符号の説明】
1 有底角筒体
4 底
5 底の肉厚部
8 成形材料
11 ダイ
12 キャピティ
15 パンチ
17 膨出部
18 薄板状凸面部
Claims (2)
- ダイのキャビティ内にアルミニウム成形材料を挿入し、この材料を先端部に膨出部を形成したパンチによってキャビティとパンチの隙間からパンチに沿って後方に押し出す衝撃押し出しによって断面が長方形状の偏平薄型で肉厚均一のアルミニウム製有底角筒体を製造する方法であって、そのパンチとして、膨出部先端面にその形状より僅かに小さい形状の薄板状凸面部を形成し、その凸面部表面にその中心から外方に向かう放射状の溝を形成したパンチを使用することを特徴とする断面が長方形状の偏平薄型で対面の肉厚が均一のアルミニウム製有底角筒体を製造する方法。
- 後方押し出し衝撃押し出し法による断面が長方形状の偏平薄型で対面の肉厚が均一のアルミニウム製有底角筒体製造用のパンチであって、その膨出部先端面にその形状より僅かに小さい形状の薄板状凸面部を形成し、その凸面部表面にその中心から外方に向かう放射状の溝を形成したパンチ。
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