JP2004231542A - β−ヒドロキシエステルの製法及びコバルトカルボニル化合物の製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】β−ヒドロキシエステル並びにそれに用いられるジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質などの工業的製法。
【解決手段】触媒としてコバルトカルボニル化合物及び助触媒としてアゾール類の存在下、エポキシドとアルコールと一酸化炭素とを有機溶媒中で反応させることを特徴とするβ−ヒドロキシエステルの製造法、並びにPd、Rh、Pt、Ruなどの金属を触媒として用い、有機溶媒中コバルト化合物を一酸化炭素及び水素の混合ガスと反応させることを特徴とするジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質の製造法。
【選択図】なし
【解決手段】触媒としてコバルトカルボニル化合物及び助触媒としてアゾール類の存在下、エポキシドとアルコールと一酸化炭素とを有機溶媒中で反応させることを特徴とするβ−ヒドロキシエステルの製造法、並びにPd、Rh、Pt、Ruなどの金属を触媒として用い、有機溶媒中コバルト化合物を一酸化炭素及び水素の混合ガスと反応させることを特徴とするジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質の製造法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学活性な医薬品等の製造に有用なβ−ヒドロキシエステルの製法に関する。本発明は、また上記反応の触媒として有用なジコバルトオクタカルボニル錯体などの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
β−ヒドロキシエステルの製法に関して、ジコバルトオクタカルボニル錯体などのコバルトカルボニル化合物存在下、エポキシドを一酸化炭素及びメタノールなどのアルコールと反応させてβ−ヒドロキシエステルが得られる(以下この反応を、単にヒドロエステル化反応と称することもある。)ことは、多くの論文に報告されているが、選択性、収率が非常に悪く、また高圧条件(140atm)を必要とする(例えば、非特許文献1参照)。 またこの反応を効率よく進行させるために、ヒドロキシ基で置換されたピリジンを助触媒として用いることも、特許文献に記載されている(特許文献1)。
一方、ヒドロエステル化反応の触媒として用いられるジコバルトオクタカルボニル結晶のこれまでの製造方法では、煩雑な操作や高温高圧を必要とした。ジコバルトオクタカルボニル自体を触媒量存在させることで、比較的低い圧力でジコバルトオクタカルボニルが製造できるという報告もある(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】
欧州特許出願公開第577206号明細書
【特許文献2】
特公昭55−22418号公報
【非特許文献1】
日本化学会誌,1979年,第5巻,p.635
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
β−ヒドロキシエステルを製造するためのこれらの反応を工業的に行う際に用いられるヒドキシピリジン類は高価であり、工業的に大量に入手することも困難である。
また、ジコバルトオクタカルボニルを製造すにはジコバルトオクタカルボニルを触媒量存在させることで、50kg/cm2以下の圧力で行えるが、工業化を考慮した場合、ジコバルトオクタカルボニルそのものを安価で工業的に入手することが困難であるという問題がある。
従って、本発明が解決しようとする課題は、より簡便なヒドロエステル化反応を用いて、β−ヒドロキシエステルを製造することであり、他の課題は、この反応に触媒として用いられるジコバルトオクタカルボニル錯体及びそれを含有する物質の簡便な製法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、ヒドロエステル化反応によりβ−ヒドロキシエステルを製造するに際し、より安価で容易に入手できるアゾール類を助触媒に用いることで、この反応の選択性、収率がともによく、かつ光学純度が低下することなく反応が進行することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、コバルトカルボニル化合物及びアゾール類存在下、エポキシドを一酸化炭素及びアルコールと有機溶媒中で反応させることを特徴とするβ−ヒドロキシエステルの製造法に関する。
【0006】
本発明は、また上記反応の触媒として有用なジコバルトオクタカルボニル錯体及びそれを含有する物質の簡便な製法に関する。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の金属を触媒として用いることにより、従来公知の方法に比べ、低い圧力でジコバルトオクタカルボニル錯体を製造できることを見出した。
即ち、本発明は、第8〜10族の遷移金属から選ばれる金属を触媒として用い、有機溶媒中コバルト化合物を一酸化炭素及び水素の混合ガスと反応させることを特徴とするジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質及びジコバルトオクタカルボニル錯体の製造法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のβ−ヒドロキシエステルの製造法につき、以下にに詳しく説明する。
本反応で用いられる基質のエポキシドは特に制限されないが、収率良く反応を進行させるには、1,2−エポキシドが好ましい。代表的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシへキサン、2,3−エポキシプロピルベンゼンなどのアルキル基、アラルキル基で置換されたエポキシド、エチルグリシジルエーテルやベンジルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンなどが挙げられる。
【0008】
本反応で助触媒として用いられるアゾール類としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−アセチルイミダゾールなどの無置換若しくは置換イミダゾール、ピラゾール、1−メチルピラゾールなどの無置換若しくは置換ピラゾール、トリアゾール、テトラゾールなどのように窒素原子を3個以上有する5員環複素環、チアゾール、オキサゾールなどの窒素以外に硫黄や酸素原子を含む5員環複素環、ベンゾイミダゾール、インダゾールなどのベンゼン環などがアゾール環に縮合した縮合環等が挙げられる。中でも、無置換若しくは置換イミダゾールが最もよい結果を与える。
本反応で用いられるアゾール類の割合は、コバルト金属原子に対して、0.5〜10当量添加することで反応は効率よく進行するが、好ましくは、1〜5当量である。
【0009】
本反応で触媒として用いられるコバルトカルボニル化合物としては、ヒドロエステル化反応で用いられる従来公知のコバルトカルボニル化合物が用いられる。例えば、ジコバルトオクタカルボニル、テトラコバルトドデカカルボニル、テトラカルボニルコバルト酸ナトリウム、コバルトヒドロカルボニル、ヘキサカルボニルビス(トリ−n−ブチルホスフィン)二 コバルトが挙げられる。
本反応では、ジコバルトオクタカルボニル錯体が好ましく用いられる。ジコバルトオクタカルボニル錯体は公知の方法で製造されたもの、或いは下記の本発明の方法で製造されるものでもよい。その使用量はエポキシド1モルに対して0.005〜0.2モル用いることで、反応は容易に進行するが、好ましくは、0.01〜0.1モルである。
また、下記の本発明の方法で製造されるジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質を用いることが特に好ましい。
【0010】
本反応で用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロパノールなどの1級及び2級の脂肪族アルコールやフェネチルアルコール、ベンジルアルコールなどのアリール基が置換した1級及び2級のアルコールが用いられる。好ましくは、1級のアルコールである。
上記のアルコールをそのまま溶媒として使用してもよいが、反応体であるアルコールと次に示す溶媒との任意の混合溶媒を用いてもよい。使用する溶媒としては、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系の溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系の溶媒を用いることができる。触媒として、ジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質を用いる場合、これを溶解する溶媒、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒中で行なうのが特に好ましい。
【0011】
本反応に用いられる一酸化炭素の圧力は0.5〜10MPaであり、好ましくは1〜6MPaである。
反応温度は、10〜140℃がよく、好ましくは40〜80℃である。
本反応では、反応体に光学活性なエポキシドを用いても、光学純度が低下することなく光学活性なβ−ヒドロキシエステルが得られる。
本反応を、プロピレンオキシドとメタノールを例にとり、反応式で示すと、以下の通りである。
【化1】
【0012】
本反応の生成物であるβ−ヒドロキシエステルは、反応終了後、溶媒を留去してから減圧蒸留することにより容易に精製することができる。
特に好ましい方法は、下記本発明の方法で製造されるジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質を触媒とし、アゾール類、特に無置換若しくは置換イミダゾールを助触媒として用い、エポキシド、アルコール及び一酸化炭素を加え、反応せしめ、目的物質たるβ−ヒドロキシエステルを製造する方法が工業的見地から最も好ましい方法である。
【0013】
本発明は、また上記反応の触媒として有用なジコバルトオクタカルボニル錯体及びそれを含有する物質の簡便な製法に関する。
本発明は、第8〜10族の遷移金属から選ばれる金属を触媒として用い、有機溶媒中コバルト化合物を一酸化炭素及び水素の混合ガスと反応させることを特徴とするジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質及びジコバルトオクタカルボニル錯体の製造法に関する。
【0014】
本発明のジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質及びジコバルトオクタカルボニル錯体の製造法をさらに詳しく説明する(以下この発明方法を便宜上、本コバルトのカルボニル化反応と称することもある。)。
本コバルトのカルボニル化反応で触媒として用いられる金属は第8〜10族の遷移金属から選ばれる金属であり、好ましい金属としては、Ru、Rh、Pd、Ptが挙げられる。また、これらの金属触媒は、金属単体でも活性炭やアルミナに担持されているものでもよい。好ましくは、5〜10%Pd/Cや5%Rh/C、5〜10%Pt/Cであるが、収率及び経済性を考慮すると5〜10%Pd/Cがより好ましい。使用量は、コバルト金属原子1モルに対して1〜30g、好ましくは、3〜10gである。
本コバルトのカルボニル化反応で用いられるコバルト化合物は、水酸化コバルト、炭酸コバルト、酸化コバルト又はこれらの混合物などの無機コバルト化合物や、酢酸コバルト、安息香酸コバルトなどの有機酸のコバルト塩である。好ましくは、酢酸コバルトや水酸化コバルトである。
【0015】
本コバルトのカルボニル化反応で使用される溶媒としては特に制限されないが、1,4−ジオキサン、THF、1,2−ジメトキシエタンなどエーテル系の溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系の溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系の溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノ−ル、n−ブタノール等のアルコール系の溶媒を使用できる。好ましくは、アルコール系の溶媒である。
反応温度は、コバルト化合物の種類及び触媒の種類にもよるが、40〜160℃で目的物を製造でき、好ましくは70〜130℃である。
コバルト化合物と反応させる一酸化炭素及び水素の混合ガスはモル比で1:1〜1:0.2の範囲で十分であり、反応系内でその圧力は5MPa以下、好ましくは0.5〜3MPaである。
【0016】
本コバルトのカルボニル化反応溶液中には、少なくとも大部分のジコバルトオクタカルボニル錯体と少量のコバルトテトラカルボニルアニオンが存在する。これを濃縮、精製することなく、前記のβ−ヒドロキシエステルを製造する本発明の方法に、溶液のまま、触媒として用いることが特に好ましい。
本コバルトのカルボニル化反応後の溶液を濃縮し、一酸化炭素を飽和させたへキサンから再結晶することにより、ジコバルトオクタカルボニル錯体の赤褐色の結晶を得ることができる。
勿論、この錯体結晶を前記本発明のβ−ヒドロキシエステルを製造する際の触媒として用い得る。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
実施例1
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.9g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、55℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを3.1g(92%、>99%ee)得た。また、その沸点は80℃ / 0.6 mmHgであった。
同条件下で助触媒イミダゾールを用いない反応系では、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルは8%しか得られなかった。
【0019】
実施例2
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したメタノールを10mL入れ、1−メチルイミダゾール66mg(0.8 mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.9g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を5MPa加圧し、55℃で6時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルを2.6g(85%、>99%ee)得た。
【0020】
実施例3
(R) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL、THFを10mL入れ、1−アセチルイミダゾール88mg(0.8 mmol)、(R)−エピクロロヒドリン1.9g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニルを137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、50℃で10時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを2.8g(83%、>99%ee)得た。
【0021】
実施例4
(S) −4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL、トルエンを10mL入れ、4−メチルイミダゾール66mg(0.8 mmol)、(S)―エチルグリシジルエーテル2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を3.5MPa加圧し、60℃で9時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4―エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを3.0g(85%、>99%ee)得た。
【0022】
実施例5
(R) −4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸ブチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したブタノールを20mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(R)−エチルグリシジルエーテル2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で7時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸ブチルを3.7g(90%、>99%ee)得た。
【0023】
実施例6
(S) −3−ヒドロキシヘプタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL、酢酸エチルを10mL入れ入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−1,2−エポキシヘキサン2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を3MPa加圧し、65℃で6時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−3−ヒドロキシヘプタン酸エチルを2.92g(85%、>99%ee)得た。
【0024】
実施例7
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸イソプロピルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したイソプロパノールを20mL、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.9g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、55℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸イソプロピルを2.7g(80%、>99%ee)得た。
【0025】
実施例8
(S) −3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを25mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−プロピレンオキシド1.2g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を3.5MPa加圧し、60℃で4時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の3−ヒドロキシブタン酸エチルを2.4g(92%、>99%ee)得た。
【0026】
実施例9
(S) −4−フェノキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したメタノールを20mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)―フェニルグリシジルエーテル3.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、60℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4−フェノキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルを3.8g(90%、>99%ee)得た。
【0027】
実施例10
(R) −4−ベンジロキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したメタノールを15mL、THFを10mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(R)−ベンジルグリシジルエーテル3.3g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で7時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−ベンジロキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルを4.0g(89%、>99%ee)得た。
【0028】
実施例11
(S) −4−メトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL、トルエンを10mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−メチルグリシジルエーテル1.8g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を3.5MPa加圧し、60℃で5時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4−メトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを3.0g(92%、>99%ee)得た。
【0029】
実施例12
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL入れ、酢酸コバルト四水和物250mg(1mmol)、10%Pd/C 10mg加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換した後、一酸化炭素1.5MPa、水素1MPaをこの順に圧入し、80℃、3時間加熱した。3時間後、室温に戻してから、混合ガスを放出し、ジコバルトオクタカルボニル錯体含有溶液を得、これにイミダゾール68mg(1mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.8g(20 mmol,>99%ee)を加えた。蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、55℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを3.1g(92%、>99%ee)得た。また、その沸点は80℃ / 0.6 mmHgであった。
同条件下で助触媒イミダゾールを用いない反応系では、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルは8%しか得られなかった。
【0030】
実施例13
(S) −3−ヒドロキシヘプタン酸エチルの製造:
実施例12と同様の方法で触媒を還元した後、イミダゾール68mg(1mmol)、(S)―エポキシヘキサン2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で10時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−3−ヒドロキシヘプタン酸エチルを2.92g(85%、>99%ee)得た。
【0031】
実施例14
(R) −4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸ブチルの製造:
実施例12と同様の方法で触媒を還元した後、イミダゾール68mg(1mmol)、(R)―エチルグリシジルエーテル2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で7時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸ブチルを3.67g(90%、>99%ee)得た。
【0032】
実施例15
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸イソプロピルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したイソプロパノールを10mL、THF10mL入れ、酢酸コバルト四水和物250mg(1mmol)、10%Rh/C 10mg加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換した後、一酸化炭素3MPa、水素1MPaをこの順に圧入し、100℃、3時間加熱した。3時間後、室温に戻してから、混合ガスを放出し、ジコバルトオクタカルボニル錯体含有溶液を得、これにイミダゾール68mg(1mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.8g(20 mmol,>99%ee)を加えた。蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、55℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸イソプロピルを3.1g(92%、>99%ee)得た。
【0033】
実施例16
(S) −4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したメタノール10mL、トルエン10mL入れ、水酸化コバルト(Co含有量約60%)100mg(1mmol)、10%Pd/C 10mg加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換した後、一酸化炭素2.5MPa、水素0.5MPaをこの順に圧入し、120℃、2時間加熱した。2時間後、室温に戻してから、混合ガスを放出し、ジコバルトオクタカルボニル錯体含有溶液を得、これにイミダゾール68mg(1mmol)、(R)−エチルグリシジルエーテル2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で7時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルを3.67g(90%、>99%ee)得た。
【0034】
実施例17
内容積50mLのオートクレーブにエタノールを10mL入れ、酢酸コバルト250mg、10%Pd/Cを10mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素2MPaを加え、さらに水素を0.6MPa圧入し、室温で全圧を2.6MPaとした。80℃に加熱し、反応器内の圧力は約3.3MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置し、得られた反応液は赤褐色を呈した均一溶液であり、この溶液をトルエンで抽出し、赤外吸収スペクトルを測定した。これによると、ジコバルトオクタカルボニル錯体の吸収である2040cm−1及びコバルトテトラカルボニルアニオンの特異吸収である1900cm−1において吸収の増大が見られた。
消費された一酸化炭素の量より、酢酸コバルトの80%以上がジコバルトオクタカルボニル錯体とコバルトテトラカルボニルアニオンになっているものと考えられる。
【0035】
実施例18
内容積50mLのオートクレーブにメタノールを10mL入れ、水酸化コバルト50mg、(コバルト含有量約60%)10%Pd/Cを5mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素2MPaを加え、さらに水素を0.6MPa圧入し、室温で全圧を2.6MPaとした。120℃に加熱し、反応器内の圧力は約3.3MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置し、得られた反応液は赤褐色を呈した均一溶液であり、この溶液をトルエンで抽出し、赤外吸収スペクトルを測定した。これによると、ジコバルトオクタカルボニル錯体の吸収である2040cm−1及びコバルトテトラカルボニルアニオンの特異吸収である1900cm−1において吸収の増大が見られた。このとき、メタノールに不溶な水酸化コバルトの結晶は完全に消失していた。
消費された一酸化炭素の量より、水酸化コバルトの80%以上がジコバルトオクタカルボニル錯体とコバルトテトラカルボニルアニオンになっているものと考えられる。
【0036】
実施例19
内容積50mLのオートクレーブにエタノールを25mL入れ、酢酸コバルト500mg、5%Rh/Cを10mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素3MPaを加え、さらに水素を1MPa圧入し、室温で全圧を4MPaとした。100℃に加熱し、反応器内の圧力は約4.4MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置し、得られた反応液は赤褐色を呈した均一溶液であり、この溶液をトルエンで抽出し、赤外吸収スペクトルを測定した。これによると、ジコバルトオクタカルボニル錯体の吸収である2040cm−1及びコバルトテトラカルボニルアニオンの特異吸収である1900cm−1において吸収の増大が見られた。
消費された一酸化炭素の量より、酢酸コバルトの80%以上がジコバルトオクタカルボニル錯体とコバルトテトラカルボニルアニオンになっているものと考えられる。
【0037】
実施例20
内容積50mLのオートクレーブにイソプロピルアルコールを20mL入れ、水酸化コバルト50mg、5%Pd/Cを5mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素2MPaを加え、さらに水素を0.6MPa圧入し、室温で全圧を2.6MPaとした。120℃に加熱し、反応器内の圧力は約3.3MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置した。溶媒を減圧留去し、COを飽和したヘキサンに溶かしてろ過後、ろ液からジコバルトオクタカルボニル錯体の赤褐色色結晶68mg得られた。この結晶の融点を測定すると、51℃であった。
【0038】
実施例21
内容積50mLのオートクレーブにメタノールを15mL入れ、酢酸コバルト250mg、5%Pd/Cを10mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素1.5MPaを加え、さらに水素を0.5MPa圧入し、室温で全圧を2MPaとした。80℃に加熱し、反応器内の圧力は約2.2MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置した。溶媒を減圧留去し、COを飽和したヘキサンに溶かしてろ過後、ろ液からジコバルトオクタカルボニル錯体の赤褐色色結晶126mgが得られた。この結晶の融点を測定すると、51℃であった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば光学活性な医薬品、農薬等の製造に必要なβ−ヒドロキシエステルを簡便に製造することができ、特に光学純度の高い光学活性β−ヒドロキシエステルを、反応系中でラセミ化を起こすことなく1工程で容易に合成することができる。
本発明によれば、ヒドロエステル化反応などに有用なジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質及び該錯体の結晶を低圧で、かつ容易に製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は光学活性な医薬品等の製造に有用なβ−ヒドロキシエステルの製法に関する。本発明は、また上記反応の触媒として有用なジコバルトオクタカルボニル錯体などの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
β−ヒドロキシエステルの製法に関して、ジコバルトオクタカルボニル錯体などのコバルトカルボニル化合物存在下、エポキシドを一酸化炭素及びメタノールなどのアルコールと反応させてβ−ヒドロキシエステルが得られる(以下この反応を、単にヒドロエステル化反応と称することもある。)ことは、多くの論文に報告されているが、選択性、収率が非常に悪く、また高圧条件(140atm)を必要とする(例えば、非特許文献1参照)。 またこの反応を効率よく進行させるために、ヒドロキシ基で置換されたピリジンを助触媒として用いることも、特許文献に記載されている(特許文献1)。
一方、ヒドロエステル化反応の触媒として用いられるジコバルトオクタカルボニル結晶のこれまでの製造方法では、煩雑な操作や高温高圧を必要とした。ジコバルトオクタカルボニル自体を触媒量存在させることで、比較的低い圧力でジコバルトオクタカルボニルが製造できるという報告もある(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】
欧州特許出願公開第577206号明細書
【特許文献2】
特公昭55−22418号公報
【非特許文献1】
日本化学会誌,1979年,第5巻,p.635
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
β−ヒドロキシエステルを製造するためのこれらの反応を工業的に行う際に用いられるヒドキシピリジン類は高価であり、工業的に大量に入手することも困難である。
また、ジコバルトオクタカルボニルを製造すにはジコバルトオクタカルボニルを触媒量存在させることで、50kg/cm2以下の圧力で行えるが、工業化を考慮した場合、ジコバルトオクタカルボニルそのものを安価で工業的に入手することが困難であるという問題がある。
従って、本発明が解決しようとする課題は、より簡便なヒドロエステル化反応を用いて、β−ヒドロキシエステルを製造することであり、他の課題は、この反応に触媒として用いられるジコバルトオクタカルボニル錯体及びそれを含有する物質の簡便な製法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、ヒドロエステル化反応によりβ−ヒドロキシエステルを製造するに際し、より安価で容易に入手できるアゾール類を助触媒に用いることで、この反応の選択性、収率がともによく、かつ光学純度が低下することなく反応が進行することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、コバルトカルボニル化合物及びアゾール類存在下、エポキシドを一酸化炭素及びアルコールと有機溶媒中で反応させることを特徴とするβ−ヒドロキシエステルの製造法に関する。
【0006】
本発明は、また上記反応の触媒として有用なジコバルトオクタカルボニル錯体及びそれを含有する物質の簡便な製法に関する。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の金属を触媒として用いることにより、従来公知の方法に比べ、低い圧力でジコバルトオクタカルボニル錯体を製造できることを見出した。
即ち、本発明は、第8〜10族の遷移金属から選ばれる金属を触媒として用い、有機溶媒中コバルト化合物を一酸化炭素及び水素の混合ガスと反応させることを特徴とするジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質及びジコバルトオクタカルボニル錯体の製造法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のβ−ヒドロキシエステルの製造法につき、以下にに詳しく説明する。
本反応で用いられる基質のエポキシドは特に制限されないが、収率良く反応を進行させるには、1,2−エポキシドが好ましい。代表的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシへキサン、2,3−エポキシプロピルベンゼンなどのアルキル基、アラルキル基で置換されたエポキシド、エチルグリシジルエーテルやベンジルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンなどが挙げられる。
【0008】
本反応で助触媒として用いられるアゾール類としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−アセチルイミダゾールなどの無置換若しくは置換イミダゾール、ピラゾール、1−メチルピラゾールなどの無置換若しくは置換ピラゾール、トリアゾール、テトラゾールなどのように窒素原子を3個以上有する5員環複素環、チアゾール、オキサゾールなどの窒素以外に硫黄や酸素原子を含む5員環複素環、ベンゾイミダゾール、インダゾールなどのベンゼン環などがアゾール環に縮合した縮合環等が挙げられる。中でも、無置換若しくは置換イミダゾールが最もよい結果を与える。
本反応で用いられるアゾール類の割合は、コバルト金属原子に対して、0.5〜10当量添加することで反応は効率よく進行するが、好ましくは、1〜5当量である。
【0009】
本反応で触媒として用いられるコバルトカルボニル化合物としては、ヒドロエステル化反応で用いられる従来公知のコバルトカルボニル化合物が用いられる。例えば、ジコバルトオクタカルボニル、テトラコバルトドデカカルボニル、テトラカルボニルコバルト酸ナトリウム、コバルトヒドロカルボニル、ヘキサカルボニルビス(トリ−n−ブチルホスフィン)二 コバルトが挙げられる。
本反応では、ジコバルトオクタカルボニル錯体が好ましく用いられる。ジコバルトオクタカルボニル錯体は公知の方法で製造されたもの、或いは下記の本発明の方法で製造されるものでもよい。その使用量はエポキシド1モルに対して0.005〜0.2モル用いることで、反応は容易に進行するが、好ましくは、0.01〜0.1モルである。
また、下記の本発明の方法で製造されるジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質を用いることが特に好ましい。
【0010】
本反応で用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロパノールなどの1級及び2級の脂肪族アルコールやフェネチルアルコール、ベンジルアルコールなどのアリール基が置換した1級及び2級のアルコールが用いられる。好ましくは、1級のアルコールである。
上記のアルコールをそのまま溶媒として使用してもよいが、反応体であるアルコールと次に示す溶媒との任意の混合溶媒を用いてもよい。使用する溶媒としては、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系の溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系の溶媒を用いることができる。触媒として、ジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質を用いる場合、これを溶解する溶媒、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒中で行なうのが特に好ましい。
【0011】
本反応に用いられる一酸化炭素の圧力は0.5〜10MPaであり、好ましくは1〜6MPaである。
反応温度は、10〜140℃がよく、好ましくは40〜80℃である。
本反応では、反応体に光学活性なエポキシドを用いても、光学純度が低下することなく光学活性なβ−ヒドロキシエステルが得られる。
本反応を、プロピレンオキシドとメタノールを例にとり、反応式で示すと、以下の通りである。
【化1】
【0012】
本反応の生成物であるβ−ヒドロキシエステルは、反応終了後、溶媒を留去してから減圧蒸留することにより容易に精製することができる。
特に好ましい方法は、下記本発明の方法で製造されるジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質を触媒とし、アゾール類、特に無置換若しくは置換イミダゾールを助触媒として用い、エポキシド、アルコール及び一酸化炭素を加え、反応せしめ、目的物質たるβ−ヒドロキシエステルを製造する方法が工業的見地から最も好ましい方法である。
【0013】
本発明は、また上記反応の触媒として有用なジコバルトオクタカルボニル錯体及びそれを含有する物質の簡便な製法に関する。
本発明は、第8〜10族の遷移金属から選ばれる金属を触媒として用い、有機溶媒中コバルト化合物を一酸化炭素及び水素の混合ガスと反応させることを特徴とするジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質及びジコバルトオクタカルボニル錯体の製造法に関する。
【0014】
本発明のジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質及びジコバルトオクタカルボニル錯体の製造法をさらに詳しく説明する(以下この発明方法を便宜上、本コバルトのカルボニル化反応と称することもある。)。
本コバルトのカルボニル化反応で触媒として用いられる金属は第8〜10族の遷移金属から選ばれる金属であり、好ましい金属としては、Ru、Rh、Pd、Ptが挙げられる。また、これらの金属触媒は、金属単体でも活性炭やアルミナに担持されているものでもよい。好ましくは、5〜10%Pd/Cや5%Rh/C、5〜10%Pt/Cであるが、収率及び経済性を考慮すると5〜10%Pd/Cがより好ましい。使用量は、コバルト金属原子1モルに対して1〜30g、好ましくは、3〜10gである。
本コバルトのカルボニル化反応で用いられるコバルト化合物は、水酸化コバルト、炭酸コバルト、酸化コバルト又はこれらの混合物などの無機コバルト化合物や、酢酸コバルト、安息香酸コバルトなどの有機酸のコバルト塩である。好ましくは、酢酸コバルトや水酸化コバルトである。
【0015】
本コバルトのカルボニル化反応で使用される溶媒としては特に制限されないが、1,4−ジオキサン、THF、1,2−ジメトキシエタンなどエーテル系の溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系の溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系の溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノ−ル、n−ブタノール等のアルコール系の溶媒を使用できる。好ましくは、アルコール系の溶媒である。
反応温度は、コバルト化合物の種類及び触媒の種類にもよるが、40〜160℃で目的物を製造でき、好ましくは70〜130℃である。
コバルト化合物と反応させる一酸化炭素及び水素の混合ガスはモル比で1:1〜1:0.2の範囲で十分であり、反応系内でその圧力は5MPa以下、好ましくは0.5〜3MPaである。
【0016】
本コバルトのカルボニル化反応溶液中には、少なくとも大部分のジコバルトオクタカルボニル錯体と少量のコバルトテトラカルボニルアニオンが存在する。これを濃縮、精製することなく、前記のβ−ヒドロキシエステルを製造する本発明の方法に、溶液のまま、触媒として用いることが特に好ましい。
本コバルトのカルボニル化反応後の溶液を濃縮し、一酸化炭素を飽和させたへキサンから再結晶することにより、ジコバルトオクタカルボニル錯体の赤褐色の結晶を得ることができる。
勿論、この錯体結晶を前記本発明のβ−ヒドロキシエステルを製造する際の触媒として用い得る。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
実施例1
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.9g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、55℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを3.1g(92%、>99%ee)得た。また、その沸点は80℃ / 0.6 mmHgであった。
同条件下で助触媒イミダゾールを用いない反応系では、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルは8%しか得られなかった。
【0019】
実施例2
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したメタノールを10mL入れ、1−メチルイミダゾール66mg(0.8 mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.9g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を5MPa加圧し、55℃で6時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルを2.6g(85%、>99%ee)得た。
【0020】
実施例3
(R) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL、THFを10mL入れ、1−アセチルイミダゾール88mg(0.8 mmol)、(R)−エピクロロヒドリン1.9g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニルを137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、50℃で10時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを2.8g(83%、>99%ee)得た。
【0021】
実施例4
(S) −4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL、トルエンを10mL入れ、4−メチルイミダゾール66mg(0.8 mmol)、(S)―エチルグリシジルエーテル2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を3.5MPa加圧し、60℃で9時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4―エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを3.0g(85%、>99%ee)得た。
【0022】
実施例5
(R) −4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸ブチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したブタノールを20mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(R)−エチルグリシジルエーテル2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で7時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸ブチルを3.7g(90%、>99%ee)得た。
【0023】
実施例6
(S) −3−ヒドロキシヘプタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL、酢酸エチルを10mL入れ入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−1,2−エポキシヘキサン2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を3MPa加圧し、65℃で6時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−3−ヒドロキシヘプタン酸エチルを2.92g(85%、>99%ee)得た。
【0024】
実施例7
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸イソプロピルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したイソプロパノールを20mL、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.9g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、55℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸イソプロピルを2.7g(80%、>99%ee)得た。
【0025】
実施例8
(S) −3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを25mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−プロピレンオキシド1.2g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を3.5MPa加圧し、60℃で4時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の3−ヒドロキシブタン酸エチルを2.4g(92%、>99%ee)得た。
【0026】
実施例9
(S) −4−フェノキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したメタノールを20mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)―フェニルグリシジルエーテル3.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、60℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4−フェノキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルを3.8g(90%、>99%ee)得た。
【0027】
実施例10
(R) −4−ベンジロキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したメタノールを15mL、THFを10mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(R)−ベンジルグリシジルエーテル3.3g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で7時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−ベンジロキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルを4.0g(89%、>99%ee)得た。
【0028】
実施例11
(S) −4−メトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL、トルエンを10mL入れ、イミダゾール55mg(0.8 mmol)、(S)−メチルグリシジルエーテル1.8g(20 mmol,>99%ee)を加えた。次いで、結晶状のジコバルトオクタカルボニル錯体を137mg(0.4 mmol)加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を3.5MPa加圧し、60℃で5時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−4−メトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを3.0g(92%、>99%ee)得た。
【0029】
実施例12
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したエタノールを10mL入れ、酢酸コバルト四水和物250mg(1mmol)、10%Pd/C 10mg加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換した後、一酸化炭素1.5MPa、水素1MPaをこの順に圧入し、80℃、3時間加熱した。3時間後、室温に戻してから、混合ガスを放出し、ジコバルトオクタカルボニル錯体含有溶液を得、これにイミダゾール68mg(1mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.8g(20 mmol,>99%ee)を加えた。蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、55℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを3.1g(92%、>99%ee)得た。また、その沸点は80℃ / 0.6 mmHgであった。
同条件下で助触媒イミダゾールを用いない反応系では、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルは8%しか得られなかった。
【0030】
実施例13
(S) −3−ヒドロキシヘプタン酸エチルの製造:
実施例12と同様の方法で触媒を還元した後、イミダゾール68mg(1mmol)、(S)―エポキシヘキサン2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で10時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(S)−3−ヒドロキシヘプタン酸エチルを2.92g(85%、>99%ee)得た。
【0031】
実施例14
(R) −4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸ブチルの製造:
実施例12と同様の方法で触媒を還元した後、イミダゾール68mg(1mmol)、(R)―エチルグリシジルエーテル2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で7時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸ブチルを3.67g(90%、>99%ee)得た。
【0032】
実施例15
(S) −4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸イソプロピルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したイソプロパノールを10mL、THF10mL入れ、酢酸コバルト四水和物250mg(1mmol)、10%Rh/C 10mg加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換した後、一酸化炭素3MPa、水素1MPaをこの順に圧入し、100℃、3時間加熱した。3時間後、室温に戻してから、混合ガスを放出し、ジコバルトオクタカルボニル錯体含有溶液を得、これにイミダゾール68mg(1mmol)、(S)−エピクロロヒドリン1.8g(20 mmol,>99%ee)を加えた。蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、55℃で8時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸イソプロピルを3.1g(92%、>99%ee)得た。
【0033】
実施例16
(S) −4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの製造:
内容積50mLのオートクレーブに脱気したメタノール10mL、トルエン10mL入れ、水酸化コバルト(Co含有量約60%)100mg(1mmol)、10%Pd/C 10mg加え、蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換した後、一酸化炭素2.5MPa、水素0.5MPaをこの順に圧入し、120℃、2時間加熱した。2時間後、室温に戻してから、混合ガスを放出し、ジコバルトオクタカルボニル錯体含有溶液を得、これにイミダゾール68mg(1mmol)、(R)−エチルグリシジルエーテル2.0g(20 mmol,>99%ee)を加えた。蓋をした後、一酸化炭素1MPaで反応容器を3回置換し、最後に一酸化炭素を4MPa加圧し、65℃で7時間反応させた。反応容器を室温に戻し、減圧下で溶媒を留去した。残留物をそのままクーゲルロール蒸留し、無色油状の(R)−4−エトキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルを3.67g(90%、>99%ee)得た。
【0034】
実施例17
内容積50mLのオートクレーブにエタノールを10mL入れ、酢酸コバルト250mg、10%Pd/Cを10mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素2MPaを加え、さらに水素を0.6MPa圧入し、室温で全圧を2.6MPaとした。80℃に加熱し、反応器内の圧力は約3.3MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置し、得られた反応液は赤褐色を呈した均一溶液であり、この溶液をトルエンで抽出し、赤外吸収スペクトルを測定した。これによると、ジコバルトオクタカルボニル錯体の吸収である2040cm−1及びコバルトテトラカルボニルアニオンの特異吸収である1900cm−1において吸収の増大が見られた。
消費された一酸化炭素の量より、酢酸コバルトの80%以上がジコバルトオクタカルボニル錯体とコバルトテトラカルボニルアニオンになっているものと考えられる。
【0035】
実施例18
内容積50mLのオートクレーブにメタノールを10mL入れ、水酸化コバルト50mg、(コバルト含有量約60%)10%Pd/Cを5mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素2MPaを加え、さらに水素を0.6MPa圧入し、室温で全圧を2.6MPaとした。120℃に加熱し、反応器内の圧力は約3.3MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置し、得られた反応液は赤褐色を呈した均一溶液であり、この溶液をトルエンで抽出し、赤外吸収スペクトルを測定した。これによると、ジコバルトオクタカルボニル錯体の吸収である2040cm−1及びコバルトテトラカルボニルアニオンの特異吸収である1900cm−1において吸収の増大が見られた。このとき、メタノールに不溶な水酸化コバルトの結晶は完全に消失していた。
消費された一酸化炭素の量より、水酸化コバルトの80%以上がジコバルトオクタカルボニル錯体とコバルトテトラカルボニルアニオンになっているものと考えられる。
【0036】
実施例19
内容積50mLのオートクレーブにエタノールを25mL入れ、酢酸コバルト500mg、5%Rh/Cを10mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素3MPaを加え、さらに水素を1MPa圧入し、室温で全圧を4MPaとした。100℃に加熱し、反応器内の圧力は約4.4MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置し、得られた反応液は赤褐色を呈した均一溶液であり、この溶液をトルエンで抽出し、赤外吸収スペクトルを測定した。これによると、ジコバルトオクタカルボニル錯体の吸収である2040cm−1及びコバルトテトラカルボニルアニオンの特異吸収である1900cm−1において吸収の増大が見られた。
消費された一酸化炭素の量より、酢酸コバルトの80%以上がジコバルトオクタカルボニル錯体とコバルトテトラカルボニルアニオンになっているものと考えられる。
【0037】
実施例20
内容積50mLのオートクレーブにイソプロピルアルコールを20mL入れ、水酸化コバルト50mg、5%Pd/Cを5mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素2MPaを加え、さらに水素を0.6MPa圧入し、室温で全圧を2.6MPaとした。120℃に加熱し、反応器内の圧力は約3.3MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置した。溶媒を減圧留去し、COを飽和したヘキサンに溶かしてろ過後、ろ液からジコバルトオクタカルボニル錯体の赤褐色色結晶68mg得られた。この結晶の融点を測定すると、51℃であった。
【0038】
実施例21
内容積50mLのオートクレーブにメタノールを15mL入れ、酢酸コバルト250mg、5%Pd/Cを10mg加えた。反応器内の空気を一酸化炭素で置換した後、一酸化炭素1.5MPaを加え、さらに水素を0.5MPa圧入し、室温で全圧を2MPaとした。80℃に加熱し、反応器内の圧力は約2.2MPaとなり、加熱を3時間続けた。3時間後加熱をやめ、室温まで放置した。溶媒を減圧留去し、COを飽和したヘキサンに溶かしてろ過後、ろ液からジコバルトオクタカルボニル錯体の赤褐色色結晶126mgが得られた。この結晶の融点を測定すると、51℃であった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば光学活性な医薬品、農薬等の製造に必要なβ−ヒドロキシエステルを簡便に製造することができ、特に光学純度の高い光学活性β−ヒドロキシエステルを、反応系中でラセミ化を起こすことなく1工程で容易に合成することができる。
本発明によれば、ヒドロエステル化反応などに有用なジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質及び該錯体の結晶を低圧で、かつ容易に製造することができる。
Claims (16)
- 触媒としてコバルトカルボニル化合物及び助触媒としてアゾール類の存在下、エポキシドとアルコールと一酸化炭素とを有機溶媒中で反応させることを特徴とするβ−ヒドロキシエステルの製造法。
- アゾール類が置換若しくは無置換イミダゾールである請求項1に記載の製造法。
- コバルトカルボニル化合物がジコバルトオクタカルボニル錯体又はジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質である請求項1に記載の製造法。
- エポキシドが1,2−エポキシドである請求項1に記載の製造法。
- 1,2−エポキシドが光学活性エピクロロヒドリンである請求項4に記載の製造法。
- アルコールが脂肪族アルコールである請求項1に記載の製造法。
- 脂肪族アルコールが炭素数6以下の1級又は2級アルコールである請求項6に記載の製造法。
- コバルト化合物を、第8〜10族の遷移金属から選ばれる金属触媒、一酸化炭素及び水素の混合ガスで還元し、得られるジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質を触媒とし、アゾール類を助触媒として用い、エポキシドを一酸化炭素、アルコールと有機溶媒中で反応させることを特徴とするβ−ヒドロキシエステルの製造法。
- 第8〜10族の遷移金属から選ばれる金属を触媒として用い、有機溶媒中コバルト化合物を一酸化炭素及び水素の混合ガスと反応させることを特徴とするジコバルトオクタカルボニル錯体含有物質の製造法。
- 反応を5MPa以下の圧力下行なう請求項9に記載の製造法。
- 金属触媒がPd、Rh、Pt又はRuである請求項8又は9に記載の製造法。
- 金属触媒が活性炭に担持されている請求項8又は9に記載の製造法。
- 活性炭に担持されている金属触媒がPd/Cである請求項12に記載の製造法。
- コバルト化合物が、酢酸コバルト又は水酸化コバルトである請求項9又は10に記載の製造法。
- 第8〜10族の遷移金属から選ばれる金属を触媒として用い、有機溶媒中コバルト化合物を一酸化炭素及び水素の混合ガスと反応させ、ついで反応溶液からジコバルトオクタカルボニル錯体を単離することを特徴とするジコバルトオクタカルボニル錯体の製造法。
- 金属触媒がPd、Rh、Pt又はRuである請求項15に記載の製造法。
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JP2008189553A (ja) * | 2007-01-31 | 2008-08-21 | Kuraray Co Ltd | γ―ブチロラクトン誘導体の製造方法 |
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