JP5891816B2 - ダイオキシン類の抽出方法 - Google Patents

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本発明は、ダイオキシン類の抽出方法、特に、ダイオキシン類を含む油性液体からダイオキシン類を抽出するための方法に関する。
ダイオキシン類は毒性の強い環境汚染物質であることから、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)は、廃棄物焼却施設からの排出ガス、廃棄物焼却施設において発生する飛灰(フライアッシュ)、工場廃水、大気、土壌並びに地下水、海水、湖沼水および河川水等の環境水等に含まれるダイオキシン類を定期的に分析することを義務付けている。本願において「ダイオキシン類」の用語は、上記ダイオキシン類対策特別措置法第2条の規定に倣い、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDDs)およびポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)に加え、ダイオキシン類様ポリ塩化ビフェニル(DL−PCB)を含む意味として用いる。
排出ガスや廃水等の流体中や土壌中に含まれるダイオキシン類の分析方法として、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)を用いる方法(以下、「GC/MS法」と称する。)が知られている。この分析法では、先ず、排出ガスや土壌等の検体からダイオキシン類を抽出する。例えば、検体が土壌や焼却灰等のような固形物の場合、当該固形物からソックスレー抽出法等の有機溶媒(例えば脂肪族炭化水素溶媒)を用いる抽出法によりダイオキシン類を抽出する。一方、検体が排出ガスや廃水等の流体の場合は、例えば非特許文献1等に記載のガラス製インピンジャーやフイルタ等の採取器を用いて流体中のダイオキシン類を捕捉することで採取し、採取器により採取されたダイオキシン類を有機溶媒を用いる上記方法と同様の抽出法により抽出する。そして、得られたダイオキシン類抽出液からGC/MS法に適した分析用試料を調製し、この分析用試料をGC/MS法に適用することでダイオキシン類を分析する。
ここで、ダイオキシン類抽出液からの分析用試料の調製は、ダイオキシン類抽出液に含まれる、GC/MS法によるダイオキシン類の分析に影響する夾雑成分の除去を主目的としたもの、すなわち、ダイオキシン類抽出液に含まれるダイオキシン類と夾雑成分とを分離するために、ダイオキシン類抽出液からダイオキシン類をさらに選択的に抽出する前処理を目的としたものである。
このような前処理方法として、非特許文献1には、ダイオキシン類抽出液を硫酸処理した後にシリカゲルカラムクロマトグラフ操作することで精製するか、或いは、ダイオキシン類抽出液を硝酸銀シリカゲル層と硫酸シリカゲル層とを有する多層シリカゲル層を用いたカラムクロマトグラフ操作により精製するかした後、さらに活性炭シリカゲルで処理することが記載されている。しかし、この前処理方法では、DL−PCBのモノオルト体を含む分析用試料と、PCDDs、PCDFsおよびDL−PCBのノンオルト体を含む分析用試料との二種類(二液)の分析用試料を調製する必要があることから、作業が複雑かつ煩雑で完了に日単位の長時間を要する。また、多量の試薬(硫酸や各カラム充填材等)や溶媒を必要とすることから、分析用試料の調製のための費用が高額になる。
また、特許文献1には、シリカゲル層、硫酸珪藻土層および極性担体層を有する珪藻土カラムと、活性炭カラムとを用いる前処理方法が記載されている。この方法では、ダイオキシン類抽出液を添加した珪藻土カラムへ溶媒を流し、珪藻土カラムを通過した溶媒を活性炭カラムへ供給する。この際、ダイオキシン類抽出液に含まれる夾雑成分は珪藻土カラムに吸着され、ダイオキシン類は活性炭カラムにおいて捕捉される。そして、活性炭カラムへトルエンなどの溶媒を供給することで活性炭カラムに捕捉されたダイオキシン類を溶出し、分析用試料を得る。
この前処理方法は、PCDDs、PCDFsおよびDL−PCBの全てを含む一液の分析用試料を調製可能であるが、例えば1mL程度のダイオキシン類抽出液を前処理する場合において総量で数10mL程度の多量の溶媒を必要とすることから費用が高額になる。また、溶媒の量が多くなることから、前処理カラム(珪藻土カラム)からの溶出液および活性炭カラムからの溶出液をいずれも減量のために濃縮する必要があるため、それらの濃縮のために長時間を要するだけではなく、前処理カラムでの処理と活性炭カラムでの処理とが不連続になることから操作が煩雑になる。
さらに、特許文献2には、ポリ塩化ビフェニル類(PCB類)の抽出方法として、硫酸シリカゲル層と硝酸塩シリカゲル層とを有する第一カラムと、アルミナ層を有する第二カラムとを用いる方法が記載されている。この方法では、PCB類を含む油性液体を硫酸シリカゲル層へ添加した第一カラムへ溶媒を流し、第一カラムを通過した溶媒を第二カラムへ供給する。この際、油性液体に含まれるPCB類以外の夾雑成分の一部が第一カラムにおいて分解または捕捉され、PCB類は第二カラムのアルミナ層において捕捉される。また、第一カラムで捕捉されない夾雑成分は、アルミナ層において捕捉されずに溶媒とともに第二カラムから排出される。そして、第二カラムへトルエンなどの溶媒を供給することでアルミナ層に捕捉されたPCB類を溶出し、分析用試料を得る。
しかし、この方法は、PCB類に特化した抽出方法であることから、ダイオキシン類抽出液に適用したときは、PCDDsやPCDFsの分析精度に影響する夾雑成分の除去が不十分である。
日本工業規格JIS K 0311(2005)、排ガス中のダイオキシン類の測定方法(6.4.4および6.4.5(c))
特開2003−344378号公報(特許請求の範囲、段落0042および実施例等) 国際公開2010/073818(請求の範囲、明細書5頁13行〜6頁11行等)
本発明の目的は、ダイオキシン類を含む油性液体から、簡単な操作により短時間で、少量の溶媒によりダイオキシン類を抽出できるようにすることにある。
本発明は、ダイオキシン類を含む油性液体からダイオキシン類を抽出するための方法に関するものである。この抽出方法は、油性液体を硫酸シリカゲル層へ添加する工程と、油性液体が添加された硫酸シリカゲル層を少なくとも35℃に加熱した状態で所定時間維持した後に常温へ冷却する工程と、常温へ冷却された硫酸シリカゲル層に対し、脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、硫酸シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を硝酸塩シリカゲル層と活性炭シリカゲル層とにこの順に通過させる工程と、活性炭シリカゲル層に対し、ダイオキシン類を溶解可能な疎水性溶媒を供給して通過させる工程と、活性炭シリカゲル層を通過した疎水性溶媒を確保する工程とを含む。硝酸塩シリカゲル層は、硝酸銅と硝酸銀とを含む活性シリカゲルを含むものである。
この抽出方法において、油性液体が添加された硫酸シリカゲル層を少なくとも35℃に加熱した状態で所定時間維持すると、油性液体に含まれる夾雑成分の一部が硫酸シリカゲル層との反応により速やかに分解される。この分解生成物は、ダイオキシン類および未分解の夾雑成分とともに硫酸シリカゲル層に保持される。そして、常温へ冷却した硫酸シリカゲル層に対して脂肪族炭化水素溶媒を供給すると、この脂肪族炭化水素溶媒は、硫酸シリカゲル層を通過して硝酸塩シリカゲル層へ供給され、この硝酸塩シリカゲル層を通過する。この際、硫酸シリカゲル層に保持されたダイオキシン類、分解生成物の一部、未分解の夾雑成分および油性液体は、硫酸シリカゲル層へ供給された脂肪族炭化水素溶媒に溶解し、硫酸シリカゲル層から硝酸塩シリカゲル層へ供給される。そして、硝酸塩シリカゲル層へ供給された脂肪族炭化水素溶媒に含まれる分解生成物および未分解の夾雑成分の一部は、硝酸塩シリカゲル層に吸着されることで保持される。一方、硝酸塩シリカゲル層へ供給された脂肪族炭化水素溶媒に含まれるダイオキシン類、残余の分解生成物および夾雑成分並びに油性液体は、脂肪族炭化水素溶媒に溶解された状態で硝酸塩シリカゲル層を通過する。
次に、硝酸塩シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒、すなわち、ダイオキシン類等を溶解した脂肪族炭化水素溶媒が活性炭シリカゲル層を通過すると、脂肪族炭化水素溶媒に溶解しているダイオキシン類は活性炭シリカゲル層において捕捉され、脂肪族炭化水素溶媒に溶解している分解生成物、夾雑成分および油性液体は脂肪族炭化水素溶媒とともに活性炭シリカゲル層を通過する。そして、脂肪族炭化水素溶媒が通過した活性炭シリカゲル層に対して疎水性溶媒を供給して通過させると、活性炭シリカゲル層に捕捉されたダイオキシン類は、少量の疎水性溶媒に容易に溶解して活性炭シリカゲル層から抽出され、疎水性溶媒の溶液として確保される。
本発明の抽出方法の一形態では、硫酸シリカゲル層および硝酸塩シリカゲル層は積層されて第一カラム内に充填されており、活性炭シリカゲル層は第一カラムの硝酸塩シリカゲル層側に着脱可能な第二カラム内に充填されている。
本発明の抽出方法は、通常、活性炭シリカゲル層に対し、脂肪族炭化水素溶媒の通過方向とは逆方向に疎水性溶媒を供給して通過させるのが好ましい。また、本発明の抽出方法は、通常、活性炭シリカゲル層に対して疎水性溶媒を供給する前に、活性炭シリカゲル層に残留している脂肪族炭化水素溶媒を除去する工程をさらに含むのが好ましい。
他の観点に係る本発明は、ダイオキシン類を含む油性液体に含まれるダイオキシン類を測定するための方法に関するものである。この測定方法は、油性液体を硫酸シリカゲル層へ添加する工程と、油性液体が添加された硫酸シリカゲル層を少なくとも35℃に加熱した状態で所定時間維持した後に常温へ冷却する工程と、常温へ冷却された硫酸シリカゲル層に対し、脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、硫酸シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を硝酸塩シリカゲル層と活性炭シリカゲル層とにこの順に通過させる工程と、活性炭シリカゲル層に対し、ダイオキシン類を溶解可能な疎水性溶媒を供給して通過させる工程と、活性炭シリカゲル層を通過した疎水性溶媒を確保する工程と、確保した疎水性溶媒をガスクロマトグラフィー法により分析する工程とを含む。硝酸塩シリカゲル層は、硝酸銅と硝酸銀とを含む活性シリカゲルを含むものである。
さらに他の観点に係る本発明は、油性液体に含まれるダイオキシン類を分析するために油性液体からダイオキシン類を分離するためのカラムに関するものである。このカラムは、硫酸シリカゲル層と硝酸塩シリカゲル層とを有する第一カラムと、第一カラムの硝酸塩シリカゲル層側に着脱可能な、活性炭シリカゲル層を有する第二カラムとを備えている。硝酸塩シリカゲル層は、硝酸銅と硝酸銀とを含む活性シリカゲルを含むものである。
このカラムの一形態において、第一カラムは、硫酸シリカゲル層と硝酸塩シリカゲル層とを有する単一のカラムからなる。また、このカラムの他の一形態において、第一カラムは、硫酸シリカゲル層を有する前カラムと、硝酸塩シリカゲル層を有する後カラムとを備え、前カラムと後カラムとが分離可能に連結されている。
本発明に係るダイオキシン類の抽出方法は、上述の工程を含むものであるため、ダイオキシン類を含む油性液体から、簡単な操作により短時間で、少量の溶媒によりダイオキシン類を抽出することができる。
本発明に係るダイオキシン類の測定方法は、本発明に係る抽出方法において確保した、活性炭シリカゲル層からの疎水性溶媒をガスクロマトグラフィー法により分析しているため、油性液体に含まれるダイオキシン類を高精度に測定することができる。
本発明に係るダイオキシン類の抽出用カラムは、上述の第一カラムおよび第二カラムを備えたものであるため、本発明の抽出方法や測定方法において用いることができる。
本発明に係るダイオキシン類の抽出方法において利用可能なカラムの一例の概略図。 前記カラムを用いた抽出操作の一工程を示す図。 前記カラムを用いた抽出操作の他の工程を示す図。 前記カラムを用いた抽出操作のさらに他の工程を示す図。 前記カラムを用いた抽出操作のさらに他の工程を示す図。 本発明に係るダイオキシン類の抽出方法において利用可能なカラムの他の例の部分概略図。 実施例3の抽出液をHRGC/HRMS法により分析することで得られたクロマトグラムの一部を示す図。 比較例3の抽出液をHRGC/HRMS法により分析することで得られたクロマトグラムの一部を示す図。
本発明に係るダイオキシン類の抽出方法は、ダイオキシン類を含む油性液体からダイオキシン類を抽出するための方法に関するものである。ダイオキシン類の抽出対象となる油性液体は、特に限定されるものではないが、例えば、各種の検体(例えば、廃棄物焼却施設において発生する飛灰(フライアッシュ)および土壌等の固形物や、廃棄物焼却施設からの排出ガス、工場廃水、大気、血液、母乳並びに地下水、海水、湖沼水および河川水等の環境水等の流体)に含まれるダイオキシン類を有機溶媒を用いて抽出した抽出液である。より具体的には、検体が固形物の場合、当該固形物から疎水性の有機溶媒を用いてソックスレー抽出などの抽出法によりダイオキシン類を抽出した抽出液である。また、検体が流体の場合、採取器を用いて流体中のダイオキシン類を捕捉することで採取し、この採取器から疎水性の有機溶媒を用いてソックスレー抽出などの抽出法によりダイオキシン類を抽出した抽出液である。
流体からダイオキシン類を採取するための採取器としては、例えば、日本工業規格JIS K 0311(2005) 「排ガス中のダイオキシン類の測定方法」(先に掲げた非特許文献1)に記載のガラス製インピンジャーを用いた装置やフイルタ等が用いられる。フイルタとしては、例えば、特許第3273796号公報、国際公開01/91883号および特開2004−53388号公報等に記載のものが挙げられる。
検体からダイオキシン類を抽出するために用いられる有機溶媒は、ダイオキシン類を溶解可能なものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは脂肪族炭化水素溶媒、特に、n−ヘキサン、イソオクタン、ノナンおよびデカンなどの、炭素数が5〜10の無極性の脂肪族炭化水素溶媒が好ましい。また、有機溶媒は、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒であってもよい。但し、抽出用の溶媒として芳香族炭化水素溶媒を用いた場合、その抽出液は、本発明の抽出方法に適用するときに、溶媒を上述の脂肪族炭化水素溶媒に置換するのが好ましい。
なお、上述の油性液体を本発明の抽出方法に適用する場合、通常、油性液体を1〜10mL程度分取し、これを200〜500μL程度に濃縮したものを試料として用いるのが好ましい。
図1を参照して、本発明に係るダイオキシン類の抽出方法を実施するために用いられるカラムの一例を説明する。図において、カラム1は、主に、第一カラム10、第二カラム20および両カラム10、20を連結するための連結部材30を備えており、第一カラム10から第二カラム20にかけて一連の流路系を形成している。
第一カラム10は、下端部10aの外径および内径が縮小された円筒状に形成されており、上端部および下端部にそれぞれ開口部11、12を有している。この第一カラム10は、例えば、ガラスまたは耐溶媒性、耐薬品性および耐熱性を有する樹脂材料を用いて形成されており、内部に多層シリカゲル13が充填されている。多層シリカゲル13は、上層14と下層15とが積層されたものである。
上層14は、硫酸シリカゲルを充填したもの、すなわち硫酸シリカゲル層である。ここで用いられる硫酸シリカゲルは、活性シリカゲルの表面に濃硫酸を均一に添加した後に乾燥することで調製されたものである。ここで用いられる活性シリカゲルは、通常、シリカゲルを加熱することで活性化したものである。
下層15は、硝酸塩シリカゲルを充填したもの、すなわち、硝酸塩シリカゲル層である。ここで、硝酸塩シリカゲルは、硝酸銅と硝酸銀との混合水溶液により活性シリカゲルを処理することで得られるものである。ここで用いられる硝酸銅は、水和物、例えば、三水和物、六水和物または九水和物であってもよく、通常は三水和物を用いるのが好ましい。
硝酸塩シリカゲルは、活性シリカゲルの表面に上述の混合水溶液を均一に添加した後に乾燥することで調製することができる。混合水溶液は、蒸留水等の精製水に硝酸銅と硝酸銀とを添加して溶解することで調製されるものであり、通常、その全量を活性シリカゲルに対して添加したときに、硝酸銅および硝酸銀の重量がそれぞれ活性シリカゲルの重量の5〜50%になるものを用いるのが好ましい。硝酸銅水和物を用いる場合、その使用量は水和水を除いた重量を基準とする。
また、混合水溶液は、硝酸塩シリカゲルにおいて、銅元素と銀元素とのモル比(銅元素:銀元素)が1:0.5〜2.0、より好ましくは1:0.8〜1.5に設定されるよう、硝酸銅と硝酸銀との添加割合を調節するのが好ましい。硝酸塩シリカゲルは、時間の経過による劣化を生じにくいものであるが、銅元素と銀元素との割合がこのような場合、自由水と半結合水との化学的安定性が高まることから適度の水分量を維持し易くなり、しかも、硝酸イオンの結合力を適度に維持し易くなるため、時間の経過による劣化がさらに生じにくくなる。
多層シリカゲル13において、上層14と下層15との重量比(上層14:下層15)は2〜5:1に設定するのが望ましい。上層14がこの比より少ないと、油性液体から抽出したダイオキシン類の純度が低下し、その分析結果の信頼性が損なわれる可能性がある。一方、上層14がこの比より多いと、多層シリカゲル13がダイオキシン類の一部を吸着することがあり、ダイオキシン類の回収率が低下する可能性がある。
また、多層シリカゲル13において、上層14における硫酸シリカゲルの充填密度は、通常、0.3〜1.1g/cmに設定するのが好ましく、0.5〜1.0g/cmに設定するのがより好ましい。また、下層15における硝酸塩シリカゲルの充填密度は、通常、0.3〜1.0g/cmに設定するのが好ましく、0.4〜0.9g/cmに設定するのがより好ましい。上層14および下層15の充填密度をこのように設定すると、多層シリカゲル13において後述する脂肪族炭化水素溶媒の展開速度を適切に制御することが可能であり、後述する抽出操作において、適量の脂肪族炭化水素溶媒の使用により夾雑成分の混入が少ない高純度のダイオキシン類溶液を得ることができる。
第二カラム20は、円筒状に形成されており、上端部および下端部にそれぞれ開口部21、22を有している。この第二カラム20は、例えば、ガラスまたは耐溶媒性、耐薬品性および耐熱性を有する樹脂材料を用いて形成されており、内部に活性炭シリカゲルを充填した層、すなわち活性炭シリカゲル層23が充填されている。この活性炭シリカゲル層23は、第二カラム20の開口部22側に空隙24が形成されるよう、開口部21側に片寄って充填されている。同様の空隙は、開口部21側にも設けられていてもよい。第二カラム20の外径および内径は、通常、第一カラム10の下端部10aのこれらの径よりも大きく設定するのが好ましいが、下端部10aのこれらの径と同じに設定することもできる。
活性炭シリカゲル層23において用いられる活性炭シリカゲルは、活性炭を含浸させたシリカゲルまたは活性炭を分散させたシリカゲルである。前者の例としては和光純薬工業株式会社の商品「活性炭埋蔵シリカゲル」を挙げることができ、また、後者の例としては関東化学株式会社の商品「活性炭分散シリカゲル」を挙げることができる。これらの活性炭シリカゲルは、混合することで併用することもできる。
活性炭シリカゲル層23における活性炭シリカゲルの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.4〜0.9g/cmに設定するのが好ましく、0.5〜0.7g/cmに設定するのがより好ましい。
連結部材30は、第一カラム10の下端部10aと第二カラム20の上端部とを挿入可能な筒状の部材であり、各種の溶媒、特に炭化水素溶媒に対して安定で耐熱性を有する材料、例えば、耐溶媒性および耐熱性を有する樹脂材料等を用いて形成されている。この連結部材30は、第一カラム10の下端部10aと第二カラム20の上端部とを着脱可能に連結している。したがって、カラム1において、活性炭シリカゲル層23部分は多層シリカゲル13から独立して分離可能である。
カラム1の大きさは、油性液体の処理量に応じて適宜設定することができる。例えば、ダイオキシン類抽出液に含まれるダイオキシン類の濃度を測定するために、当該ダイオキシン類抽出液の一部を分取して濃縮することで調製した200〜500μL程度の試料からダイオキシン類を抽出する場合、カラム1における第一カラム10の大きさ(多層シリカゲル13を充填可能な部分の大きさ)は、内径10〜20mmで長さが30〜110mmのものが好ましく、また、第二カラム20の大きさ(活性炭シリカゲル層23を充填可能な部分の大きさ)は、内径2.0〜10.0mmで長さが10〜200mmのものが好ましい。
次に、上述のカラム1を用いたダイオキシン類の抽出方法を説明する。この抽出方法では、先ず、図2に示すように、第一カラム10の上層14の周りに第一加熱装置40を配置し、また、第二カラム20の下端部にカラム1を通過する後述する脂肪族炭化水素溶媒を受けるための溶媒容器50を配置する。第一加熱装置40は、ヒーターやペルチェ素子などであり、上層14の全体を所要の温度に加熱するためのものである。
次に、油性液体の一部を分取して濃縮することで調製した少量若しくは微量(通常は200〜500μL程度)の試料を第一カラム10の上端部の開口部11から上層14へ添加する。添加された試料は、第一カラム10の上層14に浸透して保持される。そして、第一加熱装置40を作動させ、上層14を加熱しながら所定時間維持する。これにより、試料に含まれるダイオキシン類以外の夾雑成分、特に芳香族化合物が上層14の硫酸シリカゲルと反応し、その一部が分解される。そして、この反応による分解生成物は、上層14により吸着されて保持される。また、硫酸シリカゲルは強力な脱水作用を示すため、上層14は、試料に混入している水分を効果的に吸収する。
この工程において、上層14の加熱温度は、少なくとも35℃、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上に設定する。加熱温度の上限は、特に限定されるものではないが、通常は安全性の観点から90℃以下が好ましい。加熱温度が35℃未満の場合は、試料に含まれる夾雑成分と硫酸シリカゲルとの反応が進行しにくくなるため、試料から短時間でダイオキシン類を抽出するのが困難になる。また、上層14の加熱時間は、通常、10〜60分に設定するのが好ましい。加熱時間が10分未満の場合は、試料に含まれる夾雑成分、特に芳香族化合物の分解が不十分となり、最終的に得られるダイオキシン類の抽出液中に夾雑成分、特に、ガスクロマトグラフィー法によるダイオキシン類の分析に影響しやすい夾雑成分が混入しやすくなる可能性がある。
上述の工程において所定時間加熱された上層14は、加熱終了後、第一加熱装置40を取り外すか、或いは、第一加熱装置40のスイッチを切ってそのまま放置することで、常温(通常は10〜30℃程度の室温)まで冷却する。
図2を参照した上述の説明では、第一カラム10および第二カラム20を連結部材30により連結し、また、第二カラム20の下端部に溶媒容器50を配置しているが、ここまでの工程は、第二カラム20から分離した状態の第一カラム10に対して実行することもできる。この場合、次の工程を実行する前に、連結部材30により第一カラム10に対して第二カラム20を連結するとともに、第二カラム20の下端部に溶媒容器50を配置する。
次に、図3に示すように、第一カラム10の上端側の開口部11に対して第一カラム10へ溶媒を供給するための第一リザーバ60を装着し、この第一リザーバ60内に脂肪族炭化水素溶媒を貯留する。そして、第一リザーバ60に対し、その内部を加圧するための加圧装置61を装着し、そのポンプ62を作動することで第一リザーバ60内を加圧する。これにより、第一リザーバ60内に貯留された脂肪族炭化水素溶媒は、第一カラム10内へ連続的に徐々に供給される。第一リザーバ60から第一カラム10内へ供給された脂肪族炭化水素溶媒は、上層14へ供給され、また、この上層14を通過して下層15へ供給され、下層15を通過する。そして、下層15を通過した脂肪族炭化水素溶媒は、第一カラム10の開口部12から排出され、連結部材30を経由して開口部21から第二カラム20内へ流れる。
この際、上層14に保持されたダイオキシン類および油性液体は、脂肪族炭化水素溶媒に溶解し、脂肪族炭化水素溶媒とともに下層15を通過して第二カラム20内へ流れる。一方、上層14に残留している夾雑成分および上層14に捕捉されずに遊離している分解生成物は、脂肪族炭化水素溶媒に溶解して下層15へ移動し、一部が硝酸塩シリカゲルの作用、特に、硝酸塩シリカゲルから解離する硝酸イオンの作用により分解され、また、大部分が硝酸塩シリカゲルに吸着されて保持される。この結果、夾雑成分は、ダイオキシン類から分離される。
第二カラム20内へ流れた脂肪族炭化水素溶媒は、第二カラム20内の活性炭シリカゲル層23へ供給されてこの層を通過し、開口部22から排出されて溶媒容器50により受けられる。この際、第一カラム10からの脂肪族炭化水素溶媒中に溶解しているダイオキシン類は、活性炭シリカゲル層23により捕捉され、第二カラム20内に保持される。特に、ダイオキシン類は、活性炭シリカゲル層23により捕捉されやすいため、第二カラム20内の上端部の開口部21付近で主に保持される。一方、第一カラム10からの脂肪族炭化水素溶媒中に残留している夾雑成分およびその分解生成物並びに油性液体は、脂肪族炭化水素溶媒とともに活性炭シリカゲル層23を通過し、溶媒容器50により受けられる。
この工程で用いる脂肪族炭化水素溶媒は、第一カラム内に保持されたダイオキシン類を溶解可能なものであり、通常は炭素数が5〜8個の脂肪族飽和炭化水素溶媒、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンおよびシクロヘキサンなどである。特に、n−ヘキサンが好ましい。第一リザーバ60における脂肪族炭化水素溶媒の貯留量、すなわち、第一カラム10へ供給する脂肪族炭化水素溶媒の総量は、通常、10〜120mLに設定するのが好ましい。また、第一リザーバ60からの脂肪族炭化水素溶媒の供給速度は、ポンプ62による第一リザーバ60内の加圧状態の調節により、通常、0.2〜5.0mL/分に設定するのが好ましい。
次に、連結部材30から第一カラム10を取り外すことで第二カラム20と第一カラム10とを分離する。そして、図4に示すように、第二カラム20の上下を反転し、その活性炭シリカゲル層23の周りに第二加熱装置70を配置する。また、図4に示すように、上下反転により第二カラム20の上端側に移動した開口部22に加圧装置61を装着する。そして、第二加熱装置70により活性炭シリカゲル層23を35〜90℃程度に加熱しながらポンプ62を作動させ、開口部22から第二カラム20内に窒素ガス等の不活性ガスや空気を供給する。これにより、第二カラム20内に残留している脂肪族炭化水素溶媒等の溶媒が不活性ガスとともに第二カラム20の下端側に移動した開口部21から排出され、活性炭シリカゲル層23から脂肪族炭化水素溶媒等の溶媒が除去される。この結果、第二カラム20内の活性炭シリカゲル層23は、乾燥処理される。なお、ここで用いられる第二加熱装置70は、第一加熱装置40と同様のものであり、第二カラム20内の活性炭シリカゲル層23全体を所要の温度に加熱可能なものである。
なお、図4において、第二カラム20は連結部材30が取り付けられた状態で表示されているが、連結部材30は、第二カラム20から取り外されていてもよい。
次に、加圧装置61を第二カラム20から取り外し、図5に示すように、第二カラム20の上端側に移動した開口部22に対して第二カラム20へ溶媒を供給するための第二リザーバ80を装着し、この第二リザーバ80内に所定量の疎水性溶媒を貯留する。そして、第二リザーバ80に対し、その内部を加圧するための加圧装置61を装着し、そのポンプ62を作動することで第二リザーバ80内を加圧する。
第二リザーバ80に貯留された疎水性溶媒は、第二リザーバ80内が加圧されることで第二カラム20内へ供給され、活性炭シリカゲル層23を通過して第二カラム20の下端側に移動した開口部21から排出される。この際、第二リザーバ80からの疎水性溶媒は、活性炭シリカゲル層23に捕捉されたダイオキシン類を溶解し、このダイオキシン類とともに開口部21から排出される。このため、開口部21から排出される疎水性溶媒を確保すると、ダイオキシン類の溶液、すなわち、目的とするダイオキシン類の抽出液が得られる。ここで、ダイオキシン類は、主に、活性炭シリカゲル層23の開口部21側付近において捕捉されているため、活性炭シリカゲル層23に捕捉されたダイオキシン類の実質的に全量は、第二カラム20から排出される主に初流部分の疎水性溶媒に溶解した状態になる。したがって、開口部21から排出される初流部分の疎水性溶媒を確保するだけで、目的とするダイオキシン類の抽出液を得ることができる。この抽出液は、分量の少ない上述の初流部分からなるため、後述する分析操作において利用しやすい少量になる。また、ここで得られるダイオキシン類の抽出液は、活性炭シリカゲル層23より脂肪族炭化水素溶媒を除去してから第二カラム20へ疎水性溶媒を供給して得られたものであるため、脂肪族炭化水素溶媒およびそれに溶解している夾雑成分の混入が少ない、高純度の抽出液になり得る。
本実施の形態に係る抽出方法によれば、通常、作業開始工程(第一カラム10への試料添加工程)から1.5〜5時間程度の短時間で上述の抽出液を得ることができる。
このような抽出工程において、活性炭シリカゲル層23は、第二加熱装置70により加熱しながら疎水性溶媒を供給するのが好ましい。第二カラム20の加熱温度は、通常、活性炭シリカゲル層23の温度が少なくとも35℃になるよう設定するのが好ましく、60℃以上、特に80℃付近になるよう設定するのがより好ましい。加熱温度の上限は、安全性の観点から、通常、90℃程度である。このように活性炭シリカゲル層23を加熱すると、活性炭シリカゲル層23に捕捉されたダイオキシン類は、より少量の疎水性溶媒により全量が抽出されやすくなるので、ダイオキシン類の抽出液量を後述する分析操作において利用しやすいより少量に設定することができる。
この抽出工程において用いる疎水性溶媒は、ダイオキシン類を溶解可能なものであれば特に限定されるものではないが、通常、トルエン、トルエンと脂肪族炭化水素溶媒(例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサンなど)若しくは有機塩素系溶媒(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタンなど)との混合溶媒などである。このうち、より少量の使用で活性炭シリカゲル層23からダイオキシン類を抽出できるトルエンが好ましい。
油性液体に含まれるダイオキシン類の濃度を測定する場合は、上述の抽出操作において得られた抽出液、すなわち、ダイオキシン類の疎水性溶媒溶液を分析用試料とし、これをガスクロマトグラフィー法により分析する。ガスクロマトグラフィー法としては、各種の検出器による方法を採用することができ、好ましいものとして、例えば、ダイオキシン類に対する感度が良好なガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)やガスクロマトグラフ電子捕獲検出法(GC/ECD法)を挙げることができる。特に、GC/MS法によれば、分析用試料に含まれるダイオキシン類を異性体や同族体の単位で定量することができるため、分析結果からより多くの知見を得ることができる。
なお、上述の抽出操作において得られた抽出液は、ガスクロマトグラフィー法での分析に当り、必要なときは適宜濃縮して用いることもできる。
上述の実施の形態は、例えば、以下のような変形が可能である。
(1)上述の実施の形態では、カラム1において、第一カラム10を単一のカラムで構成し、その中に硫酸シリカゲルの上層14と硝酸塩シリカゲルの下層15とを積層した多層シリカゲル13を充填しているが、第一カラム10は、図6に示すように、上下に配置された上段カラム100aと下段カラム100bとに分離し、両カラムを上述の連結部材30と同様の材料からなる筒状の連結部材100cにより着脱可能に連結したものであってもよい。この場合、第一カラム10は、上段カラム100aに硫酸シリカゲルの上層14を形成し、下段カラム100bに硝酸塩シリカゲルの下層15を形成する。このような第一カラム10を用いて油性液体からダイオキシン類を抽出する際には、第一加熱装置40により上段カラム100aの上層14を加熱する。
(2)上述の実施の形態では、第一カラム10と第二カラム20との間を連結部材30により着脱可能に連結しているが、カラム間の連結には他の手段を用いることもできる。例えば、カラムの連結部に摺り合わせ部を設け、カラム間をこの摺り合わせ部の接続により着脱可能に連結することができる。これは、上述の変形例(1)に係る第一カラム10において、上段カラム100aと下段カラム100bとの連結についても同様である。
(3)上述の実施の形態では、第一リザーバ60に貯留した脂肪族炭化水素溶媒を加圧装置61により加圧することで第一カラム10へ供給しているが、第一リザーバ60の脂肪族炭化水素溶媒は、加圧装置61を用いずに自然に第一カラム10へ流下させることもできる。また、脂肪族炭化水素溶媒は、シリンジポンプなどの定量ポンプや吸引装置を用いて第一カラム10へ供給することもできる。さらに、脂肪族炭化水素溶媒は、ピペットなどの供給器具を用いた手作業により第一カラム10へ供給することもできる。
(4)上述の実施の形態では、第二リザーバ80に貯留した疎水性溶媒を加圧装置61により加圧することで第二カラム20へ供給しているが、第二リザーバ80の疎水性溶媒は、加圧装置61を用いずに自重により自然に第二カラム20へ供給することもできる。また、疎水性溶媒は、シリンジポンプなどの定量ポンプや吸引装置を用いて第二カラム20へ供給することもできる。さらに、第二カラム20の空隙24を疎水性溶媒を貯留するためのリザーバとして利用し、この空隙24に貯留した疎水性溶媒を自重により自然に活性炭シリカゲル層23へ流して供給することもできる。
(5)上述の実施の形態では、第二カラム20へ不活性ガスや疎水性溶媒を供給する際に、第二カラム20を第一カラム10から分離しているが、第二カラム20を第一カラム10から分離せずに、第二カラム20に対して不活性ガスや疎水性溶媒を供給可能なように変更することもできる。これは、例えば、第一カラム10と第二カラム20とを流路切替弁を有する連結装置を用いて連結することで実現することができる。この場合に用いられる流路切替弁は、不活性ガスの導入口と疎水性溶媒の排出口とを有し、また、第一カラム10と第二カラム20とを連絡するための流路、不活性ガスの導入口と第二カラム20とを連絡するための流路および第二カラム20と疎水性溶媒の排出口とを連絡するための流路を有するものであり、流路の切替えにより、第一カラム10から第二カラム20への脂肪族炭化水素溶媒の供給、不活性ガス導入口から第二カラム20への不活性ガスの導入、および、第二カラム20へ供給された疎水性溶媒の排出口からの排出のいずれかを選択可能なものである。
ダイオキシン類溶液の調製
(ダイオキシン類溶液A)
平成4年厚生省告示第192号の別表第二「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」および日本工業規格JIS K 0311(2005) 「排ガス中のダイオキシン類の測定方法」(以下、「JIS法」と称する場合がある。)に記載の抽出方法に従い、ダイオキシン類の全異性体が検出される飛灰試料10.561gからトルエンを用いてダイオキシン類を抽出した。そして、得られた抽出液を1mL分取し、溶媒をトルエンからデカンに置換することでダイオキシン類溶液Aを調製した。
(ダイオキシン類溶液B)
環境省水・大気環境局土壌環境課編「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル(平成21年3月)」に記載の抽出方法に従い、ダイオキシン類の全異性体が検出される土壌試料15.217gからトルエンを用いてダイオキシン類を抽出した。そして、得られた抽出液を1mL分取し、溶媒をトルエンからデカンに置換することでダイオキシン類溶液Bを調製した。
(ダイオキシン類溶液C)
JIS法に記載の抽出方法に従い、採取器を用いて排ガス試料からダイオキシン類を採取し、採取器で採取されたダイオキシン類をトルエンを用いて抽出した。得られた抽出液を2mL分取し、溶媒をトルエンからデカンに置換することでダイオキシン類溶液Cを調製した。
実施例1
内径13mmで長さ70mmのカラム内に1.5gの硝酸塩シリカゲルを高さが17mmになるよう充填し、その上に3.8gの硫酸シリカゲル(硫酸の質量分率44%)を高さが40mmになるよう充填することで第一カラムを作成した。ここで用いた硝酸塩シリカゲルは、活性シリカゲル(関東化学株式会社製)240gに対して硝酸銅(II)三水和物(和光純薬工業株式会社製)80g(水和物換算)と硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)60gとを200mLの蒸留水に溶解して調製した混合水溶液の全量を添加して均一に混合した後、この活性シリカゲルをロータリーエバポレーターを用いて減圧下で80℃に加熱することで乾燥処理して調製したものである。この硝酸塩シリカゲルにおいて、銅元素(Cu)と銀元素(Ag)とのモル比(Cu:Ag)は1:1.5である。
また、内径4.5mmで長さ100mmのカラム内に0.15gの活性炭シリカゲル(関東化学株式会社の「活性炭分散シリカゲル」)を高さが15mmになるよう充填し、第二カラムを作成した。
第一カラムを硫酸シリカゲル層が上側になるよう起立させ、その上端側へダイオキシン類溶液A500μLと、濃度算出用の内標準物質溶液20μLとを添加した。そして、硫酸シリカゲル層を85℃で30分加熱して室温まで冷却した後、第一カラムの下端側へ第二カラムを連結し、30mLのn−ヘキサンを第一カラムの上端へ徐々に供給して第二カラムの下端から流出させた。n−ヘキサンの供給終了後、第一カラムと第二カラムとを分離した。
分離した第二カラムの上下を逆転した後、活性炭シリカゲル層を85℃に加熱しながらn−ヘキサンの通過方向とは逆方向に窒素ガスを供給した。これにより、第二カラム内に残留しているn−ヘキサンを除去した。続いて、上記温度での加熱を維持しながら第二カラムの上端側へトルエンを供給し、第二カラムを通過するトルエン溶液の初流の2mLを抽出液として採取した。第一カラムへダイオキシン類溶液Aを添加してから抽出液が得られるまでに要した時間は、約1.5時間であった。
採取した抽出液を濃縮した後、回収率算出用の内標準物質溶液20μLを添加することで分析試料を調製した。そして、この分析試料をJIS法の記載に従ってHRGC/HRMS法により分析し、ダイオキシン類溶液Aにおけるダイオキシン類濃度(実測濃度)およびダイオキシン類内標準物質の回収率を求めた。結果を表1に示す。
実施例2
ダイオキシン類溶液Aに替えてダイオキシン類溶液Bを用いた点、および、硫酸シリカゲル層の加熱温度を40℃に変更した点、および、分離した第二カラムに供給する溶媒をトルエンからジクロロメタン含有トルエン(ジクロロメタン濃度25体積%)に変更した点を除いて実施例1と同様に操作して抽出液を得た。第一カラムへダイオキシン類溶液Bを添加してから抽出液が得られるまでに要した時間は、約1.5時間であった。採取した抽出液から実施例1と同様にして分析試料を調製し、この分析試料を実施例1と同様の方法でHRGC/HRMS法により分析することでダイオキシン類内標準物質の回収率を算出した。結果を表1に示す。
比較例1
ダイオキシン類溶液AをJIS法に従って精製し、GC/MS法により分析した。ここでは、先ず、起立した多層シリカゲルカラムの上端側に対し、ダイオキシン類溶液A1mLと、濃度算出用の内標準物質溶液20μLと添加した後、120mLのn−ヘキサンを徐々に供給して溶出液を回収した。次に、得られた溶出液を3mLまで濃縮し、その全量を活性炭カラムに対して添加した。そして、活性炭カラムに対してn−ヘキサン30mLを徐々に供給した後、ジクロロメタン含有n−ヘキサン(ジクロロメタン濃度25体積%)150mLを続けて徐々に供給し、DL−PCBのモノオルト体を含む溶出液Xを回収した。また、活性炭カラムに対してトルエン200mLを供給し、PCDDs、PCDFsおよびDL−PCBのノンオルト体を含む溶出液Yを回収した。溶出液Xおよび溶出液Yをそれぞれ約2mLまで濃縮し、2液からなるダイオキシン類の抽出液を得た。
ここで用いた上述の多層シリカゲルカラムは、下から順にシリカゲル0.9g、水酸化カリウムを2%(質量分率)含むシリカゲル3g、シリカゲル0.9g、硫酸を44%(質量分率)含むシリカゲル4.5g、硫酸を22%(質量分率)含むシリカゲル6g、シリカゲル0.9g、硝酸銀を10%(質量分率)含むシリカゲル3gおよび硫酸ナトリウム6gを積層したものである。一方、活性炭カラムは、関東化学株式会社の「活性炭分散シリカゲル」を用いたものである。
多層シリカゲルカラムへダイオキシン類溶液Aを添加後、2液からなるダイオキシン類の抽出液(濃縮後のもの)が得られるまでに要した時間は約24時間であった。採取した2液の抽出液(濃縮後のもの)に対して回収率算出用の内標準物質溶液20μLを添加することで分析試料を調製し、この分析試料をJIS法の記載に従ってHRGC/HRMS法により分析し、ダイオキシン類溶液Aにおけるダイオキシン類濃度(実測濃度)およびダイオキシン類内標準物質の回収率を求めた。結果を表1に示す。
Figure 0005891816
実施例3
ダイオキシン類溶液Aに替えてダイオキシン類溶液Cを用いた点、第一カラムへのダイオキシン類溶液Cの添加量を200μLとした点、および、第二カラムへ窒素ガスを供給するのに替えて空気を供給した点を除いて実施例1と同様に操作し、抽出液を得た。
比較例2
ダイオキシン類溶液Aに替えてダイオキシン類溶液Cを用いた点を除いて比較例1と同様に操作し、2液からなるダイオキシン類の抽出液を得た。
比較例3
ダイオキシン類溶液Aに替えてダイオキシン類溶液Cを用いた点、第一カラムへのダイオキシン類溶液Cの添加量を200μLとした点、および、第二カラムの充填材を活性炭シリカゲルから0.6gのアルミナ(MP Biomedicals社の商品名「MP Alumina B Super I for Dioxin Analysis」)に変更した点を除いて実施例1と同様に操作し、抽出液を得た。
実施例3および比較例2、3の評価
実施例3および比較例2、3で得られた抽出液をJIS法の記載に従ってHRGC/HRMS法により分析した。
実施例3の抽出液の分析により得られた、五塩化ジベンゾフラン(PeCDFs)のクロマトグラム部分を図7に、また、比較例3の抽出液の分析により得られた、同じくPeCDFsのクロマトグラム部分を図8にそれぞれ示す。図7、8では、PeCDFsのピークを鈍色で示し、PeCDFs以外の夾雑成分のピークを白抜きで示している。図7、8によると、実施例3の抽出液は、比較例3の抽出液に比べ、PeCDFsの定量結果に影響する夾雑成分が顕著に除去されていることがわかる。
また、実施例3および比較例2、3の分析結果から、五塩化ジベンゾフラン(2,3,4,7,8−PeCDF)および六塩化ジベンゾフラン(1,2,3,4,7,8−HxCDFおよび1,2,3,6,7,8−HxCDF)の濃度を比較した結果を表2に示す。表2によると、比較例3については、対象のダイオキシン類濃度が実施例3および比較例2の約2倍またはそれ以上であり、夾雑成分によるピークの影響により対象のダイオキシン類濃度が実際の濃度より高く検出されたことがわかる。
Figure 0005891816

Claims (8)

  1. ダイオキシン類を含む油性液体から前記ダイオキシン類を抽出するための方法であって、
    前記油性液体を硫酸シリカゲル層へ添加する工程と、
    前記油性液体が添加された前記硫酸シリカゲル層を少なくとも35℃に加熱した状態で所定時間維持した後に常温へ冷却する工程と、
    常温へ冷却された前記硫酸シリカゲル層に対し、脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、
    前記硫酸シリカゲル層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を硝酸塩シリカゲル層と活性炭シリカゲル層とにこの順に通過させる工程と、
    前記活性炭シリカゲル層に対し、前記ダイオキシン類を溶解可能な疎水性溶媒を供給して通過させる工程と、
    前記活性炭シリカゲル層を通過した前記疎水性溶媒を確保する工程とを含み、
    前記硝酸塩シリカゲル層は、硝酸銅と硝酸銀とを含む活性シリカゲルを含む、
    ダイオキシン類の抽出方法。
  2. 前記硫酸シリカゲル層および前記硝酸塩シリカゲル層は積層されて第一カラム内に充填されており、前記活性炭シリカゲル層は前記第一カラムの前記硝酸塩シリカゲル層側に着脱可能な第二カラム内に充填されている、請求項1に記載のダイオキシン類の抽出方法。
  3. 前記活性炭シリカゲル層に対し、前記脂肪族炭化水素溶媒の通過方向とは逆方向に前記疎水性溶媒を供給して通過させる、請求項1または2に記載のダイオキシン類の抽出方法。
  4. 前記活性炭シリカゲル層に対して前記疎水性溶媒を供給する前に、前記活性炭シリカゲル層に残留している前記脂肪族炭化水素溶媒を除去する工程をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載のダイオキシン類の抽出方法。
  5. ダイオキシン類を含む油性液体に含まれる前記ダイオキシン類を測定するための方法であって、
    前記油性液体を硫酸シリカゲル層へ添加する工程と、
    前記油性液体が添加された前記硫酸シリカゲル層を少なくとも35℃に加熱した状態で所定時間維持した後に常温へ冷却する工程と、
    常温へ冷却された前記硫酸シリカゲル層に対し、脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、
    前記硫酸シリカゲル層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を硝酸塩シリカゲル層と活性炭シリカゲル層とにこの順に通過させる工程と、
    前記活性炭シリカゲル層に対し、前記ダイオキシン類を溶解可能な疎水性溶媒を供給して通過させる工程と、
    前記活性炭シリカゲル層を通過した前記疎水性溶媒を確保する工程と、
    確保した前記疎水性溶媒をガスクロマトグラフィー法により分析する工程とを含み、
    前記硝酸塩シリカゲル層は、硝酸銅と硝酸銀とを含む活性シリカゲルを含む、
    油性液体中のダイオキシン類の測定方法。
  6. 油性液体に含まれるダイオキシン類を分析するために前記油性液体から前記ダイオキシン類を分離するためのカラムであって、
    硫酸シリカゲル層と硝酸塩シリカゲル層とを有する第一カラムと、
    前記第一カラムの前記硝酸塩シリカゲル層側に着脱可能な、活性炭シリカゲル層を有する第二カラムとを備え、
    前記硝酸塩シリカゲル層は、硝酸銅と硝酸銀とを含む活性シリカゲルを含む、
    ダイオキシン類の分離用カラム。
  7. 前記第一カラムは、前記硫酸シリカゲル層と前記硝酸塩シリカゲル層とを有する単一のカラムからなる、請求項6に記載のダイオキシン類の分離用カラム。
  8. 前記第一カラムは、前記硫酸シリカゲル層を有する前カラムと、前記硝酸塩シリカゲル層を有する後カラムとを備え、前記前カラムと前記後カラムとが分離可能に連結されている、請求項6に記載のダイオキシン類の分離用カラム。
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