以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。各実施形態は、個々に独立したものではなく、過剰説明をするまでもなく、当業者をすれば、適宜、組み合わせることが可能であり、この組み合わせによる相乗効果も把握可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明説明を主目的とするものであり、適宜、簡略化されている。
<第1実施形態>
以下、図1乃至21を参照して第1実施形態について説明する。図1は、スライドファスナーの概略的な正面図であり、隣合うファスナースライダーの引手の連結状態を示す。図2は、スライドファスナーの概略的な正面図であり、隣合うファスナースライダーの引手の連結解除状態を示す。図3は、スライドファスナーの隣合うファスナースライダーの引手の連結及び連結解除を切り替えるための鍵部材を概略的に示す斜視図であり、(a)〜(d)で鍵部材の構成例を例示的に示す。図4及び図5は、弾性を有するリング状部材の開口の拡大を制限する構造例を水平断面にて示す。図6乃至図9は、弾性を有しないリング状部材の開口の拡大を制限する構造例を水平断面にて示す。図10は、図4に例示的に示した弾性を有するリング状部材を雌ホックに内蔵したホックの概略的な垂直断面模式図である。図11は、雌ホックの概略的な上面模式図及びこの上面模式図の一点破線X11−X11間の垂直断面模式図である。図12は、雄ホックの概略的な上面模式図及びこの上面模式図の一点破線X12−X12間の垂直断面模式図である。図13は、雌ホックと雄ホックのスナップ係合を説明するための概略的な垂直断面模式図である。図14は、雌ホックと雄ホックのスナップ係合を説明するための概略的な垂直断面模式図である。図15は、回転範囲の規制構造の一例を示す水平断面模式図である。図16は、回転範囲の規制構造の一例を示す部分的な垂直断面模式図である。図17は、図6に例示的に示した弾性を有しないリング状部材を内蔵する雌ホックを含むホックの上面模式図及びこの上面模式図の一点破線X17−X17間の垂直断面模式図である。図18は、弾性を有しないリング状部材の上面模式図及びこの上面模式図の一点破線X18−X18間の垂直断面模式図である。図19は、リング状部材を構成するU字部を元位置へ復帰させるための板バネの模式図である。図20は、雌ホックと雄ホックのスナップ係合後の状態を示す概略的な垂直断面模式図である。図21は、ロック状態の雌ホックと雄ホックのポスト頭部を示す概略的な部分的な垂直断面模式図である。
図1及び図2に示すスライドファスナー300は、一組のファスナーテープ71(71m、71n)の対向側縁に一組のファスナーエレメント72(72m、72n)が一体的に設けられた一組のファスナーストリンガー70(70m、70n)に一組のファスナー用スライダー80(80p、80q)が挿通されたものであり、図1を正面視したときの各ファスナー用スライダー80の左右移動に応じてスライドファスナー300の開閉が制御される。なお、ファスナー用スライダー80p、80qは、前端80F同士が突き合わされているが、後端80R同士が突き合わされていても良い。
スライドファスナー300を閉じても、一方のファスナー用スライダー80の意図しない変位に応じてスライドファスナーが開いてしまうおそれがある。本実施形態においては、この点に鑑みて、各ファスナー用スライダー80の各引手90が、雌ホック210と雄ホック220のスナップ係合に応じて連結可能であり、更に、後述に詳細の雌ホック210からの雄ホック220のポスト105の離脱防止により実質的に「施錠」可能であり、悪意ある第三者による盗難を防止することができる。
一見しても引手90の重合が「施錠」されているとは理解し難い。従って、スライドファスナー300を開けようと試みても如何様にして「施錠解除」できるのか自体の理解が容易ではなくなり、当該スライドファスナー300が設けられる物品の防犯性能を効果的に高めることが期待できる。
図1は各引手90が重合及び施錠された状態を示し、図2は各引手90が施錠解除され、互いに分離した状態を示す。図2の状態にて、雄ホック220に雌ホック210をスナップ係合し、その後、「H」状の凹部P55が設けられた鍵被係合部50を図3に例示の鍵部材60で回転し、これにより、雌ホック210から雄ホック220のポスト105が抜き出せない、少なくとも抜き出しにくい状態にできる。これを生じさせるメカニズムについては後述する。
図1及び図2に示すように、各引手90は、固定端である一端92と自由端である他端93を有し、一端92と他端93の間でV字若しくはU字状に屈曲し、これにより、第1引手90pの自由端93と第2引手90qの自由端93の簡便な重合が許容される。第1引手90pの固定端92側ではなく自由端93近傍に雄ホック220が設けられ、第2引手90qの固定端92側ではなく自由端93近傍の雌ホック210が設けられ、従って、各ホック同士をスナップ係合することに特段の困難は無い。
引手90の引手本体91は硬質及び軟質のいずれでも構わない。例えば、引手本体91は、織物、編物、天然皮革又は人造皮革といったある程度の剛性に柔軟性が付与された素材から成る。若しくは、引手本体91は、金属、樹脂等の殆ど柔軟性が無い材料から成る。いずれの場合にも本開示の如く引手90を屈曲形状とすることが各ホック同士のスナップ係合の簡便さを確保するために望ましい。
雌ホック210や雄ホック220を引手90に設ける具体的態様は任意であり、ホックとして把握できない態様で雄ホックや雌ホックを引手90に一体化若しくは組み込んでも良い。雄ホックと引手が一体化される場合、第1引手90pにはポスト105のみが設けられ、その他の雄ホック220の構成部品が把握できないかもしれない。なお、ポスト105は、先端側が基端側に比べて膨大した部分を含む柱状部材であり、中空のものに限らず、中実であっても構わない。雄ホック220や雌ホック210を引手本体91に一体的に組み込むことも可能である。
如何様に引手90が構成されるにしても、後述の説明のように、引手90に弾性又は非弾性のリング状部材40を設けることが望ましい。また、引手90に対して、図3に例示の鍵部材60が嵌合可能に構成され、かつ鍵部材60の回転に一緒、換言すれば同調して回転可能である鍵被係合部50を設けることが望ましい。鍵被係合部50とリング状部材40を嵌合により同調回転可能とすることが望ましい。鍵被係合部50の回転に応じてリング状部材40の開口P40の拡大が制限可能とし、各引手90同士を係脱不能若しくは係脱困難にすることが望ましい。
図1及び図2から理解できるように、施錠状態において雌ホック210の鍵被係合部50が表面側に配置されるように雌ホック210が引手90の引手本体91に設けられることが望ましい。これにより、鍵部材60を鍵被係合部50に押し付ける際、スライドファスナー300若しくはこれが取り付けられた鞄等が下支えになり、施錠や開錠の操作が簡便になる。
図3を参照して鍵部材の構成例について説明する。図3に示すように、鍵部材60は、本体61の平坦面62に設けられた「H」状の凸部63を有する。凸部63の正面視形状「H」は、鍵被係合部50の凹部P55の正面視形状「H」に鏡像、本例では一致する。H以外のアルファベットや算用数字や図形等の任意の模様を凸部63の正面視形状が呈しても構わない。鍵部材60の紛失時の開錠の余地を残すため、直線部分を含む模様であっても構わない。
図3(a)に示すように鍵部材60を指輪としても良く、これにより、鍵部材60の紛失を抑制できる。図3(b)に示すように鍵部材60を印鑑状、より一般的には柱状としても良く、これにより、雌ホック210の鍵被係合部50を簡便に回転できる。図3(c)に示すように鍵部材60を摘まみ状としても良く、これにより、雌ホック210の鍵被係合部50を簡便に回転できる。図3(d)に示すように鍵部材60を別のファスナースライダーの引手とし、同一の鞄等に設けても良く、この場合には、鍵部材60の紛失が生じないだろう。
スライドファスナー300の構成について、念のため以下に説明する。
ファスナーテープ71は、織物又は編み物等であり、必要に応じて防水加工が施される。ファスナーエレメント72は、金属や樹脂製の個別エレメントがファスナーテープ71の対向側縁の芯紐に一体的に設けられたものであるが、一連のコイルエレメントであっても構わない。ファスナー用スライダー80は、他の実施形態に関する図22も併せて参照すると、上翼板81、上翼板81に対向し、かつ平行である下翼板82、上翼板81と下翼板82を前端80F側で連結する連結柱83、上翼板81の左右の側縁に連結した上部フランジ部84、下翼板82の左右の側縁に連結した下部フランジ部85、上翼板81の上面に設けられた引手取付柱86、及び引手取付柱86に取付けられた引手90を含む。
ファスナー用スライダー80の前端80F及び後端80Rは、ファスナー用スライダー80の移動方向に準じて命名している。連結柱83は、ファスナー用スライダー80の前端80F側に設けられ、これにより、第1ファスナーエレメント72m用の出入口及び第2ファスナーエレメント72n用の出入口が、上翼板81と下翼板82の間に設けられる。第1ファスナーエレメント72mのエレメント通路と第2ファスナーエレメント72nのエレメント通路が連結柱83によりファスナー用スライダー80の前端80F側で隔てられる。
図1及び図2に示すように、各引手90の一端92を各ファスナー用スライダー80の後端80R側に配置した状態で各引手90の他端93同士の重合を許容するサイズや形状に各引手90を構成することが望ましい。これにより、図1及び図2に示すように、各ファスナー用スライダー80の前端80Fを突合せ状態とし、如何様にしてもスライドファスナー300を開き難い状態とすることができる。
以下、図4乃至図9を参照して雌ホック210からの雄ホック220のポスト105の離脱防止を図る構造例について説明する。図4(a)及び(b)の対比から把握できるように、弾性を有するリング状部材40の開口P40の拡大が、リング状部材40を収容する収容器10に設けられた半径方向内側への凸状の各押圧部10mと、リング状部材40に設けられた半径方向外側へ凸状の各被押圧部40mの対向により制限される。収容器10は、本例では金属製の筒状部分であるが、引手本体90自体で代替しても良い。押圧部10mが十分な剛性を有し、つまりリング状部材40よりも硬いことが望ましい。リング状部材40は、鍵被係合部50に一体又は別体として設けられる。リング状部材40は、鍵被係合部50に嵌合される等して鍵被係合部50の回転に応じて回転可能に構成されると良い。
図4に示すように、円筒状の収容器10は、狭い内径に対応する押圧部10mが設けられ、円盤状のリング状部材40には広い直径に対応する被押圧部40mが設けられる。押圧部を「接触部」と呼び、被押圧部を「被接触部」と呼ぶ場合がある。押圧部10mは、半径方向内側に突出した突出部10m1、10m2である。突出部10m1、10m2は、収容器10の周壁部が半径方向内側へ凹み、同方向に突出した部分である。突出部10m1、10m2は、周方向において180度間隔で設けられている。被押圧部40mは、半径方向外側に突出した突出部40m1、40m2である。突出部40m1、40m2は、周方向において180度間隔で設けられ、かつ互いに反対側へ突出している。なお、ここで述べる「周方向」は、開口P40へのポスト105の挿入方向周りの方向である。
図4(a)に示す状態は、リング状部材40の突出部40mと収容器10の突出部10mが対向していない「非ロック状態」である。他方、図4(b)に示すとき、リング状部材40の突出部40mと収容器10の突出部10mとが対向する「ロック状態」である。
リング状部材40の被押圧部40mと収容器10の押圧部10mが対向していない状態において、被押圧部40mと開口P40の中心を通るリング状部材40の直径Raが押圧部10mと開口P40の中心を通る収容器10の直径Rbよりも大きくしても良い。この場合、開錠状態から施錠状態に推移する際、鍵部材60を回転する際に感じる回転感覚が重くなる。他方、施錠状態から開錠状態に推移する際、鍵部材60を回転する際に感じる回転感覚が軽くなる。このように施錠状態と開錠状態の相違を感覚的に判別しやすくすることができる。
図4に示す場合にはリング状部材40が回転するが、リング状部材40を回転不能としても良い。例えば、図5に示すように、鍵被係合部50の回転に同調して回転可能な押圧片50mをリング状部材40の外周に設け、これを押圧部として機能させても良い。この押圧片50mは、例えば、リング状部材40上にて回転可能に配置の鍵被係合部50に一体的に設けられた金属製又は樹脂製等の突片であるが、これに限られるべきものではない。この場合、鍵被係合部50が、後述の第2部材として機能する。
図4及び図5に示す場合にはリング状部材40が弾性に構成されるが、リング状部材40を非弾性としても良い。この場合、分割されたリング本体、及びリング本体の分割片を元位置へ復帰させる弾性部材の組み合わせを含めてリング状部材40を構成すると良い。
図6(a)及び(b)の対比から把握できるように、リング本体42が2分割されたリング状部材40の開口P40の拡大が、リング状部材40を周囲する収容器10の押圧部10mとリング本体42に取付けられた板バネ49の被押圧部40mの対向により制限される。好適な一例として、図6(a)に示すように、環状部材のリング本体42を2分割した分割片のU字部45と収容器10の間に弾性部材である板バネ49を設け、図6(a)の点線矢印で示すように板バネ49の両端が収容器10を押圧し、U字部45の元位置への復帰を確保する。図6に示す場合、リング本体42及び板バネ49が鍵被係合部50に嵌合され、鍵被係合部50の回転に応じて変位可能である。
リング状部材40の被押圧部40mと収容器10の押圧部10mが対向していない状態において、被押圧部40mと開口P40の中心を通るリング状部材40の直径Raが押圧部10mと開口P40の中心を通る収容器10の直径Rbよりも大きくしても良い。この場合、開錠状態から施錠状態に推移する際、鍵部材60を回転する際に感じる回転感覚が重くなる。他方、施錠状態から開錠状態に推移する際、鍵部材60を回転する際に感じる回転感覚が軽くなる。このように施錠状態と開錠状態の相違を感覚的に判別しやすくすることができる。この点は、図7及び図8に示す形態に関しても同様に当てはまる。
板バネを用いたU字部45の付勢態様は任意であり、図6に示した態様に限られない。図7に示すように一組のU字部45同士を板バネ49で元の環を成すように連結しても良い。U字部45の各端部には、板バネ49の端部が挿通される孔又は窪みが設けられる。板バネ49が、U字状に構成され、隣合うU字部45の端部同士を連結する。
板バネ49は必ずしも他の部材に取付けられる必要は無く、例えば、図8に示すようにリング本体42を構成することにより、リング本体42や鍵被係合部50への板バネ49の取付を省略しつつも、リング本体42の回転に同調の板バネ49の変位を確保しても良い。図8に示す場合、U字部45に板バネ49の各端に衝突可能な凸部を設け、リング本体42の回転に応じて板バネ49が変位可能である。
図6乃至図8に示す場合には板バネ49の変位が前提となっているが、必ずしもこの限りではない。例えば、図9に示すように、リング本体42又は鍵被係合部50への板バネ49の係止や嵌合を無くし、リング状部材40の回転に関わらず板バネ49を所定位置に居留まらせても良い。
板バネ49を省略して一か所に欠きが設けられた環状の金属リングをポストのスナップ用に設けても良いが、この場合には、雌ホック210の厚みが増加してしまうおそれがある。
図4乃至図9に例示のどの構造を採用する場合にしても、図1に示したスライドファスナー300は、雄部材として第1引手90p、雌部材として第2引手90q、及び鍵部材60を含む施錠具400を含んで構成される。雄部材は、ポスト105を有する第1引手90pである。雌部材は、第2引手90qである。第2引手90qは、ポスト105が挿通される開口P40を少なくとも部分的に画定する第1部材、本例ではリング状部材40を含み、更に、リング状部材40の変形又は変位を制限して開口P40の拡大を制限可能である第2部材、本例では収容器10を備える。ここで、収容器10にはリング状部材40に対して接触可能である少なくとも1つの接触部、本例では押圧部10mが設けられ、リング状部材40には押圧部10mにより接触され得る少なくとも1つの被接触部、本例では被押圧部40mが設けられる。また、開口P40へのポスト105の挿入方向の周りの周方向において押圧部10mと被押圧部40mの相対位置が変更可能である。鍵部材60は、リング状部材40と収容器10の少なくとも一方に直接的又は間接的に作用して周方向において押圧部10mと被押圧部40mの相対位置を調整可能に構成される。本例では、鍵部材60は、リング状部材40に対して間接的に作用するものであり、図3に例示した鍵部材60である。
ここで図4に示したリング状部材40を内蔵する雌ホック210の例示の具体的構造について説明する。雄ホック220の構造についても併せて説明する。
図10及び図11に示すように、雌ホック210は、リング状部材40及び鍵被係合部50が積層状態で収容器10内に収容された構成を含む。収容器10は、3つの独立の金属板10a〜10cの組み合わせから構成されるが、必ずしもこの限りではない。金属板による挟み込みや食い込みにより雌ホック210が軟質の引手本体91に取付けられ、また、金属板による挟み込みにより雄ホック220が軟質の引手本体91に取付けられる。引手本体91が金属製や樹脂製であれば、異なる態様での取付が考えられる。
鍵被係合部50とリング状部材40が嵌合しており、軸AX周りに一緒に回転可能である。リング状部材40は、その上面に係合凸部40yを有し、鍵被係合部50は、その下面に係合凹部50yを有する。係合凸部40yと係合凹部50yの嵌合により、図3に例示した鍵部材60により鍵被係合部50に付与された回転力がリング状部材40へ伝達する。リング状部材40と鍵被係合部50とを別体とすることにより、両者の各機能に応じて最適な材料を選ぶことができるが、必ずしもこの限りではなく、リング状部材40と鍵被係合部50とを一体化しても良い。鍵被係合部50とリング状部材40の間で係合凸部及び係合凹部の配置を逆にしても良い。
鍵被係合部50の下面には凹部P56が設けられ、リング状部材40には当該リンク体40を貫通する貫通孔P40が設けられ、鍵被係合部50の凹部P56とリング状部材40の貫通孔P40が連続する。凹部P56と貫通孔P40の連通により、雄ホック220のポスト105の頭部105bを受け入れる空間が生じる。凹部P56と貫通孔P40の連続空間に等しい受入空間を画定する受入部P210は、リング状部材40と鍵被係合部50の積層により構成されるが、必ずしもこの限りではない。
受入部P210の受け口(リング状部材40の受け口)の最小径W40は、ポスト105の最大径W105未満である。従って、リング状部材40が半径方向外側へ変形し、リング状部材40の受け口の径W40が拡大し、これにより、受入部P210内へのポスト105の進入が許容される。受入部P210にポスト105が完全に挿入された状態のとき、リング状部材40が元形状に復帰し、受入部P210からのポスト105の離脱が抑止される。
収容器10は、リング状部材40及び鍵被係合部50の積層体を収容する筒部10a、及び筒部10aの外周に設けられる取付部10b及びカバー10cを有する。
筒部10aは、底部11、周壁部12、及び湾曲部13を有する。底部11の中心には開口が開口しており、底部11が環状に構成される。底部11上にはリング状部材40が載置される。周壁部12は、底部11の外周端から軸AXに沿って延在して立ち上がり、リング状部材40を周囲する。湾曲部13は、自身の先端が周壁部12の外周面を臨むまで周壁部12の先端が半径方向外側及び下方へ湾曲した部分であり、取付部20に対して係合する係合部である。
取付部10bは、押え部21、周壁部22、及び湾曲部23を有する。押え部21は、周壁部22の下端から半径方向外側へ延在し、引手本体91を下方から押し付ける。周壁部22は、押え部21の内周端から軸AXに沿って延在して立ち上がり、リング状部材40を周囲する。筒部10aの周壁部12を内周側周壁部と呼び、取付部10bの周壁部22を外周側周壁部と呼んでも良い。湾曲部23は、自身の先端が周壁部22の外周面を臨むまで周壁部22の上端が半径方向外側から下方へ湾曲された部分であり、湾曲部13に対して係合する係合部である。
カバー10cは、平板部31、及び外周側部32を有する。平板部31の中心には開口が設けられており、平板部31が環状に構成される。平板部31の開口端は、リング状部材40と鍵被係合部50を収容器10内に閉じ込めるための位置規制部である。外周側部32は、平板部31の外周から軸AXに沿って下方へ延在する。外周側部32の下端部分は、内側へ傾斜するように曲げられている。カバー10cの外周側部32の下端部分の曲げにより、収容器10に対してカバー10cが固定され、これと同時に、鍵被係合部50、リング状部材40がカバー10cの平板部31により収容器10内に閉じ込められる。カバー10cの外周側部32の下端部分は、引手本体91を上方から押し付ける部分でもあり、これにより、引手本体91は、カバー10cの外周側部32の下端部分と取付部20の押え部21との間で上下から好適に挟み込まれる。
リング状部材40は、樹脂、金属等の平板部材の中心に開口P40が設けられた弾性を有する環状部材である。リング状部材40の本体部分であるリング本体42の下面には、環状凸部43が設けられる。環状凸部43が収容器10の開口P10内に配置され、これにより、収容器10とリング状部材40間の位置決めが容易になる。リング本体42の開口P40の直径に相当する開口径(開口幅)は拡大可能であり、これにより、受入部P210へのポスト105の挿入/受入部P210からのポスト105の引き抜きが許容される。なお、本実施形態においては、後述の説明から明らかになるように、雌ホック210は、リング本体42の開口形状の変形が制限される状態と制限されない状態を持ち、各状態が周方向におけるリング状部材40と収容器10の相対位置に応じて決定される。
リング状部材40の内周側面41の下部41pが半径方向内側へ弧状に膨出し、リング状部材40の内周側面41の上部41qが半径方向外側へ弧状に窪んでおり、リング状部材40の内周側面41が断面視して波状に構成される。
鍵被係合部50は、その上面に上述の「H」状の凹部P55が設けられ、下面にポスト105の頂部を受け入れる凹部P56が設けられた円盤状部材であり、かつ軸AXを回転軸として受動回転する受動回転部である。鍵被係合部50は、樹脂、金属等の平板部材であり、好適には、リング状部材40とは異なる材料から構成される。凹部P55は、図3に示すような鍵部材60の凸部63が嵌合する部分である。鍵被係合部50の下面の凹部P56は、平坦面の底面56pと、底面56pの外周に接続の内周側面56qにより画定される。
鍵被係合部50の外側肉厚W50a<内側肉厚W50bの関係が成立する。これに応じて鍵被係合部50の上側の外周縁には段差部52が設けられる。段差部52は、平坦面を有し、平坦面上にカバー10cの平板部31の内周端部が配置される。リング状部材40と鍵被係合部50の積層体は、カバー10cの平板部31と収容器10の底部11との間で上下から位置規制される。鍵被係合部50の肉厚W50bの部分は、凹部P56により薄肉化され、また、凹部P55により更に部分的に薄肉化される。
収容器10は、真鍮、銅合金、ステンレス、アルミニウムなど、塑性変形する金属材料の金属板から構成される。リング状部材40は、任意の程度の弾性を具備し、例示的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂等の材料から構成される。鍵被係合部50は、所望の強度を有する上記の合成樹脂や、上記の金属等の材料から構成される。
図10及び図12を参照して雄ホック220の構成について説明する。雄ホック220は、雌ホック210の受入部P210に受け入れられて保持されるポスト105を有する。ポスト105は、先端側が基端側よりも膨大の形状を有し、端的には、小径の首部105a及び大径の頭部105bを有する。頭部105bは、首部105aよりも径大、若しくは幅広に構成される。なお、雌ホック210の受入部P210へポスト105が差し込まれることは、頭部105bによりリング状部材40の開口P40の開口径が広げられることにより許容される。
雄ホック220は、下側部材110及び上側部材120から構成される。下側部材110は、ベース111、及びポスト内壁部112を有する。ベース111は、引手本体91を下側から押圧する環状の平板部である。ポスト内壁部112は、軸AXに沿って延在しかつ両端が解放した中空筒部である。ポスト内壁部112は、引手本体91を貫通する部分である。ポスト内壁部112の上端外周部は、半径方向外側に凸状に湾曲した湾曲部113が設けられ、この部分が上側部材120の対応する湾曲部123に係合する。
上側部材120は、ベース121、及びポスト外壁部122を有する。ベース121は、引手本体91を上側から押圧する部分であり、環状の平板部である。ポスト外壁部122は、下端が解放し上端が閉じた部分であり、その上端外周部が半径方向外側へ凸状に湾曲した湾曲部123が設けられ、この部分が下側部材110に係合する。ポスト内壁部112の湾曲部113とポスト外壁部122の湾曲部123が合致することにより、上側部材120と下側部材110が互いに係止される。
引手本体91は、ベース111とベース121により上下から挟み込まれる。必要に応じて、ベース111及びベース121により引手本体91が挟み込まれた状態で雄ホック220がプレス処理され、ベース111に複数の凹部115が設けられ、ベース121に複数の凸部125が設けられ、これにより、引手本体91に雄ホック220が強固に取り付けられる。なお、図12に示すように、雄ホック220は、軸AX周りに60°の回転対称に6か所でプレス処理されている。
図13及び図14を参照して、雌ホック210と雄ホック220の係合動作について説明する。なお、雌ホック210と雄ホック220の係合により各引手90が重合する。
まず、リング状部材40の開口P40にポスト105の頭部105bを圧入する。雌ホック210にポスト105が挿入される際、開口P40の直径がポスト105の頭部105bの直径より小さいため、開口P40の直径を拡大するようにポスト105がリング状部材40を弾性変形させる。これに応じて、リング状部材40の開口P40が半径方向外側へ拡大する。リング状部材40の突出部40mと収容器10の周壁部12との間には十分なクリアランスが存在するため、リング状部材40の十分な変形が許容され、収容器10により許容される開口P40の拡大の程度が十分に確保される。雌ホック210から雄ホック220のポスト105を抜き出す場合も同様である。
頭部105bが開口P40を通った後、リング状部材40が元の形状に弾性復帰して開口P40が元の直径に戻り、首部105aに係合する。首部105aの直径は、頭部105bの直径より小さく、かつ開口P40の最小直径よりも小さくても良い。「ロック状態」では、開口P40の直径が拡大することが抑制されるため、頭部105bが開口P40を通ることが困難となる。
この後、鍵部材60により鍵被係合部50を回転させ、図4(a)から図4(b)に示す位置までリング状部材40を回転する。これにより、図4(a)の「非ロック状態」から図4(b)の「ロック状態」に推移する。「ロック状態」のとき、リング状部材40の突出部40mと収容器10の突出部10mとが対向しており、リング状部材40の変形が制限された状態にあり、つまり、「非ロック状態」と比較して、収容器10により許容されるリング状部材40の開口P40の拡大の程度が小さい。従って、雌ホック210の受入部P210からポスト105を抜き出すことは容易ではなく、同様に、雌ホック210の受入部P210にポスト105を差し込むことは容易ではない。なお、容易ではないということは、程度の問題であり、不可能であることを意味しない。
図14に示す状態で雌ホック210から雄ホック220のポスト105を抜き出す場合、リング状部材40の突出部40mが半径方向外側へ移動しようとするが、収容器10の押圧部10mにより阻止され、結果として、リング状部材40の開口P40の開口径の拡大が制限され、その抜き出しが困難又は容易ではない。
図4(a)及び図4(b)に示す状態の切り替えの把握を利用者に報知するために、鍵被係合部50及びリング状部材40の少なくとも一方の回転範囲の所定角度範囲、好適には90°に制限することが好ましい。図15及び図16を参照して鍵被係合部50の回転範囲を規制する構造について説明する。図4(a)と図4(b)に示す各状態は、例えば、鍵被係合部50の時計周りの停止位置と鍵被係合部50の反時計周りの停止位置に対応する。
図15に示すように、鍵被係合部50の外周側面には、周方向沿いに所定範囲に連続した溝部55が設けられ、溝部55の周方向の延在範囲が停止端55a、55bにより規定されている。鍵被係合部50の外周の1/4の範囲で溝部55が設けられる。収容器10の周壁部12には、溝部55内に配置され、かつ溝部55の停止端55a、55bの衝突が予定されている停止部12kが設けられている。
図15に示すとき、停止端55bが停止部12kに衝突しており、これにより、鍵被係合部50の更なる時計回りの回転が禁止される。鍵被係合部50の反時計周りの回転は、停止端55aが停止部12kに衝突することにより禁止される。このように鍵被係合部50の回転範囲を90°に制限することにより、鍵被係合部50が停止する2つの停止位置(回転停止位置)を設定することができ、一方の停止位置に対応付けて雌ホック210と雄ホック220のポスト105を強く係合させ、他方の停止位置に対応付て雌ホック210と雄ホック220のポスト105を弱く係合させることができる。端的には、一方の停止位置において押圧部10mと被押圧部40mを対向させ、他方の停止位置において押圧部10mと被押圧部40mを非対向にすることができる。この点は、他の形態、例えば、図6に示した形態についても同様に活用できる。
図16に示すように、リング状部材40の外周側面にも、鍵被係合部50と同様の溝が設けられている。リング状部材40と鍵被係合部50とは一緒に回転するものであるため、鍵被係合部50と同様、リング状部材40の回転範囲も制限することが望ましい。なお、停止部12kは、必ずしも収容器10の周壁部12自体である必要はなく、別部材であっても良い。リング状部材40及び鍵被係合部50の回転範囲を規制する具体的な態様は任意であり、上述のように収容器10を活用してリング状部材40及び鍵被係合部50の回転範囲を制限することの他、カバー10cを活用して鍵被係合部50の回転範囲を制限しても良い。
なお、リング状部材40の被押圧部40mと収容器10の押圧部10mが対向するとき、被押圧部40mと押圧部10mを接触させるか否かは任意である。なお、両者を接触若しくは圧迫させてリング状部材40の開口形状を正円から楕円形へ変形させても良く、この場合、楕円形の短軸長さが正円の直径より短くなり、雄ホック220のポスト105をより強く保持できる。
次に図6に示したリング状部材40を内蔵する雌ホック210の例示の具体的構造について説明する。
図4に関連して上述した場合、リング状部材が単一の環状の弾性材料から構成されていた。他方、図6に関連の形態では、リング状部材に含まれるリング本体を複数の分割片に分割し、リング状部材の変形がリング本体の各分割片の変位により達成される。この場合でも、オプションとして、任意の方法、例えば、バネ等の弾性部材の活用により分割片を元位置へ復帰可能であり、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。リング状部材のリング本体の分割により得られる分割片を金属材で構成すれば、分割片の強度が高まり、ホックの耐久性が向上される。なお、図6に示す形態では、リング状部材のリング本体を2分割しているが、3分割以上に分割しても良い。
なお、周方向における押圧部10mと被押圧部40mの相対位置に応じて、換言すれば周方向における収容器10に対するリング状部材40の回転に応じて、収容器10により許容されるリング状部材40の変形の程度が変化する点、及び収容器10により許容されるリング状部材40の開口P40の拡大の程度が変化する点は上述の場合と同様である。
図17及び図18に示すように雌ホック210の収容器10内に一組のU字部45p、45qが配置される。U字部45p、45qは、リング本体42の分割片である。U字部45pの一端の端面には凸状嵌合部45p1が設けられ、U字部45pの他端の端面には凹状被嵌合部45p2が設けられ、U字部45pの両端間の中央部の上面には挿入突起45p5が突出して設けられる。挿入突起45p5は、リング状部材40上に配置される鍵被係合部50の底面の凹状の被挿入部59pに挿入される。U字部45qの構成は、U字部45pと同様であり、重複説明は省略する。なお、U字部45qの凸状嵌合部45q1、凹状被嵌合部45q2、挿入突起45q5が、U字部45pの凸状嵌合部45p1、凹状被嵌合部45p2、挿入突起45p5に対応する。
U字部45pの凸状嵌合部45p1がU字部45qの凹状被嵌合部45q2に緩く嵌合し、U字部45qの凸部45q1がU字部45pの凹部45p2に緩く嵌合し、これにより、U字部45pとU字部45q同士の間隔の拡大及び縮小、換言すれば、リング状部材40の開口P40の開口幅の拡大及び縮小が確保される。
図17に示すように収容器10内には上述の一組のU字部45p、45qに対応して一組の板バネ49p、49qが設けられる。図19に示すように、板バネ49pは、初期姿勢が平坦の一定厚の金属板である。板バネ49pは、長尺な平板部49p5と、平板部49p5の両端の中央において突出して設けられた挿入片49p6を有する。板バネ49qの構成は、板バネ49pと同様であり、重複説明は省略する。
図20も追加的に参照して説明する。板バネ49pが、U字部45pと収容器10の間に配置され、その平板部49p5がU字部45pの外周側面と収容器10の内周側面との間で弧状に湾曲するように強いられ、板バネ49pの平板部45p5には直線状の初期形状に復帰するバネ力が付与される。板バネ49qについても同様に、U字部45qと収容器10の間に配置されて、板バネ49pのバネ力に等しいバネ力が付与される。U字部45の半径方向内側への付勢源として板バネを活用する場合、リング状部材40と収容器10の間の周方向に連続した空間を利用することができ、板バネのより十分な長さを確保しやすく、つまりより十分なバネ力を確保するのに適する。
図6(a)に示すように、板バネ49qの平板部49q5には、その各端部が半径方向外側へ変位するバネ力が与えられる。板バネ49qの平板部49q5の各端部が収容器10の内周側面を押圧することに応じてU字部45qが半径方向内側へ付勢される。同様にして、板バネ49pのバネ力に応じてU字部45pが半径方向内側へ付勢される。このようにしてU字部45pとU字部45qの閉じ、両者の配置間隔が最小の初期状態が確保及び維持される。
図17に示すように、板バネ49pの挿入片49p6は、U字部45pの挿入突起45p5と共に鍵被係合部50の底面の凹状の被挿入部59pに挿入される。板バネ49qの挿入片49q6は、U字部45qの挿入突起45q5と共に鍵被係合部50の底面の凹状の被挿入部59qに挿入される。鍵被係合部50の回転に応じて一組のU字部と一組の板バネが軸AX回りに回転する。鍵被係合部50との関係において各U字部と各板バネが個別に取り付け可能であり組立容易である。
図6(a)に示すとき、板バネ49p、49qと収容器10の間には十分な間隔のクリアランスが確保され、U字部45pとU字部45qの配置間隔の拡大が許容される。なお、上述のクリアランスは、板バネ49p、49qの両端部が収容器10の内周側面に接触し、板バネ49p、49qの平板部45p5に直線状の初期形状に復帰するバネ力が付与されるため生じる。
雄ホック220のポスト105が雌ホック220の受け部P210に挿脱される過程においては、各板バネ49から各U字部45が受ける付勢力に勝る押圧力がポスト105から各U字部45に与えられ、U字部45pがポスト105により半径方向外側へ押され、U字部45qがポスト105により半径方向外側へ押され、U字部45pとU字部45qの間隔が広がり、開口P40の開口幅が拡大する。収容器10により許容される開口P40の拡大の程度が大きいと言える。
図6(b)に示す時、板バネ49p、49qと収容器10の間には上述のクリアランスが無くなり、リング状部材40の開口P40の拡大が制限され、そうしようとも収容器10の剛性により開口幅の更なる拡大は阻止される。
図6に示す開口P40には、一組のU字部45p、45qが横に並ぶ方向の寸法の第1開口幅W401と、これに直交する方向の寸法の第2開口幅W402が設定される。第1開口幅W401は、各U字部45p、45qが環状に連結するとき、ポスト105の頭部105bの最大直径よりも狭く、各U字部45p、45qが離間した状態では、ポスト105の頭部105bの最大直径よりも広くなる。他方、第2開口幅W402は、ポスト105の頭部105bの最大直径よりも僅かに大きく設定される。第1開口幅W401の拡大に応じてポスト105の開口P40の通過が許容され、第1開口幅W401の縮小に応じてポスト105と雌ホック210間の係合が確保される。なお、各U字部45p、45qが環状に連結した時の開口P40の開口形状は、U字部45p、45qの横並び方向に幅狭の楕円形状である。
図20に示すように雌ホック210と雄ホック220がスナップ係合した後、各U字部45p、45qが各板バネ49p、49qにより半径方向内側へ付勢され、ポスト105が環状に連結したU字部45p、45qにより挟み込まれる。上述の第1開口幅W401は、ポスト105の頭部105bの最大直径よりも広い開口幅から狭い開口幅へ復帰する。U字部45の元位置への変位に応じて、リング状部材40の開口P40の開口幅が、拡大した開口幅から初期開口幅へ減少する。
なお、図20の状態下で、雌ホック210から雄ホック220を引き抜くと、ポスト105の頭部105bによる各U字部45の半径方向外側への押圧力が各板バネ49のバネ力に勝り、U字部45p、45q間の間隔が拡大、つまり、リング状部材40の開口P40が拡大し、ポスト105の頭部105bがリング状部材40の開口P40を通過できる。
雌ホック210と雄ホック220の係合力は、鍵被係合部50の回転により調整可能である。図17に示した鍵被係合部50を図17の紙面を正面視して時計回りに90°回転すると、雌ホック210が、図6(a)に示した非ロック状態から図6(b)に示したロック状態になる。
図21に示す時、板バネ49p、U字部45p、U字部45q、及び板バネ49qが一組の押圧部10mにより挟まれて、各U字部45p、45qの半径方向外側への変位、U字部45p、45qの配置間隔の拡大、及びリング状部材40の開口の拡大が全く若しくは殆ど許容されない状態になる。この時、収容器10の押圧部10mと板バネ49p、49qの被押圧部40mが接触し、また、板バネ49p、49qのその反対面側にU字部45p、45qが接触する。板バネ49p、49qと押圧部10mの接触により、一組のU字部45p、45qが画定する開口P40の拡大が禁止又は抑止される。
図21に示す時、収容器10により許容されるU字部45p、45qの半径方向外側への変位が実質的にゼロである。従って、雄ホック220のポスト105を雌ホック210の受け部P210に圧入しても係合し得ない。図21に示す場合、板バネ49の厚み分だけ押圧部10mの突出高さを低くすることができる。
図6の参照から理解できるように、板バネ49にバネ力を付与するための板バネ49p、49qと収容器10の接触点と、開口P40の拡大を抑制するための板バネ49p、49qと収容器10の接触点とは異なる位置にて確保される。板バネ49にバネ力を付与するための収容器10に対する板バネ49の接触点は、板バネ49p、49qの両端部にある。収容器10側の接触点については、周方向における押圧部10mの両隣の収容器10の内側面にある。開口P40の拡大を抑制するための収容器10に対する板バネ49の接触位置は、板バネ49p、49qの中央付近にある。収容器10側の接触点については、押圧部10mの内側面にある。一組のU字部45p、45qが互いに離間する方向に対して平行、かつ開口P40の中心を通る仮想線が板バネ49p、49qと交差する位置が、板バネ49p、49qの両端間の中央付近にあり、これにより、開口P40の拡大の程度を好適に抑制することができる。
本例においては、リング状部材40の被押圧部40m1は、板バネ49pの平板部49p5の長手方向中央部である。リング状部材40の被押圧部40m2は、板バネ49qの平板部49q5の長手方向中央部である。
図21に模式的に示すように雌ホック210に雄ホック220のポスト105がスナップ係合しているとき、板バネ49p、49qと収容器10の間にはクリアランスが全く又は殆ど無く、仮に雌ホック210の受け部P210からポスト105を引き抜こうとしても、U字部45p、45qが半径方向外側へ全く若しくは殆ど変位できず、これにより、雌ホック210と雄ホック220の外れが阻止される。本実施形態においては、雌ホックの係合力に顕著な強弱を付与することができ、雄ホックのポストのロック状態と非ロック状態の間で顕著な係合力の差を付与することができる。収容器10、U字部45p、45q、板バネ49p、49qが金属製であるため、雌ホック210の強固な係合力を確保できる。
雌ホック210の組立は、例えば、鍵被係合部50にU字部45p、45q、板バネ49p、49qを挿入により嵌合し、これを収容器10内に配置し、カバー10cで閉じることにより達成可能である。
<第2実施形態>
図22乃至25を参照して第2実施形態について説明する。図22は、スライドファスナーの隣合うファスナースライダーが連結状態にある概略的な側面図であり、模式説明のため雄ホックと雌ホックを断面視して示す。図23は、スライドファスナーの隣合うファスナースライダーが連結状態にある概略的な上面図である。図24は、スライドファスナーの隣合うファスナースライダーが連結解除状態にある概略的な側面図であり、模式説明のため雄ホックと雌ホックを断面視して示す。図25は、スライドファスナーに組み込まれたホックの概略的な断面模式図を示す。
本実施形態では、各引手90が、引手本体91の屈曲を許容する軸AX90を有し、これにより、より自由な態様で各引手90の他端93同士の重合が許容される。本実施形態の場合、引手90の構成がやや複雑化するが、視覚的にもユニークな構造の引手とすることができる。引手本体91の固定端の一端92と自由端の他端93の間に軸AX90を設けることが望ましい。
本実施形態では、各引手90が金属製や樹脂等のある程度の剛性を有する素材から成り、これに応じて、引手本体91に対する雌ホック210及び雄ホック220の取り付き態様が第1実施形態に図示のものと異なる。このように引手本体91の材質に応じて雌ホック210や雄ホック220の取付構造を変更可能である。なお、これ以外にも、雄ホック220や雌ホック210を引手本体91に一体的に組み込むことも可能であり、この場合には、例えば、収容器10の一部又は全部が引手本体91により代替される。
図22乃至図25に示す場合、第1実施形態と同様、各引手90の一端92を各ファスナー用スライダー80の後端80R側に配置した状態で各引手90の他端93同士の重合が許容されるが、必ずしもこの限りではなく、引手90の具体的な構成によっては、各引手90の一端92を各ファスナー用スライダー80の前端80F側に配置した状態で各引手90の他端93同士の重合が許容されるだろう。
第1引手90pは、一端側平板91p1と他端側平板91p3が軸AX90を介して枢動可能に連結したリンクであり、雄ホック220が他端側平板91p3に設けられる。一端側平板91p1と他端側平板91q3の間の軸結合の具体的な態様は任意であるが、例えば、一端側平板91p1に同軸配置の一組の凹部を設け、他端側平板91p3に同軸配置の一組の凸部が設け、各凹部と各凸部を嵌合すれば良い。
第2引手90qは、一端側平板91q1と他端側平板91q3が軸AX90を介して枢動可能に連結した複合部材であり、雌ホック210が他端側平板91q3に設けられる。一端側平板91q1と他端側平板91q3の軸結合の具体的な態様は任意である。
第1引手90pの一端側平板91p1の長さは、第2引手90qの一端側平板91q1の長さよりも短い。第1引手90pの他端側平板91p3の長さは、第2引手90qの他端側平板91q3の長さに略等しい。このように互いに連結されるべき各引手の間で一端92から軸AX90までの長さに差異を設けることで各引手の他端93側での重合を好適に確保できる。第1引手90p側に雄ホック220を設け、第2引手90q側に雌ホック210を設けることが望ましく、これにより、雌ホック210の鍵被係合部50の回転を簡易に行うことができ、鍵部材60も図3に例示したようなものを用いることができる。
例えば、第1ファスナー用スライダー80pの第1引手取付柱86p上に配された第1引手90pの他端側平板部91p3上に第2ファスナー用スライダー80qの他端側平板部91q3を重合することができる。図23に示すように上面視したとき、ファスナー用スライダー80範囲内に引手90が収まり、見かけ上のコンパクトを演出できる。図24に示すように、各引手90の連結が解除された時、各引手90は、引手として十分な長さを有し、引手自体の機能が損なわれることがない。
図25に示すように、第1引手90pの引手本体91pの両面に窪みが設けられ、第2引手90qに対向する面の窪みに上側部材120のベースが配置され、これとは反対面の窪みに下側部材110のベースと新たに追加の下側部材110を下側から被覆する被覆部材130が配置される。引手本体91pにはポスト内壁部112が挿通される開口が設けられる。
第2引手90qの引手本体91qの両面を貫通する貫通孔の径は、図25を正面視したときの上側で大きくなっており、これに応じて緩慢な傾斜面が設けられ、この傾斜面にカバー10cの先端側が面接触し、これにより、カバー10cと取付部材10bの間で好適に引手本体91qが挟み込まれる。引手90の十分な強度を確保するため、引手本体91pの開口の開口径を図25を正面視したときの上側で大きくし、貫通孔周りで引手本体91qを部分的に薄肉化すると良い。
<第3実施形態>
図26及び図27を参照して第3実施形態について説明する。図26は、スライドファスナーのファスナースライダーの概略的な側面図である。図27は、スライドファスナーのファスナースライダーの概略的な上面図である。
本実施形態では、第1ファスナー用スライダー80pの第1引手90pではなくそのファスナー用スライダー80が雄部材として機能し、端的には、そのスライダー本体の上面にポスト105が設けられる。より詳細には、第1ファスナー用スライダー80pの第1上翼板81pの上面にポスト105が立設される。このような場合においても、横並びのファスナー用スライダー80の連結を確保できる。
図26及び図27に示すように第1引手90pの引手本体91pがU字状に構成され、その両端が第1上翼板81pの各側縁に軸着し、軸AX80周りに枢動可能である。第1引手90pと第1ファスナー用スライダー80pの第1本体81pの間の軸着態様は任意である。例えば、第1引手90pの一端92の凹部又は穴部が第1上翼板81pの側縁の凸部に嵌合するが、この逆であっても良い。第1引手90pの他端93についても同様である。
図26に示すように、第1引手90pは、第1上翼板81pの上面から突出しない姿勢を取ることができる。これにより、第2ファスナー用スライダー80qの第2引手90qを好適に第1ファスナー用スライダー80pの第1上翼板81p上に倒伏することができる。つまり、第1引手90pにより雄ホック220と雌ホック210のスナップ係合が妨げられない。換言すれば、このように第1引手90pを構成することが望ましい。
<第4実施形態>
図28を参照して第4実施形態について説明する。図28は、スライドファスナーの概略的な正面図であり、雄フックがファスナーテープに設けられる例を示す。
一組のファスナー用スライダー80の一組の引手90の一方に雌ホック210を設け、他方に雄ホック220を設けるのではなく、一組の引手90に雌ホック210を設け、ファスナー用スライダー80の周囲に1以上の雄ホック220を設けても良い。このような場合には、雄ホック220の取付位置でファスナー用スライダー80を位置固定することができる。雄ホック220のポスト105のみを雄部材として設けても良い。
図28は、第1ファスナー用スライダー80pの第1引手90pの雌ホック210が雄ホック220のポスト105から離脱した状態を示し、第2ファスナー用スライダー80qの第2引手90qの雌ホック210が雄ホック220にスナップ係合し、かつ雌ホック210の鍵被係合部50が回転されて雄ホック220のポスト105が雌ホック210から脱着不能若しくは脱着により強い力が必要の状態を示す。
<第5実施形態>
図29を参照して第5実施形態について説明する。図29は、スライドファスナーが組み込まれた鞄の概略的な斜視図であり、ファスナースライダーの引手と鞄に設けられた雄部材を併せて示す。
本実施形態では、スライドファスナー300には一つのファスナー用スライダー80を有するものであり、その引手90に雌ホック210が設けられ、雄ホック220がスライドファスナー300の一端の近傍に設けられる。ファスナーチェーンを閉じた状態のファスナー用スライダー80の引手90の雌ホック210を雄ホック220にスナップ係合させ、雌ホック210の鍵被係合部50を回転させれば雌ホック210と雄ホック220を脱着不能若しくは脱着を非容易とすることができる。つまり、本願発明は、上述の実施形態の如く隣合うファスナー用スライダー80同士を連結及び/又は施錠する場合に限られるものではない。
<第6実施形態>
図30を参照して第6実施形態について説明する。図30は、スライドファスナーの引手の概略的な斜視図である。本実施形態のように、少なくとも雌ホック210が設けられた紐96を引手本体91の取付孔を通して引手本体91に結んでも良い。雄ホック220も紐96に設け、鞄の持ち手やその他の構造物を紐96で周囲し、この状態で雄ホック220と雌ホック210をスナップ係合させ、雌ホック210の鍵被係合部50を回転して雌ホック210と雄ホック220を脱着不能若しくは脱着を非容易としても良い。
<第7実施形態>
図31を参照して第7実施形態について説明する。図31は、スライドファスナーの引手の概略的な上面図である。本実施形態のように、引手90の引手本体91をシリコーン等の弾性材料で構成し、その一端92に取付輪を設け、その他端に雌ホック210を設けても良い。雄側の引手を同様に構成しても良い。
<第8実施形態>
図32乃至図35を参照して第8実施形態について説明する。図32は、スライドファスナーの概略的な斜視図であり、隣合うファスナースライダーが別体の施錠具により連結されている状態を示す。図33は、図32に示した施錠具の分離状態の概略的な上面図である。図34は、図32に示した施錠具の連結状態の概略的な上面図であり、隣合うファスナースライダーが連結された状態を示す。図35は、図34に示す状態の施錠具のX35−X35に沿う概略的な断面図である。
本実施形態においては、スライドファスナー300とは別体の施錠具400を用いて隣合うファスナー用スライダー80を連結し、これにより、意図しないスライドファスナー300の開き、若しくは悪意ある第三者がスライドファスナー300を盗み目的で開けることを抑制可能である。
図32乃至図35に示すように、施錠具400は、独立部材の雌型施錠片410と雄型施錠片430を含む。改めて説明するまでもなく、雄型施錠片430が「雄部材」であり、雌型施錠片410が「雌部材」である。
雌型施錠片410の円盤状の本体部411に雄ホック220が設けられ、雄型施錠片430の円盤状の本体部431に雌ホック210が設けられる。本体部411の外周縁にはL字状に先端側で屈曲した脚部412が連結し、本体部431の外周にも同様に構成された脚部432が連結する。本体部411の外周縁には本体部411と環を成す金属製等のU字状の取付部414が連結し、本体部431の外周にも同様に構成された取付部434が連結する。各取付部に紐やワイヤ等の線状部材415を通して各施錠片を一緒に紐付けて紛失の防止を図ることができる。脚部412の先端には雄ホック220のポスト105が設けられた側と同じ側に凸状の係合部413が設けられ、脚部433の先端にそれと組を為す雌ホック210の鍵被係合部50とは反対側に凸状の係合部433が設けられる。脚部の具体的な形状は任意であり円弧状であっても構わず、先端側の係合部を省略することも可能である。
雌型施錠片410の脚部412を第1ファスナー用スライダー80pの引手取付柱86pと上翼板81pの間の空間に挿通し、雄型施錠片430の脚部413を第2ファスナー用スライダー80qの引手取付柱86qと上翼板81qの間の空間に挿通し、図34に示すように各施錠片の各脚の各先端の各係合部を噛み合わせた状態で雄ホック220と雌ホック210をスナップ係合する。その後、繰り返す説明したように雌ホック210の鍵被係合部50を図3に例示的に示す鍵部材60で回転させて雌ホック210からの雄ホック220のポスト105の脱着を禁止若しくは抑止する。
<第9実施形態>
図36乃至図39を参照して第9実施形態について説明する。図36は、施錠具を示す概略的な模式図である。図37は、施錠具の雌型施錠片の構成を示す模式図である。図38は、施錠具の雄型施錠片の構成を示す模式図である。図39は、施錠具を鞄の防犯用具として用いた状態を示す説明図である。
本実施形態に係る施錠具400は、スライドファスナー300以外の施錠にも用いることができる施錠具である。このような場合においても防犯対策に有効に活用できる。図3に例示の鍵部材60を用いて鍵被係合部50を回転させてホック200をロック状態又は非ロック状態間で切替え可能である。
図36に示す施錠具400を構成する雌型施錠片410及び雄型施錠片430は、各々、皮革や人造皮革等の柔軟性を有する可撓性素材から成る本体部411及び本体部431を含む。図37及び図38の参照から理解できるように、本体部411及び431は、連結リング450内に通された状態で折り返される。雄ホック220又は雌ホック210が、本体部411及び431の重合部分に取付けられる。この完成状態において、各本体部411、431の端部側に雄ホック220又は雌ホック210が設けられ、各本体部411、431の折返し部側に連結リング450が設けられる。連結リング450は、チェーン460の両端に取付けられている。図39から理解できるように、施錠具400により空港の待合席の椅子等の固定構造物と鞄350の持ち手をチェーン460が周囲するようにして括り付けることができ、雌ホック210の鍵被係合部50を回転させて雌ホック210と雄ホック220を脱着不能若しくは脱着非容易に施錠すると良い。
<第10実施形態>
図40を参照して10実施形態について説明する。図40は、ホックを鞄に用いた状態を示す説明図である。本実施形態では、雄ホック220自体が雄部材であり、雌ホック210自体が雌部材である。図40では、鞄350のホック200の雄ホック220と雌ホック210が係合した状態を示す。図3に例示の鍵部材60を用いて鍵被係合部50を回転させてホック200をロック状態又は非ロック状態間で切替え可能である。
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。