[離型フィルム]
本発明の離型フィルムは、基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも一方の面に形成した離型層とを備えており、この離型層は、被転写体に対する剥離性を大きく向上させるため、環状オレフィン系樹脂と、高級脂肪酸系離型剤とを含んでいる。
(基材フィルム)
基材フィルムを形成する樹脂は、離型層を支持可能である限り特に制限されず、熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、例えば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−C3−6オレフィン共重合体など;ポリプロピレン系樹脂、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのプロピレン−α−C2−6オレフィン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(ポリアルキレンアリレートなどのホモポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリC2−4アルキレンC6−10アリレートなど;アルキレンアリレート単位を含むコポリエステル、例えば、C2−4アルキレンC6−10アリレート単位を75〜98モル程度の割合で含み、共重合性単量体が、エチレングリコール、ブチレングリコールなどのC2−8アルカンジオール、アジピン酸などのC6−10アルカンジカルボン酸やシクロC8−12アルカンジカルボン酸などであるコポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ポリアミド系樹脂など)、セルロースアシレート(セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースC2−4アシレートなど)、スチレン系樹脂、ビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、ポリカーボネート系樹脂などであってもよく、熱硬化性樹脂、例えば、ポリイミド系樹脂などであってもよい。これらの樹脂成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。基材フィルムは単層フィルム又は積層フィルムであってもよい。基材フィルムとしては、通常、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、アミド系樹脂フィルム、セルロースアシレートフィルムを用いる場合が多い。
基材フィルムは、強度を向上する点から、延伸(例えば、一軸又は二軸延伸)フィルムであってもよい。基材フィルムの表面は、離型層との密着性を向上させる点から、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理などを施してもよい。これらの表面処理のうち、コロナ放電処理が好ましい。
ナノインプリントなどの転写工程に供する場合、基材フィルムは、高い引っ張り弾性率を有するのが好ましく、例えば、JIS K 7127による引っ張り弾性率が、3〜6.5GPa、好ましくは3.5〜6GPa程度であるのが好ましい。このような代表的な基材フィルムは、PET、PENなどのホモ又はコポリC2−4アルキレンC6−10アリレート系フィルム(特に、二軸延伸フィルム)である。
基材フィルムの厚みは、1μm〜1.5mm程度の範囲から選択でき、15〜500μm、好ましくは30〜300μm(例えば、50〜250μm)程度であってもよい。なお、ナノインプリントなどの転写工程に供する場合、離型層を確実に支持するため、基材フィルムの厚みは、20〜250μm(例えば、30〜200μm)、好ましくは50〜180μm程度であってもよい。
なお、基材フィルムは、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、帯電防止剤、結晶核剤などの慣用の添加剤を含んでいてもよい。
(離型層)
環状オレフィン系樹脂は、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンを少なくとも重合成分とする樹脂である。環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。また、環状オレフィンは、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−5アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)、アルケニル基(例えば、プロペニル基などのC2−10アルケニル基など)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC5−10シクロアルケニル基など)、アルキリデン基(例えば、エチリデン基などのC2−10アルキリデン基、好ましくはC2−5アルキリデン基など)など]、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1−10アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基などのC2−5アシル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−10アルコキシ−カルボニル基)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基(=O)、複素環基(ピリジル基などの窒素原子含有複素環基など)などが例示できる。環状オレフィンは、これらの置換基を単独で又は二種以上組み合わせて有していてもよい。
具体的な環状オレフィンとしては、単環式オレフィン[例えば、シクロアルケン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロC3−10アルケン)、シクロアルカジエン(例えば、シクロペンタジエンなどのシクロC3−10アルカジエン)など]、二環式オレフィン{例えば、ビシクロアルケン[例えば、ノルボルネン類(例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5又は5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2−ノルボルネン、7−オキソ−2−ノルボルネンなど)などのC6−20ビシクロアルケン]、ビシクロアルカジエン[例えば、ノルボルナジエン類(例えば、2,5−ノルボルナジエン、5−メチル−2,5−ノルボルナジエン、5−シアノ−2,5−ノルボルナジエン、5−メトキシカルボニル−2,5−ノルボルナジエン、5−フェニル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2,5−ノルボルナジエン、7−オキソ−2−ノルボルナジエン)など]など}、三環式オレフィン{例えば、トリシクロアルケン[例えば、ジヒドロジシクロペンタジエン類(ジヒドロジシクロペンタジエンなど)などのC6−25トリシクロアルケン]、トリシクロアルカジエン[例えば、ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなど)、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエンなどのC7−25トリシクロアルカジエン]など}、四環以上の多環式オレフィン{例えば、四環式オレフィン[例えば、テトラシクロアルケン(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどのC8−30テトラシクロアルケン)など]、五環式オレフィン[例えば、ペンタシクロアルカジエン(例えば、トリシクロペンタジエンなどのC10−35ペンタシクロアルカジエン)など]、六環式オレフィン[例えば、ヘキサシクロアルケン(例えば、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンなどのC12−40ヘキサシクロアルケン)など]など}が挙げられる。
これらの環状オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィンのうち、多環式オレフィン、例えば、二乃至六環式オレフィン、特に、二環式オレフィン(ノルボルネン類などのC7−12ビシクロアルケンなど)、三環式オレフィン(ジシクロペンタジエン類などのC8−16トリシクロアルカジエンなど)などが好ましい。
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンの単独重合体であってもよいが、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体であるのが好ましい。共重合性単量体としては、鎖状オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどの鎖状C2−10オレフィンなど)、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、共役ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど)などが例示できる。これらの共重合性単量体も、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの共重合性単量体のうち、鎖状オレフィン、特にα−鎖状C2−8オレフィン(例えば、エチレンなどのα−鎖状C2−4オレフィン)が好ましい。
共重合性単量体(例えば、エチレンなどの鎖状オレフィン)の割合は、全単量体(環状オレフィンと共重合性単量体との合計)に対して、例えば、1〜95モル%程度の広い範囲から選択でき、通常、共重合性単量体の割合は、25〜95(モル%)、好ましくは30〜90(モル%)、さらに好ましくは35〜85(モル%)程度であってもよく、45〜80(モル%)程度であってもよい。共重合性単量体の割合が多すぎると、耐熱性が低下しやすい。なお、環状オレフィンの含有量は、13C−NMR測定して算出でき、ノルボルネン類の単位の含有量は、特開2009−3439号公報に記載の方法に従って測定できる。
共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体などであってもよい。代表的な環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体[二乃至六環式オレフィンなどの多環式オレフィン(ノルボルネン骨格を有する単量体、例えば、C7−10ビシクロアルケンなどのノルボルネン類、C10−14トリシクロアルカジエンなどのジシクロペンタジエン類など)と、α−鎖状オレフィン(例えば、エチレンなどのα−鎖状C2−4オレフィン)との共重合体など]などが挙げられる。環状オレフィン系樹脂としては、ノルボルネン類とエチレンとの共重合体を利用する場合が多い。
環状オレフィン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、3,000〜300,000、好ましくは5,000〜250,000、さらに好ましくは10,000〜200,000(特に、20,000〜150,000)程度である。分子量が小さすぎると、機械的強度が低下して脆くなり、大きすぎると、粘度が大きくなり塗布により離型層(特に薄膜離型層)を形成するのが困難となる。
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜240℃程度の範囲から選択でき、耐熱性の点から、例えば、70〜215℃、好ましくは85〜235℃、さらに好ましくは105〜230℃、特に115〜225℃程度である。本発明では、環状オレフィン系樹脂のTgが高いため、ナノインプリントなどの転写作業を広い可使温度域で行うことができる。
環状オレフィン系樹脂の引っ張り弾性率は、例えば、1500〜4000MPa、好ましくは1700〜3700MPa、さらに好ましくは2000〜3500MPa、特に2200〜3500MPa程度である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計「セイコーインスツル(株)製、EXSTAR6000DSC」を用い、20℃/分の昇温速度で、JIS K 7121に規定するプラスチックの転移温度の測定に準じて測定でき、引っ張り弾性率は、ISO 527−2/1Aに準じて測定できる(以下、同じ)。
環状オレフィン系樹脂は、慣用の重合方法、例えば、付加重合(チーグラー型触媒を用いた付加重合、メタロセン系触媒を用いた付加重合など)により得られた樹脂であってもよく、開環重合(メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合など)により得られた樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂(例えば、開環メタセシス重合により得られた樹脂など)は、水素添加された水添樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂は、結晶性又は非晶性樹脂であってもよく、通常、非晶性樹脂である。
本発明では、主たる成分としての環状オレフィン系樹脂と組み合わせて、離型剤として高級脂肪酸系離型剤を用いる。高級脂肪酸系離型剤は、多価アルコール高級脂肪酸エステル及び高級脂肪酸アミドから選択できる。
多価アルコール高級脂肪酸エステルとしては、環状オレフィン系樹脂と共に離型性を向上できる限り特に制限されない。多価アルコール高級脂肪酸エステルは、高級脂肪酸と多価アルコール成分とで形成され、高級脂肪酸アミドは高級脂肪酸とアンモニア及び/又はアミンとで形成できる。
多価アルコール成分としては、3以上のヒドロキシル基を有していれば特に制限されず、アルカントリオール(グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなど)、アルカンテトラオール(ペンタエリスリトールなど)、アルカンヘキサオール(ジペンタエリスリトール、ショ糖、ソルビトールなど)、これらのアルキレンオキサイド付加物(C2−4アルキレンオキサイド付加物など)などが例示できる。これらの多価アルコール成分は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの多価アルコール成分のうち、グリセリンなどのアルカントリオール、ペンタエリスリトールなどのアルカンテトラオール、ジペンタエリスリトールなどのアルカンヘキサオールが好ましい。
高級脂肪酸としては、高級飽和脂肪酸[例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などのモノカルボン酸;アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸、ヒドロキシステアリン酸などのオキシカルボン酸など]、高級不飽和脂肪酸[例えば、オレイン酸、エルカ酸、エルシン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などのモノカルボン酸など]などが例示できる。これらの高級脂肪酸は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。高級脂肪酸は、高級飽和脂肪酸、例えば、C10−30飽和脂肪酸、好ましくはC12−28飽和脂肪酸、さらに好ましくはC14−26飽和脂肪酸(例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸などのC16−22飽和脂肪酸)を含んでいるのが好ましい。また、高級脂肪酸(ステアリン酸などのC14−26飽和モノカルボン酸など)は、ジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC6−20アルカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのC7−12シクロアルカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸などのC8−14アレーンジカルボン酸)と併用してもよい。ジカルボン酸としてはC6−12アルカンジカルボン酸を用いる場合が多い。なお、高級脂肪酸は、ヤシ油脂肪酸などのように、炭素数の異なる複数の脂肪酸の混合物であってもよい。
多価アルコール高級脂肪酸エステルにおいて、多価アルコールのヒドロキシル基の一部又は全部がエステル化されている。多価アルコール高級脂肪酸エステルは、多価アルコールの価数に応じて、例えば、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ヘキサエステルなどであってもよい。
代表的な多価アルコール高級脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、例えば、グリセリンステアリン酸エステル、グリセリンヒドロキシステアリン酸エステルなどのグリセリンC10−30飽和脂肪酸エステル(特に、グリセリンC14−26飽和脂肪酸エステル);ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、例えば、ペンタエリスリトールステアリン酸エステルなどのペンタエリスリトールC10−30飽和脂肪酸エステル(特に、ペンタエリスリトールC14−26飽和脂肪酸エステル);ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、例えば、ジペンタエリスリトールステアリン酸エステルなどのジペンタエリスリトールC10−30飽和脂肪酸エステル(特に、ジペンタエリスリトールC14−26飽和脂肪酸エステル);ショ糖脂肪酸エステル、例えば、ショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖C10−30飽和脂肪酸エステルなどが挙げられる。また、多価アルコールと高級脂肪酸とアルカンジカルボン酸とのエステル、例えば、ジペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステルなどのアルカントリオール乃至テトラオールとC6−12アルカンジカルボン酸とC10−30飽和脂肪酸(特にC14−26飽和脂肪酸)とのエステルなども使用できる。
多価アルコール高級脂肪酸エステルは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。高級脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが好ましく使用され、脂肪酸は、通常、飽和脂肪酸である場合が多い。
多価アルコール高級脂肪酸エステルの具体例としては、リケマールAZ−01、リケマールB−100、リケマールHC−100、リケマールHC−200、リケマールS−95、リケマールS−200、リケマールTG−12(グリセリントリ−18−ヒドロキシステアレート)、リケスターEW−100、リケスターEW−200(ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル)、リケスターEW−250、リケスターEW−400(ペンタエリスリトールフルステアレート)、リケスターEW−440A(ペンタエリスリトールステアリン酸フルエステルとペンタエリスリトールパルミチン酸フルエステルとの1:1混合物)、リケスターHT−10(以上、理研ビタミン(株)製)などが例示できる。
高級脂肪酸アミドとしては、例えば、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミドなどのC10−30飽和脂肪酸アミド(特に、C14−26脂肪酸アミド);オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどのC10−30不飽和脂肪酸アミド(特に、C14−26脂肪酸アミド);モノアルカノールアミンと飽和又は不飽和脂肪酸とのアミド、例えば、カプリン酸エタノールアミド、ラウリン酸エタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ミリスチン酸エタノールアミド、ヤシ油脂肪酸エタノールアミドなどのN−(ヒドロキシC2−10アルキル)−C8−30飽和脂肪酸アミド(好ましくはN−(ヒドロキシC1−6アルキル)−C10−26飽和脂肪酸アミド、オレイン酸エタノールアミドなどのN−(ヒドロキシC2−10アルキル)−C8−30アルケンカルボン酸アミド;ジアルカノールアミンと飽和又は不飽和脂肪酸とのアミド、例えば、カプリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなどのジC1−10アルカノールアミン(好ましくはジC1−6アルカノールアミン)とC8−30飽和脂肪酸とのアミド、オレイン酸ジエタノールアミドなどのジC2−10アルカノールアミン(好ましくはジC1−6アルカノールアミン)とC8−30不飽和脂肪酸とのアミド;アルキレンビス脂肪酸アミド[N,N’−メチレンビス(ラウリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ラウリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ミリスチン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ステアリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(オレイン酸アミド)などのN,N’−C1−12アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C8−30飽和又は不飽和脂肪酸アミド)などが挙げられる。
脂肪酸アミドも、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい脂肪酸アミドは、C8−30脂肪酸(例えば、C8−26脂肪酸など)とアミン類(例えば、モノ又はジC2−10アルカノールアミン)とのアミド[例えば、N−(ヒドロキシC2−10アルキル)−C8−30飽和脂肪酸アミド(特に、N−(ヒドロキシC2−6アルキル)−C8−30飽和脂肪酸アミド)、ジC2−10アルカノールアミンとC8−30飽和脂肪酸とのアミド(特に、N,N−ジ(ヒドロキシC2−6アルキル)−C8−30飽和脂肪酸アミド)など]などが挙げられる。
多価アルコール高級脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの高級脂肪酸系離型剤のうち、環状オレフィン系樹脂との組合せにおいて、より有効な多価アルコール高級脂肪酸エステルを用いる場合が多い。
高級脂肪酸系離型剤(特に、多価アルコール高級脂肪酸エステル)は、環状オレフィン系樹脂に対する相溶性が高いだけでなく、添加量が微量であっても離型性を向上でき、透明性に優れ、環状オレフィン系樹脂の特性(強度など)を低下させることもない。そのため、高級脂肪酸系離型剤(特に、多価アルコール高級脂肪酸エステル)の割合は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、広い範囲から選択でき、例えば、25重量部以下(例えば、0.01〜25重量部)程度であってもよく、通常、0.01〜20重量部(例えば、0.02〜15重量部)、好ましくは0.025〜12重量部(例えば、0.03〜10重量部)、さらに好ましくは0.04〜8重量部(例えば、0.05〜5量部)程度であってもよい。また、離型剤(多価アルコール高級脂肪酸エステル)の割合は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、少量、例えば、0.02〜3重量部、好ましくは0.025〜2重量部(例えば、0.03〜1.5重量部)、さらに好ましくは0.04〜1.2重量部(例えば、0.05〜1量部)程度であってもよい。
離型層の厚み(平均厚み)は、離型性の観点からは、例えば、0.01〜3μm(例えば、0.05〜1.5μm)程度のように薄くてもよく、離型層をモールドとして利用する場合には、被転写層又は被転写体の形態(パターン)に応じて種々の厚みに形成できる。そのため、離型層の厚み(平均厚み)は、広い範囲、例えば、0.01〜300μm(例えば、0.1〜250μm)、好ましくは0.5〜200μm、さらに好ましくは1〜100μm程度の範囲から選択できる。なお、離型層に凹凸部を形成した離型フィルムをナノインプリントのモールドとして利用する場合、離型層の厚み(平均厚み)は、例えば、0.2〜10μm、好ましくは0.4〜8μm(例えば、0.5〜7μm)、さらに好ましくは0.6〜5μm程度であってもよい。
離型層は不透明又は半透明であってもよいが、環状オレフィン系樹脂と高級脂肪酸系離型剤との相溶性が高いためか、透明(例えば、無色透明)である場合が多い。
離型層は、慣用の方法、例えば、基材フィルムの少なくとも一方の面に、塗布剤(例えば、固形分の主成分としての環状オレフィン系樹脂とともに、高級脂肪酸系離型剤と溶媒とを含む塗布剤)を塗布又は流延することにより形成できる。前記塗布剤(又は塗布液)において、溶媒としては、炭化水素(トルエンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素など)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルムなど)、これらの混合溶媒などが例示できる。
塗布方法としては、慣用の方法、例えば、スピンコート、バーコート、ロールコート、カーテンコート、ディップコート、スプレーコート、グラビアコート法などが例示できる。なお、塗布又は流延後は、必要により乾燥(自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥など)してもよく、必要であれれば、塗布剤を複数回に亘り塗布してもよい。
離型層の表面は、平坦であってもよく、複数の凹凸部が形成されていてもよい。複数の凹凸部は、ランダムな形態で形成してもよいが、通常、規則的又は周期的なパターンの形態で形成されている。凹凸パターンは、特に制限されず、被転写材(又は被転写層)の種類に応じて選択でき、例えば、ストライプ状、格子状、モスアイ状などであってもよい。本発明では、離型層の表面に微細な凹凸パターンを形成しても、剥離の際に被転写材(又は被転写層)が損傷することがなく、被転写材(又は被転写層)を高い転写精度で転写できる。そのため、凹凸部の高さは、用途に応じて選択でき、例えば、ナノインプリントの用途では、1μm以下、好ましくは100〜900nm、さらに好ましくは200〜800nm程度であってもよく、凹凸部のピッチ(平均凸間距離)は、例えば、1μm以下、好ましくは100〜500nm、さらに好ましくは200〜400nm程度であってもよい。なお、離型層での凹部の深さ(インプリントの深さ)は、離型層の厚みを100としたとき、例えば、1〜50(例えば、3〜40)、好ましくは5〜35(例えば、10〜30)程度であってもよい。凹部の深さ(インプリントの深さ)は、0.03〜0.7μm(例えば、0.05〜0.5μm)程度であってもよい。
離型層の表面に凹凸部を形成する方法は、特に制限されず、慣用の方法、例えば、凹凸部を有する金型(石英製の金型など)に離型層を熱プレスし、凹凸部を転写する方法などであってもよい。熱プレスの温度は、例えば、80〜250℃、好ましくは90〜220℃、さらに好ましくは100〜200℃程度である。また、プレス温度は、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、例えば、Tg〜Tg+60℃、好ましくはTg+5℃〜Tg+45℃、Tg+10℃〜Tg+30℃程度であってもよい。さらに、熱プレスの圧力は、例えば、0.3〜20MPa、好ましくは0.5〜15MPa、さらに好ましくは0.7〜15MPa、特に1〜10MPa程度である。
(中間層)
基材フィルムと離型層との間には、中間層を介在させてもよい。中間層は、層間の密着性を向上できる限り特に制限されず、例えば、塩素含有樹脂で構成できる。塩素含有樹脂は、離型層の環状オレフィン系樹脂との相溶性が高いためか、基材層と離型層との密着性を向上するために好適に利用できる。
塩素含有樹脂は、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの塩素化ポリオレフィン系樹脂であってもよいが、通常、塩素含有モノマーを重合した重合体で構成されている。塩素含有モノマーとしては、塩化ビニルモノマー、塩化ビニリデンモノマーなどが例示できる。これらの塩素含有モノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
塩素含有樹脂は、塩素含有モノマーと共重合性モノマーとの共重合体であってもよい。共重合性モノマーとしては、オレフィン(エチレン、プロピレン、ブテンなどのα−C2−6オレフィンなど)、カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、エチレン系不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸など]、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなど(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートなど]、シアン化ビニル系モノマー((メタ)アクリロニトリルなど)などが例示できる。これらの共重合性モノマーのうち、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルなどが汎用される。これらの共重合性モノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
共重合性モノマーの割合は、全単量体(塩素含有モノマーと共重合性モノマーとの合計)100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部(例えば、0.3〜25重量部)、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部(例えば、3〜10重量部)程度である。
具体的な塩素含有樹脂としては、塩化ビニル系重合体[塩化ビニルモノマーの単独重合体(ポリ塩化ビニル)、塩化ビニルモノマーと他のモノマーとの共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)など]、塩化ビニリデン系重合体[塩化ビニリデン系共重合体、例えば、塩化ビニリデンモノマーと他のモノマーとの共重合体(塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体など)など]などが挙げられる。これらの塩素含有樹脂のうち、塩化ビニリデン系重合体(塩化ビニリデン系共重合体など)などが好ましい。
なお、前記塩化ビニリデン系重合体は、通常、水性エマルジョンに含有される乳化剤、界面活性剤などを含んでいなくてもよい。
塩素含有樹脂の数平均分子量は、GPCにおいて、ポリスチレン換算で、例えば、10,000〜500,000、好ましくは20,000〜250,000、さらに好ましくは25,000〜100,000程度である。
中間層は、更に層間の密着性を高めるため、接着成分を含んでいてもよい。接着成分としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系グラフトコポリマーなどの変性ポリエチレンなど)、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂(熱可塑性共重合ポリエステルなど)、反応性接着成分[イソシアネート系化合物、イミノ基含有ポリマー(ポリエチレンイミンなど)など]などが挙げられる。
イソシアネート系化合物は、末端イソシアネート基を有するプレポリマー又はオリゴマーなどであってもよいが、通常、ポリイソシアネート、例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネート、これらの誘導体などであってもよい。
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。脂環族イソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添トリレンジイソシアネート(水添TDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、水添ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水添MDI)などが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(MDI)などが挙げられる。
また、イソシアネートの誘導体としては、例えば、上記イソシアネートの多量体[2量体(ウレットジオン基含有イソシアネート)、3量体(イソシアヌレート環含有イソシアネート)、5量体、7量体など]、上記イソシアネートの変性体(アロハネート変性イソシアネート、ビュレット変性イソシアネート、ウレア変性イソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネートなど)、多価アルコールと上記イソシアネートとの付加体などが挙げられる。
これらの接着成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。接着成分は、塩素含有樹脂とともに中間層に含有させてもよく、塩素含有樹脂を含む層と接着成分を含む層(プライマー層)とを組み合わせてもよい。前者の場合、接着成分として、反応性接着成分[イソシアネート系化合物(TDI、MDI、XDI、TMXDIなどの芳香族イソシアネート及びこれらの誘導体など)など]を好適に使用できる。後者の場合、接着成分として、ポリエステル系樹脂(熱可塑性共重合ポリエステルなど)、反応性接着成分[イソシアネート系化合物(TDI、MDI、XDI、TMXDIなどの芳香族イソシアネート及びこれらの誘導体など)、イミノ基含有ポリマー(ポリエチレンイミンなど)など]などを好適に使用できる。
接着成分の割合は、塩素含有樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度である。
中間層の厚み(平均厚み)は、例えば、0.01〜80μm、好ましくは0.05〜50μm、さらに好ましくは0.1〜20μm(例えば、0.2〜10μm)、特に0.3〜5μm程度である。
中間層は、離型層と同様、中間層を形成するための組成物(塩素含有樹脂と溶媒とを含む組成物など)を塗布又は流延することにより形成できる。前記組成物において、溶媒としては、炭化水素(トルエンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルムなど)、アルコール(エタノールなど)、エーテル(テトラヒドロフランなどの環状エーテルなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトンなどの鎖状ケトンなど)、エステル(酢酸エチルなどの酢酸エステルなど)、これらの混合溶媒などが例示できる。
(帯電防止層)
前記離型層は基材フィルムの少なくとも一方の面に形成すればよく、帯電痕や放電痕の生成を防止するため、基材フィルムの一方の面に離型層を形成し、他方の面に帯電防止層を形成してもよい。帯電防止層は、種々の帯電防止剤(ノニオン系界面活性剤などのオキシエチレン単位を有する低分子型帯電防止剤、高分子型帯電防止剤など)で形成できる。帯電防止層は、通常、高分子型帯電防止剤で構成できる。高分子型帯電防止剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩基を含有する帯電防止剤、ブロック共重合タイプの帯電防止剤などが挙げられる。
第4級アンモニウム塩基含有帯電防止剤としては、分子中に少なくとも1つの第4級アンモニウム塩基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(以下、「第4級アンモニウム塩基含有アクリル系単量体」という)を共重合成分とする帯電防止剤が挙げられる。第4級アンモニウム塩基は、式:
−N+(R1R2R3)・X−
(式中、R1,R2,R3は、それぞれ、同一または異なって、水素原子、アルキル基などの炭化水素基を示し、X−は、有機又は無機のアニオンを示す)で表すことができる。
上記炭化水素基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などのC1−6アルキル基)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などのC4−10シクロアルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)、アラルキル基(ベンジル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基)などが挙げられる。好ましいR1,R2,R3は、C1−4アルキル基、特にC1−3アルキル基である。X−で表される有機又は無機のアニオンとしては、例えば、ハロゲンアニオン、炭酸アニオン(CO3 2−)、硫酸アニオン(SO4 2−)、アルキルスルホネート(例えば、C1−4アルキル−SO3 −)、アルキルカルボキシレート(例えば、C1−4アルキル−COO−)などが例示できる。
第4級アンモニウム塩基含有アクリル系単量体は単独重合体、又は共重合性単量体との共重合体を形成してもよい。共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−6アルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジルエステル;(メタ)アクリル酸など]、スチレン系単量体[スチレン、ビニルトルエンなど]、アルカンカルボン酸ビニルエステル(酢酸ビニルなど)などが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。共重合性単量体は、(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体などである場合が多い。
第4級アンモニウム塩基含有アクリル系単量体の使用量は、単量体全量に対して1重量%以上(例えば、1〜100重量%)の範囲から選択でき、通常、5〜90重量%(好ましくは10〜80重量%、例えば10〜70重量%)程度である。
なお、第4級アンモニウム塩基含有帯電防止剤は水溶性又は水分散性であってもよいが、このような帯電防止剤は耐水性が十分でない。そのため、帯電防止剤は硬化剤(例えば、エポキシ系、イソシアネート系などの硬化剤)と組み合わせて使用し、耐水性の高い帯電防止層を形成できる。
第4級アンモニウム塩基含有帯電防止剤を有効成分(帯電防止成分)として含む帯電防止剤及びその硬化剤は、コニシ(株)製の商品名「ボンディップ」シリーズ(ボンディップP、ボンディップPA、ボンディップPXなど)として入手できる。
前記ブロック共重合タイプの帯電防止剤は、オレフィン系ブロック及び/又はポリアミド系ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体であってもよい。
オレフィン系ブロックは、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−C2−6オレフィン(好ましくはエチレン及びプロピレンから選択された少なくとも一種、特に、少なくともプロピレンを含むオレフィン)で形成できる。オレフィン系ブロックにおいて、C2−6オレフィン(エチレン及び/又はプロピレン、特にプロピレン)の含有量は、80モル%以上(特に90モル%以上)程度である。オレフィン系ブロックの数平均分子量は、2000〜50000、好ましくは3000〜40000、さらに好ましくは5000〜30000程度である。
ポリアミド系ブロックは、ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−20脂肪族ジアミンなど)とジカルボン酸(例えば、アジピン酸やセバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20脂肪族ジカルボン酸など)との縮合によって得られるブロック;アミノカルボン酸(例えば、6−アミノヘキサン酸や12−アミノドデカン酸などのC4−20アミノカルボン酸など)の縮合によって得られるブロック;ラクタム(カプロラクタムなどのC4−20ラクタムなど)の開環重合によって得られるブロック;これらの成分から得られる共重合ブロックのいずれであってもよい。ポリアミド系ブロックは、例えば、6−アミノヘキサン酸や12−アミノドデカン酸などのC6−12アミノカルボン酸に由来するアルキレン鎖、通常、C6−18アルキレン鎖、好ましくはC6−16アルキレン鎖、さらに好ましくはC6−12アルキレン鎖を有している。ポリアミド系ブロックの割合は、全ブロック共重合体中、例えば、20〜70重量%、好ましくは25〜50重量%程度である。
親水性ブロックは、例えば、ポリエーテル系ポリマーなどで形成してもよい。親水性ブロックを構成する親水性単量体としては、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシド)が例示でき、親水性ブロックは、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリC2−4アルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドなどのポリC2−4アルキレンオキシド共重合体)で形成してもよい。ポリアルキレンオキシドの重合度は2〜300(例えば、5〜200)、好ましくは10〜150、さらに好ましくは10〜100(例えば、20〜80)程度である。
オレフィン系ブロックと、親水性ブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などを介して結合されている。これらの結合は、変性剤[例えば、不飽和カルボン酸又はその無水物((無水)マレイン酸など)、ラクタム又はアミノカルボン酸(カプロラクタムなど)、酸素又はオゾン、ヒドロキシルアミン(2−アミノエタノールなど)、ジアミン(エチレンジアミンなど)又はこれらの組み合わせ]でポリオレフィンを変性して活性水素原子を導入した後、アルキレンオキシドなどの親水性単量体を付加重合して親水性ブロックを導入することにより形成できる。このような高分子型帯電防止剤は、例えば、三洋化成工業(株)から商品名「ペレスタット300」として入手できる。
ポリアミド系ブロックと、親水性ブロックとの間は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などを介して結合されている。これらの結合は、両末端に官能基を有するポリアミドとポリエーテル系ポリマーとをグリシジルエーテル化合物(例えば、ビスフェノールAグリシジルエーテルなど)などで結合することによって形成できる。このようにして得られる高分子型帯電防止剤は、例えば、三洋化成工業(株)から商品名「ペレスタット6321」として入手できる。
高分子型帯電防止剤の数平均分子量は、GPCにおいて、ポリスチレン換算で、1000以上(例えば、1000〜100000)、好ましくは2000〜60000、さらに好ましくは2000〜50000(特に3000〜20000)程度である。
このようなブロック共重合タイプの高分子型帯電防止剤は、単独でも高い帯電防止性を有しているが、さらに金属塩類と組み合わせて用いてもよい。金属塩類と組み合わせると、金属塩類から解離した金属イオンが、親水性ブロックに対して作用してイオン伝導性を発現することにより、高分子型帯電防止剤の持続性などをさらに向上できる。
金属塩類としては、通常、アルカリ金属塩類、アルカリ土類金属塩類が使用され、例えば、過塩素酸アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、過塩素酸アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩など)、トリフルオロメタンスルホン酸アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩など)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩[リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など]、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドのアルカリ金属塩[リチウム塩、ナトリウム塩など]などが挙げられる。これらの金属塩類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属塩類の中でも、リチウム塩類、特に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムなどのフッ素原子及びスルホニル基又はスルホン酸基を有するリチウム金属塩が好ましい。
金属塩類の割合は、高分子型帯電防止剤100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.02〜20重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部程度である。
帯電防止層の厚み(平均厚み)は、例えば、0.1〜10μm、好ましくは1〜7μm、さらに好ましくは1.5〜5μm程度であってもよい。
帯電防止層の表面抵抗は、層構成にもよるが、例えば、温度23℃、湿度50%RHでJIS K 6911に従って測定したとき、1013Ω/□以下、好ましくは5×1012Ω/□以下、さらに好ましくは1012Ω/□以下(例えば、108〜1012Ω/□)程度である。なお、単位「Ω/□」は、JIS K 6911で定義されており、シートの単位面積あたりの抵抗を示し、シート抵抗とも呼ばれる。
帯電防止層は、中間層と同様、帯電防止層を形成するための組成物(高分子型帯電防止剤と溶媒とを含む組成物など)を塗布又は流延することにより作製できる。
(添加剤)
基材フィルム、離型層、中間層及び帯電防止層は、それぞれ、必要に応じて、添加剤、例えば、可塑剤又は軟化剤、ブロッキング防止剤、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、着色剤、分散剤、難燃剤、結晶核成長剤、炭化水素系重合体(スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂などのクマロン樹脂、フェノール樹脂、ロジンとその誘導体やそれらの水添樹脂など)、充填剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
[積層体]
本発明の積層体は、上記離型フィルムと、このフィルムの離型層上に形成された被転写体(被転写層)とを有している。被転写体(被転写層)としては、用途に応じて適宜選択でき、種々のポリマー層、例えば、イオン交換樹脂層、樹脂硬化層(光硬化層)などの機能性樹脂層であってもよい。
イオン交換樹脂層は、固体高分子型燃料電池の電解質膜などとして利用される。イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂(強酸性又は弱酸性陽イオン交換樹脂)、例えば、スルホン酸基を有する樹脂などが例示できる。スルホン酸基を有する樹脂としては、側鎖にスルホン酸基(−CF2CF2SO3H基などのスルホフルオロアルキル基及び/又はスルホフルオロアルコキシ基)を有するフッ素樹脂、スルホン化ポリアレーンエーテル系樹脂(スルホン化ポリエーテルケトン系樹脂、スルホン化ポリエーテルスルホン系樹脂など)、ポリアレーンエーテルブロックとアレーンスルホン酸ブロックとのブロック共重合体(ポリエーテルスルホンブロックやポリエーテルケトンブロックとベンゼンスルホン酸ブロックとのブロック共重合体など)(特開2012−10449号公報など)などが挙げられる。好ましいイオン交換樹脂には、強酸性樹脂、例えば、スルホ基(スルホニル基)を有するフッ素含有樹脂、特に、スルホフルオロアルキル基(スルホニルパーフルオロC1−4アルキル基など)及び/又はスルホフルオロアルコキシ基(スルホニルパーフルオロC1−4アルコキシ基など)を有するフッ素含有樹脂が含まれる。このような樹脂としては、例えば、フルオロアルケンとスルホフルオロアルキル−フルオロビニルエーテルとの共重合体[例えば、テトラフルオロエチレンと[2−(2−スルホテトラフルオロエトキシ)ヘキサフルオロプロポキシ]トリフルオロエチレンとの共重合体など]、フルオロアルケンとスルホフルオロアルアルコキシ−アルキルビニルエーテルとの共重合体[例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテルとの共重合体など]などのフルオロスルホン酸基を有する樹脂(フッ素樹脂)などが挙げられる。
イオン交換樹脂のイオン交換容量は、例えば、0.1meq/g以上、好ましくは0.1〜2.0meq/g(例えば、0.2〜1.8meq/g)、さらに好ましくは0.3〜1.5meq/g(例えば、0.5〜1.5meq/g)程度である。
イオン交換樹脂の具体例としては、デュポン社製「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子(株)製「フレミオン(登録商標)」、旭化成(株)製「アシプレックス(登録商標)」、ジャパンゴアテックス(株)製「ゴアセレクト(登録商標)」などが例示できる。なお、イオン交換樹脂として、特開2010−234570号公報に記載のイオン交換樹脂などを用いてもよい。また、積層形態において、イオン交換樹脂層は架橋していてもよい。
樹脂硬化層は、離型層上に形成された凹凸パターンを転写する被転写体などとして利用できる。硬化層は硬化性樹脂を含む組成物で形成できる。硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー又はプレポリマー)としては、熱線、活性エネルギー線(紫外線、電子線など)により硬化又は架橋可能である限り特に制限されない。硬化性樹脂(光硬化性樹脂など)は、通常、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)を有するモノマー又はオリゴマーを含んでいる。
モノマーとしては、単官能モノマー[例えば、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、橋架環式(メタ)アクリレート(イソボルニル(メタ)アクリレートなど)、アリール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルエステル(酢酸ビニルなど)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、N−ビニル複素環化合物(N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルカプロラクタムなど)、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなど]、2官能モノマー[例えば、アリル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど)、橋架環式ジ(メタ)アクリレート(トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなど)など]、3個以上の重合性基を有する多官能モノマー[3価以上の多価アルコール又はそのC2−4アルキレンオキシド付加体と(メタ)アクリル酸とのエステル化物、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ乃至テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなど]が例示できる。
重合性基を有するオリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート(脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。
硬化性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。硬化性樹脂は、重合性基を有するオリゴマー(エポキシ(メタ)アクリレートなど)を含んでいるのが好ましい。また、硬化性樹脂は、重合性基を有するオリゴマーとモノマー(N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル複素環化合物など)とを組み合わせて構成するのも好ましい。重合性基を有するオリゴマーとモノマーとの重量割合は、例えば、前者/後者=99/1〜1/99、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは80/20〜20/80(例えば、70/30〜30/70)程度である。
硬化性樹脂は、必要に応じて開始剤と組み合わせて用いてもよい。開始剤(光重合開始剤など)としては、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類、これらの組み合わせなどが例示できる。開始剤の割合は、硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部、さらに好ましくは1〜5重量部程度である。
硬化性樹脂は、熱線、活性エネルギー線などにより硬化可能であり、操作の簡便性の点から、紫外線により硬化する場合が多い。紫外線の照射量は、例えば、100〜10000mJ/cm2、好ましくは200〜5000mJ/cm2、さらに好ましくは300〜1000mJ/cm2程度である。なお、紫外線照射は、空気中で行ってもよく、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
離型層に形成された樹脂硬化層(被転写体又は被転写層)の厚み(平均厚み)は、用途に応じて選択でき、例えば、1〜50μm、好ましくは2〜40μm、さらに好ましくは3〜30μm程度であってもよい。
[モールド]
本発明の離型フィルムの離型層の表面に凹凸部(凹凸パターン)を形成すると、離型層の凹凸パターンを被転写体に転写するためモールドとして利用できる。すなわち、離型層の凹凸面に、硬化性樹脂を含む組成物の塗膜を形成する工程と、前記塗膜を硬化して硬化層を形成する工程と、前記硬化層からモールドを剥離する工程とを経て、硬化層に凹凸パターン(離型層の凹凸が反転したパターン)を転写できる。
また、モールドは、基材(基板)にエッチングマスクを形成するためにも有用である。すなわち、基材(平坦な基板)の一方の面に形成又は積層した未硬化塗膜(硬化性樹脂を含む組成物で形成された塗膜)に、離型層の凹凸面を接触させた状態で、前記と同様にして、前記塗膜を硬化して樹脂硬化層を形成する工程と、この樹脂硬化層をモールド(離型フィルムの離型層)から剥離する工程とを経て、基材(基板)に離型層表面の凹凸部(凹凸パターン)に対応したエッチングマスクを形成できる。エッチングマスクが形成されていない部分を、エッチング(スパッタリングなど)することにより、基材(基板)に凹凸パターンを形成できる。
このように、本発明のモールドは、従来の石英製のモールドに比べて経済的でありながら、凹凸パターン(例えば、微細な凹凸パターン)を忠実に転写でき、耐久性にも優れているため、インプリント用モールド(例えば、ナノインプリント用モールド)として有効である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、環状オレフィン系樹脂のノルボルネン含量については、次のようにして測定した。すなわち、NMR装置(BRUKER製、AVANCE600MHz)を用いるとともに、溶媒として、1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2及びヘキサメチルジシラン(HMDS)の混合溶媒(体積比3:1)を用い、温度108℃で環状オレフィン系樹脂(エチレン/ノルボルネン共重合体)について13C−NMR測定した。また、全ノルボルネン成分量(比(モル比))は、13C−NMRのスペクトルチャートのケミカルシフト値44.5−56.0ppmで観測される積分値:IC2,C3(ノルボルネン環の2,3位に由来)、ケミカルシフト値39.0−44.0ppmで観測される積分値:IC1,C4(ノルボルネン環の1,4位の炭素に由来)、ケミカルシフト値39.0−33.0ppmで観測される積分値:IC7(ノルボルネン環の7位の炭素に由来)、ケミカルシフト値33.0−27.5ppmで観測される積分値:IC5,C6+IE(ノルボルネン環の5,6位の炭素及びエチレン部の炭素に由来)より、以下の式に基づいて算出した。
全ノルボルネン成分量=[(IC2,C3)+(IC1,C4)+(2×IC7)]/[3((IC5,C6)+IE)]×100
比較例1
(塗布液Pの調製)
トルエン、メチルエチルケトン及びテトラヒドロフラン(トルエン:メチルエチルケトン:テトラヒドロフラン(重量比)=1.5:1.5:7)を混合し、撹拌して均一な溶媒(溶剤)を調製した。この溶媒に、塩化ビニリデン系重合体(旭化成ケミカルズ(株)製、PVDCレジン R204)100重量部及びトリレンジイソシアネート(TDI)3重量部を溶解し、固形分濃度12重量%の塗布液Pを得た。
(塗布液Cの調製)
環状オレフィン系樹脂(ポリプラスチックス(株)製、TOPAS 6017S04、エチレン/ノルボルネン=34/66(モル%)、Tg=178℃、数平均分子量Mn:29000、引っ張り弾性率:3000MPa)をトルエンに撹拌溶解し、固形分濃度15重量%の塗布液Cを得た。
(離型フィルムの製造)
プラスチック基材として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ユニチカ(株)製、ポリエステルフィルムエンブレット S50、厚み100μm)を用い、このフィルムの片面にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理面に、塗布液Pをメイヤーバーで塗布し、130℃で1分間乾燥して中間層(厚み1μm)を形成した。さらに中間層に塗布液Cをメイヤーバーで塗布し、100℃で1分間乾燥して離型層(厚み3μm)を形成し、離型フィルムを得た。
比較例2
中間層及び離型層を形成することなく、比較例1のPETフィルムを用いた。
実施例1
塗布液Cに、さらにペンタエリスリトールテトラステアレート(理研ビタミン(株)製、リケスターEW−440A)を、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.5重量部添加した以外、比較例1と同様に操作して、離型フィルムを調製した。
実施例2
環状オレフィン系樹脂(ポリプラスチックス(株)製、TOPAS 6013S04、エチレン/ノルボルネン=51/49(モル%)、Tg=138℃、Mn:31000、引っ張り弾性率:2900MPa)100重量部に対して、ペンタエリスリトールテトラステアレート(理研ビタミン(株)製、リケスターEW−400)を0.5重量部添加して塗布液Cを調製した以外、比較例1と同様に操作して、離型フィルムを調製した。
実施例3
塗布液Cに、さらにペンタエリスリトールテトラステアレート(理研ビタミン(株)製、リケスターEW−400)を、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して2.0重量部添加した以外、比較例1と同様に操作して、離型フィルムを調製した。
実施例4
塗布液Cに、さらにグリセリントリ−18−ヒドロキシステアレート(理研ビタミン(株)製、リケマールTG−12)を、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.5重量部添加した以外、比較例1と同様に操作して、離型フィルムを調製した。
実施例5
ペンタエリスリトールテトラステアレート(理研ビタミン(株)製、リケスターEW−400)の添加量を、0.5重量部に代えて、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して6.0重量部とする以外、実施例1と同様にして離型フィルムを調製した。
そして、上記と同様にして、剥離強度及び離型不良数を評価したところ、剥離強度は1mN/mmであり、離型不良数は「0」であった。なお、上記の割合で離型剤を添加しても離型剤が分離することがなく、環状オレフィン系樹脂と均一に相溶し、環状オレフィン系樹脂と上記離型剤とを混合した試料のガラス転移温度は、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度178℃から172℃に低下した。
実施例6
ペンタエリスリトールテトラステアレート(理研ビタミン(株)製、リケスターEW−400)の添加量を、0.5重量部に代えて、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して12.0重量部とする以外、実施例1と同様にして離型フィルムを調製した。
そして、上記と同様にして、剥離強度及び離型不良数を評価したところ、剥離強度は1mN/mmであり、離型不良数は「0」であった。なお、上記の割合で離型剤を添加しても離型剤が分離することがなく、環状オレフィン系樹脂と均一に相溶し、環状オレフィン系樹脂と上記離型剤とを混合した試料のガラス転移温度は、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度178℃から164℃に低下した。
実施例7
実施例1の基材フィルムにおいて、離型層とは反対面(裏面)に帯電防止層を形成した。すなわち、イソプロピルアルコールの67重量%水溶液に、帯電防止剤として第4級アンモニウム塩型帯電防止剤((株)コニシ製、商品名「ボンディップPA−100」)の主剤と硬化剤(エポキシ系硬化剤)とを1:1の重量割合で混合し、帯電防止剤の主剤の濃度が5重量%の溶液を調製した。この塗布液をワイヤーバーを用いて塗布し、120℃で2分間乾燥させ、0.5μm厚の帯電防止層を形成した。離型フィルムの裏面の表面抵抗は1.5×109Ω/□であった。
実施例8
実施例2の基材フィルムにおいて、離型層とは反対面(裏面)に、実施例5と同様にして帯電防止層を形成した。離型フィルムの裏面の表面抵抗は1.5×109Ω/□であった。
実施例9
実施例1において、中間層を形成することなく(塗布液Pを塗布することなく)、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
[剥離試験]
実施例及び比較例で得られた離型フィルム(A4版サイズ)の上に、イオン交換樹脂溶液(デュポン社製、ナフィオン(登録商標)DE2021、側鎖にスルホン酸基を有するパーフルオロポリマー溶液、固形分20重量%)をメイヤーバーで塗布して、150℃のオーブン内で乾燥させ、イオン交換樹脂層(厚さ20μm)を形成した。イオン交換樹脂層の離型フィルムに対する剥離強度を、引張試験機を用いて、チャック間距離100mm及び引張速度20mm/分の条件で測定した。さらに、100個のサンプル中、離型不良数をカウントし、離型性を評価した。
結果を表1に示す。
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、イオン交換樹脂層に対する剥離強度が小さく、容易に剥離でき、しかも離型不良が生じない。なお、比較例1では、イオン交換樹脂層の剥離性が劣るため、剥離に力を要するとともに、100サンプル中、3つのサンプルではイオン交換樹脂層が離型層に引っ掛かりが生じた。比較例2では、100サンプルの全てでイオン交換膜が破断した。また、実施例9では、100サンプル中、2つのサンプルで基材フィルムから離型層の浮きがみられたが、他の実施例では、全てのサンプルで離型層の浮きが認められなかった。
実施例10
矩形状の凸部の高さ200nm、凸部の幅100nm、凸部間の距離(周期)300nmのモスアイパターンの石英製マスターモールド(5cm×5cm)に、実施例3の離型フィルム(6cm×6cm)の離型層を接触させて150℃で熱プレスし、室温に冷却後、石英モールドを注意深く離型することにより、マスターモールドの形状が転写されたモールドAを作製した。得られたモールドAを、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、得られたパターン内には気泡欠陥が見られず、マスターモールドの形状を忠実に転写していた。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(5cm×5cm、厚さ100μm)上に、下記処方の組成物Aをバーコーターで塗布し、厚さ2μmの塗膜を形成した。
(組成物A)
光硬化性樹脂としてのN−ビニルピロリドン35重量部及びエポキシアクリレート(栄社化学(株)製、エポキシエステル80MFA)40重量部、光重合開始剤としての2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン(株)製、イルガキュア907)5重量部を、室温で攪拌混合し、組成物Aを調製した。組成物Aの粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて温度25℃で測定したところ、85mPa・sであった。
一方、モールドAの中央付近に組成物Aを0.2ml滴下した。樹脂モールドAに形成した組成物Aの塗膜と、PETフィルムに形成した組成物Aの塗膜とを、大気圧環境下で、互いに接触させ、この状態で均一に圧力を作用させて0.3MPaまで加圧して密着させ、加圧状態で30秒間保持してモールドAのパターン内へ組成物Aを十分に充填させた後、超高圧水銀ランプを用いて、モールドA側から400mJ/cm2の露光量で露光し、組成物Aを光硬化させた。光硬化後に樹脂モールドAを注意深く離型し、樹脂モールドAの形状が転写されたパターンを得た。得られたパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、得られたパターン内には気泡欠陥が見られず、樹脂モールドAの形状を忠実に転写していた。なお、100個のサンプルのうち、離型不良は1つも生じなかった。
比較例3
実施例2の離型フィルムに代えて、比較例1の離型フィルムを使用した以外、実施例7と同様にして、樹脂モールドBを作製した。なお、マスターモールドから樹脂モールドBを離型するのに実施例7の2倍の時間がかかり、作業効率が低下した。さらに、実施例7と同様にして組成物Aの層に樹脂モールドBのパターン転写を行ったが、100個のサンプルのうち、5個のサンプルについて離型不良が生じ、パターンを精度よく転写できなかった。