JP2019152402A - 熱整流器 - Google Patents

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豊志夫 渡
Toshio Watari
豊志夫 渡
吉本 博
Hiroshi Yoshimoto
博 吉本
晃太 伊藤
Kota Ito
晃太 伊藤
和孝 西川
Kazutaka Nishikawa
和孝 西川
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Abstract

【課題】優れた熱整流性能を有する熱整流器を提供する。【解決手段】第1の構造体Aと第2の構造体Bを含み、両者の間の熱の移動を制御可能な熱整流器であって、第1の構造体は、第1の基材11と、その上に表面層12と、を含み、第2の構造体は、第2の基材4、第1の導体層1、誘電体層3、周期構造を有する第2の導体層2とがこの順に積層され、第1の構造体及び第2の構造体は、表面層と第2の導体層とがそれぞれ互いに対向するように配置され、表面層並びに第1の導体層及び第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料から構成されるか、或いは、高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料から構成される。【選択図】図1

Description

本開示は、主に、熱の移動を制御可能な熱整流器に関する。
例えば、電子部品を含む電子機器は、電子部品の性能や寿命の観点から、温度を適正な範囲に保つことが望まれている。そこで、熱マネジメントにより各種産業機器の効率化に貢献できれば、CO排出削減等の環境対応をはじめとする非常に大きいインパクトを与えることができる。熱伝達の三モード(伝導、対流、輻射)のうち熱輻射は、高い制御性を有する。そこで、電子機器の温度を制御するために、機器内の熱輻射(熱放射)を利用することにより制御可能な熱制御装置が開発されている。
例えば、特許文献1は、ある方向に熱を伝えやすく、その逆方向には熱を伝えにくい熱ダイオードに関する技術を開示しており、−200℃以上1000℃以下の中のある温度領域において熱伝導率が増加するセラミックス材料である第一の材料と、前記温度領域において前記熱伝導率が減少する第二の材料と、が接合されて形成された熱ダイオードを開示している。特許文献1の技術は、熱伝導における熱整流を対象としている。
また、非特許文献1は、シリコン基板の上に相転移材料としての酸化バナジウムを形成した熱整流器を開示している。また、非特許文献2では、基材と、基材の上にAuと、Auの上にKBrと、KBrの上に相転移材料としての酸化バナジウムとが形成された多層構造を有する熱整流器が開示されている。
国際公開第2015/030239号
Kota Ito, Kazutaka Nishikawa, Hideo Iizuka, Hiroshi Toshiyoshi, "Experimental investigation of radiative thermal rectifier using vanadium dioxide", Applied Physics Letters 105, No. 25, 253503 (2014) Alok Ghanekar, Gang Xiao, Yi Zheng, "High Contrast Far-Field Radiative Thermal Diode", Scientific Reports 7, 6339 (2017)
上述の特許文献に示されるように、相転移材料を利用して、すなわち相転移材料の高温相と低温相における性質の違いを利用して、熱を制御すべき対象物の熱を制御可能な熱制御装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1や非特許文献1、非特許文献2の発明では、まだ熱整流性能、具体的には熱整流比(順方向熱流/逆方向熱流)について改善の余地があった。
そこで、本開示の目的は、優れた熱整流性能を有する熱整流器を提供することである。
本実施形態の一態様は、以下の通りに表すことができる。
(1) 第1の構造体と第2の構造体とを含み、前記第1の構造体と前記第2の構造体との間の熱の移動を制御可能な熱整流器であって、
前記第1の構造体は、第1の基材と、該第1の基材の上に表面層と、を含み、
前記第2の構造体は、第2の基材と、該第2の基材の上に第1の導体層と、該第1の導体層の上に誘電体層と、該誘電体層の上に周期構造を有する第2の導体層と、を含み、
前記第1の構造体及び前記第2の構造体は、前記表面層と前記第2の導体層とがそれぞれ互いに対向するように配置され、
前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料から構成されるか、或いは前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料から構成される、熱整流器。
(2) 前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料から構成される、(1)に記載の熱整流器。
(3) 前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、酸化バナジウムから構成される、(2)に記載の熱整流器。
(4) 前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料から構成される、(1)に記載の熱整流器。
(5) 前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、ペロブスカイト型Mn酸化物から構成される、(4)に記載の熱整流器。
(6) 熱を制御する対象物と、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の熱整流器と、を含む熱制御システム。
(7) (1)〜(5)のいずれか1つに記載の熱整流器を対象物に設けることにより、対象物における熱移動を制御する方法。
(8) 第1の構造体と第2の構造体とを含み、前記第1の構造体と前記第2の構造体との間の熱の移動を制御可能な熱整流器であって、
前記第1の構造体は、第1の基材と、該第1の基材の上に表面層と、を含み、
前記第2の構造体は、第2の基材と、該第2の基材の上に金属層と、該金属層の上に誘電体層と、該誘電体層の上に相転移材料層と、を含み、
前記第1の構造体及び前記第2の構造体は、前記表面層と前記相転移材料層とがそれぞれ互いに対向するように配置され、
前記表面層及び前記相転移材料層は、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい材料から構成されるか、或いは高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい材料から構成される、熱整流器。
(9) 前記表面層及び前記相転移材料層が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料から構成される、(8)に記載の熱整流器。
(10) 前記表面層及び前記相転移材料層が、それぞれ、酸化バナジウムから構成される、(9)に記載の熱整流器。
(11) 前記表面層及び前記相転移材料層が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい材料から構成される、(8)に記載の熱整流器。
(12) 前記表面層及び前記相転移材料層が、それぞれ、ペロブスカイト型Mn酸化物から構成される、(11)に記載の熱整流器。
(13) 熱を制御する対象物と、(8)〜(12)のいずれか1つに記載の熱整流器と、を含む熱制御システム。
(14) (8)〜(12)のいずれか1つに記載の熱整流器を対象物に設けることにより、対象物における熱移動を制御する方法。
本開示によれば、優れた熱整流性能を有する熱整流器を提供することができる。
本実施形態に係る熱整流器の構成例を説明するための模式的概略図である。 本実施形態に係る熱整流器の第1の構造体Aについて、熱放射特性を説明するための模式的概略図である。 本実施形態に係る熱整流器の第1の構造体Aについて、熱放射特性を説明するための模式的概略図である。 本実施形態の熱放射構造体10の構成を説明するための模式的断面図である。 図3の熱放射構造体の模式的斜視図である。 図3の熱放射構造体(1セル)の寸法例を説明するための模式的斜視図である。 本実施形態の熱放射構造体20の構成を説明するための模式的断面図である。 図6の熱放射構造体の模式的斜視図である。 図6の熱放射構造体(1セル)の寸法例を説明するための模式的斜視図である。 (A)は、熱放射構造体100の構成を説明するための模式的断面図であり、(B)は、熱放射構造体110の構成を説明するための模式的断面図である。 熱放射構造体100の熱放射特性について、シミュレーションにより評価した結果を示す図である。 熱放射構造体120の構成を説明するための模式的断面図である。 熱放射構造体130の構成を説明するための模式的断面図である。 (A)は、熱放射構造体200の構成を説明するための模式的断面図であり、(B)は、熱放射構造体210の構成を説明するための模式的断面図である。 (A)は、第1の構造体Aが低温下に配置され、第2の構造体Bが高温下に配置された場合の熱移動について説明するイメージ図であり、(B)は、第1の構造体Aが高温下に配置され、第2の構造体Bが低温下に配置された場合の熱移動について説明するイメージ図である。 (A)は、第1の構造体Aが低温下に配置され、第2の構造体Bが高温下に配置された場合の熱移動について説明するイメージ図であり、(B)は、第1の構造体Aが高温下に配置され、第2の構造体Bが低温下に配置された場合の熱移動について説明するイメージ図である。 実施例においてシミュレーションで設定した第1の構造体Aの概略図である。 実施例においてシミュレーションで設定した第2の構造体Bの概略図である。 (A)は、低温(300K)における第1の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果であり、(B)は、高温(473K)における第2の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。 (A)は、高温(473K)における第1の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果であり、(B)は、低温(300K)における第2の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。 得られた放射率スペクトルから順方向及び逆方向の熱流束スペクトルを算出した結果を示す図である。 (A)は、低温(300K)における第1の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果であり、(B)は、高温(345K)における第2の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。 (A)は、高温(345K)における第1の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果であり、(B)は、低温(300K)における第2の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。 得られた放射率スペクトルから順方向及び逆方向の熱流束スペクトルを算出した結果を示す図である。 Fabry−Perot共鳴を利用した熱放射構造体1000の構成例を説明するための模式的断面図である。 Fabry−Perot共鳴を利用した熱放射構造体1000の構成例を説明するための模式的断面図である。 熱放射構造体1000の熱放射特性について、シミュレーションにより評価した結果を示す図である。
本実施形態は、上述の通り、第1の構造体と第2の構造体とを含み、前記第1の構造体と前記第2の構造体との間の熱の移動を制御可能な熱整流器であって、前記第1の構造体は、第1の基材と、該第1の基材の上に表面層と、を含み、前記第2の構造体は、第2の基材と、該第2の基材の上に第1の導体層と、該第1の導体層の上に誘電体層と、該誘電体層の上に周期構造を有する第2の導体層と、を含み、前記第1の構造体及び前記第2の構造体は、前記表面層と前記第2の導体層とがそれぞれ互いに対向するように配置され、前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料から構成されるか、或いは前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料から構成される、熱整流器である。
本実施形態によれば、優れた熱整流性能を有する熱整流器を提供することができる。
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る熱整流器の構成を説明するための模式的断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る熱整流器は、第1の構造体Aと第2の構造体Bとを含む。第1の構造体Aは、第1の基材11と、該第1の基材11の上に表面層12と、を含む。第2の構造体Bは、第2の基材4と、第2の基材4の上に第1の導体層1と、第1の導体層1の上に誘電体層3と、誘電体層3の上に周期構造を有する第2の導体層2と、を含む。第1の構造体Aと第2の構造体Bは、それぞれ、第1の構造体Aの表面層12と、第2の構造体Bの第2の導体層2とが互いに対向するように配置されている。また、第1の構造体Aと第2の構造体Bは、表面層12と第2の導体層2との間に空間が設けられるように配置されている。すなわち、表面層12と第2の導体層4とは、接触せずに空間を介して離間して配置されている。表面層12と第2の導体層2との間の距離は、特に制限されるものではないが、例えば、100μm〜10cmである。
第1の構造体Aの第1の基材11は、表面層12の支持体として機能するものである。第1の基材11は、熱移動を制御する対象物を構成する部材であってもよい。また、第1の基材11は、熱移動を制御する対象物上に形成されてもよい。第1の基材11は、絶縁性を有することが好ましいが、特に制限されるものではない。第1の基材11としては、例えば、シリコンや樹脂等が挙げられる。第2の構造体Bの第2の基材4についても、第1の構造体Aの第1の基材11と同様の内容が適用される。本実施形態に係る熱整流器は、第1の構造体Aの第1の基材11と第2の構造体Bの第2の基材4との間の熱移動を制御するものとも認識することができる。
第1の構造体Aにおいて、表面層12は、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料(例えば酸化バナジウム)から構成されるか、又は高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料(例えばペロブスカイト型Mn酸化物)から構成される。また、第1の構造体Aの表面層12が高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料(例えば酸化バナジウム)から構成される場合、第2の構造体Bにおける第1の導体層1及び第2の導体層2のうち少なくとも一方は、同じように、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料(例えば酸化バナジウム)から構成される。また、第1の構造体Aの表面層12が高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料(例えばペロブスカイト型Mn酸化物)から構成される場合、第2の構造体Bにおける第1の導体層1及び第2の導体層2のうち少なくとも一方は、同じように、高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料(例えばペロブスカイト型Mn酸化物)から構成される。なお、第1の構造体Aの表面層12の材料と、第2の構造体Bの第1の導体層1及び第2の導体層2との材料は、上記要件を満たせば、それぞれ独立していてもよい。
高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料としては、例えば、酸化バナジウムが挙げられる。酸化バナジウムとしては、例えば、二酸化バナジウムや該二酸化バナジウムにおけるバナジウムの一部が他の金属(例えばタングステン等の遷移金属)に置換された酸化物等が挙げられる。なお、二酸化バナジウムは、一般的に、67℃(340K)付近に相転移温度を有する。バナジウムの一部を遷移金属等の他の金属により置換することにより、相転移温度を変化させることができる。また、酸化バナジウムの他にも、例えば、酸化チタン(Ti)や酸化タングステン(WO)等が挙げられる。高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きい性質は、具体的には、高温相では金属的性質(金属相)を有し、低温相では絶縁体的性質(絶縁体層又は誘電体相)を有することを意味し得る。
また、高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料としては、例えば、ペロブスカイト型Mn酸化物等が挙げられる。ペロブスカイト型Mn酸化物としては、例えば、A1−XMnOで表されるMnを含むペロブスカイト酸化物(Aは、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1つの希土類金属を表し、Bは、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1つのアルカリ土類金属を表す)が挙げられる。ペロブスカイト型Mn酸化物は、一般的に、−23℃(250K)付近に相転移温度を有する。また、ペロブスカイト型Mn酸化物の他には、Crを含むコランダムバナジウム酸化物が挙げられ、具体的には(V1−XCrで表されるコランダムバナジウム酸化物が挙げられる。高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さい性質は、具体的には、高温相では絶縁体的性質を有し、低温相では金属的性質を有することを意味し得る。
本明細書において、相転移材料とは、温度に応じて相変化を起こし、輻射率及び導電率が変化する材料のことを意味する。相転移材料は相変化材料と表現し得る。相転移材料において、高温相での抵抗値と低温相での抵抗値とが3桁以上異なることが好ましい。相転移温度よりも50℃高い温度での抵抗値と相転移温度よりも50℃低い温度での抵抗値とが3桁以上異なることが好ましく、相転移温度よりも30℃高い温度での抵抗値と相転移温度よりも30℃低い温度での抵抗値とが3桁以上異なることが好ましい。相転移温度Tcは、例えば、Tcでの抵抗値の対数がTc±50℃での抵抗値の対数の平均と等しくなるような温度と定義できる。相転移が温度ヒステリシスを取る場合は、昇温時のTcと降温時のTcの平均として定義すればよい。
(第1の構造体)
上述の通り、第1の構造体Aは、第1の基材11の上に表面層を有し、表面層12は、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料(例えば酸化バナジウム)から構成されるか、又は高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料(例えばペロブスカイト型Mn酸化物)から構成される。
図2Aは、表面層12が、酸化バナジウムから構成される場合における低温及び高温での熱放射特性の変化を示す図である。酸化バナジウムの相転移温度は、約67℃(340K)である。なお、相転移温度は添加物等によって変動し得る。図2A(A)に示すように、第1の構造体Aが低温(例えば50℃)に置かれた場合、表面層12の熱放射率は、酸化バナジウムの特性のため大きくなる。熱放射率が大きくなるということは、キルヒホッフの法則より、熱吸収率が大きくなることを意味する。そのため、表面層12が低温下に置かれて熱放射率が大きくなると、熱が伝わり易くなる。一方、図2A(B)に示すように、第1の構造体Aが高温(例えば90℃)に置かれた場合、表面層12の熱放射率は、酸化バナジウムの特性のため小さくなり、熱吸収率が小さくなる。そのため、表面層12が高温下に置かれて熱放射率が小さくなると、熱が伝わり難くなる。
図2Bは、表面層12が、ペロブスカイト型Mn酸化物から構成される場合における低温及び高温での熱放射特性の変化を示す図である。ペロブスカイト型Mn酸化物の相転移温度は、約−23℃である。なお、相転移温度は添加物等によって変動し得る。図2B(A)に示すように、第1の構造体Aが低温(例えば−40℃)に置かれた場合、表面層12の熱放射率は、ペロブスカイト型Mn酸化物の特性のため小さくなる。熱放射率が小さくなるということは、キルヒホッフの法則より、熱吸収率が小さくなることを意味する。そのため、表面層12が低温下に置かれて熱放射率が小さくなると、熱が伝わり易くなる。一方、図2B(B)に示すように、第1の構造体Aが高温(例えば0℃)に置かれた場合、表面層12の熱放射率は、ペロブスカイト型Mn酸化物の特性のため大きくなり、熱吸収率が大きくなる。そのため、表面層12が高温下に置かれて熱放射率が大きくなると、熱が伝わり易くなる。
(第2の構造体:形態1)
図3に、図1に示した第2の構造体Bのうち第2の基材4を省略した熱放射構造体10を示す。第2の構造体Bにおいて、第1の導体層と、誘電体層と、周期構造を有する第2の導体層とからなる構造部分が熱を放射する構造体として実質的に機能する。図4は、図3の熱放射構造体の模式的斜視図である。図5は、図3の熱放射構造体(1セル)の寸法例を説明するための模式的斜視図である。図3は、図4の熱放射構造体10を点線AA'により矢印の方向に向かって切断した際の断面図に相当する。本実施形態において、左右方向、前後方向及び上下方向は、図4又は5に示した通りとする。熱放射構造体10は、第1の導体層1と、該第1の導体層1の上に形成された誘電体層3と、該誘電体層3の上に形成された周期構造を有する第2の導体層2と、を含む。また、第1の導体層1及び第2の導体層2のうち少なくとも一方が上述の相転移材料から構成される。この熱放射構造体10は、温度に応じてメタマテリアルエミッターとして機能し、図3における上方向に熱を放射することができる。すなわち、熱放射構造体10の熱放射率は温度によって変化する。そのため、熱放射構造体10は、例えば、対象物における熱を制御するための熱整流器として用いることができる。
第1の導体層1は、導体(電気伝導体)から構成される。本開示において、導体は、相転移材料を含む概念であり、相転移材料は、高温相又は低温相の一方で高い導電性を有するため、導体として把握することができる。相転移材料ではない導体材料(非相転移材料)としては、金属が挙げられ、金属の具体例としては、金(Au)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、タンタル(Ta)等が挙げられる。
第2の導体層2は、第1の導体層1と同様に、導体から構成される。なお、第1の導体層の材料と第2の導体層の材料は、それぞれ独立して選択することができる。第2の導体層2は、複数の個別導体層を有する。
本実施形態の熱放射構造体は、第1の導体層1及び第2の導体層2の両方が、相転移材料から構成される形態と、第1の導体層1が相転移材料から構成されかつ第2の導体層2が非相転移材料から構成される形態と、第1の導体層1が非相転移材料から構成されかつ第2の導体層2が相転移材料から構成される形態と、を含むことが想定される。
誘電体層3は、第1の導体層1と第2の導体層2との間に挟まれている。誘電体層3の材料としては、例えば、アモルファスシリコン、アルミナ(Al23)、シリカ(S2)、ポリシリコン、ポリゲルマン、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、ダイヤモンド、又は臭化カリウム(KBr)等が挙げられる。
第2の導体層2と誘電体層3との間には、接着層が形成されていてもよい。また、誘電体層3と第1の導体層1との間に接着層が形成されていてもよい。接着層は、各層を直接接合する場合と比べて接着力を高めることができる。接着層の材料としては、例えば、クロム(Cr)、チタン(Ti)、又はルテニウム(Ru)等が挙げられる。
第2の導体層2は、周期構造を有する。具体的には、第2の導体層2は複数の個別導体層を備え、この個別導体層が放射面に沿った方向に互いに離間して形成されることで、周期構造を構成することができる。なお、図3〜5においては、直方形型の個別導体層が開示されているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、個別導体層は、例えば線状型、十字型又は円盤型等の様々な形状を採用することができ、所望の放射波長に応じて個別導体層の形状を調整することができる。
本実施形態において、複数の個別導体層は、左右方向(第1方向)に間隔D1ずつ離れて互いに等間隔に配設されている(図3参照)。また、複数の個別導体層は、左右方向に直交する前後方向(第2方向)に間隔D2(不図示)ずつ離れて互いに等間隔に配設されている。個別導体層は、このように格子状に配列されている。複数の個別導体層の各々は、厚さt(上下高さ)が横幅W(左右方向の幅)及び縦幅L(前後方向の幅)よりも小さい直方体形状をしている。第2の導体層2の周期構造の周期は、横方向の周期Λ1=D1+W(P)、縦方向の周期Λ2=D2+L(P)である。
第1の導体層1の膜厚(t1)、第2の導体層2の膜厚(t)、誘電体層3の膜厚(t)は、特に制限されるものではなく、それぞれ適宜選択することができる。第1の導体層1の膜厚(t1)は、例えば、30〜300nmである。第2の導体層2の膜厚(t)は、例えば、30〜300nmである。誘電体層3の膜厚(t)は、例えば、50〜500nmである。
熱放射構造体10は、所望の波長で赤外線を放射面から放射する特性を有するように、上述した材料、形状、及び周期構造等を調整することができる。個別導体層の各々の形状に関して、横幅Wは、例えば、500nm以上3000nm以下とすることができる。縦幅Lは、例えば、500nm以上3000nm以下とすることができる。厚さtは、例えば、30nm以上300nm以下とすることができる。また、第2の導体層2の周期構造に関して、左右方向の間隔D1は、例えば、100nm以上3000nm以下とすることができる。前後方向の間隔D2は、例えば、100nm以上3000nm以下とすることができる。なお、横幅Wと縦幅Lとは、同じ値としてもよいし異なる値としてもよい。間隔D1及び間隔D2や、周期Λ1及び周期Λ2についても同様である。
図3〜5においては、誘電体層3が第1の導体層1と同様に平板状に形成されている形態が示されているが、誘電体層3の形状は、この形態に特に制限されるものではなく、例えば、第2の導体層2に追従して周期構造を有してもよい。誘電体層3が第2の導体層2に追従して周期構造を有する熱放射構造体20について、その構成例を図6〜8に示す。図6は、熱放射構造体20の構成を説明するための模式的断面図であり、図7は、図6の熱放射構造体の模式的斜視図であり、図8は、図6の熱放射構造体(1セル)の寸法例を説明するための模式的斜視図である。
以下、さらに具体的な熱放射構造体について図面を参照しつつ説明する。
[熱放射構造体1]
図9は、第1の導体層が相転移材料ではない導体材料(非相転移材料:金属)から構成され、かつ第2の導体層が相転移材料(高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい材料として、二酸化バナジウム)から構成される熱放射構造体を示す模式的断面図である。
第1の導体層101は、金属(例えばAl)から構成される平板状の部材である。
誘電体層103は、第1の導体層101の上に形成され、誘電体材料(例えばアモルファスシリコン)から構成される平板状の部材である。誘電体層103は、第1の導体層101と第2の導体層102との間に挟まれている。なお、図9(A)では、平板状である誘電体層103が示されているが、図9(B)に示す熱放射構造体110のように、誘電体層が第2の導体層102の周期構造に追従する周期構造を有していてもよい。
第2の導体層102(個別導体層)は、上述の通り、二酸化バナジウムから構成される。二酸化バナジウムは、約340K付近で抵抗値が3桁以上変化する相転移材料であり、高温相では金属的性質を有し、低温相では絶縁体的性質を有し、かつ、高温相での熱放射率が小さく、低温相での熱放射率が大きい相転移材料である。二酸化バナジウムの場合には、例えば、バナジウムをタングステンで一部置換すると(V1−x)その相転移温度を下げることかできる。
本実施形態における熱放射構造体は、使用する相転移材料の熱放出特性と逆の特性を有する。以下に、そのメカニズムについて説明する。
まず、熱放射構造体100の温度が高温である場合、すなわち、熱放射構造体100の温度が二酸化バナジウムの相転移温度超(例えば345K)である場合について説明する。上述のように、熱放射構造体100は、周期構造を有する第2の導体層102(相転移材料:二酸化バナジウム)と、第1の導体層101(非相転移材料:例えばAl)と、第2の導体層102及び第1の導体層101に挟まれた誘電体層103(例えばアモルファスシリコン)とを有している。熱放射構造体100の温度が高温である場合、二酸化バナジウムから構成される第2の導体層102は導電性を有し、熱放射構造体100は、誘電体層が二つの導体層に挟まれた構造を有する。これにより、熱放射構造体100は、主に赤外線として熱を放射可能な特性を有するメタマテリアルエミッターとして機能する。この特性は、マグネティックポラリトン(Magnetic polariton)で説明される共鳴現象によるものと考えられている。なお、マグネティックポラリトンとは、上下2枚の導体(第2の導体層102及び第1の導体層101)間の誘電体(誘電体層103)内において強い電磁場の閉じ込め効果が得られる共鳴現象のことである。これにより、高温の熱放射構造体100では、誘電体層103のうち第1の導体層101と第2の導体層102の個別導体層とに挟まれる部分、そして導体層のうち誘電体層に接する部分が赤外線の放射源となる。そして、その放射源から放たれる赤外線は周囲環境に平面波として放射される。また、この熱放射構造体100では、第2の導体層102、誘電体層103若しくは第1の導体層101の材料、又は第2の導体層102の形状若しくは周期構造を調整することで、共鳴波長を調整することができる。これにより、熱放射構造体100の放射面の放射率は、特定の波長において高くなる特性を示す。
次に、熱放射構造体100の温度が低温である場合、すなわち、熱放射構造体100の温度が二酸化バナジウムの相転移温度未満(例えば335K以下)である場合について説明する。熱放射構造体100の温度が低温である場合、二酸化バナジウムから構成される第2の導体層102は絶縁体的性質となり、その低温相の導電率は高温相の導電率よりも著しく小さくなる。そのため、熱放射構造体100は上述のようなメタマテリアルエミッターとして機能せず、共鳴現象は起こらない。その結果、低温時の熱放射構造体100の熱放射率は、高温時の熱放射構造体100の熱放射率よりも小さくなる。なお、低温時の熱放射構造体100の熱放射率は、第1の導体層(金属層)の存在により基板側からの熱輻射を反射し、第2の導体層側への透過を抑制することができるため、低温相の二酸化バナジウムの熱放射率に比べて低くなる。
以上の理由により、本実施形態における熱放射構造体が、使用する相転移材料の熱放出特性と逆の特性を有することになる。
図10に、熱放射構造体100の放射特性について、シミュレーションにより評価した結果を示す。シミュレーションは、電磁界シミュレーター(ソフトウェア名:CST MICROWAVE STUDIO 2016)を用いて行った。また、解析した熱放射構造体100の構成について、第1の導体層101としてアルミニウム(Al)を用い、第2の導体層102として二酸化バナジウム(VO)を用い、誘電体層103としてアモルファスシリコンを用いた。また、基板はSi基板とした。解析した熱放射構造体100の構成の寸法を表1に示す。なお、縦幅L(前後方向の幅)及び縦方向のピッチP(前後方向のピッチ)は、それぞれ横幅W(左右方向の幅)及び横方向のピッチP(左右方向のピッチ)と同じ寸法に設定した。また、解析した熱放射構造体100を構成する各材料の誘電率として、表2に示す定義式を参照した。
図10(A)は、高温時(345K)における熱放射構造体100の放射特性について測定した結果を示し、図10(B)は、低温時(335K)における熱放射構造体100の放射特性について測定した結果を示す。図10に示されるように、熱放射構造体100の放射特性は、高温時において高い熱放射率を有し、低温時において低い熱放射率を有する。この特性は、第2の導体層102として用いる相転移材料である二酸化バナジウムの放射特性(高温相にて低い熱放射率を有し、低温相にて高い熱放射率を有する放射特性)とは異なる。この結果は、熱放射構造体100の構成により使用する相転移材料の熱放出特性を反転することができることを示している。
なお、このような熱放射構造体100は、例えば以下のように形成することができる。
まず、基材11の表面にスパッタリングにより第1の導体層101を形成する。また、支持基板と第1の導体層101の間に接着層を設けてもよい。次に、第1の導体層101の表面にALD法(atomic layer deposition:原子層堆積法)により誘電体層103を形成する。続いて、誘電体層103の表面に所定のレジストパターンを形成してからスパッタリング法により第2の導体層102を形成する。そして、レジストパターンを除去することにより、第2の導体層102(複数の個別導体層)を形成する。
[熱放射構造体2]
次に、図11を参照して、第1の導体層が相転移材料(高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい材料)から構成され、かつ第2の導体層が非相転移材料から構成される熱放射構造体120について説明する。すなわち、図11において、第1の導体層11は相転移材料(例えば二酸化バナジウム)から構成され、第2の導体層122は非相転移材料から構成される。図9及び10での説明と同様の理由により、熱放射構造体120についても、同様の効果(すなわち、熱放射構造体の構成により使用する相転移材料の熱放出特性を反転することができる効果)が得られることが理解される。また、本実施形態の熱放射構造体では、相転移材料が埋め込まれているため、長期使用においてもより安定した特性が得られることが期待される。
[熱放射構造体3]
次に、図12を参照して、第1の導体層131及び第2の導体層132の両方が相転移材料(高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい材料)から構成される熱放射構造体130について説明する。すなわち、図12において、第1の導体層131及び第2の導体層132の両方が相転移材料(例えば二酸化バナジウム)から構成される。また、本実施形態の熱放射構造体は、使用する材料の種類が少ないため、より容易に製造することができる。図9及び10での説明と同様の理由により、熱放射構造体130についても、同様の効果(すなわち、熱放射構造体の構成により使用する相転移材料の熱放出特性を反転することができる効果)が得られることが理解される。
熱放射構造体1〜3では、相転移材料として、高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい材料を用いているが、熱放射構造体としては、そのような特性とは逆の特性、すなわち、高温での熱放射率が低温での熱放射率よりも大きいという熱放射特性を有する。高温での熱放射率が大きく、低温での熱放射率が小さいということは、高温で熱が伝わり易く、低温で熱が伝わり難いことを意味する。また、熱放射構造体により、使用する相転移材料の熱放出特性を反転させることができるため、相転移材料として選択できる材料の種類が広がる。
[熱放射構造体4]
次に、図13を参照して、第1の導体層201が相転移材料ではない導体材料(非相転移材料:金属)から構成され、かつ第2の導体層202が相転移材料(高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい材料として、ペロブスカイト型Mn酸化物)から構成される熱放射構造体200について説明する。なお、図13(A)では、平板状である誘電体層が示されているが、図13(B)に示す熱放射構造体210のように、誘電体層203が第2の導体層202の周期構造に追従する周期構造を有していてもよい。
まず、熱放射構造体200の温度が低温である場合、すなわち、熱放射構造体の温度がペロブスカイト型Mn酸化物の相転移温度未満(例えば200K)である場合について説明する。上述のように、熱放射構造体200は、周期構造を有する第2の導体層202(相転移材料:ペロブスカイト型Mn酸化物)と、第1の導体層201(例えばAl)と、第2の導体層202及び第1の導体層201に挟まれた誘電体層203(例えばアモルファスシリコン)とを有している。熱放射構造体200の温度が低温である場合、ペロブスカイト型Mn酸化物から構成される第2の導体層202は導電性を有し、熱放射構造体200は、誘電体層が二つの導体層に挟まれた構造を有する。これにより、熱放射構造体200は、主に赤外線として熱を放射可能な特性を有するメタマテリアルエミッターとして機能する。これにより、低温の熱放射構造体200では、誘電体層203のうち第1の導体層201と個別導体層とに挟まれる部分が赤外線の放射源となる。そして、その放射源から放たれる赤外線は周囲環境に平面波として放射される。
次に、熱放射構造体の温度が高温である場合、すなわち、熱放射構造体の温度がペロブスカイト型Mn酸化物の相転移温度以上(例えば300K)である場合について説明する。熱放射構造体200の温度が高温である場合、ペロブスカイト型Mn酸化物から構成される第2の導体層202は絶縁体的性質となり、その高温相の導電率は低温相の導電率よりも著しく小さくなる。そのため、熱放射構造体200は上述のようなメタマテリアルエミッターとして機能せず、共鳴現象は起こらない。その結果、高温時の熱放射構造体200の熱放射率は、低温時の熱放射構造体200の熱放射率よりも小さくなる。
以上の理由により、熱放射構造体200の放射特性は、高温時において低い熱放射率を有し、低温時において高い熱放射率を有する。この特性は、第2の導体層202として用いる相転移材料であるペロブスカイト型Mn酸化物の放射特性(高温相にて高い熱放射率を有し、低温相にて低い熱放射率を有する放射特性)とは異なる。そのため、熱放射構造体200の構成により、使用する相転移材料の熱放出特性を反転することができる。
[熱放射構造体5]
熱放射構造体5は、第1の導体層が相転移材料(高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい材料)から構成され、かつ第2の導体層が非相転移材料から構成される熱放射構造体(不図示)である。熱放射構造体4と同様の理由により、当該熱放射構造体についても、同様の効果(すなわち、熱放射構造体の構成により使用する相転移材料の熱放出特性を反転することができる効果)が得られることが理解される。
[熱放射構造体6]
熱放射構造体6は、第1の導体層及び第2の導体層の両方が相転移材料(高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい材料)から構成される熱放射構造体(不図示)である。熱放射構造体4と同様の理由により、当該熱放射構造体についても、同様の効果(すなわち、熱放射構造体の構成により使用する相転移材料の熱放出特性を反転することができる効果)が得られることが理解される。
熱放射構造体4〜6では、相転移材料として、高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい材料を用いているが、熱放射構造体としては、そのような特性とは逆の特性、すなわち、高温での熱放射率が低温での熱放射率よりも小さい熱放射特性を有する。高温での熱放射率が小さく、低温での熱放射率が大きいということは、高温で熱が伝わり難く、低温で熱が伝わり易いことを意味する。熱放射構造体により、使用する相転移材料の熱放出特性を反転させることができるため、相転移材料として選択できる材料の種類が広がる。
(第2の構造体:形態2)
本実施形態において、上述の(第2の構造体:形態1)にて説明した熱放射構造体に加えて、図23に示すようなFabry−Perot共鳴を利用した熱放射構造体も用いることができる。図23は、Fabry−Perot共鳴を利用した熱放射構造体1000の模式的断面図である。図23において、熱放射構造体1000は、第2の基材(不図示)の上に金属層1001と、金属層1001の上に誘電体層1002と、誘電体層1002の上に相転移材料層1003とを有し、相転移材料層1003は、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい材料(例えば二酸化バナジウム)であるか、或いは高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい材料(例えばペロブスカイト型Mn酸化物)である。金属層1001、誘電体層1002、相転移材料層1003は、それぞれベタ膜から構成することができる。熱放射構造体1000において、相転移材料層1003が金属相の場合、金属相である相転移材料層1003と金属層1001の間で反射が起こり、ブロードな共鳴が生じる。その結果、熱輻射率が大きくなる。一方、相転移材料層1003が絶縁体相(又は誘電体相)の場合は、共鳴は鋭く熱輻射率は小さい。
より具体的に、相転移材料層1003が二酸化バナジウム(高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい材料)である場合について説明する。二酸化バナジウムを相転移材料層1003として有する熱放射構造体1000が高温(例えば90℃)に置かれると、該相転移材料層は金属相となる。そのため、高温下の該熱放射構造体1000では、金属相の状態である相転移材料層1003と金属層1001の間で反射が起こり、ブロードな共鳴が生じる。その結果、熱輻射率が大きくなる。また、該熱放射構造体1000が低温(例えば50℃)に置かれると、該相転移材料層は絶縁体相(又は誘電体相)となる。そのため、低温下の熱放射構造体1000では、絶縁体相の状態である相転移材料層1003と金属層1001の間に共鳴は鋭く熱輻射率は小さい。その結果、熱輻射率は小さくなる。以上の理由により、熱放射構造体1000は、使用する相転移材料(二酸化バナジウム)の熱放出特性と逆の特性を有することになる。
また、具体的に、相転移材料層1003がペロブスカイト型Mn酸化物(高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい材料)である場合について説明する。ペロブスカイト型Mn酸化物を相転移材料層1003として有する熱放射構造体1000が高温(例えば0℃)に置かれると、該相転移材料層は絶縁体相(又は誘電体層)となる。そのため、高温下の該熱放射構造体1000では、絶縁体相の状態である相転移材料層1003と金属層1001の間に、ブロードな共鳴は生じない。その結果、熱輻射率が小さくなる。また、該熱放射構造体1000が低温(例えば−40℃)に置かれると、該相転移材料層は金属相となる。そのため、低温下の熱放射構造体1000では、金属相の状態である相転移材料層1003と金属層1001の間で反射が起こり、共鳴は鋭く熱輻射率は小さい。その結果、熱輻射率が大きくなる。以上の理由により、熱放射構造体1000は、使用する相転移材料(ペロブスカイト型Mn酸化物)の熱放出特性と逆の特性を有することになる。
上述の通り、この熱放射構造体1000は、温度に応じた多層膜エミッタ―、図23における上方向に熱を放射することができる。すなわち、熱放射構造体1000の熱放射率は温度によって変化する。そのため、熱放射構造体1000は、例えば、対象物における熱を制御するための熱整流器として用いることができる。
金属層1001としては、特に制限されるものではないが、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、タンタル(Ta)等が挙げられる。
誘電体層1002は、金属層1001と相転移材料層1003との間に挟まれている。誘電体層1002の材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、アモルファスシリコン、アルミナ(Al23)、シリカ(S2)、ポリシリコン、ポリゲルマン、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、ダイヤモンド、又は臭化カリウム(KBr)等が挙げられる。
各層の間には、接着層が形成されていてもよい。接着層は、各層を直接接合する場合と比べて接着力を高めることができる。接着層の材料としては、例えば、クロム(Cr)、チタン(Ti)、又はルテニウム(Ru)等が挙げられる。
金属層1001の膜厚、誘電体層1002の膜厚、相転移材料層1003の膜厚は、特に制限されるものではなく、それぞれ適宜選択することができる。金属層1001の膜厚は、例えば、30〜300nmである。誘電体層1002の膜厚は、例えば、50〜1000nmである。相転移材料層3の膜厚は、例えば、30〜300nmである。
図24に示すように、相転移材料層1003の上に、さらに第2の誘電体層を設けてもよい。第2の誘電体層の膜厚としては、例えば、50〜1000nmである。具体的に図24の構成で相転移材料層1003が酸化バナジウムである場合について説明する。酸化バナジウムを相転移材料層1003として有する熱放射構造体が高温下におかれると、該相転移材料層は金属層となる。そのため、高温下の該熱放射構造体1000では、第2の誘電体層1004の空気との界面と金属層の状態である相転移材料層1003との間で反射が起こり、共鳴が生じる。このときの共鳴波長λAは第2の誘電体層の膜厚に依存する。一方、該熱放射構造体が低温に置かれると該相転移材料層は絶縁体相(又は誘電体相)となる。そのため、低温下の熱放射構造体では、第2の誘電体層1004の空気との界面と金属層1001との間で反射が起こり、共鳴が生じる。このときの共鳴波長λBは第2の誘電体相1004の膜厚と相転移材料層1003の膜厚と誘電体層1002の膜厚に依存する。該熱放射構造体を高温においた場合の共鳴波長λAは該熱放射構造体を低温においた場合の波長λBより短いため、共鳴波長λAを熱放射スペクトルのピーク波長付近になるように第2の誘電体層1004の膜厚を決めると、高温下に置いた場合に熱輻射率が大きい熱輻射構造体を構成できる。該熱放射構造体を低温に置いた場合は共鳴波長λBが放射スペクトルのピーク波長付近より十分大きくなるように誘電体層1002の膜厚を決めると、低温に置いた場合に熱輻射率が小さい熱輻射構造体を構成できる。以上の理由により、熱放射構造体は使用する相転移材料(二酸化バナジウム)の熱放射特性と逆の特性を有することになる。ペロブスカイト型Mn酸化物を用いた場合も同様の原理で逆の特性を得ることができる。
図25に、図23に示す熱放射構造体1000(相転移材料層として二酸化バナジウムを使用)の放射特性について、シミュレーションにより評価した結果を示す。シミュレーションは、電磁界シミュレーター(ソフトウェア名:CST MICROWAVE STUDIO 2016)を用いて行った。図25に示されるように、熱放射構造体1000の放射特性は、高温時において高い熱放射率を有し、低温時において低い熱放射率を有する。この特性は、相転移材料層1003として用いる二酸化バナジウムの放射特性(高温相にて低い熱放射率を有し、低温相にて高い熱放射率を有する放射特性)とは異なる。したがって、この結果は、熱放射構造体1000の構成により使用する相転移材料の熱放出特性を反転することができることを示している。
(熱整流器)
以上、第1の構造体A、及び熱放射構造体としての第2の構造体Bについて説明した。以下では、第1の構造体と第2の構造体とを、第1の構造体の表面層と第2の構造体の第2の導体層とがそれぞれ互いに対向するように配置された場合に、整流比(順方向熱流/逆方向熱流)が高い熱整流器として機能する理由について説明する。なお、以下の説明では、第2の構造体として上述の形態1を用いた場合を例に挙げて説明するが、本実施形態において、第2の構造体として上述の形態2を用いてもよいことは当然に理解される。
図14Aは、第1の構造体の表面層及び第2の構造体の第2の導体層に、例として酸化バナジウムを適用した熱整流器における熱移動を示すイメージ図である。図14A(A)は、第1の構造体Aが低温下に配置され、第2の構造体Bが高温下に配置された場合の熱移動について説明するイメージ図であり、図14A(B)は、第1の構造体Aが高温下に配置され、第2の構造体Bが低温下に配置された場合の熱移動について説明するイメージ図である。ここで、低温とは、その低温下に配置された表面層12又は第2の導体層2を構成する相転移材料の相転移温度よりも低い温度を意味し、高温とは、その高温下に配置された表面層12又は第2の導体層2を構成する相転移材料の相転移温度よりも高い温度を意味する。例えば、表面層12及び第2の導体層2に酸化バナジウム(相転移温度:約70℃)を用いる場合、低温の具体的な温度は例えば50℃であり、高温の具体的な温度は例えば90℃である。図14A(A)において、第1の構造体Aが低温である場合、上述したように、第1の構造体Aの熱放射率が大きくなり、すなわち、第1の構造体Aに熱が伝わり易くなる。一方、第2の構造体Bが高温である場合、上述したように、第2の構造体Bの熱放射率が大きくなり、すなわち第2の構造体Bから熱を伝え易くなる。それゆえ、図14A(A)の状態において、高温側の第2の構造体Bから低温側の第1の構造体Aへ熱が移動し易くなる。次に、図14A(B)において、第1の構造体Aが高温である場合、上述したように、第1の構造体Aの熱放射率が小さくなり、すなわち第1の構造体Aから熱を伝え難くなる。一方、第2の構造体Bが低温である場合、上述したように、第2の構造体Bの熱放射率が小さくなり、すなわち第2の構造体Bに熱が伝わり難くなる。それゆえ、図14A(B)の状態において、高温側の第1の構造体Aから低温側の第2の構造体Bへ熱が移動し難くなる。以上より、第2の構造体Bからの第1の構造体Aへの熱移動方向を順方向とし、第1の構造体Aからの第2の構造体Bへの熱移動方向を逆方向とした場合、熱の整流比(順方向熱流/逆方向熱流)は高くなる。
図14Bは、第1の構造体の表面層及び第2の構造体の第2の導体層に、例としてペロブスカイト型Mn酸化物を適用した熱整流器における熱移動を示すイメージ図である。図14B(A)は、第1の構造体Aが低温下に配置され、第2の構造体Bが高温下に配置された場合の熱移動について説明するイメージ図であり、図14B(B)は、第1の構造体Aが高温下に配置され、第2の構造体Bが低温下に配置された場合の熱移動について説明するイメージ図である。例えば、表面層12及び第2の導体層2にペロブスカイト型Mn酸化物(相転移温度:約−23℃)を用いる場合、低温の具体的な温度は例えば−40℃であり、高温の具体的な温度は例えば0℃である。図14B(A)において、第1の構造体Aが低温である場合、上述したように、第1の構造体Aの熱放射率が小さく、すなわち、第1の構造体Aに熱が伝わり難くなる。一方、第2の構造体Bが高温である場合、上述したように、第2の構造体Bの熱放射率が小さくなり、すなわち第2の構造体Bから熱を伝え難くなる。それゆえ、図14B(A)の状態において、高温側の第2の構造体Bから低温側の第1の構造体Aへ熱が移動し難くなる。次に、図14B(B)において、第1の構造体Aが高温である場合、上述したように、第1の構造体Aの熱放射率が大きくなり、すなわち第1の構造体Aから熱を伝え易くなる。一方、第2の構造体Bが低温である場合、上述したように、第2の構造体Bの熱放射率が大きくなり、すなわち第2の構造体Bに熱が伝わり易くなる。それゆえ、図14B(B)の状態において、高温側の第1の構造体Aから低温側の第2の構造体Bへ熱が移動し易くなる。以上より、第1の構造体Aからの第2の構造体Bへの熱移動方向を順方向とし、第2の構造体Bからの第1の構造体Aへの熱移動方向を逆方向とした場合、熱の整流比(順方向熱流/逆方向熱流)は高くなる。
本実施形態に係る熱整流器は、対象物の熱の移動を制御することができる。熱移動を制御する対象物としては、特に制限されるものではなく、例えば、電池、電子機器又は自動車等が挙げられる。例えば、電子機器内の高温になる部品(例えばCPUや電池)に図14Aに示される第2の構造体Bを設け、それに対向する位置に図14Aに示される第1の構造体Aを設けることにより、熱移動を制御することができる。この場合、第1の構造体Aは、放熱部材に接続してもよい。
第1の構造体A及び第2の構造体Bをそれぞれフィン状に加工し、相対する面積を大きくしてもよい。
本実施形態は、熱を制御する対象物と、本実施形態に係る熱整流器と、を含む熱制御システムとしても把握することができる。また、本実施形態は、本実施形態に係る熱整流器を対象物に設けることにより、対象物における熱移動を制御する方法としても把握することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下に、本実施形態を実施例に基づいて説明する。なお、本実施形態は以下の実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:シミュレーションを用いた検証1)
図14Aに示す熱整流器の熱制御性を検証するため、電磁界シミュレーター(ソフトウェア名:CST MICROWAVE STUDIO 2016)を用いて解析を行った。なお、第2の構造体Bにおける熱放射構造体としては、図9に示す熱放射構造体100、すなわち、第1の導体層が相転移材料ではない導体材料(非相転移材料:金属)から構成され、かつ第2の導体層が相転移材料(高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい材料として、二酸化バナジウム)から構成される熱放射構造体を用いた。
まず、解析した熱整流器の構成について以下に説明する。
図15は、シミュレーションで設定した第1の構造体Aの概略図である。第1の構造体Aにおける第1の基材11としてシリコン(Si)を用い、表面層12として二酸化バナジウム(VO)を用いた。第1の基材11の厚さtは300μmに設定し、表面層12の厚さtは、0.2μmに設定した。
図16は、シミュレーションで設定した第2の構造体Bの概略図である。なお、該第2の構造体Bにおいて、第2の基材は省略されている。これは、第1の導体層101としてタングステンを用いており、該タングステンは光学的に十分厚いことで、第1の導体層101の上下は電磁界的に分離されるため、第2の基材を設定しなくても結果に影響がないためである。第2の構造体Bにおける第1の導体層101としてタングステン(W)を用い、第2の導体層102として二酸化バナジウム(VO)を用い、誘電体層103としてアルミナ(Al)を用いた。熱放射構造体100の構成の寸法について、Pを2.8μm、Wを2.0μm、tを0.1μm、tを0.2μm、tを0.3μmに設定した。なお、縦幅L(前後方向の幅)及び縦方向のピッチP(前後方向のピッチ)は、それぞれ横幅W(左右方向の幅)及び横方向のピッチP(左右方向のピッチ)と同じ寸法に設定した。
解析した第1の構造体A及び第2の構造体Bに用いたシリコン及び二酸化バナジウムの誘電率として、表3に示す定義式を参照した。タングステンの誘電率として、「RefractiveIndex.INFO - Refractive index database」(https://refractiveindex.info/)の「W(Tungsten)」、「Ordal et al. 1988: n,k 0.667-200μm」を参照した。アルミナの誘電率として、分光エリプソメトリー(J.A. Woollam社製赤外域自動多入射角分光エリプソメーターIR-VASE)で測定した屈折率を用いた。
図17及び図18にシミュレーション結果を示す。図17(A)は、低温(300K)における第1の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。図17(B)は、高温(473K)における第2の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。また、図18(A)は、高温(473K)における第1の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。図18(B)は、低温(300K)における第2の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。
また、図19に、図17(A)及び(B)に示した放射率スペクトルを非特許文献1に記載の方法により合成し、順方向(参照:図14A(A))の熱流束スペクトルを算出した結果を示す。また、図19に、図18(A)及び(B)に示した放射率スペクトルを非特許文献1に記載の方法により合成し、逆方向(参照:図14A(B))の熱流束スペクトルを算出した結果を示す。また、図19には、黒体(473K)から黒体(300K)への熱流束スペクトルも併せて示す。なお、熱流束スペクトルは以下の方法により算出した。
(順方向の熱流束スペクトルの算出)
図17(A)及び(B)に示した波長λ、入射角θ毎の放射スペクトルを
により座標変換し、図17(A)に対応した関数
及び図17(B)に対応した関数
を作成する。ここでjはs偏光(図17(A)および(B)のθ<0の領域)またはp偏光(図17(A)および(B)のθ≧0の領域)を示す。第1の構造体Aと第2の構造体Bの間の各ω、β、jにおける熱交換率を表現する関数
を、非特許文献1に記載の式
のβ積分に関する項
を用いて積分を行うことで第1の構造体Aと第2の構造体Bの間の熱流束スペクトル
を算出した。ここで
は熱整流効果を得る場合の高温側の温度(473K)、
は熱整流効果を得る場合の低温側の温度(300K)である。
なお、逆方向の熱流束スペクトルも、上述の方法と同様にして図18(A)及び(B)より算出することができる。
図19より、整流比(順方向熱流/逆方向熱流)は約16と算出され、高い整流比が確認された。なお、整流比は以下の方法により算出した。
順方向の熱流束スペクトルを
を用いてωに関する積分を行うことで第1の構造体Aと第2の構造体Bの間の順方向熱流
を算出した。また、逆方向の熱流束スペクトルを
を用いてωに関する積分を行うことで第1の構造体Aと第2の構造体Bの間の逆方向熱流
φbを算出した。そして、整流比を順方向熱流/逆方向熱流により算出した。
(実施例2:シミュレーションを用いた検証1)
誘電体層103としてアルミナ(Al)の代わりにアモルファスシリコンを用い、Pを1.2μm、Wを0.85μmに設定したこと以外は、実施例1と同様にしてシミュレーションを行った。アモルファスシリコンの誘電率としては、表2に示す定義式を参照した。
図20及び図21にシミュレーション結果を示す。図20(A)は、低温(300K)における第1の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。図20(B)は、高温(345K)における第2の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。また、図21(A)は、高温(345K)における第1の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。図21(B)は、低温(300K)における第2の構造体の入射角毎の放射率スペクトルのシミュレーション結果である。
また、図22に、図20(A)及び(B)に示した放射率スペクトルを非特許文献1に記載の方法により合成し、順方向(参照:図14A(A))の熱流束スペクトルを算出した結果を示す。また、図22に、図21(A)及び(B)に示した放射率スペクトルを非特許文献1に記載の方法により合成し、逆方向(参照:図14A(B))の熱流束スペクトルを算出した結果を示す。また、図22には、黒体(345K)から黒体(300K)への熱流束スペクトルも併せて示す。
図22より、整流比(順方向熱流/逆方向熱流)は約11と算出され、高い整流比が確認された。
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
A 第1の構造体
11 第1の基材
12 表面層
B 第2の構造体
1 第1の導体層
2 第2の導体層
3 誘電体層
4 第2の基材
10 熱放射構造体
101 第1の導体層
102 第2の導体層
103 誘電体層
110 熱放射構造体
120 熱放射構造体
121 第1の導体層
122 第2の導体層
130 熱放射構造体
131 第1の導体層
132 第2の導体層
200 熱放射構造体
201 第1の導体層
202 第2の導体層
203 誘電体層
1000 熱放射構造体
1001 金属層
1002 誘電体層
1003 相転移材料層
1004 第2の誘電体層

Claims (2)

  1. 第1の構造体と第2の構造体とを含み、前記第1の構造体と前記第2の構造体との間の熱の移動を制御可能な熱整流器であって、
    前記第1の構造体は、第1の基材と、該第1の基材の上に表面層と、を含み、
    前記第2の構造体は、第2の基材と、該第2の基材の上に第1の導体層と、該第1の導体層の上に誘電体層と、該誘電体層の上に周期構造を有する第2の導体層と、を含み、
    前記第1の構造体及び前記第2の構造体は、前記表面層と前記第2の導体層とがそれぞれ互いに対向するように配置され、
    前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい相転移材料から構成されるか、或いは前記表面層並びに前記第1の導体層及び前記第2の導体層のうち少なくとも一方が、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい相転移材料から構成される、熱整流器。
  2. 第1の構造体と第2の構造体とを含み、前記第1の構造体と前記第2の構造体との間の熱の移動を制御可能な熱整流器であって、
    前記第1の構造体は、第1の基材と、該第1の基材の上に表面層と、を含み、
    前記第2の構造体は、第2の基材と、該第2の基材の上に金属層と、該金属層の上に誘電体層と、該誘電体層の上に相転移材料層と、を含み、
    前記第1の構造体及び前記第2の構造体は、前記表面層と前記相転移材料層とがそれぞれ互いに対向するように配置され、
    前記表面層及び前記相転移材料層は、それぞれ、高温相での導電率が低温相での導電率よりも大きくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも小さい材料から構成されるか、或いは高温相での導電率が低温相での導電率よりも小さくかつ高温相での熱放射率が低温相での熱放射率よりも大きい材料から構成される、熱整流器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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