しかしながら、上記特許文献1の化学蓄熱型ヒートポンプ(化学蓄熱装置)では、蓄熱時と放熱時とで互いに異なる熱媒体(熱交換流体)が共通の熱媒体流路に流されるので、熱媒体流路内に残存する一方の熱媒体が異物として他方の熱媒体に混入し、その結果、異物が混入したことに起因して熱媒体(熱交換流体)の性能が低下する場合があるという問題点がある。また、蓄熱時と放熱時とで熱媒体流路に流す熱媒体を切り替える必要があるので、熱媒体流路に流す熱媒体を切り替えるための流路切換弁などを設ける必要があり、その結果、化学蓄熱型ヒートポンプ(化学蓄熱装置)の熱媒体流路の流路構成が複雑になるという問題点もある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、異なる熱交換流体が共通の流路に流れることに起因する熱交換流体の性能の低下および熱交換流体の流路構成の複雑化を抑制しながら、蓄熱時および放熱時に、それぞれ、蓄熱用の熱交換流体および放熱用の熱交換流体と良好に熱交換することが可能な化学蓄熱装置を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における化学蓄熱装置は、第1の熱交換流体が内部を流れる第1熱交換部および第2の熱交換流体が内部を流れる第2熱交換部と、蓄熱材を収容する蓄熱材収容部とを含む反応容器と、蓄熱材の脱水反応による蓄熱時および水和反応による放熱時に応じて、反応容器を、第1熱交換部に蓄熱材が接触する第1位置と第2熱交換部に蓄熱材が接触する第2位置とに選択的に移動させる移動手段とを備え、移動手段は、第1熱交換部が反応容器の下部に位置する第1位置と、第2熱交換部が反応容器の下部に位置する第2位置とに、反応容器を上下反転させることにより移動させる反転駆動部を含み、第1熱交換部または第2熱交換部が反応容器の下部に位置する場合に、蓄熱材が自重により下部に移動して第1熱交換部または第2熱交換部に接触するように構成されている。
この発明の第1の局面による化学蓄熱装置では、上記のように、第1の熱交換流体が内部を流れる第1熱交換部および第2の熱交換流体が内部を流れる第2熱交換部を、蓄熱材を収容する蓄熱材収容部を含む反応容器に設けることによって、反応容器において、互いに異なる第1の熱交換流体および第2の熱交換流体がそれぞれ別個に設けられた専用の第1熱交換部および第2熱交換部の2系統で流されるので、共通の熱交換部(流路)に第1の熱交換流体および第2の熱交換流体の両方を流す場合と異なり、一方の熱交換流体が他方の熱交換流体に混入するのを抑制することができる。その結果、異物が混入することに起因して熱交換流体の性能が低下するのを抑制することができる。また、反応容器において、第1の熱交換流体が流れる第1熱交換部と、第2の熱交換流体が流れる第2熱交換部とを互いに別個に設けることによって、互いに異なる熱交換流体を共通の熱交換部(流路)に流す構成とは異なり、蓄熱時と放熱時とで熱交換部に流す熱交換流体を切り替える必要がないので、熱交換部に流す熱交換流体を切り替えるための流路切換弁などを設ける必要がない。その結果、化学蓄熱装置の熱交換流体の流路構成が複雑になるのを抑制することができる。
また、移動手段により、蓄熱時および放熱時に応じて、第1熱交換部に蓄熱材が接触する第1位置と、第2熱交換部に蓄熱材が接触する第2位置とに選択的に反応容器を移動させることによって、蓄熱時には、蓄熱材を第1熱交換部および第2熱交換部のいずれか一方に集中的に接触させ、放熱時には、蓄熱材を第1熱交換部および第2熱交換部のいずれか他方に集中的に接触させることができるので、蓄熱時および放熱時の両方の場合において、対応する熱交換流体と蓄熱材との間で効率よく熱交換することができる。その結果、熱交換の応答性(熱交換速度)を高めることができる。したがって、この化学蓄熱装置では、異なる熱交換流体が共通の熱交換部(流路)に流れることに起因する熱交換流体の性能の低下および熱交換流体の流路構成の複雑化を抑制しながら、蓄熱時および放熱時に、それぞれ、蓄熱用の熱交換流体(第1の熱交換流体および第2の熱交換流体のいずれか一方)および放熱用の熱交換流体(第1の熱交換流体および第2の熱交換流体のいずれか他方)と良好に熱交換することができる。
また、反転駆動部により反応容器を上下反転させるだけで、容易に、第1熱交換部または第2熱交換部を反応容器の下部に位置させることができるとともに、蓄熱材を自重により反応容器の下部に位置する熱交換部側に移動させることができるので、蓄熱時および放熱時に応じて、容易に、蓄熱材を第1熱交換部または第2熱交換部に選択的に接触させることができる。また、蓄熱材を自重により下部に移動させることによって、蓄熱材が流動されてほぐされるので、蓄熱材が固化するのを抑制することができ、その結果、蓄熱材の使用寿命を延ばすことができる。また、反応容器内に蓄熱材が移動可能なスペースが存在することにより、蓄熱材収容部に蓄熱材が隙間なく充填されている場合とは異なり、蓄熱材が水和反応により膨張した場合でも蓄熱材が押し固まって固化するのを抑制することができる。これによっても、蓄熱材の使用寿命を延ばすことができる。
この場合、好ましくは、第1熱交換部には、高温の第1の熱交換流体が流れ、第2熱交換部には、熱が供給されるべき第2の熱交換流体が流れるように構成されており、反転駆動部は、蓄熱時には、第1熱交換部が反応容器の下部に位置する第1位置に反応容器を上下反転移動させ、放熱時には、第2熱交換部が反応容器の下部に位置する第2位置に反応容器を上下反転移動させるように構成されている。このように構成すれば、蓄熱時には、高温の第1の熱交換流体が流れる第1熱交換部に蓄熱材を接触させて第1の熱交換流体の熱により蓄熱材を加熱(蓄熱)することができるとともに、放熱時には、熱が供給されるべき第2の熱交換流体が流れる第2熱交換部に蓄熱材を接触させて蓄熱材から放熱される熱により第2の熱交換流体を加熱することができる。
この発明の第2の局面による化学蓄熱装置は、第1の熱交換流体が内部を流れる第1熱交換部および第2の熱交換流体が内部を流れる第2熱交換部と、蓄熱材を収容する蓄熱材収容部とを含む反応容器と、蓄熱材の脱水反応による蓄熱時および水和反応による放熱時に応じて、反応容器を、第1熱交換部に蓄熱材が接触する第1位置と第2熱交換部に蓄熱材が接触する第2位置とに選択的に移動させる移動手段と、第1熱交換部に対して第1の熱交換流体の供給または排出を行う上下対称構造の第1流路と、第2熱交換部に対して第2の熱交換流体の供給または排出を行う上下対称構造の第2流路とを備え、反応容器が第1位置および第2位置に位置する両方の場合に、第1流路を介して第1熱交換部に対する第1の熱交換流体の供給または排出が行われるとともに、第2流路を介して第2熱交換部に対する第2の熱交換流体の供給または排出が行われるように構成されている。このように構成すれば、反応容器が第1位置および第2位置のいずれに位置している場合でも、第1流路および第2流路を介して、それぞれ、第1熱交換部内の第1の熱交換流体および第2熱交換部内の第2の熱交換流体を常時循環させておくことができる。
この発明の第3の局面による化学蓄熱装置は、第1の熱交換流体が内部を流れる第1熱交換部および第2の熱交換流体が内部を流れる第2熱交換部と、蓄熱材を収容する蓄熱材収容部とを含む反応容器と、蓄熱材の脱水反応による蓄熱時および水和反応による放熱時に応じて、反応容器を、第1熱交換部に蓄熱材が接触する第1位置と第2熱交換部に蓄熱材が接触する第2位置とに選択的に移動させる移動手段とを備え、蓄熱材収容部は、蓄熱時に脱水反応により蓄熱材から放出されるとともに放熱時に蓄熱材と水和反応する水蒸気が通過可能な多数の孔を有する多孔質構造により、筒状に形成されている。このように構成すれば、蓄熱時には、蓄熱材収容部の内部において脱水反応により蓄熱材から放出される水蒸気を多数の孔を介して容易に蓄熱材収容部の外部に放出することができるとともに、放熱時には、蓄熱材収容部の外部から内部に多数の孔を介して水蒸気を取り込んで蓄熱材収容部の内部において蓄熱材と水蒸気とを水和反応させることができる。また、多孔質構造により蓄熱材収容部を筒状に形成することによって、蓄熱材収容部の特定の位置にだけ水蒸気の入出通路を設ける場合と異なり、蓄熱材収容部の全域(全周)から水蒸気を蓄熱材収容部の外部に放出させることができるとともに、蓄熱材収容部の全域(全周)から水蒸気を蓄熱材収容部の内部に取り込むことができるので、蓄熱材収容部内の蓄熱材の脱水反応および水和反応をより均一に行わせることができる。
この発明の第4の局面による化学蓄熱装置は、第1の熱交換流体が内部を流れる第1熱交換部および第2の熱交換流体が内部を流れる第2熱交換部と、蓄熱材を収容する蓄熱材収容部とを含む反応容器と、蓄熱材の脱水反応による蓄熱時および水和反応による放熱時に応じて、反応容器を、第1熱交換部に蓄熱材が接触する第1位置と第2熱交換部に蓄熱材が接触する第2位置とに選択的に移動させる移動手段とを備え、蓄熱材収容部の内部には、第1熱交換部および第2熱交換部が配置されており、蓄熱材は、蓄熱材収容部の内部において、第1熱交換部側および第2熱交換部側に移動可能に配置されている。このように構成すれば、蓄熱材収容部の内部において、第1熱交換部または第2熱交換部に蓄熱材を直接的に接触させることができるので、対応する熱交換部の熱交換流体と蓄熱材との間でより効率よく熱交換することができる。
この発明の第5の局面による化学蓄熱装置は、第1の熱交換流体が内部を流れる第1熱交換部および第2の熱交換流体が内部を流れる第2熱交換部と、蓄熱材を収容する蓄熱材収容部とを含む反応容器と、蓄熱材の脱水反応による蓄熱時および水和反応による放熱時に応じて、反応容器を、第1熱交換部に蓄熱材が接触する第1位置と第2熱交換部に蓄熱材が接触する第2位置とに選択的に移動させる移動手段とを備え、第1熱交換部および第2熱交換部は、共に、互いに対向する複数の熱交換パイプにより構成されており、複数の熱交換パイプは、蓄熱材が複数の熱交換パイプ間を移動可能な間隔を隔てて配置されている。このように構成すれば、第1の熱交換流体および第2の熱交換流体をそれぞれ複数の熱交換パイプに分散して流すことができるとともに、分散された熱交換流体が流れる熱交換パイプの各々に対して全周に蓄熱材を接触させることができるので、対応する熱交換流体と蓄熱材との熱交換効率を向上させることができる。その結果、熱交換の応答性を高めることができる。
この発明の第6の局面による化学蓄熱装置は、第1の熱交換流体が内部を流れる第1熱交換部および第2の熱交換流体が内部を流れる第2熱交換部と、蓄熱材を収容する蓄熱材収容部とを含む反応容器と、蓄熱材の脱水反応による蓄熱時および水和反応による放熱時に応じて、反応容器を、第1熱交換部に蓄熱材が接触する第1位置と第2熱交換部に蓄熱材が接触する第2位置とに選択的に移動させる移動手段とを備え、反応容器および移動手段は、車両に設置されており、車両の走行中には、反応容器が第1位置に移動されて、第1熱交換部の内部に高温の排ガスからなる第1の熱交換流体が流れることにより蓄熱材による蓄熱が行われ、車両の走行開始時には、反応容器が第2位置に移動されて、蓄熱材に放熱させることにより第2熱交換部の内部を流れる第2の熱交換流体を介して車両の所定部分の加熱が行われるように構成されている。このように構成すれば、車両の走行中には、車両の排ガスの熱を利用して効果的に蓄熱材による蓄熱を行うことができるとともに、車両の走行開始時には、その蓄熱材に蓄熱された熱を放熱させて車両の所定部分(たとえば、ヒータコア(車室内の空気を暖めるための部品)やバッテリなど)を加熱することができるので、排ガスの熱を有効に活用することができる。
なお、本出願では、上記一の局面による化学蓄熱装置とは別に、以下のような他の構成も考えられる。
(付記項1)
すなわち、本出願の他の構成による化学蓄熱装置は、第1の熱交換流体が内部を流れる第1熱交換部および第2の熱交換流体が内部を流れる第2熱交換部と、第1熱交換部および第2熱交換部が内部に配置され、蓄熱材を収容する蓄熱材収容部とを含む反応容器と、蓄熱材の脱水反応による蓄熱時および水和反応による放熱時に応じて、蓄熱材を第1熱交換部側と第2熱交換部側とに選択的に移動させる移動手段とを備えている。このように構成すれば、反応容器において、互いに異なる第1の熱交換流体および第2の熱交換流体がそれぞれ別個に設けられた専用の第1熱交換部および第2熱交換部の2系統で流されるので、共通の熱交換部(流路)に第1の熱交換流体および第2の熱交換流体の両方を流す場合と異なり、一方の熱交換流体が他方の熱交換流体に混入するのを抑制することができる。その結果、異物が混入することに起因して熱交換流体の性能が低下するのを抑制することができる。また、反応容器において、第1の熱交換流体が流れる第1熱交換部と、第2の熱交換流体が流れる第2熱交換部とを互いに別個に設けることによって、互いに異なる熱交換流体を共通の熱交換部(流路)に流す構成とは異なり、蓄熱時と放熱時とで熱交換部に流す熱交換流体を切り替える必要がないので、熱交換部に流す熱交換流体を切り替えるための流路切換弁などを設ける必要がない。その結果、化学蓄熱装置の熱交換流体の流路構成が複雑になるのを抑制することができる。また、移動手段により、蓄熱時および放熱時に応じて、蓄熱材を第1熱交換部側と第2熱交換部側とに選択的に移動させることによって、蓄熱時には、蓄熱材を第1熱交換部および第2熱交換部のいずれか一方側に集中的に集め、放熱時には、蓄熱材を第1熱交換部および第2熱交換部のいずれか他方側に集中的に集めることができるので、蓄熱時および放熱時の両方の場合において、対応する熱交換流体と蓄熱材との間で効率よく熱交換することができる。その結果、熱交換の応答性(熱交換速度)を高めることができる。したがって、この化学蓄熱装置では、異なる熱交換流体が共通の熱交換部(流路)に流れることに起因する熱交換流体の性能の低下および熱交換流体の流路構成の複雑化を抑制しながら、蓄熱時および放熱時に、それぞれ、蓄熱用の熱交換流体(第1の熱交換流体および第2の熱交換流体のいずれか一方)および放熱用の熱交換流体(第1の熱交換流体および第2の熱交換流体のいずれか他方)と良好に熱交換することができる。
(付記項2)
また、この他の構成による化学蓄熱装置では、好ましくは、第1熱交換部および第2熱交換部は、共に、互いに対向する複数の熱交換パイプにより構成されており、複数の熱交換パイプは、蓄熱材が複数の熱交換パイプ間を移動可能な間隔を隔てて配置されている。このように構成すれば、第1の熱交換流体および第2の熱交換流体をそれぞれ複数の熱交換パイプに分散して流すことができるとともに、分散された熱交換流体が流れる熱交換パイプの各々に対して全周に蓄熱材を接触させることができるので、対応する熱交換流体と蓄熱材との熱交換効率を向上させることができる。その結果、熱交換の応答性を高めることができる。
本発明によれば、上記のように、異なる熱交換流体が共通の流路に流れることに起因する熱交換流体の性能の低下および熱交換流体の流路構成の複雑化を抑制しながら、蓄熱時および放熱時に、それぞれ、蓄熱用の熱交換流体および放熱用の熱交換流体と良好に熱交換することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図9を参照して、本発明の第1実施形態による化学蓄熱装置100の構成について説明する。
本発明の第1実施形態による化学蓄熱装置100は、図1に示すように、自動車などの車両110に搭載されるように構成されている。また、化学蓄熱装置100は、車両110の走行中に、エンジン10から排出されてマフラー20の内部を流通する高温の排ガスを利用して蓄熱し、車両の走行開始時に、蓄熱した熱を利用して車室内の空気を暖めるためのヒータコア30やバッテリ40を加熱するように構成されている。なお、ヒータコア30およびバッテリ40は、共に、本発明の「所定部分」の一例である。
化学蓄熱装置100は、図2および図3に示すように、反応容器1と、反応容器1を上下反転させることにより移動(回動)させる反転駆動部2を備えている。反応容器1は、円筒形状の真空チャンバ11と、互いに対向する複数の第1熱交換パイプ12aからなる第1熱交換部12と、互いに対向する複数の第2熱交換パイプ13aからなる第2熱交換部13と、酸化カルシウム(CaO)からなる蓄熱材3を収容する蓄熱材収容部14とを含んでいる。なお、反転駆動部2は、本発明の「移動手段」の一例である。また、第1熱交換パイプ12aおよび第2熱交換パイプ13aは、共に、本発明の「熱交換パイプ」の一例である。
また、真空チャンバ11の管軸方向(Y方向)の一方端部(Y1方向の端部)には、第1シャフト部15が取り付けられ、真空チャンバ11の管軸方向の他方端部(Y2方向の端部)には、第2シャフト部16が取り付けられている。また、第1シャフト部15の真空チャンバ11とは反対側の端部(Y1方向の端部)には、第1ブラケット部17が設けられている。また、第2シャフト部16の真空チャンバ11とは反対側の端部(Y2方向の端部)には、第2ブラケット部18が設けられている。また、第1ブラケット部17および第2ブラケット部18は、回動せずに固定的に設置されている。反応容器1は、反転駆動部2により反応容器1の管軸方向(Y方向)に延びる回動軸線L1周りに回動されることによって、第1熱交換パイプ12aに蓄熱材3が接触する蓄熱位置(図2および図4参照)と、第2熱交換パイプ13aに蓄熱材3が接触する放熱位置(図3および図5参照)とに選択的に移動されるように構成されている。また、反応容器1は、反転駆動部2により、第1シャフト部15および第2シャフト部16と一体的に回動される。なお、蓄熱位置は、本発明の「第1位置」の一例であり、放熱位置は、本発明の「第2位置」の一例である。
また、化学蓄熱装置100は、車両110の走行中には、図2および図4に示すように、反応容器1が蓄熱位置に移動されて、第1熱交換パイプ12a(第1熱交換部12)の内部に高温の排ガスが流れることにより蓄熱材3による蓄熱が行われるように構成されている。一方、車両110の走行開始時には、図3および図5に示すように、反応容器1が放熱位置に移動されて、蓄熱材3に放熱させることにより第2熱交換パイプ13a(第2熱交換部13)の内部を流れるクーラント液を介してヒータコア30やバッテリ40を加熱する。すなわち、本発明の第1実施形態による化学蓄熱装置100では、排ガスおよびクーラント液がそれぞれ別個に設けられた専用の第1熱交換パイプ12a(第1熱交換部12)および第2熱交換パイプ13a(第2熱交換部13)の2系統で流される。なお、排ガスは、本発明の「第1の熱交換流体」の一例であり、クーラント液は、本発明の「第2の熱交換流体」の一例である。以下、化学蓄熱装置100の構成をより詳細に説明する。
真空チャンバ11は、低圧室(真空室)であり、内部に、第1熱交換部12、第2熱交換部13および蓄熱材収容部14を収容している。また、真空チャンバ11のY2方向側の端部には、水蒸気出入口111が設けられており、水蒸気出入口111を介して真空チャンバ11の内部から外部に水蒸気が排出されるとともに、水蒸気出入口111を介して真空チャンバ11の外部から内部に水蒸気が流入される。水蒸気出入口111は、図示しない流路を介して水を収容する蒸発・凝縮器50に接続されている。
複数の第1熱交換パイプ12a(第1熱交換部12)は、高温の排ガスが内部を流れるように構成されている。また、複数の第2熱交換パイプ13a(第2熱交換部13)は、熱が供給されるべきクーラント液が内部を流れるように構成されている。複数の第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)は、蓄熱材収容部14の内部に配置されている。また、複数の第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)は、円管形状を有し、円筒形状の反応容器1の回動軸線L1が延びる方向(Y方向)に延びるように互いに平行に設けられている。また、第1熱交換パイプ12aおよび第2熱交換パイプ13aは、互いに同じ断面形状(大きさ、形状および板厚)を有するとともに、互いに同じ本数だけ設けられている。また、複数の第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)は、蓄熱材3(たとえば、粒径が約数百μmの蓄熱材)が複数の第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)間を移動可能な間隔D1(隣り合うパイプの外周部間の間隔)を隔てて配置されている。また、第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)は、熱伝導性に優れる金属(たとえば、銅合金、アルミニウム合金、炭素鋼、合金鋼など)により形成されている。また、複数の第1熱交換パイプ12aは、蓄熱材収容部14の内部の一方側半分の領域(図4の状態において回動軸線L1よりも下方の領域)に略均等に配置されているとともに、複数の第2熱交換パイプ13aは、蓄熱材収容部14の内部の他方側半分の領域(図4の状態において回動軸線L1よりも上方の領域)に略均等に配置されている。
また、複数の第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)は、各々、蓄熱材収容部14の回動軸線L1が延びる方向(Y方向)の一方端部(Y1方向側の端部)において一方接続部121a(131a)に接続され、蓄熱材収容部14の回動軸線L1が延びる方向の他方端部(Y2方向側の端部)において他方接続部121b(131b)に接続されている。一方接続部121a(131a)は、蓄熱材収容部14の一方端部側の外側でかつ真空チャンバ11の内部に配置されている。一方接続部121aは、第1熱交換パイプ12aと第1シャフト部15に設けられた排ガス流路151とを接続し、一方接続部131aは、第2熱交換パイプ13aと第1シャフト部15に設けられたクーラント液流路152とを接続している。他方接続部121b(131b)は、蓄熱材収容部14の他方端部側の外側でかつ真空チャンバ11の内部に配置されている。他方接続部121bは、第1熱交換パイプ12aと第2シャフト部16に設けられた排ガス流路161とを接続し、他方接続部131bは、第2熱交換パイプ13aと第2シャフト部16に設けられたクーラント液流路162とを接続している。なお、排ガス流路151は、本発明の「第1流路」の一例であり、排ガス流路161は、本発明の「第2流路」の一例である。
蓄熱材収容部14は、多数の孔141を有する多孔質構造により円筒形状に形成されている。具体的には、蓄熱材収容部14は、円筒部14aと円筒部14aの両端部を塞ぐ円板状の一対の蓋部14bとを有し、円筒部14aは、多数の孔141を有するパンチングメタルにより形成されている。また、蓄熱材収容部14は、熱伝導性に優れる金属(たとえば、銅合金、アルミニウム合金、炭素鋼、合金鋼など)により形成されている。円筒部14aの多数の孔141は、蓄熱時に脱水反応により蓄熱材3から放出される水蒸気を蓄熱材収容部14の内部から外部の水蒸気通路部112に向かって通過させるとともに、放熱時に蓄熱材3と水和反応する水蒸気を水蒸気通路部112から蓄熱材収容部14の内部に向かって通過させるように構成されている。水蒸気通路部112は、真空チャンバ11の内部でかつ蓄熱材収容部14の外側の領域である。また、多数の孔141は、蓄熱材収容部14の内部に収容された蓄熱材3が蓄熱材収容部14の外部に漏れ出ないように蓄熱材3の粒径(たとえば、約数百μm)よりも小さい内径(たとえば、約百μm以下)を有している。また、多数の孔141は、蓄熱材収容部14の円筒部14aの略全域にわたって均一に形成されている。一対の蓋部14bには、図示しない複数の貫通孔が形成されており、第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)は、それらの貫通孔を介して一方接続部121a(131a)および他方接続部121b(131b)に接続されている。
第1シャフト部15は、図2、図3および図6〜図9に示すように、円柱形状に形成され、Y方向に延びる一対の排ガス流路151と一対のクーラント液流路152とを有している。詳細には、一対の排ガス流路151は、図6、図7および図9に示すように、扇状の断面形状を有し、上下対称構造に形成されている。また、一対のクーラント液流路152は、図6〜図8に示すように、扇状の断面形状を有し、上下対称構造に形成されている。また、一対の排ガス流路151は、一対のクーラント液流路152に対して回動軸線L1周りに90度ずれた位置に配置されている。また、反応容器1が蓄熱位置および放熱位置に位置する両方の場合、一対の排ガス流路151を介して第1熱交換部12に対する排ガスの供給が行われるとともに、一対のクーラント液流路152を介して第2熱交換部13に対するクーラント液の排出が行われる。また、排ガス流路151は、Y1方向側において、第1ブラケット部17の後述の排ガス溝部171に対応する位置まで延びるように形成され、クーラント液流路152は、Y1方向側において、第1ブラケット部17の後述のクーラント液溝部172に対応する位置まで延びるように形成されている。すなわち、排ガス流路151は、クーラント液流路152よりもY1方向に長く延びるように形成されている。
また、排ガス流路151のY1方向側の端部には、図7および図9に示すように、第1シャフト部15の外周面15aに向かって延びる貫通部151aが形成されている。また、クーラント液流路152のY1方向側の端部には、図6および図8に示すように、第1シャフト部15の外周面15aに向かって延びる貫通部152aが形成されている。排ガス流路151は、貫通部151aを介して第1ブラケット部17の排ガス溝部171に接続され、クーラント液流路152は、貫通部152aを介して第1ブラケット部17のクーラント液溝部172に接続されている。
第1ブラケット部17は、円筒形状に形成されており、Y方向に貫通する貫通孔17aを有している。また、第1ブラケット部17は、貫通孔17aに挿入された第1シャフト部15を回動可能に支持するように構成されている。具体的には、第1ブラケット部17は、貫通孔17aの内周面17bに周状に形成された排ガス溝部171およびクーラント液溝部172を有しており、第1シャフト部15は、排ガス溝部171の両側およびクーラント液溝部172の両側に設けられた4つのシール軸受173を介して回動可能に支持されている。シール軸受173は、第1シャフト部15の外周面15aと第1ブラケット部17の内周面17bとの間から排ガスおよびクーラント液が漏れるのを防止する機能を有している。第1ブラケット部17には、図7および図8に示すように、排ガス溝部171から第1ブラケット部17の外周面17cに向かって延びる貫通孔171aが形成されているとともに、図6および図8に示すように、クーラント液溝部172から第1ブラケット部17の外周面17cに向かって延びる貫通孔172aが形成されている。エンジン10から排出された排ガスは、マフラー20および貫通孔171aを介して排ガス溝部171に流入される。また、クーラント液溝部172のクーラント液は、貫通孔172aを介して図示しない配管に排出されてヒータコア30やバッテリ40側に供給される。
第2シャフト部16は、上記第1シャフト部15と同様の構造を有しており、Y方向において第1シャフト部15と対称形状に形成されている。また、反応容器1が蓄熱位置および放熱位置に位置する両方の場合、第2シャフト部16の一対の排ガス流路161を介して第1熱交換部12に対する排ガスの排出が行われるとともに、第2シャフト部16の一対のクーラント液流路162を介して第2熱交換部13に対するクーラント液の供給が行われる。第2シャフト部16のその他の構造は、上記第1シャフト部15と同様であるので説明を省略する。また、第2ブラケット部18は、上記第1ブラケット部17と同様の構造を有しており、Y方向において第1ブラケット部17と対称形状に形成されている。すなわち、第2ブラケット部18は、第2シャフト部16の周囲に形成された周状の排ガス溝部181および周状のクーラント液溝部182を有している。第2ブラケット部18の排ガス溝部181およびクーラント液溝部182は、それぞれ、第1ブラケット部17の排ガス溝部171およびクーラント液溝部172に対応している。第2ブラケット部18のその他の構造は、上記第1ブラケット部17と同様であるので説明を省略する。
反転駆動部2は、モータ21と、モータ21により回動される回動軸部22とを含んでいる。反転駆動部2は、蓄熱時および放熱時に応じて、第1熱交換パイプ12a(第1熱交換部12)が反応容器1の下部に位置する蓄熱位置(図2および図4参照)と、第2熱交換パイプ13a(第2熱交換部13)が反応容器1の下部に位置する放熱位置(図3および図5参照)とに、反応容器1を上下反転させるように構成されている。すなわち、反転駆動部2は、蓄熱時に、第1熱交換パイプ12aが反応容器1の下部に位置する蓄熱位置に反応容器1を移動させるとともに、放熱時に、第2熱交換パイプ13aが反応容器1の下部に位置する放熱位置に反応容器1を移動させる。
次に、上記した構成を有する第1実施形態による化学蓄熱装置100の蓄熱時および放熱時の動作について説明する。
蓄熱の際には、車両110の走行中に、反転駆動部2により、図2および図4に示すように、第1熱交換パイプ12a(第1熱交換部12)が反応容器1の下部に位置する蓄熱位置に反応容器1を移動させる。この際、蓄熱材収容部14内の蓄熱材3は、自重により複数の熱交換パイプ間を通って第2熱交換部13側から第1熱交換部12側に移動されて複数の第1熱交換パイプ12aの間に充填される。すなわち、蓄熱材収容部14内の蓄熱材3は、自重により下部に移動して第1熱交換パイプ12aに接触される。これにより、第1熱交換パイプ12aの内部を流れる高温の排ガスにより蓄熱材3が加熱されて蓄熱材3の脱水反応が起こり、その結果、蓄熱材3が蓄熱(加熱再生)される。また、蓄熱材3は、下部に移動されることにより蓄熱材収容部14の内部で流動されてほぐされる。また、脱水反応により蓄熱材3から放出された水蒸気は、蓄熱材収容部14の多数の孔141を介して蓄熱材収容部14の外部に放出され、その後、真空チャンバ11の水蒸気出入口111を介して蒸発・凝縮器50に戻される。この際、蒸発・凝縮器50は、凝縮器として機能する。
一方、放熱の際には、車両110の走行開始時に、反転駆動部2により、図3および図5に示すように、第2熱交換パイプ13a(第2熱交換部13)が反応容器1の下部に位置する放熱位置に反応容器1を移動させる。この際、図10に示すように、反応容器1が蓄熱位置から放熱位置に移動されることによって、蓄熱材収容部14内の蓄熱材3は、自重により複数の熱交換パイプ間を通って第1熱交換部12側から第2熱交換部13側に移動されて複数の第2熱交換パイプ13aの間に充填される。すなわち、蓄熱材収容部14内の蓄熱材3は、自重により下部に移動して第2熱交換パイプ13aに接触される。また、蓄熱材3は、反応容器1が蓄熱位置に移動される場合と同様に、下部に移動されることにより蓄熱材収容部14の内部で流動されてほぐされる。また、真空チャンバ11の水蒸気出入口111を介して蒸発・凝縮器50から水蒸気を真空チャンバ11内に供給することにより、蓄熱材収容部14の多数の孔141を介して蓄熱材収容部14の内部に水蒸気を流入させる。この際、蒸発・凝縮器50は、蒸発器として機能する。これにより、蓄熱材収容部14内の蓄熱材3が水和反応して放熱するので、その熱により、第2熱交換パイプ13aの内部を流れるクーラント液が加熱される。その後、加熱されたクーラント液は、図示しない配管を介してヒータコア30やバッテリ40に送られてヒータコア30やバッテリ40を加熱する。
第1実施形態では、上記のように、排ガス(熱交換流体)が内部を流れる第1熱交換部12およびクーラント液(熱交換流体)が内部を流れる第2熱交換部13を、蓄熱材3を収容する蓄熱材収容部14を含む反応容器1に設けることによって、反応容器1において、互いに異なる排ガスおよびクーラント液がそれぞれ別個に設けられた専用の第1熱交換部12および第2熱交換部13の2系統で流されるので、共通の熱交換部(流路)に排ガスおよびクーラント液の両方を流す場合と異なり、一方の熱交換流体が他方の熱交換流体に混入するのを抑制することができる。その結果、異物が混入することに起因して熱交換流体の性能が低下するのを抑制することができる。また、反応容器1において、排ガスが流れる第1熱交換部12と、クーラント液が流れる第2熱交換部13とを互いに別個に設けることによって、互いに異なる熱交換流体を共通の熱交換部(流路)に流す構成とは異なり、蓄熱時と放熱時とで熱交換部に流す熱交換流体を切り替える必要がないので、熱交換部に流す熱交換流体を切り替えるための流路切換弁などを設ける必要がない。その結果、化学蓄熱装置100の熱交換流体の流路構成が複雑になるのを抑制することができる。
また、反転駆動部2により、蓄熱時および放熱時に応じて、第1熱交換部12に蓄熱材3が接触する蓄熱位置(第1位置)と、第2熱交換部13に蓄熱材3が接触する放熱位置(第2位置)とに選択的に反応容器1を移動させることによって、蓄熱時には、蓄熱材3を第1熱交換部12に集中的に接触させ、放熱時には、蓄熱材3を第2熱交換部13に集中的に接触させることができるので、蓄熱時および放熱時の両方の場合において、対応する熱交換流体と蓄熱材3との間で効率よく熱交換することができる。その結果、熱交換の応答性(熱交換速度)を高めることができる。したがって、この化学蓄熱装置100では、異なる熱交換流体が共通の熱交換部(流路)に流れることに起因する熱交換流体の性能の低下および熱交換流体の流路構成の複雑化を抑制しながら、蓄熱時および放熱時に、それぞれ、蓄熱用の熱交換流体(排ガス)および放熱用の熱交換流体(クーラント液)と良好に熱交換することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、反転駆動部2により、第1熱交換部12が反応容器1の下部に位置する蓄熱位置と、第2熱交換部13が反応容器1の下部に位置する放熱位置とに、反応容器1を上下反転させるとともに、第1熱交換部12または第2熱交換部13が反応容器1の下部に位置する場合に、蓄熱材3を自重により下部に移動して第1熱交換部12または第2熱交換部13に接触させる。これにより、反転駆動部2により反応容器1を上下反転させるだけで、容易に、第1熱交換部12または第2熱交換部13を反応容器1の下部に位置させることができるとともに、蓄熱材3を自重により反応容器1の下部に位置する熱交換部側に移動させることができるので、蓄熱時および放熱時に応じて、容易に、蓄熱材3を第1熱交換部12または第2熱交換部13に選択的に接触させることができる。また、蓄熱材3を自重により下部に移動させることによって、蓄熱材3が流動されてほぐされるので、蓄熱材3が固化するのを抑制することができ、その結果、蓄熱材3の使用寿命を延ばすことができる。また、反応容器1内に蓄熱材3が移動可能なスペースが存在することにより、蓄熱材収容部14に蓄熱材3が隙間なく充填されている場合とは異なり、蓄熱材3が水和反応により膨張した場合でも蓄熱材3が押し固まって固化するのを抑制することができる。これによっても、蓄熱材3の使用寿命を延ばすことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1熱交換部12に対して排ガスの供給または排出を行う上下対称構造の排ガス流路151(161)と、第2熱交換部13に対してクーラント液の供給または排出を行う上下対称構造のクーラント液流路152(162)とを設ける。また、反応容器1が蓄熱位置および放熱位置に位置する両方の場合に、排ガス流路151(161)を介して第1熱交換部12に対する排ガスの供給または排出が行われるとともに、クーラント液流路152(162)を介して第2熱交換部13に対するクーラント液の供給または排出が行われるように構成する。これにより、反応容器1が蓄熱位置および放熱位置のいずれに位置している場合でも、排ガス流路151(161)およびクーラント液流路152(162)を介して、それぞれ、第1熱交換部12内の排ガスおよび第2熱交換部13内のクーラント液を常時循環させておくことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、蓄熱時に脱水反応により蓄熱材3から放出されるとともに放熱時に蓄熱材3と水和反応する水蒸気が通過可能な多数の孔141を有する多孔質構造(パンチングメタル)により、蓄熱材収容部14を筒状に形成する。これにより、蓄熱時には、蓄熱材収容部14の内部において脱水反応により蓄熱材3から放出される水蒸気を多数の孔141を介して容易に蓄熱材収容部14の外部に放出することができるとともに、放熱時には、蓄熱材収容部14の外部から内部に多数の孔141を介して水蒸気を取り込んで蓄熱材収容部14の内部において蓄熱材3と水蒸気とを水和反応させることができる。また、多孔質構造により蓄熱材収容部14を筒状に形成することによって、蓄熱材収容部14の特定の位置にだけ水蒸気の入出通路を設ける場合と異なり、蓄熱材収容部14の全域(全周)から水蒸気を蓄熱材収容部14の外部に放出させることができるとともに、蓄熱材収容部14の全域(全周)から水蒸気を蓄熱材収容部14の内部に取り込むことができるので、蓄熱材収容部14内の蓄熱材3の脱水反応および水和反応をより均一に行わせることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、蓄熱材収容部14の内部に、第1熱交換部12および第2熱交換部13を配置するとともに、蓄熱材3を、蓄熱材収容部14の内部において、第1熱交換部12側および第2熱交換部13側に移動可能に配置する。これにより、蓄熱材収容部14の内部において、第1熱交換部12または第2熱交換部13に蓄熱材3を直接的に接触させることができるので、対応する熱交換部の熱交換流体と蓄熱材3との間でより効率よく熱交換することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1熱交換部12(第2熱交換部13)を、互いに対向する複数の第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)により構成し、複数の第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)を、蓄熱材3が複数の第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)間を移動可能な間隔を隔てて配置する。これにより、排ガス(クーラント液)を複数の第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)に分散して流すことができるとともに、分散された熱交換流体が流れる第1熱交換パイプ12a(第2熱交換パイプ13a)の各々に対して全周に蓄熱材3を接触させることができるので、対応する熱交換流体と蓄熱材3との熱交換効率を向上させることができる。その結果、熱交換の応答性を高めることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、車両110の走行中には、反応容器1を蓄熱位置に移動して、第1熱交換部12の内部に高温の排ガスからなる排ガスが流れることにより蓄熱材3による蓄熱を行わせ、車両110の走行開始時には、反応容器1を放熱位置に移動して、蓄熱材3に放熱させることにより第2熱交換部13の内部を流れるクーラント液を介して車両110の所定部分(ヒータコア30やバッテリ40)の加熱を行う。これにより、車両110の走行中には、車両110の排ガスの熱を利用して効果的に蓄熱材3による蓄熱を行うことができるとともに、車両110の走行開始時には、その蓄熱材3に蓄熱された熱を放熱させて車両110の所定部分(ヒータコア30やバッテリ40)を加熱することができるので、排ガスの熱を有効に活用することができる。
(第2実施形態)
次に、図11および図12を参照して、本発明の第2実施形態による化学蓄熱装置200について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、第1ブラケット部217の排ガス溝部を介することなく、排ガスを第1シャフト部215に直接流入させる構成について説明する。
第1シャフト部215は、図11および図12に示すように、内部にY方向に延びる排ガス流路215aとクーラント液流路215bとが形成されている。排ガス流路215aは、上記第1実施形態とは異なり、第1シャフト部215をY方向に貫通するように形成されている。また、排ガス流路215aのY1方向側の端部は、シール軸受210を介して排ガス流入部220に接続されている。また、第1ブラケット部217は、上記第1実施形態とは異なり、第1シャフト部215の周りに周状に形成された排ガス溝部を有していない。これにより、排ガスは、排ガス流入部220を介して直線的に第1シャフト部215の排ガス流路215aに流入される。すなわち、第1ブラケット部217の排ガス溝部を介して排ガスが第1シャフト部215の排ガス流路215aに流入される場合と異なり、化学蓄熱装置100により排ガスの排出抵抗が大きくなるのを抑制することが可能である。
また、第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、反応容器1は、反転駆動部2によりY方向に延びる回動軸線L1周りに回動されることによって、第1熱交換パイプ12aに蓄熱材3が接触する蓄熱位置(図11参照)と、第2熱交換パイプ13aに蓄熱材3が接触する放熱位置(図12参照)とに選択的に移動されるように構成されている。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、上記のように、排ガス(熱交換流体)が内部を流れる第1熱交換部12およびクーラント液(熱交換流体)が内部を流れる第2熱交換部13を、蓄熱材3を収容する蓄熱材収容部14を含む反応容器1に設けることによって、一方の熱交換流体が他方の熱交換流体に混入するのを抑制することができるので、異物が混入することに起因して熱交換流体の性能が低下するのを抑制することができる。また、反応容器1において、排ガスが流れる第1熱交換部12と、クーラント液が流れる第2熱交換部13とを互いに別個に設けることによって、熱交換部に流す熱交換流体を切り替えるための流路切換弁などを設ける必要がないので、化学蓄熱装置200の熱交換流体の流路構成が複雑になるのを抑制することができる。また、反転駆動部2により、蓄熱時および放熱時に応じて、第1熱交換部12に蓄熱材3が接触する蓄熱位置(第1位置)と、第2熱交換部13に蓄熱材3が接触する放熱位置(第2位置)とに選択的に反応容器1を移動させることによって、蓄熱時には、蓄熱材3を第1熱交換部12に集中的に接触させ、放熱時には、蓄熱材3を第2熱交換部13に集中的に接触させることができるので、熱交換の応答性(熱交換速度)を高めることができる。したがって、この化学蓄熱装置200では、異なる熱交換流体が共通の熱交換部(流路)に流れることに起因する熱交換流体の性能の低下および熱交換流体の流路構成の複雑化を抑制しながら、蓄熱時および放熱時に、それぞれ、蓄熱用の熱交換流体(排ガス)および放熱用の熱交換流体(クーラント液)と良好に熱交換することができる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1および第2実施形態では、本発明の化学蓄熱装置を、車両に搭載する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の化学蓄熱装置を、車両以外の移動体に搭載してもよいし、据え置き型として用いてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の第1の熱交換流体および第2の熱交換流体の一例として、それぞれ、排ガスおよびクーラント液を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1の熱交換流体および第2の熱交換流体が、それぞれ、排ガスおよびクーラント液以外の流体であってもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、反応容器を蓄熱位置(第1位置)および放熱位置(第2位置)に移動させる移動手段としてモータを用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータ以外の移動手段により、反応容器を第1位置および第2位置に移動させてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、反応容器を、管軸方向に延びる回動軸線L1周りに回動させることにより上下反転させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、反応容器を、管軸方向に交差する方向に延びる回動軸周りに回動させることにより上下反転させてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、反応容器を、上下反転させることにより蓄熱位置(第1位置)および放熱位置(第2位置)に移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、スライド移動など、反応容器を上下反転させることなく第1位置および第2位置に移動させる構成であってもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の多孔質構造により形成された蓄熱材収容部の一例として、パンチングメタルにより形成された蓄熱材収容部を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、セラミックスなど、パンチングメタル以外の多孔質構造を有する部材により蓄熱材収容部を形成してもよい。また、多孔質構造を有する蓄熱材収容部に限らず、特定の位置からのみ水蒸気の出入りが可能な蓄熱材収容部であってもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の蓄熱材の一例として、酸化カルシウム(CaO)からなる蓄熱材を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、硫酸カルシウム(CaSO4)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化バリウム(BaO)など、酸化カルシウム(CaO)以外の材料からなる蓄熱材であってもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、第1熱交換パイプおよび第2熱交換パイプを、互いに同じ断面形状(大きさ、形状および板厚)で形成するとともに、互いに同じ本数だけ設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、用途に応じて、第1熱交換パイプおよび第2熱交換パイプを、互いに異なる形状で形成してもよいし、互いに異なる本数で設けてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、第1熱交換パイプ(第2熱交換パイプ)を、互いに単純な円管状に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図13に示す第1変形例ように、熱交換パイプ301の外表面に管軸方向に延びる縦フィン301aを設けてもよいし、図14に示す第2変形例のように、熱交換パイプ302の外表面にリング状の横フィン302aを設けてもよい。また、熱交換パイプの外表面にスパイラル状のフィンを設けてもよい。これにより、熱交換パイプの内部を流れる熱交換流体と蓄熱材との熱交換効率をより高めることが可能である。ただし、上記第1変形例および第2変形例のように熱交換パイプを構成する場合にも、隣接する熱交換パイプ間の間隔は、蓄熱材が通過可能な間隔にする必要がある。