JP2021032666A - 油類の精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析するために当該油類を硫酸シリカゲル層と硝酸銀シリカゲル層とを用いて精製する場合において、精製過程において発生し得るSOxガスやNOxガスを精製過程内で消費する。【解決手段】硫酸シリカゲル層130に有機ハロゲン化物質を含む油類を添加し、油類中の夾雑物質を硫酸シリカゲル層130において分解する。そして、硫酸シリカゲル層130へ脂肪族炭化水素溶媒を供給し、硫酸シリカゲル層130を通過した脂肪族炭化水素溶媒を過マンガン酸塩を固定した担体層141と硝酸銀シリカゲル層142とを含む処理層140に通過させる。硫酸シリカゲル層130において発生したSOxガスは脂肪族炭化水素溶媒が担体層141を通過するときに過マンガン酸塩により消費され、硫酸シリカゲル層130において生成した分解生成物は硝酸銀シリカゲル層141において捕捉される。【選択図】図2

Description

本発明は、油類の精製方法、特に、油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析するために当該油類を精製するための方法に関する。
食品、大気および土壌等は、毒性が懸念される有機ハロゲン化物質、例えば、ダイオキシン類やポリ塩化ビフェニル類により汚染されている可能性がある。そこで、各国は、食品や大気等において許容される有機ハロゲン化物質について、独自の規制を設けている。例えば、欧州連合(EU)の食品規制基準(COMMISSION REGULATION (EU) No 1259/2011)は、牛肉や豚肉等の食肉、動物性油脂、卵およびオリーブ油等の植物油などの食品についてダイオキシン類やダイオキシン類に属さない所定のポリ塩化ビフェニル類を規制対象の有機ハロゲン化物質として指定し、これらについての規制値を定めている。また、本邦のダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)は、廃棄物焼却施設からの排出ガス、廃棄物焼却施設において発生する飛灰(フライアッシュ)、工場廃水、大気、土壌並びに地下水、海水、湖沼水および河川水等の環境水等の環境試料に含まれるダイオキシン類を定期的に分析することを義務付けている。
食品等の評価対象物における有機ハロゲン化物質による汚染を評価する際は、通常、評価対象物から試料を採取し、この試料から有機ハロゲン化物質の分析用試料を調製する。評価対象物が動物性油脂や植物油のような油状のものの場合、採取した試料をそのままで或いは油性溶剤に適宜溶解することで分析用試料として用いることができる。一方、評価対象物が土壌や固形食品等の固形物の場合、例えば、油性溶剤を用いたソックスレー抽出法により固形物から有機ハロゲン化物質を抽出し、この油性溶剤溶液を分析用試料として用いる。また、試料が大気や飲料等の流体の場合、例えば、フイルタ等の採取器を用いて流体中の有機ハロゲン化物質を捕捉して採取した後、油性溶剤を用いて採取器を洗浄したり、採取器に対して油性溶剤を用いたソックスレー抽出法を適用したりすることで採取器に採取された有機ハロゲン化物質を抽出し、この油性溶剤溶液を分析用試料として用いる。以上のようにして得られた分析用試料をガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)等の分析装置に適用することで得られる結果に基づき、評価対象物は有機ハロゲン化物質による汚染を評価することができる。
上述の分析用試料は分析対象となる有機ハロゲン化物質とともに評価対象物に由来する種々の有機物質を夾雑物質として含むものであり、この夾雑物質は、分析装置を汚損するおそれがあるとともに、有機ハロゲン化物質の分析結果に影響を与える可能性がある。そこで、上述の分析用試料は、通常、その調製過程において夾雑物質を除去するための精製処理が施される。
この種の精製処理方法の例として、特許文献1は、ポリ塩化ビフェニル類を含む油性液体の精製方法を開示している。この精製方法は、加熱した硫酸シリカゲル層に油性液体を添加した後、当該硫酸シリカゲル層に脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、硫酸シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を硝酸銀シリカゲル層に供給して通過させる工程と、硝酸銀シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒をアルミナ層に通過させる工程と、アルミナ層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な疎水性溶媒を供給して通過させ、アルミナ層を通過した疎水性溶媒を確保する工程とを含む。この精製方法において、油性液体に含まれる夾雑物質は硫酸シリカゲル層との反応により分解される。この分解生成物は、ポリ塩化ビフェニル類とともに硫酸シリカゲル層に保持される。硫酸シリカゲル層に対して脂肪族炭化水素溶媒を供給すると、この脂肪族炭化水素溶媒は、硫酸シリ力ゲル層を通過して硝酸銀シリ力ゲル層へ供給され、この硝酸銀シリ力ゲル層を通過する。この際、硫酸シリカゲル層に保持されたポリ塩化ビフェニル類および分解生成物の一部は、硫酸シリカゲル層へ供給された脂肪族炭化水素溶媒に溶解し、硫酸シリカゲル層から硝酸銀シリカゲル層へ供給される。ここで、脂肪族炭化水素溶媒に含まれる分解生成物の一部は、硝酸銀シリカゲル層に吸着されて保持される。一方、脂肪族炭化水素溶媒に含まれるポリ塩化ビフェニル類は、脂肪族炭化水素溶媒に溶解された状態で硝酸銀シリカゲル層を通過する。次に、硝酸銀シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒、すなわち、ポリ塩化ビフェニル類を溶解した脂肪族炭化水素溶媒をアルミナ層へ供給して通過させると、脂肪族炭化水素溶媒に溶解しているポリ塩化ビフェニル類はアルミナ層において捕捉される。そして、脂肪族炭化水素溶媒が通過したアルミナ層に対してポリ塩化ビフェニル類を溶解可能な疎水性溶媒を供給して通過させると、アルミナ層に捕捉されたポリ塩化ビフェニル類は、疎水性溶媒に溶解してアルミナ層から抽出され、疎水性溶媒溶液として確保される。この疎水性溶媒溶液がポリ塩化ビフェニル類の分析用試料として用いられる。
上述の精製方法は、油性液体に含まれるポリ塩化ビフェニル類と夾雑物質とを効果的に分離することができ、ポリ塩化ビフェニル類を疎水性溶媒に転溶した分析用溶液として確保することができるが、硫酸シリカゲル層と硝酸銀シリカゲル層とを用いることから、これらの層がそれぞれ含む硫酸および硝酸銀のために精製過程において人体や環境に影響を及ぼす硫黄酸化物ガス(SOxガス)や窒素酸化物ガス(NOxガス)を発生し得る。これらのガスの発生機序は次の化学反応によるものと考えられる。
上述の精製方法を適用する油性液体は、そのポリ塩化ビフェニル類濃度が比較的に高濃度の場合、硫酸シリカゲル層に対して少量を添加すれば足り、結果的に上述のガスの発生量は人体や環境への影響を無視できる程度の微量に抑えられる。一方、GC/MSでの検出限界(定量限界)に近いポリ塩化ビフェニル類等の含有量を規制基準とするEUの食品規制基準に照らし、ポリ塩化ビフェニル類濃度が微量の油性液体を精製対象とする場合、精製過程におけるポリ塩化ビフェニル類の消失等を考慮し、硫酸シリカゲル層に対する当該油性液体の添加量を増加する必要があるが、添加量の増加に従って上述のガスの発生量が人体や環境への影響を無視できない程度に増加する可能性がある。
なお、特許文献2は、ダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類の分析用試料を調製する場合におけるダイオキシン類溶液の精製方法として、特許文献1における硫酸シリカゲル層と硝酸銀シリカゲル層との順序を逆にした方法、すなわち、硝酸銀シリカゲル層に油性液体を添加した後、当該硝酸銀シリカゲル層に脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、硝酸銀シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を硫酸シリカゲル層に供給して通過させる工程とを含む方法を開示している。この精製方法は、SOxガスやNOxガスを実質的に発生させずにダイオキシン類溶液を精製することができるが、硝酸銀シリカゲル層に対するダイオキシン類溶液の添加量を増加すると分析用試料におけるダイオキシン類の回収率が顕著に低下することから、精製処理可能なダイオキシン類溶液の量が制限される。
国際公開2008/123393 国際公開2014/192055
本発明は、油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析するために当該油類を硫酸シリカゲル層と硝酸銀シリカゲル層とを用いて精製する場合において、精製過程において発生し得るSOxガスやNOxガスを精製過程内で消費しようとするものである。
本発明は、油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析するために当該油類を精製するための方法に関するものである。この精製方法は、硫酸シリカゲル層へ油類を添加する工程と、油類を添加後の硫酸シリカゲル層に対して脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、過マンガン酸塩を固定した担体層と硝酸銀シリカゲル層とを含む処理層に硫酸シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を通過させる工程とを含む。
この精製方法において、硫酸シリカゲル層へ添加された油類に含まれる夾雑物質は、硫酸シリカゲル層との反応により分解される。そして、硫酸シリカゲル層に対して供給された脂肪族炭化水素溶媒は、硫酸シリカゲル層での分解生成物の一部および油類中の有機ハロゲン化物質を溶解して硫酸シリカゲル層を通過し、続いて処理層を通過する。この際、脂肪族炭化水素溶媒に溶解した分解生成物は、処理層、特に、処理層中の硝酸銀シリカゲル層により捕捉され、脂肪族炭化水素溶媒から分離される。この結果、処理層を通過した脂肪族炭化水素溶媒に含まれる有機ハロゲン化物質は、夾雑物質が除去され、精製されたものとなる。このような油類の精製過程では、硫酸シリカゲル層および処理層においてSOxガスやNOxガスが発生し得るが、これらのガスは、脂肪族炭化水素溶媒中に溶解し、脂肪族炭化水素溶媒が処理層を通過するときに担体層に固定された過マンガン酸塩との反応により消費される。
この精製方法において用いられる担体層は、例えば、過マンガン酸塩を固定した酸化アルミニウム層である。
この精製方法の一形態では、処理層において、担体層と硝酸銀シリカゲル層との順に硫酸シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を通過させる。
この精製方法の他の一形態は、硫酸シリカゲル層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を処理層に通過させる前に活性シリカゲル層に通過させる工程をさらに含む。
他の観点に係る本発明は、油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析するために油類を精製するための器具に関するものである。この精製器具は、両端が開口した筒体と、筒体内に充填された硫酸シリカゲル層と、筒体内において硫酸シリカゲル層とは別に充填された、過マンガン酸塩を固定した担体層および硝酸銀シリカゲル層を含む処理層とを備えている。
この器具を用いて油類を精製する場合、筒体内に充填された硫酸シリカゲル層に対して油類を添加する。添加された油類に含まれる夾雑物質は、硫酸シリカゲル層との反応により分解される。この硫酸シリカゲル層に対して脂肪族炭化水素溶媒を供給し、この脂肪族炭化水素溶媒を硫酸シリカゲル層および処理層の順に通過させると、脂肪族炭化水素溶媒は硫酸シリカゲル層での分解生成物の一部および油類中の有機ハロゲン化物質を溶解して硫酸シリカゲル層を通過し、続いて処理層を通過する。この際、脂肪族炭化水素溶媒に溶解した分解生成物は、処理層、特に、処理層中の硝酸銀シリカゲル層により捕捉され、脂肪族炭化水素溶媒から分離される。この結果、処理層を通過した脂肪族炭化水素溶媒に含まれる有機ハロゲン化物質は、夾雑物質が除去され、精製されたものとなる。このような油類の精製過程では、硫酸シリカゲル層および処理層においてSOxガスやNOxガスが発生し得るが、これらのガスは、脂肪族炭化水素溶媒中に溶解し、脂肪族炭化水素溶媒が処理層を通過するときに担体層に固定された過マンガン酸塩との反応により消費される。
この精製器具において用いられる担体層は、例えば、過マンガン酸塩を固定した酸化アルミニウム層である。
この精製器具の一形態において、処理層は、硫酸シリカゲル層と硝酸銀シリカゲル層との間に位置するよう担体層を含んでいる。
この精製器具の他の一形態は、筒体が硫酸シリカゲル層を充填した第1部位と処理層を充填した第2部位とに分割されており、第1部位と第2部位とを結合することで形成される。
この精製器具のさらに他の一形態は、筒体内において硫酸シリカゲル層と処理層との間に充填された活性シリカゲル層をさらに備えている。
本発明に係る油類の精製方法は、過マンガン酸塩を固定した担体層を用いていることから、油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析するために当該油類を硫酸シリカゲル層と硝酸銀シリカゲル層とを用いて精製する場合において、精製過程で発生し得るSOxガスやNOxガスを精製過程内において消費することができる。
本発明に係る油類の精製器具は、硫酸シリカゲル層と、過マンガン酸塩を固定した担体層および硝酸銀シリカゲル層を含む処理層とを筒体内に充填したものであることから、油類に含まれる有機ハロゲン化物質の分析のために当該油類の精製用として用いると、精製過程において発生し得るSOxガスやNOxガスを精製過程内において消費することができる。
本発明に係る油類の精製器具の一形態を分割した状態の概略縦断面図。 一体化された前記一形態に係る精製器具の概略縦断面図。 前記一形態に係る精製器具を採用した分析用試料の調製器の概略縦断面図。 変形例に係る精製器具の図2に相当する図。 他の変形例に係る精製器具の図2に相当する図。 比較例1において作成した比較用精製器具の図2に相当する図。 実施例の評価1において撮影した、実施例1に係る精製器具を使用前に撮影した写真。 実施例の評価1において撮影した、実施例1に係る精製器具を油類試料の精製処理のために使用した後に撮影した写真。 実施例の評価1において撮影した、実施例2に係る精製器具を油類試料の精製処理のために使用した後に撮影した写真。 実施例の評価1において撮影した、実施例3に係る精製器具を油類試料の精製処理のために使用した後に撮影した写真。 実施例の評価2において撮影した、実施例1および実施例4〜6に係る精製器具を油類試料の精製処理のために使用した後の部分写真。 実施例1による第1分析用試料についての評価5の結果を示す図。 実施例3による第1分析用試料についての評価5の結果を示す図。 実施例1による第1分析用試料および第2分析用試料についての評価6の結果を示す図。 実施例3による第1分析用試料および第2分析用試料についての評価6の結果を示す図。 実施例の評価7の結果を示す図。 実施例の評価8の結果を示す図。 鶏卵油から調製した試験油類を実施例7〜10に適用した場合の評価9の結果を示す図。 牛脂油から調製した試験油類を実施例7〜10に適用した場合の評価9の結果を示す図。
本発明は、油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析する場合における当該油類の精製に関するものである。分析対象となる有機ハロゲン化物質としては、例えば、ダイオキシン類、ダイオキシン類に属さないポリ塩化ビフェニル類およびポリ臭化ジフェニルエーテル類などが挙げられる。このような有機ハロゲン化物質を含有し得る、本発明の適用対象となる油類としては、例えば、豚や牛等の偶蹄類、鶏等の家禽類および魚類などの食用動物に由来の動物性油脂類並びにオリーブ油やヒマワリ油等の植物油などの食用油脂類、電気絶縁油等として用いられる鉱油類および油性溶剤を用いた環境試料からの抽出液などが挙げられる。動物性油脂類は、通常、食肉や卵に対して油性溶剤を用いた抽出操作を適用することで得られる抽出油が本発明の適用対象の油類となる。環境試料は、例えば、廃棄物焼却施設において発生する飛灰(フライアッシュ)や土壌等の固形物や、廃棄物焼却施設からの排出ガス、工場廃水、大気、血液、母乳並びに地下水、海水、湖沼水および河川水等の環境水等の流体である。環境試料からの抽出液は、環境試料が固形物の場合、当該固形物から油性溶剤を用いてソックスレー抽出などの抽出法を適用することで得られるものである。また、環境試料が流体の場合、採取器を用いて流体中の有機ハロゲン化物を捕捉・採取し、この採取器から油性溶剤を用いてソックスレー抽出などの抽出法を適用することで得られるものである。
流体から有機ハロゲン化物質を採取するための採取器としては、例えば、日本工業規格JIS K 0311(2005) 「排ガス中のダイオキシン類の測定方法」に記載のガラス製インピンジャーを用いた装置やフイルタ等が用いられる。フイルタとしては、例えば、特許第3273796号公報、国際公開01/91883号および特開2004−53388号公報等に記載のものが挙げられる。
環境試料から有機ハロゲン化物質を抽出するために用いられる油性溶剤は、有機ハロゲン化物質を溶解可能なものであれば特に限定されるものではなく、通常は有機溶媒である。有機溶媒としては、通常、脂肪族炭化水素溶媒、特に、n−ヘキサン、イソオクタン、ノナン若しくはデカンなどの炭素数が5〜10の無極性の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒またはアセトン、ジエチルエーテル若しくはジクロロメタンなどの極性有機溶媒が用いられる。なお、芳香族炭化水素溶媒による抽出液は、本発明の精製方法に適用する際、溶媒を上述の脂肪族炭化水素溶媒に置換するのが好ましい。
図を参照し、本発明に係る油類の精製器具の一形態を説明する。
図1において、精製器具10は、第1部位110と第2部位120とに分割された筒体100を備えている。第1部位110および第2部位120は、いずれも両端が開口した円筒状の部材であり、少なくとも耐溶媒性、耐薬品性および耐熱性を有する材料、例えば、これらの特性を備えたガラス、樹脂または金属により形成されたものである。第1部位110は、図1の下端に突起部111を有している。突起部111は、その外径が第2部位120の内径と略一致しており、第2部位120の図1の上端部に対して気密・液密に嵌め込み可能である。
第1部位110は、内部に硫酸シリカゲル層130が設けられている。硫酸シリカゲル層130は、硫酸シリカゲルを充填したものである。ここで用いられる硫酸シリカゲルは、粒径が30μm〜1mm程度の粒状のシリカゲル(通常は加熱により活性度を高めた活性シリカゲル)の表面に濃硫酸を均一に添加することで調製されたものである。
シリカゲルにおける硫酸の担持量は、通常、シリカゲルの重量基準で20〜55%に設定するのが好ましく、30〜50%に設定するのがより好ましい。担持量が20%未満の場合、油類に含まれる夾雑物質の分解効率が低下し、油類中の有機ハロゲン化物質を夾雑物質から分離するのが困難になる可能性がある。逆に、担持量が55%を超える場合は、硫酸シリカゲル層130に油類を添加したときに添加部位において担持された硫酸と夾雑物質との反応が局所的に進行し、後記する脂肪族炭化水素溶媒が硫酸シリカゲル層130を通過しにくくなることから、油類の精製効率が低下する可能性がある。
硫酸シリカゲル層130における硫酸シリカゲルの密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3〜1.1g/cmに設定するのが好ましく、0.5〜1.0g/cmに設定するのがより好ましい。この密度が0.3g/cm未満の場合、添加した油類が硫酸シリカゲル層130を速やかに通過してしまい、夾雑物質の分解効率が低下する可能性がある。逆に、この密度が1.1g/cmを超える場合、添加した油類が硫酸シリカゲル層130内に浸透しにくくなり、夾雑物質の分解効率が低下するとともに分解に長時間を要する可能性がある。
第2部位120は、後記する調製装置1において用いられる捕捉器200に対して連結するための螺旋部121を図1の下端の外周部に有しており、内部に処理層140が設けられている。処理層140は、過マンガン酸塩を固定した担体層141と、図1において担体層141の下に配置された硝酸銀シリカゲル層142とを含んでいる。
担体層141は、粒状の担体、例えば、酸化アルミニウム、シリカゲル(通常は加熱により活性度を高めた活性シリカゲル)、ゼオライト等の結晶性のアルミノケイ酸塩またはこれらの任意の組合せによる混合物に対して過マンガン酸塩を固定したものからなる層である。ここで用いられる過マンガン酸塩は、酸化剤として用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸銀、過マンガン酸マグネシウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸バリウムおよび過マンガン酸アンモニウムを挙げることができる。過マンガン酸塩は、一種類のものが単独で用いられてもよいし、二種類以上のものが併用されてもよい。
担体層141は、粒径が10〜500μm程度の粒状の担体の表面に過マンガン酸塩水溶液を均一に添加し、ある程度の含水率が維持されるように減圧加熱により水分を除去することで調製されたものである。担体に対する過マンガン酸塩の固定量は、通常、担体の重量基準で少なくとも3%に設定するのが好ましく、少なくとも4%に設定するのがより好ましい。固定量が3%未満の場合、油類の精製過程において発生するSOxガスやNOxガスの消費能力が低下する可能性がある。過マンガン酸塩の固定量は、多く設定することでSOxガスやNOxガスの消費能力が高まることから上限を規制する必要性に乏しいが、通常は担体に対して添加する過マンガン酸塩水溶液における過マンガン酸塩の溶解度による限界がある。
担体層141の含水率は、一般には担体の重量基準で3〜10%に設定するのが好ましく、4〜6%に設定するのがより好ましい。含水率が3%以下の場合、油類の精製過程において発生するSOxガスやNOxガスの消費能力が顕著に低下する可能性がある。一方、含水率が10%を超える場合、その水分が処理層140に同時に含まれる硝酸銀シリカゲル層142に作用してその含水率を高めてしまう可能性があり、その結果、油類の精製効果が低下する可能性がある。
また、担体層141の含水率は、担体に応じて適切に設定するのが好ましい。例えば、担体が酸化アルミニウムの場合、担体層141の含水率は4〜6%に設定するのが好ましく、4.5〜5%に設定するのがより好ましい。一方、担体がシリカゲルの場合、担体層141の含水率は酸化アルミニウムが担体の場合よりも高い3〜20%に設定するのが好ましく、4〜10%に設定するのがより好ましい。
担体層141としては、夾雑物質の処理能に優れ、より多量の油類の精製に適していることから、酸化アルミニウムを担体とし、これに過マンガン酸カリウムを固定したものを用いるのが好ましい。例えば、酸化アルミニウムを450〜600℃で1〜12時間程度焼成することで水分および付着した有機物を除去し、この酸化アルミニウムをイオン交換水または蒸留水を用いて調製した過マンガン酸カリウム水溶液に投入して均一に混合した後、エバポレータを用いて含水率が上記範囲になるよう乾燥処理したものを用いるのが好ましい。特に、過マンガン酸カリウム水溶液として、投入する酸化アルミニウムの重量に対して3〜5%の過マンガン酸カリウムを溶解したものを用い、過マンガン酸カリウムの固定量が酸化アルミニウムの重量基準で3〜5%になるよう調整したものを用いるのが好ましい。
担体層141において、過マンガン酸塩を固定した担体の密度は、特に限定されるものではないが、通常、1.0〜1.4g/cmに設定するのが好ましく、1.1〜1.2g/cmに設定するのがより好ましい。この密度が1.0g/cm未満の場合、油類の精製過程において発生するSOxガスやNOxガスの消費能力が低下する可能性がある。逆に、この密度が1.4g/cmを超える場合、後記する脂肪族炭化水素溶媒が担体層141を通過しにくくなり、油類の精製効率が低下する可能性がある。
硝酸銀シリカゲル層142は、硝酸銀シリカゲルを充填したものである。ここで用いられる硝酸銀シリカゲルは、粒径が40〜210μm程度の粒状のシリカゲル(通常は加熱により活性度を高めた活性シリカゲル)の表面に硝酸銀の水溶液を均一に添加した後、減圧加熱により水分を除去することで調製されたものである。シリカゲルに対する硝酸銀の担持量は、通常、シリカゲルの重量基準で5〜20%に設定するのが好ましい。この担持量が5%未満の場合、夾雑物質やその分解生成物が硝酸銀シリカゲル層142において捕捉されにくくなり、油類の精製効果が低下する可能性がある。逆に、20%を超える場合、硝酸銀シリカゲル層142において銀イオン量が多くなることから有機ハロゲン化物質が吸着・捕捉されやすくなり、油類の精製過程において有機ハロゲン化物質の一部が回収されにくくなる可能性がある。
硝酸銀シリカゲル層142の含水率は、一般にはシリカゲルの重量基準で2〜10%に設定するのが好ましく、3.5〜5%に設定するのがより好ましい。含水率が2%以下の場合、硝酸銀シリカゲル層142において銀イオンの活性が高まることから有機ハロゲン化物質が吸着・捕捉されやすくなり、油類の精製過程において有機ハロゲン化物質の一部が回収されにくくなる可能性がある。逆に、含水率が10%を超える場合、油類の精製効果が低下する可能性がある。
硝酸銀シリカゲル層142における硝酸銀シリカゲルの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3〜0.8g/cmに設定するのが好ましく、0.4〜0.7g/cmに設定するのがより好ましい。この密度が0.3g/cm未満の場合、油類の精製過程において発生するSOxガスやNOxガスの消費能力が低下する可能性がある。逆に、この密度が0.8g/cmを超える場合、油類の精製時において後記する脂肪族炭化水素溶媒が担体層141を通過しにくくなり、油類の精製効率が低下する可能性がある。
第1部位110と第2部位120とは、図2に示すように、第1部位110の突起部111を第2部位120の図1の上端側内部に嵌め込むことで液密・気密に一体化し、第1部位110の上端部および第2部位120の下端部にそれぞれ開口部150、160を有する一連の筒体100となって精製器具10を形成する。
精製器具10の大きさは、精製処理する油類の量に応じて適宜設定することができるものであり、特に限定されるものではないが、例えば油類の量が1〜20mL程度の場合、第1部位110および第2部位120は、いずれも、所要の層を充填可能な部分について内径10〜20mmで長さが100〜300mm程度に設定されているのが好ましい。
次に、図3を参照し、上述の精製器具10を用いた、油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析するための分析用試料の調製器の例を説明する。この例の調製器は、より具体的には、有機ハロゲン化物質の一例であるダイオキシン類を含む可能性のある油類からダイオキシン類の分析用試料を調製するためのものである。ダイオキシン類は、一般に、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)およびダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL−PCBs)を総称する用語である。DL−PCBsは、209種類のポリ塩化ビフェニル類(PCBs)のうち、PCDDsおよびPCDFsと同様の毒性を示すPCBsであり、ノンオルソPCBsおよびモノオルソPCBsを含む。
図3において、調製器1は、精製器具10とダイオキシン類の捕捉器200とを主に備えており、精製器具10は捕捉器200に対して装着されている。
捕捉器200は、管体210を備えている。管体210は、精製器具10の筒体100と同様の材料を用いて形成されており、一端に開口211を有しかつ他端に開口212を有する、両端が開口した一連の円筒状に形成されている。管体210の開口211側は、精製器具10の装着部220が形成されており、この装着部220の内周面には第2部位120の螺旋部121に対応する螺旋部221が形成されている。また、管体210は、先端が開口した2本の分岐路、すなわち、間隔をおいて設けられた第1分岐路215と第2分岐路216とを有している。
管体210は、内部に捕捉層230が充填されている。捕捉層230は、油類に含まれるダイオキシン類をノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群と、モノオルソPCBsとに分画して捕捉するためのものであり、第1層240と第2層250とを備えている。第1層240と第2層250とは、間隔を設けて管体210に充填されている。より具体的には、第1層240は、第1分岐路215と第2分岐路216との間において管体210内に充填されており、第2層250は、第2分岐路216と開口212との間において管体210内に充填されている。
第1層240は、図3に示すように、活性炭含有シリカゲル層241と、その下方に配置されたグラファイト含有シリカゲル層242とを含むものである。活性炭含有シリカゲル層241は、活性炭と粒状のシリカゲルとの混合物からなるものである。このような混合物は、活性炭とシリカゲルとを単純に混合することで得られる活性炭分散シリカゲルであってもよいし、珪酸ナトリウム(水ガラス)と活性炭との混合物を鉱酸と反応させることで得られる活性炭埋蔵シリカゲルであってもよい。活性炭は、市販の各種のものを用いることができるが、通常、粒径が40〜100μm程度の粒状または粉末状であって、BET法により測定した比表面積が100〜1,200m/g、特に500〜1,000m/gのものが好ましい。活性炭分散シリカゲルにおいて用いられるシリカゲルは、通常、粒径が40〜210μm程度の粒状のものである。このシリカゲルは、加熱することで活性度を適宜に高めたものであってもよい。
活性炭とシリカゲルとの混合物における活性炭の割合は、0.013〜5.0重量%が好ましく、0.1〜3.0重量%がより好ましい。活性炭が0.013重量%未満の場合または5.0重量%を超える場合は、第1層240において、塩素数の多いPCDDsまたは塩素数の多いPCDFsの吸着能が低下する可能性がある。
活性炭含有シリカゲル層241の充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3〜0.8g/cmに設定するのが好ましく、0.45〜0.6g/cmに設定するのがより好ましい。
グラファイト含有シリカゲル層242は、第1層240において、活性炭含有シリカゲル層241に隣接して配置されており、グラファイトと粒状のシリカゲルとを単純に混合することで得られる混合物からなるものである。グラファイトは、市販の各種のものを用いることができるが、通常、粒径が40〜200μm程度の粒状または粉末状であって、BET法により測定した比表面積が10〜500m/g、特に50〜200m/gのものが好ましい。また、シリカゲルは、活性炭含有シリカゲル層241と同様のものが用いられる。
グラファイトとシリカゲルとの混合物におけるグラファイトの割合は、2.5〜50重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましい。グラファイトが2.5重量%未満の場合は、第1吸着層240において、ノンオルソPCBsの吸着能が低下する可能性がある。逆に、グラファイトが50重量%を超える場合は、第1層240において、非DL−PCBs、特に、塩素数が1〜2の非DL−PCBsが吸着されやすくなる可能性がある。
グラファイト含有シリカゲル層242の充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.2〜0.6g/cmに設定するのが好ましく、0.3〜0.5g/cmに設定するのがより好ましい。
第1層240において、活性炭含有シリカゲル層241とグラファイト含有シリカゲル層242との割合は、前者(A)に対する後者(B)の体積比(A:B)が1:1〜1:12になるよう設定するのが好ましく、1:1〜1:9になるよう設定するのがより好ましい。この体積比よりも活性炭含有シリカゲル層241の割合が少ない場合、第1層240においてPCDDsおよびPCDFsの一部、特に、塩素数が8のPCDDsおよびPCDFsの吸着能が低下する可能性がある。逆に、活性炭含有シリカゲル層241の割合が多い場合は、第1層240において、モノオルソPCBsが吸着されやすくなる可能性がある。
第2層250は、粒状の酸化アルミニウムからなるものである。ここで用いられる酸化アルミニウムは、塩基性、中性および酸性のいずれのものであってもよい。また、酸化アルミニウムの活性度は、特に限定されるものではない。酸化アルミニウムの好ましい粒径は、通常、40〜300μmである。
第2層250における酸化アルミニウムの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜1.2g/cmに設定するのが好ましく、0.8〜1.1g/cmに設定するのがより好ましい。
管体210の大きさは、精製器具10により精製処理する油類の量に応じて適宜設定することができるものであり、特に限定されるものではないが、精製器具10が先述の大きさの場合、内径3〜10mmで、第1層240を充填可能な部分の長さが20〜80mm程度に、また、第2層250を充填可能な部分の長さが20〜80mm程度に設定されているのが好ましい。
捕捉器200は、精製器具10の螺旋部121に対して装着部220の螺旋部221を装着することで、精製器具10に対して気密・液密に連結されている。
次に、調製器1を用いた、油類に含まれるダイオキシン類を分析するための分析用試料の調製方法を説明する。この調製方法は、主に、油類の精製工程、ダイオキシン類の分画工程およびダイオキシン類の抽出工程を含む。
<油類の精製工程>
この工程では、通常、精製器具10が上側になるよう調整器1を起立した状態に設置し、精製器具10の開口150から硫酸シリカゲル層130に対して油類を添加する。
ここで注入する油類は、通常、既述の食用油脂類、鉱油類または環境試料からの抽出液などである。油類が環境試料からの抽出液の場合、脂肪族炭化水素溶媒を用いた抽出液であれば、その適量をそのまま硫酸シリカゲル層130へ添加することができる。また、抽出液が脂肪族炭化水素溶媒以外の有機溶媒、例えばトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒を用いた抽出により得られたものの場合、当該抽出液は、抽出用に用いた芳香族炭化水素溶媒を脂肪族炭化水素溶媒に置換することで硫酸シリカゲル層130へ添加することができる。一方、油類が食用油脂類や鉱油類の場合、脂肪族炭化水素溶媒と同じ溶媒を用いて希釈後に硫酸シリカゲル層130に対して添加するのが好ましい。希釈用の脂肪族炭化水素溶媒としては、精製器具10に対して供給する、後記する脂肪族炭化水素溶媒と同じものを用いるのが好ましい。
硫酸シリカゲル層130への油類の添加量は、通常、1〜10mL程度が好ましい。環境試料からの抽出液の場合、抽出溶媒または置換溶媒の一部を留去することで濃縮し、その濃縮液の添加量を上記のように設定してもよい。また、食用油脂類や鉱油類の場合、その希釈後の添加量が上記範囲の上限付近になるよう設定するのが好ましい。
次に、油類を添加した硫酸シリカゲル層130を加熱する。加熱温度は、60℃以上に設定するのが好ましく、80℃以上に設定するのがより好ましい。この加熱により、硫酸シリカゲル層130に浸透した油類に含まれる夾雑物質が硫酸シリカゲル層130と反応し、分解する。加熱条件が60℃未満の場合、夾雑物質と硫酸シリカゲル層130との反応が進行しにくくなることから分析用試料に夾雑物質の一部が残留し、当該分析用試料による分析結果の信頼性が損なわれる可能性がある。加熱温度の上限は、特に限定されるものではないが、通常は安全性の観点から添加した油類の沸騰温度以下に制御するのが好ましい。また、加熱時間は、夾雑物質と硫酸シリカゲル層130との反応時間を十分に確保するために少なくとも30分に設定するのが好ましい。
この工程では、硫酸シリカゲル層130と夾雑物質との反応および硫酸の熱分解が進行することでSOxガスが発生し得る。
次に、硫酸シリカゲル層130に対して脂肪族炭化水素溶媒を供給する。ここで供給する脂肪族炭化水素溶媒は、ダイオキシン類を溶解可能なものであり、好ましくは炭素数が5〜8個の脂肪族飽和炭化水素溶媒である。例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンを用いるのが好ましい。これらの溶媒は、適宜混合して用いてもよい。脂肪族炭化水素溶媒の供給は、硫酸シリカゲル層130の加熱中に開始してもよいし、その加熱を停止した後に開始してもよい。
この工程では、脂肪族炭化水素溶媒を開口150から第1部位110内へ供給する。供給された脂肪族炭化水素溶媒は、硫酸シリカゲル層130に浸透し、同層を通過する。この際、脂肪族炭化水素溶媒は、油類に含まれるダイオキシン類、夾雑物質の分解生成物および分解されずに残留している夾雑物質(この夾雑物質には、通常、非DL−PCBsが含まれる。)並びにSOxガスを溶解し、ダイオキシン類を含む脂肪族炭化水素溶媒溶液として第1部位110から第2部位120へ流れて処理層140を通過する。
第1部位110からの脂肪族炭化水素溶媒に含まれるSOxガスは、脂肪族炭化水素溶媒が担体層141を通過する際に過マンガン酸塩と反応し、消費される。過マンガン酸塩として過マンガン酸カリウムを用いた場合、この反応は次のようになるものと考えられる。この反応に関与する水(HO)は、担体層141が含む水分である。
一方、第1部位110からの脂肪族炭化水素溶媒に含まれる分解生成物および夾雑物質は、脂肪族炭化水素溶媒が担体層141を通過する際に過マンガン酸塩により酸化される。分解生成物や夾雑物質が例えば不飽和脂肪酸やアルケン(二重結合をもつ炭化水素)の場合、これらは過マンガン酸塩の酸化作用によりグリコール化を経てカルボニル化し、一部はカルボン酸へ酸化されるとともに、生成したカルボン酸がギ酸の場合はさらに酸化されることで水と二酸化炭素とに分解される。
担体層141を通過した脂肪族炭化水素溶媒に残留する分解生成物や夾雑物質は、脂肪族炭化水素溶媒が硝酸銀シリカゲル層142を通過する際に当該層において捕捉される。以上の結果、処理層140を通過した脂肪族炭化水素溶媒は、油類に含まれていたダイオキシン類を保存して含むとともに、SOxガスが消費されかつ分解生成物や夾雑物質が有意に除去されたダイオキシン類の精製溶液となる。
脂肪族炭化水素溶媒は、必要により加圧しながら硫酸シリカゲル層130に対して供給することができる。例えば、硫酸シリカゲル層130と油類中の夾雑物質との反応による分解生成物が硫酸シリカゲル層130に詰まりを生じさせることがあるが、そのような場合、脂肪族炭化水素溶媒は加圧しながら供給することで安定的かつ円滑に硫酸シリカゲル層130を通過する。
<ダイオキシン類の分画工程>
処理層140を通過した脂肪族炭化水素溶媒は、第2部位120の下端の開口160から捕捉器200の上端の開口211を通じて捕捉器200内へ流れ、捕捉層230を通過後に開口212から排出される。この際、処理層140からの脂肪族炭化水素溶媒に含まれるダイオキシン類は、捕捉層230において捕捉され、脂肪族炭化水素溶媒から分離される。より具体的には、捕捉層230において、ダイオキシン類のうちのノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsが第1層240に吸着され、また、ダイオキシン類のうちのモノオルソPCBsが第2層250に吸着される。したがって、脂肪族炭化水素溶媒に含まれるダイオキシン類は、捕捉層230において、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群と、モノオルソPCBsとに分画される。
処理層140を通過した脂肪族炭化水素溶媒に残留する夾雑物質は、一部が脂肪族炭化水素溶媒とともに捕捉層230を通過して廃棄され、また、一部が捕捉層230に捕捉される。例えば、非DL−PCBsおよびPCDEは、モノオルソPCBsとともに第2層250に吸着される。また、パラフィン類等の夾雑物質は、脂肪族炭化水素溶媒とともに捕捉層230を通過し、開口212から排出される。
脂肪族炭化水素溶媒が開口212から排出された後、精製器具10内に開口150から空気流を導入し、硫酸シリカゲル層130、処理層140および捕捉層230を乾燥処理する。開口150から精製器具10内に導入された空気流は、硫酸シリカゲル層130および処理層140を通過後に捕捉器200へ流れ、捕捉層230を通過して開口212から排出される。この際、硫酸シリカゲル層130および処理層140に残留する脂肪族炭化水素溶媒は、通過する空気流により圧し出されて捕捉層230へ移動し、捕捉層230に残留する脂肪族炭化水素溶媒とともに開口212から排出される。この結果、硫酸シリカゲル層130、処理層140および捕捉層230は乾燥処理される。
<ダイオキシン類の抽出工程>
この工程では、捕捉層230に吸着されたダイオキシン類を抽出する。ここでは、先ず、精製器具10の開口150および捕捉器200の第1分岐路215を気密に閉鎖し、開口212から捕捉器200内へダイオキシン類を溶解可能な溶媒を供給する。捕捉器200内に供給された溶媒は、第2層250を通過して第2分岐路216へ流れ、第2分岐路216の端部から排出される。この際、溶媒は、第2層250に吸着したPCBsを抽出し、抽出溶液となる。したがって、第2分岐路216の端部から排出される抽出溶液を確保すると、モノオルソPCBsおよび非DL−PCBsの分析用試料(第1分析用試料)が得られる。
開口212から捕捉器200内へ供給するダイオキシン類を溶解可能な溶媒は、後述するダイオキシン類の分析方法に応じて選択することができる。分析方法としてガスクロマトグラフィー法を採用する場合は、それに適した溶媒、例えば、トルエンまたはベンゼンを用いることができる。また、トルエンまたはベンゼンに対して脂肪族炭化水素溶媒または有機塩素系溶媒を添加した混合溶媒を用いることもできる。混合溶媒を用いる場合、トルエンまたはベンゼンの割合は50重量%以上に設定する。混合溶媒において用いる脂肪族炭化水素溶媒は、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンである。また、有機塩素系溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタンまたはテトラクロロメタンである。これらの抽出溶媒のうち、少量の使用で分画器具200からダイオキシン類を抽出できることから、トルエンが特に好ましい。
分析方法としてバイオアッセイ法を採用する場合は、それに適した溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)やメタノール等の親水性溶媒が用いられる。
この工程では、第2層250を管体210の外部から加熱してもよい。第2層250を加熱した場合、抽出用の溶媒の使用量を抑えて効率的にモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsを第2層250から抽出することができる。第2層250の加熱温度は、通常、50℃程度から抽出用の溶媒の沸点未満、特に、95℃以下に制御するのが好ましい。
以上の操作により第1分析用試料を得た後、精製器具10の開口150の気密閉鎖状態を維持する一方で第1分岐路215を開放し、第2分岐路216を気密に閉鎖する。そして、開口212から捕捉器200内へダイオキシン類を溶解可能な溶媒を再度供給する。捕捉器200内に供給された溶媒は、第2層250および第1層240をこの順に通過して第1分岐路215へ流れ、第1分岐路215の端部から排出される。この際、溶媒は、第1層240に吸着したノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群を溶解し、これらのダイオキシン群を抽出した抽出溶液となる。したがって、第1分岐路215の端部から排出される抽出溶液を確保すると、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsの分析用試料(第2分析用試料)が得られる。
ここで捕捉器200内に供給するダイオキシン類を溶解可能な溶媒は、後述するダイオキシン類の分析方法に応じ、通常、第1の分析用試料の調製のために用いるものと同様のものが用いられる。
この工程では、第1層240を管体210の外部から加熱してもよい。第1層240を加熱した場合、抽出用の溶媒の使用量を抑えて効率的にノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群を第1層240から抽出することができる。第1層240の加熱温度は、通常、50℃程度から抽出用の溶媒の沸点未満、特に、80℃以上95℃以下に制御するのが好ましい。
以上の操作により分別して得られる、第1分析用試料および第2分析用試料は、それぞれ別々にダイオキシン類の分析に適用される。分析方法としては、捕捉器200において捕捉されたダイオキシン類を抽出するために用いた溶媒の種類に応じ、通常、GC−HRMS、GC−MSMS、GC−QMS若しくはイオントラップGC/MS等のGC/MS法またはGC/ECD法等のガスクロマトグラフィー法またはバイオアッセイ法を採用することができる。
第1分析用試料の分析では、この分析用試料がノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群から分離されていることから、これらのダイオキシン群による影響を受けずにモノオルソPCBsを高精度に定量することができる。また、この分析用試料は、モノオルソPCBsとともに非DL−PCBsを含むため、油類に含まれる非DL−PCBsを併せて高精度に定量することができる。例えば、欧州連合(EU)の食品規制基準(COMMISSION REGULATION (EU) No 1259/2011)において規制対象されている所定の非DL−PCBs(IUPAC番号が#28、#52/69、#101、#138、#153および#180である、塩素数が3〜7の6種類のPCBs)は、この分析用試料の分析により定量することができる。
一方、第2分析用試料の分析では、この分析用試料がモノオルソPCBsおよび非DL−PCBsから分離されていることから、これらのPCBsによる影響を受けずにノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを高精度に定量することができる。
なお、GC/MS法としてGC−MSMSまたはGC−TOFMSを用いることもでき、この場合、2種類の分析用試料を混合することで同時に分析することができる。
上述の実施の形態は、例えば、次のような変更が可能である。
(1)精製器具10は、第2部位120の処理層140において、担体層141と硝酸銀シリカゲル142との配置を入れ替えることができる。すなわち、図4に示すように、処理層140において、硝酸銀シリカゲル層142を上層側に配置し、担体層141を下層側に配置することができる。
この変更例に係る精製器具10を用いて分析用試料を調製する場合、第1部位110から第2部位120へ流れた脂肪族炭化水素溶媒に含まれる分解生成物および夾雑物質の一部は脂肪族炭化水素溶媒が硝酸銀シリカゲル層142を通過する際に当該層において捕捉されるが、脂肪族炭化水素溶媒に含まれるSOxガスは一部が硝酸銀と反応することでNOxガスを生成する。硝酸銀シリカゲル層142を通過した脂肪族炭化水素溶媒に残留している分解生成物および夾雑物質は、脂肪族炭化水素溶媒が担体層141を通過する際に過マンガン酸塩により酸化される。ここで、分解生成物や夾雑物質が例えば不飽和脂肪酸やアルケン(二重結合をもつ炭化水素)の場合、これらは過マンガン酸塩の作用を受けて既述のような酸化過程を経て分解される。この分解生成物やその他の夾雑物質は、一部が担体層141に留まり、残余が脂肪族炭化水素溶媒として開口212から排出される。一方、硝酸銀シリカゲル層142からの脂肪族炭化水素溶媒に含まれるSOxガスおよびNOxガスは、脂肪族炭化水素溶媒が担体層141を通過する際にそれぞれが過マンガン酸塩と反応し、消費される。過マンガン酸塩として過マンガン酸カリウムを用いた場合、過マンガン酸カリウムによるSOxガスの消費反応は既述のとおりであるが、過マンガン酸カリウムによるNOxガスの消費反応は次の(i)および(ii)によるものと考えられる。これらの反応に関与する水(HO)は、担体層141が含む水分である。
反応(ii)においては、反応(i)で生成したNOが消費され、NOを生成する。生成したNOは、反応(i)での消費対象となる。したがって、NOxガスは、担体層141において反応(i)および(ii)がこの順で繰り返されることにより、或いは、反応(i)および(ii)が並行して進行することにより、消費が進んで漸減し、消滅するものと考えられる。
以上の結果、処理層140を通過した脂肪族炭化水素溶媒は、油類に含まれていたダイオキシン類を保存して含むとともに、SOxガスやNOxガスが消費されかつ分解生成物や夾雑物質が有意に除去されたダイオキシン類の精製溶液となる。
(2)上述の各実施の形態に係る精製器具10は、硫酸シリカゲル層130と処理層140との間に活性シリカゲル層をさらに含んでいてもよい。例えば、図5に示すように、第1部位110内において、硫酸シリカゲル層130の下部に隣接して活性シリカゲル層131が配置されていてもよい。活性シリカゲル層131を形成する活性シリカゲルは、粒状のシリカゲルを加熱することで活性度を高めたものである。活性シリカゲルは、通常、30〜210μm程度の粒径のものを用いるのが好ましい。
精製器具10が上述のような活性シリカゲル層131を有する場合、硫酸シリカゲル層130を通過した脂肪族炭化水素溶媒は活性シリカゲル層131を通過した後に第2部位120の処理層140へ供給される。処理層140へ供給される脂肪族炭化水素溶媒は、活性シリカゲル層131を通過するときに夾雑物質および硫酸シリカゲル層130での分解生成物の一部が捕捉され、除去されることから、処理層140において夾雑物質等による目詰まりが抑えられ、処理層140を通過後の精製度が高まりやすくなる。このため、この形態の精製器具10を用いて調製された分析試料を用いると、信頼性がより高い分析結果を期待することができる。
活性シリカゲル層131は、第1部位110内において硫酸シリカゲル層130の下部との間に空間を設けて配置されていてもよい。また、活性シリカゲル層131は、第2部位120内において、処理層140の上部に隣接して、または、処理層140の上部との間に空間を設けて配置することもできる。さらに、活性シリカゲル層131は、第1部位110内および第2部位120内の両方に配置することもできる。
上述の実施の形態において参照した各図は、精製器具10や調製器1の概要を示したものであり、各部の構造、形状および大きさや比率等を正確に反映したものではない。
以下に実施例等を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例等によって限定されるものではない。以下の実施例等および評価において用いた充填材およびダイオキシン類含有油類は次のとおりである。
[充填材]
硫酸シリカゲル:
活性シリカゲル(関東化学株式会社製)に対して濃硫酸(和光純薬工業株式会社製)を均一に添加した後に乾燥することで調製された硫酸シリカゲルを用いた。活性シリカゲルに対する濃硫酸の添加量は、活性シリカゲルに対する硫酸の量が重量基準で44%になるよう設定した。
硝酸銀シリカゲル:
活性シリカゲル(関東化学株式会社製)に対して蒸留水に硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)を溶解した水溶液を添加して均一に混合した。この混合物をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で70℃に加熱して乾燥し、それにより得られた硝酸銀シリカゲルを用いた。ここでは、硝酸銀水溶液として活性シリカゲルの重量に対する硝酸銀量が10%に設定されたものを用い、硝酸銀シリカゲルにおける硝酸銀量を活性シリカゲルの重量基準の10%に設定した。
過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウム:
酸化アルミニウム(Merck社製の商品名「Aluminium Oxide 90 active basic - (activity stage I) for column chromatography」(粒径0.063〜0.200mm))を450℃で4時間焼成することで水分および付着した有機物を除去し、この焼成酸化アルミニウムを蒸留水を用いて調製した過マンガン酸カリウム水溶液に投入して均一に混合した後、エバポレータを用いて含水率が重量基準で5%になるよう乾燥処理したものを用いた。ここでは、過マンガン酸カリウム水溶液として、そこに投入する焼成酸化アルミニウムの重量に対する過マンガン酸カリウム量がそれぞれ2%、3%、4%および5%に設定された四種類のものを用い、過マンガン酸カリウムの固定量が酸化アルミニウムの重量基準でそれぞれ2%、3%、4%および5%に設定された四種類の過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウムを用いた。
過マンガン酸カリウム固定シリカゲル:
活性シリカゲル(関東化学株式会社製)を450℃で4時間焼成することで水分および付着した有機物を除去し、この焼成活性シリカゲルを蒸留水を用いて調製した過マンガン酸カリウム水溶液に投入して均一に混合した後、エバポレータを用いて含水率が重量基準で10%になるよう乾燥処理したものを用いた。ここでは、過マンガン酸カリウム水溶液として、そこに投入する焼成活性シリカゲルの重量に対する過マンガン酸カリウム量が5%に設定されたものを用い、過マンガン酸カリウムの固定量を活性シリカゲルの重量基準の5%に設定した。
活性炭含有シリカゲル:
活性シリカゲル(関東化学株式会社製)に対して活性炭(クラレケミカル株式会社の商品名「クラレコールPK-DN」)を添加して均一に混合することで得られた活性炭含有シリカゲルを用いた。活性炭の含有量は0.13重量%に設定した。
グラファイト含有シリカゲル:
活性シリカゲル(関東化学株式会社製)に対してグラファイト(シグマアルドリッチ社の商品名「ENVI-Carb」)を添加して均一に混合することで得られたグラファイト含有シリカゲルを用いた。グラファイトの含有量は12.5重量%に設定した。
酸化アルミニウム:
Merck社製の商品名「Aluminium Oxide 90 active basic - (activity stage I) for column chromatography」(粒径0.063〜0.200mm)を用いた。
活性シリカゲル:
市販品(関東化学株式会社製)を用いた。
[ダイオキシン類含有油類]
ダイオキシン類標準溶液:
n−ヘキサン100mLに対して濃度既知のダイオキシン類標準物質(Wellington Laboratories社の商品名「DF-LCS-A」)1mLおよび濃度既知のPCBs標準物質(Wellington Laboratories社の商品名「PCB-LCS-H」)1mLを添加して溶解したものをダイオキシン類標準溶液とした。ダイオキシン類標準物質は、1312によりラベルされたPCDDs、PCDFsおよびDL−PCBsを含むものである。PCBs標準物質は、1312によりラベルされたIUPAC番号が#28、#52/69、#101、#138、#153および#180の6種類の非DL−PCBs(塩素数が3〜7のPCBs)を含む。これらのPCBsはEUの食品規制対象である。
ヒマワリ油:
市販品
混合植物油:
市販品
オリーブ油:
市販品
菜種油:
市販品
ブドウ油:
市販品
豚肉油:
凍結乾燥機のトレー上に豚肉のミンチ(市販品)を厚さ2cm程度に均して載置し、この豚肉試料を凍結乾燥機内で−40℃に凍結させた。約3〜6時間後に凍結乾燥機のチャンバ内の圧力を20Pa近くまで下げて豚肉試料の乾燥を開始し、豚肉試料の温度が約20〜30℃に到達したところで乾燥を終了した。以上の処理を経た豚肉試料をソックスレー抽出用の円筒ろ紙に入れ、トルエン(A)とアセトン(B)との比率(A:B)が7:3の混合有機溶媒を用いて16時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液を無水硫酸ナトリウムを用いて脱水、ろ過処理し、そのろ液からロータリーエバポレーターを用いて混合有機溶媒を除去した後の油状の残渣を豚肉油として用いた。
鶏肉油:
豚肉のミンチに替えて鶏肉のミンチ(市販品)を用い、豚肉油の調製工程と同じ工程を経て得られた油状の残渣を鶏肉油として用いた。
鶏卵油:
豚肉のミンチに替えて市販の鶏卵を溶いたものを用い、豚肉油の調製工程と同じ工程を経て得られた油状の残渣を鶏卵油として用いた。
牛脂油:
豚肉のミンチに替えて牛肉のミンチ(市販品)を用い、豚肉油の調製工程と同じ工程を経て得られた油状の残渣を牛脂油として用いた。
[実施例1]
図1に示す形態の精製器具10を作成した。ここでは、突起部111を除いた本体部分の外径が20mm、内径が17.6mm、長さが120mmに設定された筒体内に硫酸シリカゲル23gを高さが105mmになるよう充填することで硫酸シリカゲル層130を形成し、第1部位110を作成した。また、外径、内径および長さが第1部位110の上記本体部分と同じ筒体内に硝酸銀シリカゲル2.5gを高さが22mmになるよう充填した後、その上に過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウム(但し、過マンガン酸カリウムの固定量が5%のもの。)8.5gを高さが33mmになるよう充填して積層することで処理層140を形成し、第2部位120を作成した。そして、作成した第1部位110の突起部111を第2部位120の一端側に嵌め込むことで第1部位110と第2部位120とを一体化し、精製器具10を完成した。ここでは、図2に示すように、第1部位110から第2部位120にかけて硫酸シリカゲル層130、担体層141(過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウム層)および硝酸銀シリカゲル層142の順になるよう第1部位110と第2部位120とを連結した。
[実施例2]
第2部位の作成時に過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウムに替えて過マンガン酸カリウム固定シリカゲルを用いた点を除き、実施例1において作成したものと同様の第1部位110および第2部位120を作成した。そして、第1部位110から第2部位120にかけて硫酸シリカゲル層130、担体層141(過マンガン酸カリウム固定酸化シリカゲル層)および硝酸銀シリカゲル層142の順になるよう第1部位110と第2部位120とを連結して一体化し、精製器具10を作成した。
[実施例3]
第2部位の作成時において過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウムを充填した層を先に形成し、その上に硝酸銀シリカゲルを充填した層を積層することで処理層140を形成した点を除き、実施例1において作成したものと同様の第1部位110および第2部位120を作成した。そして、第1部位110と第2部位120とを連結して一体化し、第1部位110から第2部位120にかけて硫酸シリカゲル層130、硝酸銀シリカゲル層142および担体層141(過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウム層)がこの順に配置された精製器具10を作成した。
[実施例4〜6]
過マンガン酸カリウムの固定量が異なる過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウムを用い、実施例1で作成したものと同様の精製器具10を作成した。各実施例において用いた過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウムにおける酸化アルミニウムの重量基準での過マンガン酸カリウムの固定量は表1のとおりである。
[実施例7〜10]
第1部位110として硫酸シリカゲル層130の下に図5に示すように活性シリカゲル層131を配置したものを用いた点を除いて実施例1で作成したものと同様の精製器具10を作成した。ここで用いた第1部位110は、筒体内に活性シリカゲルを充填し、その上に硫酸シリカゲルを充填することで作成したものである。ここで、活性シリカゲルおよび硫酸シリカゲルの充填量と充填高さは表2のとおりである。
[比較例1]
図6に示す第1第比較用精製器具300を作成した。図6は本比較例の図2に相当する図であり、第1比較用精製器具300は、実施例1において用いた筒体100の第1部位110内に硝酸銀シリカゲル11.5gを高さが110mmになるよう充填することで硝酸シリカゲル層330を形成した第1部位相当品310と、実施例1において用いた筒体100の第2部位120内に硫酸シリカゲル13gを高さが90mmになるよう充填することで硫酸シリカゲル層340を形成した第2部位相当品320とを作成し、第1部位相当品310と第2部位相当品320とを実施例1の精製器具10と同様に一体化したものである。
[比較例2]
第2部位において処理層140を硝酸銀シリカゲルのみで形成した点を除き、実施例1において作成したものと同様の第1部位110および第2部位120を作成した。そして、第1部位110と第2部位120とを連結して一体化し、第1部位110から第2部位120にかけて硫酸シリカゲル層130と硝酸銀シリカゲル層142とがこの順に配置された第2比較用精製器具を作成した。
[評価]
評価1:
実施例1において作成した精製器具10を撮影した写真を図7に示す。図7において、精製器具10は、上側が第1部位110であり、下側が第2部位120である。図7によると、第2部位120の処理層140において、担体層141に相当する部分は過マンガン酸カリウムによる暗色を呈している。これは、実施例2〜6においてそれぞれ作成した精製器具10についても同様であった(なお、実施例2および実施例4〜6については図7と同様であるが、実施例3については処理層140において担体層141が下層側になることから、処理層140の下層側が暗色を呈する。)。
実施例1において作成した精製器具10の第1部位110の開口150から硫酸シリカゲル層130に対し、油類試料を添加した。ここで添加した油類試料は、ヒマワリ油6gにn−ヘキサンを添加して10mLに希釈したものである。油類試料が添加された硫酸シリカゲル層130を加熱して80℃で30分間保持した後、開口150から第1部位110内にn−ヘキサン130mLを50kPaに加圧しながら徐々に供給した。このn−ヘキサンを第1部位110および第2部位120の各層に対して通過させ、第2部位120の開口160から排出した。
n−ヘキサンが通過後(すなわち、油類試料を精製処理した後。)の精製器具10を撮影した写真を図8に示す。図8は、当初は過マンガン酸カリウムによる暗色を呈していた担体層141(過マンガン酸カリウム固定酸化アルミニウム層)の上部付近が明色に変化したことを示している。これは、担体層141の過マンガン酸カリウムが硫酸シリカゲル層130において発生したSOxガスと反応し、当該SOxガスを消費したことを現わしている。
実施例2および実施例3においてそれぞれ作成した精製器具10について同様の操作をし、n−ヘキサンが通過後(すなわち、油類試料を精製処理した後。)の状態を撮影した写真をそれぞれ図9および図10に示す。図9は、担体層141の略全体が明色に変化したことを示していることから、実施例2の精製器具10においても担体層141の過マンガン酸カリウムが硫酸シリカゲル層130において発生したSOxガスと反応し、当該SOxガスを消費したものと評価される。一方、図10は、担体層141の上部付近のみがやや明色に変化したことを示している。これは、実施例3の精製器具10において、硫酸シリカゲル層130で発生したSOxガスが担体層141の硝酸銀シリカゲル層142を通過するときにNOxガスに変換され、このNOxガスが担体層141の過マンガン酸カリウムと反応することで消費されたことを現わしている。
評価2:
実施例1および実施例4〜6においてそれぞれ作成した精製器具10を用い、評価1と同じ操作により豚肉油6gおよび鶏肉油6gをそれぞれ精製処理した。精製処理後に各実施例に係る精製器具10の第2部位120について、担体層141部分を撮影した写真を図11に示す。
図11によると、ここでの評価対象とする実施例4〜6は、実施例1と同じく担体層141が明色に変化していることから、実施例4〜6についても担体層141の過マンガン酸カリウムが硫酸シリカゲル層130において発生したSOxガスと反応し、当該SOxガスを消費したものと評価される。但し、過マンガン酸カリウムの固定量が5%の実施例1の場合は担体層141が明色に変化した範囲が限定的であるのに対し、過マンガン酸カリウムの固定量が実施例1よりも少ない実施例4〜6の場合は担体層141が明色に変化した範囲が広がっている。これは、担体である酸化アルミニウムに対する過マンガン酸カリウムの固定量が多いほど、硫酸シリカゲル層130において発生したSOxガスを効率的に消費可能なことを示している。
評価3:
実施例1および実施例3の精製器具10をそれぞれ用い、図3に示す調製器1を作成した。この調製器1において用いた捕捉器200は次のようにして作成したものである。本体部分の外径が8mm、内径が6mm、長さが30mmに設定された管体210の第1分岐路215と第2分岐路216との間に内において、第1層240を形成した。第1層240は、グラファイト含有シリカゲル0.6gを高さが25mmになるよう充填したグラファイト含有シリカゲル層242を形成し、その上に活性炭含有シリカゲル0.25gを高さが5mmになるよう充填することで活性炭含有シリカゲル層241を形成したものである。また、第2分岐路216と下端との間に酸化アルミニウム0.8gを高さが30mmになるよう充填することで第2層250を形成した。
この調製器1を用い、ダイオキシン類含有油類からダイオキシン類の分析用試料を調製した。分析用試料の調製操作において用いた試験油類は、ダイオキシン類含有油類の5gを試験管に採取し、これにn−ヘキサンを加えて10mLになるよう希釈したものである。ダイオキシン類含有油類がダイオキシン類標準溶液以外のものの場合、試験管に採取したダイオキシン類含有油類に対してダイオキシン類標準溶液の調製において用いたダイオキシン類標準物質およびPCBs標準物質をそれぞれ0.02mL添加した後、n−ヘキサンを加えて試験油類を調製した。
分析用試料の調製では、精製器具10の第1部位110の開口150から硫酸シリカゲル層130に対し、樹脂製の使い捨てシリンジを用いて試験油類の全量を添加した。添加した試験油類の全量が硫酸シリカゲル層130に浸透した後、使用したシリンジ内を2〜4mLのn−ヘキサンを用いて1回洗浄し、その洗浄液も硫酸シリカゲル層130に添加して浸透させた。
次に、硫酸シリカゲル層130を80℃に加熱し、当該温度で30分間保持した。その後、硫酸シリカゲル層130の加熱温度を60℃に変更して開口150から硫酸シリカゲル層130に対して130mLのn−ヘキサンを供給し、このn−ヘキサンを精製器具10と捕捉器200とに通過させて捕捉器200の開口212から排出させた。この間、n−ヘキサンを安定に通過させるのに必要な供給圧は概ね50〜70kPaであったが、一時500kPaを超える供給圧を要することがあった。これは、硫酸シリカゲル層130での分解生成物により処理層140が詰まりを生じたことによるものと考えられる。n−ヘキサンの供給開始からn−ヘキサンの排出が完了するまでに要した時間は約52分であった。開口212からのn−ヘキサンの排出が完了した後、開口150から精製器具10内に圧縮空気を供給し、精製器具10および捕捉器200内の各層を乾燥処理した。
乾燥処理の終了後、捕捉器200の第2層250を90℃に加熱するとともに開口150および第1分岐路215を気密に閉鎖し、この状態で開口212から捕捉器200内にトルエン2.5mLを供給した。そして、第2層250を通過したトルエンを第2分岐路216を通じて回収し、第1分析用試料を得た。次に、捕捉器200の第1層240を90℃に加熱するとともに開口150および第2分岐路216を気密に閉鎖し、この状態で開口212から捕捉器200内にトルエン2.5mLを供給した。そして、第2層250および第1層240をこの順に通過したトルエンを第1分岐路215を通じて回収し、第2分析用試料を得た。
第1分析用試料および第2分析用試料をそれぞれHRGC/HRMS法により個別に定量分析し、ダイオキシン類および非DL−PCBsの回収率を算出した。結果を表3に示す。なお、HRGC/HRMS法においては、アジレントテクノロジー社製のGC−MSを用い、キャピラリーカラムとして同社製のDB−5ms(但し、長さ60mのもの。)を用いた。これは、HRGC/HRMS法を採用した以下の他の評価についても同じである。
表3によると、実施例1および実施例3の精製器具10を用いて得られた第1分析用試料および第2分析用試料は、ダイオキシン類の個々の回収率が60〜120%の範囲にあり、EUの食品規制基準の評価用試料として利用可能である。
評価4:
比較例1の第1比較用精製器具300を用い、図3に示す調製器1に相当する調製器、すなわち、調製器1の精製器具10のみ第1比較用精製器具300に置き換えたものを作成した。そして、この調製器を用い、ダイオキシン類含有油類からダイオキシン類の分析用試料を調製した。分析用試料の調製操作において用いた試験油類は、ヒマワリ油を試験管に採取し、これにダイオキシン類標準溶液の調製において用いたダイオキシン類標準物質およびPCBs標準物質をそれぞれ0.02mL添加した後、n−ヘキサンを加えて10mLになるよう希釈したものである。試験油類は、ヒマワリ油の使用量が3.5gのものと4gのものとの二種類を調製した。各試験油類は、評価2で用いたものよりもダイオキシン類含有油類(ヒマワリ油)の使用量を抑えたものである。
分析用試料の調製では、第1比較用精製器具300の第1部位相当品310の開口150から硝酸銀シリカゲル層330に対し、樹脂製の使い捨てシリンジを用いて試験油類の全量を添加した。添加した試験油類の全量が硝酸銀シリカゲル層330に浸透した後、使用したシリンジ内を2〜4mLのn−ヘキサンを用いて1回洗浄し、その洗浄液も硝酸銀シリカゲル層330に添加して浸透させた。
次に、硝酸銀シリカゲル層330を60℃に加熱し、当該温度で10分間保持した。その後、開口150から硝酸銀シリカゲル層330に対して90mLのn−ヘキサンを徐々に供給し、このn−ヘキサンを精製器具300と捕捉器200とに通過させて捕捉器200の開口212から排出させた。この間、n−ヘキサンの供給圧を50kPa以上に設定した。開口212からのn−ヘキサンの排出が完了した後、開口150から第1比較用精製器具300内に圧縮空気を供給し、第1比較用精製器具300および捕捉器200内の各層を乾燥処理した。
乾燥処理の終了後、評価3の場合と同様の操作を実行し、第1分析用試料および第2分析用試料を得た。得られた第1分析用試料および第2分析用試料をそれぞれHRGC/HRMS法により個別に定量分析し、ダイオキシン類および非DL−PCBsの回収率を算出した。結果を表4に示す。
表4によると、ヒマワリ油の使用量が3.5gの場合は第1分析用試料に含まれるPCBsの一部の回収率が60%未満であり、また、同油の使用量が4gの場合は第1分析用試料に含まれるPCBsの全ての回収率が60%を大きく下回っていることから、ダイオキシン類含有油類の使用量が多い試験油類を第1比較用精製器具300に適用した場合は精製が不完全になり、EUの食品規制基準の評価用試料として利用可能な分析用試料の調製が困難である。
評価5:
評価3において、実施例1、3の精製器具10をそれぞれ採用した調製器1を用いてヒマワリ油から調製した第1分析用試料について、HRGC/HRMS法での測定時に得られた保持時間(Retention time)が概ね24〜35分の範囲(塩素数が5のPCBsのクロマトグラムが現われる範囲)および保持時間が概ね16〜24分の範囲(塩素数が3のPCBsのクロマトグラムが現われる範囲)におけるロックマス(分析時に同時に測定される、質量較正用に用いたパーフルオロケロセンの検出ノイズ。)の結果を実施例1による第1分析用試料に関して図12に、また、実施例3による第1分析用試料に関して図13にそれぞれ示す。
図12によると、実施例1による第1分析用試料についてはロックマスが安定しており、塩素数が5のPCBsおよび塩素数が3のPCBsの検出ピークが鋭利にかつ高強度に現われている。これに対し、図13によると、実施例3による第1分析用試料についてはロックマスが相対的に不安定であり、塩素数が5のPCBsおよび塩素数が3のPCBsの検出ピークの強度が相対的に低く現われている。分析用試料に含まれる夾雑物質は、パーフルオロケロセンのイオン化を妨げ、ロックマスを不安定化することから、実施例1の精製器具10は、実施例3の精製器具10に比べてダイオキシン類含有油類をより高度に精製できていることになる。
評価6:
評価3において、実施例1、3の精製器具10をそれぞれ採用した調製器1を用いてヒマワリ油から調製した第1分析用試料および第2分析用試料について、m/zが50〜500の質量範囲の化合物検出を行うスキャンモードによりGC−MSの測定を行った。実施例1の精製器具10を用いて得られた分析用試料についての結果を図14に示し、実施例3の精製器具を用いて得られた分析用試料についての結果を図15に示す。
図14においては、第1分析用試料および第2分析用試料のいずれについても上記質量範囲の化合物が検出されていないが、図15では両方の分析用試料について上記質量範囲の化合物が検出されている。この結果は、評価5の結果と同じく、実施例1の精製器具10が実施例3の精製器具10に比べてダイオキシン類含有油類をより高度に精製できていることを示している。
評価7:
評価3において、実施例1の精製器具10を用いて5gのヒマワリ油を精製した。ここでの精製操作は、精製器具10に対して捕捉器200を連結しなかった点を除き、評価3の場合と同様にした。得られた精製溶液をロータリーエバポレータを用いて濃縮し、その濃縮液についてm/zが50〜500の質量範囲の化合物検出を行うスキャンモードによりGC−MSの測定を行った。一方、実施例1の精製器具10に替えて比較例2に係る第2比較用精製器具を用い、同様の操作により5gのヒマワリ油を精製した。得られた精製溶液をロータリーエバポレータを用いて濃縮し、その濃縮液についてm/zが50〜500の質量範囲の化合物検出を行うスキャンモードによりGC−MSの測定を行った。図16に結果を示す。
図16によると、実施例1の精製器具10を用いて調製した精製溶液の測定結果は、比較例2の第2比較用精製器具を用いて調製した精製溶液の測定結果よりもピーク面積が小さい。これは、実施例1の精製器具10を用いて調製した精製溶液における夾雑物質の量が比較例2の第2比較用精製器具を用いて調製した精製溶液における同物質の量よりも少ないこと、すなわち、実施例1の精製器具10の方が比較例2の第2比較用精製器具よりもダイオキシン類含有油類の精製効果が高いことを示している。
評価8:
実施例4〜6の精製器具10を用い、図3に示す調製器1を作成した。そして、この調製器1を用いて評価3の場合と同様の操作を実行し、第1分析用試料および第2分析用試料を得た。但し、本評価では、鶏肉湯6gを試験管に採取し、これにダイオキシン類標準溶液の調製において用いたダイオキシン類標準物質およびPCBs標準物質をそれぞれ0.02mL添加した後、n−ヘキサンを加えて10mLになるよう希釈したものを試験油類とした。
得られた第2分析用試料をHRGC/HRMS法により分析したときの保持時間(Retention time)が概ね24〜33分の範囲におけるロックマスの結果を図17に示す。図17によると、実施例4、5、6の順にロックマスが安定し、クロマトグラムのピークが明瞭化している。これは、精製器具10の担体層141において担体である酸化アルミニウムに対する過マンガン酸カリウムの固定量が多くなるに従ってダイオキシン類含有油類の精製効果が高まることを示している。
評価9:
実施例7〜10の精製器具10を用い、図3に示す調製器1を作成した。そして、この調製器1を用いて評価3の場合と同様の操作を実行し、第1分析用試料および第2分析用試料を得た。但し、本評価では、鶏卵油6gおよび牛脂油6gをそれぞれ個別の試験管に採取し、これらにダイオキシン類標準溶液の調製において用いたダイオキシン類標準物質およびPCBs標準物質をそれぞれ0.02mL添加した後、n−ヘキサンを加えて10mLになるよう希釈して調製した二種類の試験油類を用いた。なお、鶏卵油は不飽和脂肪酸を多く含む油類であるのに対し、牛脂油は飽和脂肪酸を多く含む油類である。調製器1に対するn−ヘキサンの供給において、n−ヘキサンを安定に通過させるのに必要な供給圧は、実施例7〜10のいずれの精製器具10を用いた場合においても概ね50〜70kPaで終始安定していた。これは、硫酸シリカゲル層130での分解生成物が活性シリカゲル層131により捕捉され、当該分解生成物による処理層140の詰まりが抑えられたことによるものと考えられる。n−ヘキサンの供給開始からn−ヘキサンの排出が完了するまでに要した時間は評価3の場合と概ね同じ約52分であった。
各試験油類から得られた第1分析用試料および第2分析用試料をHRGC/HRMS法により分析したときのクロマトグラムを図18(鶏卵油から調製した試験油類の場合。)および図19(牛脂油から調製した試験油類の場合。)に示す。図18、図19において、実施例7、実施例8、実施例9、実施例10の順にベースラインが上昇している。これは、硫酸シリカゲルの使用量が多く、活性シリカゲルの使用量が少ない方が試験油類の精製効果が高いこと、および、活性シリカゲルの使用量を少量に抑えてn−ヘキサン(脂肪族炭化水素溶媒)の供給圧を安定させることができることを示している。
10 精製器具
100 筒体
110 第1部位
120 第2部位
130 硫酸シリカゲル層
131 活性シリカゲル層
140 処理層
141 担体層
142 硝酸銀シリカゲル層

Claims (9)

  1. 油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析するために前記油類を精製するための方法であって、
    硫酸シリカゲル層へ前記油類を添加する工程と、
    前記油類を添加後の前記硫酸シリカゲル層に対して脂肪族炭化水素溶媒を供給する工程と、
    過マンガン酸塩を固定した担体層と硝酸銀シリカゲル層とを含む処理層に前記硫酸シリカゲル層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を通過させる工程と、
    を含む油類の精製方法。
  2. 前記担体層が過マンガン酸塩を固定した酸化アルミニウム層である、請求項1に記載の油類の精製方法。
  3. 前記処理層において、前記担体層と前記硝酸銀シリカゲル層との順に前記硫酸シリカゲル層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を通過させる、請求項1または2に記載の油類の精製方法。
  4. 前記硫酸シリカゲル層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を前記処理層に通過させる前に活性シリカゲル層に通過させる工程をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の油類の精製方法。
  5. 油類に含まれる有機ハロゲン化物質を分析するために前記油類を精製するための器具であって、
    両端が開口した筒体と、
    前記筒体内に充填された硫酸シリカゲル層と、
    前記筒体内において前記硫酸シリカゲル層とは別に充填された、過マンガン酸塩を固定した担体層および硝酸銀シリカゲル層を含む処理層と、
    を備えた油類の精製器具。
  6. 前記担体層が過マンガン酸塩を固定した酸化アルミニウム層である、請求項5に記載の油類の精製器具。
  7. 前記処理層は、前記硫酸シリカゲル層と前記硝酸銀シリカゲル層との間に位置するよう前記担体層を含んでいる、請求項5または6に記載の油類の精製器具。
  8. 前記筒体が前記硫酸シリカゲル層を充填した第1部位と前記処理層を充填した第2部位とに分割されており、前記第1部位と前記第2部位とを結合することで形成される、請求項5から7のいずれかに記載の油類の精製器具。
  9. 前記筒体内において前記硫酸シリカゲル層と前記処理層との間に充填された活性シリカゲル層をさらに備えた、請求項5から8のいずれかに記載の油類の精製器具。
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