以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の塗装乾燥装置を鉛直方向の上方から見たときの図である。
この塗装乾燥装置は、塗装装置1と、第1乾燥装置2と、第2乾燥装置3と、冷却装置4と、図示しないワーク搬送装置とを備える。この塗装乾燥装置は、ワークの一例としてのCVJアウター(等速ジョイントのアウター)(以下、単にワークという)50に、塗装装置1による塗装、第1乾燥装置2による第1乾燥、第2乾燥装置3による第2乾燥、冷却装置4による冷却を、この順に施して、ワーク50を塗装した後乾燥するようになっている。
図1において、1〜7で示すポジションは、この装置で、ワーク50が取りうるポジションである。図1を参照して、ポジション1、2、4〜7は、一直線上に一方向に互いに間隔をおいて位置している一方、ポジション3は、ポジション2に対して上記一方向に直交する方向に所定の距離をおいて位置している。
上記ワーク搬送装置は、第1〜6搬送部を有し、第1搬送部は、ワーク50をポジション1からポジション2に搬送し、第2搬送部は、ワーク50を、ポジション2とポジション3との間を上記一方向に直交する方向に進退させ、第3搬送部は、ワーク50をポジション2からポジション4に搬送し、第4搬送部は、ワーク50をポジション4からポジション5に搬送し、第5搬送部は、ワーク50をポジション5からポジション6に搬送し、第6搬送部は、ワーク50をポジション6からポジション7に搬送するようになっている。
上記第1および3〜6搬送部の夫々は、アームと、チャック装置と、鉛直方向移動シリンダと、水平方向移動シリンダとを有し、アームは、鉛直方向に延在し、チャックは、アームの鉛直方向下方側の端部に固定されている。上記鉛直方向移動シリンダは、アームを鉛直方向に移動させ、上記水平方向移動シリンダは、アームを上記一方向に移動させるようになっている。
また、上記第2搬送部60は、図2に示すように、ワーク50を載置するスタンド21と、水平方向移動シリンダ22を有し、この水平方向移動シリンダ22で、スタンド21をポジション2と塗装ブース61内のポジション3との間を図2に矢印Aで示す上記直交する方向に進退させるようになっている。
この塗装乾燥装置は、複数のワーク50を同時に搬送するようになっている。詳しくは、この塗装乾燥装置は、各ポジションでの措置が終了すると、先ず、第2搬送部60が、スタンド21を、ポジション3からポジション2に移動させた後、第1,3〜6搬送部が、同時に搬送を行い、最後に、第2搬送部60が、スタンド21を、ポジション2からポジション3に移動させて、搬送を行うようになっている。
この塗装乾燥装置では、以下のようにして、ワーク50を塗装して乾燥するようになっている。
先ず、ワーク50は、ポジション1で示すワーク50の投入位置にあるスタンドに載置され、その後、上記第1搬送部によって、ポジション1からポジション2に搬送される。詳しくは、ポジション1で示すワーク50の投入位置にあるスタンドに載置されたワーク50は、第1搬送部のアームに固定されたチャックによって保持された後、第1搬送部の鉛直方向移動シリンダによって上方に移動され、更に、第1搬送部の水平方向移動シリンダによって上記一方向に移動させる。その後、ワーク50を、第1搬送部の鉛直方向移動シリンダによって下方に移動させて、ポジション2に存在するスタンドのワーク載置面に載置し、その後、チャックによるワーク50の固定を解除する。尚、上記第3〜6搬送部によるワーク50の搬送は、第1搬送部の搬送と同様である。上記第3〜6搬送部によるワーク50の搬送の説明は、第1搬送部の搬送の説明をもって省略する。
その後、第2搬送部60(図2参照)によって、ポジション2に存在すると共に、ワーク50が載置されたスタンド21を、第2搬送部60の水平方向移動シリンダ22により、塗装ブース61内のポジション3に引き込む。続いて、ポジション3に存在するスタンド21の載置面に載置されているワーク50に塗装を行う。
詳しくは、図1に示すように、塗装装置1は、塗装ノズル11を有し、この塗装ノズル11は、上記一方向に向けられ、かつ、ポジション3に位置するスタンドの載置されているワーク50の中心軸の方に向けられている。第2搬送部のスタンドは、図2に参照番号63で示すモータによって図1に矢印Aで示す方向に時計回りに回転可能になっている。ポジション3に位置するスタンド21上のワーク50をモータ63によって時計回りに回転させると共に、ワーク50に塗装ノズル11から塗料を吹き付けて、ワーク50を塗装するようになっている。
その後、第2搬送部60の水平方向移動シリンダ22により、塗装が終わったワーク50を載置しているスタンド21を、水平方向移動シリンダ22により、塗装ブース61内のポジション3からポジション2に移動させる。その後、上記第3搬送部によって、ポジション2に存在しているワーク50を、ワーク50に塗装された塗料の一次的な乾燥を行うポジション4に搬送し、第1乾燥装置2で塗料に以下に詳述する誘導加熱による一次的な乾燥を行う。
その後、上記第4搬送部によって、ポジション4に位置する一次的な乾燥が施されたワーク50を、ポジション4からワーク50に塗装された塗料の二次的な乾燥を行うポジション5に搬送し、第2乾燥装置3で塗料に以下に詳述する赤外線による二次的な乾燥を行う。
その後、上記第5搬送部によって、ポジション5に位置する二次的な乾燥が施されたワーク50を、ポジション5からワーク50の冷却を行うポジション6に搬送し、エアブローからなる冷却装置4でワーク50の冷却を行う。そして、最後に、上記第6搬送部によって、ポジション6に位置する冷却が施されたワーク50を、ポジション6から排出ポジション7に搬送し、ワーク50の塗装と乾燥とを終了する。
尚、詳述しないが、図1において、参照番号88は、制御盤を示し、図1および2において、参照番号100は、ユーザを示している。
図3は、ポジション4に位置するワーク50を一次的に乾燥する第1乾燥装置2の側面図である。
図3に示すように、この第1乾燥装置2は、誘導加熱源101と、回転テーブル102と、移動機構103と、送風装置104とを備え、誘導加熱源101は、第1誘導加熱部110と、第2誘導加熱部111と、放射温度計と、制御手段としての制御装置とを備える。
上記第1および第2誘導加熱部110,111の夫々は、後述するように、フラットコイルを有し、磁束がそのフラットコイルの巻線の軸方向の一方側である前方側のみに略生成されるようになっており、磁束が、第1および第2誘導加熱部110,111の夫々の略前方側のみに生成されるようになっている。上記第1誘導加熱部110の前方側と、第2誘導加熱部111の前方側とは、一方向に対向している。
上記回転テーブル102は、円板状のスタンド120と、モータ121とを有し、スタンド120のワーク載置面123は、円形の平面からなり、鉛直方向の上方を向いている。上記スタンド120は、第1誘導加熱部110と、第2誘導加熱部111とを結ぶ線分を略垂直に二等分する箇所に存在している。上記スタンド120の下方の面の中央には、モータ121の回転軸124が接続されている。上記スタンド120の軸方向は、モータ121の回転軸124の軸方向に一致している。上記スタンド120は、モータによって図3に矢印Aで示す方向に回転可能になっている。
上記移動機構103は、第1電動シリンダ130と、第2電動シリンダ131とを有する。図3に示すように、この第1乾燥装置2は、L字状の第1取付板150を有し、第1取付板150は、鉛直方向に延在する第1板部と、水平方向に延在する第2板部とを有する。上記第2板部は、第1板部の鉛直方向下方側の端部の後方側の表面から延在している。上記第1誘導加熱部110の後方側の面は、第1取付板150の第1板部の前方側の面にボルト190,191によって固定されている。また、上記第1電動シリンダ130の上面は、第1取付板150の第2板部の鉛直方向下方側の面に固定されている。上記第1電動シリンダ130は、第1誘導加熱部110に対して相対移動不可になっている。尚、上記第2電動シリンダ131も、第1電動シリンダ130と同一の構造によって、第2取付板151を介して第2誘導加熱部111に対して相対移動不可になっている。
上記第1電動シリンダ130は、第1誘導加熱部110を、図3に矢印Bで示す第1および第2誘導加熱部110,111の対向方向である一方向上を、回転テーブル102に対して接離自在に移動させるようになっている。また、上記第2電動シリンダ131は、第2誘導加熱部111を、図3に矢印Cで示す第1および第2誘導加熱部110,111の対向方向である一方向上を、回転テーブル102に対して接離自在に移動させるようになっている。
上記第1および第2誘導加熱部110,111は、第1および第2電動シリンダ130,131によって、回転テーブル102が第1および第2誘導加熱部110,111を接続する線分の垂直二等分線上に常に位置するように、連動して移動するようになっている。
上記送風装置104は、周知のブロワーからなり、羽根車の回転運動によって空気を圧送して送風口から吐出するようになっている。図3に示すように、上記送風装置104の送風口は、鉛直方向に延在している。このようにして、鉛直方向に延在しているワーク50の塗装領域の軸方向(延在方向)の全ての存在範囲に風を吹き付けできるようにしている。
図4は、上記第1乾燥装置2の上面図である。
図4に示すように、上記送風装置104は、第1送風口141と、第2送風口142とを有し、第1送風口141は、第2誘導加熱部111に対して第2誘導加熱部111の移動方向に垂直な方向の一方側に位置する一方、第2送風口142は、第2誘導加熱部111に対して第2誘導加熱部111の移動方向に垂直な方向の他方側に位置している。上記第1送風口141および第2送風口142の夫々は、第1誘導加熱部110と第2誘導加熱部111との間に向けられ、また、ワーク50の側面に向けられている。この第1乾燥装置2は、このようにして、第1送風口141および第2送風口142からの風で蒸発した蒸気をワーク50の周辺から除去するようになっている。また、この第1乾燥装置2は、このようにして、第1および第2誘導加熱部110,111の誘導加熱によるワーク50の乾燥と、第1誘導加熱部110と第2誘導加熱部111との隙間からの風の吹き付けによるワーク50の乾燥との同時乾燥を実現するようにしている。
また、図4に示すように、この第1乾燥装置2は、放射温度計105を備え、放射温度計105の輻射エネルギー計測方向は、第1誘導加熱部110と第2誘導加熱部111との間に向けられ、また、ワーク50の側面に向けられている。図4に示すように、第1誘導加熱部110、第2誘導加熱部111、第1送風口141、第2送風口142および放射温度計105の輻射エネルギー測定部は、ワーク50の周囲を取り囲むように、互いに間隔をおいて配置されている。
図5は、第1誘導加熱部110、第2誘導加熱部111およびワーク50を示す斜視図である。
図5に示すように、上記第1誘導加熱部110は、第2誘導加熱部111と同一である。上記第1誘導加熱部110は、フェライトコア180と、トラック状の巻線からなるフラットコイル181とを有する。上記フェライトコア180は、断面コ字状の樋形状の本体部と、三つの円筒部とを有し、各円筒部は、本体部の底における幅方向(樋の延在方向に垂直な方向)の略中央部から本体部の開口側に樋の深さ方向に突出している。上記三つの円筒部は、樋の延在方向に互いに間隔をおいて位置している。上記フェライトコア180は、本体部の延在方向の外方側(鉛直方向の上方又は下方側)から見たときにE型の形状をしている。上記フェライトコア180は、積層鋼板等のフェライトコアが形成可能な周知の材料で形成されている。
上記フラットコイル181は、上記三つの円筒部を取り囲むように上記三つの円筒部に巻き付けられた後、樹脂でモールドされ、上記三つの円筒部に取り付けられている。上記第1誘導加熱部110の円筒部の先端と、第2誘導加熱部111の円筒部の先端とは、上記円筒部の延在方向に対向している。上記第1誘導加熱部110と、第2誘導加熱部111との間には、第1誘導加熱部110と第2誘導加熱部111とに挟まれるようにワーク50が存在している。また、一次乾燥が行われている最中、ワーク50の軸方向は、鉛直方向に一致している。
上記フェライトコア180は、フラットコイル181の前方側以外の両側面および後方側を覆って、磁束が前方側のみに効率良く生成されるようにして、フラットコイル181の前方に位置するワーク50の塗料の水分を蒸発できる誘導加熱を実現するようにしている。
図6は、第1乾燥装置の制御装置160のブロック図である。
この制御装置160は、CPUを備え、CPUは、予め記憶されたプログラムや将来的に記憶されるプログラムに基づいて、演算処理を行う。上記制御装置160は、IH制御部161と、電動シリンダ制御部162と、送風装置制御部163と、テーブル制御部164と、タイマ165とを有する。この第1乾燥装置2は、操作部108を有し、操作部108で、回転テーブル102と、第1および第2誘導加熱部110,111との距離や、塗料の乾燥温度を設定できるようになっている。
詳しくは、この第1乾燥装置2では、ユーザは、塗装を乾燥させるワーク50の大きさに基づいて、操作部108を用いて、回転テーブル102と、第1および第2誘導加熱部110,111との距離を入力できるようになっている。また、電動シリンダ制御部162は、操作部108からの上記距離を表す信号を受けると、回転テーブル102と、第1および第2誘導加熱部110,111との距離が、上記入力された距離になるように、電動シリンダ130,131を駆動するようになっている。この第1乾燥装置2では、このようにして、回転テーブル102上のワーク50のワーク径(ワーク50の径違いの複数型番)に合わせて第1および第2誘導加熱部110,111が前後方向に移動するようになっている。
また、この第1乾燥装置2では、ユーザが、塗料の乾燥温度を入力すると、放射温度計105からの温度を表す信号を受けたIH電源制御部161が、ワーク50の塗料の温度が入力温度よりも低い場合に、IH電源166に電力を供給する一方、ワーク50の塗料の温度が入力温度以上の場合に、IH電源166に電力を供給しないようになっている。このようにして、フィードバックによる自動制御を行って、ワーク50の塗料の温度が入力温度に保たれるようにしている。この第1乾燥装置2は、このようにして、塗装温度を精密に監視することにより、塗装の外観品質を良好なものにしている。
また、この第1乾燥装置2では、ユーザは、乾燥時間を入力できるようになっている。上記テーブル制御部164は、塗装の乾燥が始まると、テーブル用モータ167を駆動するようになっている一方、タイマ165による計測が、入力された乾燥時間に到達するとテーブル用モータ167を停止するようになっている。このようにして、ワーク50を回転させることにより、ワーク50の外周面に塗装された塗料をワーク50の外周面の位置の位相によらず効率良く乾燥させるようになっている。また、上記送風装置制御部163は、塗装の乾燥が始まると、送風装置104を駆動するようになっている一方、タイマ165による計測が、入力された乾燥時間に到達すると送風装置104を停止するようになっている。
図7は、ポジション5に位置するワーク50を二次的に乾燥する第2乾燥装置3の側面図である。
図7に示すように、この第2乾燥装置3は、赤外線照射源201と、回転テーブル202と、移動機構203と、送風装置204と、放射温度計と、制御装置とを備える。記赤外線照射源201は、複数の赤外線照射部を有し、各赤外線照射部は、円柱の形状を有し、鉛直方向に延在している。
上記移動機構203は、第1電動シリンダ230と、第2電動シリンダ231とを有する。図7に示すように、この第2乾燥装置3は、L字状の第1取付板250と、第1反射板とを有し、第1取付板250は、鉛直方向に延在する第1板部と、水平方向に延在する第2板部とを有する。上記第2板部は、第1板部の鉛直方向下方側の端部の後方側の表面から延在している。
上記第2乾燥装置3は、第1反射板(図8に270で示す)と、第2反射板(図8に271で示す)とを有し、上記第1反射板の後方側の面は、第1取付板250の第1板部における第2板部側とは反対側の面にボルト290,291によって固定されている。また、上記第1電動シリンダ230の上面は、第1取付板250の第2板部の鉛直方向下方側の面に固定されている。上記第1電動シリンダ230は、第1反射板に対して相対移動不可になっている。尚、上記第2電動シリンダ231も、第1電動シリンダ230と同一の構造によって、第2取付板251を介して上記第2反射板に対して相対移動不可になっている。
上記第1反射板と、上記第2反射板とは、一方向に対向するように配置されている。上記第1電動シリンダ230は、第1反射板を、図7に矢印Bで示す第1および第2反射板の対向方向である一方向上を、第2反射板に対して接離自在に移動させるようになっている。また、上記第2電動シリンダ231は、第2反射板を、図7に矢印Cで示す第1および第2反射板の対向方向である一方向上を、第1反射板に対して接離自在に移動させるようになっている。
上記回転テーブル202は、円板状のスタンド220と、モータ221とを有し、スタンド220のワーク載置面223は、円形の平面からなり、鉛直方向の上方を向いている。上記スタンド220は、第1反射板と、第2反射板とを結ぶ線分を略垂直に二等分する箇所に存在している。上記スタンド220の下方の面の中央には、モータ221の回転軸224が接続されている。上記スタンド220の軸方向は、モータ221の回転軸224の軸方向に一致している。上記スタンド220は、モータによって図7に矢印Aで示す方向に回転可能になっている。上記第1および第2反射板は、第1および第2電動シリンダ230,231によって、回転テーブル202が第1および第2反射板を接続する線分の垂直二等分線上に常に位置するように、連動して移動するようになっている。
上記送風装置204は、周知のブロワーからなり、羽根車の回転運動によって空気を圧送して送風口から吐出するようになっている。図7に示すように、上記送風装置204の送風口は、鉛直方向に延在している。このようにして、鉛直方向に延在しているワーク50の塗装領域の軸方向(延在方向)の全ての存在範囲に風を吹き付けることができるようにしている。
図8は、上記第2乾燥装置3の上面図である。
図8に示すように、第1反射板270は、第1板部240と、第2板部241と、第3板部242とを有し、これらの三つの板部240,241,242で、三面鏡と同様な構造を構成している。上記第1板部240は、第1取付板250に取付られている。また、上記第2板部241は、第1板部240の幅方向の一端部から第1板部240に対して傾斜する方向に延在し、詳しくは、第2取付板251の方に行くにしたがって上記幅方向に第1板部240から離れる方向に延在している。また、同様に、第3板部242は、第1板部240の幅方向の他端部から第1板部240に対して傾斜する方向に延在し、詳しくは、第2取付板251の方に行くにしたがって上記幅方向に第1板部240から離れる方向に延在している。上記第1〜3板部240〜242の夫々の回転テーブル202側の面は、アルミ合金等、周知の赤外線反射材からなっている。尚、上記第2反射板271は、第1反射板270と同一の構造を有している。第2反射板271は、回転テーブル202の中心軸を通り、かつ、第1電動シリンダ230の移動方向に垂直な平面に対して、第1反射板270に対して面対称になるように配置されている。
また、図8に示すように、赤外線照射源201は、第1〜第4赤外線照射部260〜263を有し、第1〜第4赤外線照射部260〜263の夫々からは放射方向(径方向)に近赤外線が照射されるようになっている。上記第1および2赤外線照射部260,261は、周知の取付具を用いて第1反射板270に対して相対移動不可に第1反射板270に固定される一方、第3および4赤外線照射部262,263は、周知の取付具を用いて第2反射板271に対して相対移動不可に第2反射板271に固定されている。
上記第1および2赤外線照射部260,261の夫々は、第1反射板270の三面鏡に取り囲まれた領域に存在している。また、上記第1および2赤外線照射部260,261は、回転テーブル202の中心軸と、第1電動シリンダ230の移動方向とを含む平面に対して面対称に配置されている。また、同様に、上記第3および4赤外線照射部262,263の夫々は、第2反射板271の三面鏡に取り囲まれた領域に存在している。また、上記第3および4赤外線照射部262,263は、回転テーブル202の中心軸と、第1電動シリンダ230の移動方向とを含む平面に対して面対称に配置されている。
上記送風装置204は、第1送風口281と、第2送風口282とを有し、第1送風口281は、第2反射板271に対して第1電動シリンダ230の移動方向に垂直な方向の一方側に位置する一方、第2送風口282は、第2反射板271に対して第1電動シリンダ230の移動方向に垂直な方向の他方側に位置している。上記第1送風口281および第2送風口282の夫々は、第1反射板270と第2反射板271との間に向けられ、また、ワーク50の側面に向けられている。この第2乾燥装置3は、このようにして、上記第1送風口281および第2送風口282からの風で蒸発した蒸気をワーク50の周辺から除去するようにしている。また、上記第2乾燥装置3は、第1〜4赤外線照射部260〜263の近赤外線照射によるワーク50の乾燥と、第1反射板270と第2反射板271との隙間からの風の吹き付けによるワーク50の乾燥との同時乾燥を行うことができるようにしている。
また、図8に示すように、この第2乾燥装置3は、放射温度計205を備え、放射温度計205の輻射エネルギー計測方向は、第1反射板270と第2反射板271との間に向けられ、また、ワーク50の側面に向けられている。図8に示すように、第1赤外線照射部260、第2赤外線照射部261、第3赤外線照射部262、第4赤外線照射部263、第1送風口281、第2送風口282および放射温度計205の輻射エネルギー測定部は、ワーク50の周囲を取り囲むように、互いに間隔をおいて配置されている。
図9は、第2乾燥装置3の制御装置360のブロック図である。
この制御装置360は、CPUを備え、CPUは、予め記憶されたプログラムや将来的に記憶されるプログラムに基づいて、演算処理を行う。上記制御装置360は、赤外線照射用電源制御部361と、電動シリンダ制御部362と、送風装置制御部363と、テーブル制御部364と、タイマ365とを有する。この第2乾燥装置3は、操作部308を有し、操作部308で、回転テーブル302と、第1および第2反射板270,271との距離や、塗料の乾燥温度を設定できるようになっている。
詳しくは、この第2乾燥装置3では、ユーザは、塗装を乾燥させるワーク50の大きさに基づいて、操作部308を用いて、回転テーブル302と、第1および反射板270,271との距離を入力できるようになっている。また、電動シリンダ制御部362は、操作部308からの上記距離を表す信号を受けると、回転テーブル302と、第1および第2反射板270,271との距離が、上記入力された距離になるように、電動シリンダ230,231を駆動するようになっている。この第2乾燥装置3では、このようにして、回転テーブル202上のワーク50のワーク径(ワーク50の径違いの複数型番)に合わせて第1および第2反射板270,271が前後に移動するようになっている。
また、この第2乾燥装置3では、ユーザが、塗料の乾燥温度を入力すると、放射温度計205からの温度を表す信号を受けた赤外線照射用電源制御部361が、ワーク50の塗料の温度が入力温度よりも低い場合に、赤外線照射用電源366に電力を供給する一方、ワーク50の塗料の温度が入力温度以上の場合に、赤外線照射用電源366に電力を供給しないようになっている。このようにして、フィードバックによる自動制御を行って、ワーク50の塗料の温度が入力温度に保たれるようにしている。この第2乾燥装置3は、このようにして、塗装温度を精密に監視することにより、塗装の外観品質を良好なものにしている。
また、この第2乾燥装置3では、ユーザは、乾燥時間を入力できるようになっている。上記テーブル制御部364は、塗装の乾燥が始まると、テーブル用モータ367を駆動するようになっている一方、タイマ365による計測が、入力された乾燥時間に到達するとテーブル用モータ367を停止するようになっている。このようにして、ワーク50を回転させることにより、ワーク50の外周面に塗装された塗料を外周面の位置の位相によらず効率良く乾燥させるようになっている。また、上記送風装置制御部363は、塗装の乾燥が始まると、送風装置204を駆動するようになっている一方、タイマ365による計測が、入力された乾燥時間に到達すると送風装置204を停止するようになっている。
また、図1に示すように、上記冷却装置4は、第2乾燥装置3において、第1送風口281と第2送風口282とを有する送風装置204と、回転テーブル202およびこれを回転させるモータのみが存在し、その他の部位が存在しないような構造になっている。
上記実施形態によれば、誘導加熱源101を有して、ワーク50に塗装された塗料を誘導加熱に基づいて一次的に乾燥させる第1乾燥装置2を備えるから、ワーク50を誘導加熱により急激に昇温させることができて、ワークの乾燥を迅速に行うことができる。
また、上記実施形態によれば、赤外線照射源201を有して、誘導加熱により一次的に乾燥された塗料を均熱性および温度制御性に優れる近赤外線により乾燥する第2乾燥装置3を備えるから、塗料が塗装された場所によらずに、塗料の温度を塗料の品質に好適な温度に保持できる。したがって、塗装の外観品質を優れたものにできる。
また、上記実施形態によれば、第1乾燥装置2および第2乾燥装置3の両方が、ワーク50の塗料に風を吹き付けるための送風装置104,204を有するから、一次乾燥および二次乾燥の両方で、送風装置104,204からの風を、ワーク50に吹き付けることができる。したがって、一次乾燥および二次乾燥の両方で、熱せられたワーク50の塗料から蒸発した蒸気を、送風装置104,204からの風によってワーク50から遠方に効率的に飛散させることができる。したがって、ワーク50の周辺の蒸気の蒸気圧を低くできて、ワーク50の塗料からの水分の蒸発を促進することができ、ワーク50をより迅速に乾燥させることができる。
また、上記実施形態によれば、第2乾燥装置3によって上記塗料が二次的に乾燥されたワーク50を冷却する冷却装置4が存在しているから、ワーク50を迅速に冷却することができる。
また、上記実施形態によれば、乾燥工程を、2段階に分けているから、ワーク50の塗装乾燥のサイクルタイムを大幅に短縮できて、ワーク50の生産性を大きく向上できる。というのは、上述のように、この塗装乾燥装置は、複数のワーク50を同時に搬送するようになっているが、通常、乾燥時間は、塗装時間よりも長くなる。したがって、乾燥工程が、一工程のみで行う場合、乾燥工程が終了しないと、次の構成に移行することができないから、塗装装置の稼働率が低くなってしまう。これに対し、本発明では、乾燥工程が、2段階で行われるから、塗装装置の稼働率を高くすることができて、ワークの生産性を向上させることができるのである。これをもっと分かり易い説明すると、仮に、乾燥に60秒かかり、塗装に30秒かかるとすれば、乾燥工程が、一工程で行われる場合、乾燥が終了するまで、搬送が行われないから、搬送と搬送の間の時間で、塗装装置は、30秒近く稼働しないことになる。これに対し、乾燥を行う位置を、2箇所に増やして、乾燥を二工程で行う場合、仮に、乾燥の二工程の夫々が、30秒かかるとすれば、略30秒毎に搬送を行うことができて、生産性が2倍近くも向上することになるのである。
また、上記実施形態によれば、高価な誘導加熱源101と、比較的安価な赤外線照射源201とを併用して乾燥を行うようになっているから、乾燥の2工程を、高価な誘導加熱源を二つ用意して行う場合と比較して、塗装乾燥装置の製造コストを大きく低減することができる。
尚、上記実施形態では、第1乾燥装置2および第2乾燥装置3の両方が、送風装置104,204を有していたが、この発明では、第1乾燥装置および第2乾燥装置のうちの一方のみが、送風装置を有する構成であっても良い。また、この発明では、第1乾燥装置および第2乾燥装置の両方が、送風装置を有していない構成であっても良い。
また、上記実施形態では、赤外線照射源201が、近赤外線を照射する構成であったが、この発明では、赤外線照射源は、近赤外線、中赤外線および遠赤外線のうちの一以上の赤外線を照射できるものであっても良い。
また、上記実施形態では、第1および第2乾燥装置2,3の夫々の送風装置104,204で、送風口141,142,281,282から外気温度と略同一の温度の風が吐出されるようになっていた。しかしながら、この発明では、少なくとも一の送風装置は、羽根車からの風の流れの下流側にヒータ等を配置して外気温度と略同一の温度の風を熱風にして、その熱風を一以上存在する送風口からワークに熱風を吹き出しても良く、このようにすると、ワークをより効率的に乾燥させることができる。
また、上記実施形態では、第1乾燥装置2において、第1誘導加熱部110と、第2誘導加熱部111とが連動して移動し、回転テーブル102が、第1誘導加熱部110と、第2誘導加熱部111とを結んだ線分の垂直二等分線上に常に存在するようになっていたが、この発明では、第1乾燥装置において、回転テーブルが、第1誘導加熱部と、第2誘導加熱部とを結んだ線分の垂直二等分線上に常に存在しない構成であっても良い。
また、上記実施形態では、第1乾燥装置2において、第1誘導加熱部110と、第2誘導加熱部111とを、回転テーブル102を挟むように、回転テーブル102の周方向に互いに180度の位相差を有するように配置したが、この発明では、第1乾燥装置において、第1誘導加熱部と、第2誘導加熱部とを、回転テーブルの周方向に互いに180度以外の角度の位相差を有するように配置しても良い。
また、上記実施形態では、第1乾燥装置2において、誘導加熱源101が、互いに間隔をおいて位置する第1誘導加熱部110と第2誘導加熱部111とからなっていたが、この発明では、第1乾燥装置において、誘導加熱源は、一のみの誘導加熱部からなっていても良く、また、互いに間隔をおいて位置する3以上の誘導加熱部からなっていても良い。
また、上記実施形態では、第1乾燥装置2が、互いに間隔をおいて位置する二つの送風口141,142を有していたが、この発明では、第1乾燥装置は、送風口は、一つしかなくても良く、また、互いに間隔をおいて位置する三以上の送風口を有していても良い。
また、上記実施形態では、第1乾燥装置2が、放射温度計105を有していたが、この発明では、第1乾燥装置が、放射温度計を有していなくても良い。
また、上記実施形態では、第1乾燥装置2において、第1誘導加熱部110と、第2誘導加熱部111とが、電動シリンダ130,131で移動可能になっていたが、この発明では、第1乾燥装置において、誘導加熱源は、エアシリンダ、油圧シリンダ等の電動シリンダ以外の周知の機構で、移動可能になっていても良い。
また、上記実施形態では、第1乾燥装置2において、各誘導加熱部110,111が、一体型のフェライトコア180を有していたが、この発明では、第1乾燥装置において、一以上の誘導加熱部のうちの少なくとも一の誘導加熱部のフェライトコアは、複数のフェライトコアを鉛直方向(各フェライトコアのコ字状の端面の法線方向に対応)に載置して形成されても良い。例えば、図5に示す、三つの円筒部を有するフェライトコアであれば、円筒部を一つのみ有するE型のフェライトコアを鉛直方向に三つ積み上げて形成しても良く、また、円筒部を二つ有する一体側のE型のフェライトコアと、円筒部を一つのみ有するE型のフェライトコアとを、鉛直方向に積み上げて形成しても良い。
また、上記実施形態では、第1乾燥装置2において、各誘導加熱部110,111のフェライトコア180は、円筒部を三つ有していたが、この発明では、第1乾燥装置において、一以上の誘導加熱部のうちの少なくとも一の誘導加熱部のフェライトコアは、1、2または4以上の円筒部を有していても良い。また、この場合、例えば、円筒部を一つのみ有するE型のフェライトコアを鉛直方向(各フェライトコアのコ字状の端面の法線方向に対応)に1、2または4以上積み上げることにより、1、2または4以上の円筒部を有するフェライトコアを作成することができるが、このようにすると、ワークのサイズに合わせて、効率的に昇温できてエネルギー損失が少ないフェライトコアを簡易に形成できて、好ましい。
また、ワークを、例えば、第1誘導加熱部と第2誘導加熱部とを結んだ線分を二等分する位置等の所定の位置に配置する方法としては、上記実施形態で説明した方法以外に、ワークを載置する回転テーブルを、電動シリンダ等の進退機構で移動可能にして、ワークを載置した回転テーブルを、所定の位置に移動する方法がある。また、他の方法としては、鉛直方向の上方を向いたベルト上に載置したワークを、ベルトを移動させることにより所定の位置に配置する方法がある。
また、上記実施形態において、第1乾燥装置2の操作部108で、入力できる温度は、一点の温度であっても良く、温度範囲(上限と下限とを有する温度領域)であっても良い。
また、上記実施形態では、第2乾燥装置3において、第1反射板270と、第2反射板271とが連動して移動し、回転テーブル202が、第1反射板270と、第2反射板271とを結んだ線分の垂直二等分線上に常に存在するようになっていたが、この発明では、第2乾燥装置において、回転テーブルが、第1反射板と、第2反射板とを結んだ線分の垂直二等分線上に常に存在しない構成であっても良い。
また、上記実施形態では、第2乾燥装置3において、第1反射板270と、第2反射板271とを、回転テーブル202を挟むように、回転テーブル202の周方向に互いに180度の位相差を有するように配置したが、この発明では、第2乾燥装置において、第1反射板と、第2反射板とを、回転テーブルの周方向に互いに180度以外の角度の位相差を有するように配置しても良い。
また、上記実施形態では、第2乾燥装置3において、赤外線照射源201が、互いに間隔をおいて位置する第1〜第4赤外線照射部260〜262からなっていたが、この発明では、第2乾燥装置において、赤外線照射源は、1以上3以下の赤外線照射部からなっていても良く、また、互いに間隔をおいて位置する5以上の誘導加熱部からなっていても良い。
また、上記実施形態では、第2乾燥装置3が、互いに間隔をおいて位置する二つの送風口281,282を有していたが、この発明では、第2乾燥装置は、送風口は、一つしかなくても良く、また、互いに間隔をおいて位置する三以上の送風口を有していても良い。
また、上記実施形態では、第2乾燥装置3が、放射温度計205を有していたが、この発明では、第2乾燥装置が、放射温度計を有していなくても良い。
また、上記実施形態では、第2乾燥装置3において、第1反射板270と、第2反射板271とが、電動シリンダ230,231で移動可能になっていたが、この発明では、第2乾燥装置において、赤外線照射源は、エアシリンダ、油圧シリンダ等の電動シリンダ以外の周知の機構で、移動可能になっていても良い。
また、ワークを、例えば、第1反射板と第2反射板とを結んだ線分を二等分する位置等の所定の位置に配置する方法としては、上記実施形態で説明した方法以外に、ワークを載置する回転テーブルを、電動シリンダ等の進退機構で移動可能にして、ワークを載置した回転テーブルを、所定の位置に移動する方法がある。また、他の方法としては、鉛直方向の上方を向いたベルト上に載置したワークを、ベルトを移動させることにより所定の位置に配置する方法がある。
また、上記実施形態において、第2乾燥装置3の操作部308で、入力できる温度は、一点の温度であっても良く、温度範囲(上限と下限とを有する温度領域)であっても良い。
また、上記実施形態では、図1を参照して、冷却装置4が、互いに間隔をおいて位置する二つの送風口441,442を有していたが、この発明では、冷却装置は、1のみの送風口を有していても良く、互いに間隔をおいて位置する三以上の送風口を有していても良い。
また、上記実施形態では、ワーク50が、渦電流が流れる部分が金属の等速ジョイントのアウターであったが、この発明では、ワークは、渦電流が流れる部分が金属等の導電性を有する材料からなる製品であれば、等速ジョイントのアウターに限らず如何なる製品であっても良い。