JP6566041B2 - 熱光変換部材 - Google Patents

熱光変換部材 Download PDF

Info

Publication number
JP6566041B2
JP6566041B2 JP2017549137A JP2017549137A JP6566041B2 JP 6566041 B2 JP6566041 B2 JP 6566041B2 JP 2017549137 A JP2017549137 A JP 2017549137A JP 2017549137 A JP2017549137 A JP 2017549137A JP 6566041 B2 JP6566041 B2 JP 6566041B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dielectric layer
layer
heat
silicide layer
emissivity
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2017549137A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2017078163A1 (ja
Inventor
宇野 智裕
智裕 宇野
徳丸 慎司
慎司 徳丸
基史 鈴木
基史 鈴木
健介 西浦
健介 西浦
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Publication of JPWO2017078163A1 publication Critical patent/JPWO2017078163A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6566041B2 publication Critical patent/JP6566041B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H02GENERATION; CONVERSION OR DISTRIBUTION OF ELECTRIC POWER
    • H02SGENERATION OF ELECTRIC POWER BY CONVERSION OF INFRARED RADIATION, VISIBLE LIGHT OR ULTRAVIOLET LIGHT, e.g. USING PHOTOVOLTAIC [PV] MODULES
    • H02S10/00PV power plants; Combinations of PV energy systems with other systems for the generation of electric power
    • H02S10/30Thermophotovoltaic systems
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy

Landscapes

  • Photovoltaic Devices (AREA)

Description

本発明は、工場などの排熱エネルギーを利用した熱光発電などのエネルギー利用分野において用いられる、波長を選択的に放出する熱光変換部材に関する。
500℃以上の高温域の排熱を利用する方法として熱光起電力(TPV,thermophotovolatic)発電が注目されている。熱光起電力発電では、熱エネルギー(放射光)を熱光変換部材で波長選択して所定の波長分布を持つ光に変換し、変換された光を熱光変換部材から放射し、熱光変換部材から放射された光を光電変換(PV,photovolatic)セルで電気に変換する。TPV発電は、熱エネルギーから直接電気エネルギーを得ることができるため、エネルギー変換効率がよい。
熱源から発生する輻射を波長選択する熱光変換部材の放射特性と、その放射を電気に変換するPVセルの吸収特性の波長マッチングが重要になる。このため、PVセルが電気に変換できる波長を選択的に放射できる熱光変換部材の開発が望まれている。
PVセルが起電力に変換できる光は、ある波長範囲に限られる。一般の熱源は様々な波長の光を混在した形で放射するため、このような光をPVセルに入射しても、入射光の一部しか利用できず、発電効率は低くなる。TPV発電において、入力エネルギーの大部分をPVセルで変換できる波長領域の光にできるだけ変換できれば、高い発電効率が実現できる。その一つの方法として、波長選択熱光変換部材の利用が有効である。
このような熱光変換部材として、微細加工技術を駆使して金属表面に周期的な凹凸を形成したフォトニック結晶熱光変換部材(引用文献1)や、金属表面にシリサイド膜による反射防止膜を形成した熱光変換部材(引用文献2)あるいは、近赤外光を吸収する希土類元素を混入したガラスを用いた熱光変換部材(引用文献3)が提案されている。金属表面に誘電体薄膜と金属薄膜を交互に多層化して反射防止膜を形成することによって、特定の波長の光の放出効率が向上すること(引用文献4)が報告されている。
特開2003-332607号公報 特開2011-96770号公報 特開2006-298671号公報 特開平7-20301号公報
一般の熱源は様々な波長の光を混在した形で放射するため、このような光をPVセルに入射しても、入射光の一部しか利用できず、放射熱がPVセルの温度上昇などに浪費され、発電効率は低くなる。
引用文献1に記載のフォトニック結晶熱光変換部材は放射特性が不十分である上に、大面積に微細構造を形成することは工程が複雑であり製造費用が高いことから、実用化に至っていない。また引用文献3に記載の、希土類を混入したガラスを用いた熱光変換部材の場合、希土類元素の耐久性が低く高コストであることに加え、波長のチューニングが難しいという問題がある。
従来から、金属表面に酸化物多層膜による反射防止膜を形成することによって、特定の波長の光の放出効率が向上することが報告されている。しかし、通常の干渉フィルタに用いられる材料では、反射率を低くするために数十の多数層を積層する必要があり、製造コスト、耐久性の点で問題があった。
引用文献2には、金属表面にシリサイド膜が形成された反射防止膜が提案されている。この反射防止膜の放射率の波長依存性に関して、波長1.5μm近傍に放射率のピークを有しているが、その適正な波長範囲は狭いことが問題である。その範囲からずれると放射率は急激に低下するため、発電効率は十分ではなかった。
光の吸収を大きくすれば放射率も大きくなる。キルヒホッフの法則によれば、ある波長における吸収率と放射率は等しい。従って、放射率で代表できる。吸収と放射は波長選択熱光変換部材としては同等の効果であるため、本明細書では特に必要性がなければ放射率で代表して説明する。
PVセルの代表としてGaSb、InGaAsSbなどが期待されており、それぞれの素子における放射率が高い波長領域の波長は0.8〜1.8μm、1〜3μmの範囲であり、近赤外線領域に相当する。これらのPVセルを用いて効率良く発電するためには、波長0.5〜3μmの波長範囲での熱放射を高くして発電効率を高めることが重要となる。同時に、上記範囲より長い波長3〜5μmの範囲での熱放射を低く抑えることで、セルの温度上昇を抑えることが望ましい。
従来の熱光起電力発電用熱光変換部材では、波長選択性が不十分であること、また高温耐性が低いため実環境での耐久性が不足していること、あるいは製造コストがかかること、量産性が低いことなど改善すべき点が多く残されており、これまでは太陽熱あるいは工場排熱を利用して発電する手法には使用できなかった。
本発明は、短い波長の光を選択的に吸収、放射することができる熱光変換部材を提供することを目的とする。
本発明に係る熱光変換部材は、金属域の上に、シリサイド層と誘電体層が交互に形成され、前記シリサイド層と前記誘電体層の層数の合計が3層以上12層以下の積層構造を備え、前記積層構造は、前記金属域の上に順に前記シリサイド層に含まれる最も前記金属域側に位置するシリサイド層B、前記誘電体層に含まれる誘電体層M、及び前記シリサイド層に含まれるシリサイド層B以外であるシリサイド層Mを有し、前記シリサイド層Bの厚さは5nm以上25nm以下、前記誘電体層Mの厚さは10nm以上45nm以下、前記シリサイド層Mの厚さは2nm以上15nm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、光の干渉現象、反射現象を利用した複合効果により、PVセルの感度領域である0.5〜2.0μmの波長範囲で放射率(=吸収率)を高い値で連続的に高める効果が得られる。
本実施形態に係る積層構造の構成を示す縦断面図であり、図1Aは3層構造、図1Bは4層構造、図1Cは6層構造である。 本実施形態に係る誘電体層Bを備える積層構造の構成を示す縦断面図である。 本実施形態に係る熱光変換部材の特性例を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
上記課題を解決する本実施形態の熱光変換部材では、金属域の上にシリサイド層と誘電体層を交互に積層した積層構造を有することで波長選択性、量産性に有効であることを見出した。本実施形態における金属域とは金属により構成される膜またはバルクを意味する。熱源から放射された熱エネルギー(放射光)が金属域側または金属域の下の基板側から入射されて、熱光変換部材により波長選択され、シリサイド層と誘電体層の積層構造の表面から放射される。
本実施形態では、PVセルの発電効率を高めるため、放射率を高める波長範囲を0.5〜2.0μmとする。ここで0.5〜2.0μmの波長範囲を選択した理由は、PVセルの発電効率が高く実効的に重要な波長範囲であり、実験での実証が比較的容易だからである。以下、0.5〜2.0μmの波長範囲を感度領域と称し、それよりも長波長側である3〜5μmの波長範囲を長波長領域と称す。また本実施形態である前記積層構造により、感度領域の放射率(吸収率)を高めて、長波長領域の放射率(吸収率)を低減することが、波長選択性を向上することになる。本明細書において波長選択性とは、波長3〜5μmの長波長領域での放射率(L)に対する波長0.5〜2.0μmの感度領域での放射率(S)の比率(S/L)と定義する。
積層構造において、シリサイド層は、金属域側の最下に位置する場合にシリサイド層B、それ以外をシリサイド層Mと表記し、誘電体層は、金属域とシリサイドBの間に位置し5nm以上25nm以下の厚みを有するものを誘電体層B、最も表面側(図中上側)に位置し80nm以上200nm以下の厚みを有するものを誘電体層Tと表記し、誘電体層B、誘電体層T以外の10nm以上45nm以下の厚みを有するものを誘電体層Mと表記する。なお、積層構造において、2以上の誘電体層Mが存在する場合がある。また、積層構造において、2以上のシリサイド層Mが存在する場合がある。
積層構造は、金属域の上に、シリサイド層と誘電体層が交互に形成され、シリサイド層と誘電体層の層数の合計が3層以上12層以下であり、金属域の上に順に前記シリサイド層に含まれる最も前記金属域側に位置するシリサイド層B、前記誘電体層に含まれる誘電体層M、前記シリサイド層に含まれる前記シリサイド層B以外であるシリサイド層Mを有し、前記シリサイド層Bの厚さが5nm以上25nm以下、誘電体層Mの厚さが10nm以上45nm以下、シリサイド層Mの厚さが2nm以上15nmである。このような積層構造を備える熱光変換部材は、光の干渉現象、反射現象を利用した複合効果により、PVセルの感度領域である0.5〜2.0μmの波長範囲で放射率(=吸収率)を高い値で連続的に高める効果が得られる。前記積層構造は、室温での放射率が0.9以上の高い値を達成することも可能である。こうした高い放射機能を発揮できる熱光変換部材を使用することでPVセルの起電力を高めることができ、エネルギー変換効率を実用レベルまで向上することが可能となる。前記積層構造の基本となる3層構造は、図1Aに示すように、(金属域1/)シリサイド層B2/誘電体層M3/シリサイド層M4である。積層するシリサイド層/誘電体層の層数を増やすことで、光の干渉現象を効率的に利用することにより、より高い効果が得られる。本明細書における積層構造の表記は、「/」の記号を挟んだ左側が下部の層を、右側が上部の層を意味する。本明細書において積層構造の層数は、シリサイド層と誘電体層の層数の合計で表示し、金属域を含まないこととする。
前述した0.5〜2.0μmの波長範囲で放射率が連続的に高い状態というのは、上記の波長範囲において放射率が上下に大きく変動する領域がなく、高い値にあることを意味する。以下、こうした挙動を放射の波長安定性と称する。従来の特定波長での特性だけでは実効的な効率を判断することは難しいのに対して、波長安定性で定量的に放射性または吸熱性を判定することは真の発電効率を評価するのに有効である。
前記熱光変換部材であって、シリサイド層と誘電体層の層数の合計が4層以上12層以下であり、最も表面側に形成された誘電体層Tの厚さが80nm以上200nm以下であるのが好ましい。すなわち基本となる4層構造は、金属域の上に順にシリサイド層B、誘電体層M、シリサイド層M、誘電体層Tを有する構成であり、前記シリサイド層Bの厚さが5nm以上25nm以下、誘電体層Mの厚さが10nm以上45nm以下、シリサイド層Mの厚さが2nm以上15nm、誘電体層Tの厚さが80nm以上200nm以下である。このような4層構造を有する熱光変換部材は、波長0.5〜2.0μmの感度領域の常温での放射性をより高い値に向上し、波長3〜5μmの長波長領域の放射性を低く抑えることで、波長選択性をより向上できる。例えば熱光変換部材は、感度領域の7割以上の波長範囲で放射率が0.9以上の高い値を維持する優れた効果があり、また長波長領域の放射率を0.2以下に抑えることもでき、前記の波長選択性比率を0.8以上に向上することも可能である。
上記した最も表面側に形成された誘電体層Tは、積層構造の基本構成が、(金属域1/)シリサイド層B2/誘電体層M3/シリサイド層M4/誘電体層T5の4層構造(図1B)あるいは、(金属域/)シリサイド層B/誘電体層M/シリサイド層M/誘電体層T/シリサイド層Mの5層構造(図示しない)、(金属域1/)シリサイド層B2/誘電体層M3/シリサイド層M4/誘電体層M3/シリサイド層M4/誘電体層T5の6層構造(図1C)などで例示され、厚さが80nm以上200nm以下である。
積層構造を構成するシリサイド層、誘電体層、金属域の役割は、単独の層で効果を発揮するのではなく、複数の層の組合せによる相乗作用、幾つかの層の厚さのバランスなどにより、全体として波長選択性を向上する効果を発現できる。それぞれの層の作用について説明する。
積層構造のうち金属域側に近い位置に形成されたシリサイド層Bの厚さが5nm以上25nm以下であり、さらに最も表面側に形成された誘電体層Tの厚さが80nm以上200nm以下であることにより、感度領域のなかでも長波長側である1〜2.0μmでの放射率を向上する作用と、波長3〜5μmの長波長領域での放射率を低く抑える作用を両立することができる。すなわち、波長選択性を向上する高い効果が得られる。シリサイド層Bの厚さが5nm未満であれば放射率が低下し、25nm超であれば放射ピークが長波長側に移動することで、波長2.0μm未満の放射率が低下する。誘電体層Tの厚さが80nm未満であれば1〜2.0μmの波長範囲での放射率が低下しており、200nm超であれば、波長2.0μm未満の感度領域で放射率が全体的に低下する。
積層構造の中間に配置された誘電体層Mの厚さが10nm以上45nm以下であり、シリサイド層Mの厚さが2nm以上15nm以下であることにより、感度領域の低波長側である0.5〜1.3μmの範囲における放射率を向上すると同時に、感度領域の全体的な波長安定性を改善する高い効果を発現する。誘電体層Mの厚さが10nm未満であれば上記効果は小さく、45nm超であれば感度領域での放射率のばらつきが発生してしまう。シリサイド層Mが2nm未満であれば上記効果は小さく、15nm超であれば長波長領域において放射率が増加してしまう。
金属域の上にシリサイド層Bを有するまたは接する金属域/シリサイド層Bの構成により、感度領域のなかでも1〜1.5μmの波長範囲において放射率を0.9以上まで高める効果が得られる。金属域/シリサイド層Bの界面における反射と、2nm以上15nm以下のシリサイド層Mによる干渉作用を活用することで、放射率を0.9以上の高い値に引き上げることができる。700℃程度までの加熱温度では放射率を高める前記効果は有効である。該当する積層構造は、(金属域1/)シリサイド層B2/誘電体層M3/シリサイド層M4の3層構造(図1A)、(金属域1/)シリサイド層B2/誘電体層M3/シリサイド層M4/誘電体層T5の4層構造(図1B)などで例示される。
金属域とシリサイド層Bの間に誘電体層Bが形成された金属域/誘電体層B/シリサイド層Bを含む構成として、誘電体層Bの厚さを5nm以上25nm以下で形成することで、高温加熱された後でも、界面状態の劣化を抑えて、放射率を維持する効果が増大する。誘電体層Bが金属域とシリサイド層Bの拡散を抑えるバリア作用の役割を果たすことで、高温でも安定した改善効果が得られる。800℃を超えて高温加熱された場合に金属域/シリサイド層Bの界面での拡散による放射特性の劣化が懸念される場合に、誘電体層Bが有用である。前記誘電体層Bの厚さについて、5nm未満であれば高温で長時間の拡散を抑える効果が小さいこと、一方で25nm超であれば1〜1.5μmの波長範囲における常温での放射率が低下することが懸念される。該当する積層構造は、(金属域/)誘電体層B/シリサイド層B/誘電体層M/シリサイド層Mの4層構造(図示しない)、(金属域1/)誘電体層B6/シリサイド層B2/誘電体層M3/シリサイド層M4/誘電体層T5の5層構造などで例示される(図2)。
本実施形態の積層構造は、シリサイド層Bの厚さが、当該シリサイド層Bの上に接する誘電体層Mの厚さの60%以下であることにより、高温の放射率を増加させる高い効果が得られる。(金属域/)シリサイド層B/誘電体層Mのサンドイッチ型の構成を形成することで、金属域からの放射と、シリサイド層Bおよび誘電体層Mによる干渉が組み合わされた相乗作用により、高温の放射率を高める効果が増大する。
本実施形態の積層構造は、誘電体層Tの厚さが、当該誘電体層Tの下に接するシリサイド層Mの厚さの8倍以上であることにより、層間の干渉を利用して波長安定性を向上して、放射率を高める効果が増大する。積層構造は、この厚さの関係で積層化することにより、感度領域において放射率が低下する波長域を狭小化し、波長選択性が向上する。
積層構造は、シリサイド層と誘電体層の層数の合計が4層以上12層以下であることにより、常温及び高温の放射率を高める効果が得られる。積層構造は、誘電体層とシリサイド層の組合せを2組以上有することにより、多重の干渉を利用し得る。層数が12層を超えると、生産性の低下、製造コストの上昇、品質管理が複雑になるなどの問題が発生する。より好ましくは層数の合計が4層以上8層以下であれば、常温放射率をより高めることができる。金属域は、1つの領域で反射性を高めることができ、結果として波長選択性を向上する機能が得られるが、複数の金属域を積層させる構造でも構わない。
積層構造は、金属域の上にシリサイド層を形成することにより、金属域/シリサイド層Bの界面における反射を利用し、常温での放射率を容易に高めることができる。該当する積層構造は、(金属域1/)シリサイド層B2/誘電体層M3/シリサイド層M4の3層構造(図1A)、(金属域1/)シリサイド層B2/誘電体層M3/シリサイド層M4/誘電体層T5の4層構造(図1B)などで例示される。
積層構造は、金属域の上に誘電体層Bが形成されていることにより、高温加熱時の金属域/誘電体層Bの界面における拡散を抑制し、高温での放射率を高めることができ、特に500℃を超える超高温での放射特性が安定化できる。
図3は、本実施形態の熱光変換部材の特性の一例を示すグラフであり、縦軸が放射率、横軸が波長(μm)を示す。本図から、放射率が波長により変化していることが分かる。波長0.5〜2.0μmの範囲である感度領域7では放射率は高く、それより長い波長3〜5μmの範囲である長波長領域8では放射率が低く抑えられている。
波長選択性を高める効果を向上するには、前記シリサイド層の材料の屈折率に対する前記誘電体層の材料の屈折率の比率が60%以下であることが好ましい。この屈折率の比率が60%以下であることにより、誘電体層と屈折率の界面近傍での光の干渉を高め、波長選択性が向上するためである。より好ましくは、50%以下であることにより波長選択性を向上するより高い効果が得られる。これはシリサイド層と誘電体層による光の多重干渉を利用しているためと考えられる。
さらに積層構造の表面が誘電体層であること、あるいはシリサイド層、誘電体層の厚さ、層数を適正化することにより、発電効率を高めることができる。これらの積層構造に有用な材料として、シリサイド層にはβ-FeSi2、CrSi2を使用することができ、また誘電体層には例えばSiO2、アルミナなどを使用することで、高温放射率を高めるより高い効果が得られる。
こうした波長選択性に優れた積層構造を有する熱光変換部材を光電変換に利用すると、PVセルの感度領域の近傍のみ高い特性を有することから、高い放射性が確認されている。例えば、PVセルであるGaSbと熱光変換部材を同時に使用することで、温度上昇を抑えつつ、起電力を上昇させることができる。すなわち、この積層構造を有する熱光変換部材は光電変換の発電効率を高める効果が得られる。
シリサイド層は、各層が1種類の膜により構成される場合が多いが、2種以上のシリサイド層が隣接して形成されていても構わない。この場合、隣接するシリサイド層の1組は、1層のシリサイド層として認識される。同様に、誘電体層も1種類の膜により構成される場合が多いが、2種以上の誘電体層が隣接して形成されていても、1層の誘電体層として認識できる。これは隣接する同類の層は、放射性を高める共通の作用を発揮できるためである。
本実施形態の層は、連続的に覆われていることが好ましいが、一部に欠陥を含有したり、局所的に未被覆領域が含まれていても構わない。これらの欠陥、未被覆領域の占める割合は、層の10体積%未満であることが好ましい。
シリサイド層、誘電体層、金属域は、いずれか一つ欠如すると、上記の波長範囲内で放射率が低下する波長領域が生じてしまう。例えば、シリサイド層と金属域だけでは、0.5〜1.2μmの短波長範囲で放射率が低いこと、シリサイド層と誘電体層だけでは1.2〜2.0μmの波長範囲で放射率が低下することになり、結果としてPVセルの発電効率を低下させる原因となる。
金属域の上に配置する層はシリサイド層であることが好ましい。すなわち、金属域/シリサイド層/誘電体層の構成にすることで、金属域/誘電体層/シリサイド層の構成よりも放射効果が高い。これは、金属域の上に配置されるシリサイド層が、金属域の反射効果を増進させるとともに、その反射された光を吸収する効果が高いためと考えられる。
上記積層構造は、表面が誘電体層であることにより、光の放射率を、波長0.5〜2.0μmの範囲である感度領域で増加させ、3μm以上の長波長領域において低く抑えることで、波長選択性を向上できる。積層構造の表面が誘電体層であることにより、表面から入射する光が初めにシリサイド層/誘電体層の配置で形成される界面を通過し、光の干渉を有効に利用して、熱を吸収する効果が高められると考えられる。該当する積層構造は、(金属域1/)シリサイド層B2/誘電体層M3/シリサイド層M4/誘電体層T5の4層構造(図1B)などで例示される。
前記4層の積層構造により、放射の波長選択性をより一層高める効果が得られ、そうした高機能を低い製造コストで量産可能であり、4層であれば大面積でも高い品質管理が可能である。上記4層構造は、表面の誘電体層を除去した比較材である金属域/シリサイド層/誘電体層/シリサイド層の3層構造と比べて、0.5〜2.0μmの波長範囲における放射率(=吸収率)を平均して10〜30%増加できること、波長3μmを超える範囲では放射率を3層構造よりもさらに低く抑えられることが確認された。
誘電体層あるいはシリサイド層のそれぞれの層群における層数が2層以上である場合、各層群が同一の成分・構造の層であることにより、性能管理、生産が容易であるなどの利点が多い。一方で誘電体層の各層あるいはシリサイド層の各層が、異なる成分・構造により形成されていても構わない。放射性、耐熱性などの機能性を向上することも可能である。
表面に誘電体層が形成され、層数が4層以上により構成されており、構成する誘電体層のうち表面の誘電体膜が最も厚い構造であることが好ましい。最も厚い誘電体層を表面に配置することで、波長0.5〜2.0μmの範囲における放射率を安定して連続的に高めて、波長安定性を向上できる。実験では、放射率を0.9〜0.98の高いレベルで向上することができることが確認された。
シリサイド層の屈折率は4.2以上の高い値であることが好ましい。これによりシリサイド層と誘電体層の干渉による放射率および吸収率を高めることができる。また垂直入射に加えて、斜め方向から入射される光も屈折して放射率を高められる。
前記シリサイド層の主成分がβ-FeSi2、CrSi2から選ばれる1種から成ることが好ましい。主成分とは、濃度が50mol%超を有することである。β-FeSi2、CrSi2は屈折率が5以上と相当高い値をもつので、シリサイド層と誘電体層の屈折率の差異を拡大して、吸収率を高めることができる。さらにβ-FeSi2、CrSi2は耐熱性が高いことから、使用時に大気中で500℃程度の高温に曝されても劣化することはなく、高温保管性に優れている。さらにβ-FeSi2が積層構造のシリサイド層としてより好ましい。β-FeSi2は、高屈折率、耐熱性などに優れており、Fe(鉄)、Si(シリコン)で構成されており製造コスト面、安全面からも優れているからである。
誘電体層の屈折率は2.5以下であることが好ましい。屈折率が2.5以下であることにより、誘電体層の干渉を利用して、全体として放射率を増加させる効果が得られる。
シリサイド層の屈折率が4.2以上、誘電体層の屈折率は2.5以下である相乗作用により、屈折率の差異が大きくなることで、シリサイド層と誘電体層の多重干渉による吸収、すなわち放射率を向上する効果が高められる。
前記誘電体層の主成分がSiO2またはAl2O3であることが好ましい。SiO2、Al2O3の利点は屈折率が1.5、1.76と低いため放射率を高めること、耐熱性が高いことから高温保管性にも優れている。さらにSiO2とβ-FeSi2を組み合わせて積層構造を形成することで、いろいろな角度から集光されて入射する放射光を変換する効率が向上し、発電量を増加させる効果が得られる。これはSiO2とβ-FeSi2の界面における屈折現象を利用することで、高い高温保管性が得られることに加えて、入射角の影響を低減して半球状光線を効率よく利用することで、発電効率を高めることができる。
前記金属域について、主成分がW、Mo、Fe、Ni、Cr、Au、Agの1種から選ばれる純金属またはその合金であることにより、放射率を増加させる高い効果と、500℃程度の高温環境での耐熱性を両立することができる。これらの金属は、赤外線の波長領域での反射率を増進することができるため、誘電体層とシリサイド層の光の干渉を促進することにより、光の放射または吸収を高める効果が高められる。上記金属は熱光変換部材に要求される使用性能あるいは実用化される用途に応じて、選択することができる。金属の種類により反射率は変化するため、それに応じて誘電体層とシリサイド層の種類、厚さなどを調整することで、所望する放射率または吸収率を得ることができる。金属域が純金属であれば反射率を高めることが容易であり、あるいは合金であれば強度、耐熱性などを向上できる。Fe合金であるステンレス(SUS)であれば、耐酸化により安定して使用できることが利点である。
なかでもW、Mo、Feであれば、700℃までの高温環境でも性能の劣化を抑制する高い効果が得られる。これらの金属域は工場排熱の回収など高温環境に曝される用途には有利である。Feは高強度で安価であるため、大型化に有利である。Ni、Crは比較的安価で、化学的に安定であることが利点である。Au、Agであれば、反射率がさらに高いため波長選択性を向上できる。
積層構造を構成する前記金属域の厚さが20nm以上であることが好ましい。金属域は、厚さが20nm以上であれば反射率を高めることで、放射および吸収を高める十分な効果が得られる。好ましくは、40nm以上であれば、強度を高めて支持する効果が得られる。
金属域を形成する支持材料には、金属製のバルク、板あるいは、シリコン、ガラスなどの基材を使用できる。支持材料が金属製のバルク、板であれば、金属域との密着性が良好であり、熱膨張差も小さいことから信頼性が良好である。また、シリコン、ガラスなどの基材は、表面の平坦性が優れているため、その上に形成された積層膜全体の平坦性を向上することができる。その結果として、各膜の境界で干渉を安定化させることにより良好な反射性を得られる。
本実施形態の積層構造を有する熱光変換部材は、金属域の下に基板が形成され、前記基板がシリコンまたは金属で構成されており、前記基板の表面側(金属域に対して反対側)にSiC層が形成されている。この熱光変換部材は熱光起電力発電用熱光変換部材に用いることができる。熱光起電力発電用熱光変換部材は、TPV発電に有用である。基板の表面側に形成したSiC層は、吸収率が高い黒体として機能するため、入射された熱を放射させることで、550℃以上の高温での放射機能を高める高い効果が得られる。SiC層が形成された熱光起電力発電用熱光変換部材は、SiC層が形成されていない場合に比べると、高温熱光変換部材としての放射性を1〜3割程度高められることを確認した。SiC膜の形成には、CVD法(化学気相成長法:Chemical Vapor Deposition)、高周波スパッタ法、炭化法などにより作製できる。CVD法では、カーボン含有ガスおよびシリコン含有ガスを熱分解させ基板上で反応させることで、SiC膜を基板上に堆積させる。MoやWなどの金属基板上に高周波スパッタ法によりSiC膜を析出できる。また、後者の炭化では、炭化水素ガスによるSi基板表面の炭化によりSiC膜を形成できる。
前記基板にシリコンまたは金属を用いることで、SiC層からの熱を効率良く熱光変換部材に伝えるとともに、十分な強度が得られる。好ましくは、シリコンを用いることで、表面の凹凸を抑えた平坦性が優れているため、その上に形成された金属域および積層構造の平坦性を高めることができ、結果として反射率および波長選択性を向上する。シリコンは多結晶または単結晶のいずれでも構わない。金属では、Fe、Cuおよびそれらの合金、ステンレスなどが好ましい。
基板がFe、Fe合金、Ni合金の少なくとも1種で構成されており、前記基板の表面側に酸化物層が形成されている熱光起電力発電用熱光変換部材により、熱光変換部材の放射率を高めることが可能である。Fe合金としては、SUS304が好ましく例示され、Ni合金としては、インコネルが好ましく例示される。基板の表面側に形成した鉄の酸化物層は吸収率が高く、その表面から入射された熱を効率良く基板および熱光変換部材に伝導させることができ、結果として550℃以上の高温での放射性を高めるのに貢献する。酸化物層が形成されていない場合に比べると、熱光起電力発電用熱光変換部材としての放射性を1〜2割程度高められることを確認した。基板にFeまたはSUSを用いる場合、基板を加熱することで表面に前記酸化物層を容易に形成することができ、酸化物層との密着性も良好である。
熱光変換部材あるいは熱光起電力発電用熱光変換部材を評価あるいは使用するときに光または赤外線が入射する方向について、金属域側から入射する場合と、積層構造側から入射する場合の2方向が可能である。主に、基板の上に形成された金属域側から入射することで、工場排熱などの高温熱源から輻射される赤外線を金属域側から入射させて、波長選択された光を積層構造から放射させることができる。
シリサイド層の形成方法として、スパッタ法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法, CVD法,レーザーアブレーション法などの成膜方法が使用できる。なかでも面積の大きい波長選択膜を形成するには、大面積でも再現性の高い成膜が容易であるスパッタ法が好ましい。FeSi2をスパッタ法により形成する製法を以下に例示する。Fe:Si=1:2のモル比組成のターゲットを用いて、成膜する対象を400〜700℃に加熱して、目的とするβ-FeSi2型の結晶構造を製造することができる。X線回折により、β-FeSi2型であることを確認できる。高温で形成された膜にはターゲット組成よりSi濃度が減少する場合には、Si組成を70-80%程度まで高めたターゲットを使用する手法、あるいはターゲット上にSiの小片を置いて簡易的に組成を調整する手法により、薄膜のモル比組成が Fe:Si=1:2により近付けることができる。製膜対象温度、圧力などスパッタ条件を適正化することで、結晶構造がβ-FeSi2型になる薄膜を形成できる。シリサイド層は単結晶あるいは多結晶のいずれでも構わない。
誘電体層の形成方法について、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法が使用できる。いずれの手法でも誘電体であるSiO2、Al2O3の層を数十nmの薄さで膜厚管理も容易であり、均一性を高めることもできる。さらに真空蒸着法、スパッタ法は大面積化にも有利であり、生産性が優れている。
金属域の形成方法について、真空蒸着法、スパッタ法が使用できる。いずれの手法でもW、Mo、Fe、Ni、Crなどの金属域を薄く均一に形成し、平坦性も良好な成膜が可能である。シリサイド層、誘電体層、金属域の全ての層を連続的に形成する方法としてはスパッタ法が好ましい。スパッタ法であれば、予め準備しておいた複数のターゲットを変更することで、積層構造をチャンバー内で連続的に形成することができるため、生産性に優れている。スパッタ法による連続的な膜作成の一例として、Mo、SiO2、FeSi2の3種類のターゲットを使用して、基材の上にMo域、β-FeSi2層、SiO2層、β-FeSi2、SiO2層の順に連続して安定的に形成できた。上記基材は、表面が平坦であり、熱光起電力発電用熱光変換部材として使用時の耐熱性、耐環境性を満たすことが必要であり、Si、SiCなどが望ましいが、この限りではない。
作製した熱光変換部材は、所定の膜厚を数nmのばらつきの範囲で制御でき、平坦性は良好であり、高い放射性を有することが確認できた。
高温での放射率は、黒体炉からの放射光と、試料加熱炉で加熱された試料からの放射光を、導光器を経由して可視〜赤外光分光器で分光できる装置を用いて測定する。最初に所定の温度に加熱された黒体炉からの放射光(放射率1)を測定し、分光器の補正を行った後、試料加熱炉で黒体炉と同じ設定温度に加熱された試料を測定する。さらに、同じ試料の表面に放射率が既知の黒体スプレーを塗布し、前記設定温度で加熱して測定することにより、加熱炉の真温度を求める。真温度での各波長の放射率1の光強度に対する試料からの放射光強度の比を放射率とする。尚、設定温度が500℃の場合、真温度は500±10℃である。
尚、常温での放射率は、垂直入射の場合のエネルギー反射率をRとすると、放射率(=吸収率)は1-Rであることから、可視〜赤外光分光器のみを用いて、反射率を測定することにより求める。
本発明による熱光変換部材は、優れた特性を有する。
本発明による熱光変換部材は、常温(25±10℃)での放射率の波長依存性に優れている。特に波長0.5〜2.0μmの範囲における常温放射率の平均値は、0.7以上であり、好ましくは0.8以上であり、さらに好ましくは0.9以上である。
さらに、本発明による熱光変換部材は、500℃、600℃の高温での放射率の波長依存性に優れている。特に波長0.5〜2.0μmの範囲における高温放射率の平均値は、0.6以上であり、好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.85以上である。
また、本発明による熱光変換部材は、波長選択性に優れている。特に波長3〜5μmの長波長領域での常温放射率に対する波長0.5〜2.0μmの感度領域での常温放射率の比率が、2以上であり、好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。
また、本発明による熱光変換部材は、波長安定性に優れている。特に波長0.5〜2.0μmの短波長範囲(ただし両端で放射率が低下する領域は対象から除外)で、放射率の最高値(H)に対する最低値(M)の放射率低下比率(M/H)が、0.5以上であり、好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.8以上である。
また、本発明による熱光変換部材は、高温保管性に優れている。特に試料を大気中で700℃で200時間の高温加熱を施した後の、波長0.5〜2.0μmの範囲における常温放射率の平均値の変化(加熱前の常温放射率に対する高温加熱後の常温放射率の比率)が、0.5以上であり、好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.9以上である。
基板上にスパッタ法により金属域、シリサイド層、誘電体層を、ターゲットを変えることで連続的に形成した。具体的な材料について、金属域ではW、Mo、Fe、Ni、Cr、Au、Ag、SUS、シリサイド層ではβ-FeSi2、CrSi2、誘電体層ではSiO2、Al2O3を使用した。
石英ガラスを基板として用い、基板温度を600℃又は室温で設定した。スパッタリングはAr雰囲気(流量20sccm、圧力0.4Pa)で実施した。ターゲットにはそれぞれ、β-FeSi2、CrSi2、金属ターゲットなどを使用した。また、直流電源を用いて、スパッタ電力50Wでプラズマを生成させた。あらかじめ各種材料単独でスパッタ成膜した試料の膜厚を触針式段差計により測定し、成膜速度を求めて、所定の膜厚になるようにスパッタ時間を制御した。X線回折により、β-FeSi2、CrSi2であることを確認した。
SiC膜を表面に形成したシリコン板の作製には、CVD法によりSi基板の表面にSiCを5〜30μmの厚さ範囲で形成したものを準備した。また炭素鋼、ステンレスの表面に鉄酸化物の膜を1〜20μmの厚さで形成した基板には、1200℃以上の高温加熱により形成したものを準備した。
常温放射率の測定に関して、反射スペクトル測定装置により垂直入射(入射角10度)された光について全反射率Raを測定し、放射率(=吸収率)を1-Raにより求めた。
高温での放射率は、500〜600℃に加熱した黒体炉からの放射光と、試料加熱炉で加熱された試料からの放射光を、導光器を経由して可視〜赤外光分光器で分光できる装置を用いて測定した。最初に500℃に加熱された黒体炉からの放射光(放射率1)を測定し、分光器の補正を行った後、試料加熱炉で黒体炉と同じ温度に加熱された試料を測定した。さらに、同じ試料の表面に黒体スプレー(ジャパンセンサー製 JSC-3号 放射率0.94)を塗布し、前記設定温度で加熱して測定することにより、加熱炉の真温度を求めた。真温度での各波長の放射率1の光強度に対する試料からの放射光強度の比を放射率とした。尚、設定温度が500℃の場合、真温度は500±10℃であった。
常温放射率の波長依存性について室温で測定した。波長0.5〜2.0μmの範囲における放射率の平均値が0.9以上であればエネルギー変換が優れているため◎印、0.8以上0.9未満の範囲であれば良好であるため○印、0.7以上0.8未満の範囲であれば改善すれば実用の可能性もあるため△印、0.7未満であればエネルギー変換には利用が困難であると判断して×印で表示した。
高温放射率の波長依存性について500℃、600℃の高温で測定した。波長0.5〜2.0μmの範囲における高温放射率の平均値が0.85以上であればエネルギー変換が優れているため◎印、0.7以上0.85未満の範囲であれば良好であるため○印、0.6以上0.7未満の範囲であれば改善すれば実用の可能性もあるため△印、0.6未満であればエネルギー変換には利用が困難であると判断して×印で表示した。
放射の波長選択性について、波長3〜5μmの長波長領域での常温放射率に対する波長0.5〜2.0μmの感度領域での常温放射率の比率で評価する。波長選択性が4以上であれば波長選択性が優れているため◎印、3以上4未満の範囲であれば良好であるため○印、2以上3未満の範囲であれば改善すれば実用の可能性もあるため△印、2未満であれば波長選択性が不十分であると判断して×印で表示した。
放射の波長安定性について、波長0.5〜2.0μmの短波長範囲で、放射率の最高値(H)に対する最低値(M)の比率(M/H)で評価する。但し、前記短波長範囲の両端で放射率が低下する領域は対象から除外する。放射率低下比率が0.8以上であれば波長選択の安定性が優れているため◎印、0.7以上0.8未満の範囲であれば良好であるため○印、0.5以上0.7未満の範囲であれば改善すれば実用の可能性もあるため△印、0.5未満であれば安定性が不十分であると判断して×印で表示した。
高温保管性について、試料を大気中で700℃で200時間の高温加熱を施した後に、波長0.5〜2.0μmの範囲における常温放射率の平均値の変化で評価した。加熱前の常温放射率に対する高温加熱後の常温放射率の比率が0.9以上であれば高温保管性が優れているため◎印、0.7以上0.9未満の範囲であれば良好であるため○印、0.5以上0.7未満の範囲であれば低温の使用環境では使用できる可能性があるため△印、0.5未満であれば高温保管性が不十分であると判断して×印で表示した。
表1には、本実施形態の積層構造を有する熱光変換部材および比較例を示す。SiC付きシリコンの基板の上に積層構造を形成した試料を用いた。
本実施形態の第1の観点に関する実施例1〜22では、金属域の上に順にシリサイド層B、誘電体層M、シリサイド層Mを有する構成であり、前記シリサイド層Bの厚さは5nm以上25nm以下、誘電体層Mの厚さは10nm以上45nm以下、シリサイド層Mの厚さは2nm以上15nmである積層構造であり、常温放射率は十分であった。
また、第4の観点に関する実施例1〜6、8、9、11〜13、15、16、18〜21では、シリサイド層Bの厚さが、その上に接する誘電体層Mの厚さの60%以下であることにより、高温の放射率がより優れていることを確認できた。それに対して、比較例1〜3では金属域、シリサイド層、誘電体層のいずれかが不足しており、比較例4〜7では、シリサイド層、誘電体層のいずれかで本実施形態に関する前記の層厚範囲から外れることにより、高温放射率が劣ることが確認された。
第2の観点に関する実施例4〜20、22では、合計層数が4〜12層であり、前記シリサイド層Bの厚さは5nm以上25nm以下、誘電体層Mの厚さは10nm以上45nm以下、シリサイド層Mの厚さは2nm以上15nm以下、誘電体層Tの厚さが80nm以上200nm以下であることにより、常温の放射率及び波長選択性が優れていることを確認できた。
実施例21では、誘電体層Tが前記の層厚範囲から外れることにより、波長選択性が劣ることが確認された。
第5の観点に関する実施例4〜7、9〜22では、誘電体層Tの厚さがシリサイド層Mの厚さの8倍以上であることにより、波長安定性が優れていることが確認された。
第3の観点に関する実施例3、9〜12、18、20では、金属域とシリサイド層Bの間に誘電体層Bが形成されており、前記誘電体層Bの厚さが5nm以上25nm以下であることにより、高温保管性が優れていることが確認された。
表2では、本実施形態の熱光変換部材を形成した基板の影響について表記した。
第11の観点に関する実施例52、56、58では、基板として表面にSiC層が形成されたシリコンまたは金属を使用していることにより、600℃の高温での放射性能が優れていることが確認された。また、第12の観点に関する実施例54では、基板として表面に酸化物層が形成された鉄系材料を使用していることにより、高温での放射性能が優れていることが確認された。
Figure 0006566041
Figure 0006566041
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
1 金属域
2 最下部にあるシリサイド層B
3 中間にある誘電体層M
4 中間にあるシリサイド層M
5 最も表面に近い誘電体層T
6 最下部にある誘電体層B
7 感度領域 (波長0.5〜2.0μmの範囲)
8 長波長領域 (波長3〜5μmの範囲)

Claims (12)

  1. 金属域の上に、シリサイド層と誘電体層が交互に形成され、前記シリサイド層と前記誘電体層の層数の合計が3層以上12層以下の積層構造を備え、
    前記積層構造は、前記金属域の上に順に前記シリサイド層に含まれる最も前記金属域側に位置するシリサイド層B、前記誘電体層に含まれる誘電体層M、及び前記シリサイド層に含まれる前記シリサイド層B以外であるシリサイド層Mを有し、
    前記シリサイド層Bの厚さは5nm以上25nm以下、前記誘電体層Mの厚さは10nm以上45nm以下、前記シリサイド層Mの厚さは2nm以上15nm以下であり、
    波長0.5〜2.0μmの範囲における常温(25±10℃)での放射率の平均値が0.7以上であることを特徴とする熱光変換部材。
  2. 前記誘電体層に含まれる誘電体層Tが最も表面側にさらに形成されており、前記シリサイド層と前記誘電体層の層数の合計が4層以上12層以下であり、前記誘電体層Tの厚さが80nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1記載の熱光変換部材。
  3. 前記金属域と前記シリサイド層Bの間に前記誘電体層に含まれる誘電体層Bがさらに形成されており、前記誘電体層Bの厚さが5nm以上25nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の熱光変換部材。
  4. 前記シリサイド層Bの厚さが、当該シリサイド層Bの上に接する前記誘電体層Mの厚さの60%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱光変換部材。
  5. 前記誘電体層Tの厚さが、当該誘電体層Tの下に接する前記シリサイド層Mの厚さの8倍以上であることを特徴とする請求項2記載の熱光変換部材。
  6. 前記積層構造の表面が前記誘電体層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の熱光変換部材。
  7. 前記シリサイド層の主成分がβ-FeSi2またはCrSi2であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の熱光変換部材。
  8. 前記誘電体層の主成分がSiO2またはAl2O3であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の熱光変換部材。
  9. 前記金属域の主成分がW、Mo、Fe、Ni、Cr、Au、Ag、Fe合金から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の熱光変換部材。
  10. 前記金属域の厚さが20nm以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の熱光変換部材。
  11. 前記金属域の下に基板が形成されており、前記基板がシリコンまたは金属で構成されており、前記基板の表面側にSiC層が形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の熱光変換部材。
  12. 前記金属域の下に基板が形成されており、前記基板がFe、Fe合金、Ni合金の少なくとも1種で構成されており、前記基板の表面側に酸化物層が形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の熱光変換部材。
JP2017549137A 2015-11-05 2016-11-04 熱光変換部材 Expired - Fee Related JP6566041B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015217650 2015-11-05
JP2015217650 2015-11-05
PCT/JP2016/082865 WO2017078163A1 (ja) 2015-11-05 2016-11-04 熱光変換部材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2017078163A1 JPWO2017078163A1 (ja) 2018-08-16
JP6566041B2 true JP6566041B2 (ja) 2019-08-28

Family

ID=58662029

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017549137A Expired - Fee Related JP6566041B2 (ja) 2015-11-05 2016-11-04 熱光変換部材

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20190068108A1 (ja)
JP (1) JP6566041B2 (ja)
CN (1) CN108292904A (ja)
WO (1) WO2017078163A1 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10819270B2 (en) 2018-03-16 2020-10-27 Uchicago Argonne, Llc High temperature selective emitters via critical coupling of weak absorbers
JP2019185009A (ja) * 2018-04-02 2019-10-24 日本製鉄株式会社 波長選択フィルタ及びそれを用いた熱光起電力発電装置
KR102036071B1 (ko) * 2018-06-12 2019-10-24 경희대학교 산학협력단 다층 복사 냉각 구조
KR102036069B1 (ko) * 2018-06-12 2019-10-24 경희대학교 산학협력단 공극 패턴을 포함하는 복사 냉각 구조 및 그것의 형성 방법
AU2019344010C1 (en) 2018-09-21 2023-04-27 University Of Delaware Piezoelectric sensors comprising electrospun poly [(R)-3-hydroxybutyrate-co-(R)-3-hydroxyhexanoate] (PHBHx) nanofibers
JP7221020B2 (ja) * 2018-10-19 2023-02-13 大阪瓦斯株式会社 太陽光選択吸収体
US20230277886A1 (en) * 2022-03-07 2023-09-07 Incaendium Initiative Corporation Electrical Power Generation and Architecture Structure for Controlling an Acoustic Fire Suppression System

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0720301A (ja) * 1993-07-01 1995-01-24 Matsushita Electric Ind Co Ltd 反射防止膜
US6232545B1 (en) * 1998-08-06 2001-05-15 Jx Crystals Inc. Linear circuit designs for solar photovoltaic concentrator and thermophotovoltaic applications using cell and substrate materials with matched coefficients of thermal expansion
US6177628B1 (en) * 1998-12-21 2001-01-23 Jx Crystals, Inc. Antireflection coated refractory metal matched emitters for use in thermophotovoltaic generators
US6271461B1 (en) * 2000-04-03 2001-08-07 Jx Crystals Inc. Antireflection coated refractory metal matched emitters for use in thermophotovoltaic generators
US6683243B1 (en) * 2002-06-06 2004-01-27 The United States Of America As Represented By The United States Department Of Energy Selective emission multilayer coatings for a molybdenum thermophotovoltaic radiator
CA2399673A1 (en) * 2002-08-23 2004-02-23 Alberta Research Council Inc. Thermophotovoltaic device
EP2033956A1 (en) * 2007-08-28 2009-03-11 DAC S.r.l. A new class of histone deacetylase inhibitors
JP2011096770A (ja) * 2009-10-28 2011-05-12 Kyoto Univ 反射防止膜及び熱光起電力発電用エミッタ
JP5687606B2 (ja) * 2011-11-14 2015-03-18 トヨタ自動車株式会社 太陽光−熱変換部材、太陽光−熱変換装置、及び太陽熱発電装置
JP6059952B2 (ja) * 2012-10-26 2017-01-11 株式会社豊田自動織機 熱変換部材及び熱変換積層体

Also Published As

Publication number Publication date
WO2017078163A1 (ja) 2017-05-11
JPWO2017078163A1 (ja) 2018-08-16
US20190068108A1 (en) 2019-02-28
CN108292904A (zh) 2018-07-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6566041B2 (ja) 熱光変換部材
Cao et al. Enhanced thermal stability of W‐Ni‐Al2O3 cermet‐based spectrally selective solar absorbers with tungsten infrared reflectors
JP5830468B2 (ja) 発電装置
US6271461B1 (en) Antireflection coated refractory metal matched emitters for use in thermophotovoltaic generators
Kondaiah et al. Tantalum carbide based spectrally selective coatings for solar thermal absorber applications
US20170336102A1 (en) Enhanced Thermal Stability on Multi-Metal Filled Cermet Based Spectrally Selective Solar Absorbers
JP5054707B2 (ja) 極紫外線スペクトル領域(euv)用の熱安定多層ミラー及び当該多層ミラーの使用
JP6521176B2 (ja) 熱光変換部材
JP2015111011A (ja) 光選択吸収膜、集熱管、および太陽熱発電装置
CN104854412B (zh) 光学选择膜
Patil et al. Transition metal compounds as solar selective material
CN109075018B (zh) 热辐射光源
Soum‐Glaude et al. Selective Surfaces for Solar Thermal Energy Conversion in CSP: From Multilayers to Nanocomposites
JP7147519B2 (ja) 波長選択フィルタ及びそれを用いた熱光起電力発電装置
Okuhara et al. Solar selective absorbers based on semiconducting β-FeSi2 for high temperature solar-thermal conversion
US10215447B2 (en) Spectrally selective semiconductor dielectric photonic solar thermal absorber
JP2019185009A (ja) 波長選択フィルタ及びそれを用いた熱光起電力発電装置
JP2011096770A (ja) 反射防止膜及び熱光起電力発電用エミッタ
US20170227678A1 (en) Refractory solar selective coatings
JP2017101297A (ja) 遮熱膜
Huang Spectral engineering for solar-thermal and thermal-radiative systems
CN112687788A (zh) 光谱选择性热辐射器及其设计方法
WO2023009825A1 (en) Thin-film-based optical structures for thermal emitter applications
Rahmlow Jr et al. Front surface tandem filters using sapphire (Al2O3) substrates for spectral control in thermophotovoltaic energy conversion systems
US20180017289A1 (en) Solar heat collection tube, sunlight-to-heat conversion device and solar heat power generation device

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180427

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190305

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190424

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190702

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190715

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6566041

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees