JP6086597B2 - ポリ塩化ビフェニル類の抽出方法 - Google Patents

ポリ塩化ビフェニル類の抽出方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ塩化ビフェニル類の抽出方法、特に、ポリ塩化ビフェニル類を含む油性液体からポリ塩化ビフェニル類を抽出するための方法に関する。
焼却施設から排出される排ガスや焼却灰、大気、土壌、底質、工業排水、血液、母乳並びに海水、河川水、湖沼水および地下水等の環境水などにおいて、生体への毒性が強い環境汚染物質として知られたポリ塩化ビフェニル類(以下、「PCB類」と称することがある。)による汚染状況の評価が求められている。
PCB類による汚染状況の評価では、通常、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒やトルエン等の芳香族炭化水素溶媒などのPCB類を溶解可能な疎水性の有機溶媒を用いて評価対象の試料からPCB類を抽出し、この抽出により得られるPCB類の油性液体をガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)やガスクロマトグラフ電子捕獲検出法(GC/ECD法)のような高感度の分析機器を用いて分析する。
PCB類は、水素原子が塩素原子により置換されたビフェニル類の総称であり、置換された塩素数の点でモノクロロビフェニルからデカクロロビフェニルまでの10種類が存在し、また、塩素の置換位置によって209種類が存在する。そこで、PCB類を高精度に分析するために、PCB類の油性液体は、分析機器での測定に際し、測定結果に影響する妨害成分(夾雑成分)を除去するための高度な前処理が求められている。
前処理方法の一つとして、非特許文献1に記載の方法(以下、「公定法」と称する場合がある。)が知られている。この方法は、PCB類の油性液体に対し、ジメチルスルホキシド(DMSO)/ヘキサン分配、硫酸処理、アルカリ処理およびシリカゲルカラム処理などを適用するものである。この方法は、低塩化PCB類から高塩化PCB類までの幅広い塩素数のPCB類を高精度に分析するのに適しているが、多工程で煩雑な処理を必要とするため、完了までに日単位の長時間を要し、また、その実施のための費用も非常に高額である。このため、公定法による前処理によっては、日々発生する多数の試料についてのPCB類の分析を迅速にかつ経済的に進めるのは困難である。
そこで、公定法に代わるPCB類含有油性液体の前処理方法が種々検討されている。例えば、非特許文献2には、底質からPCB類を抽出したヘキサン溶液の前処理方法が記載されている。この前処理方法は、ヘキサン溶液に対して硫酸処理を繰り返し、この処理後のヘキサン溶液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄して濃縮した後、さらにシリカゲルカラムで処理するものである。この前処理方法も、公定法と同じく幅広い塩素数のPCB類を高精度に分析するのに適しているが、やはり完了までに日単位の長時間を要し、また、その実施のための費用も非常に高額である。
また、非特許文献3には、PCDDs、PCDFsおよびDL−PCB等のダイオキシン類を含む試料からダイオキシン類の測定用試料を抽出するための前処理方法が記載されており、この前処理方法では、試料中の有機成分を有機溶媒で抽出した抽出液を調製し、この抽出液を次の(a)〜(c)のいずれかの方法で処理する。
(a)抽出液を硫酸処理した後にクロマトグラフィーの手法でシリカゲルカラムに通過させ、シリカゲルカラムからの溶出液を濃縮する。そして、この濃縮液をクロマトグラフィーの手法でアルミナカラムに通過させた後、アルミナカラムに抽出溶媒を供給し、その溶出液を採取する。
(b)クロマトグラフィーの手法でシリカゲル層、硫酸シリカゲル層および硝酸銀シリカゲル層を含む多層シリカゲルカラムに抽出液を通過させ、多層シリカゲルカラムからの溶出液を濃縮する。そして、この濃縮液をクロマトグラフィーの手法でアルミナカラムに通過させた後、アルミナカラムに抽出溶媒を供給し、その溶出液を採取する。
(c)(b)の方法において、多層シリカゲルカラムの替わりに硫酸シリカゲルカラムを用いる。
これらの前処理方法では、抽出液に含まれるダイオキシン類以外の夾雑成分の一部がシリカゲル系カラム(すなわち、方法(a)のシリカゲルカラム、方法(b)の多層シリカゲルカラムまたは方法(c)の硫酸シリカゲルカラム)を通過する際に分解され、この分解生成物がシリカゲル系カラムにより捕捉される。そして、残余の夾雑成分はアルミナカラムを通過し、ダイオキシン類はアルミナカラムにより捕捉されることから、アルミナカラムに抽出溶媒を供給してその溶出液を採取すると、夾雑成分が分離されたダイオキシン類溶液(PCDDsおよびPCDFsを含む溶液とDL−PCBを含む溶液との2種類)が得られ、これを分析用試料として用いることができる。
しかし、この代替方法は、(a)〜(c)のいずれの方法においても処理のために必要な時間が依然として1〜2日程度の長時間であるし、前処理のための費用も高額になる。また、(a)〜(c)のいずれの方法についても、シリカゲル系カラムおよびアルミナカラムからの溶出液を減量のために繰り返して濃縮する必要があり、このときに低塩化PCB類、特に、塩素数が1のPCB類が溶媒とともに溶出液から散逸しやすいことから、低塩化PCB類の回収率が低下しやすい問題がある。したがって、この代替方法は、低塩化PCB類の分析精度を損なう可能性がある。
さらに、特許文献1には、PCB類含有試料の前処理方法として、硫酸シリカゲル層と硝酸銀シリカゲル層との間に金属含水塩シリカゲル層を配置した多層シリカゲル層およびアルミナ層を用いたPCB類の抽出方法が記載されている。この方法では、PCB類含有試料を添加した硫酸シリカゲル層を35℃以上に加熱することで試料中の夾雑成分の一部を分解した後、常温へ冷却した硫酸シリカゲル層へ脂肪族炭化水素溶媒を供給し、この脂肪族炭化水素溶媒を硫酸シリカゲル層、金属含水塩シリカゲル層、硝酸銀シリカゲル層およびアルミナ層の順に通過させる。そして、アルミナ層に抽出溶媒を供給することで、アルミナ層に捕捉されたPCB類を抽出する。
この前処理方法は、塩素数が2以上の低塩化PCB類の回収率を高めることができるが、塩素数が1のPCB類の回収率が非常に低いことから、低塩化PCB類の分析精度を損なう可能性がある。
平成4年厚生省告示第192号の別表第二「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」 平成24年8月 環境省 水・大気環境局 底質調査方法(6.4) 日本工業規格 JIS K 0311(2005)、排ガス中のダイオキシン類の測定方法(6.4.4および6.4.5)
国際公開2008/123393号(請求の範囲、明細書20頁5〜23行)
本発明は、PCB類を含む油性液体から、塩素数が1から10までの広範囲の種類のPCB類を簡単な操作により短時間で抽出できるようにしようとするものである。
本発明は、ポリ塩化ビフェニル類を含む油性液体からポリ塩化ビフェニル類を抽出するための方法に関するものである。この抽出方法は、硫酸シリカゲルからなる単層の第一層へ油性液体を添加する工程1と、油性液体が添加された第一層へ脂肪族炭化水素溶媒を供給して通過させる工程2と、金属酸化物修飾酸化アルミニウムを含む第二層へ第一層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を供給して通過させる工程3と、脂肪族炭化水素溶媒が通過した第二層へポリ塩化ビフェニル類の抽出溶媒を供給して通過させる工程4と、第二層を通過した抽出溶媒を確保する工程5とを含む。ここで用いられる金属酸化物修飾酸化アルミニウムは、酸化ニッケルおよび酸化銀からなる群から選ばれた少なくとも一つの金属酸化物により修飾された酸化アルミニウムである。また、この抽出方法の工程1および工程2では、第一層の温度を35℃未満に設定する。
この抽出方法において、工程1で第一層へ添加された油性液体は、工程2で供給される脂肪族炭化水素溶媒に溶解して脂肪族炭化水素溶媒とともに第一層を通過し、また、工程3において脂肪族炭化水素溶媒とともに第二層を通過する。この際、油性液体に含まれるPCB類は第二層に捕捉され、また、PCB類以外の夾雑成分は、一部が第一層に捕捉され、残余が脂肪族炭化水素溶媒とともに第一層および第二層を通過する。このため、工程4において第二層へ供給した抽出溶媒を工程5で確保すると、PCB類の抽出溶媒溶液が得られる。
この抽出方法では、通常、工程4において、第二層に対し、脂肪族炭化水素溶媒の通過方向とは逆方向に抽出溶媒を供給して通過させるのが好ましい。また、工程4において第二層に対して抽出溶媒を供給する前に、第二層に残留している脂肪族炭化水素溶媒を除去するのが好ましい。
他の観点に係る本発明は、ポリ塩化ビフェニル類を含む油性液体からポリ塩化ビフェニル類を抽出するためのカラムに関するものである。このカラムは、硫酸シリカゲルからなる単層の第一層が充填された第一カラムと、第一カラムの一端に着脱可能に連結された、金属酸化物修飾酸化アルミニウムを含む第二層を充填した第二カラムとを備えている。ここで用いられる金属酸化物修飾酸化アルミニウムは、酸化ニッケルおよび酸化銀からなる群から選ばれた少なくとも一つの金属酸化物により修飾された酸化アルミニウムである。
さらに他の観点に係る本発明は、油性液体に含まれるポリ塩化ビフェニル類を捕捉するためのカラムに関するものである。このカラムは、酸化ニッケルおよび酸化銀からなる群から選ばれた少なくとも一つの金属酸化物により修飾された酸化アルミニウムが充填されている。
さらに他の観点に係る本発明は、油性液体に含まれるポリ塩化ビフェニル類を捕捉するための捕捉剤に関するものである。この捕捉剤は、酸化ニッケルおよび酸化銀からなる群から選ばれた少なくとも一つの金属酸化物により修飾された酸化アルミニウムを含む。
本発明に係るポリ塩化ビフェニル類の抽出用カラムおよび捕捉用カラム並びにポリ塩化ビフェニル類の捕捉剤は、例えば、本発明の抽出方法において用いられる。
本発明に係るPCB類の抽出方法は、上述の工程1〜5を含むものであるため、PCB類を含む油性液体から、塩素数が1から10までの広範囲の種類のPCB類を簡単な操作により短時間で抽出することができる。
本発明に係るPCB類の抽出方法において利用可能なカラムの一例の概略図。 前記カラムを用いた抽出操作の一工程を示す図。 前記カラムを用いた抽出操作の他の工程を示す図。 前記カラムを用いた抽出操作のさらに他の工程を示す図。 前記カラムを用いた抽出操作のさらに他の工程を示す図。
本発明に係るポリ塩化ビフェニル類(PCB類)の抽出方法は、PCB類を含む油性液体からPCB類を抽出するための方法に関するものである。
抽出対象となる油性液体としては、例えば、PCB類を含む試料(例えば、焼却施設から排出される排ガスや焼却灰、大気、土壌、底質、工業排水、血液、母乳並びに海水、河川水、湖沼水および地下水等の環境水。)からPCB類の分析のために有機溶媒(例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒やトルエン等の芳香族炭化水素溶媒などの疎水性溶媒。)を用いてPCB類を抽出した抽出液、化学実験や化学工場において発生したPCB類を含む廃有機溶媒、並びに、トランスやコンデンサなどの電気機器において用いられていたPCB類を含む鉱物油や合成油(通常は脂肪族炭化水素であり、例えば、炭素数が10〜15個程度の直鎖脂肪族炭化水素を主成分とするもの。)およびこれらの鉱物油や合成油であって金属ナトリウム法等によるPCB類の脱塩素化処理を適用中または適用されたものなどを挙げることができる。
図1を参照して、本発明に係るPCB類の抽出方法を実施するために用いられる抽出用カラムの一例を説明する。図において、抽出用カラム1は、主に、第一カラム10、第二カラム20および両カラム10、20を連結するための連結部材30を備えており、第一カラム10から第二カラム20にかけて一連の流路系を形成している。
第一カラム10は、下端部10aの外径および内径が縮小された円筒状に形成されており、上端部および下端部にそれぞれ開口部11、12を有している。この第一カラム10は、例えば、ガラスまたは耐溶媒性を有するプラスチックを用いて形成されており、内部に第一層13が充填されている。第一層13は、硫酸シリカゲルからなる単層のシリカゲル層である。
ここで用いられる硫酸シリカゲルは、濃硫酸をシリカゲル(好ましくは活性シリカゲル)の表面に均一に添加して調製されたものである。第一層13において、硫酸シリカゲルの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3〜1.1g/cmに設定するのが好ましく、0.5〜1.0g/cmに設定するのがより好ましい。
第二カラム20は、円筒状に形成されており、上端部および下端部にそれぞれ開口部21、22を有している。この第二カラム20は、例えば、ガラスまたは耐溶媒性および耐熱性を有する樹脂材料を用いて形成されており、内部に第二層23が充填されている。第二層23は、PCB類の捕捉剤である金属酸化物修飾酸化アルミニウムを充填した層である。この第二層23は、第二カラム20の開口部22側に空隙24が形成されるよう、開口部21側に片寄って充填されている。同様の空隙は、開口部21側にも設けられていてもよい。第二カラム20の外径および内径は、通常、第一カラム10の下端部10aのこれらの径よりも大きく設定するのが好ましいが、下端部10aのこれらの径と同じに設定することもできる。
第二層23において用いられる金属酸化物修飾酸化アルミニウムは、酸化ニッケルおよび酸化銀からなる群から選ばれた少なくとも一つの金属酸化物により修飾された酸化アルミニウムである。このような金属酸化物修飾酸化アルミニウムは、ニッケル塩および銀塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の金属塩の水溶液と酸化アルミニウムとを混合し、この混合物から水分を蒸発させて乾燥することで得られる固形物を空気雰囲気下で焼成することで得られる。
金属酸化物修飾酸化アルミニウムの調製において用いられる酸化アルミニウムは、固体状のものであり、通常、γ−アルミナ、δ−アルミナまたはθ−アルミナのような中間アルミナが好ましく、また、塩基性、中性または酸性のいずれのものであってもよい。また、酸化アルミニウムは、活性度が限定されるものではなく、各種の活性度のものを用いることができる。
金属塩であるニッケル塩としては、水への溶解度および分解性が良好なことから、通常、硝酸ニッケル、塩素酸ニッケル、過塩素酸ニッケル、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、臭化ニッケル、臭素酸ニッケル、フッ化ニッケルまたはヨウ化ニッケルが用いられる。これらのニッケル塩は、二種以上のものが併用されてもよい。
金属塩である銀塩としては、水への溶解度および分解性が良好なことから、通常、硝酸銀、塩素酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀またはフッ化銀が用いられる。これらの銀塩は、二種以上のものが併用されてもよい。
金属塩の水溶液における金属塩の濃度は特に限定されない。但し、酸化アルミニウムに対する金属塩水溶液の混合量は、通常、酸化アルミニウムの重量(g)あたりの金属(ニッケルおよび銀のうちの少なくとも一つ)の量(mmol)が0.1〜10mmolになるよう設定するのが好ましく、0.5〜5mmolになるよう設定するのがより好ましい。
空気雰囲気下での焼成は、金属酸化物を生成するための処理であり、この処理により目的の金属酸化物修飾酸化アルミニウムが得られる。また、焼成は、空気雰囲気下で実行した後、続いて窒素雰囲気下で実行するのが好ましい。窒素雰囲気下での焼成により、酸化アルミニウムの表面を活性化することができる。また、焼成後の室温への降温過程において、生成した金属酸化物修飾酸化アルミニウムに水分や酸素が吸着するのを抑えることができ、それによって生成した金属酸化物修飾酸化アルミニウムの活性を維持または安定化することができる。
空気雰囲気下での焼成および窒素雰囲気下での焼成は、いずれも1,000℃以下で行うのが好ましい。
第二層23における金属酸化物修飾酸化アルミニウムの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜1.8g/cmに設定するのが好ましく、0.8〜1.6g/cmに設定するのがより好ましい。
連結部材30は、第一カラム10の下端部10aと第二カラム20の上端部とを挿入可能な筒状の部材であり、各種の溶媒、特に炭化水素溶媒に対して安定で耐熱性を有する材料、例えば、耐溶媒性および耐熱性を有する樹脂材料を用いて形成されている。この連結部材30は、第一カラム10の下端部10aと第二カラム20の上端部とを着脱可能に連結している。したがって、抽出用カラム1において、第一カラム10と第二カラム20とは分離可能である。
抽出用カラム1の大きさは、PCB類を抽出する油性液体の量に応じて適宜設定することができるが、油性液体に含まれるPCB類の濃度を測定するために油性液体からPCB類を抽出する前処理をするときは、油性液体から少量若しくは微量の試料を採取して本発明の抽出方法を適用すれば足りるため、それに応じて抽出用カラム1を小型に設定することができる。例えば、油性液体から採取した1.0〜500mg程度の試料について、PCB類の濃度を測定するためにPCB類を抽出する場合、抽出用カラム1における第一カラム10の大きさ(第一層13を充填可能な部分の大きさ)は、内径10〜20mmで長さが30〜110mmのものが好ましく、また、第二カラム20の大きさ(第二層23を充填可能な部分の大きさ)は、内径2.0〜10.0mmで長さが10〜200mmのものが好ましい。
次に、上述の抽出用カラム1を用いたPCB類の抽出方法を説明する。この抽出方法では、先ず、図2に示すように、抽出用カラム1を通過する後述の脂肪族炭化水素溶媒を受けるための溶媒容器40を第二カラム20の下端部に配置する。
次に、油性液体から少量若しくは微量(通常は1.0〜500mg程度)の試料を採取し、この試料を第一カラム10の上端部の開口部11から第一層13へ添加する(工程1)。この際、第一層13へ試料を添加するとともに、第一層13へ試料を溶解可能でありかつ後述の脂肪族炭化水素溶媒と混和可能な炭化水素溶媒を添加し、試料を希釈してもよい。炭化水素溶媒は、通常、第一層13へ試料を添加した直後に続けて添加してもよいし、予め試料へ添加しておいてもよい。
次に、図3に示すように、第一カラム10の上端側の開口部11に対して第一カラム10へ溶媒を供給するためのリザーバ50を装着し、このリザーバ50内に脂肪族炭化水素溶媒を貯留する。そして、リザーバ50に対し、その内部を加圧するための加圧装置51を装着し、そのポンプ52を作動することでリザーバ50内を加圧する。これにより、リザーバ50内に貯留された脂肪族炭化水素溶媒は、第一カラム10内の第一層13へ連続的に徐々に供給され、第一層13を通過する(工程2)。そして、第一層13を通過した脂肪族炭化水素溶媒は、第一カラム10の開口部12から連結部材30へ流れ、開口部21から第二カラム20内へ流れる。
この際、第一層13に添加された試料中のPCB類は、脂肪族炭化水素溶媒に溶解し、脂肪族炭化水素溶媒とともに第一層13を通過して第二カラム20内へ流れる。また、試料中に含まれる各種の夾雑成分の一部は、第一層13に吸着して捕捉され、第一カラム10内に保持される。
第二カラム20内へ流れた脂肪族炭化水素溶媒は、第二カラム20内の第二層23へ供給されてこの層を通過し、開口部22から排出されて溶媒容器40により受けられる(工程3)。この際、第一カラム10からの脂肪族炭化水素溶媒中に溶解しているPCB類は、塩素数が1の低塩化PCB類から塩素数が10の高塩化PCB類までの広範囲の種類のものが第二層23により捕捉され、第二カラム20内に保持される。
ここで、脂肪族炭化水素溶媒中に溶解しているPCB類は、第二層23により捕捉されやすいことから、第二カラム20内の上端部の開口部21付近で主に保持される。また、第一層13において吸着・捕捉されずにPCB類とともに第二カラム20へ流れた残余の夾雑成分は、脂肪族炭化水素溶媒とともに第二層23を通過し、溶媒容器40により受けられる。
リザーバ50に貯留する脂肪族炭化水素溶媒は、試料中のPCB類を溶解可能なものであり、通常は炭素数が5〜8個の脂肪族飽和炭化水素溶媒、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンおよびシクロヘキサンなどである。特に、n−ヘキサンが好ましい。リザーバ50における脂肪族炭化水素溶媒の貯留量、すなわち、第一カラム10へ供給する脂肪族炭化水素溶媒の総量は、通常、10〜120mLに設定するのが好ましい。また、リザーバ50からの脂肪族炭化水素溶媒の供給速度は、ポンプ52によるリザーバ50内の加圧状態の調節により、通常、0.2〜5.0mL/分に設定するのが好ましい。
ここまでの工程1、2および3、特に、工程1および2では、第一層13の温度を35℃未満、好ましくは30℃以下、より好ましくは28℃以下に設定する。このため、この抽出操作を高温環境下で実施する場合であって第一層13の温度が35℃以上になるようなときは、冷却材や冷却装置を用いて第一層13の温度を35℃未満に制御する。第一層13の温度が35℃以上のときは、低塩化PCB類がシリカゲル層13で分解されたり吸着されたりしやすくなり、低塩化PCB類の抽出率(回収率)が低下する。なお、第一層13の温度の下限は、脂肪族炭化水素溶媒が円滑に流通可能な温度領域内であれば特に限定されるものではないが、通常は10℃程度が好ましい。
次に、連結部材30から第一カラム10を取り外すことで第二カラム20と第一カラム10とを分離する。そして、図4に示すように、第二カラム20の上下を反転し、その第二層23の周りに加熱装置60を配置する。また、図4に示すように、上下反転により第二カラム20の上端側に移動した開口部22に加圧装置51を装着する。そして、加熱装置60により第二層23を35〜90℃程度に加熱しながらポンプ52を作動させ、開口部22から第二カラム20内に窒素ガス等の不活性ガスや空気を供給する。これにより、第二カラム20内に残留している脂肪族炭化水素溶媒等の溶媒が不活性ガス等とともに第二カラム20の下端側に移動した開口部21から排出され、第二層23から脂肪族炭化水素溶媒等の溶媒が除去される。この結果、第二層23は乾燥処理される。ここで用いられる加熱装置60は、ヒーターやペルチェ素子などであり、第二カラム20内の第二層23全体を所要の温度に加熱可能なものである。
なお、図4において、第二カラム20は連結部材30が取り付けられた状態で表示されているが、連結部材30は、第二カラム20から取り外されていてもよい。
次に、加圧装置51を第二カラム20から取り外し、図5に示すように、第二カラム20の上端側に移動した開口部22側の空隙24へPCB類を溶解可能な抽出溶媒を貯留する。この抽出溶媒は、自重により流下し、第二層23内へ徐々に供給される。
第二層23へ供給された抽出溶媒は、第二層23を通過し、第二カラム20の下端側に移動した開口部21から流出する(工程4)。この際、抽出溶媒は、第二層23に捕捉されたPCB類を溶解し、このPCB類とともに開口部21から流出する。このため、開口部21から流出する抽出溶媒を確保すると、PCB類の抽出溶媒溶液、すなわち、目的とするPCB類の抽出液が得られる(工程5)。
ここで、PCB類は、主に、第二層23の開口部21側付近において捕捉されているため、第二層23に捕捉されたPCB類の実質的に全量は、第二カラム20から流出する主に初流部分の抽出溶媒に溶解した状態になる。したがって、開口部21から流出する初流部分の抽出溶媒を確保するだけで、目的とするPCB類の抽出液を得ることができる。この抽出液は、分量の少ない上述の初流部分からなるため、後述する分析操作において利用しやすい少量になる。また、ここで得られるPCB類の抽出液は、第二層23より脂肪族炭化水素溶媒を除去してから第二カラム20へ抽出溶媒を供給して得られたものであるため、脂肪族炭化水素溶媒およびそれに溶解している夾雑成分の混入が少ない、高純度の抽出液になり得る。
本実施の形態に係る抽出方法によれば、通常、作業開始(工程1)から0.5〜1時間程度の短時間で上述の抽出液を得ることができる。
第二層23からのPCB類の抽出時において、第二層23は、加熱装置60により加熱しながら抽出溶媒を供給するのが好ましい。第二層23の加熱温度は、通常、少なくとも35℃になるよう設定するのが好ましく、60℃以上になるよう設定するのがより好ましい。加熱温度の上限は、特に限定されるものではないが、通常、90℃程度である。抽出時に第二層23を加熱すると、第二層23に捕捉されたPCB類は、より少量の抽出溶媒により全量が抽出されやすくなるので、PCB類の抽出液量を後述する分析操作において利用しやすいより少量に設定することができる。
第二層23からPCB類を抽出するための抽出溶媒は、PCB類の分析方法に応じて選択することができる。分析方法としてガスクロマトグラフィー法を採用する場合、抽出溶媒としてPCB類を溶解可能な疎水性溶媒を用いる。このような疎水性溶媒としては、例えば、トルエン、トルエンと脂肪族炭化水素溶媒(例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサンなど)との混合溶媒および有機塩素系溶媒(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタンなど)と脂肪族炭化水素溶媒(例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサンなど)との混合溶媒などが挙げられる。このうち、より少量の使用で第二層23からPCB類を抽出できるトルエンが好ましい。
疎水性溶媒を抽出溶媒として用いた場合、工程5において得られる抽出液は、そのままで、または、必要に応じて適宜濃縮することで、ガスクロマトグラフィー法での分析用試料として用いることができる。ガスクロマトグラフィー法は、各種の検出器を備えたガスクロマトグラフィーを用いて実施することができるが、通常は、PCB類に対する感度が良好なガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)またはガスクロマトグラフ電子捕獲検出法(GC/ECD法)が好ましい。特に、GC/MS法によれば、分析用試料に含まれるPCB類を異性体や同族体の単位で定量することができ、分析結果からより多くの知見を得ることができる。
また、分析方法としてバイオアッセイ法を採用する場合、抽出溶媒としてはPCB類を溶解可能な親水性溶媒を用いる。このような親水性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)やメタノールが挙げられる。
親水性溶媒を抽出溶媒として用いた場合、工程5において得られる抽出液は、そのままで、イムノアッセイ法やELISA法等のバイオアッセイ法での分析用試料として用いることができる。
本発明の抽出方法は、油性液体に含まれる塩素数が1の低塩化PCB類から塩素数が10の高塩化PCB類までの広範囲の種類のPCB類を高回収率で抽出可能なことから、この抽出方法を用いて得られた抽出液を分析用試料として用いると、油性液体に含まれるPCB類を高精度に測定することができる。このため、本発明の抽出方法は、塩素数が1から10までの広範囲の種類のPCB類を含む可能性がある各種の環境試料(例えば、焼却施設から排出される排ガスや焼却灰、大気、土壌、底質、工業排水並びに海水、河川水、湖沼水および地下水等の環境水)や生体試料(例えば、血液や母乳)に含まれるPCB類の分析用試料を調製する場合において、特に有用である。
上述の実施の形態は、例えば、以下のような変形が可能である。
(1)上述の実施の形態では、第二カラム20の第二層23を金属酸化物修飾酸化アルミニウムにより形成しているが、第二層23は、PCB類の捕捉性を損なわない程度において、金属酸化物修飾酸化アルミナとともに他の材料、例えば、酸化コバルト、酸化ジルコニア、酸化セリウム、酸化チタンまたは酸化鉄等を含んでいてもよい。他の材料は、二種以上のものが用いられてもよい。
(2)上述の実施の形態では、第一カラム10と第二カラム20との間を連結部材30により着脱可能に連結しているが、カラム間の連結には他の手段を用いることもできる。例えば、カラムの連結部に摺り合わせ部を設け、カラム間をこの摺り合わせ部の接続により着脱可能に連結することができる。
(3)上述の実施の形態では、リザーバ50に貯留した脂肪族炭化水素溶媒を加圧装置51により加圧することで第一カラム10へ供給しているが、リザーバ50の脂肪族炭化水素溶媒は、加圧装置51を用いずに自重により自然に第一カラム10へ流下させることもできる。また、脂肪族炭化水素溶媒は、シリンジポンプなどの定量ポンプや吸引装置を用いて第一カラム10へ供給することもできる。さらに、脂肪族炭化水素溶媒は、ピペットなどの器具を用いた手作業により第一カラム10へ供給することもできる。
(4)上述の実施の形態では、第二カラム20の空隙24へ供給した抽出溶媒をアルミナ層23に対して自重により自然に供給するようにしたが、第二カラム20の開口部21または開口部22へ抽出溶媒を供給するためのリザーバを設置し、このリザーバへ供給した抽出溶媒を第二カラム20に対して自重により自然に供給するように変更することもできる。また、抽出溶媒は、シリンジポンプなどの定量ポンプや吸引装置を用いて第二カラム20へ供給することもできる。
(5)上述の実施の形態では、加熱装置60により第二層23を加熱しながら第二カラム20内に不活性ガス等を供給し、第二層23を乾燥処理しているが、第二層23は加熱せずに乾燥処理してもよい。但し、加熱することで第二カラム20内に残留する溶媒を気散させやすく、より短時間で第二層23を乾燥処理することができる。
(6)上述の実施の形態では、第二カラム20へ不活性ガス等や抽出溶媒を供給する際に、第二カラム20を第一カラム10から分離しているが、第二カラム20を第一カラム10から分離せずに、第二カラム20に対して不活性ガス等や抽出溶媒を供給可能なように変更することもできる。これは、例えば、第一カラム10と第二カラム20とを流路切替弁を有する連結装置を用いて連結することで実現することができる。この場合に用いられる流路切替弁は、不活性ガス等の導入口と抽出溶媒の排出口とを有し、また、第一カラム10と第二カラム20とを連絡するための流路、不活性ガス等の導入口と第二カラム20とを連絡するための流路および第二カラム20と抽出溶媒の排出口とを連絡するための流路を有するものであり、流路の切替えにより、第一カラム10から第二カラム20への脂肪族炭化水素溶媒の供給、不活性ガス等の導入口から第二カラム20への不活性ガスの導入、および、開口部22から第二カラム20へ供給した抽出溶媒の排出口からの排出のいずれかを選択可能なものである。
模擬試料の調製
<模擬試料A>
環境水である河川水に対してn−ヘキサンによる抽出操作をすることで得られた抽出液を0.5mLに濃縮した。この濃縮液にPCB類の内標準物質溶液(CIL社の商品名「EC−5411」)50μLを添加し、模擬試料Aを調製した。
<模擬試料B>
0.5mLの蒸留水にPCB類の内標準物質溶液(CIL社の商品名「EC−5411」)50μLを添加し、模擬試料Bを調製した。
金属酸化物修飾酸化アルミニウムの調製
<酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム>
蒸留水10gに硝酸ニッケル六水和物13.09gを溶解した水溶液を調製し、この水溶液の全量と酸化アルミニウム(MP Biomedicals社の商品名「MP Alumina B Super I」)15.0gとを混合することで混合液を得た。この混合液において、酸化アルミニウムの重量(g)あたりの金属濃度(ニッケル濃度)は3mmolである。
ロータリーエバポレータを用いて混合液から水を蒸発させ、固形分を乾燥した。この固形分を温度が1,000℃以下になるよう制御した管状炉に入れ、100mL/分の空気流下で2時間焼成し、続いて100mL/分の窒素気流下で1時間焼成した。その後、窒素の流通を維持した状態で管状炉の加熱を停止し、管状炉を室温まで冷却した。これにより、酸化ニッケルにより修飾された酸化アルミニウムを得た。
<酸化銀修飾酸化アルミニウム>
蒸留水10gに硝酸銀3.39gを溶解した水溶液を調製し、この水溶液の全量と酸化アルミニウム(MP Biomedicals社の商品名「MP Alumina B Super I」)10.0gとを混合することで混合液を得た。この混合液において、酸化アルミニウムの重量(g)あたりの金属濃度(銀濃度)は2mmolである。
ロータリーエバポレータを用いて混合液から水を蒸発させ、固形分を乾燥した。この固形分を温度が1,000℃以下になるよう制御した管状炉に入れ、100mL/分の空気流下で2時間焼成し、続いて100mL/分の窒素気流下で1時間焼成した。その後、窒素の流通を維持した状態で管状炉の加熱を停止し、管状炉を室温まで冷却した。これにより、酸化銀により修飾された酸化アルミニウムを得た。
実施例1
内径13mmで長さ70mmのカラム内に3.8gの硫酸シリカゲル(三浦工業株式会社の商品名「ラピアナ硫酸シリカ」)を高さが40mmになるよう充填し、第一カラムを作成した。また、内径4.6mmで長さ100mmのカラム内に0.6gの酸化ニッケル修飾酸化アルミニウムを高さが35mmになるよう充填し、第二カラムを作成した。
起立状態の第一カラムの下端側へ第二カラムを連結し、第一カラムの上端側へ模擬試料Aの全量とイソオクタン0.45mLとを添加した。そして、20mLのn−ヘキサンを2mL/分の速度で第一カラムの上端へ供給し、第二カラムの下端から流出させた(初期工程)。初期工程の間、第一カラムの硫酸シリカゲル層の温度を室温(20℃)に維持した。そして、n−ヘキサンの供給終了後、第一カラムと第二カラムとを分離し、第二カラムの酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層を室温(20℃)に維持しながらn−ヘキサンの通過方向とは逆方向に窒素ガスを供給することで、第二カラムに残留しているn−ヘキサンを除去した。
次に、第二カラムに対し、n−ヘキサンの通過方向とは逆方向にトルエンを供給し、第二カラムの酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層に捕捉されているPCB類を抽出した。この際、酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層を室温(20℃)に維持した。また、トルエンの供給速度を50μL/分に設定し、第二カラムから排出される初流の400μLをPCB類の抽出液として採取した。模擬試料Aの添加からこの抽出液が得られるまでに要した時間は、0.7時間であった。
採取した抽出液について、PCB類濃度を測定した。ここでは、抽出液に対して回収率算出用の内標準物質溶液(CIL社の商品名「EC−5415」)50μLを添加することで分析用試料を調製し、この分析用試料を平成10年10月に環境庁から提示された「外因性内分泌攪乱化学物質調査暫定マニュアル」に記載の方法に従ってHRGC/LRMS法で分析するとともに、同マニュアルに記載の方法でPCB類濃度を計算した。
実施例2
窒素ガスの供給時およびトルエンの供給時に酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層を85℃に加熱した点を除いて実施例1と同様に操作し、第二カラムから排出される初流の200μLをPCB類の抽出液として採取した。模擬試料Aの添加からPCB類の抽出液を得るまでに要した時間は0.5時間であった。採取した抽出液について、PCB類の濃度を実施例1と同様にして測定した。
実施例3
0.6gの酸化ニッケル修飾酸化アルミニウムに替えて0.6gの酸化銀修飾酸化アルミニウムを用いて第二カラムを作成した点を除き、実施例1と同様に操作してPCB類の抽出液を採取した。模擬試料Aの添加からPCB類の抽出液を得るまでに要した時間は0.7時間であった。採取した抽出液について、そのPCB類の濃度を実施例1と同様にして測定した。
比較例1
平成4年厚生省告示第192号「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」の別表第二に記載の方法(すなわち、先に説明した公定法)に従って模擬試料AからPCB類の分析用試料を調製した。分析用試料の調製に要した時間は約3日であった。また、上記公定法に従い、調製した分析用試料のPCB類濃度をHRGC/HRMS法により測定した。
比較例2
内径13mmで長さ70mmのカラム内に0.6gの硝酸銀シリカゲルを10mmの高さになるよう充填し、その上に3.8gの硫酸シリカゲル(実施例1で用いたものと同じもの)を高さ40mmになるようさらに充填して第一カラムを調製した。また、内径4.6mmで長さ100mmのカラム内に0.6gの酸化ニッケル修飾酸化アルミニウムを高さが35mmになるよう充填し、第二カラムを調製した。
硫酸シリカゲル層が上層になるよう起立させた第一カラムの上端側へ、模擬試料Aの全量とイソオクタン0.45mLとを添加した。この第一カラムの硫酸シリカゲル層を85℃で30分加熱して室温まで冷却した後、第一カラムの下端側へ第二カラムを連結した。そして、20mLのn−ヘキサンを2mL/分の速度で第一カラムの上端へ供給し、第二カラムの下端から流出させた。n−ヘキサンの供給終了後、第一カラムと第二カラムとを分離し、第二カラムの酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層を室温(20℃)に維持しながら窒素ガスを供給することで、第二カラムに残留しているn−ヘキサンを除去した。
次に、第二カラムに対し、n−ヘキサンの通過方向とは逆方向にトルエンを供給し、酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層に捕捉されているPCB類を抽出した。ここでは、酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層を室温(20℃)に維持するとともにトルエンの供給速度を50μL/分に設定し、第二カラムから排出される初流の400μLをPCB類の抽出液として採取した。模擬試料Aの添加からこの抽出液が得られるまでに要した時間は、約2.1時間であった。採取した抽出液について、PCB類の濃度を実施例1と同様にして測定した。
比較例3
第一カラムと第二カラムとを連結する前に、起立させた第一カラムの上端側へ模擬試料Aの全量とイオソクタン0.45mLとを添加し、さらに、第一カラムに充填した硫酸シリカゲル層を85℃に30分加熱して室温まで冷却した点を除き、実施例1と同様に操作してPCB類の抽出液を採取した。模擬試料Aの添加からPCB類の抽出液を得るまでに要した時間は2.1時間であった。採取した抽出液について、PCB類の濃度を実施例1と同様にして測定した。
比較例4
硫酸シリカゲル層を加熱せずに室温(20℃)に維持した状態で第一カラムを第二カラムと連結した点を除き、比較例2と同様に操作してPCB類の抽出液を採取した。模擬試料Aの添加からPCB類の抽出液を得るまでに要した時間は0.7時間であった。採取した抽出液について、PCB類の濃度を実施例1と同様にして測定した。
比較例5
第一カラムにおいて、0.6gの硝酸銀シリカゲルに替えて1.4gの硝酸塩シリカゲルを用いた点、および、硫酸シリカゲル層を加熱せずに室温(20℃)に維持した状態で第一カラムを第二カラムと連結した点を除き、比較例2と同様に操作してPCB類の抽出液を採取した。模擬試料Aの添加からPCB類の抽出液を得るまでに要した時間は0.7時間であった。採取した抽出液について、PCB類の濃度を実施例1と同様にして測定した。
この比較例で用いた硝酸塩シリカゲルは、活性シリカゲル(関東化学株式会社製)50gに対して硝酸銅三水和物13g(硝酸銅換算)と硝酸銀18gとを70mLの蒸留水に溶解して調製した混合水溶液の全量を添加して均一に混合した後、この活性シリカゲルをロータリーエバポレータを用いて減圧下で80℃に加熱することで乾燥処理して調製したものである。この硝酸塩シリカゲルにおいて、銅元素(Cu)と銀元素(Ag)とのモル比(Cu:Ag)は1:1.5である。
比較例6
0.6gの酸化ニッケル修飾酸化アルミニウムに替えて金属酸化物により修飾していない酸化アルミニウム(MP Biomedicals社の商品名「MP Alumina B Super I」)0.6gを用いて第二カラムを作成した点を除き、実施例1と同様に操作してPCB類の抽出液を採取した。模擬試料Aの添加からPCB類の抽出液を得るまでに要した時間は0.7時間であった。採取した抽出液について、PCB類の濃度を実施例1と同様にして測定した。
比較例7
内径13mmで長さ70mmの何も充填しない空の第一カラムと、実施例1で作成したものと同じ第二カラムとを用意した。起立状態の第一カラムの下端側へ第二カラムを連結し、第一カラムへ上端から模擬試料Bの全量と蒸溜水20mLとをこの順に注入し、注入した蒸溜水を第二カラムの下端から流出させた。
第一カラムと第二カラムとを分離し、第二カラムの酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層を85℃に加熱しながら蒸溜水の通過方向とは逆方向に窒素ガスを供給することで、第二カラムに残留している水分を除去し、酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層を乾燥処理した。
次に、酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層を室温(20℃)まで冷却し、同温度に維持した。そして、第二カラムに対し、蒸溜水の通過方向とは逆方向にトルエンを供給し、第二カラムの酸化ニッケル修飾酸化アルミニウム層に捕捉されているPCB類を抽出した。この際、トルエンの供給速度を50μL/分に設定し、第二カラムから排出される初流の400μLをPCB類の抽出液として採取した。模擬試料Bの添加からこの抽出液が得られるまでに要した時間は、1.1時間であった。採取した抽出液について、PCB類の濃度を実施例1と同様にして測定した。
評価
実施例1〜3および比較例1〜7における操作条件等をまとめて表1に示す。また、実施例1〜3および比較例1〜7について、PCB類濃度の測定結果から算出したPCB類の回収率を表2に示す。表2に示したPCB類の回収率は、模擬試料AおよびBのそれぞれの調製において用いた内標準物質溶液およびPCB類濃度の測定時に抽出液に添加した回収率算出用の内標準物質溶液に基づくものである。
Figure 0006086597
Figure 0006086597
1 抽出用カラム
10 第一カラム
13 第一層
20 第二カラム
23 第二層

Claims (4)

  1. ポリ塩化ビフェニル類を含む油性液体から前記ポリ塩化ビフェニル類を抽出するための方法であって、
    硫酸シリカゲルからなる単層の第一層へ前記油性液体を添加する工程1と、
    前記油性液体が添加された前記第一層へ脂肪族炭化水素溶媒を供給して通過させる工程2と、
    金属酸化物修飾酸化アルミニウムを含む第二層へ前記第一層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を供給して通過させる工程3と、
    前記脂肪族炭化水素溶媒が通過した前記第二層へポリ塩化ビフェニル類の抽出溶媒を供給して通過させる工程4と、
    前記第二層を通過した前記抽出溶媒を確保する工程5とを含み、
    前記金属酸化物修飾酸化アルミニウムは、酸化ニッケルおよび酸化銀からなる群から選ばれた少なくとも一つの金属酸化物により修飾された酸化アルミニウムであり、
    工程1および工程2において、前記第一層の温度を35℃未満に設定する、
    ポリ塩化ビフェニル類の抽出方法。
  2. 工程4において、前記第二層に対し、前記脂肪族炭化水素溶媒の通過方向とは逆方向に前記抽出溶媒を供給して通過させる、請求項1に記載のポリ塩化ビフェニル類の抽出方法。
  3. 工程4において前記第二層に対して前記抽出溶媒を供給する前に、前記第二層に残留している前記脂肪族炭化水素溶媒を除去する、請求項1または2に記載のポリ塩化ビフェニル類の抽出方法。
  4. ポリ塩化ビフェニル類を含む油性液体から前記ポリ塩化ビフェニル類を抽出するためのカラムであって、
    硫酸シリカゲルからなる単層の第一層が充填された第一カラムと、
    前記第一カラムの一端に着脱可能に連結された、金属酸化物修飾酸化アルミニウムを含む第二層を充填した第二カラムとを備え、
    前記金属酸化物修飾酸化アルミニウムは、酸化ニッケルおよび酸化銀からなる群から選ばれた少なくとも一つの金属酸化物により修飾された酸化アルミニウムである、
    ポリ塩化ビフェニル類の抽出用カラム。
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