JP5421521B2 - γ―ブチロラクトン誘導体の製造方法 - Google Patents

γ―ブチロラクトン誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、γ−ブチロラクトン誘導体の製造方法、特にβ―ヒドロキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトンの製造方法に関する。
本発明で得られるγ−ブチロラクトン誘導体は、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジンなどの構成成分モノマーとして有用である。
γ−ブチロラクトン誘導体の製造方法に関しては、従来からさまざまな製法が提案されている。例えば、
(1)ヒドロキシアセトンとブロモ酢酸ブロミドを塩基存在下に反応させて得られるブロモ酢酸2−オキソプロピルエステルを亜鉛を用いて環化する方法(特許文献1参照)
(2)グリシドールまたは2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノールをシアノ化し、加水分解し、次いでラクトン化する方法(特許文献2参照)
(3)コバルト化合物の存在下、グリシドールと一酸化炭素とを反応させる方法(特許文献3参照)
などが提案されている。
特開平10−212283号公報 WO99/33817号公報 米国特許第4,968,817号明細書
上記(1)の方法は原料に対して等モル以上の金属試薬を必要とし、多量の金属を含む廃液が発生するという問題点を有している。また、加水分解及び抽出操作が、水が混在する系で行われるが、β―ヒドロキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトンの水への溶解性が高いことから該化合物のロスが多くなることが容易に予想され、これを回避するために抽出操作の回数や使用する溶媒量を多くすることが必要になるなど、操作が煩雑になる問題点も有する。さらに、精製後の純度が87%、中間体であるブロモ酢酸2−オキソプロピルエステル基準の収率が34.4%と、収率及び純度に改善の余地がある。
上記(2)の方法については、実施例にはグリシドールの例しかなく、グリシドールを原料とした場合、精製後の収率が40〜51%と改善の余地がある。また、3つの反応が必要であり、全体として目的化合物を得るまでの操作時間が長くなる。
上記(3)の方法については、収率は良いものの、一酸化炭素の圧力が20〜30MPaと非常に高い反応条件を必要とし、製造上の安全性の面から改良の余地がある。
本発明の目的は、上記した背景技術の問題点を解決するため、簡便な操作及び温和な条件で、工業的に製造可能な方法で、γ−ブチロラクトン誘導体を高純度、高収率で製造し得る方法を提供することにある。
本発明によれば、上記の目的は式(I)
(式中、 、R 、R およびR はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表し、R は炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表す)で表されるエポキシアルコールを、コバルト化合物及びアゾール化合物の存在下、非プロトン性溶媒中で、一酸化炭素と反応させることを特徴とする式(II)
(式中、R〜Rは前記と同義である)で表されるγ―ブチロラクトン誘導体の製造方法を提供することによって達成される。
ここで、アゾール化合物は置換もしくは無置換イミダゾールであるのが好ましく、エポキシアルコールは2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノールであるのが好ましく、非プロトン性溶媒はエーテルであるのが好ましく、エーテルは環状エーテルであるのが好ましい。
本発明によれば、簡便な操作及び温和な条件で、工業的に製造可能な方法で、γ−ブチロラクトン誘導体を高純度、高収率で製造することができる。
上記式(I)及び(II)において、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基がより一層好ましい。
本発明の製造方法で原料として使用する式(I)で表されるエポキシアルコールとして具体的には以下に示すようなものが挙げられる。
本発明の製造方法で原料として使用する式(I)で表されるエポキシアルコールは、そのものを市場で購入できる場合があり、また対応するオレフィンアルコールのエポキシ化により製造することができる。例えば、2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノールは2−メチル−2−プロペン−1−オールの過酸化水素によるエポキシ化により製造することができる(特開2004−209449号公報参照)。
本発明の製造方法で使用するコバルト化合物としては、ヒドロエステル化反応で用いられる従来公知のコバルトカルボニル化合物が挙げられる。例えば、ジコバルトオクタカルボニル、テトラコバルトドデカカルボニル、テトラカルボニルコバルト酸ナトリウム、コバルトヒドロカルボニル、ヘキサカルボニルビス(トリ−n−ブチルホスフィン)二コバルトなどが挙げられ、好ましくはジコバルトオクタカルボニルが用いられる。
また、ジコバルトオクタカルボニルとしては、公知の方法で製造されたもの、或いは炭酸コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト又はこれらの混合物などの無機コバルト化合物、その他有機酸のコバルト化合物などの有機コバルト化合物を原料として、反応系内でジコバルトオクタカルボニルを発生させた溶液も用いることができる(特公昭55−22418号公報参照)。
コバルト化合物の使用量は、式(1)で表されるエポキシアルコール1モルに対して0.001〜0.5モルであるのが好ましく、0.01〜0.2モルであるのがより好ましい。
本発明の製造方法で使用するアゾール化合物としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−アセチルイミダゾールなどの無置換若しくは置換イミダゾール;ピラゾール、1−メチルピラゾール、3−メチルピラゾールなどの無置換若しくは置換ピラゾール;トリアゾール、テトラゾールなどの窒素原子を3個以上含む複素5員環化合物;オキサゾール、チアゾールなどの窒素以外に酸素や硫黄原子を含む複素5員環化合物;ベンゾイミダゾール、インダゾールなどのベンゼン環などがアゾール環に縮合した縮合環などが挙げられる。これらの中でも、無置換若しくは置換イミダゾールが好ましい。
アゾール化合物の使用量は、コバルト金属1グラム原子に対して0.5〜10モル、好ましくは1〜5モルである。
本発明の製造方法で使用する非プロトン性溶媒としては、エーテル化合物、芳香族炭化水素などを用いることができるが、エーテル化合物が好ましい。エーテル化合物中で反応を行うことにより選択率が向上する。一方、プロトン性溶媒を使用した場合、たとえばメタノールやエタノールなどのアルコールでは、式(II)で表されるγ−ブチロラクトン誘導体の選択率が低下する。
エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル;ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどが挙げられ、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。中でも、反応速度及び選択性の観点から、環状エーテルが好ましく、テトラヒドロフランが特に好ましい。非プロトン性溶媒は、単独で使用してもよいし、数種を混合して使用してもよい。
本発明で使用する一酸化炭素は、それ単独で供することもできるし、窒素、アルゴン等の不活性ガスと混合して反応に供することもできる。一酸化炭素の圧力は特に制限されないが、0.5〜10MPaが好ましく、2〜8MPaがより好ましい。
本発明の製造方法における反応温度は、20〜130℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
本発明の製造方法における反応操作様式には特に制限はない。また、反応試剤の供給方法・順序にも特に制限はなく、任意の方法・順序で添加することができる。例えば、反応操作を、回分式反応器に、式(I)で表されるエポキシアルコール、アゾール化合物、コバルト化合物及び非プロトン性溶媒を入れ、一酸化炭素で加圧し、所定の温度で攪拌することにより行うことができる。
このようにして得られた、本発明の製造方法の目的生成物であるγ―ブチロラクトン誘導体の単離は、コバルト化合物及びアゾール化合物の分離、及び、反応液の濃縮によって行うことができる。コバルト化合物及びアゾール化合物の分離方法としては特に制限されないが、酸素や空気によりコバルト化合物を酸化させて生じた固形物をろ別する方法、多価カルボン酸を加えて生じるコバルト原子を含む固形物をろ別する方法、キレート樹脂、活性炭等に吸着させる方法、カラムクロマトグラフィー、蒸留などを使用することができる。
本発明の製造方法で得られるγ―ブチロラクトン誘導体は、コバルト化合物、アゾール化合物及び非プロトン性溶媒を除去するのみで通常充分な純度を有しており、特に精製の必要は無いが、更に高純度の物を得るために、必要に応じて、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常用いられる有機化合物の精製方法を用いることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。
<実施例1>
窒素置換した内容積50mLの三つ口フラスコに、イミダゾール0.33g(4.80mmol)、脱気したテトラヒドロフラン20mLを順次入れ、マグネチックスターラーにて攪拌し、イミダゾールが完全に溶解したことを確認後、ジコバルトオクタカルボニル0.82g(2.40mmol)を入れた。気体の発生が終了し、液が均一になるまで攪拌した(以後、調製液Aと呼ぶ)。
内容積100mLのオートクレーブに、窒素気流下で、2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノール15.46g(175.5mmol)と脱気したテトラヒドロフラン20.0mLの混合溶液、調製液Aを順次入れ、脱気したテトラヒドロフランを更に12.5mL(テトラヒドロフラン全量52.5mL)入れた。一酸化炭素1.0MPaでオートクレーブを3回置換し、最後に一酸化炭素を4.0MPaに加圧し、80℃にて1.5時間反応させた。反応容器の温度を室温に、圧力を常圧に戻してから、反応容器を窒素1.0MPaで2回置換した後、反応液を200mLの三つ口フラスコに移した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析すると、2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノールの変換率は99.5%、β―ヒドロキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトンの選択率は96.6%(収率96.1%)であった。
該反応液に、攪拌下、20mL/minで空気を3時間バブリングし、生成した固体をろ別し、ろ液を減圧下に濃縮することで、β―ヒドロキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトンを19.53g(純度96.3%、162.0mmol、収率92.3%)得た。
<実施例2>
実施例1において、溶媒としてテトラヒドロフランの代わりに1,2−ジメトキシエタンを使用し、反応時間を4.0時間とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノールの変換率は82.3%、β―ヒドロキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトンの選択率は95.5%(収率78.6%)であった。
<比較例1>
実施例1において、溶媒としてテトラヒドロフランの代わりにエタノールを使用し、
反応時間を1.3時間とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノールの変換率は96.8%、β―ヒドロキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトンの選択率は67.9%(収率65.7%)であった。
<比較例2>
実施例1において、溶媒としてテトラヒドロフランの代わりにメタノールを使用し、反応時間を3.5時間とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノールの変換率は88.1%、β―ヒドロキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトンの選択率は72.2%(収率63.6%)であった。
<比較例3>
実施例1において、イミダゾールを使用せず、反応時間を9時間とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノールの変換率は2.6%、β―ヒドロキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトンの選択率は95.0%(収率2.5%)であった。

Claims (5)

  1. 式(I)
    (式中、 、R 、R およびR はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表し、R は炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表す)で表されるエポキシアルコールを、コバルト化合物及びアゾール化合物の存在下、非プロトン性溶媒中で、一酸化炭素と反応させることを特徴とする式(II)
    (式中、R〜Rは前記と同義である)
    で表されるγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法。
  2. アゾール化合物が置換もしくは無置換イミダゾールである請求項1記載の方法。
  3. エポキシアルコールが2,3−エポキシ−2−メチル−1−プロパノールである請求項1又は2記載の方法。
  4. 非プロトン性溶媒がエーテルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. エーテルが環状エーテルである請求項4記載の方法。
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