図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る免震建物の施工方法について、図1(a)〜(g)の平面図を用いて説明する。なお、図1(a)〜(g)においては、後に説明する第1工事としての1期工事において設置された積層ゴム支承10、12を実線又は点線の一重丸で示し、後に説明する2期工事において設置された積層ゴム支承14、16、18を実線又は点線の二重丸で示している。
まず、第1工事としての1期工事において、図1(a)に示すように、第1免震装置としての積層ゴム支承10、12を、第1基礎部としての鉄筋コンクリート製の基礎20上に複数配置して設置し、第1免震層としての基礎免震層22を構築する(第1免震層構築工程)。
基礎免震層22の内側には、この基礎免震層22上に構築される第1構造物としての上部構造物24(図1(b)を参照のこと)の底面内側に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12が複数配置されている。また、基礎免震層22の外周部には、上部構造物24の底面外周部に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承10が複数配置されている。本実施形態では、基礎免震層22の外周部に配置した積層ゴム支承10よりも高い鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12を基礎免震層22の内側に配置した例を示している。すなわち、上部構造物24の分布荷重を考慮して、積層ゴム支承10、12が配置され、基礎免震層22が構成されている。
次に、図1(b)に示すように、基礎免震層22上に第1構造物としての鉄筋コンクリート造の上部構造物24を構築する。すなわち、基礎免震層22に支持される上部構造物24を構築する(第1構造物構築工程)。
そして、上部構造物24の構築により免震建物26が完成し、1期工事が完了する。1期工事完了時点において、基礎免震層22は上部構造物24の分布荷重を考慮して構成されているので、免震建物26の上部構造物24は、基礎免震層22により適切に免震支持される。
次に、第2工事としての2期工事において、図1(c)に示すように、第2免震装置としての積層ゴム支承14、16を、基礎20に隣接して設けられた第2基礎部としての鉄筋コンクリート製の基礎28上に複数配置して設置する。
次に、図1(d)に示すように、積層ゴム支承10、12の全てをせん断変形しないようにロックした状態にして、地震時等において基礎20に対して上部構造物24が相対変位しないようにした後に、基礎免震層22から選択的に積層ゴム支承10を複数取り出し、図1(e)に示すように、この取り出した積層ゴム支承10を基礎28上にロックを解除した状態で配置して設置し(矢印50)、第2免震層としての基礎免震層30を構築する(第2免震層構築工程)。すなわち、ここでは、基礎免震層22を構成していた積層ゴム支承10の幾つかを取り出して、基礎免震層30を構築するために再利用している。このように、本実施形態では、基礎免震層30上に構築される第2構造物としての上部構造物32(図1(g)を参照のこと)を構築する前に、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10を基礎28上に配置する。
基礎免震層22から積層ゴム支承10を取り出す方法は、まず、図2(a)の正面図に示すように、積層ゴム支承10の周辺に油圧ジャッキ34を設置する(矢印58)。本例では、積層ゴム支承10近傍の基礎20上に油圧ジャッキ34を設置し、この油圧ジャッキ34により上部構造物24の基礎梁36を支持する。なお、油圧ジャッキ34は、台座部44上に設置するようにしてもよいし、フーチング38を支持するようにしてもよい。次に、図2(b)の正面図に示すように、上部構造物24のフーチング38に積層ゴム支承10の上フランジ40を固定しているボルト(不図示)を取り外して、上フランジ40がフーチング38に固定されていない状態にし、基礎20の上面に設けられた台座部44に積層ゴム支承10の下フランジ42を固定しているボルト(不図示)を取り外して、下フランジ42が台座部44に固定されていない状態にした後に、油圧ジャッキ34をジャッキアップして上部構造物24を持ち上げることにより、積層ゴム支承10が支えていた上部構造物24の鉛直荷重を油圧ジャッキ34に移し替えるとともに、積層ゴム支承10の上フランジ40の上面と、フーチング38の下面との間に隙間(不図示)を形成する。次に、図2(c)の正面図に示すように、積層ゴム支承10を横移動させて取り外す(矢印60)。
次に、図1(f)に示すように、基礎免震層22から積層ゴム支承10を取り出した基礎20上の位置に油圧ジャッキ34と置き換えて第3免震装置としての積層ゴム支承18をせん断変形しないようにロックした状態で配置して設置し、基礎免震層22を再構築する(第1免震層再構築工程)。
積層ゴム支承18を基礎20上に設置する方法は、まず、図3(a)の正面図に示すように、台座部44上に積層ゴム支承18を載置し(矢印62)、台座部44に積層ゴム支承18の下フランジ48をボルト固定する。次に、図3(b)の正面図に示すように、油圧ジャッキ34をジャッキダウンして、フーチング38の下面が積層ゴム支承18の上フランジ46の上面に接触するまで上部構造物24を下げ、この状態でフーチング38に積層ゴム支承18の上フランジ46をボルト固定する。次に、油圧ジャッキ34をさらにジャッキダウンして、油圧ジャッキ34が支えていた上部構造物24の鉛直荷重を積層ゴム支承18に移し替えた後に、図3(c)の正面図に示すように、油圧ジャッキ34を撤去する(矢印64)。
図1(f)に示すように、基礎免震層22と基礎免震層30を合わせて構成された基礎免震層52の内側には、基礎免震層30上に構築される第2構造物としての上部構造物32と上部構造物24を一体にして構成された上部構造物54(図1(g)を参照のこと)の底面内側に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12、16、18が複数配置されている。また、基礎免震層52の外周部には、上部構造物54の底面外周部に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承10、14が複数配置されている。本実施形態では、積層ゴム支承14を積層ゴム支承10と同等の鉛直荷重支持能力を有するものとし、積層ゴム支承16、18を積層ゴム支承12と同等の鉛直荷重支持能力を有するものとして、基礎免震層52の外周部に配置した積層ゴム支承10、14よりも高い鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12、16、18を基礎免震層52の内側に配置した例を示している。すなわち、上部構造物54の分布荷重を考慮して、積層ゴム支承10、12、14、16、18が配置され、基礎免震層22、30が構成されている。
次に、図1(g)に示すように、積層ゴム支承10、12、18をロックが解除された状態にした後に、基礎免震層30上に第2構造物としての鉄筋コンクリート造の上部構造物32を上部構造物24と一体に構築する。すなわち、基礎免震層30に支持される上部構造物32を上部構造物24と一体に構築する(第2構造物構築工程)。
そして、上部構造物32の構築により、上部構造物24と上部構造物32を一体にして構成された上部構造物54を、基礎免震層22と基礎免震層30を合わせて構成された基礎免震層52により免震支持する免震建物56が完成し、2期工事が完了する。2期工事完了時点において、基礎免震層22、30は上部構造物54の分布荷重を考慮して構成されているので、免震建物56の上部構造物54は、基礎免震層52により適切に免震支持される。
次に、本発明の実施形態に係る免震建物の施工方法の作用と効果について説明する。
本実施形態の免震建物の施工方法では、図1(a)に示すように、基礎20上に積層ゴム支承10、12を複数配置して設置することにより、上部構造物24を適切に免震支持できるように、上部構造物24の分布荷重を考慮して基礎免震層22を構成することができる。
また、図1(e)に示すように、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10と複数の積層ゴム支承14、16を基礎28上に配置して設置するとともに、図1(f)に示すように、基礎免震層22から積層ゴム支承10を取り出した基礎20上の位置に積層ゴム支承18を配置して設置することにより、図1(g)に示すように、上部構造物24と上部構造物32が一体となった上部構造物54を適切に免震支持できるように、上部構造物54の分布荷重を考慮して基礎免震層22と基礎免震層30を構成することができる。
すなわち、上部構造物24を構築する第1工事(1期工事)と上部構造物32を構築する第2工事(2期工事)とを経て構築される免震建物56において、第1工事完了時の上部構造物24、及び第2工事完了時の上部構造物24と上部構造物32が一体となった上部構造物54を適切に免震支持することができる。
また、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10を基礎28上に配置して再利用することにより、基礎免震層30を低コストで構築することができる。
また、本実施形態の免震建物の施工方法では、図1(e)に示すように、上部構造物32を構築する前に、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10を基礎28上に配置するので、積層ゴム支承10を容易に基礎28上に設置することができる。例えば、積層ゴム支承10を基礎28上に設置する前に、この積層ゴム支承10によって支持される上部構造物32の部位を仮支持しておく等を行わなくてよい。
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、本実施形態では、図1(e)に示すように、第2構造物としての上部構造物32を構築する前に、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10を基礎28上に配置する例を示したが、例えば、図4(a)〜(h)の平面図に示す免震建物の施工方法の図4(f)のように、第2構造物としての上部構造物32を構築した後に、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10を基礎28上に配置するようにしてもよい。このようにすれば、積層ゴム支承10の基礎28上への移設を待たずに早いタイミングで上部構造物32の施工を開始することができる。
ここで、図4(a)〜(h)に示す免震建物の施工方法について説明する。本説明において、図1(a)〜(g)と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図4(a)〜(h)に示す免震建物の施工方法では、まず、第1工事としての1期工事において、図4(a)に示すように、積層ゴム支承10、12を基礎20上に複数配置して設置し、基礎免震層22を構築する(第1免震層構築工程)。基礎免震層22は、この基礎免震層22上に構築される上部構造物24の分布荷重を考慮して積層ゴム支承10、12が配置されて構成されている。
次に、図4(b)に示すように、基礎免震層22上に上部構造物24を構築する。すなわち、基礎免震層22に支持される上部構造物24を構築する(第1構造物構築工程)。
そして、上部構造物24の構築により免震建物26が完成し、1期工事が完了する。1期工事完了時点において、基礎免震層22は上部構造物24の分布荷重を考慮して構成されているので、免震建物26の上部構造物24は、基礎免震層22により適切に免震支持される。
次に、第2工事としての2期工事において、図4(c)に示すように、積層ゴム支承14、16をせん断変形しないようにロックした状態にして基礎28上に複数配置して設置し、さらに、後の工程で基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10を配置する基礎28上の位置の周辺に油圧ジャッキ34を設置することにより、仮基礎免震層66を構築する。
次に、図4(d)に示すように、積層ゴム支承10、12の全てをせん断変形しないようにロックした状態にし、地震時等において基礎20に対して上部構造物24が相対変位しないようにした後に、仮基礎免震層66上に上部構造物32を上部構造物24と一体に構築する。すなわち、仮基礎免震層66に支持される上部構造物32を上部構造物24と一体に構築する(第2構造物構築工程)。
次に、図4(e)に示すように、基礎免震層22から選択的に積層ゴム支承10を複数取り出し、図4(f)に示すように、この取り出した積層ゴム支承10を油圧ジャッキ34と置き換えて基礎28上にせん断変形しないようにロックした状態で配置して設置し(矢印68)、基礎免震層30を構築する(第2免震層構築工程)。すなわち、ここでは、基礎免震層22を構成していた積層ゴム支承10の幾つかを取り出して、基礎免震層30を構築するために再利用している。このように、本例では、基礎免震層30上に構築される上部構造物32を構築した後に、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10を基礎28上に配置する。
基礎免震層22から積層ゴム支承10を取り出す方法は、図2(a)〜(c)と同様であり、取り出した積層ゴム支承10を油圧ジャッキ34と置き換えて基礎28上に配置して設置する方法は、図3(a)〜(c)と略同様(図3(a)〜(c)の上部構造物24を上部構造物32とし、基礎20を基礎28とし、積層ゴム支承18を積層ゴム支承10とする)であるので、説明を省略する。
次に、図4(g)に示すように、基礎免震層22から積層ゴム支承10を取り出した基礎20上の位置に油圧ジャッキ34と置き換えて第3免震装置としての積層ゴム支承18をせん断変形しないようにロックした状態で配置して設置し、基礎免震層22を再構築する(第1免震層再構築工程)。積層ゴム支承18を基礎20上に設置する方法は、図3(a)〜(c)と同様なので、説明を省略する。
図4(g)に示すように、基礎免震層52の内側には、上部構造物54の底面内側に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12、16、18が複数配置されている。また、基礎免震層52の外周部には、上部構造物54の底面外周部に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承10、14が複数配置されている。すなわち、上部構造物54の分布荷重を考慮して、積層ゴム支承10、12、14、16、18が配置され、基礎免震層22、30が構成されている。
次に、図4(h)に示すように、積層ゴム支承10、12、14、16、18をロックが解除された状態にすることにより、上部構造物54を基礎免震層52により免震支持する免震建物56が完成し、2期工事が完了する。2期工事完了時点において、基礎免震層22、30は上部構造物54の分布荷重を考慮して構成されているので、免震建物56の上部構造物54は、基礎免震層52により適切に免震支持される。なお、図4(c)では、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10を配置する基礎28上の位置の周辺に油圧ジャッキ34を設置した例を示したが、油圧ジャッキ34の代わりに仮設支柱を設置し、この仮設支柱を油圧ジャッキ等を用いて積層ゴム支承10と置き換えるようにしてもよい。
また、本実施形態では、図1(e)に示すように、第2構造物としての上部構造物32を構築する前に、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10を基礎28上に設置する例を示したが、例えば、図5(a)〜(h)の平面図に示す免震建物の施工方法の図5(e)のように、積層ゴム支承10を基礎28上に設置するよりも前に上部構造物32の一部を構築するようにしてもよい。このようにすれば、積層ゴム支承10の基礎28上への移設を待たずに早いタイミングで上部構造物32の施工を開始することができる。
ここで、図5(a)〜(h)に示す免震建物の施工方法について説明する。本説明において、図1(a)〜(g)と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図5(a)〜(h)に示す免震建物の施工方法では、まず、第1工事としての1期工事において、図5(a)に示すように、積層ゴム支承10、12を基礎20上に複数配置して設置し、基礎免震層22を構築する(第1免震層構築工程)。基礎免震層22は、この基礎免震層22上に構築される上部構造物24の分布荷重を考慮して積層ゴム支承10、12が配置されて構成されている。
次に、図5(b)に示すように、基礎免震層22上に上部構造物24を構築する。すなわち、基礎免震層22に支持される上部構造物24を構築する(第1構造物構築工程)。
そして、上部構造物24の構築により免震建物26が完成し、1期工事が完了する。1期工事完了時点において、基礎免震層22は上部構造物24の分布荷重を考慮して構成されているので、免震建物26の上部構造物24は、基礎免震層22により適切に免震支持される。
次に、第2工事としての2期工事において、図5(c)に示すように、積層ゴム支承14、16を、基礎28上に複数配置して設置し、仮基礎免震層70を構築する。
次に、図5(d)に示すように、仮基礎免震層70上に上部構造物32(図5(h)を参照のこと)の一部となる鉄筋コンクリート造の上部構造物72を上部構造物24と一体に構築する。
次に、図5(e)に示すように、上部構造物24、72を支持する積層ゴム支承10、12、14、16の全てをせん断変形しないようにロックした状態にして、地震時等において基礎20、28に対して上部構造物24、72がそれぞれ相対変位しないようにした後に、基礎免震層22から選択的に積層ゴム支承10を複数取り出し、図5(f)に示すように、この取り出した積層ゴム支承10をロックが解除された状態で基礎28上に配置して設置し(矢印74)、第2免震層としての基礎免震層30を構築する(第2免震層構築工程)。すなわち、ここでは、基礎免震層22を構成していた積層ゴム支承10の幾つかを取り出して、基礎免震層30を構築するために再利用している。このように、本例では、積層ゴム支承10を基礎28上に設置するよりも前に上部構造物32の一部を構築する。基礎免震層22から積層ゴム支承10を取り出す方法は、図2(a)〜(c)と同様であるので、説明を省略する。
次に、図5(g)に示すように、基礎免震層22から積層ゴム支承10を取り出した基礎20上の位置に油圧ジャッキ34と置き換えて第3免震装置としての積層ゴム支承18をせん断変形しないようにロックした状態で配置して設置し、基礎免震層22を再構築する(第1免震層再構築工程)。積層ゴム支承18を基礎20上に設置する方法は、図3(a)〜(c)と同様なので、説明を省略する。
図5(g)に示すように、基礎免震層52の内側には、上部構造物54の底面内側に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12、16、18が複数配置されている。また、基礎免震層52の外周部には、上部構造物54の底面外周部に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承10、14が複数配置されている。すなわち、上部構造物54の分布荷重を考慮して、積層ゴム支承10、12、14、16、18が配置され、基礎免震層22、30が構成されている。
次に、図5(h)に示すように、上部構造物24、72を支持する積層ゴム支承10、12、14、16、18をロックが解除された状態にした後に、基礎免震層30上に鉄筋コンクリート造の上部構造物76を上部構造物72と一体に構築することにより、基礎免震層30上に上部構造物32が上部構造物24と一体に構築される。すなわち、基礎免震層30に支持される上部構造物32を上部構造物24と一体に構築する(第2構造物構築工程)。
そして、上部構造物76の構築により、上部構造物54を基礎免震層52により免震支持する免震建物56が完成し、2期工事が完了する。2期工事完了時点において、基礎免震層22、30は上部構造物54の分布荷重を考慮して構成されているので、免震建物56の上部構造物54は、基礎免震層52により適切に免震支持される。
さらに、本実施形態では、図1(g)に示すように、小さな鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承10、14と、大きな鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12、16、18との鉛直荷重支持能力において2種類の免震装置によって第1及び第2免震層としての基礎免震層22、30を構成した例を示したが、例えば、図6(a)〜(g)の平面図に示す免震建物の施工方法の図6(b)及び図6(g)のように、第1及び第2免震層は、鉛直荷重支持能力において3種類以上の免震装置によって構成してもよいし、1種類の免震装置によって構成(例えば、図1(g)の積層ゴム支承10、12、14、16、18を同じ鉛直荷重支持能力の積層ゴム支承にする)してもよい。
ここで、図6(a)〜(g)に示す免震建物の施工方法について説明する。本説明において、図1(a)〜(g)と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図6(a)〜(g)に示す免震建物の施工方法では、まず、第1工事としての1期工事において、図6(a)に示すように、第1免震装置としての積層ゴム支承10、12、78を、基礎20上に複数配置して設置し、基礎免震層22を構築する(第1免震層構築工程)。
基礎免震層22の内側には、上部構造物24の底面内側に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12が複数配置されている。また、基礎免震層22の外周部には、上部構造物24の底面外周部に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承10、78が複数配置されている。本例では、基礎免震層22のコーナー部に積層ゴム支承10よりも低い鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承78を配置するようにして基礎免震層22の外周部に積層ゴム支承10、78を配置し、これらの積層ゴム支承10、78よりも高い鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12を基礎免震層22の内側に配置した例を示している。すなわち、上部構造物24の分布荷重を考慮して、積層ゴム支承10、12、78が配置され、基礎免震層22が構成されている。
次に、図6(b)に示すように、基礎免震層22上に上部構造物24を構築する。すなわち、基礎免震層22に支持される上部構造物24を構築する(第1構造物構築工程)。
そして、上部構造物24の構築により免震建物26が完成し、1期工事が完了する。1期工事完了時点において、基礎免震層22は上部構造物24の分布荷重を考慮して構成されているので、免震建物26の上部構造物24は、基礎免震層22により適切に免震支持される。
次に、第2工事としての2期工事において、図6(c)に示すように、積層ゴム支承14、16を基礎28上に複数配置して設置する。
次に、図6(d)に示すように、積層ゴム支承10、12、78の全てをせん断変形しないようにロックした状態にして、地震時等において基礎20に対して上部構造物24が相対変位しないようにした後に、基礎免震層22から選択的に積層ゴム支承10、78を複数取り出し、図6(e)に示すように、この取り出した積層ゴム支承10を基礎28上にロックを解除した状態で配置して設置し(矢印80)、基礎免震層30を構築する(第2免震層構築工程)。すなわち、ここでは、基礎免震層22を構成していた積層ゴム支承10、78の幾つかを取り出して、基礎免震層30を構築するために再利用している。このように、本例では、上部構造物32を構築する前に、基礎免震層22から選択的に取り出した積層ゴム支承10、78を基礎28上に配置する。
基礎免震層22から積層ゴム支承10、78を取り出す方法は、図2(a)〜(c)と略同様(図2(a)〜(c)の積層ゴム支承10を積層ゴム支承10、78とする)であるので、説明を省略する。
次に、図6(f)に示すように、基礎免震層22から積層ゴム支承10、78を取り出した基礎20上の位置に油圧ジャッキ34と置き換えて第3免震装置としての積層ゴム支承18、82をせん断変形しないようにロックした状態で配置して設置し、基礎免震層22を再構築する(第1免震層再構築工程)。
積層ゴム支承18、82を基礎20上に設置する方法は、図3(a)〜(c)と略同様(図3(a)〜(c)の積層ゴム支承18を積層ゴム支承18、82とする)であるので、説明を省略する。
図6(f)に示すように、基礎免震層52の内側には、上部構造物54の底面内側に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12、16、18が複数配置されている。また、基礎免震層52の外周部には、上部構造物54の底面外周部に生じる鉛直方向の分布荷重を支持可能な鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承10、14、78、82が複数配置されている。本例では、積層ゴム支承78を積層ゴム支承10よりも低い鉛直荷重支持能力を有するものとし、積層ゴム支承14、82を積層ゴム支承10と同等の鉛直荷重支持能力を有するものとし、積層ゴム支承16、18を積層ゴム支承12と同等の鉛直荷重支持能力を有するものとして、基礎免震層52のコーナー部に積層ゴム支承10、14、82よりも低い鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承78を配置するようにして基礎免震層52の外周部に積層ゴム支承10、14、78、82を配置し、これらの積層ゴム支承10、14、78、82よりも高い鉛直荷重支持能力を有する積層ゴム支承12、16、18を基礎免震層52の内側に配置した例を示している。すなわち、上部構造物54の分布荷重を考慮して、積層ゴム支承10、12、14、16、18、78、82が配置され、基礎免震層22、30が構成されている。
次に、図6(g)に示すように、上部構造物24を支持する積層ゴム支承10、12、18、78、82をロックが解除された状態にした後に、基礎免震層30上に上部構造物32を上部構造物24と一体に構築する。すなわち、基礎免震層30に支持される上部構造物32を上部構造物24と一体に構築する(第2構造物構築工程)。
そして、上部構造物32の構築により、上部構造物54を基礎免震層52により免震支持する免震建物56が完成し、2期工事が完了する。2期工事完了時点において、基礎免震層22、30は上部構造物54の分布荷重を考慮して構成されているので、免震建物56の上部構造物54は、基礎免震層52により適切に免震支持される。
また、本実施形態では、図1(g)に示すように、免震装置を積層ゴム支承10、12、14、16、18とした例を示したが、免震装置は、構造物を免震支持可能な支承であればよい。例えば、免震装置は、鉛プラグ入り積層ゴム支承、高減衰積層ゴム支承、弾性すべり支承等であってもよい。
さらに、本実施形態では、図2(a)〜(c)、及び図3(a)〜(c)に示すように、油圧ジャッキ34を用いて、免震装置としての積層ゴム支承10、18を取り外したり又は設置したりする例を示したが、免震装置は、他の方法で取り外したり又は設置したりしてもよい。
また、本実施形態では、図1(d)に示すように、第1免震装置としての積層ゴム支承10、12の全てをせん断変形しないようにロックした(地震時等において第1基礎部としての基礎20に対して第1構造物としての上部構造物24が相対変位しないようにした)状態で、図1(e)に示すように、第1免震層としての基礎免震層22から選択的に第1免震装置としての積層ゴム支承10を複数取り出した例を示したが、第1構造物を支持する第1免震装置の全てをせん断変形可能な(地震時等において第1基礎部に対して第1構造物が相対変位可能な)状態にして、第1免震層から選択的に第1免震装置を複数取り出すようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、図1(f)に示すように、第1免震装置としての積層ゴム支承10、12の全てをせん断変形しないようにロックした(地震時等において第1基礎部としての基礎20に対して第1構造物としての上部構造物24が相対変位しないようにした)状態で、第1免震層としての基礎免震層22から第1免震装置としての積層ゴム支承10を取り出した第1基礎部としての基礎20上の位置に第3免震装置としての積層ゴム支承18を配置して設置した例を示したが、第1構造物を支持する第1免震装置の全てをせん断変形可能な(地震時等において第1基礎部に対して第1構造物が相対変位可能な)状態にして、第1免震層から第1免震装置を取り出した第1基礎部上の位置に第3免震装置を配置して設置するようにしてもよい。
また、本実施形態では、図1(g)に示すように、第1基礎部としての鉄筋コンクリート製の基礎20上に第1免震層としての基礎免震層22を構築し、第2基礎部としての鉄筋コンクリート製の基礎28上に第2免震層としての基礎免震層30を構築した例を示したが、第1基礎部及び第2基礎部は、鉄筋コンクリート造以外の構造形式のものであってもよい。また、第1基礎部と第2基礎部は、分離されて形成されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。例えば、第1工事としての1期工事において、第1基礎部と第2基礎部を一体に施工してもよい。
さらに、本実施形態では、図1(b)に示すように、第1免震層としての基礎免震層22を構成する第1免震装置としての積層ゴム支承10、12の全てをせん断変形可能な状態にして、第1免震層としての基礎免震層22上に第1構造物としての上部構造物24を構築した例を示したが、第1免震層を構成する第1免震装置の全てをせん断変形しないようにロックした状態にして、第1免震層上に第1構造物を構築するようにしてもよい。
また、本実施形態では、図1(g)に示すように、第1免震層としての基礎免震層22を構成する第1免震装置としての積層ゴム支承10、12及び第3免震装置としての積層ゴム支承18の全てと、第2免震層としての基礎免震層30を構成する第1免震装置としての積層ゴム支承10及び第2免震装置としての積層ゴム支承14、16の全てをせん断変形可能な状態にして、第2免震層としての基礎免震層30上に第2構造物としての上部構造物32を第1構造物としての上部構造物24と一体に構築した例を示したが、第1免震層を構成する第1免震装置及び第3免震装置の全てと、第2免震層を構成する第1免震装置及び第2免震装置の全てをせん断変形しないようにロックした状態にして、第2免震層上に第2構造物を第1構造物と一体に構築するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、第1工事としての1期工事と、第2工事としての2期工事とによって免震建物56を構築した例を示したが、第2工事はいつ開始されてもよい。例えば、第1工事の完了後直ぐに第2工事を開始してもよいし、第1工事の完了後しばらくしてから第2工事を開始してもよいし、1期工事の完了後に免震建物26をしばらく使用した後に第2工事を開始してもよい。
また、本実施形態では、第1工事としての1期工事と、第2工事としての2期工事とによって免震建物56を構築した例を示したが、3つ(3期)以上の工事よって構築される免震建物に対しても本実施形態の免震建物の施工方法を適用することができる。この場合には、先に行われる工事(工期)を第1工事とし、この後に行われる工事(工事)を第2工事とする。
さらに、本実施形態では、「第2免震層に支持される第2構造物を第1構造物と一体に構築する工程」として、図1(g)に示すように、第2免震層としての基礎免震層30を構築した後に、この基礎免震層30上に第2構造物としての上部構造物32を上部構造物24と一体に構築する例を示したが、図4(d)に示すように、後に第2免震層としての基礎免震層30となる仮基礎免震層66上に第2構造物としての上部構造物32を上部構造物24と一体に構築することも、「第2免震層に支持される第2構造物を第1構造物と一体に構築する工程」を意味する。
また、本実施形態では、第1構造物としての上部構造物24、及び第2構造物としての上部構造物32を、鉄筋コンクリート造とした例を示したが、本実施形態の免震建物の施工方法は、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、それらの混合構造など、さまざまな構造や規模の上部構造物を有する免震建物の施工に適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。