JP6056223B2 - 非水系電解質、およびそれを用いた非水系電解質二次電池 - Google Patents
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Description
非水系電解質電池に用いる電解液は、通常、主として電解質と非水溶媒とから構成されている。リチウムイオン二次電池の電解液としては、LiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO2)2等の電解質を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の低粘度溶媒との混合溶媒に溶解させた非水系電解液が用いられている。また、上記のような電解液をマトリックスポリマーに含有させ、ゲル状態にしたゲル電解質も用いられている。このようなゲル電解質には、ポリマーの化学架橋を用いたゲル(化学ゲル)と、ポリマーの物理架橋を用いたゲル(物理ゲル)がある。
これまでに、リチウムイオン二次電池の電池特性を改善する方法として、ビニルエチレンカーボネート化合物を含有する非水系電解液が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、ビニルエチレンカーボネート化合物を含有する電解液を用いることで、保存特性やサイクル特性に優れる電池を作製することがなされている。しかしながら、これまでの技術では、電池として満足できる性能には至っていない。
また、特許文献2ではエチレンオキシドチェーンを有するポリマー吸着剤を含有する非水系電解液が提案されている(特許文献2参照)。しかし、エチレンオキシドチェーンは酸化に弱く、高温条件下での電池特性の悪化を招く可能性が高い。
また、ゲル電解質は、電池からの電解液漏洩の危険性を低下させることができ、さらに正極、負極、セパレータなどの電池の構成要素を固定することも出来るため、電池の信頼性を高めることが可能である。ゲル電解質には、化学架橋を用いたゲル(化学ゲル)と、物理架橋を用いたゲル(物理ゲル)があるが、化学ゲルは一般に、前記のような電解液に重合性モノマーと、必要に応じて重合開始剤を加え、加熱、光照射、電子線照射などの方法でモノマーを重合させることにより作製される。物理ゲルは一般に、溶媒に溶かしたマトリックスポリマーを電池構成材料に塗布などで配置した後で、必要に応じて溶媒を蒸発させ、電解液をマトリックスポリマーに含有させることで作製される。
これまでに、ゲル電解質の特性を改善する方法として、特定の化合物の重合体をマトリックスポリマーとして使用することで、低温特性やハイレート特性を改善するゲル電解質電池が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、これまでの技術では、電池として満足できる性能には至っていない。
即ち、本発明の要旨は、
(a)金属イオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極と、金属イオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を有する負極とを備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、プロピレンカーボネートを含有し、かつ下記(i)〜(iii)の全ての条件を満たす化合物Aを非水系電解液中に0.01質量%以上10質量%以下で含有することを特徴とする非水系電解液。(請求項1)
(i)前記化合物Aは、反応性官能基を有する高分子鎖を含み、ポリエチレンオキシド骨格を含まない数平均分子量500以上5000000以下の化合物である。
(ii)前記反応性官能基が、アクリレート基、メタクリレート基、イソシアナト基、アルキルジクロロシリル基、トリクロロシリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基、ヒドロキシル基、およびジヒドロキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である。
(iii)前記高分子鎖が、アクリル酸エステルもしくはその誘導体、メタクリル酸エステルもしくはその誘導体、アクリロニトリルもしくはその誘導体、並びにスチレンもしくはその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上をモノマーとして得られる高分子鎖、またはシリコーン(ポリシロキサン)構造を有する高分子鎖である。
(b)前記化合物Aが、数平均分子量3000以上の化合物である、請求項1に記載の非水系電解液。(請求項2)
(c)不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、酸無水物、イソシアネート、ニトリル、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、リチウムビスオキサラトボレート、およびリチウムジフルオロオキサラトボレートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する、請求項1または2に記載の非水系電解液。(請求項3)
(d)金属イオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極と、金属イオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を有する負極とを備える非水系電解液二次電池であって、請求項1ないし3の何れか1項に記載の非水系電解液を用いることを特徴とする非水系電解液二次電池。(請求項4)
本発明の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様に、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含有し、更に前記化合物Aを含有することを特徴とする。
本発明の非水系電解液に用いる電解質に制限は無く、目的とする非水系電解質二次電池に電解質として用いられるものであれば公知のものを任意に採用することができる。本発明の非水系電解液をリチウム二次電池に用いる場合には、通常は、電解質としてリチウム塩を用いる。
LiCF3SO3、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,3−ヘキサフルオロプロパンジスルホニルイミド、リチウム環状1,2−テトラフルオロエタンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩;
リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチ
ウムトリス(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート等の含ジカルボン酸錯体リチウム塩などが挙げられる。
本発明の非水系電解液が含有する非水溶媒としては、従来から非水系電解液の溶媒として公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
通常使用される非水溶媒の例としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状及び環状カルボン酸エステル、鎖状及び環状エーテル、含リン有機溶媒、含硫黄有機溶媒、芳香族含フッ素溶媒等が挙げられる。
環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等及びこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した環状カルボン酸エステルが挙げられる。これらの中でも、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等及びこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した環状エーテルが挙げられる。
なお、本明細書において、非水溶媒の体積は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
本発明の非水系電解液は、反応性官能基を有し、ポリエチレンオキシド骨格を有さない分子量500以上の化合物(以下、「化合物A」と略記とする)を含有することを特徴とする。化合物Aを含有することで、サイクル特性や保存特性に優れた電池を得ることができる。なお、その詳細な理由は未だ判っていないが、化合物Aは反応性官能基を有し、分子量が500以上であるため、電極界面に形成される保護皮膜が安定であることが特性向上に寄与していると推測している。
なお、化合物Aにおける「分子量」とは、化合物Aが同一分子量の分子のみから構成される化合物である場合にはその分子量を表し、重合体のように分子量の異なる分子によって構成される化合物の場合には数平均分子量を意味するものとする。
また、化合物Aは、反応性官能基を有することを前述したが、反応性官能基を高分子鎖に有する構造であることが好ましい。反応性官能基を高分子鎖に有することによって、低分子の化合物が形成する皮膜よりも安定な皮膜を効率よく形成できる点で好ましい。
アクリル酸エステルもしくはその誘導体、メタクリル酸エステルもしくはその誘導体、アクリロニトリルもしくはその誘導体、並びにスチレンもしくはその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上をモノマーとして得られる高分子鎖としては、下記化学式(1)、(2)、(3)および(4)で表される構造の少なくとも1種以上を有する高分子鎖が挙げられる。なお、高分子鎖を表す化学式中の括弧内部の構造について、以下「セ
グメント」(繰り返し単位)と略記する場合がある。
また、化合物Aの含有量として(複数種を併用する場合は合計量)は、特に制限はないが、非水系電解液全量に対し、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。上記の範囲内であると、安定な皮膜を形成できるだけでなく、抵抗の上昇も抑制できるので、電池特性を特に向上させることが期待できる。
本発明の非水系電解液は、前述の化合物Aに加えて、以下に説明する特定の化合物を電解液中に含有させることによって、更に効果を向上させることが出来る。具体的な化合物としては、不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、酸無水物、イソシアネート、ニトリル、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、リチウムビスオキサラトボレート、およびリチウムジフルオロオキサラトボレートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上などの種々の他の化合物を助剤として含有していて
もよい。
不飽和結合を有する環状カーボネート化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、1,2−ジメチルビニレンカーボネート、1,2−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート化合物類;ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−n−プロピル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1,1−ジビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート等のビニルエチレンカーボネート化合物類;1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジエチル−2−メチレンエチレンカーボネート等のメチレンエチレンカーボネート化合物類等が挙げられる。これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネートがサイクル特性や高温保存後の容量維持特性向上の点から好ましく、中でもビニレンカーボネート又はビニルエチレンカーボネートがより好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種類以上を併用する場合は、ビニレンカーボネートとビニルエチレンカーボネートとを併用するのが好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、1,1−ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2−トリフルオロエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、1−フルオロ−2−メチルエチレンカーボネート、1−フルオロ−1−メチルエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロ−1−メチルエチレンカーボネート、1,1,2−トリフルオロ−2−メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらのうち、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、1−フルオロ−2−メチルエチレンカーボネートがサイクル特性向上や高温保存特性向上の点から好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、メチル無水コハク酸、4,4−ジメチル無水コハク酸、4,5−ジメチル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ジメチル無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、ジフェニル無水マレイン酸、無水フタル
酸、シクロヘキサン1,2−ジカルボン酸無水物、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水クロトン酸などが挙げられる。これらのうち、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水クロトン酸がサイクル特性向上や高温保存特性向上の点から好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
イソシアネートとしては、例えば、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、アリルイソシアネート、などが挙げられる。これらのうち、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンがサイクル特性向上や高温保存特性向上の点から好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、ノナンニトリル、デカンニトリル、ドデカンニトリル(ラウロニトリル)、トリデカンニトリル、テトラデカンニトリル(ミリストニトリル)、ヘキサデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ヘプタデカンニトリル、オクタデカンニトリル(ステアノニトリル)、ノナデカンニトリル、イコサンニトリル等のモノニトリル;マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、トリメチルスクシノニトリル、テトラメチルスクシノニトリル、3,3'−オキシジ
プロピオニトリル、3,3'−チオジプロピオニトリル、3,3'−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3'−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル、1,2,3−
プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、1,2,3−トリス(2−シアノエトキシ)プロパン、トリス(2−シアノエチル)アミン等のジニトリルが挙げられ、これらの中でも、ラウロニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリルが好ましい。 これらは単独で用
いても、2種類以上を併用してもよい。
モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及び、NR1R2R3R4(式中、R1〜R4は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等が例示として挙げられる。
なお、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、非水系電解液として実際に二次電池作製に供すると、その電池を解体して再び非水系電解液を抜き出しても、その中の含有量が著しく低下している場合が多い。従って、電池から抜き出した非水系電解液から、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が検出できるものは、非水系電解液中にこれらを本発明で規定する所定割合で含む非水系電解液であるとみなされる。
本発明の非水系電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。 尚、添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で
併用してもよい。
過充電防止剤の具体例としては、ビフェニル、2−メチルビフェニル、2−エチルビフェニル等のアルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、トリフェニルホスフェート、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(3−t−ブ
チルフェニル)ホスフェート、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(3−t−アミルフェニル)ホスフェート、
トリス(4−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(3−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘ
キシルフェニル)ホスフェート等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、3−フルオ
ロビフェニル、4−フルオロビフェニル、4,4’−ジフルオロビフェニル、2,4−ジフルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオ
ロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。
記芳香族化合物の部分フッ素化物が好ましく、ターフェニルの部分水素化体、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、メチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、トリフェニルホスフェート、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼンがより好ましく、ターフェニルの部分水素化体及び
シクロヘキシルベンゼンが特に好ましい。
以下である。濃度が上記範囲にあることにより、所望する過充電防止剤の効果が発現しやすくなり、また、高温保存特性等の電池の特性の低下を抑制する。非水系電解液に過充電防止剤を含有させることによって、過充電による非水系電解液二次電池の破裂・発火を抑制することができ、非水系電解液二次電池の安全性が向上するので好ましい。
本発明の非水系電解液は、非水系電解液二次電池としてそのまま使用するほか、マトリ
ックスポリマーに保持させて、非水系ゲル電解質として使用してもよい。非水系ゲル電解質には、化学架橋を用いたゲル(化学ゲル)と、物理架橋を用いたゲル(物理ゲル)が挙げられるが、化学ゲルとしては一般に、前記のような非水系電解液に重合性モノマーと、必要に応じて重合開始剤を加え、加熱、光照射、電子線照射などの方法でモノマーを重合させることにより作製される。物理ゲルとしては一般に、溶媒に溶かしたマトリックスポリマーを電池構成材料に塗布などで配置した後で、必要に応じて溶媒を蒸発させ、電解液をマトリックスポリマーに含有させることで作製される。
重合性モノマーとしては、特に制限は無いが、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アリルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、などのアクリル酸エステル類;
メタクリル酸メチル、2−エトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、などのメタクリル酸エステル類;
N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N、N−ジエチルアミノエチルアクリレート、などのアクリルアミド類;
1,2−エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、などのジアクリレート類;
ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレート、などのジメタクリレート類;
トリメチロールプロパンアルコキシレートトリアクリレート、などのトリアクリレート類;
ペンタエリスリトールアルコキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールアルコキシレートテトラアクリレート、などのテトラアクリレート類が挙げられる。
充放電効率や容量といった電池特性も良好になる。
本発明の非水系電解液は、前述した非水溶媒に、前述した電解質と化合物A、さらに必要に応じて用いられるその他の助剤等を溶解させることにより、調製することができる。また、非水系ゲル電解質は、化学ゲルの場合、前述の非水系電解液に重合性モノマーと、必要に応じて重合開始剤を加えたプレゲル溶液を、加熱、光照射、電子線照射などの方法でモノマーを重合させることにより作製することができる。物理ゲルの場合、溶媒に溶かしたマトリックスポリマーを電池構成材料に塗布などで配置した後で、必要に応じて溶媒を蒸発させ、非水系電解液をマトリックスポリマーに含有させることで作製することができる。
0ppm以下、中でも20ppm以下の値となるまで脱水しておくことが好ましい。脱水の手法は任意に選択することが可能であるが、例えば減圧下で加熱したり、モレキュラーシーブを通過させたりする等の手法が挙げられる。
〔2−1.化合物B〕
本発明の一態様として、反応性官能基を有し、ポリエチレンオキシド骨格を有さない分子量500以上の化合物Aを含有する非水系電解液について前述したが、以下に説明するプレゲル溶液もまた本発明の一態様である(以下、「本発明のプレゲル溶液」と略記する)。なお、「プレゲル溶液」とは、前述の化学ゲルを作製する前段階の溶液を意味するものであり、具体的には非水系電解液に重合性モノマーを、また必要に応じて重合開始剤を含有する溶液を意味するものとする。
本発明のプレゲル溶液は、高分子鎖に反応性官能基を有する分子量500以上の化合物であり、前記高分子鎖がアクリル酸エステルもしくはその誘導体、メタクリル酸エステルもしくはその誘導体、アクリロニトリルもしくはその誘導体、並びにスチレンもしくはその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上をモノマーとして得られる高分子鎖、またはシリコーン(ポリシロキサン)構造を有する高分子鎖である化合物(以下、「化合物Bと略記とする)を含有することを特徴とする。化合物Bを含有することで、サイクル特性や保存特性に優れた電池を得ることができる。なお、その詳細な理由は未だ判っていないが、化合物Aは反応性官能基を有し、分子量が500以上であるため、電極界面に形成される保護皮膜が安定であることが特性向上に寄与していると推測している。
くは500000以下である。上記範囲にあることにより、電解液への溶解性も良好であるとともに、安定な皮膜を形成でき、電池特性を特に向上させることが期待できる。
なお、化合物Bにおける「分子量」とは、化合物Aが同一分子量の分子のみから構成される化合物である場合にはその分子量を表し、重合体のように分子量の異なる分子によって構成される化合物の場合には数平均分子量を意味するものとする。
アクリル酸エステルもしくはその誘導体、メタクリル酸エステルもしくはその誘導体、アクリロニトリルもしくはその誘導体、並びにスチレンもしくはその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上をモノマーとして得られる高分子鎖としては、下記化学式(1)、(2)、(3)および(4)で表される構造の少なくとも1種以上を有する高分子鎖が挙げられる。なお、高分子鎖を表す化学式中の括弧内部の構造について、以下「セグメント」(繰り返し単位)と略記する場合がある。
また、化合物Bの含有量として(複数種を併用する場合は合計量)は、特に制限はないが、非水系電解液全量に対し、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。上記の範囲内であると、安定な皮膜を形成できるだけでなく、抵抗の上昇も抑制できるので、電池特性を特に向上させることが期待できる。
本発明の態様として、化合物Aを含有する非水系電解液、および化合物Bを含有するプレゲル溶液について前述したが、以下に説明する非水系ゲル電解質もまた本発明の一態様である(以下、「本発明の非水系ゲル電解質」と略記する)。
本発明の非水系ゲル電解質としては、前述のプレゲル溶液から作製された非水系ゲル電解質が挙げられる。即ち、高分子鎖に反応性官能基を有する分子量500以上の化合物であり、かつ高分子鎖がアクリル酸エステルもしくはその誘導体、メタクリル酸エステルもしくはその誘導体、アクリロニトリルもしくはその誘導体、並びにスチレンもしくはその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上をモノマーとして得られる高分子鎖、
またはシリコーン(ポリシロキサン)構造を有する高分子鎖である化合物Bを含有するプレゲル溶液から作製された非水系ゲル電解質である。 また、本発明の非水系ゲル電解質として、化合物Aを含有する非水系電解液を含んだ物理ゲルである非水系ゲル電解質が挙げられる。
これらの非水系ゲル電解質を用いることにより、サイクル特性や保存特性などに優れた非水系電解質二次電池を得ることができる。
本発明の態様として、化合物Aを含有する非水系電解液、、化合物Bを含有するプレゲル溶液、さらに非水系ゲル電解質について前述したが、これらを用いた非水系電解質二次電池も本発明の一態様である(以下、「本発明の非水系電解質二次電池」と略記する)。
本発明の非水系電解質二次電池は、非水系電解質以外は公知の非水系電解質二次電池と同様であり、通常は、本発明の非水系電解質が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。本発明の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
非水系電解液としては、前述の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
負極活物質としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
炭素質材料としては、(1)天然黒鉛、(2)人造黒鉛、(3)非晶質炭素、(4)炭素被覆黒鉛、(5)黒鉛被覆黒鉛、(6)樹脂被覆黒鉛等が挙げられる。
(1)天然黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土壌黒鉛及び/又はこれらの黒鉛を原料に球形化や緻密化等の処理を施した黒鉛粒子等が挙げられる。これらの中でも、粒子の充填性や充放電レート特性の観点から、球形化処理を施した球状もしくは楕円体状の黒鉛が特に好ましい。
球形化処理に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素材に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、球形化処理を行なう装置が好ましい。また、炭素材を循環させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有するものであるのが好ましい。
例えば前述の装置を用いて球形化処理する場合は、回転するローターの周速度を30〜100m/秒にするのが好ましく、40〜100m/秒にするのがより好ましく、50〜100m/秒にするのが更に好ましい。また、処理は、単に炭素質物を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
(2)人造黒鉛としては、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ
塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサイルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂などの有機化合物を、通常2500℃以上、通常3200℃以下の範囲の温度で黒鉛化し、必要に応じて粉砕及び/又は分級して製造されたものが挙げられる。この際、珪素含有化合物やホウ素含有化合物などを黒鉛化触媒として用いることもできる。また、ピッチの熱処理過程で分離したメソカーボンマイクロビーズを黒鉛化して得た人造黒鉛が挙げられる。更に一次粒子からなる造粒粒子の人造黒鉛も挙げられる。例えば、メソカーボンマイクロビーズや、コークス等の黒鉛化可能な炭素質材料粉体とタール、ピッチ等の黒鉛化可能なバインダーと黒鉛化触媒を混合し、黒鉛化し、必要に応じて粉砕することで得られる、扁平状の粒子を複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した黒鉛粒子が挙げられる。
(3)非晶質炭素としては、タール、ピッチ等の易黒鉛化性炭素前駆体を原料に用い、黒鉛化しない温度領域(400〜2200℃の範囲)で1回以上熱処理した非晶質炭素粒子や、樹脂などの難黒鉛化性炭素前駆体を原料に用いて熱処理した非晶質炭素粒子が挙げられる。
(4)炭素被覆黒鉛としては、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の有機化合物である炭素前駆体を混合し、400〜2300℃の範囲で1回以上熱処理し得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、非晶質炭素が核黒鉛を被覆している炭素黒鉛複合体が挙げられる。複合の形態は、表面全体または一部を被覆しても、複数の一次粒子を前記炭素前駆体起源の炭素をバインダーとして複合させたものであってもよい。また、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛にベンゼン、トルエン、メタン、プロパン、芳香族系の揮発分等の炭化水素系ガス等を高温で反応させ、黒鉛表面に炭素を堆積(CVD)さ
せることでも炭素黒鉛複合体を得ることもできる。
(5)黒鉛被覆黒鉛としては、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の易黒鉛化性の有機化合物の炭素前駆体を混合し、2400〜3200℃程度の範囲で1回以上熱処理し得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、黒鉛化物が核黒鉛の表面全体または一部を被覆している黒鉛被覆黒鉛が挙げられる。
(6)樹脂被覆黒鉛としては、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、樹脂等を混合、400℃未満の温度で乾燥し得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、樹脂等が核黒鉛を被覆している樹脂被覆黒鉛が挙げられる。
また、(1)〜(6)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、核黒鉛の原料となる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛としては、球形化処理を施した天然黒鉛が好ましい。
負極活物質として炭素質材料を用いる場合、以下の物性を有するものであることが望ましい。
(X線パラメータ)
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、通常0.335nm以上であり、また、通常0.360nm以下であり、0.350nm以下が好ましく、0.345nm以下がさらに好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上であることが好ましく、中でも1.5nm以上であることがさらに好ましい。
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
体積基準平均粒径が上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
炭素質材料のラマンR値は、レーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。
一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(例えば、日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光(若しくは半導体レーザー光)を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明の炭素質材料のラマンR値と定義する。
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・レーザー波長 :Arイオンレーザー514.5nm(半導体レーザー532nm)
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値:バックグラウンド処理、
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常
0.1m2・g−1以上であり、0.7m2・g−1以上が好ましく、1.0m2・g−1以上がさらに好ましく、1.5m2・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m2・g−1以下であり、25m2・g−1以下が好ましく、15m2・g−1以下がさらに好ましく、10m2・g−1以下が特に好ましい。
BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、安定性が低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。
円形度を向上させる方法は、特に制限されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダーもしくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上がさらに好ましく、1g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下がさらに好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.0
15以上がさらに好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。
電極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
また、合金系材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がさらに好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
<正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質(リチウム遷移金属系化合物)について述べる。
<リチウム遷移金属系化合物>
リチウム遷移金属系化合物とは、Liイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物などが挙げられる。硫化物としては、TiS2やMoS2などの二次元層状構造をもつ化合物や、一般式MexMo6S8(MeはPb,Ag,Cuをはじめとする各種遷移金属)で表される強固な三次元骨格構造を有するシュブレル化合物などが挙げられる。リン酸塩化合物としては、オリビン構造に属するものが挙げられ、一般的にはLiMePO4(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)で表され、具体的にはLiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4などが挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造に属するものが挙げられる。スピネル構造を有するものは、一般的にLiMe2O4(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され、具体的にはLiMn2O4、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoVO4などが挙げられる。層状構造を有するものは、一般的にLiMeO2(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表される。具体的にはLiCoO2、LiNiO2、LiNi1−xCoxO2、LiNi1−x−yCoxMnyO2、LiNi0.5Mn0.5O2、Li1.2Cr0.4Mn0.4O2、Li1.2Cr0.4Ti0.4O2、LiMnO2などが挙げられる。
また、リチウム含有遷移金属化合物は、例えば、下記組成式(A)または(B)で示されるリチウム遷移金属系化合物であることが挙げられる。
1)下記組成式(A)で示されるリチウム遷移金属系化合物である場合
Li1+xMO2 ・・・(A)
ただし、xは通常0以上、0.5以下である。Mは、Ni及びMn、或いは、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は通常0.1以上、5以下である。Ni/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。Co/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。なお、xで表されるLiのリッチ分は、遷移金属サイトMに置換している場合もある。
なお、上記組成式(A)においては、酸素量の原子比は便宜上2と記載しているが、多少の不定比性があってもよい。また、上記組成式中のxは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のxが−0.65以上、1以下に測定されることがある。
また、リチウム遷移金属系化合物は、正極活物質の結晶性を高めるために酸素含有ガス雰囲気下で高温焼成を行って焼成されたものが電池特性に優れる。 さらに、組成式(A)で示されるリチウム遷移金属系化合物は、以下一般式(A’)のとおり、213層と呼ばれるLi2MO3との固溶体であってもよい。
αLi2MO3・(1−α)LiM’O2・・・(A’)
一般式中、αは、0<α<1を満たす数である。
Mは、平均酸化数が4+である少なくとも一種の金属元素であり、具体的には、Mn、Zr、Ti、Ru、Re及びPtからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素である。
M’は、平均酸化数が3+である少なくとも一種の金属元素であり、好ましくは、V、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素であり、より好ましくは、Mn、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素である。
2)下記一般式(B)で表されるリチウム遷移金属系化合物である場合。
Li[LiaMbMn2−b−a]O4+δ・・・(B)
ただし、Mは、Ni、Cr、Fe、Co、Cu、Zr、AlおよびMgから選ばれる遷移金属のうちの少なくとも1種から構成される元素である。
bの値は通常0.4以上、0.6以下である。
bの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度が高い。
また、aの値は通常0以上、0.3以下である。また、上記組成式中のaは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のaが−0.65以上、1以下に測定されることがある。 aの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度を大きく損なわず、かつ、良好な負荷特性が得られる。
さらに、δの値は通常±0.5の範囲である。
δの値がこの範囲であれば、結晶構造としての安定性が高く、このリチウム遷移金属系化合物を用いて作製した電極を有する電池のサイクル特性や高温保存が良好である。
ここでリチウム遷移金属系化合物の組成であるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物におけるリチウム組成の化学的な意味について、以下により詳細に説明する。
上記リチウム遷移金属系化合物の組成式のa,bを求めるには、各遷移金属とリチウムを誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)で分析して、Li/Ni/Mnの比を求める事で計算される。
構造的視点では、aに係るリチウムは、同じ遷移金属サイトに置換されて入っていると考えられる。ここで、aに係るリチウムによって、電荷中性の原理によりMとマンガンの平均価数が3.5価より大きくなる。
また、上記リチウム遷移金属系化合物は、フッ素置換されていてもよく、LiMn2O4‐xF2xと表記される。
上記の組成のリチウム遷移金属系化合物の具体例としては、例えば、Li1+xNi0.5Mn0.5O2、Li1+xNi0.85Co0.10Al0.05O2、Li1+xNi0.33Mn0.33Co0.33O2、Li1+xNi0.45Mn0.45Co0.1O2、Li1+xMn1.8Al0.2O4、Li1+xMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。これらのリチウム遷移金属系化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上をブレンドして用いてもよい。
また、リチウム遷移金属系化合物は、異元素が導入されてもよい。異元素としては、B,Na,Mg,Al,K,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Sr,Y,Zr,Nb,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sb,Te,Ba,Ta,Mo,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Pb,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Bi,N,F,S,Cl,Br,I,As,Ge,P,Pb,Sb,SiおよびSnの何れか1種以上の中から選択される。これらの異元素は、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれていてもよく、あるいは、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれず、その粒子表面や結晶粒界などに単体もしくは化合物として偏在していてもよい。
リチウム二次電池用正極は、上述のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体及び結着剤を含有する正極活物質層を集電体上に形成してなるものである。
正極活物質層は、通常、正極材料と結着剤と更に必要に応じて用いられる導電材及び増
粘剤等を、乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、或いはこれらの材料を液体媒体中に溶解又は分散させてスラリー状にして、正極集電体に塗布、乾燥することにより作製される。
正極集電体として薄膜を使用する場合、その厚さは任意であるが、通常1μm以上、100mm以下の範囲が好適である。上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する可能性がある一方で、上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる可能性がある。
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、80質量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう可能性がある一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる可能性がある。
、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等を挙げることができる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正極のプレス後の電極密度としては、通常、2.2g/cm3以上、4.2g/cm3以下である。
なお、塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
<電極群>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
<非水系電解液の調製>
[実施例1−1〜1−2、比較例1-1、参考例1-1]
乾燥アルゴン雰囲気下、環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(以降、ECとする)とプロピレンカーボネート(以降、PCとする)、鎖状カーボネートとしてジエチルカーボネート(以降、DECとする)をEC:PC:DEC=10:50:40の体積比率で混合し、十分に乾燥したLiPF6を1.2mol/Lとなるように加え、そこにビニレンカーボネート(以降、VCとする)を非水電解液全体に対して1.5質量%になるように加えて基本電解液を調製した。比較例1では、この基本電解液を使用した。この基本電解液に対し、以下の化合物を表1に記載の量だけ加えて電解液を作製した。ただし
、参考例についてはVCの合計量が2.5質量%である。
・化合物1:東亞合成社製 マクロモノマー AA−6(数平均分子量:6000、反応性官能基:メタクリレート基、セグメント:メチルメタクリレート)
・化合物2:東亞合成社製 マクロモノマー AB−6(数平均分子量:6000、反応性官能基:アクリレート基、セグメント:ブチルアクリレート)
活物質として黒鉛粉末98質量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを銅箔の片面に塗布して乾燥、プレスし、直径が12.5mmとなるように円形に切り出して電極とした。作製した黒鉛電極は60℃で12時間減圧乾燥して用いた。
2032タイプのコイン型セルを用いて、上記黒鉛電極を、直径14mmとなるように円形に切り出したリチウム金属箔とポリエチレン製セパレータを挟んで対向させ、表1に記載の電解液をそれぞれ加えて、コイン型電池を作製した。
上記のように作製したコイン型電池を、0.25mAの電流値で350Ah/gになる
まで充電し、その後、0.25mAの電流値で1.5Vまで放電した。このときの充放電
効率を表1に示す。なお、充放電効率=放電容量/充電容量である。
。これは、黒鉛負極上でプロピレンカーボネート(PC)の分解が進行したためであると考えられる。一方、本発明の非水系電解液を使用した実施例1−1、実施例1−2では90%を超える充放電効率を達成することができた。なお、単純にVCを増量した参考例1-1では、比較例1−1に比べると充放電効率が増加するものの、本発明の電解液を使用
した場合には及ばなかった。これらの結果より、本発明の非水系電解液を使用すれば、黒鉛負極上でのプロピレンカーボネート(PC)の分解を抑制し、充放電効率に優れる電池を作ることが出来る。
乾燥アルゴン雰囲気下、環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(以降、ECとする)、鎖状カーボネートとしてジエチルカーボネート(以降、DECとする)をEC:DEC=30/70の体積比率で混合し、十分に乾燥したLiPF6を1.3mol/Lとなるように加え、そこに表2に記載の化合物を加えた。なお、表2中のMFECはモノフルオロエチレンカーボネートである。
・化合物3:東亞合成社製 マクロモノマー AK−32(数平均分子量:20000、反応性官能基:ジヒドロキシル基、セグメント:ジメチルシロキサン)
負極活物質として黒鉛粉末98質量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン1質量部、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを銅箔の片面に塗布して乾燥、プレスして電極部の厚みが61.5μmとなるようにした。この負極を3cm×4cmの長方形に切り出して使用した。作製した負極は60℃で12時間減圧乾燥して用いた。
正極活物質としてコバルト酸リチウム96.8質量部に、導電助剤1.6質量部、バインダー(pVDF)1.6質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーをアルミニウム箔の両面に塗布して乾燥、プレスして電極部の厚みが55μmとなるようにした。この正極を3cm×4cmの長方形に切り出して使用した。作製した正極は80℃で12時間減圧乾燥して用いた。
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、正極、セパレータ、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に0.4mL注入し、真空封止を行ない、シート状電池を作製した。更に、電極間の密着性を高めるために、ガラス板でシート状電池を挟んで加圧した。
上記のように作製したラミネート電池を慣らし充放電を実施した後、45℃においてサイクル試験を行った。充電は0.5C相当の電流で定電流-定電圧方式で4.2Vまで行
い、放電は0.5C相当の電流で定電流方式で3Vまで行った。なお、1Cとは1時間で充電または放電が完了する電流値である。表2に50サイクル後のサイクル維持率を示す。サイクル維持率は50サイクル後の放電容量/1サイクル目の放電容量×100(%)の計算式で求めている。
乾燥アルゴン雰囲気下、環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(以降、ECとする)、鎖状カーボネートとしてジエチルカーボネート(以降、DECとする)をEC:DEC=30/70の体積比率で混合し、十分に乾燥したLiPF6を1.3mol/Lとなるように加え、そこに表3に記載の化合物を加えた。
上記実施例2(表2に記載)の場合と同様に作製した。
上記のように作製したラミネート電池を慣らし充放電を実施した後、0.2C相当の電流で定電流−定電圧方式で4.2Vまで充電し、80℃において3日間電池を保存した。このときのガス発生量を表3に示す。なお、ガス発生量は、保存した後の電池を室温まで冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、高温保存前後の体積変化から発生したガス量を求めた。
本発明の非水系電解質二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用大型蓄電池等を挙げることができる。
Claims (4)
- 金属イオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極と、金属イオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を有する負極とを備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、
プロピレンカーボネートを含有し、かつ
下記(i)〜(iii)の全ての条件を満たす化合物Aを非水系電解液中に0.01質量%以上10質量%以下で含有することを特徴とする非水系電解液。
(i)前記化合物Aは、反応性官能基を有する高分子鎖を含み、ポリエチレンオキシド骨格を含まない数平均分子量500以上5000000以下の化合物である。
(ii)前記反応性官能基が、アクリレート基、メタクリレート基、イソシアナト基、アルキルジクロロシリル基、トリクロロシリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基、ヒドロキシル基、およびジヒドロキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である。
(iii)前記高分子鎖が、アクリル酸エステルもしくはその誘導体、メタクリル酸エステルもしくはその誘導体、アクリロニトリルもしくはその誘導体、並びにスチレンもしくはその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上をモノマーとして得られる高分子鎖、またはシリコーン(ポリシロキサン)構造を有する高分子鎖である。 - 前記化合物Aが、数平均分子量3000以上の化合物である、請求項1に記載の非水系電解液。
- 不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、酸無水物、イソシアネート、ニトリル、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、リチウムビスオキサラトボレート、およびリチウムジフルオロオキサラトボレートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する、請求項1または2に記載の非水系電解液。
- 金属イオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極と、金属イオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を有する負極とを備える非水系電解液二次電池であって、
請求項1ないし3の何れか1項に記載の非水系電解液を用いることを特徴とする非水系電解液二次電池。
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