JP6093938B2 - チューリッパリン類の製造方法 - Google Patents

チューリッパリン類の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6093938B2
JP6093938B2 JP2012250803A JP2012250803A JP6093938B2 JP 6093938 B2 JP6093938 B2 JP 6093938B2 JP 2012250803 A JP2012250803 A JP 2012250803A JP 2012250803 A JP2012250803 A JP 2012250803A JP 6093938 B2 JP6093938 B2 JP 6093938B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
enzyme
immobilized
ethanol
tulip
tulipposide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012250803A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014097019A (ja
Inventor
泰治 野村
泰治 野村
加藤 康夫
康夫 加藤
荻田 信二郎
信二郎 荻田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyama Prefectural University
Original Assignee
Toyama Prefectural University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyama Prefectural University filed Critical Toyama Prefectural University
Priority to JP2012250803A priority Critical patent/JP6093938B2/ja
Publication of JP2014097019A publication Critical patent/JP2014097019A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6093938B2 publication Critical patent/JP6093938B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は植物組織を基質原料とし、酵素反応によりチューリッパリン類を得る製造方法に関し、特に環境負荷の低減を図るのに有効な製造方法に係る。
チューリッパリン類はα−メチレン−γ−ブチロラクトン類に相当し、耐熱性透明樹脂の原材料、各種生理活性物質の合成中間体、害虫忌避剤、抗変異原性剤、及び抗菌物質等多くの分野に利用されている。
本出願人は従来の化学合成法よりも温和であり、石油系資源に依存しない方法として植物組織を基質原料にして酵素反応によりチューリッパリン類を得る方法を先に提案している(特許文献1)。
本発明は先の発明をさらに改善したものである。
特開2010−207211号公報
本発明は基質原料に植物組織を用いるとともに抽出及び精製手段として、エタノール及び水とエタノールの混合溶媒と活性炭を用いることでさらに環境負荷が少なく温和な条件によるチューリッパリン類の製造方法の提供を目的とする。
本発明に係るチューリッパリン類の製造方法は、植物組織から水とエタノールの混合溶媒を用いて基質となるチューリッポシド類を抽出するステップと、前記抽出溶液とアニオン交換樹脂に固定化したチューリッポシド変換酵素(固定化チューリッポシド変換酵素)とを接触させることで酵素反応液中にチューリッパリン類を得るステップと、前記酵素反応液中から活性炭を用いてチューリッパリン類を吸着回収するステップとを有することを特徴とする。
ここで、酵素反応の基質としてチューリッポシド類が得られるものであれば植物の種類に限定はない。
本発明者らの研究によれば、チューリップ植物の組織には主にチューリッポシドAとチューリッポシドBとが存在し、さらに品種や組織の部位によりチューリッポシドAとチューリッポシドBの含有量や、その存在比率が相異することも分かっている。
ここで、チューリッポシドAは下記化学式(1)で示され、チューリッポシドBは下記化学式(2)で示される。
なお、本発明に係るチューリッポシド類にはこれらの類縁物質も含まれる。
また、本発明に係るチューリッパリン類には、下記化学式(3)で示されるチューリッパリンA(α−メチレン−γ−ブチロラクトン)及び化学式(4)で示されるチューリッパリンB(α−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン)が含まれる。
ここで、チューリッパリンBの方がチューリッパリンAよりもアレルギー性が低いことも知られている。
本発明において、植物組織からチューリッポシド類の抽出に水とエタノールの混合溶媒を用いた点に特徴がある。
チューリッポシド類は上記化学式(1),(2)に示したように糖エステルに属するから親水性が高いことが想定され、エタノールの含有率が比較的低濃度の水との混合溶媒でも抽出可能と思われる。
しかし、植物組織中、特にチューリップ植物組織中にはチューリッポシド類の他に、チューリッポシドをチューリッパリンに変換するチューリッポシド変換酵素が含まれていることが知られており、エタノールの濃度が低いと抽出過程中にチューリッパリンに変換される比率が高くなり、基質原料としては好ましくない場合もある。
一方、エタノールの含有率を高くすると疎水性の不純物も多く抽出されるので好ましくないが、抽出溶液中の疎水性夾雑物は一度活性炭で除去した後にエタノールを除去後、酵素反応に供することで解決できる。
本発明においては、アニオン交換樹脂にチューリッポシド変換酵素を固定化させた点にも特徴がある。
この場合に酵素反応をリン酸の添加により停止させると酵素が失活する恐れがあることから、酵素反応液をろ過操作し、チューリッポシド変換酵素の反応をろ過にて停止させるとともに固定化酵素を回収する。
回収した固定化酵素はKPB(リン酸カリウム緩衝液)等で洗浄調整するだけで繰り返し酵素反応に使用できる。
酵素反応液中には酵素反応にてチューリッパリンと等モル量のグルコースが生成していることや、植物組織から抽出した基質原料中にも糖類等の不純物が存在することから、酵素反応生成物を吸着させた活性炭にはチューリッパリン類の他に、これらの不純物も含まれる。
そこで、前記酵素反応液中から活性炭にてチューリッパリン類を吸着回収するステップの後に、水洗及び水とエタノールとの混合溶媒に当該チューリッパリン類を再溶出させるステップと、前再溶出液から活性炭に再吸着させるステップにてチューリッパリン類の精製を行うのが好ましい。
また、上記の混合溶媒による再溶出と活性炭による吸着回収を行うことで、それだけ、チューリッパリン類の精製度が向上し、最後にエタノールで溶出させると、その後の減圧濃縮が容易になる。
本発明において特にチューリッパリンBの製造及び精製を目的とする場合には、前記基質原料がチューリッポシドBの含有率の高いチューリップ花部であり、前記固定化チューリッポシド変換酵素がチューリップ球根由来の酵素であるのが好ましい。
チューリップ花部にはチューリッポシドBの含有率の高いものが多く、チューリップ球根にはチューリッポシド変換活性の高い酵素が含まれているからである。
本発明に係るチューリッパリン類の製造方法は酵素反応を用い、反応における抽出及び精製に活性炭とエタノール(水との混合溶媒)を用い、他の有機溶媒を用いる必要がないので温和で環境にやさしい。
チューリップ組織から基質を抽出する際のエタノール濃度の影響を調査した結果を示す。 球根粗酵素中のチューリッポシド変換酵素活性の各種樹脂への吸着率を示す。 異なる塩濃度におけるHPA25L樹脂からのチューリッポシドA変換酵素活性の溶出結果を示す。 固定化酵素の使用回数による酵素活性の変動の調査結果を示す。 酵素反応に及ぼす固定化酵素量の影響の調査結果を示す。 精製したチューリッパリンBのHPLCクロマトグラムチャートを示す。
次に、本発明に係る各プロセスを実験で確認したので以下説明する。
これまでにいろいろな種類の植物組織にチューリッポシド類が存在することが分かっており、特にチューリップの各組織中に著量のチューリッポシド類が存在する。
本出願人はチューリップの花弁、球根、葯等、多くの組織にチューリッポシド類が存在することを先に確認している(特許文献1)。
今回はチューリップの花部組織中のチューリッポシドB含有率が高いことに着目し、123品種のチューリップ花部について、花弁、おしべ、めしべの組織別に全チューリッポシド/チューリッパリン含有量に対するチューリッポシドB/チューリッパリンBの含有率を調査した。
調査方法を下記に示す。
凍結保存してあるチューリップ花部を花弁、おしべ、めしべの各組織に分離後、重量測定し、液体窒素存在下、乳鉢中で破砕し、50%エタノールを加えてさらに破砕することで組織中に含まれるチューリッポシド/チューリッパリンを抽出した。
抽出液を遠心分離(21,500g、10min、4℃)後、上清を蒸留水にて適宜希釈しHPLC分析に供した。
HPLC分析条件は以下の通りである(カラム:TSKgel ODS−100V 5μm(4.6 x 150mm)、流速:0.65ml/min、検出波長:208nm、溶媒:5%メタノール/10mMリン酸)。
その結果を表1及び表2に示す。
表1に示す43品種/79組織では全チューリッポシド/チューリッパリン量に対するチューリッポシドB/チューリッパリンB量の比率が80%以上であることが分かった。
さらにそのうちの29品種/48組織(表2)では、チューリッポシドB/チューリッパリンB量の比率が90%以上に達し、チューリッポシドB/チューリッパリンBをほぼ独占的に蓄積していることが分かった。
次にチューリップ組織から基質を抽出する際の水とエタノールの混合溶媒におけるエタノール濃度の影響を調査した。
調査方法は次のとおりである。
チューリップ品種「紫水晶」の凍結乾燥花弁をミルサーにて破砕後、15mlチューブに0.1gずつ取り、10〜100%のエタノール水溶液5mlを添加し、回転撹拌(26rpm、3h、4℃)することで抽出を行った。
抽出液を遠心分離(21,500g、10min、4℃)後、上清を蒸留水にて適宜希釈しHPLC分析に供した。HPLC分析は表1,2の調査と同様に行った。
その結果を図1のグラフに示す。
エタノール濃度が10%と20%のものはチューリッパリンの割合が多くなっており、特にチューリッパリンBの方が顕著であった。
これは、花弁内に存在するチューリッポシド変換酵素により変換されたためと推定される。
このことからチューリップ組織から基質の抽出にはエタノール濃度が30%以上が好ましく、疎水性不純物の抽出を抑えるにはエタノールの濃度が低い方がよいことから、水との混合溶媒におけるエタノール濃度は30〜50%範囲がよいと思われる。
次に高いチューリッポシド変換酵素活性を含有するチューリップ球根由来の酵素を各種樹脂に固定化することを検討した。
なお、酵素活性はチューリッポシドA変換酵素活性をチューリッパンAの生成量にて測定したが、球根由来のチューリッポシドA変換酵素はチューリッポシドBに対しても活性を有することが分かっている。
試験方法は次のとおりである。
球根200gに10mM リン酸カリウム緩衝液(KPB)(pH 7.0)200mlを加え、ミキサーにて破砕抽出したものをガーゼでろ過した後、遠心分離(21,500g、10min、4℃)し、得られた上清を粗酵素液とした。
このもの5mlに、1M NaClで洗浄後蒸留水にて平衡化した各樹脂を0.5g添加し、穏やかに回転撹拌(26rpm、1h、4℃)した。
遠心分離(7,600g、2min、4℃)にて樹脂を除いた上清に残存するチューリッポシドA変換酵素活性を測定し、樹脂への酵素活性の吸着率を算出した。
用いた樹脂は以下のとおりである。
DEAE−Toyopearl、SuperQ−Toyopearl(以上、東ソー)、DIAION−RCP160M、−SK1B、−WK40、−WA10、−WA20、−WA30、−WA21J、−PA312、−PA412、−HPA25L、−SA10A、−HP20、−HP20SS、−HP2MG、−SP70、−SP207、−SP850(以上、三菱化学)、DE52(Whatman)、Duolite−A7、−A561、−A568、−XAD761(以上、住化ケムテックス)、Toyonite−200M(東洋電化工業)。
酵素活性は以下のように測定した。
0.5M KPB(pH6.5)5μl、蒸留水30μl、酵素液10μl、40mMチューリッポシドA 5μlを加え、全量を50μlとし、室温にて10分間静置することで反応を行った。
0.5Mリン酸50μlを加えて反応を停止し、蒸留水400μlを添加して希釈したものをHPLC分析に供した。
ただし、溶媒には10%メタノール/10mMリン酸を用いた。
それによって酵素反応生成物であるチューリッパリンAの生成量を測定し、酵素活性(U)を求めた(1Uは1分間に1μmolのチューリッパリンAを生成する酵素量)。
球根粗酵素中のチューリッポシド変換酵素活性の各種樹脂への吸着率を図2に示す。
この結果、弱アニオン交換樹脂であるDEAE−ToyopearlやDE52(DEAE−cellulose)、強アニオン交換樹脂であるSuperQ−Toyopearlにおいては90%以上の高い吸着率が得られた。
これら以外では、ハイポーラス型強アニオン交換樹脂であるHPA25Lで75%の高い吸着率が得られたが、その他の樹脂では50%の吸着率を超えるものはなかった。
HPA25Lを用いて樹脂量および固定化時間を検討した結果、球根粗酵素液10mlあたりに添加する樹脂量は0.4〜0.6g程度、固定化時間は2時間以上とすることで、再現性よく固定化を行うことができることが分かった。
次に、アニオン交換樹脂HPA25Lを用いて固定化酵素の安定性を評価した。
評価方法は次のとおりである。
前記方法にて球根チューリッポシド変換酵素をHPA25Lに固定化した後、10mM KPB(pH7.0)にて洗浄した固定化酵素0.3gに、0、100、200、500、600、700、800、900、1000mMのNaClを含む100mM KPB(pH 7.0)をそれぞれ5mlずつ添加し、穏やかに回転撹拌(26rpm、30min、4℃)した。
その後、樹脂を除いた上清に含まれるチューリッポシドA変換酵素活性を測定することで、樹脂に固定化したチューリッポシド変換酵素活性の樹脂からの溶出率(回収率)を求めた。
酵素活性の測定は前述に従い行った。
結果を図3に示す。
この結果、100mM KPB(pH 7.0)中、100mM以上のNaClの存在下では樹脂からの酵素の溶出がみられたが、NaClを含まない100mM KPB(pH7.0)中では溶出はほとんどみられなかった。
このことから、塩を含まない100mM以下のKPB中で酵素反応を行うことで、酵素の溶出を伴うことなく安定的に固定化酵素を使用することが可能であることが分かった。
次に、固定化酵素の再使用の検討を行った。
1回目の反応停止をリン酸で行ったものは、2回目の反応ではほとんど活性がみられなかったことから、固定化した状態であってもリン酸の添加によって酵素は失活することが分かった。
一方、リン酸の添加を行わなかったものは2回目の反応においても高い活性を維持していたことから、固定化酵素を用いた酵素反応では、樹脂をろ過等によって除去することで反応を終了する方法が適しており、それによって固定化酵素の再使用が可能であることが分かった。
そこで、反応に使用した固定化酵素を回収後、10mM KPB(pH7.0)で洗浄し、次の反応に用いることを繰り返し、何回まで高い活性を維持した状態で再使用が可能であるかを調べた。
その結果、図4に示すように計5回の使用後もほぼ100%のチューリッポシドA変換酵素活性が維持されていることが確認され、本固定化酵素は目立った活性の減衰なく再使用が可能であることが分かった。
先に、チューリップ組織からの基質であるチューリッポシドの抽出にエタノール濃度30〜50%の水との混合溶媒が好ましいことが明らかになったので、そのまま上記抽出溶液を酵素反応基質として用いることができるか検討すべく、40%エタノールを用いて抽出した溶液にてHPA25L樹脂に固定化した固定化チューリッポシド変換酵素を用いて酵素反応を実施した。
その結果、ある程度の酵素活性を示すもののエタノール非存在下の酵素活性値の20%〜30%まで低下した。
従って、酵素反応を行う際にはチューリップ組織の抽出液からエタノールを除去する方が好ましいことが分かった。
そこで、次のような系で実験を行うこととした。
40%エタノールの花部抽出液をロータリーエバポレーターにて減圧留去後、最終液量が当初液量の1/10となるように蒸留水に再溶解することで、10倍濃縮花部抽出液を調製し、酵素反応基質として用いるものである。
この方法によって調製した品種「アペルドーン」の濃縮花部抽出液を基質とし、異なる固定化酵素量における酵素反応の経時変化を調べた。
0.5M KPB(pH6.5)100μl、10倍濃縮花部抽出液200μlを含む1mlの反応液中に固定化酵素を5、10、20、50mg添加し、室温にて15〜120分反応させ、基質中の主要チューリッポシドであるチューリッポシドBの残存量を定量した。
その結果を図5に示す。
チューリッポシドB消費量は添加する固定化酵素量の増加に伴って高くなっており、50mgの固定化酵素を加えて15分反応させた時点で93%のチューリッポシドBがチューリッパリンBへと変換され、60分反応時ではほぼ完全に変換反応が完了した。
以上の結果から、固定化酵素を用いた酵素反応は、反応液1mlあたり10倍濃縮花部抽出液200μl、0.5M KPB(pH6.5)100μl、蒸留水700μl、固定化酵素50mgを含む反応液を1時間以上反応させると、チューリッポシドBが完全に変換されることが分かる。
次に酵素反応液からチューリッパリンを精製する条件を検討した。
品種「デザインインプレッション」の花弁抽出物由来酵素反応液5mlに、蒸留水で洗浄した石炭由来活性炭(商品名:ブロコール,太平化学産業)を1/5倍量(1ml)添加し室温にて回転撹拌することでチューリッパリンBを吸着させたところ、1時間経過時のチューリッパリンBの吸着率は97%であった。
ブロコールに吸着させたチューリッパリンBの溶出の際に用いるエタノール濃度は、低すぎると溶出効率が悪くなり、高すぎると不純物が溶出されやすくなってしまうことから、20%エタノールによって溶出することとした。
ブロコールの20倍量および100倍量の20%エタノールにて溶出したところ、チューリッパリンB回収率はそれぞれ59%、72%となった。
100倍量もの溶媒で溶出しても回収率がさほど向上しないことや、スケールアップ時に大量の溶媒を必要とすることから、20%エタノールによる溶出はブロコール体積の20倍量とすることとした。
この20%エタノールによる溶出液中の主成分はチューリッパリンBであるが、この段階で無視できないレベルのチューリッパリンAが共存している場合には、溶液体積の1/100倍量のブロコールを添加し、室温で1時間程度撹拌することで、チューリッパリンAを50%程度吸着・除去することができた。
その際のチューリッパリンBの溶液中への回収率は約80%であった。
チューリッパリンBの20%エタノール溶液を直接濃縮すると、濃縮に長時間を要してしまうことから、溶液中のチューリッパリンBを再度ブロコールに吸着させ、エタノールにて溶出した後に濃縮することとした。
チューリッパリンBの20%エタノール溶液に1/5倍量のブロコールを添加し、室温で1時間撹拌することで、チューリッパリンBを吸着させた(吸着率は約80%)。
ブロコール体積の50倍量の蒸留水にて洗浄後、同10倍量のエタノールを添加することでチューリッパリンBを溶出し、精製チューリッパリンBエタノール溶液を得た。
これによって、ブロコールに吸着したチューリッパリンBの約80%を溶出することができた。
このものを減圧下濃縮することで精製チューリッパリンBを得る方法を確立した。
次にチューリップ花部組織を用いて、スケールアップしたチューリッパリンBの製造を行った。
<固定化チューリッポシド変換酵素の調製>
3kgの冷凍保存球根(複数品種混合物)をハンマーで大まかに破砕した後、10mM KPB(pH7.0)6Lを少量ずつ加えながらワーリングブレンダーを用いて破砕した。
このものを20Lバケツ中、メカニカルスターラーを用いて4℃にて2時間撹拌(170rpm)することで粗酵素を抽出した。
抽出残渣をガーゼによるろ過で除き、ろ液に1M NaCl 500mlで洗浄し蒸留水1Lで平衡化したHPA25L樹脂300gを添加し、メカニカルスターラーを用いて4℃にて6時間撹拌(170rpm)して、粗酵素中のチューリッポシド変換酵素を固定化した。
固定化酵素をガーゼでろ別し、蒸留水1Lにて混入しているデンプンを洗浄した後、1Lビーカー中、蒸留水の添加、撹拌、デカントによってさらにデンプンの除去を行った。
洗浄液が透明になるまでこの操作を繰り返した。
調製した固定化酵素は防腐剤として0.1%(v/v)Plant Preservative Mixture(PPM)(Plant Cell Technology)を含む10mM KPB(pH7.0)500ml中にて4℃で保存した。
本条件下で少なくとも2年以上は顕著な失活無く保存することが可能である。
固定化酵素の活性は以下のように測定した。0.5M KPB(pH6.5)100μl、蒸留水875μl、40mMチューリッポシドAまたはチューリッポシドB 25μl、固定化酵素1mgを含む1mlの反応液を室温にて回転撹拌(27rpm)することで反応を行った。
チューリッポシドA、チューリッポシドBを基質とした時の反応時間はそれぞれ1分間および4分間とした。
反応液と等量の0.5Mリン酸を加えて反応を停止し、蒸留水にて適宜希釈したものをHPLC分析に供し、チューリッパリンAまたはチューリッパリンBの生成量を測定し、酵素活性(U)を求めた(1Uは1分間に1μmolのチューリッパリンを生成する酵素量)。
その結果、1mMの基質存在下における固定化酵素のチューリッポシドA変換酵素活性は0.23U/mg resin、チューリッポシドB変換酵素活性は0.022U/mg resinであった。
<花弁1kgからのチューリッパリンBの調製>
花弁中の全チューリッポシド/チューリッパリン量に対するチューリッポシドB/チューリッパリンB含有率が97%であった「立山の春」の花弁を原料として、チューリッパリンBの調製を行った。
凍結保存花弁1kg(花部163個分)を40%エタノール5Lに4℃で4日間浸漬し、抽出を行った。
ガーゼを用いてろ過することで植物残渣を除いた抽出液(5L)に蒸留水洗浄済みのヤシガラ活性炭(商品名:ヤシコール,太平化学産業)1Lを加え、メカニカルスターラーを用いて4℃で1時間撹拌(200rpm)することで、抽出液中の疎水性夾雑物を吸着させ、吸引ろ過によってヤシコールを除いた。
吸引ろ過は予め2号ろ紙表面にろ過助剤としてラヂオライト100(昭和化学工業)の層を1cm以上になるように形成し、抽出液にもラヂオライト100を100g添加して行った。
得られたろ液を減圧濃縮し、最終液量が500mlとなるように蒸留水に再溶解することで、10倍濃縮花弁抽出液(=酵素反応基質)を調製した。
次に、0.5M KPB(pH6.5)250ml、10倍濃縮花弁抽出液500ml、蒸留水1750mlおよび上記固定化酵素125gを含む反応液を室温にて2.5時間撹拌(110rpm)することで酵素反応を行った。
吸引ろ過によって固定化酵素を除くことで酵素反応を終了し、酵素反応液2500mlを得た。
なお、ろ別した固定化酵素は、蒸留水にて洗浄後、上記の固定化酵素保存液中に懸濁し4℃にて保存することで再使用することが可能である。
2500mlの酵素反応液に蒸留水洗浄済みのブロコール500mlを添加して、メカニカルスターラーを用いて室温にて1時間撹拌(200rpm)することでチューリッパリンBを吸着させた。
吸引ろ過によって未吸着画分を除き、ブロコールを25Lの蒸留水にて洗浄した(ブロコールを入れた20Lバケツに蒸留水を2.5L加えてメカニカルスターラーで5分間撹拌後吸引ろ過する操作を10回繰り返した)。
洗浄後のブロコールに20%エタノール10Lを加えてチューリッパリンBを溶出した(1L加えてメカニカルスターラーで5分間撹拌後吸引ろ過する操作を10回繰り返した)。
合一した20%エタノール溶出液10Lに対して蒸留水洗浄済みのブロコール2Lを添加して、室温にて3時間撹拌することで溶液中に含まれるチューリッパリンBを再び吸着させた。
吸引ろ過によって未吸着画分を除き、ブロコールを100Lの蒸留水にて洗浄した(ブロコールを入れた20Lバケツに蒸留水を10L加えてメカニカルスターラーで5分間撹拌後吸引ろ過する操作を10回繰り返した)。
洗浄後のブロコールにエタノール20Lを加えてチューリッパリンBを溶出した(2 L加えてメカニカルスターラーで5分間撹拌後吸引ろ過する操作を10回繰り返した)。
合一した溶出液にラヂオライト100を400g加え、2号ろ紙上に厚さ1cm程度に形成したラヂオライト100層を用いて吸引ろ過を行うことで、ブロコール微粉末を除去した清澄なチューリッパリンBエタノール溶液を得た。
このものを減圧濃縮し、精製チューリッパリンBを得た(エタノール溶液、30ml)。
以上のプロセスにより、「立山の春」花弁1kgから2.32mmol(264mg)のチューリッパリンBが得られた。
精製過程における回収率および純度を表3に、精製物のHPLCクロマトグラムを図6に示す。
HPLC分析は表1,2のときと同様の条件にて行った。
<花部1kgからのチューリッパリンBの調製>
花部(花弁、おしべ、めしべを含む)を構成するいずれの組織においても全チューリッポシド/チューリッパリン量に対するチューリッポシドB/チューリッパリンB含有率が90%以上であった「立山の春」の花部を原料として、チューリッパリンBの調製を行った。
凍結保存花部1kg(花部122個)から、上記と同様の方法で2.68mmol(306mg)のチューリッパリンBが得られた。
精製過程における回収率および純度を表4に、精製物のHPLCクロマトグラムを図6に示す。
花弁のみおよび花部全体を原料として得られたものを比較すると、花弁のみを原料とした場合にはチューリッパリンAの混入は痕跡量であり、ほぼ純粋なチューリッパリンBが得られた。
花部全体を原料としたものは、花弁のみを原料としたものよりも、わずかながら純度は低下するものの、最終的には純度約99%のチューリッパリンBを得ることができた。

Claims (4)

  1. 植物組織からエタノール濃度30〜50%の、水とエタノールの混合溶媒を用いて基質となるチューリッポシド類を抽出するステップと、
    前記抽出溶液からエタノールを除去するステップと、
    前記エタノールを除去した抽出溶液とアニオン交換樹脂に固定化したチューリッポシド変換酵素である固定化チューリッポシド変換酵素とを、NaCl濃度100mM以下のリン酸カリウム緩衝液中で接触させることで酵素反応液中にチューリッパリン類を得るステップと、
    前記酵素反応液中から活性炭を用いてチューリッパリン類を吸着回収するステップとを有することを特徴とするチューリッパリン類の製造方法。
  2. 前記酵素反応に用いた酵素反応液中からろ過操作により前記固定化チューリッポシド変換酵素を回収することで、当該固定化チューリッポシド変換酵素を繰り返し利用可能にしたことを特徴とする請求項記載のチューリッパリン類の製造方法。
  3. 前記植物組織がチューリップ由来の組織であり、
    前記基質がチューリッポシドBであり、
    前記固定化チューリッポシド変換酵素がチューリップ由来の酵素であり、
    得られるチューリッパリン類がチューリッパリンBであることを特徴とする請求項1又は2に記載のチューリッパリン類の製造方法。
  4. 前記チューリップ由来の組織はチューリッポシドBの含有率の高いチューリップ花部であり、
    前記チューリップ由来の酵素はチューリップ球根由来の酵素であることを特徴とする請求項3記載のチューリッパリン類の製造方法。
JP2012250803A 2012-11-15 2012-11-15 チューリッパリン類の製造方法 Active JP6093938B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012250803A JP6093938B2 (ja) 2012-11-15 2012-11-15 チューリッパリン類の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012250803A JP6093938B2 (ja) 2012-11-15 2012-11-15 チューリッパリン類の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014097019A JP2014097019A (ja) 2014-05-29
JP6093938B2 true JP6093938B2 (ja) 2017-03-15

Family

ID=50939645

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012250803A Active JP6093938B2 (ja) 2012-11-15 2012-11-15 チューリッパリン類の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6093938B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015057996A (ja) * 2013-09-20 2015-03-30 富山県 チューリッポシドbをチューリッパリンbに変換する酵素活性の高いタンパク質及びそれをコードするポリヌクレオチド

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DK402583D0 (da) * 1983-09-05 1983-09-05 Novo Industri As Fremgangsmade til fremstilling af et immobiliseret lipasepraeparat og anvendelse deraf
JPS61185196A (ja) * 1985-02-14 1986-08-18 Shokuhin Sangyo Baioriakutaa Syst Gijutsu Kenkyu Kumiai サイクロデキストリンの生成方法
JP2524984B2 (ja) * 1986-09-16 1996-08-14 オルガノ株式会社 固定化酵素
JP5421521B2 (ja) * 2007-01-31 2014-02-19 株式会社クラレ γ―ブチロラクトン誘導体の製造方法
JP5704295B2 (ja) * 2009-02-12 2015-04-22 富山県 α−メチレン−γ−ブチロラクトン類の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014097019A (ja) 2014-05-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN109651480A (zh) 一种分离罗汉果甜苷v的方法
CN108602749B (zh) 从玉米麸皮中高纯度和高产量生产阿魏酸的方法
CN104045724B (zh) 从桦褐孔菌中提取制备桦褐孔菌多糖的方法
CN103266154A (zh) 制备高活性茶皂甙的生物转化方法
CN112110979A (zh) 一种提取茶皂素的方法
JP6093938B2 (ja) チューリッパリン類の製造方法
CN112225774A (zh) 一种高纯高提取率的新型茶皂素提取方法
JP6353225B2 (ja) 担子菌を原料としたβ−グルカン含有組成物の製造方法
JPWO2003068386A1 (ja) 吸着剤及び吸着剤の製造方法
CN104045725B (zh) 采用d301g阴离子树脂精制桦褐孔菌粗多糖的方法
JP2019025472A (ja) テアニン吸着剤
JP2010207211A (ja) α−メチレン−γ−ブチロラクトン類の製造方法
CN110835185A (zh) 从混合溶液中分离酸与酯的方法
CN101412710B (zh) 一种奥美拉唑钠化合物及其制法
CN116370512A (zh) 芹菜籽提取物、其制备方法及在降尿酸中的应用
CN107280018B (zh) 一种米糠不溶性膳食纤维的制备方法
CN111018939A (zh) 一种茶皂素的快速精制方法
CN102180781B (zh) 从二氧化碳萃取酒花残渣中提取生产高纯度黄腐酚的方法
CN104031159B (zh) 采用732阳离子树脂精制桦褐孔菌粗多糖的方法
JP6168275B2 (ja) 炭酸カルシウム・マイクロカプセル固定化リパーゼ
JP4846758B2 (ja) 7−O−β−D−グルコシルルテオリンの製造方法
CN111547718A (zh) 复合型活性炭及其在纯化他克莫司中的应用
KR101529709B1 (ko) 비배당체 대두 이소플라본의 제조방법
JP2005224162A (ja) イソフラボンアグリコンの製造法
KR20170004233A (ko) 아가라제를 이용한 해조류 유래 갈락토스의 제조방법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151027

AA91 Notification that invitation to amend document was cancelled

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971091

Effective date: 20160202

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160302

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160829

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161020

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161201

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20161219

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161219

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20161219

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6093938

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250