JP6066849B2 - 既存建物の免震化方法 - Google Patents

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開示は、既存建物を所定寸法移動させるとともに免震化する既存建物の免震化方法および免震弾性体装置に関する。
近年、既存建物の耐震性を確保するために、既存建物を既存基礎や地盤から切り離して既存建物と既存基礎との間または既存建物(基礎)とその下に新設した基礎との間に免震装置を介装する免震化工事が行われることが多くなっている。免震化工事を行うと、地震時に建物が基礎(地盤)に対して水平方向に移動することになるため、敷地境界内に基礎が納まっていても、揺動した建物が敷地境界からはみ出ることがある。また、揺動した建物が敷地境界からはみ出なくとも、建物の周囲に構造物などが近接配置されている場合には、地震時に建物を揺動させるために必要なクリアランスが確保できないこともある。
このように建物の揺れ代が足りないような場合には、ダンパー量(減衰力)を増やして免震装置の変形を抑制する対策や、免震装置の剛性を大きく(建物の揺れの周期を短く)して変形を抑制する対策、さらには、たとえば地下擁壁などの構造体に緩衝材を設置して大きな揺れのときには建物を擁壁に接触させて免震装置の変形を抑制する対策などが採られることがある。しかしながら、免震装置の変形を抑制するこのような対策では、免震装置が本来持つ性能が犠牲となり、応答加速度が増加するなどの弊害が生じていた。そのため、免震装置の性能を十分に発揮させるためには、免震化工事に先立って、揺れ代を確保できる位置へ既存建物を移動する曳き家工事を行う必要がある。
ところが、免震化工事と曳き家工事とを別工程で単独に実施すると、それぞれの作業に要する装置を必要とし、作業に要する労力も多大になる。このような課題を解決するために、既存建物の柱基礎下に新設基礎と連接する移設基礎を構築し、柱基礎面と移設基礎面との間に直交する上下レールおよびこの間に配置される免震すべり支承からなる直交免震装置を配置し、下レールを、移設基礎面上に配置する延設部と新設基礎面上に延設部に一体に配置する移設部とから構成し、下レールに沿って柱基礎を新設基礎上に移設した後に既存建物と新設基礎との間に減衰装置と復元装置とを装備して免震機構を形成させるようにした移設免震化方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、曳き家作業においては、既存建物を一度に一斉に動かさなくてはならず、作業が大変であり、移動作業中の建物の姿勢、移動速度などの移動制御が困難で、移動作業に必要な設備コスト、人的コストが増大する。このような課題を解決するために、免震用ゴム体の上端または下端を免震構造建物の免震上部基礎部または免震構造建物の免震下部基礎部に固定し、かつ、免震用ゴム体の下端または上端を水平方向に移動して免震用ゴム体を変形させて免震用ゴム体に発生させた復元力で免震構造建物を移動させるようにした免震構造建物の曳き家方法が提案されている(特許文献2参照)。
特許第4187887号公報 特許第4199693号公報
しかしながら、通常の建物では免震用ゴム体が多数設置されるため、特許文献2の曳き家方法では、上端または下端が免震構造建物に固定された免震用ゴム体の下端または上端を水平方向に移動する作業に多大な労力と時間を要する。特に、特許文献2の実施例に記載されるように、複数列に配置された免震用ゴム体のうち、グループ分けした各グループの免震用ゴム体の下端を600mm移動させるために、200mm程度ずつの3回に分けて移動を行う方法では、免震用ゴム体の移動、固定作業の回数が膨大になり、施工効率が悪く、膨大な労力と時間を要する。
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、既存建物を所定寸法移動させるとともに免震化する工事において、移動作業に必要な設備コスト、人的コストをより低減できるうえ、施工効率のよい既存建物の免震化方法、および移動作業に必要な設備コスト、人的コストをより低減できる免震弾性体装置を提供することをその主な目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一側面によれば、既存建物(1)を所定寸法(D)移動させるとともに免震化する既存建物の免震化方法であって、免震弾性体(25)を用意するステップと、前記免震弾性体の上端部(上取付フランジ23)と下端部(下取付フランジ24)とを水平方向に所定寸法ずらして前記免震弾性体(25)を変形状態に保持するステップと、前記既存建物を下部構造体(12)と上部構造体(14)とに分割し、前記下部構造体と前記上部構造体との間に、前記変形状態の免震弾性体(25)を少なくとも1つ含む複数の免震装置(20)を介装するステップと、前記免震弾性体に対する変形状態の保持を解除し、当該免震弾性体(25)の復元力によって前記上部構造体(14)を移動させるステップとを含む構成とする。
この構成によれば、予め変形状態に保持された免震弾性体を下部構造体と上部構造体との間に介装し、変形状態の保持を解除することにより、免震弾性体の復元力によって上部構造体を所定寸法移動させることができるため、上部構造体の移動作業に必要な設備コスト、人的コストをより低減できるうえ、施工効率を向上させることもできる。
また、本発明の一側面によれば、前記既存建物に介装される少なくとも1つの転がり支承(41)を用意するステップを更に含み、前記免震装置(20)を介装するステップでは、少なくとも1つの前記変形状態の免震弾性体(25)および前記少なくとも1つの転がり支承(41)を前記下部構造体(12)と前記上部構造体(14)との間に介装する構成とすることができる。
この構成によれば、変形状態の免震弾性体に加えて、上部構造体移動時の抵抗が比較的小さな転がり支承を併用することにより、免震弾性体の必要数量を少なくすることができ、かつ上部構造体を移動可能に支持しつつ上部構造体の移動に必要な力を比較的小さくすることができる。これにより、保持具の保持解除作業がより少なくなり、施工がより容易になる。また、上部構造体を移動させる寸法が大きく免震弾性体だけでは鉛直荷重を支持できないような工事にも、本方法の適用を可能とし、設計自由度を高めることができる。
また、本発明の一側面によれば、前記既存建物が平面視略矩形を呈し、前記免震装置(20)を介装するステップでは、前記変形状態の免震弾性体(25)を前記既存建物の少なくとも四隅(隅柱8C)に配置する構成とすることができる。
この構成によれば、平面視で回転方向のモーメントを加えることなく、上部構造体を所望の方向へ平行移動させることができる。また、転がり支承を併用する場合には、鉛直荷重の大きな位置に転がり支承を用い、鉛直荷重が比較的小さな四隅に免震弾性体を用いることができるため、免震弾性体の損傷を抑制できる。
また、本発明の一側面によれば、前記免震装置(20)を介装するステップでは、前記既存建物(1)を柱(8)の中間位置で前記下部構造体と前記上部構造体とに分割し、分割された前記柱の下側部分(8L)と上側部分(8U)との間に前記免震装置(20)を介装し、前記既存建物を分割する前に、前記柱の前記下側部分(8L)を補強するステップを更に含む構成とすることができる。
この構成によれば、基礎構造体ごと既存建物を移動させることなく、所望の位置よりも上方の上部構造体のみを移動させることができるため、基礎構造体ごと既存建物を移動させる場合に比べて付随する工事を簡単にすることができる。
また、上記課題を解決するために、本発明の一側面によれば、既存建物(1)を所定寸法(D)移動させるとともに免震化する免震弾性体装置(21)であって、弾性体からなる本体部(22)、当該本体部の上端に設けられ、前記既存建物の上部構造体(14)に取り付けられる上取付部(23)、および当該本体部の下端に設けられ、前記既存建物の下部構造体(12)に取り付けられる下取付部(24)を有する免震弾性体(25)と、前記免震弾性体(25)の前記上取付部(23)と前記下取付部(24)とを所定寸法(D)ずらして前記本体部(22)を変形させた状態で前記上取付部(23)と前記下取付部(23)とを連結し、前記本体部(22)が変形した変形状態に前記免震弾性体(25)を保持する保持具(26)とを備える構成とする。
この構成によれば、免震弾性体の本体部が予め変形した状態で保持されているため、既存建物を免震化するとともに所定寸法移動させる際に、免震弾性体装置を所定の位置に設置し、保持具による本体部の変形状態の保持を解除するだけで、上部構造体を移動させることができる。したがって、上部構造体の移動作業に必要な設備コスト、人的コストをより低減できるうえ、施工効率を向上させることもできる。
また、本発明の一側面によれば、前記免震弾性体(25)は、前記上取付部(23)に形成され、平面視で互いに平行な一対の上辺(28)と、前記下取付部(24)に形成され、前記一対の上辺(28)と平行かつ互いに平行な一対の下辺(30)とを有し、前記保持具(26)は、対応する前記上辺および前記下辺にそれぞれ接合される一対の板片(26)を含む構成とすることができる。
この構成によれば、上取付部と下取付部とを所定寸法ずらして免震弾性体の本体部を変形させた状態で、一対の板片を上取付部および下取付部に接合するだけで免震弾性体装置を作成でき、かつ上取付部および下取付部の少なくとも一方に対する一対の板片の接合を解除するだけで免震弾性体の本体部に復元力を発揮させることができる。
このように、本発明によれば、移動作業に必要な設備コスト、人的コストをより低減できる施工効率のよい既存建物の免震化方法、および移動作業に必要な設備コスト、人的コストをより低減できる免震弾性体装置を提供することができる。
実施形態に係る既存建物の免震化方法を説明するための建物の要部断面図 図1に示す免震弾性体装置の斜視図 他の実施形態に係る既存建物の免震化方法を説明するための建物の平面図 図3に示す転がり支承の斜視図 更に別の実施形態に係る既存建物の免震化方法を説明するための建物の断面図
以下、図面を参照しながら本発明に係る既存建物1の免震化方法および免震弾性体装置21の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る既存建物1の免震化方法の説明図であり、既存建物1の要部断面を施工手順に従って(A)〜(D)に示しており、(A)は免震化工事前の既存建物1を示している。(A)に示すように、既存建物1は、ここでは鉄筋コンクリート造であり、基礎構造体2と建物構造体3とから構成されている。基礎構造体2は、地盤G中に構築された複数の基礎杭4や、互いに隣接する複数本からなる1群の基礎杭4の頭部を連結するように構築された複数のフーチング5、フーチング5を連結する基礎梁6、フーチング5の上面から上方へ突出するように構築され、1階スラブ10に至る複数の基礎柱7などを主構成要素として有している。建物構造体3は、基礎柱7に連続する複数の柱8や、柱8を連結する梁9、梁9の上部に構築されたスラブ10、外壁11などを主構成要素として有している。1階スラブ10はフーチング5の上面よりも高い位置に形成されており、1階スラブ10を支持するように基礎梁6がフーチング5の上面よりも上方に突出している。
ここでは、既存建物1の揺れ代を確保することなどを目的として、既存建物1を図の右方へ移動させるとともに免震化する手順を(B)〜(D)に示している。手順は次の通りである。まず、(B)に想像線で示すように免震装置20を設置する位置を決定し、この位置よりも下側の既存建物1(以下、下部構造体12と称する。)を補強する。ここでは、基礎柱7および1階の柱8の下部を図面右方へふかす(拡張する)ように鉄筋コンクリートによる補強部13を構築する。
次に、(C)に示すように、1階の柱8の免震装置20を設置する部分を撤去して1階の柱8を上側部分8Uと下側部分8Lとに分割し、撤去した部分に免震装置20を設置する作業を繰り返し、すべての柱8に免震装置20を設置することで、既存建物1を下部構造体12と免震装置20よりも上側の上部構造体14とに分割する。なお、外壁11や図示しない内壁も適宜上下に分割する。ここでは免震装置20として、全ての柱8に対して図2に示す免震弾性体装置21を用いている。
免震弾性体装置21は、図2に示すように、弾性体からなる本体部22と、本体部22の上端に設けられ、柱8の上側部分8Uに取り付けられる上取付フランジ23と、本体部22の下端に設けられ、柱8の下側部分8Lに取り付けられる下取付フランジ24とを有する免震弾性体25と、2枚の保持板26、26とを有するように構成されている。
本体部22は、例えば、鋼板とゴムとを互いに接着させながら交互に積層させた積層体など、公知の構成のものであってよく、荷重が加わらない状態で円柱状を呈するように形成されている。
上取付フランジ23は、平面視で矩形を呈する板状部27と、板状部27の互いに平行な一対の上辺に沿って下方に突出するように形成された一対の保持用フランジ28、28とを有している。同様に、下取付フランジ24は、平面視で矩形を呈する板状部29と、板状部29の互いに平行な一対の下辺に沿って上方に突出するように形成された一対の保持用フランジ30、30とを有している。上取付フランジ23の保持用フランジ28および下取付フランジ24の保持用フランジ30は互いに平行となる位置に設けられている。
上取付フランジ23の板状部27の四隅には、板状部27を柱8の上側部分8Uに固定するために用いる図示しないボルトを挿通させるためのボルト挿通孔31が3つずつ形成されている。同様に、下取付フランジ24の板状部29の四隅には、板状部29を柱8の下側部分8Lに固定するために用いる図示しないボルトを挿通させるためのボルト挿通孔32が3つずつ形成されている。上取付フランジ23および下取付フランジ24は、それぞれ柱8の上側部分8Uおよび下側部分8Lに設置されるナットアンカーやアンカーボルトに締結されることにより、柱8の上側部分8Uおよび下側部分8Lに固定される。
上取付フランジ23および下取付フランジ24の保持用フランジ28、30には、長手方向に所定の間隔をもって複数のボルト孔33が形成されている。これらのボルト孔33は、ボルトを挿通させるためのボルト挿通孔であってもよく、ボルトを螺合させる雌ねじ孔であってもよい。或いは、保持用フランジ28、30に形成されたボルト挿通孔と保持用フランジ28、30の内面に溶接されたナットの雌ねじ孔との組み合わせであってもよい。
保持板26は、ここでは矩形状の鋼板として構成されており、免震弾性体25の高さ寸法と同等の高さに形成されている。保持板26の上部および下部には、それぞれ上辺および下辺に沿ってボルト孔33の間隔と同じ間隔で複数のボルト挿通孔34が形成されている。保持板26は、免震弾性体25の上取付フランジ23と下取付フランジ24とを保持用フランジ28、30の延在方向(水平方向)に所定寸法Dずらした位置で連結することで、本体部22を変形状態に保持する保持具として機能する。
つまり、免震弾性体装置21は、図2に示した状態で2枚の保持板26、26をボルト35によって上取付フランジ23および下取付フランジ24に締結することで、上取付フランジ23および下取付フランジ24が所定寸法Dずれた位置で保持板26によって連結され、本体部22が予め変形状態に保持されたユニットとして構成される。
免震弾性体25は通常、工場で製作され、各製品について性能試験が行われる。性能試験では、上取付フランジ23および下取付フランジ24を装置に固定した状態で水平方向に変位させる水平せん断試験を行う。そこで、本実施形態では、水平せん断試験を行った後に、上取付フランジ23および下取付フランジ24を水平方向に所定寸法Dずらした状態で2枚の保持板26、26を上下の保持用フランジ28、30に接合することにより、上取付フランジ23および下取付フランジ24が所定寸法Dずれた位置で固定され、本体部22が予め変形状態に保持された免震弾性体装置21を作成する。
図1に戻り、(C)に示すように、免震弾性体装置21を配置する際には、下取付フランジ24が上取付フランジ23に対して図中右方にずれた位置となる向きとし、下取付フランジ24が補強部13に載るように設置している。
その後、(D)に示すように、全ての免震弾性体装置21から保持板26を撤去することにより、免震弾性体25の本体部22が発生させる復元力によって上部構造体14が図中右方に所定寸法D移動する。つまり、免震弾性体25が曳き家工事のレールの役割と、上部構造体14を水平方向に曳く手段の役割とを果たし、移動手段として専用のジャッキなどを用いることなく上部構造体14を移動させることができる。上部構造体14の移動後には、免震弾性体25はアイソレータとして機能する。
なお、下部構造体12と上部構造体14との間に図示しないダンパーを設置するが、ダンパーの設置は上部構造体14の移動前に行うとよい。上部構造体14の移動前にダンパーを設置することにより、保持板26を撤去した際に上部構造体14に大きな加速度が発生することが抑制される。ただし、上部構造体14の移動前にダンパーを設置しなくても、下部構造体12と上部構造体14とをチェーンブロックなどで連結しておけば、保持板26を撤去した際の上部構造体14の移動を規制し、後にチェーンブロックを伸ばしながら上部構造体14を徐々に移動させることができる。
このように、免震弾性体25の本体部22が予め変形状態に保持された免震弾性体装置21を下部構造体12と上部構造体14との間に介装し、保持板26による保持を解除することにより、免震弾性体25の本体部22の復元力によって上部構造体14を所定寸法D移動させることができるため、上部構造体14の移動作業に必要な設備コスト、人的コストがより低減されるうえ、施工効率も向上する。
本実施形態では、既存建物1を柱8の中間位置で下部構造体12と上部構造体14とに分割し、分割された柱8の下側部分8Lと上側部分8Uとの間に免震弾性体装置21を介装するようにし、既存建物1を分割する前に、補強部13を構築して柱8の下側部分8Lを補強するようにしているため、基礎構造体2ごと既存建物1を移動させることなく、所望の位置よりも上方の上部構造体14のみを移動させることができる。そのため、基礎構造体2ごと既存建物1を移動させる場合に比べ、付随する工事が補強部13の構築だけで済み、施工がより簡単である。
また、図2に示すように、免震弾性体25が、上取付フランジ23に形成された互いに平行な一対の保持用フランジ28と、下取付フランジ24に形成された、保持用フランジ28と平行かつ互いに平行な一対の保持用フランジ30とを有し、保持板26が対応する上下の保持用フランジ28、30にそれぞれ接合される構成とされているため、容易に免震弾性体装置21を作成でき、かつ容易に保持板26による本体部22の変形状態の保持を解除して免震弾性体25の本体部22に復元力を発揮させることができる。
次に、図3を参照して、他の実施形態に係る既存建物1の免震化方法について説明する。なお、上記実施形態と共通する部位や部材には同一の符号を付しており、重複する説明は省略する。以下で示す更に別の実施形態についても同様とする。
図3は、既存建物1(主に下部構造体12)の模式的な概略平面を施工手順に従って(A)〜(D)に示しており、(A)は免震化工事前の既存建物1を示している。(A)に示すように、既存建物1は平面視で矩形を呈しており、柱8が互いに直交する2方向のそれぞれに複数列に配置されている。ここでは図3に示すように、図中左右方向に4列、図中上下方向(以下、前後方向とする。)に3列に柱8が配置されているものとして説明する。(B)〜(D)は、既存建物1を後方(図の下方)へ移動させるとともに免震化する手順を示している。手順は次の通りである。
まず、(B)に示すように、既存建物1を下部構造体12と上部構造体14とに分割する前に、下部構造体12を補強する。補強は、上記実施形態(図1(B)参照)と同様に、基礎柱7および1階の柱8の下部を建物後方へふかす(拡張する)ように鉄筋コンクリートによる補強部13を構築して行われる。
次に、1階の柱8の免震装置20を設置する部分を撤去し、(C)に示すように、この部分に免震装置20を設置する作業を順次行う。本実施形態では、免震装置20として、図2に示した免震弾性体装置21は4基用意し、これらの免震弾性体装置21は既存建物1の四隅の隅柱8Cに設置する。その他の柱8には、免震装置20として、図4に示す転がり支承41を設置している。
転がり支承41は、図4に示すように、柱8の下側部分8Lに取り付けられる下フランジプレート42と、下フランジプレート42の上面に設置された下リニアレール43と、柱8の上側部分8Uに取り付けられる上フランジプレート44と、上フランジプレート44の下面に設置され、下リニアレール43と直交する方向に延在する上リニアレール45と、下リニアレール43と上リニアレール45とに摺動自在に係合するリニアブロック46とを有するように構成されている。
下フランジプレート42および下リニアレール43は、上部構造体14を所定寸法D移動させることができるように、それぞれ上フランジプレート44および上リニアレール45に比べて所定寸法D長く形成されている。ここでは、上フランジプレート44および上リニアレール45は、柱8の左右方向の断面寸法に対応する長さに形成され、下フランジプレート42および下リニアレール43は、柱8の前後方向の断面寸法に補強部13の前後方向寸法を合算した値に対応する長さに形成されている。
図3に戻り、(C)に示すように、免震弾性体装置21は、下端が上端に対して建物後方(図中下方)にずれた位置となる向きに配置し、下端が補強部13に載るように設置している。一方、転がり支承41は、下リニアレール43が柱8から補強部13に至るように設置され、上リニアレール45が下リニアレール43の前側(図中上側)部分に位置した状態で、柱8の前後方向の中央に設置される。
その後、(D)に示すように、全ての免震弾性体装置21から保持板26(図2参照)を撤去することにより、免震弾性体25が発生させる復元力によって上部構造体14が図中右方に所定寸法D移動する。なお、上部構造体14の移動前または移動後には、上記実施形態と同様に、下部構造体12と上部構造体14との間に図示しないダンパーが設置され、免震弾性体25および転がり支承41はアイソレータとして機能する。
このように、免震装置20として、免震弾性体装置21とは別に、上部構造体14の移動時の抵抗が比較的小さな転がり支承41を用意し、免震弾性体装置21に加えて転がり支承41を既存建物1に介装することにより、免震弾性体装置21の必要数量が少なくなり、かつ上部構造体14を移動可能に支持させつつ上部構造体14の移動に必要とされる免震弾性体25の復元力を比較的小さくできる。これにより、保持板26の保持解除作業がより少なくなる。また、上部構造体14を移動させる寸法が大きく免震弾性体25だけでは鉛直荷重を支持できないような工事にも、本方法の適用が可能になり、設計自由度が高まる。なお、このような場合には免震弾性体装置21を曳き家のためのみに用い、曳き家の後に新たな免震弾性体25や転がり支承41を設置してもよい。
そして、免震弾性体装置21を既存建物1の四隅に配置したことにより、平面視で回転方向のモーメントを加えることなく、上部構造体14を所望の方向へ平行移動させることができる。また、鉛直荷重の大きな位置に転がり支承41が用いられ、鉛直荷重が比較的小さな四隅に免震弾性体装置21を用いられるため、免震弾性体25の疲労や損傷が抑制される。
最後に、図5を参照して、更に別の実施形態に係る既存建物1の免震化方法について説明する。本実施形態では、既存建物1が地下階を有しており、地下階で既存建物1を下部構造体12と上部構造体14との分割する点が上記実施形態と異なる。
このような場合には、既存建物1の補強および分割(図5(C))並びに曳き家および免震化(図5(D))の前に、図5(B)に示すように、上部構造体14の揺れ代を確保するために、少なくとも曳き家工事後の上部構造体14の外面から水平方向に所定のクリアランスを形成する擁壁15を地盤G中に構築する。擁壁15は、基礎構造体2に連結するように構築するとよい。以降、図5(C)および(D)に示す手順は上記実施形態と同様である。
このように、既存建物1の分割および曳き家の前に擁壁15を構築すことにより、免震装置20を地面よりも低い位置に設定することが可能になり、本発明に係る免震化方法を適用可能な既存建物1の構造範囲が広がり、設計自由度も増す。
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各部材の具体的形状や配置などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、本体部22として鋼板とゴムとを交互に積層させた積層体を用いているが、復元力を有するものであれば、異なる構成のものを用いてもよい。また、図3に示す実施形態では、免震装置20として免震弾性体装置21および転がり支承41を用いているが、転がり支承41の代わりに滑り支承を用いてもよい。また、上記実施形態では、保持具として一対の保持板26を用いているが、免震弾性体25の本体部22を変形状態に保持できるものであれば、如何なる形態のものを用いてもよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、形状、素材など、および手順は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した構造および手順の各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択してもよい。
1 既存建物
8 柱
8C 隅柱
8L 下側部分
8U 上側部分
12 下部構造体
13 補強部
14 上部構造体
20 免震装置
21 免震弾性体装置
22 本体部
23 上取付フランジ(上取付部)
24 下取付フランジ(下取付部)
25 免震弾性体
26 保持板(保持具、板片)
28 保持用フランジ(上辺)
30 保持用フランジ(下辺)
41 転がり支承
D 所定寸法

Claims (6)

  1. 既存建物を所定寸法移動させるとともに免震化する既存建物の免震化方法であって、
    免震弾性体を用意するステップと、
    前記免震弾性体の上端部と下端部とを水平方向に所定寸法ずらして前記免震弾性体を変形状態に保持するステップと、
    前記既存建物を下部構造体と上部構造体とに分割し、前記下部構造体と前記上部構造体との間に、前記変形状態の免震弾性体を少なくとも1つ含む複数の免震装置を介装するステップと、
    前記免震弾性体に対する変形状態の保持を解除し、当該免震弾性体の復元力によって前記上部構造体を移動させるステップと
    を含むことを特徴とする既存建物の免震化方法。
  2. 前記既存建物に介装される転がり支承を用意するステップを更に含み、
    前記免震装置を介装するステップでは、少なくとも1つの前記変形状態の免震弾性体および少なくとも1つの前記転がり支承を前記下部構造体と前記上部構造体との間に介装することを特徴とする、請求項1に記載の既存建物の免震化方法。
  3. 前記既存建物が平面視略矩形を呈し、
    前記免震装置を介装するステップでは、前記変形状態の免震弾性体を前記既存建物の少なくとも四隅に配置することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の既存建物の免震化方法。
  4. 前記免震装置を介装するステップでは、前記既存建物を柱の中間位置で前記下部構造体と前記上部構造体とに分割し、分割された前記柱の下側部分と上側部分との間に前記免震装置を介装し、
    前記既存建物を分割する前に、前記柱の前記下側部分を補強するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1〜請求項3に記載の既存建物の免震化方法。
  5. 前記免震弾性体が、弾性体からなる本体部、当該本体部の上端に設けられ、前記既存建物の上部構造体に取り付けられる上取付部、および当該本体部の下端に設けられ、前記既存建物の下部構造体に取り付けられる下取付部を有
    前記免震装置が、前記免震弾性体と、前記免震弾性体の前記上取付部と前記下取付部とを所定寸法ずらして前記本体部を変形させた状態で前記上取付部と前記下取付部とを連結し、前記本体部が変形した変形状態に前記免震弾性体を保持する保持具とを備えることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の既存建物の免震化方法
  6. 前記免震弾性体は、前記上取付部に形成され、平面視で互いに平行な一対の上辺と、前記下取付部に形成され、前記一対の上辺と平行かつ互いに平行な一対の下辺とを有し、
    前記保持具は、対応する前記上辺と前記下辺とにそれぞれ接合される一対の板片を含むことを特徴とする、請求項5に記載の既存建物の免震化方法
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