JP3898509B2 - 既設弾性支承の機能変更補修工法 - Google Patents

既設弾性支承の機能変更補修工法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上部構造物の鉛直荷重を支持している既設弾性支承装置を撤去することなく、上部構造物の鉛直荷重を、常時は負担せずに、地震時に作用する水平力および上揚力に対して、緩衝支承する水平バッファー(緩衝装置)に機能を変更する機能変更補修工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、既設の鋼製支承装置については、耐震目的で、これを、鉛プラグ入り積層ゴム支承装置のような弾性支承装置に交換し、免震化する工法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の弾性支承装置は、保有耐力までの大地震に対応するゴム支承なので、ゴム支承厚が厚く、水平方向の剛性が小さいため、水平変位が大きくなり、長周期化による2次製品の取付けボルト部等の負担が増すという問題があり、水平変位が小さく、しかも高減衰となるような弾性支承装置が望まれている。
また、橋脚または橋台等の下部構造物と、橋桁等の上部構造物との間に配設されているゴム支承のような既設弾性支承装置についても適用することができる既設弾性支承装置の機能変更補修工法の出現が望まれている。
【0004】
本発明は、前述のような問題点を解消すべく提案されたもので、比較的簡単に機能変更して、既設弾性支承装置の機能を大きく変えることができ、かつ高減衰化を図ることができる既設弾性支承装置の機能変更補修工法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の既設弾性支承装置の機能変更補修工法においては、下部構造物に、新たに支承装置を設置して上部構造物の鉛直荷重を支持させ、かつ既設弾性支承装置の下方の下部構造物がはつられて、上部構造物の鉛直荷重を支持していた既設弾性支承装置を撤去することなく、上部構造物の鉛直荷重を支持しない水平バッファーに改造されていることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2の発明においては、請求項1に記載の既設弾性支承の機能変更補修工法において、既設弾性支承装置が、水平力と上揚力を緩衝支承する水平バッファーに改造されていることを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項3の発明においては、請求項1または2に記載の既設弾性支承装置の機能変更補修工法において、前記新たに設置される支承装置は、スライド式鋼製支承装置またはスライド式弾性支承装置あるいはその他の上部構造物の鉛直荷重を支承する支承装置であることを特徴とすることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明においては、請求項1〜3のいずれかに記載の既設弾性支承の機能変更補修工法において、新たに設置される支承装置が、ジャッキにより支持されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によると、新設の荷重支持用支承装置を設置すると共に下部構造物の上部の一部をはつるだけで、既設弾性支承装置の機能を大きく変更することができると共に、既設弾性支承装置を、上部構造物の鉛直荷重を支持しない水平力および上揚力の弾性支承装置に機能を変更する改造だけで、既設弾性支承装置の水平剛性の小さいことによる水平変位の大きくなる欠点を、新設の支承装置により、または、新設と既設の支承装置の減衰作用が共同して作用することにより簡単に解消することもできる。また、取付けボルト部(10,10A,11)等の負担が増すことはない。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の既設弾性支承装置の機能変更する補修工法を、既設道路橋に適用した一実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0011】
図3は本発明を適用する前の従来の既設弾性支承装置1の設置状態を示したもので、鉄筋コンクリート製(図示の場合)または鋼製の橋脚または橋台等の下部構造物2と、鉄筋コンクリート製または鋼製橋桁(図示の場合)3aを備えた上部構造物3との間に、上部鋼板4と下部鋼板5の間にゴム層6と耐圧補強鋼板7とを交互に一体に積層すると共に、鉛プラグ8をその内部に配設した既設免震弾性支承装置1が設置されている。
【0012】
この既設弾性支承装置1と、その上部の上部構造物(鋼桁の場合)3およびその下部の下部構造物2との接合状態は、図2(a)および図3に示すように、既設弾性支承装置1における取付け用上部鋼板4と取付け用下部鋼板5とが、それぞれ上部構造物3に着脱自在に固定のソールプレート8または下部構造物2に着脱自在に固定のベースプレート9に、ボルト10またはアンカーボルト11およびナット11aにより着脱自在に取付けられている。なお、ソールプレート8およびベースプレ−ト9は、それぞれ上部鋼板4または下部鋼板5にボルト10aにより着脱自在に固定されている。
【0013】
この上部構造物3を支持している既設弾性支承装置1を、上部構造物3の常時の鉛直荷重を支持しないで、地震時等に作用する水平力または上揚力を緩衝支承するための水平バッファー(水平力と上揚力の緩衝支承装置)14に改造する場合には、先ず、図4に示すように、既設弾性支承装置1の間に、下部構造物2に一体に、鉄筋コンクリート製支承台等の一つまたは複数の支承台12を、隣接する主桁3a相互に剛結合されている横桁3bの下面に間隔をおいて対向するように築造する。
【0014】
次に、下部構造物2の上面、または図5に示すように、前記鉄筋コンクリート製支承台12の上部に、例えば、特公昭48−19671号公報により公知のフラットタイプのジャッキまたはその他の流動硬化性モルタル充填形式のフラットタイプのジャッキ15を設置すると共に、前記ジャッキ15の上部に、図6に示すように、上部構造物3の鉛直荷重を支持させるための、例えば、荷重支持用弾性支承装置あるいは図示のような荷重支持用のスライド式弾性支承装置16(詳細説明は後記する)を配設する。前記ジャッキ15の上面を鋼製とする場合には、スライド式弾性支承装置16の下部を溶接またはボルト等により固着してもよい。
【0015】
次に、前記ジャッキ15にモルタルなどの硬化性充填材18を注入充填する前に、既設弾性支承装置1の上部と上部構造物3を係合した状態で、既設弾性支承装置1の下部と下部構造物2との係合を解除しておく(図示例の場合)、解除手段としては、例えば、図6のように、下部構造物2に固定するためのアンカーボルト11に螺合されているナット11aを弛緩させるか、ナット11aを取外しておき、この状態で、ジャッキ15にモルタルなどの流動硬化性またはその他の流動性充填材18を注入充填して、荷重支承用のスライド式弾性支承装置16を上昇移動させ、また上部構造物3をジャッキアップすると共に、上部構造物3に連結支持されている既設弾性支承装置1を上昇させ、上部構造物3の後死荷重を含めた鉛直荷重をすべて前記スライド式弾性支承装置16に荷重転換させ、この状態で、下部構造物2上面のコンクリート製または無収縮モルタルなどの台座33を、適宜高圧ジェット水等の公知の手段で、図2(a)に2点鎖線Xで示すレベルまで、図8に示すように、台座33の上部をはつるか、あるいは突起付き可撓性線状材(ワイヤーソー)を循環または往復駆動させる切削工法で、縦切りまたは横切りを適宜組み合わせた切削工法により、台座部分33を所定寸法レベル低下するように切削してギャップを形成し、既設弾性支承装置1の下面と下部構造物2の上面との間に、最終的にギャップGを形成する。
【0016】
なお、前記台座部分をはつった後に、充填材18の全部(油圧の場合)または一部(流動硬化性モルタルの場合)を排出して、ジャッキ15を短縮させるようにした上で、モルタルからなる充填材18を硬化させてもよい。このようにすると、上部構造物3を最終的に施工前のレベルで補修施工することができるので、上部構造物3を最終的に上昇させることができない場合に有効である。
【0017】
前記の既設弾性支承装置1の下面に形成するギャップGの寸法としては、5〜10mm程度のギャップGが形成されればよい。なお、荷重支持用の弾性支承装置16に荷重転換されたか否かは、適宜変位計等(図示を省略した)により測定して、荷重転換を確実にする。
【0018】
次に、図2(b)に示すように、弛緩状態または取り外されているナット11aを前記アンカーボルト11に螺合して、ベースプレート9を下部構造物2に連結固定するために、ベースプレート9上面のナット11aを緊締する。このように改造して、既設弾性支承装置1を、常時の上部構造物3の鉛直荷重を負担しないように解放すると共に、地震時等に上部構造物3に作用する水平力および上揚力を緩衝支承する水平バッファー(水平力と上揚力の緩衝支承装置)14に、新しい機能を有する装置に変更する。
【0019】
上部構造物3を支持している荷重支承用のスライド式弾性支承装置16におけるスライド板となるソールプレート19は上部構造物3に固定し、新設の支承装置の設置を含めた既設弾性支承装置1の機能変更する補修を完了する。このように機能変更する補修されて、既設弾性支承装置1は、本来、上部構造物3の鉛直荷重を常時支承できる性能を有する支承装置1であるが、この既設弾性支承装置1の鉛直荷重支承機能をなくして、地震時において、水平力と上揚力とを負担する水平バッファー14として機能するように改造されている。また水平バッファー14に改造された既設弾性支承装置1の間または橋軸方向等の横方向に離れた位置に、新たにスライド式弾性支承装置16を設置されているので、このすべり支承の摩擦減衰と水平バッファー14の履歴減衰の2つ減衰作用により、上部構造物3の小さな変位で、大きな減衰効果を得ることができる。
【0020】
また、一般に弾性支承装置を使用した免震橋では、橋桁の変位が大きくなるために、橋軸直角方向に免震化すると、小規模地震において、道路伸縮継手装置の損傷が予想されるが、橋桁の変位を小さく抑えることができると、小規模地震による道路伸縮継手装置の損傷を防止することができる。
【0021】
本発明を実施する場合、新設の上部構造物3の鉛直荷重を支承する支承装置として、弾性支承装置あるいは鋼製支承装置等、適宜の支承装置を使用することができるが、特に好適な支承装置としてスライド式支承装置があるので、図7に示す前記した鉛直荷重支持用のスライド式弾性支承装置16について、その構造を説明する。図7(a)は鉛直荷重支持用弾性支承装置の一側面図、同(b)は(a)のA−A線断面図、同(c)は(b)のB−B断面図である。
【0022】
この鉛直荷重支持用のスライド式弾性支承装置16は、せん断変形拘束壁21を有するスライド式弾性支承装置16で、図7(a)〜(c)に示すように、スライド式弾性支承装置16は、上部構造物3側に固定されるソールプレート19を滑り支承面を介して摺動可能に支持する上部鋼板22と、中央部のゴム層23と、下部鋼板24とが一体化された弾性支承体29を備えており、この弾性支承体29はほぼ短円柱状を呈している。
【0023】
そして、支承台12上のジャッキ15の水平な上面には、これにベースプレート26の下面が載置または載置固定されて、下部構造物2側に設置されている。四角形の前記ベースプレート26の平行な二辺に沿って各縦壁部27がベースプレート26に一体に設けられ、間隔をおいて対向配置されている。前記各縦壁部27により、せん断拘束壁21を構成している。
【0024】
前記両縦壁部27の内壁面28は平面円弧状に形成され、対向する内壁面28の間に前記弾性支承体29が嵌合載置されて、前記上部鋼板22がせん断拘束壁21に横方向の移動が拘束されて、弾性層23の水平方向の変形(せん断変形)が拘束されている。この嵌合状態において、縦壁部27の頂部30は、鉛直荷重支持用の弾性体29における上部鋼板22の板厚のほぼ中央部にまで及んでいる。また前記の嵌合状態で、上部構造物3の鉛直荷重を支持するように構成されている。また前記上部鋼板22の上面には、円形の四フッ化エチレン板などのすべり支承材31が固着されて、滑り支承面を構成している。
【0025】
なお、本発明を実施する場合、上部構造物3を下部構造物2上に設置したジャッキによりジャッキアップして、高レベル位置で支承した状態で、適宜、下部構造物2と一体にコンクリート製支承台12およびこれにアンカーボルト25により下部が固定される荷重支承用スライド式弾性支承装置16を配置して(図9参照)、下部構造物2の上部を所定レベルまではつって、その後、前記ジャッキを降下させて、上部構造物3の荷重をスライド式弾性支承装置16に支承させると共に、スライド式弾性支承装置16におけるソールプレート19を上部構造物3に固定してもよい。
【0026】
前記実施形態の場合は、既設の道路橋に適用した形態を示したが、本発明を実施する場合、その他の既設橋梁に適用するようにしてもよい。なお、荷重支承装置16は、横桁3b以外の主桁に配置してもよい。
【0027】
本発明を実施する場合、上部構造物2としては、鋼桁,PC桁,RC桁であってもよい。また、新たに設置される支承装置(図示の場合は、荷重支承用のスライド式弾性支承装置)は、既設弾性支承装置の橋軸方向の支点位置と同じ(橋軸直角方向の位置は変化しても)に設置すると、支点位置が変わらないので、桁の挙動も変わらないのでよい。なお、本発明を実施する場合、既設弾性支承装置の下部の下部構造物がはつられて、既設弾性支承装置の設置位置からレベル低下させた状態で、水平バッファーに改造されていてもよい。
【0028】
また、既設弾性支承装置と下部構造物の係合を解放した状態で、下部構造物に新たに設置した支承装置により支持した状態で、既設弾性支承装置下面の下部構造物の台座をはつると、簡単に既設弾性支承装置を水平力と上揚力を支承する水平バッファーに改造することができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によると、下部構造物に、新たに支承装置を設置して上部構造物の鉛直荷重を支持させ、かつ既設弾性支承装置の下方の下部構造物がはつられて、上部構造物の鉛直荷重を支持していた既設弾性支承装置を撤去することなく、これが上部構造物の鉛直荷重を支持しない水平バッファーに改造されているので、上部構造物の鉛直荷重を支持している既設弾性支承装置を簡単方法により、その機能を大きく変更することができる。
【0030】
また、新設の支承装置と、改造された支承装置との、2つの支承装置の減衰性能を利用できるので、上部構造物の水平変位を大きくしないで、小さな変位で、高い減衰性能を得ることができる。また新設の支承装置と、既設の弾性支承装置のそれぞれの機能が分離されて、単純化されているので、支承装置の設計が単純化され、設計の自由度を高めることができる。
【0031】
特に本発明の場合は、既設弾性支承装置を撤去しないので、既設弾性支承装置の機能変更する補修施工が容易に簡単に行なうことができる。
【0032】
また、前記新たに設置される支承装置が、スライド式鋼製支承装置またはスライド式弾性支承装置あるいはその他の上部構造物の鉛直荷重を支承する上部構造物の鉛直荷重支承用の支承装置のうち摩擦スライド式であると、スライド面での摩擦抵抗による摩擦減衰性能の高い、しかも上部構造物の水平変位の小さい支承装置とすることができる。また、取付けボルト部等の負担が増すことはない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の補修工法を採用して、既設弾性支承装置下面の台座をはつり、かつ既設弾性支承装置を水平力緩衝支承装置に改造すると共に、上部構造物と下部構造物との間に、スライド式弾性支承装置を設置した状態を示す一部縦断正面図である。
【図2】(a)は図3の一部を拡大して示す一部縦断正面図、(b)は図1の一部を拡大して示す図であり、既設弾性支承装置の下部に隙間ができるように、既設弾性支承装置を改造した状態を示す一部縦断正面図である。
【図3】既設弾性支承装置の設置状態を示す一部縦断正面図である。
【図4】橋軸直角方向の隣り合う既設弾性支承装置の間に、下部構造物と一体に支承台を築造した状態を示す一部縦断正面図である。
【図5】支承台の上部にフラットタイプのジャッキを設置した状態を示す一部縦断正面図である。
【図6】フラットジャッキの上にスライド式弾性支承装置を設置した状態を示す一部縦断正面図である。
【図7】本発明において使用することができる支承装置の一例として、スライド式弾性支承装置を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図であり、(c)は(b)のB−B線矢視平面図である。
【図8】上部構造物を上昇させた状態で、台座をはつった状態を示す一部縦断正面図である。
【図9】スライド式弾性支承装置の他の配設状態を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のC−C線断面図であり、(c)は(b)のD−D線矢視平面図である。
【符号の説明】
1 既設弾性支承装置
2 下部構造物
2a 橋脚または橋台
3 上部構造物
3a 橋桁
3b 横桁
4 上部鋼板
5 下部鋼板
6 ゴム層
7 耐圧補強鋼板
8 ソールプレート
9 ベースプレート
10 ボルト
11 アンカーボルト
12 支承台
13 横桁
14 水平バファー(水平力緩衝支承装置)
15 ジャッキ
16 荷重支承用のスライド式弾性支承装置
18 硬化性充填材
19 ソールプレート
21 せん断拘束壁
22 上部鋼板
23 中央部のゴム層
24 下部鋼板
25 アンカーボルト
26 ベースプレート
27 縦壁部
28 内壁面
29 弾性支承体
30 頂部
31 すべり支承材
33 無収縮モルタル製の台座

Claims (4)

  1. 下部構造物に、新たに支承装置を設置して上部構造物の鉛直荷重を支持させ、かつ既設弾性支承装置の下方の下部構造物がはつられて、上部構造物の鉛直荷重を支持していた既設弾性支承装置を撤去することなく、上部構造物の鉛直荷重を支持しない水平バッファーに改造されていることを特徴とする既設弾性支承装置の機能変更補修工法。
  2. 既設弾性支承装置が、水平力と上揚力を緩衝支承する水平バッファーに改造されていることを特徴とする請求項1に記載の既設弾性支承の機能変更補修工法。
  3. 前記新たに設置される支承装置は、スライド式鋼製支承装置またはスライド式弾性支承装置あるいはその他の上部構造物の鉛直荷重を支承する支承装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の既設弾性支承装置の機能変更補修工法。
  4. 新たに設置される支承装置が、ジャッキにより支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の既設弾性支承の機能変更補修工法。
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