本発明は、便器に供給する洗浄水を排出する排水口を開閉する排水弁の開閉動作に、貯水筒内に配置されたフロートの浮力を利用した構成において、フロートの浮力を用い、使用者等による操作部の操作により連結部材から引き上げられる排水弁の弁体を、連結部材からの引上げにより達する高さ位置よりもさらに高い位置まで押し上げる構成を採用する。これにより、本発明は、洗浄水の排出先における圧力損失が小さい場合であっても、排水弁の早閉まりを防止し、洗浄水の排出量を安定させるようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず、本実施形態に係る洗浄水タンク装置の適用例について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器の一部断面図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る水洗大便器100は、洗浄水タンク装置1と便器本体2とを備える。本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、便器本体2に対して設けられ、便器本体2を洗浄する洗浄水の貯水、および便器本体2に対する洗浄水の排水を行う。便器本体2は、洗浄水タンク装置1から供給される洗浄水を受けるボウル部3と、ボウル部3の上縁部に形成されたリム部4と、洗浄水タンク装置1から排出された洗浄水をボウル部3へと導く導水路5とを有する。ボウル部3の上端部の内壁面には、導水路5から供給される洗浄水を吐水する吐水口6が開口している。吐水口6から吐水された洗浄水は、ボウル部3の壁面に沿って旋回しながら下降してボウル部3を洗浄する。なお、図示は省略するが、便器本体2においては、ボウル部3の下方の溜水部に連通する排水トラップ管路や、溜水部の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるために導水路5からの洗浄水を溜水部の上方の位置にて吐水する吐水口等が形成されている。
このような水洗大便器100において、洗浄水タンク装置1は、便器本体2の導水路5の流入側の開口部が位置する後部上面に載置固定された状態で設けられる。すなわち、洗浄水タンク装置1は、その洗浄水タンク12の底面12a(図2参照)に設けられた排水口14が導水路5に対して上側から臨むように設けられる。そして、洗浄水タンク12から排出される洗浄水が、排水口14を介して導水路5へと排水され、ボウル部3へと供給される。なお、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、図1に示す便器本体2のような水の落差による流水作用で汚物を押し出す先落とし式の水洗便器のほか、他のタイプの水洗便器(例えば、サイホン作用で汚物を吸い込むように排出するサイホン式の便器等)であっても適用可能である。
次に、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1の構成について説明する。洗浄水タンク装置1は、便器本体2を洗浄する洗浄水の貯水および排水を行うものである。図2に示すように、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、外装タンク11と、外装タンク11内に設けられ、便器本体2に供給される洗浄水を貯水する洗浄水タンク12とを備える。外装タンク11は、例えば陶器製の部材により構成され、上側が開口した箱状の部材であって洗浄水タンク12を収容する空間を形成する本体部11aと、この本体部11aの上側の開口部を覆うように取り付けられる蓋体11bとを有する。
外装タンク11を構成する蓋体11bには、その上面側において手洗い鉢11cが形成されている。手洗い鉢11c上には、手洗い鉢11cに向けて吐水する吐水部11dが立設されている。吐水部11dからは、洗浄水タンク12内の水が供給されて吐水される。吐水部11dから吐水された水は、手洗い鉢11cの中央部に設けられた排出口11eから排出され、洗浄水タンク12内に流入する。排出口11eから洗浄水タンク12内に流入する水は、蓋体11bの下方に設けられた導水部材13により、洗浄水タンク12内における所定の場所に導かれる。
洗浄水タンク12は、便器本体2に供給する洗浄水を貯水し、洗浄水を排出する排水口14が底面12aに形成されたものである。洗浄水タンク12は、外装タンク11を構成する本体部11aの内部において固定された状態で設けられる。洗浄水タンク12の底面12aにおける略中央部には、上述したように導水路5に臨む排水口14が設けられている。排水口14は、洗浄水タンク12の底面12aを開口させるとともに底面12aから下側に向けて突出して下側に開口する筒状の突出部分として設けられている。排水口14は、洗浄水タンク12の貯水空間を導水路5内に連通させる。洗浄水タンク12は、筒状の排水口14を外装タンク11の底部11fに貫通させた状態で、所定の係合部材15によって固定される。洗浄水タンク12は、その底面12aにおいて排水口14の周囲に設けられた複数(図2においては2箇所)の固定部16にて、固定部材17により外装タンク11の底部11fに対して固定される。また、洗浄水タンク12は、その大部分が断熱体18によって被装されている。
洗浄水タンク装置1は、洗浄水タンク12内に水を供給するための洗浄水供給装置20と、使用者等の操作を受けて作動する操作装置30と、操作装置30によって操作され、洗浄水タンク12内を排出するための排水弁装置40とを備える。
洗浄水供給装置20について、図2を用いて説明する。図2に示すように、洗浄水供給装置20は、給水管21と、給水バルブ装置22と、吐水管23と、給水装置用フロート24と、手洗い給水管25とを有する。
給水管21は、外装タンク11の外部の水道管等の給水源に接続され、給水源からの給水を受ける。給水バルブ装置22は、給水管21からの給水経路を開閉するバルブ機構を有する。吐水管23は、給水バルブ装置22を介して給水管21と連通し、給水源から給水された水を洗浄水タンク12内に吐水する。給水装置用フロート24は、上下方向に延びるロッド26aの下端側に設けられ、ロッド26aおよびロッド26aの上端部に設けられた作動アーム26bを介して給水バルブ装置22に連結される。
洗浄水供給装置20においては、洗浄水タンク12内の水位の変動による給水装置用フロート24の上下動にともない、ロッド26aおよび作動アーム26bを介して給水バルブ装置22が開閉動作し、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が調整される。本実施形態では、排水弁装置40が作動することによる洗浄水タンク12からの排水開始後に、洗浄水供給装置20による給水が開始される。また、本実施形態の洗浄水供給装置20は、洗浄水タンク12の満水時における洗浄水の水位が所定の水位WL(図2参照。)で一定となるように構成されている。
また、洗浄水供給装置20において、手洗い給水管25は、給水源からの給水経路が分岐された配管構成であり、給水源からの給水経路において分配された給水を手洗い鉢11c上の吐水部11dへと供給する。洗浄水供給装置20は、洗浄水タンク装置1から便器本体2への洗浄水の供給開始時(排水開始時)に、給水管25による吐水部11dへの水の供給を開始する。なお、洗浄水供給装置20としては、周知の構成のものを採用することができるため、洗浄水供給装置20の各部の具体的な構成については説明を省略する。
操作装置30について、図2を用いて説明する。操作装置30は、使用者等による操作を受けることで作動し、排水弁装置40を作動させる。図2に示すように、操作装置30は、操作レバー31と、回動伝達部材32と、第1の引上げ部材33と、第2の引上げ部材34と、第1の玉鎖35と、第2の玉鎖36とを有する。
操作レバー31は、外装タンク11の外側に設けられ、使用者等によって回動操作される手動式の操作部である。図2に示す例では、操作レバー31は、本体部11aの一側(図2において右側)の側壁から突出するように設けられている。操作レバー31の操作としては、操作レバー31が回動する方向によって、大洗浄用の操作または小洗浄用の操作が行われる。操作装置30は、操作レバー31が一方向(例えば図2において手前側)に約90°回動操作されると、排水弁装置40に対して大洗浄用の動作を行い、操作レバー31が他方向(例えば図2において奥側)に約90°回動操作されると、排水弁装置40に対して小洗浄用の動作を行う。ここで、大洗浄は、小洗浄よりも、洗浄水タンク装置1から便器本体2への洗浄水の排出量が比較的多い洗浄態様である。
回動伝達部材32は、軸体やワイヤ部材やユニバーサルジョイント等により構成され、操作レバー31の回動操作に連動して回動する軸状の構造である。回動伝達部材32は、外装タンク11の外側に設けられる操作レバー31に対して連結機構37を介して連結され、外装タンク11の内部において略水平方向に延設される。回動伝達部材32の操作レバー31と連結される側(図2において右側)と反対側に、第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34が設けられる。
第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34は、外装タンク11の幅方向(図2において左右方向)の略中央部に配置され、いずれも回動伝達部材32に外嵌された状態で回動伝達部材32から下側に延設されるように設けられたアーム状の部材である。第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34は、いずれも回動伝達部材32の回動動作にともなって揺動する。第1の引上げ部材33の先端部には、第1の玉鎖35の一端(上端)が連結され、第2の引上げ部材34の先端部には、第2の玉鎖36の一端(上端)が連結される。第1の玉鎖35および第2の玉鎖36の他端は、それぞれ排水弁装置40における所定の場所に連結される。
第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34は、回動伝達部材32に対して、次のような動作が行われるように設けられる。回動伝達部材32が大洗浄用の操作として一方向に回動されると、その回動にともなって第1の引上げ部材33のみが一方向に揺動して第1の玉鎖35を引き上げる。また、回動伝達部材32が小洗浄用またはエコ小洗浄用の操作として他方向に回動されると、その回動にともなって第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34の両方が他方向に揺動して第1の玉鎖35および第2の玉鎖36を引き上げる。なお、本実施形態では、操作装置30は、操作レバー31による機械的な操作を受ける構成であるが、機械的な操作に加え、例えば、回動伝達部材32を回動させるモータに接続される操作ボタンの操作による電気的な操作が行われる構成であってもよい。
排水弁装置40について、図2から図8を用いて説明する。排水弁装置40は、便器本体2に供給される洗浄水を貯える洗浄水タンク12に設けられ、洗浄水タンク12内を排出するための構成である。排水弁装置40は、弁体41と、作動杆としてのオーバーフロー管42と、貯水筒43と、フロート50と、筒体としての小タンク60とを備える。また、本実施形態に係る排水弁装置40は、排水弁51を開弁させる操作部材として、上述したように操作装置30を構成する回動伝達部材32を備える。
弁体41は、洗浄水タンク12の底面12aに配置された排水口14を開閉する。弁体41は、ゴム等の合成樹脂材料からなる弾性部材であって、円環状の形状を有し、オーバーフロー管42の下端部においてオーバーフロー管42の外周面から鍔状に突出するような態様で設けられる。本実施形態では、弁体41は、オーバーフロー管42の下端部において上下方向に所定の隙間をもって設けられた上下2段の鍔状の挟持片部42a間に嵌め込まれた状態で、オーバーフロー管42と一体的に設けられる。
オーバーフロー管42は、洗浄水タンク装置1の待機状態、つまり洗浄水タンク12の満水状態において上端開口部を洗浄水タンク12の水位WLよりも上方に位置させるとともに、下端開口部を排水口14に連通させる。これにより、洗浄水タンク12内の余剰の洗浄水がオーバーフロー管42によって排水口14へと排出される。
オーバーフロー管42は、弁体41を下端部に有し上下動することで弁体41による排水口14の開閉を行う。すなわち、オーバーフロー管42は、上述したように下端部に設けられる上下2段の挟持片部42a間に挟まれた態様で設けられた弁体41を有し、この弁体41とともに一体的に上下動作を行う。オーバーフロー管42とともに上下動作する弁体41により、排水口14が開閉される。このように、オーバーフロー管42と一体的に動作する弁体41は、排水口14を開閉する排水弁51を構成する。
オーバーフロー管42の中間部には、上述したように一端(上端)が第1の引上げ部材33に連結される第1の玉鎖35の他端(下端)が連結される係止部材44が設けられている。係止部材44は、周方向の一部が切り欠かれた円環状ないしは筒状の本体部44aを有し、この本体部44aの部分を、オーバーフロー管42の中間部に形成された縮径部分である凹部42bに嵌合させた状態で設けられる。係止部材44は、凹部42bに嵌め込まれた状態で、オーバーフロー管42の軸方向(上下方向)については相対的な移動が規制される(位置決めされる)とともに、オーバーフロー管42の軸方向を回転軸方向とする水平方向の相対的な回転が許容された状態で、オーバーフロー管42に保持される。
このような構成により、上述したような操作レバー31の操作に連動した回動伝達部材32の回動にともなう第1の引上げ部材33の揺動によって第1の玉鎖35が引き上げられることで、係止部材44を介して第1の玉鎖35の下端側が連結されたオーバーフロー管42が引き上げられる。これにより、オーバーフロー管42と弁体41とが一体的に上昇して排水口14が開かれた状態となる。ここで、弁体41は、洗浄水タンク12内に貯水されている洗浄水に作用する重力により(ヘッド圧により)、排水口14を閉じる方向(鉛直下方)に押さえられているため、第1の玉鎖35が引き上げられた際、先に係止部材44がオーバーフロー管42に対して回転し、その後、オーバーフロー管42が鉛直上方に引き上げられることになる。
貯水筒43は、オーバーフロー管42を筒軸方向に貫通させるとともに洗浄水を流出させるための小孔43a、43b(図6参照)が周面に形成された筒状の部分である。貯水筒43は、フロート50に浮力を与えるための洗浄水を収容する空間を形成するとともに、排水口14からの洗浄水の排水の過程で、収容した洗浄水を小孔43a、43bから排出する。このように、貯水筒43は、フロート50を内部に配し、フロート50に浮力を与えるための洗浄水を収容し、収容した洗浄水を流出させるための小孔43a、43bを有する。
貯水筒43は、オーバーフロー管42を筒軸方向に貫通させる制御筒45の一部として構成される。制御筒45は、略円筒状の外筒部47と、外筒部47の内側において外筒部47と同軸心状に設けられる略円筒状の内筒部48とを有し、これらからなる2重筒構造を有する。外筒部47および内筒部48は、いずれも筒軸方向(上下方向)の両端を開口させている。
外筒部47と内筒部48との間には、これらを繋ぐ水平隔壁部49が設けられている。水平隔壁部49は、外筒部47における上下方向の中央よりも下側寄りの位置であって、内筒部48の下端部の位置に設けられている。水平隔壁部49は、制御筒45が有する2重筒構造において、外筒部47の内周面47aと内筒部48の外周面48aとをつなぐ円環板状の部分である。
このような構成により、制御筒45において、外筒部47の内周面47aと、内筒部48の外周面48aと、水平隔壁部49の上面49aとによって、上側に開口する貯水可能な円筒状の空間が形成される。かかる円筒状の空間が、フロート50およびフロート50に浮力を与えるための洗浄水を収容する空間となる。このように制御筒45において円筒状の収容空間を形成する部分が、貯水部としての貯水筒43となる。
貯水筒43においては、内筒部48内に、オーバーフロー管42が貫通する。内筒部48は、オーバーフロー管42の上下動作をガイドする機能を有する。また、貯水筒43においては、外筒部47の周壁に、2つの小孔43a、43bがその周壁を貫通するように形成されている。
小孔43a、43bは、貯水筒43に貯水された洗浄水を貯水筒43内から所定の流量で排出させるための開口部である。2つの小孔43a、43bは、外筒部47の周壁の下端部における略同じ高さ位置にて周方向に所定の間隔を開けて設けられている(図6参照)。ここで、2つの小孔43a、43bのうち、一方の小孔43aは、外筒部47の外周側に上下スライド可能に付設された板状の切替部材46のスライド移動により開閉可能に構成されている。つまり、切替部材46による小孔43aの開閉により、貯水筒43内から流出させる洗浄水の流量が調節される。なお、本実施形態では、貯水筒43内の洗浄水を排出させるための小孔が2箇所に設けられているが、この小孔は少なくとも1箇所に設けられればよい。また、本実施形態では、小孔43a、43bは、外筒部47において側面部分である周壁に形成されているが、例えば、貯水筒43を構成する水平隔壁部49において上下方向に貫通するように形成されてもよい。
貯水筒43を構成する制御筒45は、その下側の開口端、つまり外筒部47の下側の開口端を、洗浄水タンク12の底面12aに開口する排水口14に臨ませるように、底面12a上に立設された状態で設けられる。つまり、制御筒45は、排水口14の洗浄水タンク12内への開口部に覆い被さるように配置され、制御筒45の内部空間と排水口14の内部空間とが互いに連通するように設けられる。そして、制御筒45において構成される貯水筒43よりも下側の部分、つまり貯水筒43を構成する外筒部47の水平隔壁部49よりも下側の延設部分には、制御筒45の内外を連通させる流入口45bが形成されている。流入口45bは、洗浄水タンク12内の洗浄水の排水口14からの排出時に、制御筒45の貯水筒43よりも下側の部分において、制御筒45外の洗浄水を制御筒45内に流入させて排水口14へと流入させる。このように、本実施形態に係る排水弁51は、洗浄水タンク12の底面12aに配置された排水口14を開閉する弁体41と、洗浄水を収容する貯水筒43を構成して弁体41の上下動を制御する制御筒45とを有する。
フロート50は、浮力によって洗浄水タンク12内の水位に連動して排水弁51に作用する。フロート50は、上述したように制御筒45において構成される貯水筒43内に配置され、貯水筒43内の洗浄水によって得た浮力をオーバーフロー管42に作用させる筒状の部材である。フロート50は、貯水筒43内の洗浄水の水位の変動にともなって浮力により上下動する。
フロート50は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂材料からなり、筒状の外形を有する中空部材である。フロート50は、上側に開口する円筒状の空間を形成する貯水筒43内に、内筒部48を貫通させた態様で設けられる。フロート50は、貯水筒43内の洗浄水の水位の変動にともない、上側の一部を貯水筒43の上側の開口から出没させるように上下動する。
フロート50は、貯水筒43内の洗浄水から得た浮力による上昇に際し、上述したようにオーバーフロー管42に設けられる係止部材44によって係止されることで、オーバーフロー管42に作用する。係止部材44は、フロート50を係止させるため、本体部44aの外側に突出する係止片部44bを有する。係止片部44bは、円環状ないしは筒状の本体部44aの外周面から本体部44aの径方向に沿って突出し、本体部44aの周方向を板厚方向とする突片部である。本実施形態では、係止片部44bは、オーバーフロー管42の軸方向視で放射状となるように、本体部44aの周方向について略等間隔で4箇所に設けられている(図5参照)。
このようにフロート50に対する係止部として係止片部44bを突出させる係止部材44は、浮力により上昇するフロート50の上面となる上端面50aに当接することで、フロート50のストッパとして機能するとともに、フロート50の浮力による上昇作用を受けてその浮力の作用をオーバーフロー管42に伝達させる浮力受け部として機能する。係止片部44bは、これらの機能が発揮できる形状・大きさを有する。
このように、本実施形態では、排水弁51において、弁体41およびオーバーフロー管42によって一体的に上下動作を行う弁部材55が構成されており、この弁部材55に、フロート50の浮力による上昇を規制するストッパとしての係止部材44が設けられている。つまり、弁部材55は、洗浄水タンク12の排水口14を開閉する部材であり、排水弁51の弁体41には、弁体41と一体的に昇降するオーバーフロー管42を介して係止部材44が設けられている。そして、フロート50は、係止部材44を介して、浮力によって弁部材55を押し上げるように作用する。
フロート50の浮力は、洗浄水タンク12の満水時には、洗浄水の水圧(ヘッド圧)によって弁体41を介して下方向に押さえ付けられているオーバーフロー管42を上昇させることがないように、また、洗浄水タンク12からの排水時には、弁体41およびオーバーフロー管42に作用する下向きの力よりやや大きくなるように設定される。
小タンク60は、排水口14および制御筒45の周囲を取り囲むように洗浄水タンク12の底面から上方に延びて上方を開放する側壁を構成する。小タンク60は、フロート50を収容する貯水筒43を構成する制御筒45を収容する。小タンク60は、その横断面形状が略矩形状となる略四角筒状の筐体である。小タンク60の上側の端部は、小タンク60の略四角筒状の外形に沿って略四角形状に開放されており、その開放部分の開口形状に沿うとともに略水平面に沿う上縁部60aが存在する。また、小タンク60の下端側には、小タンク60の底面部を円形状に開口させた開口部60bが設けられている。そして、小タンク60は、その下側の開口部60bに、制御筒45の下端部を嵌らせるように、制御筒45を収容する。
このように、小タンク60および小タンク60内に設けられる制御筒45は、洗浄水タンク12の底面12aに開口する排水口14を取り囲むように、底面12aに立設した状態で取り付けられる。そして、オーバーフロー管42が、制御筒45において構成される貯水筒43の内筒部48内を挿通した状態で上下動可能に設けられ、オーバーフロー管42の下端部に設けられた弁体41により、オーバーフロー管42の上下動にともなって排水口14が開閉される。
小タンク60の一側の側面部61(図3において右側の側面)には、略矩形状の開口部62が形成されている。開口部62は、小タンク60の側面部61を貫通して小タンク60の内外を連通させる開口を形成する部分である。上述したように制御筒45とともに排水口14を取り囲むように立設される小タンク60は、制御筒45との関係において、開口部62が設けられる側を、制御筒45の小孔43a、43bが設けられる側と反対側に位置させるように設けられる。以上のように、本実施形態に係る小タンク60は、排水口14を取り囲むように洗浄水タンク12の底面12a上に立設され、上側を開放させて側面部61に開口部62を有する。
このような小タンク60において、排水口14からの洗浄水の排出量を切り替えるための構成として、小タンク60の側面部61に形成された開口部62を小タンク60の外側から開閉する切替弁が設けられている。本実施形態では、小タンク60に設けられる切替弁として、開口部62を開口面積的に段階的に開閉する第1切替弁70および第2切替弁80の2重の弁が設けられている。これらの第1切替弁70および第2切替弁80は、排水口14からの洗浄水の排出時に小タンク60の外側から小タンク60内へと流入する洗浄水の量を調節する流量調節機構を構成する。
第1切替弁70および第2切替弁80は、いずれも全体として略矩形状に構成された部材であり、小タンク60の外側から開口部62を閉じるように、回動可能に支持された状態で設けられる。第1切替弁70および第2切替弁80は、開口部62に対して第1切替弁70を内側、第2切替弁80を外側に位置させ、互いに近接した状態で互いに重なるように設けられる。
第1切替弁70および第2切替弁80は、いずれも下端部が共通の位置にて回動可能に支持される。具体的には、小タンク60の開口部62が設けられる側の側面部61の開口部62よりも下側の部分において、開口部62を正面にして左右両側の角部分に、その角部分を凹ませた形状の凹部63が設けられている。凹部63は、側面部61に対する段差面であって側面部61と略平行な第1面部63aと、側面部61に隣り合う側面部に対する段差面であって第1面部63aに対して略直角な面である第2面部63bとを有し、小タンク60の角筒形状の横断面形状において開口部62が設けられる側面部61側の部分を凸部分とする。そして、開口部62の下側の部分において、開口部62を正面にして左右方向の両側の凹部63の第2面部63bに、左右方向に突出する軸支部60cが設けられている。
一方、第1切替弁70は、略矩形板状の基部71と、基部71において互いに対向する一対の辺側に設けられた一対の支持突片部72とを有する。一対の支持突片部72は、一対の軸支部60cをその軸方向の両側から挟む態様で軸支部60cに嵌合する。各支持突片部72は、軸支部60cに軸支される部分に、軸支部60cに嵌合するとともに軸支部60cの軸方向の外側に突出する軸支部72aを有する。第1切替弁70は、基部71に設けられた一対の支持突片部72により、軸支部72aを軸支部60cに嵌合させた状態で、軸支部60cに回動可能に支持される。
また、第2切替弁80は、第1切替弁70が重なる方向視で略矩形状の外形を有する基部81と、基部81の略矩形状の外形において互いに対向する一対の辺側に設けられた一対の支持突片部82とを有する。一対の支持突片部82は、第1切替弁70の一対の支持突片部72の軸支部72aをその軸方向の両側から挟む態様で軸支部72aに嵌合する。各支持突片部82は、軸支部72aに軸支される部分に、軸支部72aに嵌合する支持孔部82aを有する。第2切替弁80は、基部81に設けられた一対の支持突片部82により、支持孔部82aを軸支部72aに嵌合させた状態で、第1切替弁70の軸支部72aに回動可能に支持される。以上のような構造により、第1切替弁70および第2切替弁80が、共通の支軸部65(図4参照)において所定の回動範囲で回動可能に支持される。
第1切替弁70は、閉弁状態となること、つまり開口部62を閉じた状態となることで開口部62の開口面積を減少させる。このため、第1切替弁70の基部71には、連通口71aが形成されている。つまり、第1切替弁70は、開口部62を閉じた状態において、連通口71aにより、小タンク60の内側と外側とを連通させる。連通口71aの開口面積は、開口部62が全開のときより第1切替弁70によって閉じられたときの方が洗浄水の流量が所定量少なくなるように、開口部62の開口面積よりも所定の面積だけ小さく設定されている。このように、第1切替弁70は、その閉弁状態で小タンク60の内外を連通させる連通口71aを有し、開口部62を閉じることで、開口部62において小タンク60の内外を連通させる開口面積を減少させる。
また、第2切替弁80は、小タンク60に対して第1切替弁70の外側に設けられ、閉弁状態となること、つまり開口部62を閉じた状態となることで第1切替弁70により減少した開口部62の開口面積をさらに減少させる。このため、第2切替弁80の基部81には、第1切替弁70側に向けて延びる挿入突部83が設けられている。つまり、挿入突部83は、第2切替弁80において第1切替弁70側の面部に突出形成されている。挿入突部83は、第2切替弁80が閉じる方向に回動して第1切替弁70に近接することで第1切替弁70の連通口71aに挿入される。第2切替弁80は、挿入突部83を第1切替弁70の連通口71aに挿入させることで、開口部62において第1切替弁70が閉じられることで減少した小タンク60の内外を連通させる開口面積をさらに減少させる。
また、第2切替弁80の回動支持側と反対側(上側)の端部には、第2の玉鎖36の他端(下端)が連結される係止部81aが設けられている。これにより、回動伝達部材32の回動による第2の引上げ部材34の揺動にともなって第2の玉鎖36が引き上げられることで、第2切替弁80が支軸部65を中心に開口部62側へと回動するとともに、第1切替弁70も第2切替弁80に押されて支軸部65を中心に開口部62側へと回動する。第1切替弁70および第2切替弁80の回動範囲について、第1切替弁70および第2切替弁80は、開口部62に対して最も離間した位置にある状態で、第1切替弁70および第2切替弁80が水平となる位置よりも手前の位置で所定角度傾いた状態となる(図3参照)。
また、第1切替弁70および第2切替弁80には、それぞれ動作を安定させるための錘91、92が取り付けられている。第1切替弁70に取り付けられる錘91は、矩形板状の形状を有し、第1切替弁70の基部71の内側(第2切替弁80側と反対側)の面に板面を合わせた状態で設けられる。第2切替弁80に取り付けられる錘92は、錘91と同様に矩形板状の形状を有し、第2切替弁80の基部81の外側(第1切替弁70側と反対側)の所定の取付面に板面を合わせた状態で設けられる。錘91、92は、各切替弁70、80の基部71、81に設けられた所定の係止部によって基部71、81に位置決め支持される。
第1切替弁70および第2切替弁80は、いずれも基本的には洗浄水の水圧等の影響を無視した場合、開口部62を閉じた状態から自重によって回動して開弁状態となるように回動可能に設けられる。すなわち、第1切替弁70は、開口部62を閉じた閉弁状態(図7、図8参照)から、錘91の重さを含む自重によって回動して開弁状態となるように回動可能に設けられる。また、第2切替弁80は、小タンク60に対して第1切替弁70の外側にて閉弁状態の第1切替弁70に重なり開口部62に最も近接した位置にある閉塞状態(図7参照)から、錘92の重さを含む自重によって回動して開弁状態となるように回動可能に設けられる。
以上のように、小タンク60の一側の側面部61においては、支軸部65において回動可能に支持された第1切替弁70および第2切替弁80の2体の弁体により、開口部62における小タンク60の内外の連通面積を段階的に調節して小タンク60の外部から内部へと流入する洗浄水の量を調節する流量調節機構が構成されている。具体的には、本実施形態に係る流量調節機構は、開口部62を全開させた状態、第1切替弁70のみにより開口部62を閉じた状態、第1切替弁70および第2切替弁80の両方により開口部62を閉じた状態の3段階で、開口部62における連通面積を調節する。
以上のような構成を備える本実施形態の洗浄水タンク装置1の動作について説明する。洗浄水タンク装置1による便器本体2の洗浄が行われる前の待機状態においては、洗浄水タンク12は満水状態(図2、水位WL参照)である。この待機状態においては、フロート50が係止部材44の係止片部44bによってオーバーフロー管42に作用するとともに、オーバーフロー管42の下端部の弁体41が、洗浄水タンク12内の洗浄水のヘッド圧により下向きに押さえ付けられた状態となっている。
洗浄水タンク装置1による便器本体2の洗浄の開始時、使用者等によって、操作レバー31が大洗浄または小洗浄によって一方向または他方向に回動操作される。ここで、操作レバー31が大洗浄に対応する方向に回動操作された場合、回動伝達部材32が第1の引上げ部材33のみを揺動させる方向に回動し、第1の引上げ部材33の揺動によって第1の玉鎖35が引き上げられる。これにともない、係止部材44によって第1の玉鎖35の下端が連結されたオーバーフロー管42が弁体41とともに引き上げられ、排水口14が開いて排水口14からの洗浄水の排水が開始される。ここで、上述したように、第1の玉鎖35が引き上げられた際、先に係止部材44がオーバーフロー管42に対して回転し、その後、オーバーフロー管42が鉛直上方に引き上げられる。これにより、オーバーフロー管42が回転しながら鉛直上方に移動することが防がれ、排水弁装置40の安定した開弁動作が得られる。
一方、操作レバー31が小洗浄に対応する方向に回動操作された場合、回動伝達部材32が第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34の両方を揺動させる方向に回動する。つまり、かかる回動伝達部材32の回動により、第1の引上げ部材33の揺動にともない第1の玉鎖35によってオーバーフロー管42および弁体41(弁部材55)が引き上げられて排水口14からの洗浄水の排水が開始されるとともに、第2の引上げ部材34が揺動することによって第2の玉鎖36が引き上げられる。これにより、小タンク60の開口部62に対して設けられる2重の弁体のうち外側の弁体である第2切替弁80が引っ張られて開口部62を閉じる方向に回動する。この第2切替弁80の回動によって、第2切替弁80の内側に位置する第1切替弁70も第2切替弁80に押されて回動する。ここで、第1切替弁70および第2切替弁80は、開口部62を閉じる位置まで回動する(図7参照)。
操作レバー31の操作による弁部材55の引上げにより、弁部材55の上昇にともなって、係止部材44の係止片部44bによって弁部材55に作用していたフロート50が浮力によって上昇する(図8参照)。つまり、係止部材44の係止片部44bによって浮力による上昇が規制されていたフロート50が、オーバーフロー管42と一体的に係止部材44が上昇することにともなって上昇する。
操作レバー31の操作による弁部材55の引上げの完了直後に、操作レバー31は初期位置(待機状態での位置)に戻り、これにともない、第1の引上げ部材33等も初期位置に戻る。ここで、小洗浄の場合は、第2の引上げ部材34が初期位置に戻ることで、第2切替弁80が錘92の重さを含む自重により初期位置に戻る。ただし、第1切替弁70は、小タンク60の内外の水圧の差によって開口部62を閉じた状態で一定時間保持される。つまり、第2切替弁80は開口部62の開口面積について作用せずに第1切替弁70のみによって開口部62が一部閉じられた状態(図8参照)が、一定時間の間保持される。これにより、第1切替弁70の連通口71aの開口面積が開口部62の開口面積よりも狭い分、開口部62において小タンク60の内外を連通させる開口面積が減少し、開口部62を介して小タンク60の外側から内側に流れ込む洗浄水の流量が減少する。
これに対し、大洗浄の場合は、第1切替弁70および第2切替弁80は初期位置を保持したままであり、開口部62は全開の状態に維持される(図3参照)。つまり、大洗浄の場合は、操作レバー31の操作にともなう回動伝達部材32の回動によって第2の引上げ部材34は揺動されず、第2の玉鎖36によって第2切替弁80は引き上げられることなく、第1切替弁70および第2切替弁80は開口部62から離間した状態、つまり開口部62が全開の状態が維持される。したがって、大洗浄の場合は、開口部62の開口面積はそれ自体の開口面積のまま一定である。
弁部材55の上昇にともなって排水口14からの排水が開始された後、排水口14からの洗浄水の排出にともなって洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が全体的に低下する。そして、洗浄水タンク12内の水位が小タンク60の上縁部60aの付近まで低下した時点から、排水口14からの排水にともなう小タンク60内の洗浄水の水位の低下速度が、小タンク60外の洗浄水の水位の低下速度に対して急激に速くなる。このことは、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が小タンク60の上縁部60aよりも下がることで、排水口14に連通する小タンク60内に対する洗浄水の流入について、小タンク60の上側の開放部からの流入が無くなり、基本的には開口部62からの流入のみとなることに基づく。
こうした小タンク60内の洗浄水の排水口14からの排水の過程において、貯水筒43内に保持されている洗浄水が、小孔43a、43bから小タンク60内へと流出し、その小孔43a、43bからの洗浄水の流出量に応じて、貯水筒43内の洗浄水の水位が所定の速度で低下する。なお、2つの小孔43a、43bのうち、上述したように切替部材46により開閉可能な一方の小孔43aの開閉によって、貯水筒43内の洗浄水の小孔からの流出量が調節される。
貯水筒43内の水位の低下にともない、フロート50が下降し、そのフロート50の下降に連動して、弁部材55が下降する。ここで、下降する弁部材55は、係止部材44を介してフロート50に作用した状態でフロート50の下降に追従する態様となり、フロート50の下降速度と同じ速度で下降する。
そして、排水口14からの洗浄水の排出が継続して所定時間経過後、貯水筒43内の洗浄水の水位がフロート50に浮力を与えない位置まで低下し、オーバーフロー管42と一体的に下降する弁体41により排水口14が閉じられ、排水弁51が閉弁状態となり(図3参照)、所定のタイミングで排水口14からの排水が終了する。このような弁体41の閉弁動作に関し、上述したような2つの小孔43a、43bのうち一方の小孔43aが切替部材46により閉じられている方が、閉じられていない場合よりも貯水筒43からの洗浄水の流出量が少なくなるため、弁体41が閉じるタイミングが遅くなる。つまり、一方の小孔43aが切替部材46により閉じられている場合の方が、両方の小孔43a、43bが開いている場合よりも排水弁51の開弁時間が長くなり排水口14からの洗浄水の排出量が多くなる。このように、切替部材46による一方の小孔43aの開閉の切替えにより、排水口14からの洗浄水の排出量が調節される。
図2に示すように、弁体41により排水口14が閉じられた排水弁51の閉弁後においては、洗浄水タンク12内における小タンク60の外の水位は、最終的な水位(死水位置)DWLとなる。本実施形態の洗浄水タンク装置1において、この最終的な水位DWLは、小タンク60に設けられた開口部62の開口の下端に位置することになる。
弁体41が閉弁して排水口14からの洗浄水の排出が終了した後は、上述したような洗浄水供給装置20による洗浄水タンク12内への給水により、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が満水時の水位に戻り、洗浄水タンク装置1は待機状態となる。
以上のような構成を備える本実施形態の洗浄水タンク装置1は、洗浄水の排出量を安定させるため、排水弁装置40に関して以下のような構成を備える。
本実施形態に係る排水弁装置40は、上述したように、排水口14を開閉する排水弁51と、排水弁51に作用するフロート50と、フロート50を内部に配した貯水筒43と、排水弁51を開弁させる回動伝達部材32とを備える。回動伝達部材32は、排水弁の弁体41を含む弁部材55に連結部材を介して連結され、排水口14から洗浄水を排出させるための所定の操作を受けることで連結部材を介して弁部材55を引き上げ、排水口14を開放させる操作部材となる。
本実施形態では、回動伝達部材32と弁部材55との間に介在する連結部材には、第1の玉鎖35が含まれる。また、回動伝達部材32は、所定の操作として、使用者等によって操作される操作レバー31に連動して大洗浄または小洗浄に応じた所定の方向の回動操作を受ける。つまり、回動伝達部材32は、直接的に使用者等からの操作を受ける操作レバー31を介して、大洗浄または小洗浄に応じた所定の方向の回動操作を間接的に受ける。なお、操作装置30が、回動伝達部材32を回動させるモータと、これに無線または有線で接続される操作ボタン等の操作部とを備え、電気的な操作が行われる構成である場合は、回動伝達部材32は、操作レバー31に加えて操作ボタン等の操作部を介しても所定の方向の回動操作を間接的に受ける。
そして、弁体41およびオーバーフロー管42を含む弁部材55は、貯水筒43内の水位の低下にともなって下降するフロート50と連動して下降し、弁体41によって排水口14を閉じるように構成されている。本実施形態では、操作レバー31による回動伝達部材32の回動操作にともなう第1の引上げ部材33の揺動により、第1の玉鎖35が引き上げられ、第1の玉鎖35が連結された係止部材44を介して弁部材55が引き上げられる。これにより、排水弁51が開弁状態となって、排水口14からの洗浄水の排出にともない、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が全体的に低下する。洗浄水タンク12内の水位の低下の過程における貯水筒43内の水位の低下にともない、フロート50が下降し、そのフロート50の下降に連動して、弁部材55が下降し、最終的に弁部材55の下端部の弁体41によって排水口14が閉じられ、排水弁51が閉弁状態となる。
このような構成の排水弁装置40において、フロート50は、回動伝達部材32により第1の引上げ部材33および第1の玉鎖35を介して引き上げられる第1高さ位置より高い第2高さ位置へと弁部材55を上昇させる浮力を発生させるように構成されている。このような構成について、図9を用いて具体的に説明する。
排水弁51の開弁動作においては、回動伝達部材32の回動にともない第1の玉鎖35によって弁部材55が引き上げられる。ここで回動伝達部材32の回動によって第1の玉鎖35により引き上げられる弁部材55の高さ位置は、回動伝達部材32の回動量や、第1の引上げ部材33の揺動量や、第1の玉鎖35の長さ等によって規定される弁部材55の引上げ量により、所定の高さ位置に設定されている。
このように回動伝達部材32の回動にともなって第1の玉鎖35により引き上げられる弁部材55の高さ位置、つまり弁部材55の引上げによる高さ位置が、第1高さ位置に相当する。ここで、弁部材55についての高さ位置とは、弁部材55が弁体41によって排水口14を閉じた状態、つまり排水弁51の閉弁状態における弁部材55の下降端の位置を基準位置とし、この基準位置からの上昇量によって規定される上下方向の位置である。
第1高さ位置は、弁部材55の引上げにともない第1の玉鎖35にテンションがかかることで第1の玉鎖35が切れたり第1の玉鎖35が連結される部分(係止部材44等)が破損したりすることを防止する観点から、弁部材55の上昇が可能な高さ位置に対して所定量の遊びを持った位置に設定されている。
具体的には、弁部材55の引上げが可能な高さ位置は、弁部材55の下端部において弁体41が嵌め込まれる上下2段の鍔状の挟持片部42aのうちの上側の挟持片部42aの上面が、オーバーフロー管42を相対移動可能に貫通させる制御筒45における所定の部分に接触する高さ位置となる。つまり、弁部材55の下端部における上側の挟持片部42aの上面が、弁部材55において、制御筒45の所定の部分に接触して弁部材55の上昇を規制する係止面55aとなる。
本実施形態では、制御筒45において、弁部材55の係止面55aが接触する部分として、オーバーフロー管42が貫通する内筒部48の下側の開口端の周縁に沿って円環状に下側に向けて突出する環状突部45aが設けられている。環状突部45aは、内筒部48が中央部に立設した状態で設けられることで内筒部48の下降端が連続した態様となる水平板状の水平隔壁部49において、内筒部48の下側の開口が臨む水平隔壁部49の下面49bから下方に向けてわずかに突出する環状の突条部である。このように、本実施形態では、弁部材55の引上げが可能な高さ位置が、弁部材55の係止面55aが制御筒45に設けられた環状突部45aに下側から接触する高さ位置であり、かかる高さ位置が、弁部材55の上昇端の位置となる。
そして、図9(a)に示すように、第1高さ位置は、弁部材55の引上げが可能な高さ位置に対して、弁部材55が、所定量の遊び、つまり上昇代として、係止面55aとその上方の環状突部45aとの間に所定の寸法D1の隙間を隔てた高さ位置となる。すなわち、第1高さ位置は、弁部材55が係止面55aを環状突部45aに接触させることで上昇が規制される位置よりも下方の位置であって、係止面55aの上方に環状突部45aとの間の寸法D1の隙間が存在する高さ位置に設定されている。
このような弁部材55の第1高さ位置に対して、第2高さ位置は、図9(b)に示すように、上述したような弁部材55の上昇端の高さ位置、つまり弁部材55の係止面55aが制御筒45の環状突部45aに接触して弁部材55の上昇が規制される高さ位置となる。したがって、弁体41の下面41aの高さ位置を弁部材55の(弁体41の)高さ位置とした場合、係止面55aと環状突部45aとの間に寸法D1の隙間を隔てた第1高さ位置H1(図9(a)参照)に対して、第1高さ位置H1から隙間の寸法D1だけ上方の位置が、第2高さ位置H2となる(図9(b)参照)。
このように、回動伝達部材32の回動にともなう第1の玉鎖35の引上げによって弁部材55が第1高さ位置まで上昇し、その後、フロート50に作用する浮力により弁部材55が第2高さ位置までさらに上昇するように、フロート50が構成されている。言い換えると、回動伝達部材32の操作にともなう第1の玉鎖35による弁部材55の引上げによる第1高さ位置までの上昇動作に加えて、フロート50による弁部材55の押上げによる第2高さ位置までの上昇動作が行われるような浮力が得られるように、フロート50が構成されている。
以上のように、本実施形態の排水弁装置40においては、弁部材55の上昇動作について、第1の玉鎖35からの引上げによる第1高さ位置までの上昇動作と、フロート50からの押上げによる第2高さ位置までの上昇動作の2段階の上昇動作が行われる。このような弁部材55の2段階の上昇動作は、例えば、弁部材55がフロート50の浮力を受けることによっても弁部材55の上昇動作が第1高さ位置までとなる構成との比較において、円筒状のフロート50の長さを増加させること等によってフロート50の浮力を上昇させることにより実現される。
特に、フロート50の浮力については、洗浄水タンク12内の水位がフロート50を収容する貯水筒43の上端の位置よりも下がった状態においても、フロート50の押上げによって弁部材55を第2高さ位置まで上昇させることができる程度の浮力が得られるように設定される。これにより、弁部材55が確実に第2高さ位置まで上昇する。
以上のような構成を備える本実施形態の排水弁装置40によれば、洗浄水を排出する排水口14を開閉する排水弁51の開閉動作にフロート50による浮力を利用した構成において、洗浄水の排出先となる便器本体2における圧力損失が小さい場合であっても、排水弁51の早閉まりを防止することができ、洗浄水の排出量を安定させることができる。
例えば、洗浄水タンク装置1が、洗浄水の排出先として、受け入れる洗浄水の導水路の流路面積が広く圧力損失(先抵抗)が小さい便器本体2に適用された場合、小タンク60内に流入して排水口14から排出される洗浄水が勢い良く流れ、排水弁51の弁体41を下方へと引き込む負圧が生じる。このように洗浄水の流れによって生じる負圧は、弁体41に対して下方に引き込む方向、つまり排水弁51が閉じる方向の力を作用させるので、排水弁51が所定のタイミングよりも早く閉弁してしまうという、いわゆる早閉まりの原因となる。こうした排水弁51の早閉まりは、洗浄水タンク12内からの洗浄水の排出の過程における洗浄水タンク12内の最終的な水位(死水位置)DWL(図2参照)がばらつく原因となり、便器本体2に対して十分な量の洗浄水が供給できなくなる場合を生じさせる。
そこで、本実施形態の排水弁装置40ように、フロート50の浮力を用いて、弁部材55の上昇の高さ位置を、第1の玉鎖35による引上げの第1高さ位置よりも高い第2高さ位置とすることで、弁体41を最大限高い位置まで上昇させることが可能となる。つまり、弁部材55を、第1の玉鎖35による引上げ量に加えてもう一段、フロート50の浮力によって弁部材55の上昇が規制される上昇端の位置まで確実に上昇させることが可能となる。これにより、排水弁装置40を備える洗浄水タンク装置1が、先抵抗が小さい便器本体2に適用された場合であっても、排水弁51の早閉まりを防止することができる。このため、洗浄水タンク12内の最終的な水位(死水位置)を安定させることができ、便器本体2に対して安定して十分な量の洗浄水を供給することができる。結果として、便器本体2側の圧力損失(先抵抗)の大きさにかかわらず、排水弁51の早閉まりを防止して洗浄水の排出量を安定することができるので、排水弁装置40を備えた洗浄水タンク装置1により様々な種類の便器に対応することが可能となり、高い汎用性を得ることができる。
また、第1の玉鎖35の引上げによる弁部材55の第1高さ位置から第2高さ位置までの上昇が、フロート50による弁部材55の押上げであることから、弁部材55の引上げにともない第1の玉鎖35にテンションがかかることなく、弁体41を最大限上昇させることができる。このため、第1の玉鎖35の切断や第1の玉鎖35が連結される部分の破損等を生じさせることなく、弁部材55を(弁体41を)確実に最大限上昇させることができる。
なお、本実施形態では、弁部材55の第2高さ位置は、弁部材55がその係止面55aを制御筒45の環状突部45aに接触させることで弁部材55の上昇が規制される位置であるが、これに限定されない。つまり、第2高さ位置としては、回動伝達部材32により第1の玉鎖35を介して弁部材55が引き上げられる第1高さ位置より高い高さ位置であればよい。
また、本実施形態に係る排水弁装置40においては、弁部材55とフロート50とは互いに別体として構成されている。すなわち、弁部材55とフロート50とは、互いに独立して上昇するように設けられている。具体的には、本実施形態では、円筒状のフロート50が、弁部材55を構成するオーバーフロー管42を挿通させる制御筒45の内筒部48に外嵌された状態で設けられることで、フロート50がオーバーフロー管42を相対移動可能に貫通させた態様で設けられている。そして、このようにフロート50と別体として設けられた弁部材55には、フロート50が浮力で上昇した際にフロート50の上端面50aに当接するストッパとしての係止部材44が設けられている。
このような構成によれば、弁部材55の上昇動作に関し、次のような作用が得られる。弁部材55とフロート50とが互いに別体として構成されている場合の弁部材55の上昇動作について、図10を用いて説明する。
操作レバー31による回動伝達部材32の回動操作にともなって第1の玉鎖35により弁部材55が引き上げられることで、先に弁部材55が上昇し、わずかに遅れてフロート50が浮力によって上昇する。このため、図10(a)に示すように、弁部材55が第1の玉鎖35によって引き上げられた直後には、フロート50が弁部材55に作用していない状態、つまりフロート50の上端面50aが係止部材44から離れた状態が生じる(図10(a)、符号D2参照)。
そして、弁部材55が第1高さ位置に達するまでの過程で、あるいは弁部材55が第1高さ位置に達してから下降を開始した後に、フロート50が浮力によって上昇して係止部材44に当接して弁部材55に作用する。これにより、図10(b)に示すように、弁部材55がフロート50の浮力によって第2高さ位置まで押し上げられて上昇させられる。
したがって、第1の玉鎖35による弁部材55の引上げの開始時において弁部材55がフロート50よりも先に上昇した状態(図10(a)参照)から、弁部材55が第2高さ位置に達するまで(図10(b)参照)の過程における動作態様としては、次のような2つの動作態様が考えられる。すなわち、1つは、弁部材55が引上げによって第1高さ位置まで上昇する過程で、上昇するフロート50が弁部材55に追い付いて弁部材55に作用し、そのまま弁部材55を第2高さ位置まで押し上げるという動作態様である。もう1つは、弁部材55が引上げによって第1高さ位置まで達した後の下降中に、フロート50が弁部材55に対向して衝突するように弁部材55に作用し、弁部材55を第2高さ位置まで押し上げるという動作態様である。
以上のように、弁部材55とフロート50とが互いに別体として構成され、弁部材55にフロート50に対するストッパとしての係止部材44が設けられている構成によれば、弁部材55を第1高さ位置まで上昇させるための引上げ操作について、回動伝達部材32の回動操作のための操作力を低減することができる。
フロート50は、弁部材55の貯水筒43が挿入される内筒部48に外嵌された状態で設けられる円筒状の部材であり、弁部材55よりも外径が大きく弁部材55の軸方向視(上面視)で弁部材55の周囲に存在する。このため、仮にフロート50がオーバーフロー管42と一体である場合、弁部材55の引上げによる上昇において、フロート50が水圧を受ける面積を増大させることになるので、その分、弁部材55の引上げにともなう水の抵抗が大きくなり、大きな引上げ操作力が必要となる。この点、本実施形態のようにフロート50が弁部材55と別体として構成されていることにより、弁部材55の引上げ操作についてフロート50による水の抵抗が作用しないことから、弁部材55の引上げ操作にともなう操作力が小さくなる。これにより、弁部材55を第1高さ位置まで引き上げて上昇させるための操作力を低減させることができ、良好な操作性を得ることができる。
なお、フロート50と弁部材55とは互いに一体的に構成されてもよい。この場合、例えば、フロート50の上側の部分にフロート50とオーバーフロー管42とを互いに連結する連結部材が設けられることにより、フロート50と弁部材55とが互いに連結される。