JP6740767B2 - 薄肉鋳片の製造方法及び薄肉鋳片の製造装置 - Google Patents
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Description
このため、例えば特許文献1においては、ダミーシートに連結するように補強部材を配置し、この補強部材を溶融金属で鋳包ませることにより、鋳造開始時の薄肉鋳片の強度を確保する技術が提案されている。
従来の双ドラム式連続鋳造装置においては、鋳造開始時には、ダミーシートを冷却ドラムで挟み込み、冷却ドラムの回転を停止した状態で溶湯を供給している。そして、一定量の溶湯が溜まった時点で冷却ドラムの回転を開始して鋳造を開始している。なお、冷却ドラム間に溶湯を溜めすぎて凝固が過度となると、溶融金属溜まり部内で凝固した部分が楔となってしまうため、従来は比較的短時間で溶湯を供給している。
また、鋳片の最下端にこぶ(肥大部)が形成されるため、鋳片が自重で破断しやすくなり、鋳片の製造を安定して行うことができなくなるおそれがあった。
また、最下端のこぶ(肥大部)を冷却ドラムで圧下して排出する際に、冷却ドラムにダメージを与えるおそれがあった。
さらに、冷却ドラムの回転を停止した状態での湯面センシングと冷却ドラムの回転起動タイミング制御のために、複雑な設備と制御を要するといった問題があった。
尚、前記一対の冷却ドラムの間にダミーシートを挿入した後に、ダミーシートと前記冷却ドラムが接触していると、鋳造開始後に前記冷却ドラムにすり疵が入る場合があるので、ダミーシートは前記一対の冷却ドラムと非接触の状態で保持されているのが望ましい。
さらに、非定常時間tsにおける溶湯供給速度Qinを、定常鋳造時における溶湯供給速度Qaveの12倍以下としているので、溶湯の跳ね上がりや凝固シェルの再溶解を抑制でき、安定して薄肉鋳片の鋳造を行うことができる。
この場合、シール部材によって、ダミーシートと冷却ドラム及びサイド堰との間の隙間から溶湯が漏れ出すことを抑制でき、鋳造をさらに安定して開始することが可能となる。なお、冷却ドラムを回転させた状態でもシール部材が冷却ドラムとともに回転しないように、シール部材を配置することが好ましい。
この場合、前記ダミーシートにシール部材が配設されているので、このシール部材によってダミーシートと冷却ドラム及びサイド堰との間の隙間が小さくなり、溶湯が漏れ出すことを抑制でき、鋳造をさらに安定して開始することが可能となる。なお、シール部材がダミーシートに配設されているので、冷却ドラムを回転させた状態でもシール部材が冷却ドラムとともに回転することを抑制できる。
また、本実施形態では、溶融金属として溶鋼を用いており、鋼材からなる薄肉鋳片1を製造するものとされている。
このダミーシート保持機構20においては、図4(a)に示すように、ダミーシート7を保持する際には、押圧手段24によってロール部22がアーム部21の一端側に押圧されており、ロール部22によってダミーシート7を挟持するように構成されている。
そして、ダミーシート7が下方に引き出された際には、図4(b)に示すように、ロール部22が下方に移動し、ダミーシート7を解放するように構成されている。
なお、本実施形態では、冷却ドラム11a,11bの回転速度(周速度)は、定常鋳造時の回転速度(周速度)と同一に設定している。
すると、溶鋼3が補強部材9を鋳包むように凝固した時点で、回転する冷却ドラム11a、11bに巻き込まれるようにしてダミーシート7が下方へ排出され、このダミーシート7に続いて薄肉鋳片1が排出される。
ここで、ダミーシート7が下方に排出された際には、図2(b)及び図4(b)に示すように、ダミーシート保持機構20のロール部22が下方に移動し、ダミーシート7の保持が解除される。
ここで、本実施形態では、鋳造開始時から定常鋳造までの非定常時間tSを、定常鋳造時におけるドラム周面上の凝固時間t0の5倍以上に設定している。
また、非定常時間tsにおける溶湯供給速度Qinを、定常鋳造時における溶湯供給速度Qaveの12倍以下に設定している。
以下に、鋳造開始時の条件を上述のように規定した理由について説明する。
また、単位時間当たりの凝固量を示す凝固係数をKとする。なお、凝固係数Kは、薄肉鋳片の組成、冷却条件で設定されるものであり、予め実験的に求めることができる。
鋳造開始後には、溶湯供給速度Qinを溶湯排出速度Qoutよりも高くすることにより、溶鋼溜まり部16に溶鋼3を貯留して湯面高さHを上昇させる。すなわち、Qin−Qoutに応じて湯面高さHが上昇していく。
一方、溶湯供給速度Qinは、時間経過に伴って徐々に下げていき、非定常時間tSが終了して定常鋳造になった時点で、Qin=Qoutとなり、これが定常状態における溶湯供給速度Qaveとなる。
なお、図6において、非定常時間tSにおけるQinとQoutとの差の部分が、溶鋼溜まり部16に貯留された溶鋼量となる。
d=2×K×(R×arcsin(H/R)/V)0.5
さらに、非定常時間tsにおける溶湯供給速度Qinを、定常鋳造時における溶湯供給速度Qaveの12倍以下としているので、溶鋼3の跳ね上がりや凝固シェルの再溶解を抑制でき、安定して薄肉鋳片1の鋳造を行うことができる。
本実施形態では、冷却ドラム11a,11bの回転速度(周速度)は、定常鋳造時の回転速度(周速度)と同一に設定したものとして説明したが、これに限定されることはなく、鋳造開始時における冷却ドラム11a,11bの回転速度(周速度)は適宜変更してもよい。
図1に示す薄肉鋳片の製造装置を用いて、炭素量0.1mass%の炭素鋼からなる薄肉鋳片の製造を行った。
ここで、冷却ドラム径を600mm、冷却ドラム幅を1000mmとした。また、定常鋳造の鋳片厚さを2.0mmとした。
また、従来例においては、鋳造開始時には、冷却ドラムでダミーシートを挟み込み、冷却ドラムを停止した状態で溶鋼溜まり部に溶鋼を供給した。
比較例1においては、非定常時間tSが定常鋳造時におけるドラム周面上の凝固時間t0の5倍未満となっており、鋳造長さ方向の鋳片厚さの変化率が大きく、鋳片をドラムから搬送する際に破断が発生した。
比較例2においては、非定常時間tSにおける溶湯供給速度Qinが定常鋳造時における溶湯供給速度Qaveの12倍を超えており、溶鋼の跳ね上がりや凝固シェルの再溶解により凝固が安定せず、鋳片が破断した。
3 溶鋼(溶融金属)
5 凝固シェル
7 ダミーシート
8 シール部材
10 薄肉鋳片の製造装置
11a 一方の冷却ドラム
11b 他方の冷却ドラム
16 溶鋼溜まり部(溶融金属溜まり部)
20 ダミーシート保持機構
Claims (4)
- 回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属溜まり部に溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
前記溶融金属溜まり部への溶融金属の供給を開始する時点とする鋳造開始時には、前記一対の冷却ドラムの間にダミーシートを挿入してダミーシート保持機構により保持し、前記一対の冷却ドラムを回転させた状態で、前記溶融金属溜まり部に対して前記溶融金属を供給する構成とされており、
前記ダミーシート保持機構は、アーム部と押圧手段を備え、前記アーム部は一端に前記ダミーシートを挟持して保持するロール部と、他端側に軸支部とが配設されており、前記鋳造開始時には、前記押圧手段によって前記軸支部を押圧することで前記ロール部が前記ダミーシートを挟持し、前記ダミーシートが前記冷却ドラムと接触することなく保持され、前記ダミーシートが下方に引き出されるにしたがって前記ロール部が下方に移動して前記ダミーシートの保持を解除する機構を有し、
前記鋳造開始時から、前記溶鋼湯溜まり部における湯面高さが所定位置で安定した時点とする定常鋳造までの非定常時間tSを、定常鋳造時におけるドラム周面上の凝固時間t0の5倍以上とし、
前記非定常時間tSにおける溶湯供給速度Qinを、定常鋳造時における溶湯供給速度Qaveの12倍以下とすることを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。 - シール部材によって、前記ダミーシートと前記冷却ドラム及び前記サイド堰との間の空間の少なくとも一部を塞ぐことを特徴とする請求項1に記載の薄肉鋳片の製造方法。
- 回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰を有し、これら一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属溜まり部に溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造装置であって、
前記一対の冷却ドラムの下流側に、ダミーシートを保持するダミーシート保持機構が設けられており、
前記ダミーシート保持機構は、アーム部と押圧手段を備え、
前記アーム部は、一端に前記ダミーシートを挟持して保持するロール部と、他端側に軸支部とが配設されており、
前記押圧手段によって前記軸支部を押圧することで前記ロール部が前記一対の冷却ドラムの間に挿入された前記ダミーシートを保持する機構と、前記ダミーシートが下方に引き出された際には、前記ダミーシートを開放するよう前記ロール部が下方に移動する機構とを備えることを特徴とする薄肉鋳片の製造装置。 - 前記ダミーシートには、シール部材が配設されていることを特徴とする請求項3に記載の薄肉鋳片の製造装置。
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