JP2005172754A - ダイオキシン類の分別方法および分別用カラム - Google Patents
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Abstract
【課題】 ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を、モノオルトCo−PCBsの溶液と、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの溶液との二種類に簡単に、しかも短時間で分別する。
【解決手段】 ダイオキシン類の分別方法は、比表面積が50〜180m2/gの第一吸着材12と、比表面積が200〜500m2/gの第二吸着材13とが二層に配置された分別用カラム4に対し、第一吸着材12側からダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を供給する工程と、脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過後の分別用カラム4に対して第一吸着材12側から脂肪族炭化水素溶媒を供給し、分別用カラム4を通過した脂肪族炭化水素溶媒を確保する工程と、脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過後の分別用カラム4に対して第二吸着材13側から芳香族炭化水素溶媒を供給し、分別用カラム4を通過した芳香族炭化水素溶媒を確保する工程とを含んでいる。
【選択図】 図1
【解決手段】 ダイオキシン類の分別方法は、比表面積が50〜180m2/gの第一吸着材12と、比表面積が200〜500m2/gの第二吸着材13とが二層に配置された分別用カラム4に対し、第一吸着材12側からダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を供給する工程と、脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過後の分別用カラム4に対して第一吸着材12側から脂肪族炭化水素溶媒を供給し、分別用カラム4を通過した脂肪族炭化水素溶媒を確保する工程と、脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過後の分別用カラム4に対して第二吸着材13側から芳香族炭化水素溶媒を供給し、分別用カラム4を通過した芳香族炭化水素溶媒を確保する工程とを含んでいる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ダイオキシン類の分別方法および分別用カラム、特に、ダイオキシン類を二種類の溶液に分別するための分別方法および分別用カラムに関する。
産業廃棄物や一般家庭ごみなどの廃棄物を焼却処理するための焼却施設から発生する排気ガス、同施設において発生する飛灰や炉底灰等の焼却灰、製紙工場等の各種工場からの廃水、土壌および浚渫汚泥等は、ダイオキシン類を含む場合がある。ダイオキシン類は、周知の如く極めて毒性の強い環境汚染物質であるため、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)において、廃絶、削減の対象になっている。このため、ダイオキシン類は、焼却施設からの排気ガス、大気、工場廃水、焼却灰および土壌等における含有量等を定期的に分析する必要がある。
本願において、ダイオキシン類の用語は、ダイオキシン類対策特別措置法第2条の規定に倣い、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDDs)およびポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)に加え、コプラナーポリ塩化ビフェニル(Co−PCBs)を含む意味として用いる。
排気ガスや廃水等の流体中や土壌中に含まれるダイオキシン類を分析する場合は、先ず、排気ガスや土壌等の検体からダイオキシン類を抽出し、分析用試料を確保する必要がある。ここで、検体が土壌や焼却灰等のような固形物の場合、当該固形物からn−ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いた抽出法(例えば、ソックスレー抽出法)により、ダイオキシン類を抽出する(例えば、非特許文献1、2および3参照)。
一方、検体が排気ガスや廃水等の流体の場合は、先ず、例えば、非特許文献4に記載されたガラス製インピンジャーや特許文献1および2等に記載のフイルタを用いて流体中のダイオキシン類を捕捉して採取する。そして、ガラス製インピンジャーやフイルタにより採取されたダイオキシン類は、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いた抽出法(例えば、ソックスレー抽出法やガラス製インピンジャー等の洗浄法)により抽出される(非特許文献4、特許文献1、2参照)。
上述のような工程を経て得られた抽出液、すなわち、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液は、通常、精製および濃縮された後、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)を用いて定性的および定量的に分析される。しかし、ダイオキシン類は、多種類の化合物の混合物であるため、同時に分析すると、信頼性の高い分析結果が得られない場合がある。具体的には、モノオルトCo−PCBs、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsが混在している抽出液をGC/MSで分析すると、モノオルトCo−PCBsがPCDDsおよびPCDFsの定量分析結果に影響し、また、PCDDsおよびPCDFsがモノオルトCo−PCBsの定量分析結果に影響する。そこで、非特許文献4は、GC/MSによる分析結果の信頼性を高めるため、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を、モノオルトCo−PCBsおよびノンオルトCo−PCBsの溶液と、PCDDsおよびPCDFsの溶液との二種類に分別し、各溶液を個別にGC/MSで分析するよう推奨している。
しかしながら、非特許文献4に記載された分別方法は、数種類のカラムクロマトグラフィを組み合わせたもので操作が煩雑であり、また、分別が完了するのに数日程度の長時間を要する。
一方、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液は、モノオルトCo−PCBsとPCDDsおよびPCDFsとが相互に影響し合って定量分析結果を損なうのであれば、モノオルトCo−PCBsの溶液と、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの溶液との二種類に分別すればよいことになるが、そのような分別を短時間で簡単に達成できる方法は未だ実現されていない。
本発明の目的は、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を、モノオルトCo−PCBsの溶液と、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの溶液との二種類に簡単に、しかも短時間で分別することにある。
環境庁水質保全局土壌農薬課編「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル(2000年)」
環境庁水質保全局水質管理課編「ダイオキシン類に係る底質調査測定マニュアル(2000年)」
環境庁水質保全局水質管理課編「外因性内分泌攪乱化学物質調査暫定マニュアル(1998年)」
1999年9月20日制定の日本工業規格JIS K 0311:1999
本発明に係るダイオキシン類の分別方法は、比表面積が50〜180m2/gの第一吸着材と、比表面積が200〜500m2/gの第二吸着材とが二層に配置されたカラムに対し、第一吸着材側からダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を供給する供給工程と、脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過後のカラムに対して第一吸着材側から脂肪族炭化水素溶媒を供給し、カラムを通過した脂肪族炭化水素溶媒を確保する第一確保工程と、脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過後のカラムに対して第二吸着材側から芳香族炭化水素溶媒を供給し、カラムを通過した芳香族炭化水素溶媒を確保する第二確保工程とを含んでいる。
ここで、第一吸着材および第二吸着材は、例えば、いずれも炭素系材料である。また、脂肪族炭化水素溶媒は、通常、炭素数が5〜10個の脂肪族炭化水素溶媒に芳香族炭化水素溶媒およびハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒のうちの少なくとも一種を添加したものである。
この分別方法において、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液をカラムに供給すると、当該溶液に含まれるダイオキシン類のうち、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsが主として第一吸着材に吸着し、また、モノオルトCo−PCBsが主として第二吸着材に吸着する。第二吸着材に吸着したモノオルトCo−PCBsは、第一確保工程において、カラムに対して第一吸着材側から供給された脂肪族炭化水素溶媒に溶解して抽出されるため、カラムを通過した脂肪族炭化水素溶媒を確保すると、モノオルトCo−PCBsの脂肪族炭化水素溶媒溶液が得られる。一方、第一吸着材に吸着したノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsは、第二確保工程において、カラムに対して第二吸着材側から供給された芳香族炭化水素溶媒に溶解して抽出されるため、カラムを通過した芳香族炭化水素溶媒を確保すると、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの芳香族炭化水素溶媒溶液が得られる。したがって、この分別方法によれば、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液は、モノオルトCo−PCBsの脂肪族炭化水素溶媒溶液と、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの芳香族炭化水素溶媒溶液との二種類に分別される。
なお、この分別方法は、通常、第二確保工程において、カラムを加熱するのが好ましい。この場合、第一吸着材に吸着したノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsは、芳香族炭化水素溶媒に溶解しやすくなるため、少量の芳香族炭化水素溶媒により効率的に第一吸着材から抽出され得る。
本発明に係るダイオキシン類の分別用カラムは、比表面積が50〜180m2/gの第一吸着材と、比表面積が200〜500m2/gの第二吸着材とを含み、第一吸着材と第二吸着材とが二層に配置されている。
この分別用カラムは、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を供給すると、当該溶液に含まれるダイオキシン類のうち、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsを主として第一吸着材により吸着し、また、モノオルトCo−PCBsを主として第二吸着材により吸着する。このため、第二吸着材に吸着したモノオルトCo−PCBsは、例えば、カラムに対して第一吸着材側から脂肪族炭化水素溶媒を供給すると、当該脂肪族炭化水素溶媒に溶解して抽出される。一方、第一吸着材に吸着したノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsは、例えば、カラムに対して第二吸着材側から芳香族炭化水素溶媒を供給すると、当該芳香族炭化水素溶媒に溶解して抽出される。したがって、この分別用カラムを用いると、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を、モノオルトCo−PCBsの脂肪族炭化水素溶媒溶液と、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの芳香族炭化水素溶媒溶液との二種類に分別することができる。
本発明に係るダイオキシン類の分別方法は、上述のような供給工程、第一確保工程および第二確保工程を含んでいるため、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を、モノオルトCo−PCBsの脂肪族炭化水素溶媒溶液と、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの芳香族炭化水素溶媒溶液との二種類に、簡単に、しかも短時間で分別することができる。
本発明に係るダイオキシン類の分別用カラムは、上述のような二種類の吸着材を含み、しかも、これらの吸着材が二層に配置されているため、ダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を、モノオルトCo−PCBsの溶液と、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの溶液との二種類に、簡単に、しかも短時間で分別することができる。
図1を参照して、本発明の実施の一形態に係るダイオキシン類の分別用カラムを用いた、ダイオキシン類の分別装置の一例を説明する。図において、分別装置1は、試料供給経路2、精製用カラム3、分別用カラム4、第一経路5および第二経路6を主に備えている。試料供給経路2は、分別対象となるダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を精製用カラム3に対して供給するためのものである。
精製用カラム3は、上下方向に開口する筒状体内に、上側から順に液体保持材7と精製材8とを充填したものであり、加熱用のヒータ9を有している。ここで用いられる液体保持材7は、精製用カラム3に供給されたダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液が直ちに精製材8に到達するのを防ぐためのものであり、通常、ダイオキシン類を吸着しにくく、かつ、吸着したダイオキシン類を脂肪族炭化水素溶媒により容易に抽出することができるもの、例えば、低活性のシリカゲル、アルミナ若しくは珪藻土などである。
一方、精製材8は、通常、極性物質を捕捉可能でありかつダイオキシン類を捕捉しない材料である。このような材料としては、例えば、活性を高めたシリカゲルを用いることができる。特に、硫酸シリカゲルを用いるのが好ましい。また、当該材料として用いられるシリカゲルは、種類の異なるシリカゲルを多層に配置したもの、例えば、硝酸銀シリカゲルと硫酸シリカゲルとを多層に配置した多層シリカゲルであってもよい。硫酸シリカゲル若しくは異種のシリカゲルを多層に配置したものを用いると、後述する精製処理をより効果的にかつ迅速に実施することができる。
分別用カラム4は、精製用カラム3の下方に配置されており、上下方向に開口する筒状体内に吸着材10を充填したものである。また、分別用カラム4は、加熱用のヒータ11を有している。
吸着材10は、上下方向に二層に形成されており、上側の層が第一吸着材12からなり、また、下側の層が第二吸着材13からなる。第一吸着材12は、比表面積が50〜180m2/g、好ましくは70〜120m2/gのものである。第一吸着材12の比表面積が50m2/g未満の場合は、ダイオキシン類、特に、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsを吸着しにくくなる。逆に、180m2/gを超える場合は、ダイオキシン類を分別するのが困難になり、また、吸着したダイオキシン類を後述する芳香族炭化水素溶媒により抽出しにくくなる。
また、第二吸着材13は、比表面積が200〜500m2/g、好ましくは220〜400m2/gのものである。第二吸着材13の比表面積が200m2/g未満の場合は、モノオルトCo−PCBsを吸着しにくくなるため、ダイオキシン類を分別するのが困難になる。逆に、500m2/gを超える場合は、吸着したダイオキシン類を後述する脂肪族炭化水素溶媒により抽出しにくくなる。
第一吸着材12および第二吸着材13に関する上述の比表面積は、窒素を用いるBET法に基づくものである。
第一吸着材12および第二吸着材13は、材質が特に限定されるものではないが、通常、グラファイト、活性炭、ナノカーボン等の炭素系材料が好ましい。特に、各種の有機溶媒による抽出操作を実施した場合に、それ自体から不純物を溶出しにくいグラファイトを用いるのが好ましい。また、分別用カラム4における第一吸着材12と第二吸着材13との割合は、特に限定されるものではないが、通常、重量割合において、第一吸着材12よりも第二吸着材13が多くなるよう設定するのが好ましい。
第一経路5は、精製用カラム3の下部と分別用カラム4の上部とを連絡するためのものであり、第一切替弁14を有している。第一切替弁14は、第一溶媒供給経路15と第一溶媒排出経路16とが連絡しており、精製用カラム3と分別用カラム4との連絡、第一溶媒供給経路15と分別用カラム4との連絡、若しくは、第一溶媒排出経路16と分別用カラム4との連絡のいずれかに流路を切り替えるためのものである。
第二経路6は、分別用カラム4の下部から溶媒容器17へ延びており、第二切替弁18を有している。第二切替弁18は、第二溶媒供給経路19と第二溶媒排出経路20とが連絡しており、分別用カラム4と溶媒容器17との連絡、分別用カラム4と第二溶媒供給経路19との連絡、若しくは、分別用カラム4と第二溶媒排出経路20との連絡のいずれかに流路を切り替えるためのものである。
次に、上述の分別装置1を用いたダイオキシン類の分別方法を説明する。
先ず、分別装置1において、精製用カラム3と分別用カラム4とが連絡するよう第一切替弁14を設定し、分別用カラム4と溶媒容器17とが連絡するよう第二切替弁18を設定する。また、ヒータ9により、精製用カラム3を加熱する。
先ず、分別装置1において、精製用カラム3と分別用カラム4とが連絡するよう第一切替弁14を設定し、分別用カラム4と溶媒容器17とが連絡するよう第二切替弁18を設定する。また、ヒータ9により、精製用カラム3を加熱する。
次に、精製用カラム3に対し、試料供給経路2を通じてダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液(以下、試料という)を供給する。ここで供給する試料は、その種類が特に限定されるものではないが、通常、土壌や焼却灰等のような固形物、流体中に含まれるダイオキシン類を採取したフイルタ(例えば、上述の特許文献1、2に記載のもの)および1999年9月20日制定の日本工業規格JIS K 0311:1999(上述の非特許文献4)に規定の方法でダイオキシン類を採取したガラス製インピンジャーや樹脂吸着材などから、脂肪族炭化水素溶媒を用いてソックスレー抽出法若しくは洗浄などの方法によりダイオキシン類を抽出することにより得られたものである。
また、試料は、上述のような固形物やフイルタから芳香族炭化水素溶媒を用いてダイオキシン類を抽出することにより得られた抽出液において、芳香族炭化水素溶媒を脂肪族炭化水素溶媒に置換したものであってもよい。
上述の試料において用いられる脂肪族炭化水素溶媒として好ましいものは、通常、炭素数が5〜10の脂肪族炭化水素溶媒である。炭素数が5〜10の脂肪族炭化水素溶媒のうち、特に好ましいものとしては、例えば、n−ヘキサン、ノナン、デカンなどを挙げることができる。
精製用カラム3に供給された試料は、先ず、液体保持材7に浸透し、そこで加熱されながら精製材8へ移動する。精製材8に移動した試料は、そこに含まれる極性物質、すなわち不純物が精製材8に吸着され、精製される。ここで、精製材8は、ヒータ9により加熱されており、しかも、試料が液体保持材7において予め加熱されているため、試料中に含まれる不純物を吸着しやすく、試料を効率的に精製することができる。
精製用カラム3において精製された試料は、続いて、第一経路5を通じて分別用カラム4ヘ供給される(供給工程)。分別用カラム4に供給された試料は、分別用カラム4を通過するに従い、そこに含まれるダイオキシン類のうち、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsが主として第一吸着材12に吸着し、また、モノオルトCo−PCBsが主として第二吸着材13に吸着する。そして、試料の脂肪族炭化水素溶媒は、分別用カラム4を通過し、第二経路6を通じて溶媒容器17に排出される。
分別用カラム4から試料の脂肪族炭化水素溶媒が排出された後、第一溶媒供給経路15と分別用カラム4とが連絡するよう第一切替弁14を切り替え、また、分別用カラム4と第二溶媒排出経路20とが連絡するよう第二切替弁18を切り替える。そして、この状態で、第一溶媒供給経路15へ所定量の脂肪族炭化水素溶媒を供給する。
ここで供給する脂肪族炭化水素溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、炭素数が5〜10の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、n−ヘキサン、ノナン、デカンなどである。脂肪族炭化水素溶媒として好ましいものは、上述のような脂肪族炭化水素溶媒に芳香族炭化水素溶媒およびハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒のうちの少なくとも一種を添加したものである。特に、上述の試料において用いられているものと同じ脂肪族炭化水素溶媒に芳香族炭化水素溶媒およびハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒のうちの少なくとも一種を添加したものが好ましい。脂肪族炭化水素溶媒に添加する芳香族炭化水素溶媒として好ましいものは、例えば、トルエンやベンゼンなどである。また、脂肪族炭化水素溶媒に添加するハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒として好ましいものは、例えば、ジクロロメタンなどである。
第一溶媒供給経路15に供給された脂肪族炭化水素溶媒は、第一切替弁14および第一経路5を経由し、分別用カラム4に対して第一吸着材12側から供給される。分別用カラム4に対して供給された脂肪族炭化水素溶媒は、分別用カラム4を流下し、第二吸着材13に吸着されたモノオルトCo−PCBsを溶解して抽出し、第一抽出溶液となる。この第一抽出溶液は、分別用カラム4から第二経路6、第二切替弁18および第二溶媒排出経路20を経由して確保される(第一確保工程)。
次に、第一溶媒排出経路16と分別用カラム4とが連絡するよう第一切替弁14を切り替え、分別用カラム4と第二溶媒供給経路19とが連絡するよう第二切替弁18を切り替える。さらに、ヒータ11により、分別用カラム4を加熱する。そして、この状態で、第二溶媒供給経路19へ所定量の芳香族炭化水素溶媒を供給する。
ここで供給する芳香族炭化水素溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、ベンゼンやトルエンなどが好ましい。
第二溶媒供給経路19に供給された芳香族炭化水素溶媒は、第二切替弁18および第二経路6を経由し、分別用カラム4に対して第二吸着材13側から供給される。分別用カラム4に対して供給された芳香族炭化水素溶媒は、第二溶媒供給経路19での供給圧により分別用カラム4を上昇し、第一吸着材12に吸着されたノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsを溶解して抽出し、第二抽出溶液となる。ここで、第一吸着材12に吸着されたノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsは、分別用カラム4がヒータ11により加熱されているため、少量の芳香族炭化水素溶媒により効率的に抽出される。そして、第二抽出溶液は、分別用カラム4から第一経路5、第一切替弁14および第一溶媒排出経路16を経由して確保される(第二確保工程)。
以上の結果、試料供給経路2を通じて分別装置1に供給された試料は、第一抽出溶液(すなわち、モノオルトCo−PCBsの脂肪族炭化水素溶媒溶液)と、第二抽出溶液(すなわち、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの芳香族炭化水素溶媒溶液)との二種類に、通常、数時間程度の短時間で分別される。
上述の分別方法により得られた第一抽出溶液は、モノオルトCo−PCBsの分析に適したカラムを装着したGC/MSにより定性的、定量的に分析される。一方、第二抽出溶液は、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの分析に適したカラムを装着したGC/MSにより定性的、定量的に分析される。
なお、上述の分別装置1において、第一溶媒排出経路16および第二溶媒排出経路20は、それぞれ、個別のGC/MSの試料導入部に連絡されていてもよい。このようにすれば、試料中のダイオキシン類の分別からGC/MSによる分析までの一連の操作を連続的に実施することができる。
また、上述のダイオキシン類の分別方法では、分別用カラム4に対して第一吸着材12側から脂肪族炭化水素溶媒を供給して第一抽出液を確保した後、分別用カラム4に対して第二吸着材13側から芳香族炭化水素溶媒を供給して第二抽出液を確保したが、この順序は逆でもよい。すなわち、分別用カラム4に対して第二吸着材13側から芳香族炭化水素溶媒を供給して第二抽出液を確保した後、分別用カラム4に対して第一吸着材12側から脂肪族炭化水素溶媒を供給して第一抽出液を確保することもできる。
次の材料を用いて上述の分別装置1を作成した。
◎第一吸着材12:比表面積が100m2/gのグラファイト(シグマ・アルドリッチ社の商品名“ENVI−Carb”:120/400メッシュ)300mg
◎第二吸着材13:比表面積が250m2/gのグラファイト(シグマ・アルドリッチ社の商品名“ENVI−Carb X”:120/400メッシュ)600mg
◎液体保持材7:シリカゲル
◎精製材8:硝酸銀シリカゲルと硫酸シリカゲルとを多層に配置した多層シリカゲル
◎第一吸着材12:比表面積が100m2/gのグラファイト(シグマ・アルドリッチ社の商品名“ENVI−Carb”:120/400メッシュ)300mg
◎第二吸着材13:比表面積が250m2/gのグラファイト(シグマ・アルドリッチ社の商品名“ENVI−Carb X”:120/400メッシュ)600mg
◎液体保持材7:シリカゲル
◎精製材8:硝酸銀シリカゲルと硫酸シリカゲルとを多層に配置した多層シリカゲル
作成した分別装置1を用い、ダイオキシン類の標準溶液(29種類のダイオキシン類を含むもの)を分別した。ここでは、ヒータ9により50℃に加熱した精製用カラム3の液体保持材7部分に、試料供給経路3からダイオキシン類の標準溶液を添加して保持させた。そして、試料供給経路3から精製用カラム3に対して50℃のn−ヘキサンを80ml供給した。次に、第一切替弁14および第二切替弁18を切り替え、5容量%のトルエンを含むn−ヘキサン90mlを第一溶媒供給経路15から分別用カラム4に対して供給し、第二溶媒排出経路20からの抽出溶液(上述の第一抽出溶液)を確保した。続いて、第一切替弁14および第二切替弁18を切り替えると共に、ヒータ11で分別用カラム4を80℃に加熱した。そして、トルエン30mlを第二溶媒供給経路19から分別用カラム4に対して供給し、第一溶媒排出経路16からの抽出溶液(上述の第二抽出溶液)を確保した。以上の操作に要した時間は2時間であった。
各抽出溶液に含まれるダイオキシン類をGC/MSを用いて分析した結果を図2(第一抽出溶液の結果)および図3(第二抽出溶液の結果)に示す。各図において、回収率は、ダイオキシン類の標準溶液に含まれていた各ダイオキシン類化合物量に対する、抽出液中に含まれる当該ダイオキシン類化合物量の割合(%)である。また、Co−PCBsは、IUPACの分類にしたがって表示している。
図2および図3によると、ダイオキシン類の標準溶液中に含まれていたモノオルトCo−PCBsのほぼ100%が第一抽出溶液に含まれており、また、同標準溶液中に含まれていたノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsのほぼ100%が第二抽出溶液に含まれていることが分かる。この結果より、この実施例において、標準溶液中のダイオキシン類は、モノオルトCo−PCBsの溶液と、ノンオルトCo−PCBs、PCDDsおよびPCDFsの溶液との二種類に精密に分別できることが確認できた。
1 分別装置
4 分別用カラム
12 第一吸着材
13 第二吸着材
4 分別用カラム
12 第一吸着材
13 第二吸着材
Claims (5)
- 比表面積が50〜180m2/gの第一吸着材と、比表面積が200〜500m2/gの第二吸着材とが二層に配置されたカラムに対し、前記第一吸着材側からダイオキシン類の脂肪族炭化水素溶媒溶液を供給する供給工程と、
前記脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過後の前記カラムに対して前記第一吸着材側から脂肪族炭化水素溶媒を供給し、前記カラムを通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を確保する第一確保工程と、
前記脂肪族炭化水素溶媒溶液が通過後の前記カラムに対して前記第二吸着材側から芳香族炭化水素溶媒を供給し、前記カラムを通過した前記芳香族炭化水素溶媒を確保する第二確保工程と、
を含むダイオキシン類の分別方法。 - 前記第一吸着材および前記第二吸着材は、いずれも炭素系材料である、請求項1に記載のダイオキシン類の分別方法。
- 前記脂肪族炭化水素溶媒は、炭素数が5〜10個の脂肪族炭化水素溶媒に芳香族炭化水素溶媒およびハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒のうちの少なくとも一種を添加したものである、請求項1または2に記載のダイオキシン類の分別方法。
- 前記第二確保工程において前記カラムを加熱する、請求項1から3のいずれかに記載のダイオキシン類の分別方法。
- 比表面積が50〜180m2/gの第一吸着材と、
比表面積が200〜500m2/gの第二吸着材とを含み、
前記第一吸着材と前記第二吸着材とが二層に配置されている、
ダイオキシン類の分別用カラム。
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2003
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