JP6084118B2 - 遠心鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、片状黒鉛鋳鉄からなる円筒部材を得る遠心鋳造方法に関する。
片状黒鉛鋳鉄(FC)は、減衰能が高く、耐摩耗性や加工性にも優れるため、例えば、内燃機関用シリンダブロックのシリンダボアに配置されるシリンダスリーブ等の円筒部材として好適に用いることができる。特に、FCの組織中に片状黒鉛が無秩序且つ略均等に分布している場合、すなわち、黒鉛組織の主成分がA型黒鉛である場合に、その機械的性質がとりわけ良好となる。
FCの黒鉛組織の形態は、FCの溶湯の冷却速度によって相違する。具体的には、溶湯の冷却速度が大きくなるに従って、黒鉛組織は、片状黒鉛から共晶状黒鉛を経てチル(セメンタイト)へと遷移してしまう。つまり、良好な片状黒鉛がFC全体に略均等に分布する優れた品質の円筒部材を得るためには、溶湯全体を略均等に且つ低速で冷却する必要がある。しかしながら、溶湯の冷却速度を小さくすると、円筒部材の生産効率が低下するといった問題がある。
ところで、生産効率の向上を図りつつ、主にはダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄、FCD)の円筒部材を高品質に鋳造するための技術として、例えば、特許文献1に示す遠心力鋳造方法が提案されている。この方法では、筒状金型と、該筒状金型の外周を包囲するスリーブとを有する遠心力鋳造機を用いて円筒部材を製造する。
スリーブの周面には、多数の貫通孔が設けられている。この貫通孔を介して、スリーブと筒状金型との間に冷却水を供給することで、筒状金型を冷却する。具体的には、回転する筒状金型内に溶湯を注湯してから、該溶湯が凝固を開始する温度まで、スリーブと筒状金型の間に貫通孔から冷却水を供給して筒状金型内の溶湯を急冷する。そして、溶湯が凝固を開始してから完了するまでの間は、冷却水の供給を止めて溶湯を自然冷却する。これによって、鋳造組織中にセメンタイトが形成されることを抑制して溶湯の冷却時間を短縮しつつ、得られる鋳造品の耐食性を向上させることを試みている。
特開2003−103352号公報
特許文献1記載の遠心力鋳造方法は、上記の通り、FCDからなる円筒部材の品質向上を図るべく、冷却水を用いて筒状金型の冷却速度を変化させるものである。すなわち、晶出物は球状黒鉛である。このため、如何にすれば片状黒鉛(A型黒鉛)が略均等に分布する品質に優れた円筒部材が得られるか等に関する知見を得ることはできない。
また、特許文献1記載の遠心力鋳造方法では、注湯前、及び溶湯が凝固している最中には冷却水の供給を停止し、注湯直後、及び溶湯が凝固して鋳造品となった後に、室温程度の冷却水を供給する(換言すれば、冷却水を間欠供給する)ようにしているので、数百℃程度の高温となった筒状金型や、鋳造品である円筒部材が急冷されることになる。このため、円筒部材に残留応力が発生してしまい、円筒部材の加工時等に変形が生じる可能性がある。また、この温度差によって筒状金型が変形して、筒状金型の寿命が縮まることも懸念される。
さらに、冷却水で冷却速度を制御しようとする場合、冷却水の流量が筒状金型の長手方向でばらつくこと等によって、筒状金型の冷却が不均等となることがある。この場合、溶湯ないし円筒部材の冷却速度がばらつき、その結果、円筒部材中の片状黒鉛の分布が不均等になり、高品質の円筒部材を得ることが困難になる懸念がある。
本発明は、この種の問題を解決するものであり、筒状金型や溶湯を略均等に冷却でき、生産効率の向上を図りつつ、良好な片状黒鉛が略均等に分布する品質に優れた片状黒鉛鋳鉄からなる円筒部材を得ることが可能な遠心鋳造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、筒状金型内に注湯した鋳鉄の溶湯を、前記筒状金型の回転時の遠心力によって該筒状金型の内周面に沿わせながら凝固させ、片状黒鉛鋳鉄からなる円筒部材を得る遠心鋳造方法であって、
前記溶湯が、該溶湯中に片状黒鉛が晶出する共晶温度である間、前記筒状金型を、前記片状黒鉛の主成分がA型黒鉛となる冷却速度が得られる第1回転数で回転させて前記溶湯を冷却
前記溶湯の温度が下降して前記共晶温度を下回った時点で、前記筒状金型を前記第1回転数より大きい第2回転数で回転させて前記溶湯をさらに冷却することを特徴とする。

なお、「片状黒鉛の主成分がA型黒鉛となる冷却速度」とは、下記の式(1)で算出されるA型黒鉛率が50%以上であることを意味する。
A型黒鉛率=(A型黒鉛の面積/全黒鉛の面積)×100 …(1)
A型黒鉛の面積、及び全黒鉛の面積は、顕微鏡の観察視野から求めることができる。
この遠心鋳造方法では、溶湯が、片状黒鉛が晶出する温度域(晶出温度)である間は、筒状金型の回転数を第1回転数とし、溶湯が晶出温度を下回った後は、筒状金型の回転数を第2回転数とする。本発明者らの鋭意検討によれば、筒状金型が高速で回転するほど筒状金型の内周面に対する溶湯の接触圧が大きくなるため、溶湯の温度が低下し易い。すなわち、溶湯の冷却速度は、筒状金型の回転数に応じて変化し、該回転数が大きくなるほど冷却速度も大きくなる。
A型黒鉛を晶出させるためには冷却速度を小さくする必要があり、このためには、片状黒鉛の晶出温度である間の筒状金型の回転数(第1回転数)を小さくする必要がある。そこで、本発明では、溶湯の温度が片状黒鉛の晶出温度を下回った後の筒状金型の回転数(第2回転数)を大きくするようにしている。これによって、溶湯の冷却速度、すなわち、片状黒鉛(主にはA型黒鉛)が晶出した後の冷却に要する時間を短縮することができる。その結果、A型黒鉛を主成分とする片状黒鉛が分散して機械的性質が良好な片状黒鉛鋳鉄を効率よく得ることができる。換言すれば、生産効率を向上させつつ、円筒部材の品質を向上させることができる。
さらに、冷却速度を大きくすることによって円筒部材の凝固収縮を促進できるため、筒状金型から円筒部材を容易に離型することが可能になる。
また、筒状金型の回転数を調節することによって冷却速度を制御するようにしているので、冷却水を間欠的に供給する場合のように円筒部材(鋳造品)が急冷されることを回避できる。これによって、円筒部材に残留応力が発生することを抑制できるため、円筒部材の加工時の変形等を抑制することができる。
加えて、回転数の制御による冷却では、冷却水を用いた筒状金型の冷却に比して、筒状金型ないし溶湯を略均等に冷却することができる。すなわち、冷却速度のばらつきを抑制できるため、全体にわたって良好な片状黒鉛(主にはA型黒鉛)が略均等に分布し、優れた品質の円筒部材を得ることが可能である。また、筒状金型に温度差による変形が生じることを抑制でき、筒状金型の耐久性を向上させることができる。
上記の遠心鋳造方法において、前記溶湯の温度が共晶温度に到達した時点で、前記筒状金型の回転数を前記第1回転数から前記第2回転数へと変化させることが好ましい。この場合、片状黒鉛鋳鉄(FC)の共晶凝固時は、良好な片状黒鉛が晶出するように筒状金型を小さい速度で冷却することができる。また、この片状黒鉛の晶出を終えた後は、筒状金型を大きい速度で冷却して、冷却に要する時間を短縮することができる。従って、円筒部材の生産効率を向上させつつ、優れた品質の円筒部材を得ることができる。
上記の遠心鋳造方法において、前記筒状金型内に前記溶湯を注湯する前に、前記筒状金型の内周面に塗型材を塗布し、前記円筒部材の外周面に、互いに独立して点在する複数の凸部が形成されるように、前記塗型材に凹部を形成することが好ましい。上記のように円筒部材の外周面に凸部を形成することによって、該凸部を形成しない場合に比して、円筒部材の表面積を増大させることができる。なお、これによって、例えば、円筒部材を鋳ぐるむ場合等に他の金属の溶湯との密着性を向上させることができる。
このように表面積を増大させた円筒部材では、筒状金型との接触面積も増大する。このため、溶湯の冷却速度が大きくなる。従って、筒状金型の回転数を、表面積が小さな円筒部材を作製するときと同一とすると、片状黒鉛の主成分がE型黒鉛やB型黒鉛となり、A型黒鉛が得られ難くなる。しかしながら、本発明の遠心鋳造方法では、上記の通り溶湯が片状黒鉛の晶出温度である間、筒状金型の回転数を小さくするため、溶湯の冷却速度を効果的に小さくすることができる。その結果、表面積を増大させた円筒部材であっても、A型黒鉛を主成分とする片状黒鉛を略均等に分布させることができ、優れた品質の円筒部材を効果的に得ることができる。
本発明によれば、鋳鉄の溶湯を用いて遠心鋳造を行う際、片状黒鉛が晶出する温度域ではA型黒鉛が主成分となるように筒状金型の回転数を小さくして冷却速度を小さくしているものの、片状黒鉛の晶出が終了した後(片状黒鉛の晶出温度を下回った後)は筒状金型の回転数を大きくして冷却速度を大きくするようにしている。これによって、良好な片状黒鉛が略均等に分布して優れた機械的性質を示す円筒部材を効率よく得ることが可能になる。
しかも、筒状金型を回転によって冷却するため、円筒部材の冷却速度を略均等とすることができる。
本実施形態に係る遠心鋳造方法によって得られる円筒部材の概略斜視図である。 図1の円筒部材を得るための遠心鋳造装置の要部概略斜視図である。 図2の遠心鋳造装置の要部概略縦断面図である。 本実施形態に係る遠心鋳造方法及び比較例の遠心鋳造方法における溶湯温度と冷却時間との関係をそれぞれ示すグラフである。 実施例1a〜1c、2a〜2c及び3a〜3cの円筒部材について、筒状金型の相対遠心加速度と、黒鉛組織観察箇所と、A型黒鉛率との関係を示す図表である。
以下、本発明に係る遠心鋳造方法につき好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る遠心鋳造方法は、例えば、片状黒鉛鋳鉄(FC)からなる円筒部材として、シリンダスリーブを作製する場合に好適に適用することができる。
具体的には、シリンダスリーブは、シリンダブロックのボア内に配置され内燃機関を構成するものであり、該シリンダスリーブの内周壁にボア内で往復動作するピストンの側周壁部が摺接する。従って、シリンダスリーブには、良好な摺動性や耐摩耗性等を有することが求められる。そこで、本実施形態では、これらの特性に優れるFCから、図1に示すシリンダスリーブ10を作製する場合を例示して説明する。
先ず、シリンダスリーブ10について説明する。図1に模式的に示すように、シリンダスリーブ10は、外周面に設けられている鋳ぐるみ表面12に、外方に向かって拡開する略円錐状のアンダーカット部を有する複数の凸部14(スパイニー)が設けられている。シリンダスリーブ10は、この鋳ぐるみ表面12が、例えば、アルミニウム合金からなるブロック本体(不図示)に鋳ぐまれることで、シリンダブロックを構成する。
凸部14は、先端が前記アンダーカット部に対応して平坦に形成されている。また、凸部14の鋳ぐるみ表面12からの高さは、シリンダスリーブ10の外径に応じて設定される。例えば、シリンダスリーブ10の外径が60〜100mmである場合、各凸部14の前記高さは0.5〜1.2mmの範囲内に設定されればよい。
このように設けられた凸部14によって、シリンダスリーブ10の鋳ぐるみ表面12と、前記ブロック本体との密着性を向上させることができる。さらに、シリンダスリーブ10は、凸部14が設けられた分、表面積が増加しているため、実際にシリンダスリーブ10が使用される際に、摺動等によってシリンダスリーブ10に発生する熱をブロック本体に良好に伝達することができ、放熱性を向上させることができる。
上記のシリンダスリーブ10は、図2及び図3に示す遠心鋳造装置16によって製造することができる。次に、本実施形態に係る遠心鋳造方法につき、遠心鋳造装置16を使用する場合を例示して説明する。
遠心鋳造装置16は、略水平方向に沿って横臥した筒状金型18と、該筒状金型18の温度を検出する不図示の温度検出器とを備えている。筒状金型18の外周壁には、該外周壁を周回方向に沿って切り欠くようにして2本の環状溝20が設けられている。この環状溝20の底部には、一対のローラ22の外周壁がそれぞれ摺接する。ローラ22は不図示の回転駆動源に連結されている。この回転駆動源の作用下にローラ22の各々が回転動作することに伴って、筒状金型18が回転する。
筒状金型18の一端部には円環状閉塞部材24が嵌着されており、一方、他端部には円環状枠体26が取着されている。円環状枠体26は貫通孔28が設けられることで開口している。この貫通孔28から筒状金型18の内部にトラフ30の注湯管32を挿入する。これによって、トラフ30から注湯管32を介して筒状金型18内にFCの溶湯Lを注湯することができる。
シリンダスリーブ10を製造するに際しては、先ず、溶解炉で調製された溶湯Lがトラフ30内に移される。その一方で、約200℃に加熱された筒状金型18の内周面18a(図3)に不図示の塗型材を塗布する。この塗型材は、断熱材、粘結剤、離型剤、界面活性剤及び水を含んでいる。
筒状金型18に塗布された塗型材は、筒状金型18の熱と界面活性剤の作用下に、その一部が表面張力によって該塗型材の表面から外部に球状に膨出する。この球状の膨出部同士の間に、上記の複数の凸部14(図1)にそれぞれ対応する、複数の凹部が形成される。すなわち、筒状金型18の内周面18a上の塗型材の塗型面に凹部を複数設けることができる。
その後、図3に示すように、貫通孔28を介してトラフ30の注湯管32が筒状金型18の内部に挿入される。この状態でローラ22の回転が開始され、これに追従して筒状金型18が回転動作する。その後、溶湯Lの所定量がトラフ30から筒状金型18の内部に供給され、該筒状金型18の長手方向に沿って流動する。溶湯Lは、さらに、遠心力の作用によって筒状金型18の内周面18aに沿って円筒形状をなすように偏在する。
この際、筒状金型18が高速で回転するほど遠心力が大きくなる。このために筒状金型18の内周面18aに対する溶湯Lの接触圧が大きくなるので、溶湯Lの温度が低下し易い。すなわち、溶湯Lの冷却速度は、筒状金型18の回転数に応じて変化し、該回転数が大きくなるほど溶湯Lの冷却速度も大きくなる。従って、筒状金型18の回転数を調整することで、筒状金型18(溶湯L)の冷却速度を調整することができる。
本実施形態では、前記温度検出器によって検出された筒状金型18の温度に基づいて、筒状金型18の回転数を変化させる。筒状金型18の温度は、該筒状金型18内に注湯された溶湯Lの温度に応じて変化する。従って、温度検出器の測定結果に基づいて、溶湯Lの温度を検出することができる。この溶湯Lの温度が、該溶湯L中にA型黒鉛を主成分とする片状黒鉛が晶出する温度域(晶出温度)であるとき、筒状金型18を第1回転数で回転させる。すなわち、例えば、溶湯Lの温度が、FCの共晶温度(1147℃)である間、筒状金型18の回転数を第1回転数とする。
注湯を行った後、溶湯Lが晶出温度に達するまでの間、すなわち、溶湯Lが液相である間は、第1回転数よりも大きな回転数で筒状金型18を回転させるようにしてもよい。この場合、溶湯Lが晶出温度に降温するまでの時間が短くなるからである。
ただし、本実施形態では、注湯を行う前の筒状金型18の温度が上記の通り略200℃であるため、筒状金型18内に注湯された溶湯Lの温度は、速やかに共晶温度付近まで降下する。すなわち、溶湯が注湯されてから、該溶湯の温度が黒鉛の晶出温度に至るまでは比較的短時間である。このため、上記のようにすることで注湯から晶出温度に至る時間を短縮しても、全鋳造作業に要するサイクルタイムに大差はない。そこで、本実施形態では、図4に実線で示すように、溶湯Lの注湯時から、該溶湯Lが共晶温度である間は、筒状金型18を第1回転数で回転させている。
第1回転数は、回転する筒状金型18の相対遠心加速度(RCF)が90〜120Gとなる値とすることが好ましい。これにより、全体にわたってA型黒鉛率が90%以上であるシリンダスリーブ10を得ることができるからである。ここで、RCFは、次式(2)で表すことができる。ただし、rは回転半径(cm)であり、Nは1分間あたりの回転数(rpm)である。
RCF=1118×r×N2×10-8 ……(2)
このため、第1回転数は、筒状金型18の外周半径に応じて、RCFが上記の値となるように調整されればよい。
筒状金型18を第1回転数で回転させることで、該第1回転数に応じた速度で溶湯Lを冷却する。これによって、溶湯L中にA型黒鉛を良好に晶出させることができる。さらに、回転によって冷却される筒状金型18の冷却速度は、該筒状金型18の全体で略均等となるため、溶湯Lの全体に略均等にA型黒鉛を晶出させることができる。
ここで、A型黒鉛とは、ISO規格に準拠したものであり、互いに略等しい大きさの黒鉛が無秩序且つ略均等に分布した形態である。このA型黒鉛が組織中に略均等に分布することで、FCの機械的性質をとりわけ良好とすることができる。
上記の冷却によって筒状金型18の温度が降下して溶湯Lの共晶温度未満になった時点で、筒状金型18の回転数を第2回転数へと変化させる。
第2回転数は、筒状金型18のRCFが130G以上となる値である。すなわち、第2回転数は、第1回転数よりも大きく、筒状金型18の回転数を第1回転数から第2回転数に変化させることで、筒状金型18の冷却速度を大きくすることができる。従って、溶湯L中に片状黒鉛を晶出させる間は、溶湯Lの冷却速度を小さくし、該片状黒鉛が晶出し終えた後は、筒状金型18の冷却速度を大きくすることができる。
なお、第2回転数は、筒状金型18のRCFが150G以下となる値であることが好ましい。この場合、シリンダスリーブ10の組織中にセメンタイトが晶出することを効果的に抑制できる。すなわち、シリンダスリーブ10の品質をより向上させることができる。
上記のように筒状金型18内で回転しつつ冷却されることで、溶湯Lは、塗型材の凹部を覆って充填され、この塗型材の形状が転写される。これにより、筒状金型18内には、円筒形状を有し、且つ外周面に複数の凸部14を有する鋳ぐるみ表面12が形成されたシリンダスリーブ10が製造される。
次に、筒状金型18の一端部から円環状枠体26を取り外した後、この端部側から、シリンダスリーブ10を引き抜いて塗型材とともに取り出す。この際、上記の通り、片状黒鉛が晶出した後の筒状金型18の冷却速度を大きくしているため、溶湯Lの凝固収縮が促進されている。従って、筒状金型18からシリンダスリーブ10を容易に取り出すことができる。
その後、シリンダスリーブ10の外周壁に付着した塗型材をショットブラスト処理等によって除去すれば、A型黒鉛が略均等に分布する、優れた品質のシリンダスリーブ10を得ることができる。
以上の通り、本実施形態の遠心鋳造方法では、溶湯L中に、片状黒鉛の晶出を終えた後は、筒状金型18を大きい速度で冷却して、冷却に要する時間を短縮することができる。従って、シリンダスリーブ10の品質を向上させるとともに、その生産効率を向上させることができる。
ここで、溶湯Lの冷却が完了するまでに要する時間についての比較結果を図4に示す。図4の実線のグラフは、本実施形態の遠心鋳造方法における溶湯Lの冷却時間と温度の関係を示している。また、図4の破線及び一点鎖線のグラフは、比較例の遠心鋳造方法における溶湯Lの冷却時間と温度との関係を示している。
具体的には、実線のグラフは、溶湯LがFCの共晶温度である間、筒状金型18をRCFが100Gとなる第1回転数で回転させている。そして、溶湯LがFCの共晶温度未満となったとき、筒状金型18をRCFが130Gとなる第2回転数で回転させている。一点鎖線のグラフは、溶湯Lの注湯時から冷却が完了するまでRCFが100Gとなる第1回転数で筒状金型18を回転させている。破線のグラフは、溶湯Lの注湯時から冷却が完了するまでRCFが130Gとなる第2回転数で筒状金型18を回転させている。
図4の破線に示すように、本実施形態の遠心鋳造方法では、筒状金型18の回転数を第1回転数で一定とした場合の冷却時間に比して、第2回転数で一定とした場合の冷却時間に十分に近づけることができる。すなわち、シリンダスリーブ10の冷却に要する時間を十分に短縮することができる。
次に、シリンダスリーブ10中に形成されるA型黒鉛の割合について、以下に示す比較実験を行った。この比較実験では、回転する筒状金型内でFCの溶湯を冷却して長手方向の長さが2360mmの試験用円筒部材を作製した。そして、筒状金型の注湯口側の試験用円筒部材の一端部から長手方向に沿って550mm、1450mm、2350mmの箇所をそれぞれ黒鉛組織観察箇所とした。この黒鉛組織観察箇所で切断した試験用円筒部材の切断面をラップ盤で鏡面加工した後、表層から1.5mmの位置を光学顕微鏡(×100)によって観察した。そして、観察領域中の全黒鉛の面積に対するA型黒鉛の面積比からA型黒鉛率を求めた。
上記の比較実験では、溶湯Lが晶出温度にあるときに、RCFが115Gとなる第1回転数で筒状金型を回転させることで、溶湯Lを冷却して試験用円筒部材を得た。これを実施例1とする。この試験用円筒部材の黒鉛組織観察箇所をそれぞれ実施例1a〜1cとして、上記の観察を行った。
溶湯Lが晶出温度にあるときに、RCFが100Gとなる第1回転数で溶湯Lを冷却する以外、実施例1と同様に試験用円筒部材を得て実施例2とした。この試験用円筒部材の黒鉛組織観察箇所をそれぞれ実施例2a〜2cとした。また、溶湯Lが晶出温度にあるときに、RCFが130Gとなる第2回転数で溶湯Lを冷却する以外、実施例1と同様に試験用円筒部材を得て実施例3とした。この試験用円筒部材の黒鉛組織観察箇所をそれぞれ実施例3a〜3cとした。
図5から、実施例1〜3のいずれにおいても、A型黒鉛を主成分とする片状黒鉛を含む円筒部材が得られることが明らかである。
また、図5からは、実施例1、2の試験用円筒部材では、各黒鉛組織観察箇所においてA型黒鉛率が90%以上であるのに対し、実施例3の試験用円筒部材では、黒鉛組織観察箇所によってはA型黒鉛率が小さいことが認められる。このことから、筒状金型の第1回転数を適切な回転数に設定することにより、円筒部材の長手方向にわたって略均等にA型黒鉛を分布させられることが分かる。
以上のように、溶湯Lが片状黒鉛の晶出温度である間、筒状金型18を適切な第1回転数で回転させることによって、溶湯L中にA型黒鉛を略均等に晶出させることができる。また、溶湯Lが前記晶出温度未満となった後、筒状金型18の回転数を第2回転数とすることで、シリンダスリーブ10の冷却に要する時間を十分に短縮することができる。その結果、シリンダスリーブ10の品質及び生産効率をともに向上させることが可能になる。
また、筒状金型18の回転数によって溶湯Lの冷却速度を調整するため、冷却水を用いる場合等に比して、溶湯Lの部分毎に冷却速度がばらつくこと等を効果的に抑制することができる。従って、シリンダスリーブ10全体に良好なA型黒鉛を略均等に分布させて、優れた品質のシリンダスリーブ10を得ることができる。また、筒状金型18自体についても、全体を略均等に冷却することができるため、温度差による変形が生じることを抑制できる。その結果、筒状金型18の耐久性を向上させることができる
また、冷却水の間欠供給によって溶湯Lが急冷されることもないため、シリンダスリーブ10に残留応力が発生することを抑制できる。これによって、シリンダスリーブ10の加工時等に変形が生じることを抑制できる。
さらに、上記の通り、鋳ぐるみ表面12に複数の凸部14を有する分、表面積が大きいシリンダスリーブ10を作製する場合であっても、片状黒鉛の晶出温度である間の溶湯Lの冷却速度を効果的に小さくすることができる。これによって、組織中にA型黒鉛を略均等に分布させることができ、優れた品質の円筒部材を効果的に得ることができる。
その他、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
10…シリンダスリーブ 12…鋳ぐるみ表面
14…凸部 16…遠心鋳造装置
18…筒状金型 18a…内周面
20…環状溝 22…ローラ
24…円環状閉塞部材 26…円環状枠体
28…貫通孔 30…トラフ
32…注湯管

Claims (3)

  1. 筒状金型内に注湯した鋳鉄の溶湯を、前記筒状金型の回転時の遠心力によって該筒状金型の内周面に沿わせながら凝固させ、片状黒鉛鋳鉄からなる円筒部材を得る遠心鋳造方法であって、
    前記溶湯が、該溶湯中に片状黒鉛が晶出する共晶温度である間、前記筒状金型を、前記片状黒鉛の主成分がA型黒鉛となる冷却速度が得られる第1回転数で回転させて前記溶湯を冷却
    前記溶湯の温度が下降して前記共晶温度を下回った時点で、前記筒状金型を前記第1回転数より大きい第2回転数で回転させて前記溶湯をさらに冷却することを特徴とする遠心鋳造方法。
  2. 請求項1記載の遠心鋳造方法において、前記第1回転数は、前記筒状金型の相対遠心加速度が90〜120Gとなる値であり、前記第2回転数は、前記筒状金型の相対遠心加速度が130〜150Gとなる値であることを特徴とする遠心鋳造方法。
  3. 請求項1又は2記載の遠心鋳造方法において、前記筒状金型内に前記溶湯を注湯する前に、前記筒状金型の内周面に塗型材を塗布し、前記円筒部材の外周面に、互いに独立して点在する複数の凸部が形成されるように、前記塗型材に凹部を形成することを特徴とする遠心鋳造方法。
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