以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態の立型両頭平面研削盤10を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。なお、図1(b)においては、図面が煩雑になることを避けるために、後述する駆動モータ22bを含む一部の構成の図示を省略している。
図1を参照して、立型両頭平面研削盤(以下、単に両頭平面研削盤という)10は、凹部12aを有するコラム12を含む。凹部12aは、前方(後述する伝達部材42側)に向かって開口するようにコラム12の中央部に形成される。コラム12の凹部12aには、ワークWを研削するための一対の砥石14a,14bが矢印V方向(この実施形態では上下方向)に間隔をあけて同軸上に対向配置される。この実施形態では、矢印V方向が第1方向に相当する。
この実施形態では、砥石14a,14bはそれぞれ平面視において円環形状を有する。また、この実施形態では、ワークWは平面視において円環形状を有する。したがって、ワークWは断面円形の外周面を有する。
一対の砥石14a,14bは、砥石軸16a,16bによって支持される。砥石軸16a,16bは、砥石軸ユニット18a,18bによって回転自在かつ上下移動可能に支持されるとともに、ベルト20a,20bを介して駆動モータ22a,22bに連動する。したがって、駆動モータ22a,22bの回転駆動力がベルト20a,20bを介して砥石軸16a,16bに伝達され、これによって砥石14a,14bが回転駆動される。
砥石軸16a,16bは、砥石切込装置24a,24bによって上下方向に移動可能である。砥石軸16a,16bが砥石切込装置24a,24bによって上下方向に移動することによって、一対の砥石14a,14bがそれぞれ上下方向に移動する。なお、この実施形態では、下側の砥石14bの高さは、後述するガイドプレート106の上面(研削加工前のワークWの下面)と略等しい高さに予め設定され、砥石14bが磨耗したとき等には上下方向に移動されて微調整される。この実施形態では、砥石切込装置24aが砥石切込手段に相当する。
コラム12に隣接する位置にフロントコラム26が配置される。フロントコラム26に搬送ユニット28および回転駆動ユニット30が支持される。搬送ユニット28は、支持部32、駆動軸34および旋回プレート36を含む。回転駆動ユニット30は、駆動モータ38、駆動軸40および伝達部材42を含む。この実施形態では、搬送ユニット28が送り込み手段に相当し、回転駆動ユニット30が回転駆動手段に相当する。
支持部32は、図示しない駆動モータを含む。駆動軸34は上下方向に延びるように設けられかつ支持部32に回転可能に支持される。駆動軸34の上端部に旋回プレート36が固定される。この実施形態では、旋回プレート36は、矢印V方向に対して直角に設けられる。駆動軸34の下端部は、上記駆動モータに連結される。上記駆動モータによって駆動軸34が回転駆動され、駆動軸34を中心として旋回プレート36が回転する。この実施形態では、旋回プレート36が一方向(たとえば、平面視において時計回り)に180度回転することによって後述する保持部48が供給位置Sから研削位置Gへと移動し、旋回プレート36が他方向に180度回転することによって保持部48が研削位置Gから供給位置Sへと移動する。なお、図1においては、図面が煩雑になることを避けるために保持部48を簡略化して示している。
図2は、両頭平面研削盤10の主要部の構成を示す断面図解図であり、図3は、旋回プレート36を示す平面図であり、図4は、両頭平面研削盤10の主要部の構成を示す平面図である。
図2および図3を参照して、旋回プレート36は、空洞部44および貫通部46を有する。空洞部44は、旋回プレート36の上下方向における略中央部に形成され、底面44aを有する。空洞部44には、回転駆動ユニット30の伝達部材42が回転可能に設けられる。空洞部44についての詳細な説明は省略するが、空洞部44は、伝達部材42が回転可能な十分な大きさでかつ貫通部46に連通するように形成される。
図2を参照して、駆動軸34は中空形状を有する。図1および図2を参照して、駆動軸40は、上下方向に延びるように駆動軸34内に挿通される。駆動軸40の下端部に駆動モータ38が連結され、駆動軸40の上端部に伝達部材42が固定される。駆動モータ38によって駆動軸40が回転駆動され、伝達部材42が回転する。なお、図面が煩雑になることを避けるために図示は省略するが、伝達部材42の外周面にはギア溝が形成される。すなわち、この実施形態では、伝達部材42としてギアが用いられる。
図2および図3を参照して、貫通部46は旋回プレート36を上下方向に貫通する。貫通部46は、水平面に対して平行な支持面46a,46bを含む。支持面46bは支持面46aよりも上方に設けられる。支持面46a,46bは略円環形状を有しかつ同軸上に設けられる。支持面46aは、空洞部44の底面44aに接続されかつ支持面46bの内縁よりも内側まで延びる。支持面46bは、空洞部44と貫通部46とを連通させるための部分には形成されていない。この実施形態では、底面44aと支持面46aとが面一になるように、空洞部44および貫通部46が形成される。
図2および図4を参照して、貫通部46に略円環状の保持部48が設けられる。ワークWは、保持部48によって保持される。ワークWの保持方法については後述する。
保持部48は、円環状の回転部材50および複数(この実施形態では3つ)の保持部材52,54,56を含む。この実施形態では、回転部材50が第1回転部材に相当し、保持部材52が第1保持部材に相当し、保持部材54が第2保持部材に相当し、保持部材56が第3保持部材に相当する。
図5は、回転部材50を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。
図5を参照して、回転部材50は、その外周部に、外側に向かって突出する鍔状の突出部58を有する。突出部58は、回転部材50の上下方向における略中央部に設けられる。突出部58は平面視略円環形状を有し、その外周面に図示しないギア溝を有する。図2を参照して、突出部58は旋回プレート36の支持面46aに摺動可能に支持される。突出部58のギア溝と伝達部材42のギア溝とは互いに噛み合う。これにより、駆動モータ38の回転駆動力が、駆動軸40および伝達部材42を介して回転部材50に伝達される。その結果、回転部材50は、矢印V方向(上下方向)に延びる回転軸60周りに回転する。すなわち、保持部48が回転軸60周りに回転する。この実施形態では、回転軸60が第1回転軸に相当する。
図4を参照して、この実施形態では、平面視において、伝達部材42が反時計回りに回転することによって、保持部48が時計回りに回転する。なお、伝達部材42が時計回りに回転し、保持部48が反時計回りに回転してもよい。
図2および図4を参照して、突出部58の上方を覆うように、支持面46bに円環状のガイドプレート61が支持される。ガイドプレート61は、旋回プレート36から保持部48が外れてしまうことを防止する。この実施形態では、保持部48が上方に少し移動できるように、突出部58の上面とガイドプレート61の下面との間に隙間が形成される。ガイドプレート61は、たとえば、図示しないねじ等の締結部材によって支持面46bに固定される。
図5を参照して、回転部材50は、その内周部に凹部62および段部64,66を有する。凹部62は、平面視において略U字形状を有する収容部62aと、収容部62aを挟むように設けられる一対の溝部62bとを含む。各溝部62bは、平面視において収容部62aの短辺に沿うように延びる。一対の溝部62bは、回転部材50の上下方向における略中央部に設けられる。この実施形態では、一対の溝部62bが第1取付部に相当する。
段部64は、回転部材50の内縁に沿って周方向に延びる底面64aと、底面64aから上方に延びる壁面64bとを含む。底面64aは、水平方向に対して平行に形成される。壁面64bは、平面視において略U字形状を有する。段部66は段部64と同様に形成され、底面64aと同様の底面66aと、壁面64bと同様の壁面66bとを含む。
回転部材50はさらに、複数(この実施形態では4つ)のねじ穴68および複数(この実施形態では4つ)のねじ穴70を有する。複数のねじ穴68は、底面64aから下方に延びるように形成され、複数のねじ穴70は、底面66aから下方に延びるように形成される。複数のねじ穴68は、互いに間隔をあけて回転部材50の周方向に並ぶように設けられ、複数のねじ穴70は、互いに間隔をあけて回転部材50の周方向に並ぶように設けられる。この実施形態では、ねじ穴68が第2取付部に相当し、ねじ穴70が第3取付部に相当する。
図4を参照して、凹部62に保持部材52が設けられ、段部64に保持部材54が設けられ、段部66に保持部材56が設けられる。
図6は、回転部材50、保持部材52およびワークWを示す拡大図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C線断面図である。
図6を参照して、保持部材52は、支持部材72および支持部材72に回転可能に支持されるローラ74を含む。この実施形態では、ローラ74および後述するローラ88,102がそれぞれ第2回転部材に相当する。なお、ローラ74,88,102としては、たとえば、市販のベアリングまたは市販のカムフォロアー等の種々の回転部材を用いることができる。また、ローラ74,88,102として、焼入れされた部材を用いてもよい。
支持部材72は、平面視略矩形状の本体部76、本体部76の両端部から本体部76の側方に突出する一対の摺動部78、および本体部76から保持部48の中心側に向かって突出する一対の突出部80を含む。
本体部76は、凹部76aおよび複数(この実施形態では2つ)の凹部76bを有する。図2および図6(a)を参照して、凹部76aは、上方に向かって開口するように本体部76の上面の中央部に形成される。図6を参照して、一対の凹部76bはそれぞれ、保持部48の径方向に対して略平行に延びるように形成されかつ保持部48の中心とは反対側(回転部材50側)に向かって開口する。
一対の摺動部78は、一対の溝部62bに嵌合可能に形成される。一対の摺動部78は、摺動可能に一対の溝部62bに支持される。この実施形態では、保持部材52が矢印X方向(保持部48の径方向)に移動できるように、一対の摺動部78が一対の溝部62bに支持される。これにより、保持部材52は、保持部48の中心側に向かって進退できる。なお、矢印X方向は、水平方向に対して平行な方向である。
この実施形態では、回転部材50に対して保持部材52が保持部48の周方向に相対的に移動することは、凹部62によって規制される。これにより、保持部材52は、回転軸60(図2参照)を中心として回転部材50と一体的に回転する。
一対の突出部80の間にローラ74が設けられる。ローラ74の少なくとも一部は、ワークWに接触できるように、一対の突出部80よりも保持部48の中心側に突出する。一対の突出部80とローラ74との間には、一対のワッシャ81が設けられる。一対の突出部80に支持されるように、円柱状の軸部材82が設けられる。ローラ74および一対のワッシャ81は、軸部材82を介して一対の突出部80に回転可能に支持される。この実施形態では、軸部材82および後述する軸部材98,103がそれぞれ第2回転軸として機能する。
図7は、ワークW、ローラ74および軸部材82の関係を示す図である。
図7を参照して、矢印V方向に対して直角な平面(この実施形態では水平面)を平面Yとした場合に、軸部材82(ローラ74の回転軸)の向きdは、平面Yに対して平行であってもよく、平面Yに対して傾斜していてもよい。具体的には、軸部材82(ローラ74の回転軸)の向きdと平面Yとがなす角θは、0度以上45度未満に設定される。なお、図6に示す保持部材52においては、軸部材82は、軸部材82の向きdが矢印V方向に対して直角になるように一対の突出部80に支持されている。言い換えると、図7を参照して、軸部材82は、軸部材82の向きdと平面Yとのなす角θが0度になるように一対の突出部80に支持されている。この実施形態では、軸部材82の向きd、後述する軸部材98の向きおよび後述する軸部材103の向きがそれぞれ第2方向に相当する。
図6を参照して、保持部48はさらに、複数(この実施形態では2つ)の付勢部材84を有する。この実施形態では、付勢部材84としてコイルばねが用いられる。なお、付勢部材としてゴム等の他の弾性部材を用いてもよい。一対の付勢部材84は、一対の凹部76bに嵌め込まれる。各付勢部材84の一端部は凹部76bから突出し、回転部材50に支持される。各付勢部材84の他端部は凹部76b内において本体部76に支持される。すなわち、一対の付勢部材84は、回転部材50と本体部76とによって挟まれるように設けられる。これにより、一対の付勢部材84は、保持部材52を保持部48の中心側に向かって付勢する。
図8は、回転部材50、保持部材54およびワークWを示す拡大図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のD−D線断面図である。なお、図8(a)においては、図面が煩雑になることを避けるために、ねじ穴68を図示していない。
図8を参照して、保持部材54は、支持部材86および支持部材86に回転可能に支持されるローラ88を含む。支持部材86は、本体部90および本体部90から保持部48の中心側に向かって突出する一対の突出部92を含む。本体部90は、平面視六角形状を有しかつ側面視逆L字形状を有する。
本体部90は、その中央部に、上下方向に貫通する貫通孔94を有する。本体部90(より具体的には貫通孔94が形成される部分)を底面64a上に載せた状態で、本体部90の上方から貫通孔94およびねじ穴68にねじ96が差し込まれる。ねじ96の先端部がねじ穴68に螺合され、支持部材86が回転部材50の段部64に固定される。これにより、保持部材54は、回転軸60(図2参照)を中心として回転部材50と一体的に回転する。この実施形態では、段部64に複数のねじ穴68が形成されているので、保持部材54(支持部材86)の固定位置を適宜変更することができる。
一対の突出部92の間にローラ88が設けられる。ローラ88の少なくとも一部は、ワークWに接触できるように、一対の突出部92よりも保持部48の中心側に突出する。一対の突出部92とローラ88との間には、一対のワッシャ97が設けられる。一対の突出部92に支持されるように、円柱状の軸部材98が設けられる。ローラ88および一対のワッシャ97は、軸部材98を介して一対の突出部92に回転可能に支持される。
なお、保持部材52(図6参照)の軸部材82(図6および図7参照)と同様に、保持部材54の軸部材98(ローラ88の回転軸)の向きは、平面Y(図7参照)に対して平行であってもよく、平面Yに対して傾斜していてもよい。具体的には、軸部材98(ローラ88の回転軸)の向きと平面Yとがなす角は、0度以上45度未満に設定される。図8に示す保持部材54においては、軸部材98は、軸部材98の向きが矢印V方向に対して直角になるように一対の突出部92に支持されている。言い換えると、軸部材98は、軸部材98の向きと平面Y(図7参照)とのなす角が0度になるように一対の突出部92に支持されている。
図4を参照して、詳細な説明は省略するが、保持部材56は保持部材54と同様の構成を有する。具体的には、保持部材56は、支持部材86、ローラ88、ワッシャ97、および軸部材98と同様の構成の支持部材100、ローラ102、ワッシャ(図示せず)、および軸部材103を含む。支持部材100の貫通孔(図示せず)およびねじ穴70にねじ104が差し込まれ、支持部材100が回転部材50の段部66に固定される。これにより、保持部材56は、回転軸60を中心として回転部材50と一体的に回転する。この実施形態では、段部66に複数のねじ穴70が形成されているので、保持部材56(支持部材100)の固定位置を適宜変更することができる。
なお、保持部材52の軸部材82と同様に、保持部材56の軸部材103(ローラ102の回転軸)の向きは、平面Y(図7参照)に対して平行であってもよく、平面Yに対して傾斜していてもよい。具体的には、軸部材103(ローラ102の回転軸)の向きと平面Yとがなす角は、0度以上45度未満に設定される。図4に示す保持部材56においては、軸部材103は、軸部材103の向きが矢印V方向(図1参照)に対してして直角になるように)支持部材100に支持されている。言い換えると、軸部材103は、軸部材103の向きと平面Y(図7参照)とのなす角が0度になるように支持部材100に支持されている。
図1を参照して、旋回プレート36の下方にガイドプレート106が設けられる。ガイドプレート106の上面の高さは、砥石14bの研削面(上面)と略同一の高さに設定される。ガイドプレート106は、保持部48からワークWが落下することを防止する。また、ガイドプレート106は、旋回プレート36によってワークWが供給位置Sと研削位置Gとの間で搬送される際に、ワークWの下面を滑らせつつワークWを供給位置Sまたは研削位置Gへ案内する。
ガイドプレート106の斜め上方に、開放装置108が設けられる。開放装置108は、側面視略L字状の鉤部108aと、鉤部108aを前後方向および上下方向に移動させる駆動部108bとを含む。
次に、保持部48によるワークWの保持態様について説明する。
図4を参照して、両頭平面研削盤10においては、保持部材52は、一対の付勢部材84によってワークWの外周面に向かって付勢される。これにより、保持部材52(ローラ74)がワークWの外周面に押し付けられ、ワークWの外周面が保持部材54(ローラ88)および保持部材56(ローラ102)に押し付けられる。すなわち、ワークWの外周面に、ローラ74,88,102を圧接させることができる。その結果、保持部48の内側において、保持部材52,54,56によってワークWを保持できる。ワークWに矢印V方向(上下方向)の力が作用した場合には、ローラ74,88,102が回転することによって、保持部48に対してワークWを矢印V方向(ワークWの軸方向)に移動させることができる。この実施形態では、保持部48は、ワークWの上端部が保持部48よりも上方に突出しかつワークWの下端部が保持部48よりも下方に突出するようにワークWを保持する。
図9は、保持部48を示す平面図である。以下、図9を参照しつつ、保持部材52,54,56の位置関係を説明する。以下の説明では、ローラ74とワークWとの接触位置を第1位置P1とし、ローラ88とワークWとの接触位置を第2位置P2とし、ローラ102とワークWとの接触位置を第3位置P3として、保持部材52,54,56の位置関係を説明する。なお、この実施形態では、ワークWの中心Oは、回転部材50の回転軸60(図4参照)上に位置する。また、第1位置P1、第2位置P2および第3位置P3は、ワークWの外周面上の位置である。
図9を参照して、平面視において、ワークWの中心Oを基準として、第2位置P2および第3位置P3は第1位置P1とは反対側に位置する。平面視において、第1位置P1と中心Oとを通る直線L1を基準として、第2位置P2と第3位置P3とは反対側に位置する。
この実施形態では、保持部材54の固定位置を適宜選択することによって、第2位置P2および中心Oを通る直線L2と直線L1とのなす角αを、たとえば、60度、70度、80度および89度に設定できる。同様に、保持部材56の固定位置を適宜選択することによって、第3位置P3および中心Oを通る直線L3と直線L1とのなす角βを、たとえば、60度、70度、80度および89度に設定できる。図9には、角αおよび角βがそれぞれ60度に設定された状態が示されている。なお、保持部材54を固定するための複数のねじ穴68および保持部材56を固定するための複数のねじ穴70は、たとえば、角αと角βとの和が120度以上180度未満になるように形成される。また、ねじ穴68の数およびねじ穴70の数はそれぞれ4つに限定されない。たとえば、ねじ穴68およびねじ穴70の数はそれぞれ、3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。
上述したように、保持部材52は一対の付勢部材84によってワークWの外周面に押し付けられる。これにより、第1位置P1において保持部材52からワークWに力F1が与えられる。ワークWの中心Oを基準として、第2位置P2は第1位置P1とは反対側に位置するので、第2位置P2において、力F1とは逆方向の成分を有する力F2が保持部材54からワークWに与えられる。同様に、中心Oを基準として、第3位置P3は第1位置P1とは反対側に位置するので、第3位置P3において、力F1とは逆方向の成分を有する力F3が保持部材56からワークWに与えられる。
角αおよび角βが等しい場合には、力F2と力F3とは等しくなる。このとき、力F2(または力F3)は下記式(1)によって算出される。
F2(またはF3)=F1/(2cosα) ・・・・(1)
上記式(1)からも分かるように、楔の原理に従って、角αと角βとの和が180度に近づくことによって力F2および力F3は大きくなる。したがって、角αおよび角βがそれぞれ90度に限りなく近い値になるように保持部材54,56を回転部材50に固定することによって、力F2および力F3を十分に大きくできる。たとえば、力F1が50Nである場合に、角αおよび角βをそれぞれ60度に設定すると、力F2および力F3はそれぞれ50Nになるが、角αおよび角βをそれぞれ85度に設定すると、力F2および力F3はそれぞれ285Nになる。さらに、角αおよび角βをそれぞれ86度に設定すると、力F2および力F3はそれぞれ358Nになる。このように、保持部48では、付勢部材84の反発力が小さい場合でも、角αおよび角βを適切に設定することによって、十分な力でワークWを保持できる。これにより、比較的小さい付勢部材84を用いることができ、保持部48を小型に構成できる。その結果、保持部48の厚みを薄くすることができ、ワークWの研削可能な厚みを大きくできる。
次に、両頭平面研削盤10の主要動作を説明する。図10は両頭平面研削盤10の主要動作を示すフローチャートである。
図1および図10を参照して、まず、図示しないローディング装置によって供給位置Sに位置する保持部48に研削待ちのワークWが供給され、保持部48によってワークWが保持される(ステップS1)。具体的には、図1を参照して、まず、開放装置108の鉤部108aが前後方向および上下方向に移動し、鉤部108aの先端部が保持部材52(図4参照)の凹部76a(図4参照)に引っ掛けられる。その状態で、鉤部108aが駆動部108b側に移動する。これにより、鉤部108aによって保持部材52が引っ張られ、保持部材52が保持部48の径方向外側に移動する。鉤部108aによって保持部材52を引っ張った状態で、上述のローディング装置が保持部材52,54,56(図4参照)の内側にワークWを配置する。その後、鉤部108aが上方に移動することによって鉤部108aの先端部が凹部76aから外れる。これにより、図4を参照して、一対の付勢部材84によって保持部材52がワークWの外周面に押し付けられるとともに、ワークWの外周面が保持部材54,56に押し付けられる。より具体的には、ローラ74の外周面がワークWの外周面に押し付けられるとともに、ワークWの外周面がローラ88,102の外周面に押し付けられる。その結果、保持部材52,54,56によってワークWが保持される。すなわち、保持部48によってワークWが保持される。
次に、図1および図10を参照して、搬送ユニット28によって、保持部48に保持されたワークWが一対の砥石14a,14b間に送り込まれる(ステップS3)。具体的には、旋回プレート36が180度回転することによって、保持部48に保持されたワークWが供給位置Sから研削位置Gに搬送される。
次に、回転駆動ユニット30によって保持部48およびワークWが回転される(ステップS5)。具体的には、駆動モータ38の回転駆動力が駆動軸40および伝達部材42を介して回転部材50(図4参照)に伝達され、保持部48が回転する。このとき、保持部48に保持されたワークWは、回転軸60(図2参照)周りに保持部48と一体的に回転する。この実施形態では、回転軸60は、ワークWの外周面よりも内側を通る。
次に、駆動モータ22a,22bによって砥石14a,14bが回転されるとともに、砥石切込装置24aによって上側の砥石14aが予め設定される位置(この実施形態では、砥石14aがワークWに当たる寸前の位置)まで急速下降される(ステップS7)。
次に、砥石14aの切込速度(下降速度)が予め設定される粗研削速度まで減速され、一対の砥石14a,14bによってワークWの粗研削が実施される(ステップS9)。このとき、一対の砥石14a,14bで一時に挟み込まれるのはワークWの一部であるが、ワークWは回転しているのでワークWの研削されるべき全ての面が一対の砥石14a,14b間を通過し研削される。
予め設定される所定の切込位置までの粗研削が終了すれば、砥石14aの切込速度が予め設定される精研削速度まで減速され、一対の砥石14a,14bによってワークWの精研削が実施される(ステップS11)。予め設定される所定の切込位置(仕上げ寸法位置)までの精研削が終了すれば、砥石14aの下降が停止され、スパークアウトが実施される(ステップS13)。
所定のスパークアウト時間が経過すれば、砥石切込装置24aによって上側の砥石14aが迅速に元の位置まで上昇される(ステップS15)。砥石14aの上昇の開始とほぼ同時に、搬送ユニット28によって、保持部48に保持されたワークWが一対の砥石14a,14b間から送り出される(ステップS17)。具体的には、旋回プレート36が180度回転することによって、保持部48に保持されたワークWが研削位置Gから供給位置Sに搬送される。
最後に、図示しないアンローディング装置によって保持部48からワークWが排出される(ステップS19)。具体的には、まず、ステップS1における処理と同様に、開放装置108によって保持部材52を引っ張る。これにより、ワークWは、保持部材52,54,56との圧接から解放される。その状態で、上述のアンローディング装置によって、保持部48からワークWが取り出される。
その後、研削待ちの他のワークWがローディング装置によって保持部48に供給され、ステップS1からステップS19の処理が繰り返され、複数のワークWが順次研削される。
以下、両頭平面研削盤10の作用効果を説明する。
両頭平面研削盤10では、保持部48は、ワークWが矢印V方向(この実施形態では上下方向)に移動できるようにワークWの外周面を保持する。言い換えると、保持部48は、ワークWが軸方向に移動できるようにワークWを保持する。これにより、たとえばワークWの両主面(この実施形態では上面および下面)にうねりがある場合(平面度が悪い場合)でも、従来のように所定部分(たとえば、一対のローラによって挟まれる部分:特許文献1参照)を中心としてワークWが軸方向に揺動してしまうことを防止しつつ、ワークWを回転させることができる。その結果、一対の砥石14a,14bによる研削によって、ワークWの両主面の平面度を十分に向上させることができる。また、両頭平面研削盤10では、保持部48の回転がワークWに伝達されてワークWが回転する。この場合、ワークWを回転させるための装置(たとえばローラ)を、ワークWの両主面上に配置しなくてよい。この実施形態では、ワークWを回転させるための装置をワークWの上面および下面に配置しなくてよい。これにより、ワークWを一対の砥石14a,14bの間に奥深く入り込ませることができるので、ワークWの両主面と一対の砥石14a,14bとの接触面積を大きくすることができる。その結果、一対の砥石14a,14bによる研削によって、ワークWの両主面の平面度を容易に向上させることができる。さらに、両頭平面研削盤10では、保持部48の回転をワークWに伝達するために廻り止め部材を設ける必要が無いので、ワークWの外周面に凹部を形成する必要がない。すなわち、両頭平面研削盤10によれば、外周面に凹部を有しないワークWであっても、研削加工を行うことができる。
両頭平面研削盤10では、複数の保持部材52,54,56によってワークWを安定して保持できる。
両頭平面研削盤10では、一対の付勢部材84によって保持部材52がワークWの外周面に押し付けられるとともに、ワークWの外周面が保持部材54,56に押し付けられる。これにより、保持部材52,54,56によってワークWを十分な力で締め付けて保持できる。また、ワークWの中心Oを基準として、第2位置P2および第3位置P3は第1位置P1とは反対側に位置する。この場合、保持部材52からワークWに与えられる力F1と、保持部材54,56からワークWに与えられる力F2,F3とは、少なくとも逆方向の成分を有する。さらに、第1位置P1と中心Oとを通る直線L1を基準として、第2位置P2と第3位置P3とは反対側に位置する。この場合、力F2と力F3とは、少なくとも逆方向の成分を有する。これらの結果、ワークWをより安定して保持できる。
両頭平面研削盤10では、保持部材52,54,56は、回転部材50よりも内側でワークWに接触するように回転部材50に支持される。この場合、回転駆動ユニット30の回転駆動力を回転部材50に伝達するための部材(この実施形態では、伝達部材42)を、回転部材50の外側に配置できる。これにより、簡単な構造で保持部48を回転させることができ、両頭平面研削盤10の構造を簡単にできる。その結果、両頭平面研削盤10の製造コストを抑制できる。
両頭平面研削盤10では、保持部材54および/または保持部材56の取り付け位置を変えることによって、一対の付勢部材84を取り換えることなく、保持部48のクランプ力(ワークWを締め付ける力)を調整できる。したがって、両頭平面研削盤10では、ワークWの研削条件等に応じて、保持部48のクランプ力を容易に調整できる。また、クランプ力を調整するための複雑な機構が必要無いので、保持部48を小型に構成できる。
両頭平面研削盤10では、矢印V方向(ワークWの軸方向)に対して直角な平面Yとローラ74,88,102の各回転軸(この実施形態では、軸部材82,98,103)の向きとのなす角が0度以上45度未満に設定される。これにより、ワークWがローラ74,88,102に対してワークWの周方向に移動することを抑制できるので、保持部48の回転をローラ74,88,102を介してワークWに確実に伝達できる。また、ローラ74,88,102が回転することによって、ワークWを矢印V方向(ワークWの軸方向)に円滑に移動させることができる。
両頭平面研削盤10では、ローラ74,88,102の各回転軸(この実施形態では、軸部材82,98,103)の向きは、たとえば矢印V方向に対して直角に設定される。言い換えると、ローラ74,88,102の各回転軸の向きと平面Yとのなす角は、たとえば0度に設定される。この場合、ワークWを矢印V方向にさらに円滑に移動させることができる。また、ローラ74,88,102が各回転軸を中心として平面Yに対して平行な方向(この実施形態では水平方向)に回転することが確実に防止される。この場合、ワークWの外周面においてローラ74,88,102との接触部には、平面Yに対して平行な方向(ワークWの周方向)に十分な摩擦力が発生する。これにより、保持部48の回転をワークWにより効率よく伝達できる。
上述の実施形態では、ワークWの研削時には砥石14bの位置が固定されているが、砥石切込装置24bによって砥石14bを上昇させつつワークWの研削を行ってもよい。
上述の実施形態では、1つの保持部48を有する両頭平面研削盤10について説明したが、両頭平面研削盤が複数の保持部を有していてもよい。
図11は、この発明の他の実施形態の両頭平面研削盤10aを示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は(a)のE−E線断面図である。なお、図11(b)においては、図面が煩雑になることを避けるために、駆動モータ22bを含む一部の構成の図示を省略している。また、以下における両頭平面研削盤10aの説明では、両頭平面研削盤10と異なる構成を有する部分についてのみ説明し、両頭平面研削盤10と同じ構成を有する部分についての説明は省略する。
図11を参照して、両頭平面研削盤10aが上述の両頭平面研削盤10(図1参照)と異なるのは、搬送ユニット28の代わりに搬送ユニット28aを有する点、回転駆動ユニット30の代わりに回転駆動ユニット30aを有する点、および一対の保持部48を有する点である。
搬送ユニット28aが搬送ユニット28と異なるのは、旋回プレート36の代わりに旋回プレート36aを有する点である。回転駆動ユニット30aが回転駆動ユニット30と異なるのは、駆動モータ38の代わりに一対の駆動モータ38aを有する点、駆動軸40の代わりに一対の駆動軸40aを有する点、および伝達部材42の代わりに一対の伝達部材42aを有する点である。
旋回プレート36aは、駆動軸34の上端部に固定される。したがって、旋回プレート36aは旋回プレート36と同様に、駆動軸34を中心として一方向および他方向に回転する。旋回プレート36aは、平面視において略長方形状を有しかつその中央部に空洞部(図示せず)を有する。旋回プレート36aの空洞部には、回転駆動ユニット30aの一対の伝達部材42aが配置される。各伝達部材42aは略円板形状を有しかつその外周面にギア溝(図示せず)を有する。一対の駆動モータ38aと一対の伝達部材42aとは、一対の駆動軸40aによって連結される。一方の駆動モータ38aによって一方の駆動軸40aが回転駆動されることによって一方の伝達部材42aが回転し、他方の駆動モータ38aによって他方の駆動軸40aが回転駆動されることによって他方の伝達部材42aが回転する。
一対の保持部48は、平面視において一対の伝達部材42aを間に挟むように設けられる。詳細な説明は省略するが、旋回プレート36aは、旋回プレート36と同様の構成によって保持部48を回転可能に支持する。
一方の伝達部材42aのギア溝(図示せず)は一方の保持部48の回転部材50(図9参照)のギア溝(図示せず)に噛み合い、他方の伝達部材42aのギア溝(図示せず)は他方の保持部48の回転部材50(図9参照)のギア溝(図示せず)に噛み合う。このような構成により、一方の伝達部材42aが回転することによって一方の保持部48が回転し、他方の伝達部材42aが回転することによって他方の保持部48が回転する。
詳細な説明は省略するが、両頭平面研削盤10aにおいても、図10を用いて説明したステップS1からステップS19と同様の処理によってワークWの研削加工が実施される。このとき、両頭平面研削盤10と同様に保持部48によってワークWが保持されるので、両頭平面研削盤10aにおいても両頭平面研削盤10と同様の作用効果が得られる。
両頭平面研削盤10aでは、一方の保持部48が研削位置Gに位置している際には、他方の保持部48は供給位置Sに位置する。これにより、一方の保持部48に保持されたワークWの研削加工を行いつつ、他方の保持部48に対してワークWの入れ替えを行うことができる。すなわち、両頭平面研削盤10aでは、ワークWの研削加工を行いつつ、研削済みのワークWと研削待ちのワークWとの入れ替えを行うことができる。これにより、両頭平面研削盤10aの処理能力が向上する。
上述の実施形態では、ローラ74,88,102を有する保持部材52,54,56について説明したが、保持部材がローラを有していなくてもよい。
図12は、ローラを有しない保持部材110,112,114を備えた保持部48aを示す平面図である。なお、以下における保持部48aの説明では、保持部48と異なる構成を有する部分についてのみ説明し、保持部48と同じ構成を有する部分についての説明は省略する。
図12を参照して、保持部48aが保持部48と異なるのは、保持部材52(図9参照)の代わりに保持部材110を有する点、保持部材54(図9参照)の代わりに保持部材112を有する点、および保持部材56(図9参照)の代わりに保持部材114を有する点である。
図13は、回転部材50、保持部材110およびワークWを示す拡大図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のF−F線断面図である。
図13を参照して、保持部材110は、支持部材116および支持部材116に揺動可能に支持される揺動部材118を含む。支持部材116は、平面視略矩形状の本体部120、本体部120の両端部に設けられる一対の摺動部122、および本体部120から保持部48aの中心側に向かって突出する一対の突出部124を含む。
本体部120は、凹部76a(図6参照)と同様の凹部120a、および一対の凹部76b(図6参照)と同様の一対の凹部120bを有する。凹部120aは凹部76aと同様に、開放装置108(図1参照)の鉤部108a(図1参照)を引っ掛けるために形成され、一対の凹部120bは一対の凹部76bと同様に、一対の付勢部材84を嵌めるために形成される。
一対の摺動部122は一対の摺動部78(図6参照)と同様の構成を有し、一対の摺動部78と同様に一対の溝部62bに摺動可能に嵌め込まれる。これにより、保持部材110は、矢印X方向に移動できるように一対の溝部62bに支持される。
一対の突出部124の間に揺動部材118が設けられる。揺動部材118の少なくとも一部は、ワークWに接触できるように、一対の突出部124よりも保持部48aの中心側に突出する。この実施形態では、揺動部材118はその外周面に円弧部118aを有し、円弧部118aがワークWの外周面に接触する。円弧部118aは、側面視において、後述する軸部材126を中心とする仮想円(図示せず)上に位置する。
一対の突出部124に支持されるように、円柱状の軸部材126が設けられる。揺動部材118は、軸部材126を介して一対の突出部124に回転可能に支持される。これにより、揺動部材118は、軸部材126を中心として矢印V方向(この実施形態では上下方向)に揺動できる。この実施形態では、揺動部材118および後述の揺動部材130,134がそれぞれ第2回転部材に相当し、軸部材126および後述の軸部材131,135がそれぞれ第2回転軸として機能する。
なお、この実施形態では、揺動部材118の回転は支持部材116(より具体的には本体部120)によって規制される。したがって、揺動部材118は、360度回転することはできないが、所定範囲内の角度で回転できる。
図12を参照して、詳細な説明は省略するが、保持部材112は、支持部材128および揺動部材130を含み、保持部材114は、支持部材132および揺動部材134を含む。支持部材128,132は、支持部材86,100(図8,9参照)と同様に、段部64,66に対応するように側面視逆L字形状を有する。支持部材128,132は、支持部材86,100(図8,9参照)と同様に、ねじ96,104によって段部64,66に固定される。
揺動部材130,134は、側面視において揺動部材118と同様の形状を有し、外周面に円弧部130a,134aを有する。揺動部材130,134はそれぞれ、揺動部材118と同様に、円柱状の軸部材131,135を介して支持部材128,132に回転可能に支持される。これにより、揺動部材130,134はそれぞれ、軸部材131,135を中心として矢印V方向(上下方向)に揺動できる。
保持部材110と同様に、保持部材112,114においても揺動部材130,134の回転は支持部材128,132によって規制される。したがって、揺動部材130,134は、360度回転することはできないが、所定範囲内の角度で回転できる。
保持部48aにおいては、一対の付勢部材84によって保持部材110がワークWの外周面に押し付けられる。これにより、ワークWの外周面に、揺動部材118(円弧部118a)、揺動部材130(円弧部130a)および揺動部材134(円弧部134a)を圧接させることができる。その結果、保持部48aの内側において保持部材110,112,114によってワークWを保持できるとともに、保持部48aの回転をワークWに伝達できる。すなわち、保持部48aとワークWとを一体的に回転させることができる。また、保持部48aにおいては、揺動部材118,130,134が矢印V方向(上下方向)に揺動することによって、上述の保持部48と同様にワークWを矢印V方向(ワークWの軸方向)に移動させることができる。このような構成によって、保持部48aを用いた両頭平面研削盤においても、上述の両頭平面研削盤10と同様の作用効果が得られる。
なお、軸部材126,131,135(揺動部材118,130,134の回転軸)の向きは、平面Y(図7参照)に対して平行であってもよく、平面Yに対して傾斜していてもよい。具体的には、軸部材126,131,135(揺動部材118,130,134の回転軸)の向きと平面Yとがなす角は、0度以上45度未満に設定される。この実施形態では、軸部材126,131,135の向きがそれぞれ第2方向に相当する。
なお、上述の実施形態では、複数の保持部材の全てがローラを有する場合および複数の保持部材の全てが揺動部材を有する場合について説明したが、保持部がローラを有する保持部材と揺動部材を有する保持部材とを備えていてもよい。
上述の実施形態では、保持部材が第2回転部材としてローラまたは揺動部材を有する場合について説明したが、保持部材が第2回転部材を有していなくてもよい。
図14は、第2回転部材を有しない保持部材136,138,140を備えた保持部48bを示す平面図である。なお、以下における保持部48bの説明では、保持部48と異なる構成を有する部分についてのみ説明し、保持部48と同じ構成を有する部分についての説明は省略する。
図14を参照して、保持部48bが保持部48と異なるのは、保持部材52(図9参照)の代わりに保持部材136を有する点、保持部材54(図9参照)の代わりに保持部材138を有する点、および保持部材56(図9参照)の代わりに保持部材140を有する点である。
図15は、回転部材50、保持部材136およびワークWを示す拡大図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のG−G線断面図である。
図15を参照して、保持部材136は、平面視略矩形状の本体部142、本体部142の両端部に設けられる一対の摺動部144、および本体部142から保持部48bの中心側に向かって突出する突出部146を含む。
本体部142は、凹部76a(図6参照)と同様の凹部142a、および一対の凹部76b(図6参照)と同様の一対の凹部142bを有する。凹部142aは凹部76aと同様に、開放装置108(図1参照)の鉤部108a(図1参照)を引っ掛けるために形成され、一対の凹部142bは一対の凹部76bと同様に、一対の付勢部材84を嵌めるために形成される。
一対の摺動部144は一対の摺動部78(図6参照)と同様の構成を有し、一対の摺動部78と同様に一対の溝部62bに摺動可能に嵌め込まれる。これにより、保持部材136は、矢印X方向に移動できるように一対の溝部62bに支持される。
図14を参照して、詳細な説明は省略するが、保持部材138は、平面視六角形状の本体部148および本体部148から保持部48bの中心側に向かって突出する突出部150を含み、保持部材140は、平面視略六角形状の本体部152および本体部152から保持部48bの中心側に向かって突出する突出部154を含む。保持部材138,140は、支持部材86,100(図8,9参照)と同様に、段部64,66に対応するように側面視逆L字形状を有する。保持部材138,140(本体部148,152)は、支持部材86,100(図9参照)と同様に、ねじ96,104によって段部64,66に固定される。
保持部48bにおいては、一対の付勢部材84によって保持部材136がワークWの外周面に押し付けられる。これにより、ワークWの外周面に、保持部材136(突出部146)、保持部材138(突出部150)および保持部材140(突出部154)を圧接させることができる。その結果、保持部48bの内側において保持部材136,138,140によってワークWを保持できるとともに、保持部48bの回転をワークWに伝達できる。すなわち、保持部48bとワークWとを一体的に回転させることができる。
図16は、保持部48bを備えた両頭平面研削盤10bの主要部の構成を示す断面図解図である。なお、両頭平面研削盤10bが上述の両頭平面研削盤10と異なるのは、保持部48の代わりに保持部48bを有する点のみであるので、保持部48b以外の両頭平面研削盤10bの構成については説明を省略する。
図16を参照して、保持部48bを用いてワークWの研削を行う際には、突出部58が支持面46aに接触しないようにかつガイドプレート61の下面に接触しないように、保持部48bが設けられる。言い換えると、突出部58の下面と支持面46aとの間および突出部58の上面とガイドプレート61の下面との間にそれぞれ隙間が形成されるように、保持部48bの上下方向の位置が設定される。なお、保持部48bとワークWとは互いに圧接しているので、保持部48bの上下方向の位置は、砥石14a,14bを上下動させてワークWの位置を調整することによって調整できる。
上記のように突出部58と支持面46aとの間および突出部58とガイドプレート61との間にそれぞれ隙間を形成することによって、支持面46aとガイドプレート61との間において突出部58を矢印V方向(この実施形態では上下方向)に移動させることができる。これにより、ワークWの研削時に保持部48bとワークWとを一体的に矢印V方向(ワークWの軸方向)に移動させることができる。このような構成によって、両頭平面研削盤10bにおいても、上述の両頭平面研削盤10と同様の作用効果が得られる。
上述の実施形態では、この発明を立型の両頭平面研削盤に適用した場合について説明したが、この発明は横型の両頭平面研削盤にも適用できる。
図17は、この発明のさらに他の実施形態の横型両頭平面研削盤10cを示す側面図であり、図18は、横型両頭平面研削盤10cを示す正面図である。なお、両頭平面研削盤10cによって研削されるワークWは図17にのみ示されている。図18においては、図面が煩雑になることを避けるために、ワークWの図示を省略している。また、図17,18においては、図面が煩雑になることを避けるために保持部48を簡略化して示している。
図17および図18を参照して、横型両頭平面研削盤(以下、単に両頭平面研削盤という)10cは、コラム156を含む。コラム156は、たとえば一体構造の鋳物であり、区画形成された複数の空間(図示せず)を内部に含む。
図18を参照して、コラム156内には、ワークWを研削するための一対の砥石158a,158bが矢印H方向(この実施形態では水平方向)に間隔をあけて同軸上に対向配置される。詳細な説明は省略するが、砥石158a,158bは、砥石14a,14b(図2参照)と同様に円環形状を有する。この実施形態では、矢印H方向が第1方向に相当する。
砥石158a,158bは、砥石軸160a,160bによって支持される。砥石軸160a,160bは、砥石軸ユニット162a,162bによって回転自在かつ左右移動可能に支持されるとともに、ベルト164a,164bを介して駆動モータ166a,166bに連動する。したがって、駆動モータ166a,166bの回転駆動力がベルト164a,164bを介して砥石軸160a,160bに伝達され、これによって砥石158a,158bが回転駆動される。
砥石軸160a,160bは、砥石切込装置168a,168bによって水平方向(左右方向)に移動可能である。砥石軸160a,160bが砥石切込装置168a,168bによって水平方向に移動することによって、砥石158a,158bがそれぞれ水平方向(左右方向)に移動する。この実施形態では、砥石切込装置168a,168bが砥石切込手段に相当する。
コラム156の前壁部156aの略中央部に開口156bが設けられる。図17および図18を参照して、コラム156の前壁部156aにおいて、開口156bよりも駆動モータ166a側にフロントコラム170が設けられる。フロントコラム170には、搬送ユニット28bおよび上述の回転駆動ユニット30が支持される。この実施形態では、搬送ユニット28bが送り込み手段に相当し、回転駆動ユニット30が回転駆動手段に相当する。
図18を参照して、搬送ユニット28bは、上述の搬送ユニット28と同様の機能を有し、中空形状の駆動軸172、上述の旋回プレート36および駆動モータ(図示せず)を含む。駆動軸172は、水平方向(左右方向)に延びるように設けられかつフロントコラム170に回転可能に支持される。駆動軸172の一端部に旋回プレート36が固定され、駆動軸172の他端部に上記駆動モータが連結される。この実施形態では、旋回プレート36は、矢印H方向に対して直角に設けられる。
上述の両頭平面研削盤10と同様に、両頭平面研削盤10cにおいても、旋回プレート36に保持部48およびガイドプレート61(図4参照)が設けられ、保持部48によってワークWが保持される。保持部48は、ワークWが矢印H方向(ワークWの軸方向)に移動できるようにワークWの外周面を保持する。詳細な説明は省略するが、両頭平面研削盤10cの保持部48の各構成要素は、ワークWに対して、上述の両頭平面研削盤10の保持部48の各構成要素と同様に機能する。両頭平面研削盤10cでは、矢印H方向に対して直角な平面と軸部材82,98,103(図4参照)の向きとのなす角は、0度以上45度未満に設定され、好ましくは0度に設定される。
搬送ユニット28bの上記駆動モータによって駆動軸172が駆動され、駆動軸172を中心として旋回プレート36が回転する。図17および図18を参照して、この実施形態では、旋回プレート36が一方向(たとえば、右側面視において時計回り)に180度回転することによって、保持部48は開口156bを通って供給位置S1から研削位置G1へと移動する。旋回プレート36が他方向に180度回転することによって、保持部48は開口156bを通って研削位置G1から供給位置S1へと移動する。
上述の両頭平面研削盤10と同様に、両頭平面研削盤10cにおいても、旋回プレート36の空洞部44(図2参照)に回転駆動ユニット30の伝達部材42が回転可能に設けられる。図18を参照して、回転駆動ユニット30の駆動軸40は、水平方向(左右方向)に延びるように駆動軸172内に挿通される。両頭平面研削盤10と同様に、回転駆動ユニット30の駆動モータ38の回転駆動力が駆動軸40および伝達部材42を介して回転部材50に伝達される。これにより、保持部48およびワークWは、矢印H方向に延びる回転軸60周りに一体的に回転する。この実施形態では、回転軸60が第1回転軸に相当する。両頭平面研削盤10cにおいても、上述の両頭平面研削盤10と同様に、回転軸60は、ワークWの外周面よりも内側を通る。
図17および図18を参照して、コラム156の天井部156cの略中央部には、図示しない開口が設けられる。コラム156の上端部には、天井部156cの開口を覆うカバー174が開閉可能に取り付けられる。コラム156内の部品のメンテナンス(砥石158a,158bの交換等)は、カバー174を開けて上記開口から行うことができる。
次に、両頭平面研削盤10cの主要動作を簡単に説明する。
両頭平面研削盤10cにおいては、まず、図示しないローディング装置によって、供給位置S1に位置する保持部48に研削待ちのワークWが供給され、保持部48によってワークWが保持される。次に、搬送ユニット28bによって、保持部48に保持されたワークWが供給位置S1から研削位置G1に搬送される。すなわち、ワークWが砥石158a,158b間に送り込まれる。
次に、回転駆動ユニット30によって保持部48およびワークWが回転され、駆動モータ166a,166bによって砥石158a,158bが回転される。次に、砥石切込装置168a,168bによって砥石158a,158bが予め設定される位置(この実施形態では、砥石158a,158bがワークWに当たる寸前の位置)まで急速移動される。
次に、砥石158a,158bの切込速度(移動速度)が予め設定される粗研削速度まで減速され、砥石158a,158bによってワークWの粗研削が実施される。予め設定される所定の切込位置までの粗研削が終了すれば、砥石158a,158bの切込速度が予め設定される精研削速度まで減速され、砥石158a,158bによってワークWの精研削が実施される。予め設定される所定の切込位置(仕上げ寸法位置)までの精研削が終了すれば、砥石158a,158bの移動が停止され、スパークアウトが実施される。なお、砥石158a,158bのうちの一方のみを移動させてワークWを研削してもよい。
所定のスパークアウト時間が経過すれば、砥石切込装置168a,168bによって砥石158a,158bが迅速に元の位置まで戻される。また、搬送ユニット28bによって、保持部48に保持されたワークWが研削位置G1から供給位置S1に搬送される。すなわち、研削済みのワークWが砥石158a,158b間から送り出される。
最後に、図示しないアンローディング装置によって保持部48からワークWが排出される。その後、研削待ちの他のワークWがローディング装置によって保持部48に供給される。このようにして、複数のワークWの両主面(この実施形態では右側面および左側面)が順次研削される。
両頭平面研削盤10cにおいても、両頭平面研削盤10と同様に、保持部48は、ワークWが軸方向(矢印H方向)に移動できるようにワークWの外周面を保持する。これにより、両頭平面研削盤10cにおいても、両頭平面研削盤10と同様の作用効果が得られる。
両頭平面研削盤10cのような横型の両頭平面研削盤においても、上述の両頭平面研削盤10aと同様に、一対の保持部48を用いてもよい。
上述の横型の両頭平面研削盤において、保持部48の代わりに、上述の保持部48aまたは保持部48bを用いてもよい。なお、保持部48bを用いる場合には、突出部58(図16参照)と支持面46a(図16参照)との間および突出部58とガイドプレート61(図16参照)との間にそれぞれ隙間が形成されるように、保持部48bの水平方向(左右方向)の位置が設定される。
上述の実施形態では、円環状のワークWを研削する場合について説明したが、この発明に係る両頭平面研削盤が研削できるワークの形状は上述の例に限定されない。この発明に係る両頭平面研削盤は、断面円形の外周面を有する種々のワーク(たとえば、円板状または円柱状のワーク)を研削できる。また、この発明に係る両頭平面研削盤は、外周面に凹部または切欠を有するワークを研削することもできる。
上述の実施形態では、一対の付勢部材84によって第1保持部材(保持部材52,110,136)を付勢する場合について説明したが、第1保持部材を付勢するための付勢部材の数は上述の例に限定されない。たとえば、1つの付勢部材によって第1保持部材を付勢してもよく、3つ以上の付勢部材によって第1保持部材を付勢してもよい。