本発明は、便器に供給する洗浄水を排出する排水口を開閉する排水弁の開閉動作に、貯水筒内に配置されたフロートによる浮力を利用した構成において、フロートを上下に分割し、フロートと貯水筒との間の隙間について、上側のフロート部分における隙間の大きさを、下側のフロート部分における隙間よりも大きくすることで、この隙間における凍結による不具合を回避するとともに、排水弁の動作の安定化させ、早閉まりを防止しようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る洗浄水タンク装置の適用例について、図1を用いて説明する。なお、図1は、本実施形態に係る洗浄水タンク装置が適用された水栓便器の一部断面図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、水洗便器2に対して設けられ、水洗便器2を洗浄する洗浄水の貯水、および水洗便器2に対する洗浄水の排水を行う。水洗便器2は、洗浄水タンク装置1から供給される洗浄水を受けるボウル部3と、ボウル部3の上縁部に形成されたリム部4と、洗浄水タンク装置1から排出された洗浄水をボウル部3へと導く導水路5とを有する。ボウル部3の上端部の内壁面には、導水路5から供給される洗浄水を吐水する吐水口6が開口している。吐水口6から吐水された洗浄水は、ボウル部3の壁面に沿って旋回しながら下降してボウル部3を洗浄する。なお、図示は省略するが、水洗便器2においては、ボウル部3の下方の溜水部に連通する排水トラップ管路や、溜水部の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるために導水路5からの洗浄水を溜水部の上方の位置にて吐水する吐水口等が形成されている。
このような水洗便器2において、洗浄水タンク装置1は、水洗便器2の導水路5の流入側の開口部が位置する後部上面に載置固定された状態で設けられる。すなわち、洗浄水タンク装置1は、その洗浄水タンク12の底部12a(図2参照)に設けられた排水口14が導水路5に対して上側から臨むように設けられる。そして、洗浄水タンク12から排出される洗浄水が、排水口14を介して導水路5へと排水され、ボウル部3へと供給される。なお、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、図1に示すような水の落差による流水作用で汚物を押し出す先落とし式の水洗便器2のほか、他のタイプの水洗便器(例えば、サイホン作用で汚物を吸い込むように排出するサイホン式の便器等)であっても適用可能である。
次に、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1の構成について説明する。図2に示すように、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、外装タンク11と、外装タンク11内に設けられ、水洗便器2に供給される洗浄水を貯水する洗浄水タンク12とを備える。外装タンク11は、例えば陶器製の部材により構成され、上側が開口した箱状の部材であって洗浄水タンク12を収容する空間を形成する本体部11aと、この本体部11aの上側の開口部を覆うように取り付けられる蓋体11bとを有する。
外装タンク11を構成する蓋体11bには、その上面側において手洗い鉢11cが形成されている。手洗い鉢11c上には、手洗い鉢11cに向けて吐水する吐水部11dが立設されている。吐水部11dからは、洗浄水タンク12内の水が供給されて吐水される。吐水部11dから吐水された水は、手洗い鉢11cの中央部に設けられた排出口11eから排出され、洗浄水タンク12内に流入する。排出口11eから洗浄水タンク12内に流入する水は、蓋体11bの下方に設けられた導水部材13により、洗浄水タンク12内における所定の場所に導かれる。
洗浄水タンク12は、外装タンク11を構成する本体部11aの内部において固定された状態で設けられる。洗浄水タンク12の底部12aにおける略中央部には、上述したように導水路5に臨む排水口14が設けられている。排水口14は、洗浄水タンク12の底部12aを開口させるとともに底部12aから下側に向けて突出して下側に開口する筒状の突出部分として設けられる。排水口14は、洗浄水タンク12の貯水空間を導水路5内に連通させる。洗浄水タンク12は、筒状の排水口14を外装タンク11の底部11fに貫通させた状態で、所定の係合部材15によって固定される。洗浄水タンク12は、その底部12aにおいて排水口14の周囲に設けられた複数(図2においては2箇所)の固定部16にて、固定部材17により外装タンク11の底部11fに対して固定される。また、洗浄水タンク12は、その大部分が断熱体18によって被装されている。
洗浄水タンク装置1は、洗浄水タンク12内に水を供給するための洗浄水供給装置20と、使用者等の操作を受けて作動する操作装置30と、操作装置30によって操作され、洗浄水タンク12内を排出するための排水弁装置40とを備える。
洗浄水供給装置20について、図2を用いて説明する。図2に示すように、洗浄水供給装置20は、給水管21と、給水バルブ22と、吐水管23と、給水装置用フロート24と、手洗い給水管25とを有する。
給水管21は、外装タンク11の外部の水道管等の給水源に接続され、給水源からの給水を受ける。給水バルブ22は、給水管21からの給水経路を開閉するバルブ機構である。吐水管23は、給水バルブ22を介して給水管21と連通し、給水源から給水された水を洗浄水タンク12内に吐水する。給水装置用フロート24は、上下方向に延びるロッド26aの下端側に設けられ、ロッド26aおよびロッド26aの上端部に連結される作動アーム26bを介して給水バルブ22に連結される。
洗浄水供給装置20においては、洗浄水タンク12内の水位の変動による給水装置用フロート24の上下動にともない、ロッド26aおよび作動アーム26bを介して給水バルブ22が開閉動作し、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が調整される。本実施形態では、排水弁装置40が作動することによる洗浄水タンク12からの排水開始後に、洗浄水供給装置20による給水が開始される。また、本実施形態の洗浄水供給装置20は、洗浄水タンク12の満水時における洗浄水の水位が所定の水位(図2、位置A1参照。)で一定となるように構成されている。
また、洗浄水供給装置20においては、手洗い給水管25は、給水源からの給水経路が分岐された配管構成であり、給水源からの給水経路において分配された給水を手洗い鉢11c上の吐水部11dへと供給する。洗浄水供給装置20は、洗浄水タンク装置1から水洗便器2への洗浄水の供給開始時(排水開始時)に、給水管25による吐水部11dへの水の供給を開始する。なお、洗浄水供給装置20としては、周知の構成のものを採用することができるため、洗浄水供給装置20の各部の具体的な構成については説明を省略する。
操作装置30について、図2を用いて説明する。図2に示すように、操作装置30は、使用者等による操作を受けることで作動し、排水弁装置40を作動させる。操作装置30は、操作レバー31と、回動伝達部材32と、第1の引上げ部材33と、第2の引上げ部材34と、第1の玉鎖35と、第2の玉鎖36とを有する。
操作レバー31は、外装タンク11の外側に設けられ、使用者等によって回動操作される手動式の操作部である。図2に示す例では、操作レバー31は、本体部11aの側壁から突出するように設けられている。操作レバー31の操作としては、操作レバー31が回動する方向によって、大洗浄用の操作または小洗浄用の操作が行われる。すなわち、操作装置30は、操作レバー31が一方向(例えば図2において手前側)に約90°回動操作されると、排水弁装置40に対して大洗浄用の動作を行い、操作レバー31が他方向(例えば図2において奥側)に約90°回動操作されると、排水弁装置40に対して小洗浄用の動作を行う。ここで、大洗浄は、小洗浄よりも、洗浄水タンク装置1から水洗便器2への洗浄水の排出量が比較的多い洗浄態様である。
回動伝達部材32は、軸体やワイヤ部材やユニバーサルジョイント等により構成され、操作レバー31の回動操作に連動して回動する軸状の構造である。回動伝達部材32は、外装タンク11の外側に設けられる操作レバー31に対して連結機構37を介して連結され、外装タンク11の内部において略水平方向に延設される。回動伝達部材32の、操作レバー31と連結される側(図2において右側)と反対側に、第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34が設けられる。
第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34は、外装タンク11の幅方向(図2において左右方向)の略中央部に配置され、いずれも回動伝達部材32に外嵌された状態で回動伝達部材32から下側に延設されるように設けられたアーム状の部材である。第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34は、いずれも回動伝達部材32の回動動作にともなって揺動する。第1の引上げ部材33の先端部には、第1の玉鎖35の一端(上端)が連結され、第2の引上げ部材34の先端部には、第2の玉鎖36の一端(上端)が連結される。第1の玉鎖35および第2の玉鎖36の他端は、それぞれ排水弁装置40における所定の場所に連結される。
第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34は、回動伝達部材32に対して、次のような動作が行われるように設けられる。回動伝達部材32が大洗浄用の操作として一方向に回動されると、その回動にともなって第1の引上げ部材33のみが一方向に揺動して第1の玉鎖35を引き上げる。また、回動伝達部材32が小洗浄用の操作として他方向に回動されると、その回動にともなって第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34の両方が他方向に揺動して第1の玉鎖35および第2の玉鎖36を引き上げる。なお、本実施形態では、操作装置30は、操作レバー31による機械的な操作を受ける構成であるが、機械的な操作に加え、例えば、回動伝達部材32を回動させるモータに接続される操作ボタンの操作による電気的な操作が行われる構成であってもよい。
排水弁装置40について、図2から図7を用いて説明する。排水弁装置40は、水洗便器2に供給される洗浄水を貯水する洗浄水タンク12に設けられ、洗浄水タンク12内を排出するための構成である。排水弁装置40は、弁体41と、作動杆としてのオーバーフロー管42と、貯水筒43と、フロート50とを備える。
弁体41は、洗浄水タンク12の底部12aに設けられた排水口14を開閉する。弁体41は、ゴム等の合成樹脂材料からなる弾性部材であって、円環状の形状を有し、オーバーフロー管42の下端部においてオーバーフロー管42の外周面から鍔状に突出するような態様で設けられる。本実施形態では、弁体41は、オーバーフロー管42の下端部において上下方向に所定の隙間をもって設けられた上下2段の鍔状の挟持片部42a間に嵌め込まれた状態で、オーバーフロー管42と一体的に設けられる。
オーバーフロー管42は、洗浄水タンク装置1の待機状態、つまり洗浄水タンク12の満水状態において上端開口部を洗浄水タンク12の水位よりも上方に位置させるとともに、下端開口部を排水口14に連通させる。これにより、洗浄水タンク12内の余剰の洗浄水がオーバーフロー管42によって排水口14へと排出される。
オーバーフロー管42は、弁体41を下端部に有し上下動することで弁体41による排水口14の開閉を行う。すなわち、オーバーフロー管42は、上述したように下端部に設けられる上下2段の挟持片部42a間に挟まれた態様で設けられた弁体41を有し、この弁体41とともに一体的に上下動作を行う。オーバーフロー管42とともに上下動作する弁体41により、排水口14が開閉される。このように、オーバーフロー管42と一体的に動作する弁体41は、排水口14を開閉する排水弁を構成する。
オーバーフロー管42の中間部には、上述したように一端(上端)が第1の引上げ部材33に連結される第1の玉鎖35の他端(下端)が連結される係止部材44が設けられている。係止部材44は、周方向の一部が切り欠かれた円環状ないしは筒状の本体部44aを有し、この本体部44aの部分を、オーバーフロー管42の中間部に形成された縮径部分である凹部42bに嵌合させた状態で設けられる。係止部材44は、凹部42bに嵌め込まれた状態で、オーバーフロー管42の軸方向(上下方向)については相対的な移動が規制される(位置決めされる)とともに、オーバーフロー管42の軸方向を回転軸方向とする水平方向の相対的な回転が許容された状態で、オーバーフロー管42に保持される。なお、図6においては係止部材44の図示を省略している。
このような構成により、上述したような操作レバー31の操作に連動した回動伝達部材32の回動にともなう第1の引上げ部材33の揺動によって第1の玉鎖35が引き上げられることで、係止部材44を介して第1の玉鎖35の下端側が連結されたオーバーフロー管42が引き上げられる。これにより、オーバーフロー管42と弁体41とが一体的に上昇して排水口14が開かれた状態となる。ここで、弁体41は、洗浄水タンク12内に貯水されている洗浄水に作用する重力により(ヘッド圧により)、排水口14を閉じる方向(鉛直下方)に押さえられているため、第1の玉鎖35が引き上げられた際、先に係止部材44がオーバーフロー管42に対して回転し、その後、オーバーフロー管42が鉛直上方に引き上げられることになる。
貯水筒43は、オーバーフロー管42を筒軸方向に貫通させるとともに洗浄水を流出させるための小孔43a、43b(図5参照)が形成された構成である。貯水筒43は、フロート50に浮力を与えるための洗浄水を収容する空間を形成するとともに、排水口14からの洗浄水の排水の過程で、収容した洗浄水を小孔43a、43bから排出する。
貯水筒43は、オーバーフロー管42を筒軸方向に貫通させる制御筒45の一部として構成される。制御筒45は、略円筒状の外筒部47と、外筒部47の内側において外筒部47と同軸心状に設けられる略円筒状の内筒部48とを有し、これらからなる2重筒構造を有する。外筒部47および内筒部48は、いずれも筒軸方向(上下方向)の両端を開口させている。
外筒部47と内筒部48との間には、これらを繋ぐ水平隔壁部49が設けられている。水平隔壁部49は、外筒部47における上下方向の中央よりも下側寄りの位置であって、内筒部48の下端部の位置に設けられている。水平隔壁部49は、制御筒45が有する2重筒構造において、外筒部47の内周面47aと内筒部48の外周面48aとをつなぐ円環板状の部分である。
このような構成により、制御筒45において、外筒部47の内周面47aと、内筒部48の外周面48aと、水平隔壁部49の上面49aとによって、上側に開口する貯水可能な円筒状の空間が形成される。かかる円筒状の空間が、フロート50およびフロート50に浮力を与えるための洗浄水を収容する空間となる。このように制御筒45において円筒状の収容空間を形成する部分が、貯水部としての貯水筒43となる。
貯水筒43においては、内筒部48内に、オーバーフロー管42が貫通する。内筒部48は、オーバーフロー管42の上下動作をガイドする機能を有する。また、貯水筒43においては、外筒部47の周壁に、2つの小孔43a、43bがその周壁を貫通するように形成されている。
小孔43a、43bは、貯水筒43に貯水された洗浄水を貯水筒43内から所定の流量で排出させるための開口部である。2つの小孔43a、43bは、外筒部47の周壁の下端部における略同じ高さ位置にて周方向に所定の間隔を開けて設けられている(図5参照)。ここで、2つの小孔43a、43bのうち、一方の小孔43aは、外筒部47の外周側に上下スライド可能に付設された板状の切替部材46のスライド移動により開閉可能に構成されている。つまり、切替部材46による小孔43aの開閉により、貯水筒43内から流出させる洗浄水の流量が調節される。なお、本実施形態では、貯水筒43内の洗浄水を排出させるための小孔が2箇所に設けられているが、この小孔は少なくとも1箇所に設けられればよい。また、本実施形態では、小孔43a、43bは、外筒部47において側面部分である周壁に形成されているが、例えば、貯水筒43を構成する水平隔壁部49において上下方向に貫通するように形成されてもよい。
貯水筒43を構成する制御筒45は、その下側の開口端、つまり外筒部47の下側の開口端を、洗浄水タンク12の底部12aに開口する排水口14に臨ませるように、底部12a上に立設された状態で設けられる。つまり、制御筒45は、排水口14の洗浄水タンク12内への開口部に覆い被さるように配置され、制御筒45の内部空間と排水口14の内部空間とが互いに連通するように設けられる。そして、制御筒45において構成される貯水筒43よりも下側の部分、つまり貯水筒43を構成する外筒部47の水平隔壁部49よりも下側の延設部分には、制御筒45の内外を連通させる流入口45bが形成されている。流入口45bは、洗浄水タンク12内の洗浄水の排水口14からの排出時に、制御筒45の貯水筒43よりも下側の部分において、制御筒45外の洗浄水を制御筒45内に流入させて排水口14へと流入させる。
フロート50は、上述したように制御筒45において構成される貯水筒43内に配置され、貯水筒43内の洗浄水によって得た浮力をオーバーフロー管42に作用させる筒状の部材である。フロート50は、貯水筒43内の洗浄水の水位の変動にともなって浮力により上下動する。
フロート50は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂材料からなり、筒状の外形を有する中空部材である。フロート50は、上側に開口する円筒状の空間を形成する貯水筒43内に、内筒部48を貫通させた態様で設けられる。フロート50は、貯水筒43内の洗浄水の水位の変動にともない、上側の一部を貯水筒43の上側の開口から出没させるように上下動する。
フロート50は、貯水筒43内の洗浄水から得た浮力による上昇に際し、上述したようにオーバーフロー管42に設けられる係止部材44によって係止されることで、オーバーフロー管42に作用する。係止部材44は、フロート50を係止させるため、本体部44aの外側に突出する係止片部44bを有する。係止片部44bは、円環状ないしは筒状の本体部44aの外周面から本体部44aの径方向に沿って突出し、本体部44aの周方向を板厚方向とする突片部である。本実施形態では、係止片部44bは、オーバーフロー管42の軸方向視で放射状となるように、本体部44aの周方向について略等間隔で4箇所に設けられている(図4参照)。
このようにフロート50に対する係止部として係止片部44bを突出させる係止部材44は、浮力により上昇するフロート50の上端面に当接することで、フロート50のストッパとして機能するとともに、フロート50の浮力による上昇作用を受けてその浮力の作用をオーバーフロー管42に伝達させる浮力受け部として機能する。係止片部44bは、これらの機能が発揮できる形状・大きさを有する。
フロート50の浮力は、洗浄水タンク12の満水時には、洗浄水の水圧(ヘッド圧)によって弁体41を介して下方向に押さえ付けられているオーバーフロー管42を上昇させることがないように、また、洗浄水タンク12からの排水時には、弁体41およびオーバーフロー管42に作用する下向きの力よりやや大きくなるように設定される。本実施形態の排水弁装置40は、後述するようにフロート50について上下2段構成を備える。
排水弁装置40においては、フロート50を収容する貯水筒43を構成する制御筒45が、角筒体60内に収容されている。角筒体60は、その横断面形状が略矩形状となる略四角筒状の筐体である。角筒体60の上側の端部は、角筒体60の略四角筒状の外形に沿って四角形状に開放されており、開口縁部として4辺の上縁部60aが存在する。また、角筒体60の下端側には、角筒体60の底面部を円形状に開口させた開口部60bが設けられている。そして、角筒体60は、その下側の開口部60bに、制御筒45の下端部を嵌らせるように、制御筒45を収容する。
このように、角筒体60および角筒体60内に設けられる制御筒45は、洗浄水タンク12の底部12aに開口する排水口14を取り囲むように、底部12aに立設した状態で取り付けられる。そして、オーバーフロー管42が、制御筒45において構成される貯水筒43の内筒部48内を挿通した状態で上下動可能に設けられ、オーバーフロー管42の下端部に設けられた弁体41により、オーバーフロー管42の上下動にともなって排水口14が開閉される。
角筒体60には、一側の側面(図3において右側)に、矩形状の開口部60cが形成されている。開口部60cは、角筒体60の側面において下側の部分に設けられている。上述したように制御筒45とともに排水口14を取り囲むように立設される角筒体60は、制御筒45との関係において、開口部60c側を制御筒45の小孔43a、43b側と反対側に位置させるように設けられる。角筒体60の開口部60cに対しては、開口部60cを開口面積的に段階的に開閉する第1切替弁61および第2切替弁62の2重の弁が設けられ、排水口14からの洗浄水の排出時に角筒体60の外側から角筒体60内へと流入する洗浄水の量を調節する流量調節機構が構成される。
第1切替弁61および第2切替弁62は、いずれも矩形状の開口部60cに対応した略矩形板状の部材であり、角筒体60の外側から開口部60cを閉じるように、回動可能に支持された状態で設けられる。第1切替弁61および第2切替弁62は、開口部60cに対して第1切替弁61を内側、第2切替弁62を外側に位置させ、互いに重なるような態様で設けられる。
第1切替弁61および第2切替弁62は、いずれも略矩形板状の外形における下端部が共通の位置にて回動可能に支持される。具体的には、角筒体60においては、開口部60cが形成される側面側の開口部60cよりも下側に、開口部60cを正面にして左右方向に突出する軸支部60dが設けられている(図4参照)。これに対し、第1切替弁61は、軸支部60dをその軸方向の両側から挟む態様で軸支部60dに回動可能に嵌合するとともに軸支部60dの位置にて軸支部60dの軸方向の両側に突出する軸支部61bが設けられた一対の支持突片部61aを有し、この一対の支持突片部61aによって、軸支部60dに回動可能に支持される。また、第2切替弁62は、第1切替弁61の支持突片部61aの軸支部61bをその軸方向の両側から挟む態様で軸支部61bに嵌合する支持孔部62bが設けられた一対の支持突片部62aを有し、この一対の支持突片部62aによって、第1切替弁61の軸支部61bに回動可能に支持される。以上のような構造により、第1切替弁61および第2切替弁62が、共通の支軸部63(図7参照)において回動可能に支持される。
第1切替弁61は、支軸部63により、開口部60cに対して開いた状態から、開口部60cを閉じる位置、つまり開口部60cが形成された角筒体60の側面に沿う位置までの範囲で回動可能に設けられる。第2切替弁62は、第1切替弁61の外側において、支軸部63により、開口部60cに対して開いた状態から、開口部60cを閉じた状態の第1切替弁61の近傍の位置までの範囲で回動可能に設けられる。
第1切替弁61には、連通口61cが形成されている。つまり、第1切替弁61は、開口部60cを閉じた状態において、連通口61cにより、角筒体60の内側と外側とを連通させる。連通口61cの開口面積は、開口部60cが全開のときより第1切替弁61によって閉じられたときの方が洗浄水の流量が所定量少なくなるように、開口部60cの開口面積よりも所定小さく設定されている。このように、第1切替弁61は、開口部60cを閉じることで、開口部60cにおいて角筒体60の内外を連通させる開口面積を減少させる。
また、第1切替弁61の外側に設けられる第2切替弁62には、第1切替弁61側に向けて延びる挿入突部62cが設けられている。挿入突部62cは、第2切替弁62が閉じる方向に回動して第1切替弁61に近接することで第1切替弁61の連通口61cに挿入される部分である。第2切替弁62は、挿入突部62cを第1切替弁61の連通口61cに挿入させることで、開口部60cにおいて第1切替弁61が閉じられることで減少した角筒体60の内外を連通させる開口面積をさらに減少させる。
第2切替弁62の回動支持側と反対側の端部には、第2の玉鎖36の他端(下端)が連結されている。これにより、回動伝達部材32の回動による第2の引上げ部材34の揺動にともなって第2の玉鎖36が引き上げられることで、第2切替弁62が開口部60c側へと回動するとともに、第1切替弁61も第2切替弁62に押されて開口部60c側へと回動する。また、第1切替弁61および第2切替弁62には、それぞれ動作を安定させるための錘61d、62dが取り付けられている。
以上のように、角筒体60の一側側面においては、支軸部63において回動可能に支持された第1切替弁61および第2切替弁62の2体の弁体により、開口部60cにおける角筒体60の内外の連通面積を段階的に調節して角筒体60の外部から内部へと流入する洗浄水の量を調節する流量調節機構が構成されている。具体的には、本実施形態に係る流量調節機構は、開口部60cを全開させた状態、第1切替弁61のみにより開口部60cを閉じた状態、第1切替弁61および第2切替弁62により開口部60cを閉じた状態の3段階で、開口部60cにおける連通面積を調節する。
以上のような構成を有する本実施形態に係る洗浄水タンク装置1が備える排水弁装置40の構成について、図8を用いて詳細に説明する。図8に示すように、本実施形態に係る排水弁装置40は、上記のとおり上下2段構成のフロート50として、上段フロート51と、上段フロート51の下方に配置される下段フロート52とを有する。
上段フロート51および下段フロート52は、いずれも筒状の外形を有する中空部材であり、上側に開口する円筒状の空間を形成する貯水筒43内に、内筒部48を貫通させた態様で設けられる。上段フロート51および下段フロート52は、互いに独立した別体の部材であり、貯水筒43内の洗浄水の水位の変動にともない、浮力および重力の作用により独立して上下動する。
本実施形態では、上段フロート51の方が、下段フロート52よりも筒軸方向(上下方向)の寸法(長さ)が長い。具体的には、下段フロート52の長さは、上段フロート51の約1/4である。ただし、上段フロート51と下段フロート52の長さの相対的な関係は、特に限定されるものではなく、例えば、下段フロート52の方が上段フロート51よりも長かったり、上段フロート51と下段フロート52が同程度の長さであったりしてもよい。
このようにフロート50として上下に2段重ねに配置された上段フロート51および下段フロート52を備える構成において、各フロート50と、フロート50を外周側から覆う貯水筒43の外筒部47との間の隙間、つまり各フロート50の外筒部47との間の隙間(以下「フロート外側隙間」という。)が、上段フロート51および下段フロート52で互いに異なるように構成されている。具体的には、上段フロート51のフロート外側隙間の方が、下段フロート52のフロート外側隙間よりも大きくなるように構成されている。なお、フロート外側隙間は、制御筒45の筒軸方向視で円環状の隙間となる。
このように下段フロート52よりも上段フロート51の方が大きくされるフロート外側隙間は、図8に示すように、上段フロート51および下段フロート52がいずれも軸心線(筒軸方向に沿う中心線)を制御筒45の軸心線である中心線C1に一致させた状態を仮定した場合において、フロート50の外周面50aと外筒部47の内周面47aとの間の径方向に沿う方向の寸法(以下「面間隙間寸法」という。)に相当する。したがって、フロート外側隙間について、上段フロート51の方が下段フロート52よりも大きいことは、上段フロート51の面間隙間寸法D1が、下段フロート52の面間隙間寸法D2よりも大きいことに相当する。上段フロート51および下段フロート52のフロート外周隙間は、例えば、上段フロート51の面間隙間寸法D1が下段フロート52の面間隙間寸法D2に対して2倍程度の大きさとなるように設定される。
また、フロート外側隙間および面間隙間寸法について、上段フロート51の方が下段フロート52よりも大きいことは、上段フロート51のフロート外側隙間の水平方向の断面積(以下「外側隙間断面積」という。)の方が、下段フロート52の外側隙間断面積よりも大きいことに相当する。ここで、外側隙間断面積は、制御筒45およびフロート50の筒軸方向に垂直な面に平行な断面の面積であり、フロート外側隙間の横断面の面積といえる。したがって、外側隙間断面積は、上記のとおり上段フロート51および下段フロート52がいずれも軸心線を中心線C1に一致させた状態において、面間隙間寸法を規定する直線を中心線C1回りに回転させた場合の軌跡となる円環状の面の面積に相当する。
以上のように、本実施形態の排水弁装置40は、フロート50として、第1のフロートである上段フロート51と、この上段フロート51とは別体で上段フロート51の下方に配置された第2のフロートである下段フロート52とを有する。そして、排水弁装置40は、上段フロート51の外周側の貯水筒43の周面、つまり貯水筒43を構成する外筒部47の内周面47aとの間の隙間(フロート外側隙間)の水平方向の断面積(外側隙間断面積)が、下段フロート52の外側隙間断面積よりも大きいという構成を備える。
本実施形態の排水弁装置40においては、このような上段フロート51と下段フロート52との間における外側隙間断面積の大小関係が、各フロート50の外径の大小関係により規定されている。つまり、上段フロート51および下段フロート52の外側隙間断面積の大きさの違いが、上段フロート51および下段フロート52の外径の差として現れている。言い換えると、本実施形態の排水弁装置40では、上段フロート51および下段フロート52の外側隙間断面積の相対的な大小関係が、各フロート50の外径寸法によって調整されている。
詳細には、図8に示すように、上段フロート51および下段フロート52の外側に位置する貯水筒43の外筒部47は、上下方向の全体にわたって略同一の内径を有する。つまり、貯水筒43の内部空間を形成する壁面のうち外側の壁面である外筒部47の内周面47aは、上下方向と略平行となるように形成されている。
このように上下方向と略平行に形成される外筒部47の内周面47aに対して、上段フロート51および下段フロート52は、外径を互いに異ならせることで、外側隙間断面積を互いに異ならせる。すなわち、上段フロート51は、その外径寸法E1を、下段フロート52の外径寸法E2よりも小さくすることで、外筒部47の内周面47aとの関係で規定される外側隙間断面積を、下段フロート52との関係において相対的に大きくする。
また、本実施形態の排水弁装置40では、上段フロート51および下段フロート52に貫通する筒状の部分である貯水筒43の内筒部48は、上下方向の全体にわたって略同一の外径を有する。つまり、貯水筒43の内部空間を形成する壁面のうち内側の壁面である内筒部48の外周面48aは、外側の壁面である外筒部47の内周面47aと同様に、上下方向と略平行となるように形成されている。こうした貯水筒43の内筒部48の外径に対応して、上段フロート51および下段フロート52は、互いに略同一の内径を有する。
したがって、本実施形態の排水弁装置40では、円筒状の上段フロート51としての周壁部分の厚さF1は、同じく円筒状の下段フロート52の周壁部分の厚さF2よりも薄くなる。ここで、各フロート50の厚さは、フロート50の内周面50bと外周面50aとの間の距離(径方向の寸法)に相当する。すなわち、上段フロート51および下段フロート52の径方向について、各フロート50の内周面の位置は互いに略同一であるのに対し、外周面の位置に関しては、外径寸法が相対的に小さい上段フロート51の方が、下段フロート52よりも外周面を内側に位置させることから、その分、上段フロート51の厚さF1の方が下段フロート52の厚さF2よりも薄くなる。
このように上段フロート51の厚さF1が下段フロート52の厚さF2よりも薄いことは、水平方向の断面積について、上段フロート51の方が下段フロート52よりも小さいことに相当する。ここで、フロート50の水平方向の断面積は、フロート50の筒軸方向に垂直な面に平行な断面の面積であり、フロート50の横断面の面積といえる。このように、本実施形態の排水弁装置40においては、上段フロート51の水平方向の断面積は、下段フロート52の水平方向の断面積よりも小さい。
以上のように、本実施形態の排水弁装置40は、水平方向の断面積が互いに異なる2つのフロート50を上下に2段重ねにし、水平方向の断面積が小さい方のフロート50を上段、水平方向の断面積が大きいフロート50を下段に配置した構成を備える。
以上のような構成を備える本実施形態の洗浄水タンク装置1の動作について説明する。洗浄水タンク装置1による水洗便器2の洗浄が行われる前の待機状態においては、洗浄水タンク12は満水状態(図2、位置A1参照)であり、フロート50が係止部材44の係止片部44bによってオーバーフロー管42に作用するとともに、オーバーフロー管42の下端部の弁体41は、洗浄水タンク12内の洗浄水のヘッド圧により下向きに押さえ付けられた状態となっている(図3参照)。
まず、洗浄水タンク装置1による水洗便器2の洗浄の開始時、使用者等によって、操作レバー31が大洗浄または小洗浄によって一方向または他方向に回動操作される。ここで、操作レバー31が大洗浄に対応する方向に回動操作された場合、回動伝達部材32の回動にともない第1の引上げ部材33のみが揺動し、第1の玉鎖35が引き上げられ、これにともない、係止部材44によって第1の玉鎖35の下端が連結されたオーバーフロー管42が弁体41とともに引き上げられ、排水口14が開いて排水口14からの洗浄水の排水が開始される。ここで、上述したように、第1の玉鎖35が引き上げられた際、先に係止部材44がオーバーフロー管42に対して回転し、その後、オーバーフロー管42が鉛直上方に引き上げられることから、オーバーフロー管42が回転しながら鉛直上方に移動することが防がれ、排水弁装置40の安定した開弁動作が得られる。
一方、操作レバー31が小洗浄に対応する方向に回動操作された場合、大洗浄のときと同様に第1の玉鎖35によってオーバーフロー管42および弁体41が引き上げられて排水口14からの洗浄水の排水が開始されるとともに、それに加えて回動伝達部材32の回動にともない第2の引上げ部材34も揺動し、第2の玉鎖36が引き上げられる。これにより、角筒体60の開口部60cに対して設けられる外側の弁体である第2切替弁62が引っ張られて開口部60cを閉じる方向に回動する。この第2切替弁62の回動によって、第2切替弁62の内側に位置する第1切替弁61も第2切替弁62に押されて回動する。ここで、第1切替弁61および第2切替弁62は、例えば、開口部60cを閉じる位置まで、つまり略鉛直方向となる位置まで回動する。
操作レバー31の操作によるオーバーフロー管42の引上げにより、オーバーフロー管42の上昇にともなって、係止部材44の係止片部44bによってオーバーフロー管42に作用していたフロート50が浮力によって上昇する。つまり、係止部材44の係止片部44bによって浮力による上昇が規制されていたフロート50が、オーバーフロー管42と一体的に係止部材44が上昇することにともなって上昇する。
操作レバー31の操作によるオーバーフロー管42等の引上げが行われた後、操作レバー31は初期位置(待機状態での位置)に戻り、これにともない、第1の引上げ部材33等も初期位置に戻る。ここで、小洗浄の場合は、第2の引上げ部材34が初期位置に戻ることで、第2切替弁62が錘62dの重さを含む自重により初期位置に戻る。ただし、第1切替弁61は、角筒体60の内外の水圧の差によって開口部60cを閉じた状態で保持される。これにより、第1切替弁61の連通口61cの開口面積が開口部60cの開口面積よりも狭い分、開口部60cにおいて角筒体60の内外を連通させる開口面積が減少し、開口部60cを介して角筒体60の外側から内側に流れ込む洗浄水の流量が減少する。この点、大洗浄の場合は、第1切替弁61および第2切替弁62は初期位置を保持したままであることから、開口部60cは全開の状態に維持される。
オーバーフロー管42および弁体41の上昇にともなって排水口14からの排水が開始された後、排水口14からの洗浄水の排出にともなって洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が全体的に低下し、その水位が角筒体60の上縁部60aの付近まで低下した時点から、排水口14からの排水にともなう角筒体60内の洗浄水の水位の低下速度が、角筒体60外の洗浄水の水位の低下速度に対して急激に速くなる。このことは、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が角筒体60の上縁部60aよりも下がることで、排水口14に連通する角筒体60内に対する洗浄水の流入について、角筒体60の上側の開放部からの流入が無くなり、開口部60cからの流入のみとなることに基づく。
こうした角筒体60内の洗浄水の排水口14からの排水の過程において、貯水筒43内に保持されている洗浄水が、小孔43a、43bから角筒体60内へと流出し、その小孔43a、43bからの洗浄水の流出量に応じて、貯水筒43内の洗浄水の水位が所定の速度で低下する。ここで、2つの小孔43a、43bのうち、上述したように切替部材46により開閉可能な一方の小孔43aの開閉によって、貯水筒43内の洗浄水の小孔を介する流出量が調節される。
貯水筒43内の水位の低下にともない、フロート50が下降し、そのフロート50の下降に連動して、オーバーフロー管42および弁体41が下降する。ここで、下降するオーバーフロー管42および弁体41は、係止部材44を介してフロート50に作用した状態でフロート50の下降に追従する態様となり、フロート50の下降速度と同じ速度で下降する。
そして、排水口14からの洗浄水の排出が継続して所定時間経過後、貯水筒43内の洗浄水の水位がフロート50に浮力を与えない位置まで低下し、オーバーフロー管42と一体的に下降する弁体41により排水口14が閉じられ、つまり弁体41が閉弁し、所定のタイミングで排水口14からの排水が終了する。このような弁体41の閉弁動作に関し、上述したような2つの小孔43a、43bのうち一方の小孔43aが切替部材46により閉じられている方が、閉じられていない場合よりも貯水筒43からの洗浄水の流出量が少なくなるため、弁体41が閉じるタイミングが遅くなる。つまり、一方の小孔43aが切替部材46により閉じられている方が、両方の小孔43a、43bが開いている場合よりも排水口14からの洗浄水の排出量が多くなる。このように、切替部材46による一方の小孔43aの開閉の切替えにより、排水口14からの洗浄水の排出量が調節される。
弁体41が閉弁して排水口14からの洗浄水の排出が終了した後は、上述したような洗浄水供給装置20による洗浄水タンク12内への給水により、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が満水時の水位に戻り、洗浄水タンク装置1は待機状態となる。
以上のような洗浄水タンク装置1による一連の洗浄水の排水動作におけるフロート50の動作について、図3、図9、および図10を用いて詳細に説明する。本実施形態の排水弁装置40においては、上述したように、フロート50として、上段フロート51および下段フロート52の上下2段のフロートが設けられている。
このような2段フロート構造においては、待機状態の排水弁装置40(図3参照)から、まず、操作レバー31の操作によってオーバーフロー管42が引き上げられることにともない、上段フロート51が下段フロート52を残してオーバーフロー管42に追従するように浮力によって上昇する(図9参照)。このことは、上述したように上段フロート51の厚さF1が下段フロート52の厚さF2よりも薄く、上段フロート51の外側隙間断面積の方が下段フロート52の外側隙間断面積よりも大きいことに基づく。具体的には次のとおりである。
上述したようにフロート50についての外側隙間断面積を規定するフロート外側隙間(外側隙間断面積)が狭いと、排水口14からの洗浄水の排水の過程において、貯水筒43内のフロート50周りの水の置換が起こりにくくなる。フロート50周りの水の置換が起こりにくくなると、フロート50が上昇しにくくなり、オーバーフロー管42の上昇とフロート50の上昇との間でタイムラグが生じることになる。この点、本実施形態の排水弁装置40においては、上段フロート51については、フロート隙間面積が下段フロート52よりも広いことから、フロート50周りにおける水の置換がスムーズに行われて上昇しやすく、上段フロート51が下段フロート52よりも先に上昇する。フロート外側隙間が比較的広い上段フロート51は、オーバーフロー管42の引上げと同時に素早く上昇する。先に上昇した上段フロート51は、上昇した状態のオーバーフロー管42に設けられた係止部材44によって係止された状態となる(図9参照)。
上段フロート51が上昇した後、所定のタイミングで、下段フロート52が浮力によって上昇する(図10参照)。このような上段フロート51に対する下段フロート52の上昇のタイミングの差は、上述したようにフロート50周りの水の置換のしやすさに関係するフロート外側隙間が上段フロート51よりも狭いことに基づく。すなわち、下段フロート52のフロート外側隙間(図8、面間隙間寸法D2参照)は、上段フロート51のフロート外側隙間(図8、面間隙間寸法D1参照)よりも狭いことから、下段フロート52の周りにおける水の置換がスムーズに行われず、下段フロート52は上段フロート51よりも上昇しにくい。このため、先に上段フロート51が上昇した後、所定時間経過後に、下段フロート52が上昇する。上昇する下段フロート52は、先に上昇して係止部材44に係止された状態の上段フロート51に追突し、上段フロート51に接触した状態となる(図10参照)。
下段フロート52が上昇した後、貯水筒43内の水位の低下にともない、上段フロート51および下段フロート52が一体的に下降し、その上段フロート51および下段フロート52の下降に連動して、オーバーフロー管42および弁体41が下降する。ここで、下降するオーバーフロー管42および弁体41は、係止部材44を介して上段フロート51に作用した状態で上段フロート51および下段フロート52の下降に追従する態様となり、これらのフロート50の下降速度と同じ速度で下降する。
このような貯水筒43内の洗浄水の水位低下にともなう上段フロート51および下段フロート52の下降動作に関しては、下段フロート52の方が、上段フロート51よりもフロート外側隙間が狭いため、下段フロート52の周りにおける水の置換が行われにくいことから、原理的には上段フロート51の下降速度の方が下段フロート52の下降速度よりも相対的に速くなる。したがって、下段フロート52の上側に上段フロート51が位置する構成においては、下降速度が比較的遅くなる下段フロート52によって上段フロート51の下降が規制された状態で、上段フロート51および下段フロート52が一体的に下降する。
そして、排水口14からの洗浄水の排出が継続して所定時間経過後、貯水筒43内の洗浄水の水位が上段フロート51および下段フロート52に浮力を与えない位置まで低下し、オーバーフロー管42と一体的に下降する弁体41により排水口14が閉じられ、つまり弁体41が閉弁し、所定のタイミングで排水口14からの排水が終了する(図3参照)。
以上のような本実施形態の排水弁装置40によれば、フロート50と貯水筒43との隙間における凍結による不具合を回避しながら、洗浄水の排出にともなう動作を安定させることができ、早閉まりを防止することができる。このような効果について具体的に説明する。
まず、本実施形態の排水弁装置40によれば、上述したように、上段フロート51については、フロート隙間面積が下段フロート52よりも広いことから、フロート50周りにおける水の置換がスムーズに行われて上昇しやすくなり、上段フロート51がオーバーフロー管42の引上げと同時に素早く上昇し、オーバーフロー管42の上昇とフロート50の上昇との間でのタイムラグの発生を防止することができる。これにより、引上げ直後のオーバーフロー管42の挙動を安定させることができ、操作レバー31の操作によるオーバーフロー管42の引上げスピードによってオーバーフロー管42やフロート50の動作がばらつくことを抑制することができる。
すなわち、フロート外側隙間が狭いと、フロート50周りにおける水の置換がスムーズに行われずにフロート50が上昇しにくくなりオーバーフロー管42に対する追従性がわるく、オーバーフロー管42の上昇とフロート50の上昇との間でタイムラグが発生する。その結果、フロート50が最高点まで上昇する前に貯水筒43におけるフロート50周りの水位の低下が始まるため、オーバーフロー管42の引上げスピードによってオーバーフロー管42やフロート50の動作がばらつくことになる。この点、本実施形態の排水弁装置40によれば、フロート外側隙間が比較的広い上段フロート51が、オーバーフロー管42の上昇にともなって確実に先に上昇することから、オーバーフロー管42の引上げスピードによる動作のバラツキを抑えることが可能となる。
このように、本実施形態の排水弁装置40は、フロート50としてフロート外周隙間が比較的広い上段フロート51を有することにより、オーバーフロー管42の引上げと同時に素早くフロート50を上昇させることができ、排水口14からの洗浄水の排水にともなうオーバーフロー管42やフロート50等の各部の挙動を安定させることができる。
また、上述したように、下段フロート52については、フロート外周隙間が比較的狭いことから、フロート50の周りにおける水の置換が行われにくい。こうした下段フロート52の周りにおける水の置換の行われにくさが、下段フロート52の下降に際して抵抗となる。このため、下段フロート52の下降に際して、下段フロート52が貯水筒43内において下方へと引き込まれにくくなり、閉弁時において弁体41が洗浄水の勢いで早閉まりすることを防止することができる。
すなわち、フロート外周隙間が広いと、フロート50周りにおける水の置換が過剰に行われ、フロート50に作用する抵抗が少なく、動作が不安定となる。その結果、弁体41の閉弁に際して、フロート50が下方へと引き込まれやすくなり、弁体41が所定のタイミングよりも早く閉じるという早閉まりの現象が生じてしまう。この点、本実施形態の排水弁装置40によれば、フロート外側隙間が比較的狭い下段フロート52が抵抗を受けながら安定して下降することから、フロート50が下方へと引き込まれることによる弁体41の早閉まりを防止することが可能となる。結果として、弁体41が開いてから閉じるまでの時間を確実に確保することができ、規定の洗浄水の排出量を確保することができる。
このように、本実施形態の排水弁装置40は、フロート50としてフロート外側隙間が比較的狭い下段フロート52を有することにより、下段フロート52に隙間の狭さに起因して水の置換が行われにくくなることにより生じる抵抗が作用し、フロート50の下降動作について下方への引込みが生じることなく安定的な動作を得ることができる。結果として、弁体41が閉弁する際に洗浄水の勢いで早閉まりすることを防止することができる。
以上のように、本実施形態の排水弁装置40によれば、弁体41の開弁時、上段フロート51をオーバーフロー管42と同時に素早く上昇させることができ、引上げ直後のオーバーフロー管42の挙動、つまり弁体41の挙動を安定させることができる。一方、弁体41の閉弁時は、下段フロート52の安定した下降動作により、フロート50が引き込まれにくくなり、早閉まりを防止することができる。つまり、本実施形態の排水弁装置40は、上段フロート51および下段フロート52からなる2段フロート構造を備えることで、フロート50について、弁体41の開弁時における浮上のしやすさと、弁体41の閉弁時における引き込まれにくさの両立を可能とする。
また、フロート50周りで生じる凍結による不具合に関しては、本実施形態の排水弁装置40においては、オーバーフロー管42とフロート50とが別体で互いに独立した構成であるため、例えばフロート50と貯水筒43との間に残った水が凍結した状態で操作レバー31の操作によって回動伝達部材32が無理矢理引き上げられて貯水筒43と凍結したフロートの部分で破損するといった凍結による不具合が生じることは基本的にはない。すなわち、本実施形態の排水弁装置40のようにオーバーフロー管42とフロート50とが互いに別体の部材である構成を採用することで、フロート50と貯水筒43との隙間における凍結による不具合を確実に回避することができる。
また、本実施形態の排水弁装置40は、上段フロート51および下段フロート52の外側隙間断面積の相対的な大小関係を、各フロート50の厚さ、つまり各フロート50の水平方向の断面積の大小関係としている。すなわち、本実施形態の排水弁装置40においては、上段フロート51の水平方向の断面積は、下段フロート52の水平方向の断面積よりも小さいという構成を採用することで、上段フロート51の外側隙間断面積の方が下段フロート52の外側隙間断面積よりも大きいという構成が、貯水筒43を形成する壁面に対するフロート50の水平方向の断面積の差異によって実現されている。
このような構成によれば、上段フロート51と下段フロート52の外側隙間断面積の大小関係を、フロート50側の水平方向の断面積の調整によって実現することができる。つまり、制御筒45によって構成される貯水筒43については形状を変えることなく、フロート50側のみの形状・寸法の調整により、上段フロート51の外側隙間断面積の方が下段フロート52の外側隙間断面積よりも大きいという構成を実現することができる。
したがって、上下のフロート50についての外側隙間断面積の調整を比較的シンプルな構造で容易に行うことができる。また、フロート50を収容する側の構成、つまり貯水筒43の構成については、既存の構成を利用することができる。さらに、上下のフロート50間で外側隙間断面積に大小関係を持たせるに際し、フロート50を収容する貯水筒43の収容体積を広げる必要がないことから、装置のコンパクト化を図る観点から有利な構成を実現することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、図11を用いて説明する。なお、以下の説明では、上述した本発明の第1実施形態と共通する内容については、第1実施形態と共通の符号や同様の名称を用いて適宜説明を省略する。本実施形態に係る排水弁装置は、第1実施形態との対比において、上段フロート51の形状の点で異なる。
図11に示すように、本実施形態に係る排水弁装置40Aにおいては、上段フロート51Aが、水平方向の断面積が上方にかけて徐々に小さくなるように形成されている。つまり、本実施形態の排水弁装置40Aにおいては、上段フロート51Aの形状が、上側にかけて徐々に外径を縮径させるテーパ形状となっている。言い換えると、上段フロート51Aの内径が一定であるとした場合、上段フロート51A厚さが下側から上側にかけて徐々に薄くなっている。
このような構成においては、図11に示すように、下段フロート52については、フロート外側隙間の大きさが上下方向の全体にわたって略同一であるのに対し、上段フロート51Aについては、フロート外側隙間の大きさが、下側から上側にかけて徐々に広くなる。すなわち、上段フロート51Aおよび下段フロート52がいずれも軸心線を制御筒45の中心線C1に一致させた状態において、下段フロート52については面間隙間寸法が寸法G1で一定であるのに対し、上段フロート51Aについては面間隙間寸法が下端における寸法G2(>G1)から上端における寸法G3にかけて徐々に大きくなっている。
このような面間隙間寸法の大小関係によれば、下段フロート52については、外側隙間断面積が上下方向の全体にわたって略同一であるのに対し、上段フロート51Aについては、外側隙間断面積が、下側から上側にかけて徐々に大きくなる。なお、ここで述べた面間隙間寸法および外側隙間断面積の大小関係は、貯水筒43の内部空間を形成する壁面のうち外側の壁面である外筒部47の内周面47aが上下方向と平行となるように形成されていることを前提とする。
以上のような本実施形態の排水弁装置40Aによれば、弁体41の開弁時、上段フロート51Aの周りの水の置換をよりスムーズにすることができ、上段フロート51Aをオーバーフロー管42と同時により素早く上昇させることができ、引上げ直後のオーバーフロー管42の挙動、つまり弁体41の挙動をより安定させることができる。すなわち、上段フロート51Aの外側隙間断面積が下側から上側にかけて徐々に大きくなることにより、上段フロート51Aについて浮力による上昇作用が得やすくなり、オーバーフロー管42の上昇にともなう上段フロート51Aの追従性をより向上させることができる。これにより、オーバーフロー管42の引上げスピードによる動作のバラツキを効果的に抑えることが可能となる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について、図12を用いて説明する。本実施形態に係る排水弁装置は、第1実施形態との対比において、上段フロート51の外側隙間断面積の方が下段フロート52の外側隙間断面積よりも大きいという構成を、制御筒45において貯水筒43を構成する外筒部47の壁面形状の調整によって実現している点で異なる。
図12に示すように、本実施形態の排水弁装置40Bにおいては、上段フロート51Bおよび下段フロート52Bが、内径および外径について、互いに略同じ径を有する。つまり、上段フロート51Bと下段フロート52Bとが、互いに略同じ厚さH1を有する。したがって、本実施形態の排水弁装置40Bでは、上段フロート51Bの水平方向の断面積と、下段フロート52Bの水平方向の断面積とが略同じ大きさとなっている。
このような上段フロート51Bおよび下段フロート52Bに対して、貯水筒43を構成する外筒部47が、上段フロート51Bおよび下段フロート52Bが貯水筒43に収容された状態(最低点にある状態)において上段フロート51Bに対応する上側の部分に、拡径部47xを有する。拡径部47xは、外筒部47の壁厚を維持したまま外筒部47の外径を他の下側の部分に対して広げた部分である。このように貯水筒43の外筒部47が拡径部47xを有する構成は、外筒部47が、上段フロート51Bおよび下段フロート52Bが貯水筒43に収容された状態において下段フロート52Bに対応する下側の部分に縮径部47yを有する構成であるといえる。
このように、本実施形態の排水弁装置40Bにおいては、厚さが互いに同じ上段フロート51Bおよび下段フロート52Bに対して、外筒部47の径を部分的に広げる(狭める)ことにより、上段フロート51Bのフロート外側隙間の方が、下段フロート52Bのフロート外側隙間よりも大きくなるように構成されている。つまり、上段フロート51Bの面間隙間寸法J1が、下段フロート52Bの面間隙間寸法J2よりも大きくなるように構成されている。したがって、本実施形態の排水弁装置40Bにおいては、厚さが互いに同じ上段フロート51Bおよび下段フロート52Bに対して、外筒部47の径を部分的に広げる(狭める)ことにより、上段フロート51Bの外側隙間断面積の方が、下段フロート52Bの外側隙間断面積よりも大きくなるように構成されている。
以上のように、本実施形態の排水弁装置40Bは、フロート50として、円筒状の形状における周壁部分の厚さが互いに略同じの上段フロート51Bおよび下段フロート52Bを有しながら、貯水筒43の外筒部47の壁面形状により、上段フロート51Bの外側隙間断面積が、下段フロート52の外側隙間断面積よりも大きいという構成を備える。
このように、本実施形態の排水弁装置40Bにおいては、このような上段フロート51Bと下段フロート52Bとの間における外側隙間断面積の大小関係が、貯水筒43の外筒部47の径の大小関係により規定されている。つまり、上段フロート51Bおよび下段フロート52Bの外側隙間断面積の大きさの違いが、外筒部47の拡径部47xおよび縮径部47yの内径の差として現れている。言い換えると、本実施形態の排水弁装置40Bでは、上段フロート51Bおよび下段フロート52Bの外側隙間断面積の相対的な大小関係が、外筒部47の内径寸法によって調整されている。
詳細には、図12に示すように、上段フロート51Bおよび下段フロート52Bは、互いに略同じ外径を有する。つまり、上段フロート51Bおよび下段フロート52Bが互いに重なった状態において、上段フロート51Bの外周面と下段フロート52Bの外周面とは、上下方向と略平行となる連続的な円周面を形成する。
このように互いに略同じ外径を有する上段フロート51Bおよび下段フロート52Bに対して、貯水筒43の外筒部47は、拡径部47xおよび縮径部47yによって内径を部分的に異ならせることで、上段フロート51Bの外側隙間断面積と下段フロート52Bの外側隙間断面積を互いに異ならせる。すなわち、外筒部47の拡径部47xは、その内径寸法K1を、外筒部47よりも下側の縮径部47yの内径寸法K2よりも大きくすることで、フロート50の外周面50aとの関係で規定される外側隙間断面積に関し、下段フロート52Bの外側隙間断面積よりも上段フロート51Bの外側隙間断面積の方を相対的に大きくする。
以上のように、本実施形態の排水弁装置40Bは、上段フロート51Bおよび下段フロート52Bの外側隙間断面積の相対的な大小関係を、外筒部47の拡径部47xと縮径部47yによる部分的な内径の大小関係としている。すなわち、本実施形態の排水弁装置40Bにおいては、外筒部47の上側の部分であって内径が比較的大きい拡径部47xと、外筒部47の下側の部分であって内径が比較的小さい縮径部47yとを有する構成を採用することで、上段フロート51の外側隙間断面積の方が下段フロート52の外側隙間断面積よりも大きいという構成が、フロート50に対する貯水筒43を形成する壁面の内径の差異によって実現されている。
このように、フロート50側ではなくフロート50を収容する空間を形成する壁面側の径の調整によっても、上段フロート51Bの外側隙間断面積が下段フロート52Bの外側隙間断面積よりも大きいという構成を実現することができる。
また、本実施形態の構成においては、貯水筒43の外筒部47の拡径部47xを、下側から上側にかけて徐々に内径を拡径させるような逆テーパ形状とすることにより、第2実施形態のように上段フロート51Bについて外側隙間断面積を下側から上側にかけて徐々に大きくする構成を実現することができる。かかる構成によれば、第2実施形態の場合と同様に、弁体41の開弁時、上段フロート51Bの周りの水の置換をよりスムーズにすることができ、上段フロート51Bをオーバーフロー管42と同時により素早く上昇させることができ、引上げ直後のオーバーフロー管42の挙動、つまり弁体41の挙動をより安定させることができる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態について、図13を用いて説明する。本実施形態に係る排水弁装置は、第1実施形態との対比において、上段フロート51Cが、オーバーフロー管42に対して固定されている点で異なる。
図13に示すように、本実施形態の排水弁装置40Cにおいては、上下2段のフロート50のうち、上側に位置する上段フロート51Cが、連結部55によってオーバーフロー管42に固定されている。つまり、本実施形態の排水弁装置40Cにおいては、上段フロート51Cとオーバーフロー管42とが、連結部55を介して一体的に設けられている。なお、上段フロート51Cとは別体の下段フロート52は、上述した実施形態の場合と同様にオーバーフロー管42とは独立した別体の構成である。
図13に示すように、上段フロート51Cとオーバーフロー管42とを繋ぐ連結部55は、上段フロート51Cの上端部とオーバーフロー管42の中間部分とを繋ぐように設けられる。連結部55は、上段フロート51Cおよび下段フロート52が最下端位置にある状態で、貯水筒43を構成する内筒部48よりも上方に位置するように設けられる。
連結部55としては、上段フロート51Cとオーバーフロー管42とを一体の構造として繋ぐ構成であれば、その形状や構成等は特に限定されない。連結部55は、例えば、中心線C1周りに全体的に設けられる部分であったり、上段フロート51とオーバーフロー管42との間で径方向に架設される梁状の部分であったりしてもよい。また、連結部55は、上段フロート51Cおよびオーバーフロー管42の少なくともいずれか一方の一部分として設けられもよく、また、上段フロート51Cおよびオーバーフロー管42とは別体の部材が上段フロート51Cおよびオーバーフロー管42の各部材に固定されることにより設けられてもよい。
このような構成においては、オーバーフロー管42の上昇時、上段フロート51Cはオーバーフロー管42と一体の部分として上昇する。つまり、本実施形態の排水弁装置40Cにおいては、オーバーフロー管42と弁体41と上段フロート51Cとが一体的に上昇することになる。上段フロート51Cがオーバーフロー管42と一体的に上昇した後、所定のタイミングで、下段フロート52が浮力によって上昇する。
このような構成によれば、弁体41の開弁時、上段フロート51Cをオーバーフロー管42と一体の部分としてオーバーフロー管42同時に上昇させることができ、引上げ直後のオーバーフロー管42の挙動、つまり弁体41の挙動を確実に安定させることができる。一方、弁体41の閉弁時は、第1実施形態の場合と同様に、下段フロート52の安定した下降動作により、フロート50が引き込まれにくくなり、早閉まりを防止することができる。つまり、本実施形態の排水弁装置40Cは、オーバーフロー管42と一体の上段フロート51Cと、オーバーフロー管42および上段フロート51Cとは別体であって上段フロート51Cの下に位置する下段フロート52からなる2段フロート構造を備えることで、フロート50について、弁体41の開弁時における浮上のしやすさと、弁体41の閉弁時における引き込まれにくさの両立を可能とする。
また、凍結の問題に関しては、オーバーフロー管とフロートとが一体的な構成の場合、従来の技術によれば、フロートとこれを収容する貯水筒との隙間に残った水が凍結した状態で、オーバーフロー管が無理矢理引き上げられると、貯水筒と凍結したフロートの部分で破損が生じる可能性がある。この点、本実施形態の排水弁装置40Cによれば、上段フロート51Cとオーバーフロー管42とが一体的な構成であるが、上段フロート51Cについては、下段フロート52よりも外側隙間断面積が大きく、面間隙間寸法が広いことから、上段フロート51Cの外周において貯水筒43との間に十分な広さの隙間を確保することが容易となる。これにより、上段フロート51Cの外周面50aと貯水筒43の外筒部47の内周面47aとの間の残水が凍結することによる不具合を回避することができる。
以上説明した本発明の実施の形態については、各実施形態の構成を適宜組み合わせることもできる。例えば、第1実施形態の構成と第3実施形態の構成とを組み合わせることで、上段フロート51と下段フロート52との外側隙間断面積の相対的な大小関係の調整について、フロート50の外径寸法による調整と、貯水筒43の外筒部47の形状による調整との両方を採用してもよい。また、第2実施形態の構成と第4実施形態の構成とを組み合わせることで、オーバーフロー管42と一体の上段フロート51Cについて、下側から上側にかけて縮径するようなテーパ形状を採用してもよい。
また、上述した本発明の実施形態に係る排水弁装置40は、弁体41を下端部に有し上下動することで弁体41による排水口14の開閉を行う作動杆として、オーバーフロー管42を備えるが、本発明に係る作動杆は、オーバーフロー管に限定されず、管状または棒状の軸状部材であればよい。したがって、本発明に係る作動杆としては、オーバーフロー管42のように管状の部材に限らず、オーバーフロー管とは別途設けられた中実の棒状の部材であってもよい。ただし、部品点数の削減や省スペースの観点からは、本発明に係る作動杆はオーバーフロー管の機能を兼ねたものであることが好ましい。また、上述した本発明の実施形態に係る排水弁装置40は、フロート50として上段フロート51および下段フロート52を有する2段フロート構造を備えるが、3個以上のフロート50を備える構成であってもよい。
また、上述した各実施形態に係る排水弁装置においては、上段フロート51の方が下段フロート52よりも大きくなるフロート50と貯水筒43との間の隙間として、フロート50の外筒部47との間の隙間、つまりフロート50の外周側における外筒部47との間の隙間が対象とされているが、フロート50の内周側における貯水筒43との間の隙間であってもよい。したがって、本発明の実施の形態に係る排水弁装置としては、上段フロート51の内周側の貯水筒43の周面、つまり貯水筒43を構成する内筒部48の外周面48aとの間の隙間の水平方向の断面積が、下段フロート52の同断面積よりも大きいという構成であってもよい。このような構成によっても、上述した各実施形態に係る排水弁装置と同様の効果を得ることができる。