JP5900757B2 - ポリ塩化ビフェニル類の分画方法 - Google Patents

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本発明は、ポリ塩化ビフェニル類の分画方法、特に、ポリ塩化ビフェニル類の脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるポリ塩化ビフェニル類を分画するための方法に関する。
欧州連合(EU)の食品規制基準(COMMISSION REGULATION (EU) No 1259/2011)は、牛肉や豚肉等の食肉並びに卵などの動物性の食品に含まれる有害物質の分析対象として、ポリ塩化ビフェニル類およびダイオキシン類を定めている。
ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)は、209種類が存在し、ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL−PCBs)と、非ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(非DL−PCBs)とに区分される。DL−PCBsは、ダイオキシンであるポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)およびポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)と同様の毒性を示すPCBsの総称であってノンオルソPCBsおよびモノオルソPCBsの2種類からなり、「ダイオキシン類」の用語はこのDL−PCBsを含む意味で用いられている。一方、非DL−PCBsは、DL−PCBs以外のPCBsである。
このように、PCBsは、一部がダイオキシン類として分類されることから、その分析はダイオキシン類とともにするのが好都合である。
食品に含まれるPCBsおよびダイオキシン類(以下、まとめて「PCBs等」という場合がある。)を分析する場合は、先ず、食品の試料からPCBs等を抽出し、分析用試料を確保する必要がある。試料が固形物の場合、例えば、ソックスレー抽出法により固形物からPCBs等を抽出する。また、試料が飲料や食用油等の液状の場合、例えば、液状の食品から、または、液状の食品中に含まれるPCBs等を溶媒に転溶した溶液からフイルタ等の採取器を用いてPCBs等を捕捉して採取した後、採取器を洗浄したり、採取器に対してソックスレー抽出法を適用したりすることで、採取器に採取されたPCBs等を抽出する。そして、このようにして得られたPCBs等の抽出液は、分析用試料として、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)等の分析装置を用いて定量分析される。
上述の抽出液は、PCBs等の分析結果に影響する可能性のある様々な夾雑成分、例えば、PCBs等と化学構造や化学挙動が類似する、ポリ塩素化ジフェニルエーテル(PCDE)等のポリ塩化多環芳香族炭化水素類を含むため、通常、精製処理された後に適宜濃縮され、分析装置へ適用されている。抽出液の精製処理方法として、特許文献1には、精製剤としての硫酸シリカゲルおよび硝酸銀シリカゲルを充填した前段カラムと、吸着剤としての活性炭含有シリカゲルやグラファイトカーボンを充填した後段カラムとを備えたクロマトグラフカラムを用いる方法が記載されている。この方法において、後段カラムの吸着剤としては、活性炭シリカゲルまたはグラファイトカーボンを選択的に用いることができ、また、両者を併用する場合においては、各充填剤を積層した状態または混合した状態で用いることができる。
このクロマトグラフカラムを用いた精製処理方法では、先ず、PCBs等の抽出液を前段カラムに注入し、続いて前段カラムに対して炭化水素溶媒を供給する。この炭化水素溶媒は、注入された抽出液中のPCBs等を溶解して前段カラムおよび後段カラムを通過する。このとき、炭化水素溶媒に溶解したPCBs等は、前段カラムの精製剤を通過し、後段カラムの吸着剤に吸着される。一方、抽出液に含まれる夾雑成分は、PCBs等とともに炭化水素溶媒に溶解し、前段カラムの精製剤を通過するときに一部が分解され、また、一部が吸着される。そして、夾雑成分またはその分解生成物のうち、精製剤において吸着されないものは、炭化水素溶媒に溶解した状態で後段カラムの吸着剤を通過し、カラムから排出される。
次に、前段カラムと後段カラムとを分離し、後段カラムに対してPCBs等を溶解可能なアルキルベンゼンを供給する。そして、後段カラムを通過するアルキルベンゼンを確保すると、夾雑成分が除去された、PCBs等のアルキルベンゼン溶液が得られる。このアルキルベンゼン溶液は、PCBs等の分析用試料として用いることができ、適宜濃縮した後、GC/MS等の分析装置により分析される。
このような精製処理方法では、抽出液に含まれる全種類のPCBsおよびダイオキシン類を後段カラムの吸着剤で吸着し、それらをアルキルベンゼンで抽出することになる。したがって、分析装置においては、アルキルベンゼン溶液に含まれる全種類のPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを同時に分析することになる。
ところが、全種類のPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを同時に含むアルキルベンゼン溶液を分析したとき、その結果は信頼性を欠く可能性がある。例えば、高分解能GC/MSによりアルキルベンゼン溶液を分析する場合、モノオルソPCBsがPCDDsおよびPCDFsの定量分析結果に影響し、逆に、PCDDsおよびPCDFsがモノオルソPCBsの定量分析結果に影響することが知られている。
そこで、PCBs等の分析においては、PCBs等を数種類に分画して分析用試料を調製することが試みられている。例えば、特許文献2には、グラファイト状炭素またはグラファイト状炭素とシリカゲル、活性炭含有シリカゲル、活性炭、アルミナ若しくはゼオライトなどの他の材料との混合物をPCBs等の吸着剤として用いる方法が記載されている。
この方法では、吸着剤を充填したカラムに対し、予め精製したPCBs等の抽出液を供給し、吸着剤にPCBs等を吸着させる。そして、カラムに対して数種類の溶媒を順次供給し、数種類のPCBs等の溶液を調製する。特許文献2は、このような方法により、例えば、非DL−PCBsを含む溶液、モノオルソPCBsを含む溶液並びにノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含む溶液の3種類の溶液を調製できるとしている。
しかし、この方法は、特許文献1に記載の方法と同じく吸着剤に対して全種類のPCBs等を吸着させることになるため、PCBs等の精密な分画が困難である。例えば、モノオルソPCBsを含む溶液にはノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsの一部が混入する可能性があり、また、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含む溶液にはモノオルソPCBsの一部が混入する可能性がある。
特開2002−40007号公報 特開2006−297368号公報
本発明は、PCBsをノンオルソPCBsの画分と、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを含む画分とに高精度に分画できるようにしようとするものである。
本発明に係るポリ塩化ビフェニル類の分画方法は、ポリ塩化ビフェニル類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層とにこの順に通過させる工程を含む。
この分画方法において、ポリ塩化ビフェニル類の脂肪族炭化水素溶媒溶液は、活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層とをこの順に通過するとき、ポリ塩化ビフェニル類のうちのノンオルソPCBsが活性炭含有シリカゲル層またはグラファイト含有シリカゲル層に吸着される。一方、ポリ塩化ビフェニル類のうちのモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsは、脂肪族炭化水素溶媒溶液中に残留し、活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層を通過する。結果的に、脂肪族炭化水素溶媒溶液中のポリ塩化ビフェニル類は、活性炭含有シリカゲル層またはグラファイト含有シリカゲル層に吸着したノンオルソPCBsと、脂肪族炭化水素溶媒溶液中に残留するモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsとに分画される。
本発明の分画方法の一形態では、グラファイト含有シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒溶液をさらにアルミナ層に通過させる。
この場合、活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒溶液は、アルミナ層を通過するとき、残留するモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsがアルミナ層に吸着される。結果的に、脂肪族炭化水素溶媒溶液中のポリ塩化ビフェニル類は、活性炭含有シリカゲル層またはグラファイト含有シリカゲル層に吸着したノンオルソPCBsと、アルミナ層に吸着したモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsとに分画される。
この形態の分画方法は、脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過した活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な溶媒を供給し、活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層を通過した当該溶媒を確保する工程と、脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過したアルミナ層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な溶媒を供給し、アルミナ層を通過した当該溶媒を確保する工程とをさらに含んでいてもよい。
これらの工程を含む場合、活性炭含有シリカゲル層またはグラファイト含有シリカゲル層に吸着したノンオルソPCBs並びにアルミナ層に吸着したモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsは、それぞれ供給された溶媒に溶解することで抽出され、別々の抽出液として得られる。
他の観点に係る本発明は、ポリ塩化ビフェニル類溶液に含まれるポリ塩化ビフェニル類を分析するための試料の調製方法に関するものであり、この調製方法は、硝酸銀シリカゲル層と硫酸シリカゲル層とを含む精製層にポリ塩化ビフェニル類溶液を添加する工程と、ポリ塩化ビフェニル類溶液が添加された精製層に対し、脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、精製層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層とにこの順に通過させる工程と、グラファイト含有シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒をアルミナ層に通過させる工程と、脂肪族炭化水素溶媒が通過したアルミナ層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な溶媒を供給し、アルミナ層を通過した当該溶媒を第1の分析用試料として確保する工程と、脂肪族炭化水素溶媒が通過した活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な溶媒を供給し、活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層を通過した当該溶媒を第2の分析用試料として確保する工程とを含む。
この調製方法において、ポリ塩化ビフェニル類溶液を添加した精製層に対して脂肪族炭化水素溶媒を供給すると、この脂肪族炭化水素溶媒は精製層を通過する。この際、ポリ塩化ビフェニル類溶液に含まれるポリ塩化ビフェニル類および夾雑成分は脂肪族炭化水素溶媒に溶解する。そして、夾雑成分の一部は、精製層の硝酸銀シリカゲル層または硫酸シリカゲル層と反応して分解する。また、夾雑成分の一部および分解生成物は、硝酸銀シリカゲル層または硫酸シリカゲル層に吸着する。一方、ポリ塩化ビフェニル類は、脂肪族炭化水素溶媒に溶解した状態で精製層を通過する。この結果、ポリ塩化ビフェニル類は、夾雑成分の一部から分離されることになる。
精製層を通過した、ポリ塩化ビフェニル類の溶解した脂肪族炭化水素溶媒は、活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層とをこの順に通過するときにポリ塩化ビフェニル類のうちのノンオルソPCBsが活性炭含有シリカゲル層またはグラファイト含有シリカゲル層に吸着し、アルミナ層を通過するときにポリ塩化ビフェニル類のうちのモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsがアルミナ層に吸着する。このため、第1の分析用試料はモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの分析用試料となり、第2の分析用試料はノンオルソPCBsの分析用試料となる。つまり、この調製方法によれば、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの分析用試料と、ノンオルソPCBsの分析用試料とを別々に調製することができる。
この調製方法では、通常、精製層の硝酸銀シリカゲル層に対してポリ塩化ビフェニル類溶液を添加するのが好ましい。
さらに他の観点に係る本発明は、ポリ塩化ビフェニル類溶液に含まれるポリ塩化ビフェニル類の分析方法に関するものであり、この分析方法は、ガスクロマトグラフィー法またはバイオアッセイ法により、本発明の調製方法により調製された第1の分析用試料と第2の分析用試料とを分析する工程を含む。
この分析方法は、第1の分析用試料の分析によってモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを高精度に分析することができ、また、第2の分析用試料の分析によってノンオルソPCBsを高精度に分析することができる。
本発明に係るポリ塩化ビフェニル類の分画方法は、ポリ塩化ビフェニル類の脂肪族炭化水素溶媒溶液中のポリ塩化ビフェニル類をノンオルソPCBsの画分と、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの画分とに分画することができる。
本発明に係るポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製方法は、ポリ塩化ビフェニル類溶液から、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの分析用試料と、ノンオルソPCBsの分析用試料とを別々に調製することができる。
本発明に係るポリ塩化ビフェニル類の分析方法は、本発明の調製方法により調製された第1の分析用試料の分析によってモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを高精度に分析することができ、また、同調製方法により調製された第2の分析用試料の分析によってノンオルソPCBsを高精度に分析することができる。
本発明に係る分析用試料の調製方法を実施するための装置の第1例の概要の部分断面図。 図1に示す装置の変更例の概要の部分断面図。 本発明に係る分析用試料の調製方法を実施するための装置の第2例の概要の部分断面図。 本発明に係る分析用試料の調製方法を実施するための分画器具の一例の概要を示す断面図。 図4に示す分画器具の変更例の一部の概要を示す断面図。
図を参照して、本発明に係る分析用試料の調製方法の実施の形態を以下に説明する。各図は、本発明の調製方法を実施するために用いられる装置または分画器具の例の概要を示したものであり、各部の構造、形状および大きさ等を正確に反映したものではない。
第1の形態
図1を参照して、本発明に係る分析用試料の調製方法を実施可能な装置の第1例を説明する。図1において、調製装置100は、ポリ塩化ビフェニル類溶液からポリ塩化ビフェニル類の分析用試料を調製するためのものであり、ポリ塩化ビフェニル類の分画器具200、加熱装置300、溶媒供給装置400、溶媒流出経路500、第1抽出経路600および第2抽出経路700を主に備えている。
分画器具200は、管体210を備えている。管体210は、少なくとも耐溶媒性、耐薬品性および耐熱性を有する材料、例えば、これらの特性を備えたガラス、樹脂または金属等からなり、一端に開口211を有し、他端に開口212を有する、両端が開放した一連の円筒状に形成されている。また、管体210は、開口211側に形成された、径が相対的に大きく設定された大径部213と、開口212側に形成された、径が相対的に小さく設定された小径部214とを有している。小径部214は、開口としての2本の分岐路、すなわち、間隔をおいて設けられた第1分岐路215と第2分岐路216とを有している。
管体210は、起立状態で保持されており、内部に精製層220と吸着層230とが充填されている。
精製層220は、大径部213内に充填されており、開口211側から順に硝酸銀シリカゲル層221、第1活性シリカゲル層223、硫酸シリカゲル層222および第2活性シリカゲル層224を配置した多層シリカゲル層である。
硝酸銀シリカゲル層221は、硝酸銀シリカゲルからなるものであり、ポリ塩化ビフェニル類溶液に混入している夾雑成分の一部を分解または吸着するためのものである。ここで用いられる硝酸銀シリカゲルは、粒径が40〜210μm程度の粒状のシリカゲル(通常は加熱により活性度を高めた活性シリカゲル)の表面に硝酸銀の水溶液を均一に添加した後、減圧加熱により水分を除去することで調製されたものである。シリカゲルに対する硝酸銀水溶液の添加量は、通常、シリカゲルの重量の5〜20%に設定するのが好ましい。
硝酸銀シリカゲル層221における硝酸銀シリカゲルの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3〜0.8g/cmに設定するのが好ましく、0.4〜0.7g/cmに設定するのがより好ましい。
硫酸シリカゲル層222は、硫酸シリカゲルからなるものであり、ポリ塩化ビフェニル類溶液に混入しているポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFs以外の夾雑成分の一部を分解または吸着するためのものである。ここで用いられる硫酸シリカゲルは、粒径が40〜210μm程度の粒状のシリカゲル(通常は加熱により活性度を高めた活性シリカゲル)の表面に濃硫酸を均一に添加することで調製されたものである。シリカゲルに対する濃硫酸の添加量は、通常、シリカゲルの重量の10〜130%に設定するのが好ましい。
硫酸シリカゲル層222における硫酸シリカゲルの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3〜1.1g/cmに設定するのが好ましく、0.5〜1.0g/cmに設定するのがより好ましい。
第1活性シリカゲル層223は、硝酸銀シリカゲル層221と硫酸シリカゲル層222とが直接的に接触することで相互に化学反応するのを避けるために配置されており、粒径が40〜210μm程度の粒状のシリカゲルからなるものである。ここで用いられるシリカゲルは、加熱することで活性度を適宜に高めたものであってもよい。
第2活性シリカゲル層224は、第1活性シリカゲル層223と同様のシリカゲルからなるものであり、硫酸シリカゲル層222と反応して分解された夾雑成分の一部、分解生成物および硫酸シリカゲル層222から溶出する硫酸を吸着し、これらが吸着層230へ移動するのを防止するためのものである。
精製層220において、硝酸銀シリカゲル層221と硫酸シリカゲル層222との比率は、硝酸銀シリカゲル層221に対する硫酸シリカゲル層222の重量比を1.0〜50倍に設定するのが好ましく、3.0〜30倍に設定するのがより好ましい。硫酸シリカゲル層222の重量比が50倍を超えるときは、硝酸銀シリカゲル層221の割合が相対的に小さくなるため、精製層220において、ポリ塩化ビフェニル類溶液に含まれる夾雑成分の吸着能が不十分になる可能性がある。逆に、硫酸シリカゲル層222の重量比が1.0倍未満のときは、精製層220において、ポリ塩化ビフェニル類溶液に含まれる夾雑成分の分解能が不十分になる可能性がある。
吸着層230は、ポリ塩化ビフェニル類溶液に含まれるポリ塩化ビフェニル類を分画するためのものであり、活性炭含有シリカゲル層241およびグラファイト含有シリカゲル層242を含む第1吸着層240と、アルミナ層251を含む第2吸着層250とを備えている。第1吸着層240と第2吸着層250とは、間隔を設けて小径部214内に充填されている。より具体的には、第1吸着層240は、第1分岐路215と第2分岐路216との間において小径部214内に充填されており、第2吸着層250は、第2分岐路216と開口212との間において小径部214内に充填されている。
第1吸着層240の活性炭含有シリカゲル層241は、第1吸着層240において精製層220側に配置されており、活性炭と粒状のシリカゲルとの混合物からなるものである。このような混合物は、活性炭とシリカゲルとを単純に混合することで得られる活性炭分散シリカゲルであってもよいし、珪酸ナトリウム(水ガラス)と活性炭との混合物を鉱酸と反応させることで得られる活性炭埋蔵シリカゲルであってもよい。活性炭は、市販の各種のものを用いることができるが、通常、粒径が40〜100μm程度の粒状または粉末状であって、BET法により測定した比表面積が100〜1,200m/g、特に500〜1,000m/gのものが好ましい。活性炭分散シリカゲルにおけるシリカゲルは、第1活性シリカゲル層223と同様のものが用いられる。
活性炭とシリカゲルとの混合物における活性炭の割合は、0.013〜5.0重量%が好ましく、0.1〜3.0重量%がより好ましい。活性炭が0.013重量%未満の場合または5.0重量%を超える場合は、第1吸着層240において、調製装置100により処理するポリ塩化ビフェニル類溶液中にPCBsとともに混在することが多いPCDDsおよびPCDFsのうちの塩素数の多いものの吸着能が低下し、これらがモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの分析用試料中に混入しやすくなる可能性がある。
活性炭含有シリカゲル層241の充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3〜0.8g/cmに設定するのが好ましく、0.45〜0.6g/cmに設定するのがより好ましい。
第1吸着層240のグラファイト含有シリカゲル層242は、第1吸着層240において、活性炭含有シリカゲル層241に隣接して配置されており、グラファイトと粒状のシリカゲルとを単純に混合することで得られる混合物からなるものである。グラファイトは、市販の各種のものを用いることができるが、通常、粒径が40〜200μm程度の粒状または粉末状であって、BET法により測定した比表面積が10〜500m/g、特に50〜200m/gのものが好ましい。また、シリカゲルは、第1活性シリカゲル層223と同様のものが用いられる。
グラファイトとシリカゲルとの混合物におけるグラファイトの割合は、2.5〜50重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましい。グラファイトが2.5重量%未満の場合は、第1吸着層240において、ノンオルソPCBsの吸着能が低下する可能性がある。逆に、グラファイトが50重量%を超える場合は、第1吸着層240において、非DL−PCBs、特に、塩素数が1〜2の非DL−PCBsが吸着されやすくなる可能性がある。
グラファイト含有シリカゲル層242の充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.2〜0.6g/cmに設定するのが好ましく、0.3〜0.5g/cmに設定するのがより好ましい。
第1吸着層240において、活性炭含有シリカゲル層241とグラファイト含有シリカゲル層242との割合は、前者(A)に対する後者(B)の体積比(A:B)が1:1〜1:12になるよう設定するのが好ましく、1:1〜1:9になるよう設定するのがより好ましい。この体積比よりも活性炭含有シリカゲル層241の割合が少ない場合、第1吸着層240において、調製装置100により処理するポリ塩化ビフェニル類溶液中にPCBsとともに混在することが多いPCDDsおよびPCDFsの一部、特に、塩素数が8のPCDDsおよびPCDFsの吸着能が低下する可能性がある。逆に、活性炭含有シリカゲル層241の割合が多い場合は、第1吸着層240において、モノオルソPCBsが吸着されやすくなる可能性がある。
第2吸着層250のアルミナ層251は、粒状のアルミナからなるものである。ここで用いられるアルミナは、塩基性アルミナ、中性アルミナおよび酸性アルミナのいずれのものであってもよい。また、アルミナの活性度は、特に限定されるものではない。アルミナの好ましい粒径は、通常、40〜300μmである。
アルミナ層251におけるアルミナの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜1.2g/cmに設定するのが好ましく、0.8〜1.1g/cmに設定するのがより好ましい。
分画器具200の大きさは、調製装置100により処理するポリ塩化ビフェニル類溶液の量に応じて適宜設定することができるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ塩化ビフェニル類溶液量が1〜20mL程度の場合、大径部213は、精製層220を充填可能な部分の大きさが内径10〜20mmで長さが100〜300mm程度に設定されているのが好ましく、また、小径部214は、内径3〜10mmで、第1吸着層240を充填可能な部分の長さが20〜80mm程度に、また、第2吸着層250を充填可能な部分の長さが20〜80mm程度に設定されているのが好ましい。
加熱装置300は、大径部213の外周を囲むように配置されており、精製層220の硝酸銀シリカゲル層221および第1活性シリカゲル層223と、硫酸シリカゲル層222の一部、すなわち、硝酸銀シリカゲル層221近傍部分とを加熱するためのものである。
溶媒供給装置400は、第1溶媒容器410から管体210へ延びる第1溶媒供給路420を有している。第1溶媒供給路420は、管体210の開口211に対して着脱可能であり、開口211へ装着されたときに開口211を気密に閉鎖可能である。また、第1溶媒供給路420は、第1溶媒容器410側から順に、空気導入弁423、第1溶媒容器410に貯留された溶媒を管体210へ供給するための第1ポンプ421および第1弁422を有している。空気導入弁423は、一端が開放した空気導入路424を有する三方弁であり、流路を空気導入路424側または第1溶媒容器410側のいずれかに切換えるためのものである。第1弁422は、二方弁であり、第1溶媒供給路420の解放と閉鎖とを切換えるためのものである。
第1溶媒容器410に貯留される溶媒は、ポリ塩化ビフェニル類を溶解可能なものであり、通常、脂肪族炭化水素溶媒、好ましくは炭素数が5〜8個の脂肪族飽和炭化水素溶媒である。例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンなどである。これらの溶媒は、適宜混合して用いられてもよい。
溶媒流出経路500は、管体210の開口212に対して気密に接続された流路510を有している。流路510は、第2弁520を有している。第2弁520は三方弁であり、管体210からの溶媒を廃棄するための廃棄経路531と、管体210に対して溶媒を供給するための第2溶媒供給路541とが連絡しており、流路510が廃棄経路531または第2溶媒供給路541のいずれか一方に連絡するよう切換えるためのものである。
第2溶媒供給路541は、第2ポンプ542を有しており、分画器具200で捕捉されたポリ塩化ビフェニル類を抽出するための溶媒を貯留する第2溶媒容器543に連絡している。第2溶媒容器543に貯留する抽出溶媒は、後述するポリ塩化ビフェニル類の分析方法に応じて選択することができる。分析方法としてガスクロマトグラフィー法を採用する場合は、それに適した溶媒、例えば、トルエンまたはベンゼンを用いることができる。また、トルエンまたはベンゼンに対して脂肪族炭化水素溶媒または有機塩素系溶媒を添加した混合溶媒を用いることもできる。混合溶媒を用いる場合、トルエンまたはベンゼンの割合は50重量%以上に設定する。混合溶媒において用いられる脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンなどが挙げられる。また、有機塩素系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタンまたはテトラクロロメタンなどが挙げられる。これらの抽出溶媒のうち、少量の使用で分画器具200からポリ塩化ビフェニル類を抽出できることから、トルエンが特に好ましい。
分析方法としてバイオアッセイ法を採用する場合は、それに適した溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)やメタノール等の親水性溶媒が用いられる。
第1抽出経路600は、第1分岐路215から延びる第1回収経路610を有している。第1回収経路610は、一端が第1分岐路215に気密に連絡しており、他端が溶媒を回収するための第1回収容器620内に気密に挿入されている。第1回収容器620には、第1回収経路610とは別に第1通気経路630の一端が気密に挿入されている。第1通気経路630は、他端に第3弁631を備えている。第3弁631は三方弁であり、一端が開放した開放路632と、第1通気経路630へ圧縮空気を送るためのコンプレッサー633を備えた空気供給経路634とが連絡しており、第1通気経路630が開放路632または空気供給経路634のいずれか一方に連絡するよう切換えるためのものである。
第2抽出経路700は、第2分岐路216から延びる第2回収経路710を有している。第2回収経路710は、一端が第2分岐路216に気密に連絡しており、他端が溶媒を回収するための第2回収容器720内に気密に挿入されている。第2回収容器720には、第2回収経路710とは別に第2通気経路730の一端が気密に挿入されている。第2通気経路730は、第4弁731を備えている。第4弁731は二方弁であり、第2通気経路730の開放と閉鎖とを切換えるためのものである。
次に、上述の調製装置100を用いたポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製方法を説明する。先ず、調製装置100において、第1弁422、空気導入弁423、第2弁520、第3弁631および第4弁731を所定の初期状態に設定する。すなわち、第1弁422は開放状態に設定し、空気導入弁423は第1溶媒容器410側に連絡するよう設定する。また、第2弁520は流路510が廃棄経路531と連絡するよう設定する。さらに、第3弁631は第1通気経路630と空気供給経路634とが連絡するよう設定し、第4弁731は閉鎖状態に設定する。
分析用試料の調製方法は、主に、次のような分画工程と抽出工程とを含む。
<ポリ塩化ビフェニル類の分画工程>
初期状態への設定後、分画器具200にポリ塩化ビフェニル類溶液を注入する。ここでは、管体210から第1溶媒供給路420を取り外し、開口211から精製層220に対してポリ塩化ビフェニル類溶液を注入する。そして、管体210に第1溶媒供給路420を装着した後、加熱装置300を作動させ、精製層220の一部、すなわち、硝酸銀シリカゲル層221および第1活性シリカゲル層223の全体並びに硫酸シリカゲル層222の一部を加熱する。
ここで注入するポリ塩化ビフェニル類溶液は、例えば、大気や土壌等の環境試料、トランスやコンデンサなどの電気機器の電気絶縁油および食品試料等のポリ塩化ビフェニル類を含む可能性のある試料から溶媒を用いてポリ塩化ビフェニル類を抽出した抽出液であるが、ポリ塩化ビフェニル類を含む可能性のある電気絶縁油そのものや魚油(フィッシュオイル)等の油状の食品そのものでもよい。このようなポリ塩化ビフェニル類溶液は、ポリ塩化ビフェニル類と化学構造や化学挙動が類似し、ポリ塩化ビフェニル類の分析結果に影響を与える可能性があるPCDDs、PCDFsおよびPCDE等のポリ塩化多環芳香族炭化水素類などを夾雑成分として含むことが多い。
また、土壌試料からの抽出液の場合、この抽出液は、土壌に多く含まれるパラフィン類(直鎖炭化水素化合物類)を夾雑成分として含むことが多い。パラフィン類は、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsとともに炭素系の吸着剤に吸着されやすく、また、当該吸着剤からノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsとともに抽出されやすいため、ポリ塩化ビフェニル類をGC/MS法(特に、GC−HRMS法)により分析する場合において、分析精度に影響するロックマス変動の原因物質として知られている。
ポリ塩化ビフェニル類の抽出液は、通常、脂肪族炭化水素溶媒を用いたものであれば、そのまま分画器具200へ注入することができる。また、抽出液が脂肪族炭化水素溶媒以外の有機溶媒、例えばトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒を用いた抽出により得られたものの場合、当該抽出液は、抽出用に用いた芳香族炭化水素溶媒を脂肪族炭化水素溶媒に置換することで分画器具200へ注入することができる。抽出あるいは溶媒置換に用いられる脂肪族炭化水素溶媒は、通常、炭素数が5〜10の脂肪族炭化水素溶媒が好ましく、例えば、n−ヘキサン、イソオクタン、ノナンおよびデカンなどを挙げることができる。特に、安価なn−ヘキサンが好ましい。
分画器具200へのポリ塩化ビフェニル類溶液の注入量は、通常、1〜10mL程度が好ましい。注入する溶液は、溶媒の一部を留去することで濃縮しておくこともできる。
ポリ塩化ビフェニル類溶液が電気絶縁油や魚油等の油状のものの場合、このポリ塩化ビフェニル類溶液は、それを溶解可能な脂肪族炭化水素溶媒とともに、または、当該溶媒に予め溶解した溶液として分画器具200に注入することもできる。この場合、ポリ塩化ビフェニル類溶液と脂肪族炭化水素溶媒との合計量が上記注入量になるよう設定する。
注入したポリ塩化ビフェニル類溶液は、硝酸銀シリカゲル層221の上部に浸透し、加熱装置300により精製層220の一部とともに加熱される。加熱装置300による加熱温度は、35℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上に設定する。この加熱により、溶液に含まれるポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFs以外の夾雑成分の一部が精製層220と反応し、分解される。加熱温度が35℃未満の場合は、夾雑成分と精製層220との反応が進行しにくくなり、ポリ塩化ビフェニル類の分析用試料に夾雑成分の一部が残留しやすくなる可能性がある。加熱温度の上限は、特に限定されるものではないが、通常は安全性の観点から沸騰温度以下が好ましい。
加熱時において、硝酸銀シリカゲル層221および硫酸シリカゲル層222は、第1活性シリカゲル層223を挟んで積層されているため、相互の反応が抑制される。
次に、加熱開始から10〜60分経過後に溶媒供給装置400から分画器具200に溶媒を供給する。この際、加熱装置300は、作動させたままでもよいし、停止してもよい。この工程では、第1弁422を開放状態に設定して第1ポンプ421を作動させ、第1溶媒容器410に貯留した適量の溶媒を第1溶媒供給路420を通じて開口211から管体210内へ供給する。この溶媒は、ポリ塩化ビフェニル類溶液に含まれるポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFs、夾雑成分の分解生成物および分解されずに残留している夾雑成分を溶解し、ポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsを含む脂肪族炭化水素溶媒溶液として精製層220を通過する。この際、分解生成物および夾雑成分の一部は、硝酸銀シリカゲル層221、第1活性シリカゲル層223、硫酸シリカゲル層222および第2活性シリカゲル層224に吸着する。また、精製層220を通過する溶媒は、加熱装置300での非加熱部分、すなわち、硫酸シリカゲル層222の下部および第2活性シリカゲル層224を通過するときに自然に冷却される。
精製層220を通過した溶媒は、吸着層230へ流れて第1吸着層240と第2吸着層250とを通過し、開口212から流路510へ流れて廃棄経路531を通じて廃棄される。この際、精製層220からの溶媒に含まれるポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsは、吸着層230に吸着され、溶媒から分離される。吸着層230において、ポリ塩化ビフェニル類のうちのノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsは第1吸着層240に吸着され、また、ポリ塩化ビフェニル類のうちのモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsは第2吸着層250に吸着される。したがって、溶媒に含まれるポリ塩化ビフェニル類は、吸着層230において、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含む群と、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを含む群とに分画される。
精製層220を通過した溶媒に含まれる夾雑成分は、一部が溶媒とともに吸着層230を通過して廃棄され、また、一部が吸着層230に吸着される。例えば、PCDEは、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsとともに第2吸着層250に吸着される。また、パラフィン類は、吸着層230を通過し、廃棄経路531を通じて廃棄される。
<ポリ塩化ビフェニル類の抽出工程>
次に、吸着層230に吸着されたポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsを溶媒で抽出し、これらの分析用試料を調製する。この調製の前に、調製装置100では、精製層220および吸着層230を乾燥処理する。ここでは、先ず、溶媒供給装置400の空気導入弁423を空気導入路424側に切換える。そして、第1ポンプ421を作動させ、空気導入路424から空気を吸引する。
空気導入路424から吸引された空気は、第1溶媒供給路420を通じて開口211から管体210内へ供給され、精製層220および吸着層230を通過して開口212から流路510へ流れ、廃棄経路531を通じて排出される。この際、精製層220に残留する溶媒は、通過する空気により圧し出され、吸着層230を通過して空気とともに廃棄経路531から排出される。この結果、精製層220は乾燥処理される。
次に、第1ポンプ421を停止するとともに第1弁422を閉鎖状態に切換え、第1抽出経路600においてコンプレッサー633を作動させる。
コンプレッサー633の作動により、第1通気経路630、第1回収容器620および第1回収経路610を通じて空気供給経路634から第1分岐路215に圧縮空気が供給される。この圧縮空気は、吸着層230を通過して開口212から流路510へ流れ、廃棄経路531を通じて排出される。この際、吸着層230の各層に残留する溶媒は圧縮空気により圧し出され、圧縮空気とともに廃棄経路531から排出される。この結果、吸着層230の各層は乾燥処理される。
分析用試料を調製するための最初の工程では、コンプレッサー633を停止するとともに、第2抽出経路700の第4弁731を開放状態に切換える。また、溶媒流出経路500において、流路510が第2溶媒供給路541と連絡するよう第2弁520を切換え、第2ポンプ542を作動する。これにより、第2溶媒供給路541および流路510を通じ、第2溶媒容器543に貯留された溶媒の適量を開口212から管体210内に供給する。
管体210内に供給された溶媒は、第2吸着層250を通過して第2分岐路216へ流れ、第2抽出経路700の第2回収経路710を通じて第2回収容器720に回収される。この際、溶媒は、第2吸着層250に吸着したモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを溶解し、これらのPCBsを抽出した溶液、すなわち、第1の分析用試料として第2回収容器720に回収される。
この工程では、第2吸着層250を加熱することができる。第2吸着層250を加熱した場合、より少量の溶媒でモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを第2吸着層250から抽出することができる。第2吸着層250の加熱温度は、通常、95℃以下に制御するのが好ましい。
分析用試料を調製するための次の工程では、第2ポンプ542を停止した後、第1抽出経路600において、第1通気経路630と開放路632とが連絡するよう第3弁631を切換え、第2抽出経路700の第4弁731を閉鎖状態に切換える。そして、溶媒流出経路500において、流路510が第2溶媒供給路541と連絡するよう第2弁520を維持した状態で第2ポンプ542を作動する。これにより、第2溶媒供給路541および流路510を通じ、第2溶媒容器543に貯留された溶媒の適量を開口212から管体210内に供給する。
管体210内に供給された溶媒は、第2吸着層250および第1吸着層240をこの順に通過して第1分岐路215へ流れ、第1抽出経路600の第1回収経路610を通じて第1回収容器620に回収される。この際、溶媒は、第1吸着層240に吸着したノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを溶解し、これらを抽出した溶液、すなわち、第2の分析用試料として第1回収容器620に回収される。
この工程では、第1吸着層240を加熱することができる。第1吸着層240を加熱した場合、より少量の溶媒でノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを第1吸着層240から抽出することができる。第1吸着層240の加熱温度は、通常、80℃以上95℃以下に設定するのが好ましい。
以上の抽出工程により、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの分析用試料と、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsの分析用試料とが分別して得られる。
このようにして調製された2種類の分析用試料は、それぞれ別々に分析に適用される。分析方法としては、吸着層230からポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsを抽出するために用いた溶媒の種類に応じ、通常、GC−HRMS、GC−MSMS、GC−QMS若しくはイオントラップGC/MS等のGC/MS法またはGC/ECD法等のガスクロマトグラフィー法またはバイオアッセイ法を採用することができる。
モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの分析用試料の分析では、この分析用試料がノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを実質的に含まないことから、これらによる影響を受けずにモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを高精度に定量することができる。このため、欧州連合(EU)の食品規制基準(COMMISSION REGULATION (EU) No 1259/2011)において分析対象とされている所定の非DL−PCBs(IUPAC番号が#28、#52、#101、#138、#153および#180である、塩素数が3〜7の6種類のPCBs)は、この分析用試料の分析により定量することができる。
一方、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsの分析用試料の分析では、この分析用試料がモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを実質的に含まないことから、これらのPCBsによる影響を受けずにノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを高精度に定量することができる。
なお、GC/MS法としてGC−TOFMSを用いることもでき、この場合、2種類の分析用試料を混合することで同時に分析することができる。
調製装置100において、第2抽出経路700は、図2に示すように変更することができる。変更された第2抽出経路700は、第2分岐路216から延びる溶媒経路740を有している。溶媒経路740は、一端が第2分岐路216に気密に連絡しており、他端に第4弁741を備えている。第4弁741は、三方弁であって溶媒回収経路742と第3溶媒供給路743とが連絡しており、溶媒経路740が溶媒回収経路742または第3溶媒供給路743のいずれか一方に連絡するよう切換えるためのものである。
溶媒回収経路742は、溶媒を回収するための第2回収容器744に連絡している。第2回収容器744は、その内部と外部とを通じる通気管745を有している。第3溶媒供給路743は、第3溶媒容器746に連絡しており、第3溶媒容器746に貯留された溶媒を送り出すための第3ポンプ747を有している。
この変形例において、第2溶媒容器543は、第2吸着層250に吸着したモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを抽出可能な溶媒を貯留し、また、第3溶媒容器746は、第1吸着層240に吸着したノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを抽出可能な溶媒を貯留する。各容器543、746に貯留する溶媒は、ポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsの分析方法に応じて選択することができる。
具体的には、分析方法としてガスクロマトグラフィー法を採用する場合、第3溶媒容器746に貯留する溶媒としては、例えば、トルエンまたはベンゼンを用いることができる。また、トルエンまたはベンゼンに対して脂肪族炭化水素溶媒または有機塩素系溶媒を添加した混合溶媒を用いることもできる。混合溶媒を用いる場合、トルエンまたはベンゼンの割合は50重量%以上に設定する。混合溶媒において用いられる脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンなどが挙げられる。また、有機塩素系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタンまたはテトラクロロメタンなどが挙げられる。これらの抽出溶媒のうち、少量の使用で目的の化合物を抽出できることから、トルエンが特に好ましい。一方、第2溶媒容器543に貯留する溶媒としては、第3溶媒容器746に貯留するものと同様のものの他、有機塩素系溶媒、有機塩素系溶媒と脂肪族炭化水素溶媒との混合溶媒または脂肪族炭化水素溶媒に対して少量のトルエンを添加した混合溶媒を用いることができる。
また、分析方法としてバイオアッセイ法を採用する場合は、第2溶媒容器543および第3溶媒容器746に貯留する溶媒として、ジメチルスルホキシド(DMSO)やメタノール等の親水性溶媒を用いることができる。
第2抽出経路700を変更した調製装置100を用いたポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製方法では、初期状態において、溶媒経路740が第3溶媒供給路743と連絡するよう第4弁741を設定する。そして、既述のようにポリ塩化ビフェニル類の分画工程を実行した後、ポリ塩化ビフェニル類の抽出工程を実行する。
ポリ塩化ビフェニル類の抽出工程では、既述のように精製層220および吸着層230の各層を乾燥処理した後、コンプレッサー633を停止するとともに、第2抽出経路700において、溶媒経路740が溶媒回収経路742と連絡するよう第4弁741を切換える。また、溶媒流出経路500において、流路510が第2溶媒供給路541と連絡するよう第2弁520を切換え、第2ポンプ542を作動する。これにより、第2溶媒供給路541および流路510を通じ、第2溶媒容器543に貯留された溶媒の適量を開口212から管体210内に供給する。
管体210内に供給された溶媒は、第2吸着層250を通過して第2分岐路216へ流れ、第2抽出経路700の溶媒経路740を通じて第2回収容器744に回収される。この際、溶媒は、第2吸着層250に吸着したモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを溶解し、これらのPCBsの溶液、すなわち、第1の分析用試料として第2回収容器744に回収される。
分析用試料を調製するための次の工程では、第2ポンプ542を停止した後、第1抽出経路600において、第1通気経路630と開放路632とが連絡するよう第3弁631を切換え、また、第2抽出経路700において、溶媒経路740が第3溶媒供給路743と連絡するよう第4弁741を切換える。そして、第3ポンプ747を作動し、第3溶媒供給路743および溶媒経路740を通じ、第3溶媒容器746に貯留された溶媒の適量を第2分岐路216から管体210内へ供給する。
管体210内へ供給された溶媒は、第1吸着層240を通過して第1分岐路215へ流れ、第1抽出経路600の第1回収経路610を通じて第1回収容器620に回収される。この際、溶媒は、第1吸着層240に吸着したノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを溶解し、これらの化合物の溶液、すなわち、第2の分析用試料として第1回収容器620に回収される。この第2の分析用試料は、溶媒が第2吸着層250を通過せずに調製されるものであるため、より高精度にモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsから分画されたものになる。
得られた第1の分析用試料および第2の分析用試料は、既述のように、ポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsの分析に適用される。
第2抽出経路700を図2のように変更した調製装置100では、ポリ塩化ビフェニル類の抽出工程において、第1吸着層240からのノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsの抽出と、第2吸着層250からのモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの抽出との順序を入れ替えることもできる。すなわち、第1吸着層240からノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを最初に抽出した後、第2吸着層250からモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを抽出することもできる。
第2の形態
図3を参照して、本発明に係る分析用試料の調製方法を実施可能な装置の第2例を説明する。図3において、調製装置100は、ガスクロマトグラフィー法による分析に適した分析用試料を調製可能なものであり、分画器具200、加熱装置300、溶媒供給装置400、溶媒流出経路550および抽出経路650を主に備えている。
分画器具200は、管体210の小径部214および吸着層230の構造において、第1の形態で説明した分画器具200と相違する。具体的には、小径部214は、分岐路として第1分岐路215のみを有している。また、吸着層230は、第1吸着層240と第2吸着層250とが密接している。このため、小径部214は、第1の形態で説明した分画器具200のものに比べて長さが短縮されている。
加熱装置300および溶媒供給装置400は、第1の形態で説明したとおりである。
溶媒流出経路550は、管体210の開口212に対して気密に接続された流路551を有している。流路551は、第2弁552を有している。第2弁552は四方弁であり、管体210からの溶媒を廃棄するための廃棄経路553、管体210からの溶媒を回収するための回収経路554および管体210に対して溶媒を供給するための供給経路555が連絡しており、流路551が廃棄経路553、回収経路554および供給経路555のうちのいずれか一つに連絡するよう切換えるためのものである。
回収経路554は、溶媒の回収容器556を有しており、この回収容器556は、その内部と外部とを通じる通気管557を有している。供給経路555は、第2ポンプ558を有しており、分画器具200で捕捉されたポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsの抽出溶媒を貯留するための第2溶媒容器559に連絡している。
第2溶媒容器559に貯留される抽出溶媒は、ポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsを溶解可能なものであり、トルエンまたはベンゼンを用いることができる。また、トルエンまたはベンゼンに対して脂肪族炭化水素溶媒または有機塩素系溶媒を添加した混合溶媒を用いることもできる。混合溶媒を用いる場合、トルエンまたはベンゼンの割合は50重量%以上に設定する。これらの混合溶媒において用いられる脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンなどが挙げられる。また、有機塩素系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタンまたはテトラクロロメタンなどが挙げられる。これらの抽出溶媒のうち、少量の使用で分画器具200からポリ塩化ビフェニル類を抽出できることから、トルエンが特に好ましい。
抽出経路650は、第1分岐路215から延びる溶媒経路651を有している。溶媒経路651は、一端が第1分岐路215に気密に連絡しており、他端が第3弁652を備えている。第3弁652は四方弁であり、圧縮空気を送るためのコンプレッサー654を備えた空気供給経路653、第1分岐路215からの溶媒を回収するための回収経路655および管体210に対して溶媒を供給するための供給経路656が連絡しており、溶媒経路651が空気供給経路653、回収経路655および供給経路656のうちのいずれか一つに連絡するよう切換えるためのものである。
回収経路655は、溶媒を回収するための回収容器657を有しており、この回収容器657は、その内部と外部とを通じる通気管658を有している。供給経路656は、第3ポンプ659を有しており、分画器具200で捕捉されたノモオルソPCBsおよび非DL−PCBsの抽出溶媒を貯留するための第3溶媒容器660に連絡している。
第3溶媒容器660に貯留される抽出溶媒は、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを実質的に溶解せず、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの溶解性に優れたものであり、例えば、有機塩素系溶媒、有機塩素系溶媒に対して脂肪族炭化水素溶媒を添加した混合溶媒または脂肪族炭化水素溶媒に対してトルエンを添加した混合溶媒(トルエンの含有割合は、通常、10〜15重量%程度。)等である。ここで用いられる有機塩素系溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタンまたはテトラクロロメタンなどである。また、脂肪族炭化水素溶媒は、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンなどである。
次に、上述の調製装置100を用いたポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製方法を説明する。先ず、調製装置100において、第1弁422、空気導入弁423、第2弁552および第3弁652を所定の初期状態に設定する。すなわち、第1弁422は開放状態に設定し、空気導入弁423は第1溶媒容器410側に連絡するよう設定する。また、第2弁552は、流路551が廃棄経路553に連絡するよう設定する。さらに、第3弁652は、溶媒経路651が空気供給経路653と連絡するよう設定する。
次に、第1の形態と同様にポリ塩化ビフェニル類の分画工程を実行した後に精製層220および吸着層230の各層を乾燥処理し、ポリ塩化ビフェニル類の抽出工程を実行する。精製層220の乾燥処理は、第1の形態と同様に実行することができる。続く吸着層230の乾燥処理では、溶媒供給装置400の第1弁422を閉鎖状態に切換える。そして、抽出経路650において、コンプレッサー654を作動させる。
コンプレッサー654の作動により、空気供給経路653および溶媒経路651を通じて第1分岐路215に圧縮空気が供給される。この圧縮空気は、吸着層230を通過して開口212から流路551へ流れ、廃棄経路553を通じて排出される。この際、吸着層230の各層に残留する溶媒は圧縮空気により圧し出され、圧縮空気とともに廃棄経路553から排出される。この結果、吸着層230の各層は乾燥処理される。
ポリ塩化ビフェニル類の抽出工程では、先ず、溶媒流出経路550において、流路551が回収経路554と連絡するよう第2弁552を切換える。また、抽出経路650において、溶媒経路651が供給経路656と連絡するよう第3弁652を切換え、第3ポンプ659を作動する。これにより、供給経路656および溶媒経路651を通じ、第3溶媒容器660に貯留された溶媒の適量を第1分岐路215から管体210内に供給する。
管体210内に供給された溶媒は、吸着層230を通過し、開口212から流路551および回収経路554を流れ、回収容器556に回収される。この際、溶媒は、第2吸着層250に吸着したモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを溶解して抽出し、これらのPCBsの溶液、すなわち、第1の分析用試料として回収容器556に回収される。
ポリ塩化ビフェニル類を抽出するための次の工程では、第3ポンプ659を停止し、抽出経路650において、溶媒経路651が回収経路655と連絡するよう第3弁652を切換える。そして、溶媒流出経路550において、流路551が供給経路555と連絡するよう第2弁552を切換え、第2ポンプ558を作動する。これにより、供給経路555および流路551を通じ、第2溶媒容器559に貯留された溶媒の適量を開口212から管体210内に供給する。
管体210内に供給された溶媒は、第2吸着層250および第1吸着層240をこの順に通過して第1分岐路215へ流れ、抽出経路650の溶媒経路651および回収経路655を通じて回収容器657に回収される。この際、溶媒は、第1吸着層240に吸着したノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを溶解して抽出し、これらの化合物の溶液、すなわち、第2の分析用試料として回収容器657に回収される。
以上の工程により、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの分析用試料と、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsの分析用試料とが分別して得られ、各分析用試料は、ガスクロマトグラフィー法での分析に適用される。
第3の形態
図4を参照して、本発明に係る分析用試料の調製方法を実施可能な他の分画器具の例を説明する。図において、分画器具200は、第2例の調製装置100において用いられる分画器具200と同様に大径部213と小径部214とを有する管体210を備えているが、大径部213と小径部214とに分割されており、大径部213と小径部214とを連結具800により分離可能に結合することで一連の管体210を形成している。
大径部213は、両端が開口した円筒状に形成されており、硫酸シリカゲル層222側の端部において、小径部214と外径および内径が同じに設定された頸部217を有している。小径部214は、両端が開口した円筒状に形成されており、吸着層230において、第1吸着層240と第2吸着層250とが密接している。連結具800は、例えば、各種の有機溶媒、特に炭化水素溶媒への耐性を有する樹脂材料やその他の材料を用いて形成された円筒状に形成されており、大径部213の頸部217と小径部214の第1吸着層240側の端部とを挿入することで大径部213と小径部214とを液密に連結する。
この例の調製装置100を用いてポリ塩化ビフェニル類の分析用試料を調製するときは、分画器具200において大径部213と小径部214とを連結した状態で第1の形態と同様にポリ塩化ビフェニル類の分画工程を実行する。この分画工程は、手作業により実行することもできる。そして、分画工程に続いて精製層220および吸着層230を乾燥処理した後、連結具800から小径部214を分離する。
吸着層230からのポリ塩化ビフェニル類の抽出では、第2の形態の場合と同様に、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを実質的に溶解せず、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの溶解性に優れた溶媒を小径部214の第1吸着層240側の端部から供給することで第2吸着層250に吸着されたモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを抽出し、第1の分析用試料を得る。その後、小径部214の第2吸着層250側の端部(開口212)からポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsを溶解可能な溶媒を供給することで第1吸着層240に吸着されたノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを抽出し、第2の分析用試料を得る。
このような抽出操作は、手作業により実行することができるが、機械的に実行することもできる。
この例の分画器具200の変更例の一部を図5に示す。この変更例に係る分画器具200の小径部214は、第1吸着層240が充填された第1部位260と第2吸着層250が充填された第2部位270とに分割されており、第1部位260と第2部位270とは連結具810により分離可能に結合することで一体化されている。連結具810は、大径部213と小径部214とを連結する連結具800と同様のものである。
この変更例の分画器具200は、小径部214を大径部213から分離するとともに、小径部214を第1部位260と第2部位270とにさらに分離することができる。このため、吸着層230からポリ塩化ビフェニル類等を抽出するときに、第1部位260の第1吸着層240と第2部位270の第2吸着層250とに対してポリ塩化ビフェニル類等の抽出操作を個別に実行することができ、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを含む分析用試料と、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを含む分析用試料とをより高精度に分画することができる。
他の形態例
(1)上述の各実施の形態において説明した分画器具200は、精製層220において、硝酸銀シリカゲル層221が開口211側に位置するよう配置されているが、硝酸銀シリカゲル層221と硫酸シリカゲル層222との順序は入れ替えることもできる。
但し、硝酸銀シリカゲル層221と硫酸シリカゲル層222とを入れ替えた場合、塩素数の少ない非DL−PCBsが硫酸シリカゲル層222と反応し、分析用試料において塩素数の少ない非DL−PCBsの回収率が低下する場合がある。
(2)上述の各実施の形態において説明した分画器具200は、精製層220において、第1活性シリカゲル層223および第2活性シリカゲル層224を省くことができる。
(3)分画器具200の大径部213は、硝酸銀シリカゲル層221の充填部分と硫酸シリカゲル層222の充填部分とに分割しておき、使用時に両者を連結することもできる。このようにすることで、ポリ塩化ビフェニル類等の回収率を高めることのできる可能性がある。
(4)上述の各実施の形態に係るポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製方法では、加熱装置300により精製層220を加熱しているが、精製層220を加熱しない場合であっても各調製方法を同様に実施することができる。
(5)上述の各実施の形態に係るポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製方法において、精製層220および吸着層230の乾燥処理は、空気の吸引およびコンプレッサーによる圧縮空気の供給のいずれかの方法により任意に変更することができる。また、窒素ガスの供給により精製層220および吸着層230を乾燥処理することもできる。さらに、精製層220および吸着層230の乾燥処理は、省略することもできる。
以下に実施例等を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例等によって限定されるものではない。
以下の実施例等では、ポリ塩化ビフェニル類溶液として下記の魚油試料または流動パラフィン試料を用いた。
魚油試料:
日本工業規格JIS K 0311(2005)に記載の方法により実質的にポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsを含まないことが確認された魚油(シグマアルドリッチ社の商品名「Fish oil, from menhaden」)に対し、ダイオキシン類標準物質(Wellington Laboratories社の商品名「DF-LCS-A」)およびPCBs標準物質(Wellington Laboratories社の商品名「PCB-LCS-A1」)を添加したもの。魚油は、夾雑成分として微量のPCDEを含むものである。ダイオキシン類標準物質は、1312によりラベルされたPCDDs、PCDFsおよびDL−PCBsを含むものである。PCBs標準物質は、塩素数が1〜8の、1312によりラベルされた次の8種類の代表的な非DL−PCBs(括弧内はIUPAC番号)を含む。
1312−4−MoCB(#3)
1312−4,4’−DiCB(#15)
1312−2,4,4’−TrCB(#28)
1312−2,2’,5,5’−TeCB(#52)
1312−2,3’,4,4’,5−PeCB(#118)
1312−2,2’,4,4’,5,5’−HxCB(#153)
1312−2,2’,3,4,4’,5,5’−HpCB(#180)
1312−2,2’,3,3’,4,4’,5,5’−OcCB(#194)
この8種類の非DL−PCBsは、EUの食品規制対象である#28、#52、#101、#138、#153および#180の6種類のPCBs異性体(塩素数が3〜7のPCBs異性体)のうち、#28、#52、#153および#180の4種類の異性体を含むものであるが、#101(塩素数5)および#138(塩素数6)の2種類の異性体を含まない。但し、EUの食品規制は対象の異性体に代えて同じ塩素数の他の異性体を測定対象にすることを許容しており、上記8種類の非DL−PCBsは#101および#138とそれぞれ同じ塩素数の#118および#153を含むことから、実質的にEUの食品規制対象となる6種類のPCBsを包含するものである。
流動パラフィン試料:
日本工業規格JIS K 0311(2005)に記載の方法により実質的にポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsを含まないことが確認された流動パラフィン(関東化学株式会社製)に対し、魚油試料の調製において用いたものと同じダイオキシン類標準物質およびPCBs標準物質を添加したもの。
また、以下の実施例等において、分画器具に充填した各層の充填剤は次の通りである。
硝酸銀シリカゲル層:
活性シリカゲル(関東化学株式会社製)100gに対し、30mLの蒸留水に硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)11.2gを溶解した水溶液の全量を添加して均一に混合した後、この活性シリカゲルをロータリーエバポレーターを用いて減圧下で70℃に加熱して乾燥することで調製した硝酸銀シリカゲルを用いた。
硫酸シリカゲル層:
活性シリカゲル(関東化学株式会社製)100gに対して濃硫酸(和光純薬工業株式会社製)78.7gを均一に添加した後に乾燥することで調製された硫酸シリカゲルを用いた。
活性炭含有シリカゲル層:
活性シリカゲル(関東化学株式会社製)に対して活性炭(クラレケミカル株式会社の商品名「クラレコールPK-DN」)を添加して均一に混合することで得られた活性炭含有シリカゲルを用いた。
グラファイト含有シリカゲル層:
活性シリカゲル(関東化学株式会社製)に対してグラファイト(シグマアルドリッチ社の商品名「ENVI-Carb」)を添加して均一に混合することで得られたグラファイト含有シリカゲルを用いた。
活性炭層:
活性炭(クラレケミカル株式会社の商品名「クラレコールPK-DN」を用いた。
グラファイト層:
グラファイト(シグマアルドリッチ社の商品名「ENVI-Carb」を用いた。
アルミナ層:
Merck社製の商品名「Aluminium Oxide 90 active basic - (activity stage I) for column chromatography」(粒径0.063〜0.200mm)を用いた。
実施例1〜6
図1に示す、ポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製装置を用い、魚油試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsを抽出した。調製装置で用いた分画器具の仕様は次の通りである。
精製層:
外径18.5mm、内径12.5mm、長さ200mmに設定された、管体の大径部内において、図1に示すように、硫酸シリカゲル8.5g(充填高さ80mm)の上に硝酸銀シリカゲル4.4g(充填高さ60mm)を積層することで形成した(第1活性シリカゲル層および第2活性シリカゲル層の積層は省いた。)。
吸着層:
外径8mm、内径6mm、長さ30mmに設定された、管体の小径部内において、図1に示すように、下層であるグラファイト含有シリカゲル0.22g(充填高さ25mm)の上に上層である活性炭含有シリカゲル0.06g(充填高さ5mm)を積層して充填することで形成した。小径部において、アルミナの充填は省略した。活性炭含有シリカゲルに含まれる活性炭の割合、グラファイト含有シリカゲルに含まれるグラファイトの割合および活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層との積層比(体積比)は、表1の通りである。
Figure 0005900757
ポリ塩化ビフェニル類等の抽出操作では、精製層の硝酸銀シリカゲル層へ魚油試料溶液約4mLを添加し、精製層を60℃に加熱した。そして、精製層へn−ヘキサン85mLを徐々に供給し、このn−ヘキサンを精製層と吸着層とに通過させた。n−ヘキサンが吸着層を通過した後、圧縮空気を通過させることで吸着層を乾燥処理した。そして、吸着層を90℃に加熱後、吸着層の下層側からトルエン1.5mLを供給し、吸着層を通過したトルエンを第1分岐路を通じて回収した。
回収したトルエンに含まれるポリ塩化ビフェニル類等をHRGC/HRMS法により定量分析し、ポリ塩化ビフェニル類等の個々の回収率を算出した結果を表2に示す。ポリ塩化ビフェニル類等の回収率とは、試料に添加した当初のポリ塩化ビフェニル類等の量に対する、ポリ塩化ビフェニル類等を抽出した溶媒に含まれるポリ塩化ビフェニル類等の割合(%)をいう。
Figure 0005900757
表2によると、回収したトルエンは、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを高回収率(ポリ塩化ビフェニル類およびダイオキシン類の各種規制基準において規定されている50%以上)で含み、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを実質的に含まない。この結果は、実施例1〜6において、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsの群をモノオルソPCBsおよびDL−PCBsの群から高精度に分離できたことを示している。
また、HRGC/HRMS法による定量においてPCDEによる実質的な妨害ピークは見られなかったことから、実施例1〜6において、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsは、PCDEから効果的に分離されたことが判明した。
比較例1〜5
ポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製装置において、分画器具の吸着層の仕様のみを変更し、実施例1〜6と同様にして魚油試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsを抽出した。そして、抽出液をHRGC/HRMS法により定量分析し、ポリ塩化ビフェニル類等の回収率を算出した。吸着層の仕様は表3の通りである。結果を表4に示す。
Figure 0005900757
Figure 0005900757
表4によると、抽出液は、PCDDsおよびPCDFsのうちの塩素数の多いものの一部の回収率が低く、また、多量のモノオルソPCBsを含む。この結果は、比較例1〜5において、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsの群とモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの群とを分離できなかったことを示している。
また、比較例2〜5は、HRGC/HRMS法での測定結果においてPCDEによる妨害ピークが見られたことから、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsの群にPCDEの混入していることが判明した。
実施例7〜8
実施例1〜6と同様にして、流動パラフィン試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類等をトルエンで抽出した。この際、吸着層において、活性炭含有シリカゲルに含まれる活性炭の割合、グラファイト含有シリカゲルに含まれるグラファイトの割合および活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層との積層比(体積比)は、表5のように設定した。
Figure 0005900757
トルエン抽出液に含まれるポリ塩化ビフェニル類等をHRGC/HRMS法により定量分析し、ポリ塩化ビフェニル類等の回収率を算出した結果を表6に示す。ここでは、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsが流動パラフィンの影響を受けずに吸着層から抽出され得ることを確認するため、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsのみを定量分析し、それらの回収率を算出した。また、ロックマス変動についても確認した。
Figure 0005900757
表6によると、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsの回収率は高い。また、ロックマスの実質的な変動は見られなかった。この結果は、流動パラフィンが吸着層に吸着されずに吸着層を通過して廃棄され、これらのポリ塩化ビフェニル類等の抽出および定量を阻害していないことを示している。
実施例9〜11
図1に示す、ポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製装置を用い、魚油試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類等を分析した。調製装置で用いた分画器具の仕様は、精製層については実施例1〜6と同じであり、吸着層については次の通りである。
吸着層:
実施例1〜6で用いたものと同様の管体の小径部において、図1に示すように、グラファイト含有シリカゲル0.25g(充填高さ25mm)および活性炭含有シリカゲル0.065g(充填高さ5mm)を充填することで第1吸着層を形成し、また、アルミナ0.77g(充填高さ30mm)を充填することで第2吸着層を形成した。活性炭含有シリカゲルに含まれる活性炭の割合、グラファイト含有シリカゲルに含まれるグラファイトの割合および第1吸着層における活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層との積層比(体積比)は、表7の通りである。
ポリ塩化ビフェニル類等の抽出操作では、精製層の硝酸銀シリカゲル層へ魚油試料溶液約4mLを添加し、精製層を60℃に加熱した。そして、精製層へn−ヘキサン85mLを徐々に供給し、このn−ヘキサンを精製層と吸着層とに通過させた。n−ヘキサンが吸着層を通過した後、圧縮空気を通過させることで吸着層を乾燥処理した。そして、第2吸着層のアルミナ層を90℃に加熱後、第2吸着層側から吸着層へトルエン1.0mLを供給し、第2吸着層を通過したトルエンを第2分岐路を通じて回収することで第1の分析用試料を得た。次に、第1吸着層を90℃に加熱後、第2吸着層側から吸着層へトルエン1.5mLを供給し、第2吸着層および第1吸着層をこの順に通過したトルエンを第1分岐路を通じて回収することで第2の分析用試料を得た。魚油試料の添加から第2の分析用試料が得られるまでに要した時間は約2時間であった。
第1の分析用試料および第2の分析用試料をそれぞれHRGC/HRMS法により個別に定量分析し、ポリ塩化ビフェニル類並びにPCDDsおよびPCDFsの回収率を算出した。結果を表8に示す。
実施例12
図3に示す、ポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製装置を用い、魚油試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類等を分析した。調製装置で用いた分画器具の仕様は、精製層については実施例1〜6と同じであり、吸着層については次の通りである。
吸着層:
外径8mm、内径6mm、長さ30mmに設定された、管体の小径部において、図3に示すように、グラファイト含有シリカゲル0.25g(充填高さ25mm)、活性炭含有シリカゲル0.065g(充填高さ5mm)およびアルミナ0.77g(充填高さ30mm)を充填することで形成した。活性炭含有シリカゲルに含まれる活性炭の割合、グラファイト含有シリカゲルに含まれるグラファイトの割合および活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層との積層比(体積比)は、表7に示すように設定した。
ポリ塩化ビフェニル類等の抽出操作では、精製層の硝酸銀シリカゲル層へ魚油試料溶液約4mLを添加し、精製層を60℃に加熱した。そして、精製層へn−ヘキサン85mLを徐々に供給し、このn−ヘキサンを精製層と吸着層とに通過させた。n−ヘキサンが吸着層を通過した後、圧縮空気を通過させることで吸着層を乾燥処理した。そして、吸着層のアルミナ層を室温(25℃)に維持した状態で吸着層の活性炭含有シリカゲル層側からジクロロメタン50重量%含有n−ヘキサン混合溶媒1.5mLを供給し、吸着層のアルミナ層を通過した当該混合溶媒を回収することで第1の分析用試料を得た。次に、吸着層の活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層を90℃に加熱し、アルミナ層側からトルエン1.5mLを吸着層へ供給し、吸着層を通過したトルエンを第1分岐路を通じて回収することで第2の分析用試料を得た。魚油試料の添加から第2の分析用試料が得られるまでに要した時間は約2時間であった。
第1の分析用試料および第2の分析用試料をそれぞれHRGC/HRMS法により個別に定量分析し、ポリ塩化ビフェニル類等の回収率を算出した。結果を表8に示す。
Figure 0005900757
Figure 0005900757
表8によると、第2の分析用試料は、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsを高回収率で含んでいる。一方、第1の分析用試料は、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを高回収率で含んでいる。この結果は、実施例9〜12において、ノンオルソPCBs並びにPCDDsおよびPCDFsの群と、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの群とを高精度に分画できたことを示している。
また、表8は、実施例9〜12で得られた第1の分析用試料に関し、EUの食品規制対象の非DL−PCBsを同規制での適正範囲の回収率(60〜120%)で含むことを示している。
第2の分析用試料は、HRGC/HRMS法での定量においてPCDEによる実質的な妨害ピークが見られなかったことから、PCDEが効果的に分離されているものと考えられる。
220 精製層
221 硝酸銀シリカゲル層
222 硫酸シリカゲル層
241 活性炭含有シリカゲル層
242 グラファイト含有シリカゲル層
251 アルミナ層

Claims (6)

  1. ポリ塩化ビフェニル類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層とにこの順に通過させる工程を含む、
    ポリ塩化ビフェニル類の分画方法。
  2. 前記グラファイト含有シリカゲル層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒溶液をさらにアルミナ層に通過させる、請求項1に記載のポリ塩化ビフェニル類の分画方法。
  3. 前記脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過した前記活性炭含有シリカゲル層および前記グラファイト含有シリカゲル層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な溶媒を供給し、前記活性炭含有シリカゲル層および前記グラファイト含有シリカゲル層を通過した当該溶媒を確保する工程、および、
    前記脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過した前記アルミナ層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な溶媒を供給し、前記アルミナ層を通過した当該溶媒を確保する工程、
    をさらに含む請求項2に記載のポリ塩化ビフェニル類の分画方法。
  4. ポリ塩化ビフェニル類溶液に含まれるポリ塩化ビフェニル類を分析するための試料の調製方法であって、
    硝酸銀シリカゲル層と硫酸シリカゲル層とを含む精製層に前記ポリ塩化ビフェニル類溶液を添加する工程と、
    前記ポリ塩化ビフェニル類溶液が添加された前記精製層に対し、脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、
    前記精製層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を活性炭含有シリカゲル層とグラファイト含有シリカゲル層とにこの順に通過させる工程と、
    前記グラファイト含有シリカゲル層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒をアルミナ層に通過させる工程と、
    前記脂肪族炭化水素溶媒が通過した前記アルミナ層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な溶媒を供給し、前記アルミナ層を通過した当該溶媒を第1の分析用試料として確保する工程と、
    前記脂肪族炭化水素溶媒が通過した前記活性炭含有シリカゲル層および前記グラファイト含有シリカゲル層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な溶媒を供給し、前記活性炭含有シリカゲル層および前記グラファイト含有シリカゲル層を通過した当該溶媒を第2の分析用試料として確保する工程と、
    を含むポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製方法。
  5. 前記精製層の前記硝酸銀シリカゲル層に対して前記ポリ塩化ビフェニル類溶液を添加する、請求項4に記載のポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製方法。
  6. ポリ塩化ビフェニル類溶液に含まれるポリ塩化ビフェニル類の分析方法であって、
    ガスクロマトグラフィー法またはバイオアッセイ法により、請求項4または5に記載のポリ塩化ビフェニル類の分析用試料の調製方法により調製された第1の分析用試料と第2の分析用試料とを分析する工程を含む、
    ポリ塩化ビフェニル類の分析方法。
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