JP3864164B2 - 高架橋の防振構造および施工方法 - Google Patents
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Description
さらに、上述の押圧機構については、変位吸収部材と補強部材との間に配置された他の構成とともに無収縮モルタルによって一体に固められていることが考えられる(請求項1)。このようにすれば、押圧機構による押圧力が低下することを防ぐことができ、押圧機構を永久構造物化することができる。
なおこの場合、上述のように、梁支持部を片持梁の下部にエポキシ樹脂によって一体に取り付け、さらに、上述の変位吸収部材については、弾性を有する材料にて構成し、圧縮された状態で片持梁に取り付けられた梁支持部と補強部材との間に配置され、前記梁支持部を介して前記片持梁を支持するようにしてもよい(請求項2)。このことにより、変位吸収部材においては、上述のような片持梁や補強部材に発生した「静的な変位」を吸収する作用を奏することに加えて、上述のように片持梁や補強部材に発生した「動的な変位」に対する作用も奏する。
(1)片持梁固定工程では、片持梁の下部に梁支持部をエポキシ樹脂によって固定する。
(2)補強部材設置工程では、梁支持部を介して片持梁を下方から支持することにより片持梁の振動を抑制する「補強部材」を設置する。なお、この補強部材は、変位吸収部材を片持梁へ押圧させることが可能な「押圧機構」を備えている。
(5)押圧機構固定工程では、梁支持部を介して変位吸収部材を片持梁へ押圧させた状態で、押圧機構を変位吸収部材と補強部材との間に配置された他の構成とともに無収縮モルタルによって一体に固める。
[高架橋1の構成の説明]
高架橋1は、図1(a)に示すように、両端に片持梁を有するラーメン構造の単位高架橋3を所定の間隔で連続して設置し、単位高架橋3の片持梁34を補強工5で補強した構成を有している。
単位高架橋3は、高架橋1の延長方向に沿って配置された複数の支柱31の上部を梁32によって連結した構成を有している。これら支柱31は、その下部が地中に埋設されている。また、梁32の上面にはスラブ33が形成されている。さらに、梁32の両端には、隣接する単位高架橋3へ向けて延出する片持梁34が形成されている。
[補強工5の構成の説明]
補強工5は、いわゆるX型の補強工であり、基礎コンクリート部51、下側脚柱52、上側脚柱53、受梁54、沓部55、および連結部材56を備えている。
また、下側脚柱52は、鋼製の長尺材であり、隣接する単位高架橋3の片持梁34に向けて傾斜した姿勢にて、その一端が基礎コンクリート部51の上部にボルトで取り付けられている。そして、隣接する単位高架橋3の片持梁34の下方にて2つの下側脚柱52同士が、鋼製の長尺材である連結部材56によって連結されている。
なお、基礎コンクリート部51、下側脚柱52、上側脚柱53、受梁54、および連結部材56は、補強部材に該当する。
また、鋼製台座55bは、その上面の面積が鋼製沓座55aの上面の面積よりも小さく且つその厚み寸法が鋼製沓座55aの厚み寸法よりも小さい鋼製の平板であり、鋼製沓座55aの上面に取り付けられている。
また、フラットジャッキ55dは、円盤状に形成された軟鋼製の袋体であり、下側樹脂製支圧板55cの上面に取り付けられている。このフラットジャッキ55dには、樹脂を主成分とする流動体状の硬化剤を混合した充填材が詰められている。具体的には、この充填材を袋体に注入すると袋体が膨張し、袋体の水平部分の下面が下側樹脂製支圧板55cの上部に密着するととともに、袋体の上面が上側樹脂製支圧板55eの下部に密着する。続いて充填材が袋体内の隅々まで行き渡り、袋体が膨張する。すると、フラットジャッキ55dの高さ方向の寸法が増加して下側樹脂製支圧板55cの上部と上側樹脂製支圧板55eの下部との間の寸法を大きくする。
また、鋼製支圧板55fは、その上面の面積が鋼製台座55bの上面の面積とほぼ等しく且つその厚み寸法が鋼製沓座55aの厚み寸法とほぼ等しい鋼製の平板であり、上側樹脂製支圧板55eの上面に取り付けられている。
片持梁34の先端部における上方への変位量:θU=0.21mm
(ロ)列車荷重が片持梁34の先端部に作用した場合(図3(b)参照):
片持梁34の先端部における下方への変位量:θD=0.74mm
上述の(イ)変位量θUについては、沓部本体55hにおける圧縮量0.3mmよりも小さいので、沓部本体55hによって列車荷重の移動に伴う片持梁34における動的な変位を吸収可能である。また、上述の(ロ)変位量θDについては、片持梁34の先端部における上昇量1.1mmよりも小さいので、沓部本体55hによって列車荷重の移動に伴う片持梁34における動的な変位を吸収可能である。このように上述の沓部本体55h(補強工5側)と梁支持部55i(片持梁34側)とは、列車荷重に関わらず、常に密着した状態となるよう構成されている。
次に、上述の高架橋1に補強工5を取り付ける方法について、図4および図5を参照しながら説明する。なお、上述の高架橋を新設する場合には、単位高架橋3を構築した後に単位高架橋3の片持梁34に対して補強工5を取り付けることになり、既設の単位高架橋3に補強工5を取り付ける際の施工方法と同様であるのでここでは詳細な説明は省略する。
[支柱31の直下地盤における振動レベル測定試験の説明]
次に、支柱31の直下地盤における振動レベル測定試験について、図6(a)を参照して説明する。なお、図6(a)は、列車荷重によって高架橋1の支柱31の直下地盤に発生した振動数(Hz)と加速度(gal)との関係を示した説明図である。本出願人は、補強工5を施工した高架橋1を列車が通過する場合を想定し、補強工5の施工前における支柱31の直下地盤に発生する振動レベルと、補強工5の施工後における支柱31の直下地盤に発生する振動レベルとを測定する試験を行った。その結果、図6(a)に例示するように、補強工5の施工前には約4.5galであった振動数8Hzにおける加速度値が、補強工5の施工後には約1.6galに低下した。よって、本実施例の高架橋1では、東海道新幹線の沿線地盤において卓越していた振動数8Hz〜10Hz成分が補強工5の施工前に比べて大幅に低減されたことが分かる。また、解析シミュレーションによれば、沓部55を取り付けずに補強工5を施工した場合の振動数8Hz〜10Hz成分における加速度値が、上述の補強工5の施工後の振動数8Hz〜10Hz成分における加速度値とほぼ同じ値となり、これらのことにより、沓部55の有無にかかわらず、片持梁34に対する補強工5による振動対策の効果を維持することができる。
このように本実施例の高架橋1によれば、補強工5が単位高架橋3の片持梁34を下方から支持しており、片持梁34と補強工5の受梁54との間には、フラットジャッキ55dの作用による80KNのプレロード力にて圧縮された状態で沓部本体55hが配置されている。このことにより、例えば温度変化によって発生した「片持梁34における静的な変位」または「補強工5における静的な変位」の少なくとも何れかを上述の沓部本体55hが吸収するので、片持梁34に対する補強工5による振動対策の効果を維持しながら、片持梁34に応力が発生して高架橋に悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。
(1)上記実施例では、沓部本体55hがゴム材料にて構成されているが、これには限られず、弾性を有する材料であれば、例えば樹脂材料などの他の材料にて沓部本体55hを構成してもよい。このように構成しても上記実施例と同様の作用効果を奏する。
Claims (4)
- 両端に片持梁を有するラーメン構造の単位高架橋を所定の間隔で連続して設置した高架橋であって、
前記片持梁を下方から支持することにより前記片持梁の振動を抑制する補強部材と、
前記片持梁と前記補強部材との間に配置され、前記片持梁または前記補強部材の少なくともいずれか一方に発生した静的な変位を吸収可能な変位吸収部材と、
前記変位吸収部材と前記補強部材との間に配置され、前記変位吸収部材を前記片持梁へ押圧させることが可能な押圧機構と、
を備え、
前記変位吸収部材は、弾性を有する材料にて構成されており、圧縮された状態で前記片持梁と前記補強部材との間に配置され、
前記押圧機構は、前記変位吸収部材と前記補強部材との間に配置された他の構成とともに無収縮モルタルによって一体に固められていること
を特徴とする高架橋の防振構造。 - 請求項1に記載の高架橋の防振構造において、
前記片持梁の下部にエポキシ樹脂によって一体に取り付けられた梁支持部を備え、
前記変位吸収部材は、前記梁支持部を介して前記片持梁を支持すること
を特徴とする高架橋の防振構造。 - 両端に片持梁を有するラーメン構造の単位高架橋を所定の間隔で連続して設置した高架橋であって、
前記片持梁を下方から支持することにより前記片持梁の振動を抑制する補強部材と、
前記片持梁の下部にエポキシ樹脂によって一体に取り付けられた梁支持部と、
前記片持梁に取り付けられた前記梁支持部と前記補強部材との間に配置され、前記片持梁または前記補強部材の少なくともいずれか一方に発生した静的な変位を吸収可能な変位吸収部材と、
を備え、
前記変位吸収部材は、弾性を有する材料にて構成されており、圧縮された状態で前記片持梁と前記補強部材との間に配置され、前記梁支持部を介して前記片持梁を支持すること
を特徴とする高架橋の防振構造。 - 両端に片持梁を有するラーメン構造の単位高架橋を所定の間隔で連続して設置した高架橋の防振構造を施工するための施工方法であって、
前記片持梁の下部に梁支持部をエポキシ樹脂によって固定する片持梁固定工程と、
前記梁支持部を介して前記片持梁を下方から支持することにより前記片持梁の振動を抑制する補強部材を設置する補強部材設置工程と、
前記片持梁に固定された前記梁支持部と前記補強部材との間に、前記片持梁または前記補強部材の少なくともいずれか一方に発生した静的な変位を吸収可能な変位吸収部材を設置する変位吸収部材設置工程と、
前記補強部材が備える、前記変位吸収部材を前記片持梁へ押圧させることが可能な押圧機構によって、前記梁支持部を介して前記変位吸収部材を前記片持梁へ押圧させる変位吸収部材押圧工程と、
前記梁支持部を介して前記変位吸収部材を前記片持梁へ押圧させた状態で、前記押圧機構を前記変位吸収部材と前記補強部材との間に配置された他の構成とともに無収縮モルタルによって一体に固める押圧機構固定工程と、
を含むことを特徴とする施工方法。
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