JP2000011757A - イオン伝導性ゲルおよびその製造方法 - Google Patents

イオン伝導性ゲルおよびその製造方法

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JP2000011757A
JP2000011757A JP10177286A JP17728698A JP2000011757A JP 2000011757 A JP2000011757 A JP 2000011757A JP 10177286 A JP10177286 A JP 10177286A JP 17728698 A JP17728698 A JP 17728698A JP 2000011757 A JP2000011757 A JP 2000011757A
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ion
electrolyte
conductive gel
monomer
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Motoyasu Fukukawa
元康 福川
Hiroyuki Takamiya
博幸 高宮
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Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気化学デバイス用材料として有用な、イオ
ン伝導性ゲル並びにその製造方法を提供する。 【解決手段】 リチウムイオンを含有する電解質
(a)、特定の有機重合体(b)、(a)(b)を溶解
する有機溶媒(c)及び(c)に不溶の架橋重合体
(d)が特定に混合された高いイオン伝導度を有するゲ
ルであり、(a)〜(c)から電解液を形成し、これに
(d)の単量体を溶解し、次いで重合せしめて(d)並
びにゲルを形成する。 【効果】 高温下でも溶融も固液分離も起こらず形態保
持性の高いゲルが、安全且つ高生産性で提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオン伝導性ゲル
及びその製造方法に関し、さらに詳細には、実用性に満
足し得る高いイオン伝導性と耐熱性とを有する、イオン
伝導性ゲルおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電池、表示素子、センサーな
どの電気化学デバイスには、水または有機溶媒にKO
H、LiBF4 ,LiClO4 などの電解質を溶解した
電解液が実用的に多く用いられている。この電解液は、
イオン伝導度が高く、そして電極との接触が良好であ
る。しかし、電解液は液体であるため、電解液を用いて
作製される電気化学デバイスには、液漏れの問題が常に
存在し、電解液を封鎖するための構造が必要とされる。
さらにこのような電気化学デバイスはシート状のデバイ
スに加工することが困難である、軽量化が困難であるな
どの問題があった。近年では、RbAg4 5 、Na2
O・MgO・5Al2 3 、Na2 O・5Ga2 3
Li3 Nなどの無機固体電解質が知られている。これら
の無機固体電解質は、上記液漏れのような電気化学デバ
イスの問題を解消し得る。しかし、無機固体電解質は、
電極との密着性が悪い、成形加工が困難であるなどの問
題があった。
【0003】これらの問題を解決する電気化学デバイス
用材料として、高分子固体電解質の使用が注目されてい
る。高分子固体電解質を用いることにより、上記電気化
学デバイスは、上記電解液のような流動性を有しない、
いわゆる全固体型のデバイスに置き換えられる。さら
に、この高分子固体電解質内の高分子が有する粘弾性に
より、電極との密着性、加工性などの上記問題が解消さ
れる。高分子固体電解質はまた、電極間に配置された場
合には該電極間の隔膜も兼ね備えており、しかも1mm
以下の厚みに成形可能である。これらの理由から、電気
化学デバイスに対してより効率的な高分子固体電解質の
製造が期待されており、その研究開発が盛んに行われて
いる。
【0004】例えば、二次電池を作製する場合、無機固
体電解質では、充放電反応に伴って陽極活性物質の形状
変化が起こり、電極−電解質界面に歪みが生じて、二次
電池の性能低下を引き起こす問題点があった。これに対
して、高分子固体電解質は、それ自体が可撓性を有して
いるので、陽極活性物質の形状変化に追従でき、良好な
充放電特性を有し得る。高分子固体電解質はまた、薄型
化することにより高度な集積が可能であるので、自動車
用電源および家庭用電源を作製するための材料として応
用が期待されている。さらに、従来の電解液を金属リチ
ウム二次電池に使用した場合、充放電の繰り返しによ
り、電解液中にリチウムのデンドライトが生成するとい
う問題があった。このようなデンドライトの生成は、二
次電池のショートおよび破裂のような問題を引き起こ
す。従って、金属リチウム二次電池は、実用化に至って
いなかった。これに対して、高分子固体電解質を金属リ
チウム二次電池に使用した場合、該高分子固体電解質
は、リチウムのデンドライトの生成を抑制するか、また
は全く生成させないので、高分子固体電解質は金属リチ
ウム二次電池の材料としても非常に期待されている。
【0005】電解液、無機固体電解質、または高分子固
体電解質を用いる電気化学デバイスの他の例として、エ
レクトロクロミックディスプレイが知られている。エレ
クトロクロミックディスプレイは、電気化学的な酸化還
元反応によって可逆的発消色挙動を示す。エレクトロク
ロミックディスプレイは、表示角に影響されない;メモ
リー性が良好である;セルの構成が簡単である;色調が
多様である;などの優れた利点を有しており、液晶表示
素子に代わる表示素子として期待されている。このエレ
クトロクロミックディスプレイには、例えば、高いイオ
ン伝導性を有する高分子固体電解質の膜と、可逆的発消
色挙動を示す材料(例えば、酸化タングステン、プルシ
アンブルー、フタロシアニンのコバルト塩等)でなる層
とが組み合わせて使用され得る。このような組み合わせ
を用いて作製されたエレクトロクロミックディスプレイ
は良好な発色消色応答を示す。高分子固体電解質はま
た、全固体型のエレクトロクロミックディスプレイの設
計を可能とし、電極と膜との間の接着性を常に高く保持
させ得る。従って、高分子固体電解質を用いるエレクト
ロクロミックディスプレイは、従来のものと比較して、
種々の環境下(例えば、連続的に振動が加えられる環境
下、および大きな歪み変形がかけられる環境下)におい
て使用可能であると考えられる。
【0006】電解液、無機固体電解質、または高分子固
体電解質を用いる電気化学デバイスのさらに別の例とし
て、電気二重層コンデンサーが知られている。電気二重
層コンデンサーは、コンデンサー本来の長所である長寿
命特性および急速充放電特性に加えて、通常の二次電池
に匹敵する静電容量を有するという利点がある。特にこ
の電気二重層コンデンサーについては、薄膜化を可能と
し、生産性を向上させ、そして電解液などの液体成分の
流出を防止する観点から、全固体型の電気二重層コンデ
ンサーを作製する関心が高まっている。このような全固
体型の電気二重層コンデンサーの作製においては、電極
との密着性を向上させ、そして急速充放電特性を維持す
るために、電解液に匹敵するイオン伝導度を有する高分
子固体電解質を作製することが所望されている。
【0007】このような要求のもとで、高分子固体電解
質に対する多くの研究が行われている。例えば、J.Ame
r.Chem.Soc., 21,648(1988)は、ポリエチレンオキサイ
ドのようなポリエーテルを用いた高分子固体電解質を記
載している。これは、高分子鎖の熱運動(セグメント運
動)に伴って、高分子鎖に包接されたイオンが移動する
タイプ(ポリエーテルタイプ)の高分子固体電解質であ
る。しかし、上記ポリエーテルタイプの高分子固体電解
質においては、通常、最も必要とされる室温付近でのイ
オン伝導度が10-4S/cmを越えることが困難であっ
た。従って、室温付近でのイオン伝導度を高めるには、
分子量の低いポリエーテルを使用するか、またはポリエ
ーテル自体を軟化させる必要があった。しかし、このよ
うな分子量の低下または軟化は、高分子固体電解質の機
械的強度を低下させ、その使用を耐え難いものにさせて
いた。
【0008】J.Polym.Sci., 27 ,4191(1982)、J.Polym.
Sci.Polym.Phys.Ed., 21, 939(1983) 、J.Electrochem.
Soc., 137 , 1657(1990)、特開平4−306560号公
報、特開平7−45271号公報、および特開平7−8
2450号公報は、ポリアクリロニトリルのような極性
高分子と、電解質を有機溶媒に溶解した電解液とでなる
高分子固体電解質(いわゆるイオン伝導性ゲル)につい
て記載している。特公昭58−56467号公報は、ポ
リメタクリル酸メチルのような極性高分子と、電解質を
有機溶媒に溶解した電解液とでなるイオン伝導性ゲルを
開示している。さらに、特開平7−37419号公報
は、アクリロニトリルの共重合体およびポリアルキレン
オキサイドと、電解質を有機溶媒に溶解した電解液とで
なるイオン伝導性ゲルを開示している。
【0009】上記極性高分子を用いるイオン伝導性ゲル
は、例えば、キャスト法により製造される。キャスト法
は、アセトニトリルのような揮発性の有機溶媒を含有す
る電解液に極性高分子を溶解させた(あるいは、通常の
電解液に極性高分子を溶解させ、次いで、これを揮発性
の有機溶媒で希釈した)後に、得られた溶液を水平な板
の上に展開し、加熱減圧下または大気圧下でこの揮発性
の有機溶媒を蒸発させ、濃厚な高分子電解液とすること
によってゲル化させるという(揮発−濃縮)方法であ
る。しかし、この方法においては、揮発性の有機溶媒を
蒸発させる工程を必須とするために、火災発生および取
扱者への中毒症状の誘発などの安全性の問題点、ならび
に薄膜タイプのイオン伝導性ゲルを大面積で得られない
という製造方法自体の問題があり、工業的に実用可能で
はなかった。
【0010】また、このようなイオン伝導性ゲルは一般
に、高温においてゲルの形態安定性が悪いという欠点を
有する。つまり温度を高めていくと、液状化(溶融)し
たり、イオン伝導性ゲル中の極性高分子が電解液を担持
出来なくなり、極性高分子と電解液が「分離」するとい
う問題があった。すなわち、高温下ではイオン伝導性ゲ
ルの有する全固体型という利点が消失してしまい、長期
安定使用の信頼性が無いという問題があった。
【0011】この他、特開平2−82457号公報、特
開平5−67476号公報、および特開平7−2207
61号公報には、不織布や多孔質のフィルムに、紫外線
硬化型の単量体を含んだ電解液を含浸し、紫外線を照射
するイオン伝導性ゲルについてが記載されている。しか
し、これらの方法では形成されるイオン伝導性ゲルの形
状が、不織布やフィルムの形状に左右され、イオン伝導
性ゲルの厚みもこれらの材料よりも厚いものとなってし
まう。また、不織布や多孔質のフィルムに泡が入りやす
くイオン伝導特性にムラが生じる、電極との密着性が不
十分であるといった問題も有している。
【0012】イオン伝導性ゲルを含む高分子固体電解質
は、薄型二次電池のような携帯用機器に使用される場
合、イオン伝導度が常温において10-3S/cm以上
(好ましくは1.5×10-3S/cm以上)であり、−
20℃〜80℃という広い温度範囲においてもイオン伝
導性ゲルの形態を保持し、厚みが1000μm以下、好
ましくは100μm以下であることが要求されている。
また工業的には、大面積のイオン伝導性ゲルの薄膜を短
時間で、安全に、生産できる製造方法が所望されてい
る。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来問題
を解決することを課題とし、その目的とするところは、
高いイオン伝導度を有し、80℃といった高温下におい
ても固体の形状を保持し、液体成分と固体成分との相分
離がなく、電極と密着し得る弾性と成形加工に耐え得る
強度とを備え、そして適切な厚みで種々の形状に成形可
能なイオン伝導性ゲル、および該ゲルを工業的に有利か
つ安全に製造する方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するため電解液の分離が無く、耐熱性を有し高
イオン伝導度でしかも対象材と密着できるような適当な
弾性と、成形加工に耐えうる強度を有するイオン伝導性
ゲルを、安全に、生産性高く形成する方法として、様々
な化学架橋を導入したイオン伝導性ゲルについて検討し
てきた。その結果、電解質を溶解した電解液と架橋ポリ
マー及び電解液に可溶なポリマーを用いることが、上記
課題を解決するための重要な因子であることを見出し、
解決しようとする課題を全てバランスよく達成する本発
明を完成させるに到った。
【0015】即ち、本発明の目的は、カチオンとしてリ
チウムイオンを含有する電解質(a):4.5wt%〜
14wt%、ポリエチレングリコール系又はポリアクリ
ロニトリル系重合体(b):3wt%〜10wt%、電
解質(a)及び重合体(b)を溶解する有機溶媒
(c):91.5〜66wt%でなる電解質含有重合体
溶液と、単量体は有機溶媒(c)に溶解するが重合体は
該有機溶媒(c)に不溶である架橋重合体(d)1wt
%〜10wt%が分子レベルで混合されてなり、20℃
におけるイオン伝導度が1.5×10-3S/cm以上で
あることを特徴とするイオン伝導性ゲル(但し、wt%
はゲル総量に対する比率である)により達成される。さ
らに好適な態様としては、イオン伝導性ゲルが1μmか
ら1000μmの厚みを有する膜であるもの、また架橋
重合体(d)を構成する単量体が2個以上のビニル基を
有する付加重合性単量体であることを特徴とするイオン
伝導性ゲルが挙げられる。
【0016】本発明はまた、 1)カチオンとしてリチウムイオンを含有する電解質
(a)、ポリエチレングリコール系またはポリアクリロ
ニトリル系重合体(b)、該電解質(a)及び重合体
(b)を溶解する有機溶媒(c)から電解質含有重合体
溶液を形成する工程; 2)該重合体溶液に、単量体は有機溶媒(c)に溶解す
るが重合体は該有機溶媒(c)に不溶である架橋重合体
(d)を与える単量体と重合開始剤を溶解せしめる工
程; 3)該溶液中の架橋重合体(d)を与える単量体を重合
せしめることにより、架橋重合体(d)の形成並びに該
溶液のゲル化を惹起させる工程;からなるイオン伝導性
ゲルの製造方法である。好適な態様としては、工程1)
と工程2)を一工程で行って、電解質含有重合体溶液に
架橋重合体(d)を与える単量体と重合開始剤を溶解し
た溶液を形成する方法や、工程3)に先立って、溶液を
膜状に形成する方法、架橋重合体(d)を与える単量体
が2個以上のビニル基を有する付加重合性単量体であ
り、該単量体の重合の開始を紫外線照射により行うこと
を特徴とするイオン伝導性ゲルの製造方法が挙げられ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】まず、本発明に適用される電解質
(a)とは、カチオンとしてリチウムイオンを含有し、
有機溶媒(c)に可溶であれば特に限定されない。ま
た、電解質は1種以上、即ち1種単独で、又は2種以上
を混用して用いられる。このような電解質としては、L
iAsF6 ,Li2 10Cl10,LiBF4 ,LiB
r,LiCF3 SO3 ,LiC4 9 SO3 ,LiCl
4 ,LiI,LiN(SO2 CF 3 2 ,LiP
6 ,LiSCN,ステアリルスルホン酸リチウム等が
挙げられる。本発明のように、カチオンとしてリチウム
イオンを有する電解質と後述のように溶媒として有機溶
媒を採用すると、リチウムイオン二次電池や金属リチウ
ム二次電池等のリチウム系の電極を用いる場合に特に有
用である。
【0018】電解質(a)の濃度は、電解質(a),重
合体(b),有機溶媒(c),架橋重合体(d)の総量
に対し、4.5wt%〜14wt%であることが必要で
あり、上限を越えるとデンドライド生成が発生しうる可
能性があり、下限に満たないと必要な電力が得られない
といった問題が生じるので採用できない。さらに好まし
くは7〜12wt%の範囲内が推奨されるが、かかる電
解質(a)の濃度の選定にあたっては、使用環境下特に
低温において電解質が析出せず、広い温度域でゲルのイ
オン伝導度が高くなるよう、(b),(c),(d)の
組み合わせをも勘案すべきである。
【0019】次に本発明に採用する重合体(b)は、ポ
リエチレングリコール系重合体又はポリアクリロニトリ
ル系重合体であるが、それらの組成や分子量に特に制限
は無く、単独重合体でも共重合体でも使用できる。唯一
の制限は、この重合体(b)は電解質(a)とともに後
述する有機溶媒(c)に溶解し得るものであること、で
ある。尚、有機溶媒(c)への溶解性は重合体(b)の
共重合組成や分子量を調整することによって制御するこ
とができ、次に述べる重合体(b)の濃度と共に、系の
粘度を介してゲルの薄膜形成の操作性も制御できる。か
かる重合体(b)はゲルの総量に対し3wt%〜10w
t%を占め、さらに好ましくは3wt%〜9wt%の範
囲内が推奨される。重合体(b)の量が3wt%に満た
ない場合はゲルの固体としての形態保持が困難となり、
一方10wt%を超えては電解質含有重合体溶液の粘度
が増加し、発明のイオン伝導性ゲルの自由な賦形が困難
となる。
【0020】次に本発明に使用する有機溶媒(c)と
は、前述した電解質(a)と重合体(b)とをともに溶
解させることができるものであれば、特に限定されな
い。また、溶媒も1種類に限定されるものではなく、混
合溶媒であってもかまわない。つまり、単独では溶解性
に乏しくても混合溶媒とした場合に溶解性を示すのであ
ればかまわない。このような溶媒としては、γ−ブチロ
ラクロン、アセトニトリル、サクシノニトリル、ベンゾ
ニトリル、ニトロメタン、N−メチル−2−ピロリド
ン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、
ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチ
ルカーボネート、エチルメチルカーボネート、スルホラ
ン、メチルスルホラン、1,3−ジオキサン、1,2−
ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,3
−ジオキソラン、4,4’−ジメチル−1,3−ジオキ
ソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒ
ドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メチルア
セテート等が例示されるが、揮発性が低い、沸点が比較
的高い、粘度が低い等から安全性やゲルの生産性に優れ
る点でエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート
を組み合わせた混合溶媒、エチレンカーボネートとジメ
チルカーボネートの混合溶媒等が好適に採用される。か
かる有機溶媒(c)のゲルの総量に対する割合としては
66〜91.5wt%が好適である。
【0021】次に本発明に使用する架橋重合体(d)と
は、該重合体の単量体の状態では前述の有機溶媒(c)
に溶解するが、一旦重合して架橋重合体となると有機溶
媒(c)に不溶となる重合体であり、80℃程度の高温
下においても架橋構造がこわれないものであれば特に限
定されない。また、1種類に限定されず、2種以上の架
橋重合体の混用であってもよい。このような架橋重合体
(d)としては、ポリエチレングリコール系ポリマー、
ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポ
リ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリ
ル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポ
リアセチレン、ポリメチルビニルケトン、ポリホルムア
ルデヒド、ナイロン、ポリウレタン、セルロース、絹、
ポリアデニル酸、デオキシリボ核酸、リボ核酸等の架橋
体が例示されるが、特に好ましいのは2個以上のビニル
基を有する付加重合性単量体の重合体である。これらの
例としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエ
チレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコ
ールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアク
リレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエ
チレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリ
コールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジ
メタクリレート、ノナエチレングリコールジアクリレー
ト、トリメチロールプロパントリアクリレート等が例示
される。
【0022】しかし、架橋性重合体(d)が、既述した
重合体(b)(この重合体は有機溶媒に可溶である)と
類似の構造を有するものであったり、架橋が未だ発現し
ていない時点の重合体では有機溶媒(c)に可溶である
が、架橋が発現すると不溶となるような重合体であれ
ば、イオン伝導性ゲル形成時において電解質含有重合体
溶液(以下電解液ともいう)を保持する力が大きく、形
成されたゲルが高いイオン伝導度を示すため、より好ま
しい。また、架橋点間距離の制御によっても、イオン伝
導性ゲルの強度、弾性、イオン伝導度を制御することが
できる。
【0023】かかる架橋重合体(d)は、ゲルの構成成
分の総量に対し1wt%〜10wt%、さらに好ましく
は2〜10wt%が、分子レベルで混合されている必要
がある。架橋重合体(d)が1wt%に満たないとゲル
の固体としての形態保持が困難で、10wt%を超える
と成形加工の際に必要なゲルの弾性が失われてしまい、
いずれも発明の目的が達成されない。ここで、本願にお
いて分子レベルで混合されているとは、該架橋重合体
(d)の単量体が有機溶媒(c)に溶解し得るものを採
用していることから理解されるように、架橋重合体
(d)が形成されてから電解液に機械的に混合されたレ
ベルのことでは無く、該単量体が電解液に溶解(分子分
散)した状態から重合せしめられて形成されるレベルの
混合状態を言う。これは後述する本発明の推奨する製造
方法によって好適に実現される。
【0024】尚、特別な場合として重合体(b)(有機
溶媒(c)に可溶である)が変性処理によって架橋重合
体(d)となりうる場合は、必ずしも別々の重合体
(b),架橋重合体(d)で本発明ゲルの成分を満たす
必要はない。つまり上述変性処理を適宜の程度に止める
ことにより、無変性のものにより重合体(b)が、変性
したものにより架橋重合体(d)が供され、必要なゲル
の成分が充たされるのである。このような特別な重合体
(b)の例としては、先に例示した重合体(b)が、そ
の重合工程や有機溶媒(c)への溶解の工程では発現し
ないが、変性処理が施されると架橋が発現するような官
能基が付与されたものである場合が挙げられる。このよ
うな官能基としては、二重結合、水酸基、グリシジル
基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、シ
アノ基等が例示されるが、これに限定されるものではな
い。
【0025】前述した変性処理とは一般的に熱等の外部
エネルギーを加えるといった方法があり、これによって
官能基である二重結合、水酸基、グリシジル基、カルボ
キシル基、アミノ基、イソシアネート基、シアノ基等が
架橋構造をとり、その結果ゲル状の物質が得られる。
【0026】本発明のイオン伝導性ゲルは、上述してき
た成分(a),(b),(c),(d)が分子分散ない
しは分子レベルの細かさで混合されていることに起因し
て、ゲルの形態の部分に因らず均一なイオン伝導性を示
し、その値は20℃において1.5×10-3S/cm以
上を示す。特に、本発明により得られるイオン伝導性ゲ
ルは2.5×10-3S/cm以上を示すものが多い。そ
して、対象材と密着できるような適当な可撓性と、成形
加工に十分耐えうる強度、弾性を示す。また、長期に渡
って保存した場合においても、80℃といった高温下で
あっても、液と固形分との「分離」や「溶融」が無く、
固形部分の収縮や形状の変化が無く、「形態保持」を示
す。
【0027】本発明のイオン伝導性ゲルは種々の形態で
使用されるが、膜状の場合、1000μm以下の形態で
も提供することができる。とりわけ1μm厚といった薄
膜も提供できることが特徴であり、1000μm以下
(好ましくは100μm以下)の膜厚といった小型軽量
化が望まれている小型電子機器のデバイスとして利用す
る場合に好適である。
【0028】次に、かかるイオン伝導性ゲルの製造方法
を詳述する。発明のゲルは、 1)カチオンとしてリチウムイオンを含有する電解質
(a)、ポリエチレングリコール系またはポリアクリロ
ニトリル系重合体(b)、該電解質(a)及び重合体
(b)を溶解する有機溶媒(c)から電解質含有重合体
溶液を形成する工程; 2)該重合体溶液に、単量体は有機溶媒(c)に溶解す
るが重合体は該有機溶媒(c)に不溶である架橋重合体
(d)を与える単量体と重合開始剤を溶解せしめる工
程; 3)該溶液中の架橋重合体(d)を与える単量体を重合
せしめることにより、架橋重合体(d)の形成並びに該
溶液のゲル化を惹起させる工程;からなる方法により製
造される。
【0029】さらに実施態様としては上述の方法におい
て、工程1)と工程2)を一工程で行って、電解質含有
重合体溶液に架橋重合体(d)を与える単量体と重合開
始剤を溶解した溶液を形成する方法や、工程3)に先立
って、溶液を膜状に形成すること、架橋重合体(d)を
与える単量体が2個以上のビニル基を有する付加重合性
単量体であり、該単量体の重合の開始を紫外線照射によ
り行う方法、が推奨される。
【0030】まず工程1)においては、既述の電解質
(a),有機溶媒(c)に可溶性の重合体(b)を有機
溶媒(c)に溶解して、電解質含有重合体溶液(電解液
とも言う)を作成するのであるが、三成分を混合して加
熱・攪拌するなど適宜の手段で行えばよい。成分の量比
は既述の通りであるが、加熱するときには有機溶媒
(c)の揮散などに注意すべきである。特に拘らない
が、まず有機溶媒(c)に電解質(a)を溶解する、次
いでこれに重合体(b)を添加して溶解する、という手
順が一般的である。又、必要に応じ脱泡も行う。尚、有
機溶媒(c)は単一溶媒も混合溶媒も採用し得るが、混
合溶媒であればエチレンカーボネートとプロピレンカー
ボネートやエチレンカーボネートとジメチルカーボネー
トの組み合わせが好適である。エチレンカーボネートと
プロピレンカーボネートの比率としては30/70〜6
0/40(モル比)、さらに好ましくは40/60〜6
0/40(モル比)に混合されているものがよい。
【0031】次に工程2)においては、工程1)で形成
された電解液に架橋重合体(d)を与える単量体(以
下、架橋性単量体とも言う)と該単量体の為の重合開始
剤の所定量を溶解させる。このように架橋性単量体が電
解液に溶解しているものを次の工程で重合せしめている
ので、この重合で得られる架橋重合体(d)は電解液中
に分子レベルに混合された状態で系をゲル化させるので
あり、ゲル体の性質、特にイオン伝導度の高度の均一性
を担保するのである。
【0032】架橋性単量体としては、エチレングリコー
ルジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレー
ト、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエ
チレングリコールジアクリレート、エチレングリコール
ジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレ
ート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テト
ラエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレン
グリコールジアクリレート、トリメチロールプロパント
リアクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレ
ンビスアクリルアミド等、2個以上のビニル基を有する
付加重合性単量体が特に推奨される。もちろん、架橋重
合体(d)はこれらの単量体の単独重合体で形成しても
よいが、ゲルに適度の弾性や強度を与えるためにこれら
の単量体と共重合性の他の単量体との共重合体とするの
が普通である。他の単量体としては有機溶媒(c)に溶
解し上述の単量体と共重合するものであればよく、例え
ば陳腐なビニル重合性単量体であるN−メトキシアクリ
ルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−メ
チロールアクリルアミド等がある。
【0033】これらの架橋性単量体の重合開始剤として
は、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメチルケター
ル等、紫外線照射によって開裂して開始ラジカルを生じ
るような光増感剤が好ましい。この場合、重合開始剤
は、量はわずかとはいえ電解質含有重合体溶液に溶解す
ることが必要である。
【0034】尚、場合によっては工程1)と工程2)を
一工程で行ってもよい。即ち、電解質(a),重合体
(b),有機溶媒(c),架橋性単量体と重合開始剤を
一挙に混合し、溶解してもよい。この場合は製造の操作
が単純である,工程が短く且つ時間も短くて済む等の利
点がある。又、必要により、脱泡や有機溶媒(c)によ
る粘度調整等を行ってもよい。
【0035】次に工程3)においては、上述工程2)
で、あるいは工程1)と工程2)を一工程で行って得ら
れた溶液に重合処理を施し、溶液に含まれる架橋性単量
体を重合せしめて架橋重合体(d)を形成させる。該重
合体(d)が形成する結果、該重合体が有機溶媒(c)
に不溶であることから、系はゲル化を惹起して流動性の
ある溶液から流動性を失った弾性を有する固化ゲルとな
る。
【0036】重合処理の方法としては、既述したような
架橋性単量体として2個以上のビニル基を有する付加重
合性単量体を、重合開始剤としてベンジルジメチルケタ
ールのような紫外線により励起されて開裂する開始剤を
選び、紫外線照射によって重合の開始を行うことが推奨
される。この方法は重合、即ち架橋重合体(d)の形成
−系のゲル化を極めて短時間で、例えば10〜30分で
行うことが出来、又揮発有機溶媒(c)に伴う安全性の
問題も回避できるところに特徴がある。これはゲルの形
成にほぼ一昼夜も要する凍結ゲル化法などに較べ、極め
て生産性の優れた方法といえる。
【0037】これまで架橋重合体(d)は架橋性単量体
単独又は他の単量体との共重合体でなるものを説明して
来たが、既述したように本来有機溶媒(c)に可溶な重
合体(b)の、変性による有機溶媒(c)に不溶化した
重合体であってもよい。これは重合体(b)が分子中に
水酸基やカルボキシル基等を有する場合であり、これら
は系の温度や粘度を調整することにより、極性基同志の
相互作用などにより共有結合ではないがある種の架橋を
発現し有機溶媒(c)に不溶化することがある。この架
橋は大概静電架橋とおもわれるが、この場合架橋に関与
していないポリマーが重合体(b)であり、架橋変性体
が架橋重合体(d)に相当する。又、この変性には、上
述のような重合開始剤等が不要であることは言うまでも
ない。
【0038】以上の説明では、この工程3)の処理を実
施する際の被処理溶液の形態については触れなかった。
しかしこの形態は発明のイオン伝導性ゲルの形状を決め
るものであるから、予めゲルの用途に応じた形態にした
もので行うのがよい。ゲルの用途としては圧倒的に薄膜
状が多い。そこで、工程3)の実施に先立って、被処理
溶液を薄膜状としておいてから重合させることが推奨さ
れる。工程2)の溶液を薄膜状とするのには、例えば型
枠上や基盤上あるいは電極材そのものの上に溶液をコー
ティングする方法がある。この方法は製造されるゲル膜
が任意の厚さで、あるいは薄いものは1〜1000μm
のものまで任意で且つ大面積のものが得やすいという特
徴がある。特に紫外線照射重合(ゲル化)方法とこの薄
膜化方法を組合わせると、工業上のメリットが大きい。
【0039】尚、コーティングの方法としては、アプリ
ケーターロールなどのローラーコーティング、バーコー
ターコーティング、スクリーンコーティング、スピンコ
ーティング、ドクターブレード方式などが例示される
が、特に限定されない。コーティングを採用する場合、
工程2)の溶液の粘度が重要な因子となる。本発明は有
機溶媒(c)に可溶な重合体(b)を用いているので、
溶液の粘度制御を容易に行うことができる。また、この
際に適用する重合体(b)の比率は既述の通り3〜10
wt%であるが、コーティングに適する粘度を有する限
り、低い方が電解質(a)の比率を高めることになり、
形成されたゲルのイオン伝導度の向上の点からもより好
ましい。
【0040】以上の本発明の製造方法の実施に当たっ
て、必要に応じて有機溶媒(c)を一部蒸発させると
か、ゲル化させる工程3)で系の冷却を併用するなどの
態様も適宜採用し得る。
【0041】以上の本発明の方法により、80℃以上の
温度でも液体と固形分との「分離」や「溶融」が無く、
「形態保持」を示し、厚物から膜厚が1000μm以下
(好ましくは100〜1μm)の薄膜まで、対象物と密
着できるような適当な弾性と、成形加工に耐えうる強度
を有するイオン伝導性ゲルを安全に、生産性高く得ると
いう目的が達成される。
【0042】
【実施例】本発明を以下の実施例で具体的に説明する
が、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、以下に記載する各成分のwt%表示は、形成するゲ
ルの総重量に対する比率である。本実施例で得られたイ
オン伝導性ゲルの評価方法を以下に示す。
【0043】〔イオン伝導度(S/cm)〕得られたイ
オン伝導性ゲルを直径2cmの均一な厚み(約500μ
m)の円形板に切断し、これを直径1.5cmの円板の
2枚の白金電極の間に挟み、白金電極間に交流インピー
ダンスアナライザーを接続して、20℃でのイオン伝導
度(S/cm)を測定した。なお、電解質にリチウム塩
を使用した場合は、露点が−40℃と言う乾燥アルゴン
ガス雰囲気下で、上記イオン伝導性ゲルの作製から評価
までを行った。
【0044】〔耐熱性〕得られたイオン伝導性ゲルを1
cm×2cm×500μm厚の大きさに切り出し、サン
プル瓶の内壁の下から1cmの位置にゲルの粘着力によ
って付着させ、次いで、このサンプル瓶を密栓し、80
℃の恒温槽内に2日間放置した後、取り出して該ゲルの
形態変化を目視により観察した。観察結果を以下のよう
に評価した: 「形態保持」・・・形態に変化を生じなかった。 「分離」 ・・・サンプル瓶内でゲルの溶融による流
れ出しはないが、固体成分と液体成分との相分離が観察
された。 「溶融」 ・・・サンプル瓶内でゲルが溶融してサン
プル瓶の底面に流れ出した。
【0045】〔強度−弾性〕厚み50μmのイオン伝導
性ゲルの形成を、支持体(SUS304の平滑板)上で
行い(下記するコーティング性の項で記載する方法)、
次いでゲルを剥離したときのゲルの状態を以下のように
評価した: ○・・・完全に剥離し得るに充分な強度と形状を元に戻
す弾性とを有し、成形加工に耐え得る充分な曲げ強度も
有していた。 △・・・完全に剥離し得るに充分な強度を有している
が、ゲルが伸びて弾性に劣っていた。 ×・・・脆いか、または粘度が高すぎて剥離できなかっ
た。
【0046】〔溶媒への溶解性〕有機溶媒(c)を用
い、各種電解質(電解質(a))を含有する溶液を調整
した。次いで、この溶液に、重合体(重合体(b))の
乾燥粉末を添加し、攪拌により分散させ、約120℃ま
で昇温し、有機溶媒に対する重合体の溶解性を目視によ
り観察した。観察結果を以下のように評価した: ○・・・約120℃の有機溶媒中で、重合体が溶解し
た。 △・・・有機溶媒を約120℃に加熱しても重合体の一
部が溶解しきれなかった。 ×・・・有機溶媒を約140℃に加熱しても重合体が溶
解しなかった。
【0047】〔コーティング性〕架橋性単量体を含む電
解質含有重合体溶液を50μmおよび500μmのスペ
ーサーを配置した支持体(SUS304平滑板)上に展
開し、その際の展開性を目視により観察した。観察結果
を以下のように評価した: ○・・・平滑に展開することが可能であった。 △・・・平滑に展開することに難があった。 ×・・・展開自体が困難であった。
【0048】<実施例1>エチレンカーボネートとプロ
ピレンカーボネートを50:50のモル比で含有する混
合溶媒(有機溶媒(c))を用いて、4.5wt%のL
iBF4 (電解質(a))を含有する溶液を調整した。
次いで、この溶液に、3wt%の酢酸ビニルと97wt
%のアクリロニトリルでなるポリアクリロニトリル系重
合体(重量平均分子量(Mw):400000)(重合
体(b))の乾燥粉末を8wt%の割合で添加し、攪拌
により分散させ、徐々に昇温し、約120℃にて溶解し
て電解質含有重合体溶液を調整した。
【0049】次いで、電解質含有重合体溶液にテトラエ
チレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体)を
5wt%及びベンジルジメチルケタール(重合開始剤)
を3wt%の割合で添加し、攪拌により分散させ架橋性
単量体を含む電解質含有重合体溶液を調整した。なお、
開始剤の調整においては、紫外線の照射されない雰囲気
下で行った。
【0050】架橋性単量体を含む電解質含有重合体溶液
を50μmおよび500μmのスペーサーを配置した支
持体(SUS304平滑板)上に展開し、さらにその上
にテフロン(登録商標)シートを被せ、超高圧水銀ラン
プにより220W/m2 で10分間UV照射を行い、イ
オン伝導性ゲルを作製した。なお、上記混合溶液の調整
からイオン伝導性ゲルの作製までは、全て乾燥アルゴン
ガスの雰囲気下で行った。得られたイオン伝導性ゲルの
評価結果を表1に示す。
【0051】<実施例2>実施例1のLiBF4 の割合
である4.5wt%の代わりに7wt%の割合で添加し
て電解質含有重合体溶液を調整したこと以外は、実施例
1と同様にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られた
イオン伝導性ゲルの評価結果を表1に示す。
【0052】<実施例3>実施例1のLiBF4 の割合
である4.5wt%の代わりに11wt%の割合で添加
して電解質含有重合体溶液を調整したこと以外は、実施
例1と同様にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られ
たイオン伝導性ゲルの評価結果を表1に示す。
【0053】<実施例4>実施例1のLiBF4 の割合
である4.5wt%の代わりに12wt%の割合で添加
して電解質含有重合体溶液を調整したこと以外は、実施
例1と同様にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られ
たイオン伝導性ゲルの評価結果を表1に示す。
【0054】<実施例5>実施例1のLiBF4 の割合
である4.5wt%の代わりに14wt%の割合で添加
して電解質含有重合体溶液を調整したこと以外は、実施
例1と同様にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られ
たイオン伝導性ゲルの評価結果を表1に示す。
【0055】<実施例6>実施例1のLiBF4 の代わ
りにLiPF6 を用いたことと、電解質(a)の割合で
ある4.5wt%の代わりに11wt%の割合で添加し
て電解質含有重合体溶液を調整したこと以外は、実施例
1と同様にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られた
イオン伝導性ゲルの評価結果を表1に示す。
【0056】<比較例1>実施例1のLiBF4 の割合
である4.5wt%の代わりに4wt%の割合で添加し
て電解質含有重合体溶液を調整したこと以外は、実施例
1と同様にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られた
イオン伝導性ゲルの評価結果を表1に示す。
【0057】<比較例2>実施例1のLiBF4 の割合
である4.5wt%の代わりに15wt%の割合で添加
して電解質含有重合体溶液を調整したこと以外は、実施
例1と同様にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られ
たイオン伝導性ゲルの評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】表1に示されるように、実施例1〜6で作
製されたイオン伝導性ゲルは、いずれも耐熱性テストの
結果が形態保持であり、20℃において1.8×10-3
S/cm以上の高いイオン伝導度を示し、いずれも強度
/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分耐え
ることができる。
【0060】これに対し、比較例1で用いた試料は、ゲ
ル自体の耐熱性や機械特性は優れるもののイオン伝導度
の低下が起こり、1.5×10-3S/cmに満たなかっ
た。また比較例2で用いた試料は、電解質(a)を含む
有機溶媒(c)の溶液への重合体(b)の溶解性が低下
し、またゲルのイオン伝導度が低下する結果を得た。
【0061】<実施例7>実施例1と同様の混合溶媒
(有機溶媒(c))を用いて、11wt%のLiBF4
(電解質(a))を含有する溶液を調整した。次いで、
この溶液に、ポリエチレングリコール重合体(重量平均
分子量(Mw):100000)(重合体(b))の乾
燥粉末を3wt%の割合で添加し、攪拌により分散さ
せ、徐々に昇温し、約120℃にて溶解して電解質含有
重合体溶液を調整した。
【0062】次いで、電解質含有重合体溶液にテトラエ
チレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体)を
5wt%及びベンジルジメチルケタール(重合開始剤)
を3wt%の割合で添加し、攪拌により分散させ架橋性
単量体を含む電解質含有重合体溶液を調整した。なお、
開始剤の調整においては、紫外線の照射されない雰囲気
下で行った。
【0063】架橋性単量体を含む電解質含有重合体溶液
を50μmおよび500μmのスペーサーを配置した支
持体(SUS304平滑板)上に展開し、さらにその上
にテフロン(登録商標)シートを被せ、超高圧水銀ラン
プにより220W/m2 で10分間UV照射を行い、イ
オン伝導性ゲルを作製した。なお、上記混合溶液の調整
からイオン伝導性ゲルの作製までは、全て乾燥アルゴン
ガスの雰囲気下で行った。得られたイオン伝導性ゲルの
評価結果を表2に示す。
【0064】<実施例8>実施例7のポリエチレングリ
コール重合体の割合である3wt%の代わりに8wt%
の割合で添加して電解質含有重合体溶液を調整したこと
以外は、実施例7と同様にしてイオン伝導性ゲルを作製
した。得られたイオン伝導性ゲルの評価結果を表2に示
す。
【0065】<実施例9>実施例7のポリエチレングリ
コール系重合体の代わりに3wt%の酢酸ビニルと97
wt%のアクリロニトリルとでなるポリアクリロニトリ
ル系重合体(重量平均分子量(Mw):400000)
の乾燥粉末を3wt%の割合で添加して電解質含有重合
体溶液を調整したこと以外は、実施例7と同様にしてイ
オン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲル
の評価結果を表2に示す。
【0066】<実施例10>実施例7のポリエチレング
リコール系重合体の代わりに3wt%の酢酸ビニルと9
7wt%のアクリロニトリルとでなるポリアクリロニト
リル系重合体(重量平均分子量(Mw):40000
0)の乾燥粉末を5wt%の割合で添加して電解質含有
重合体溶液を調整したこと以外は、実施例7と同様にし
てイオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性
ゲルの評価結果を表2に示す。
【0067】<実施例11>実施例7のポリエチレング
リコール系重合体の代わりに3wt%の酢酸ビニルと9
7wt%のアクリロニトリルとでなるポリアクリロニト
リル系重合体(重量平均分子量(Mw):40000
0)の乾燥粉末を9wt%の割合で添加して電解質含有
重合体溶液を調整したこと以外は、実施例7と同様にし
てイオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性
ゲルの評価結果を表2に示す。
【0068】<実施例12>実施例7のポリエチレング
リコール系重合体の代わりに3wt%の酢酸ビニルと9
7wt%のアクリロニトリルとでなるポリアクリロニト
リル系重合体(重量平均分子量(Mw):40000
0)の乾燥粉末を10wt%の割合で添加して電解質含
有重合体溶液を調整したこと以外は、実施例7と同様に
してイオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導
性ゲルの評価結果を表2に示す。
【0069】<実施例13>実施例7の混合溶媒をエチ
レンカーボネートとプロピレンカーボネートの代わりに
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶
媒を用いて調整したことと、ポリエチレングリコール系
重合体の代わりに3wt%の酢酸ビニルと97wt%の
アクリロニトリルとでなるポリアクリロニトリル系重合
体(重量平均分子量(Mw):400000)の乾燥粉
末を8wt%の割合で添加して電解質含有重合体溶液を
調整したこと以外は、実施例7と同様にしてイオン伝導
性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲルの評価結
果を表2に示す。
【0070】<実施例14>実施例7の混合溶媒をエチ
レンカーボネートとプロピレンカーボネートの代わりに
アセトニトリルを用いて調整したことと、ポリエチレン
グリコール系重合体の代わりに3wt%の酢酸ビニルと
97wt%のアクリロニトリルとでなるポリアクリロニ
トリル系重合体(重量平均分子量(Mw):40000
0)の乾燥粉末を8wt%の割合で添加して電解質含有
重合体溶液を調整したこと以外は、実施例7と同様にし
てイオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性
ゲルの評価結果を表2に示す。
【0071】<比較例3>実施例7のポリエチレングリ
コール系重合体の代わりに3wt%の酢酸ビニルと97
wt%のアクリロニトリルとでなるポリアクリロニトリ
ル系重合体(重量平均分子量(Mw):400000)
の乾燥粉末を2wt%の割合で添加して電解質含有重合
体溶液を調整したこと以外は、実施例7と同様にしてイ
オン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲル
の評価結果を表2に示す。
【0072】<比較例4>実施例7のポリエチレングリ
コール系重合体の代わりに3wt%の酢酸ビニルと97
wt%のアクリロニトリルとでなるポリアクリロニトリ
ル系重合体(重量平均分子量(Mw):400000)
の乾燥粉末を12wt%の割合で添加して電解質含有重
合体溶液を調整したことと、ポリアクリロニトリル系重
合体を溶媒に溶解させる時の温度を140℃まで昇温し
たこと以外は、実施例7と同様にしてイオン伝導性ゲル
を作製した。得られたイオン伝導性ゲルの評価結果を表
2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】表2に示されるように、実施例7〜14で
作製されたイオン伝導性ゲルは、いずれも耐熱性テスト
の結果が形態保持であり、20℃において2.6×10
-3S/cm以上の高いイオン伝導度を示し、いずれも強
度/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分耐
えることができる。
【0075】これに対し、比較例3で用いた試料の耐熱
性テストの結果は「分離」であり、実用的でない。その
ため比較例3の試料ではイオン伝導度を測定することが
できなかった。比較例4で用いた試料は、重合体(b)
の溶液への溶解が一部困難であり、そのためイオン伝導
性ゲルの粘度が増加し、ゲルの自由な賦形が困難であ
り、剥離テストにおいても十分な強度−弾性を示さなか
った。尚、比較例4で用いた試料はポリアクリロニトリ
ル系重合体(重合体(b))を溶解させる時に140℃
までの昇温を要した。
【0076】<実施例15>実施例1と同様の混合溶媒
(有機溶媒(c))を用いて、11wt%のLiBF4
(電解質(a))を含有する溶液を調整した。次いで、
この溶液に、3wt%の酢酸ビニルと97wt%のアク
リロニトリルとでなるポリアクリロニトリル系重合体
(重量平均分子量(Mw):400000)(重合体
(b))の乾燥粉末を8wt%の割合で添加し、攪拌に
より分散させ、徐々に昇温し、約120℃にて溶解して
電解質含有重合体溶液を調整した。
【0077】次いで、該電解質含有重合体溶液に70w
t%のアクリルアミドと30wt%のメチレンビスアク
リルアミドとでなる架橋性単量体を5wt%及びベンジ
ルジメチルケタール(重合開始剤)を3wt%の割合で
添加し、攪拌により分散させ架橋性単量体を含む電解質
含有重合体溶液を調整した。なお、開始剤の調整におい
ては、紫外線の照射されない雰囲気下で行った。
【0078】架橋性単量体を含む電解質含有重合体溶液
を50μmおよび500μmのスペーサーを配置した支
持体(SUS304平滑板)上に展開し、さらにその上
にテフロン(登録商標)シートを被せ、超高圧水銀ラン
プにより220W/m2 で10分間UV照射を行い、イ
オン伝導性ゲルを作製した。なお、上記混合溶液の調整
からイオン伝導性ゲルの作製までは、全て乾燥アルゴン
ガスの雰囲気下で行った。得られたイオン伝導性ゲルの
評価結果を表3に示す。
【0079】<実施例16>実施例15の架橋性単量体
の代わりに70wt%のアクリロニトリルと30wt%
のメチレンビスアクリルアミドとでなる架橋性単量体を
5wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイ
オン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲル
の評価結果を表3に示す。
【0080】<実施例17>実施例15の架橋性単量体
の代わりに90wt%のアクリルアミドと10wt%の
トリメチロールプロパントリアクリレートとでなる架橋
性単量体を5wt%用いたこと以外は、実施例15と同
様にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン
伝導性ゲルの評価結果を表3に示す。
【0081】<実施例18>実施例15の架橋性単量体
の代わりに90wt%のアクリロニトリルと10wt%
のトリメチロールプロパントリアクリレートとでなる架
橋性単量体を5wt%用いたこと以外は、実施例15と
同様にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオ
ン伝導性ゲルの評価結果を表3に示す。
【0082】<実施例19>実施例15の架橋性単量体
の代わりに70wt%のアクリルアミドと30wt%の
エチレングリコールジメタクリレートを5wt%用いた
こと以外は、実施例15と同様にしてイオン伝導性ゲル
を作製した。得られたイオン伝導性ゲルの評価結果を表
3に示す。
【0083】<実施例20>実施例15の架橋性単量体
の代わりに70wt%のアクリロニトリルと30wt%
のエチレングリコールジメタクリレートとでなる架橋性
単量体を5wt%用いたこと以外は、実施例15と同様
にしてイオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝
導性ゲルの評価結果を表3に示す。
【0084】<実施例21>実施例15の架橋性単量体
の代わりにトリエチレングリコールジアクリレートを5
wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイオ
ン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲルの
評価結果を表3に示す。
【0085】<実施例22>実施例15の架橋性単量体
の代わりにテトラエチレングリコールジアクリレートを
5wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイ
オン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲル
の評価結果を表3に示す。
【0086】<実施例23>実施例15の架橋性単量体
の代わりにノナエチレングリコールジアクリレートを5
wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイオ
ン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲルの
評価結果を表3に示す。
【0087】<実施例24>実施例15の架橋性単量体
の代わりにエチレングリコールジメタクリレートを10
wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイオ
ン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲルの
評価結果を表3に示す。
【0088】<実施例25>実施例15の架橋性単量体
の代わりにエチレングリコールジメタクリレートを5w
t%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイオン
伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲルの評
価結果を表3に示す。
【0089】<実施例26>実施例15の架橋性単量体
の代わりにエチレングリコールジメタクリレートを2w
t%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイオン
伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲルの評
価結果を表3に示す。
【0090】<実施例27>実施例15の架橋性単量体
の代わりにエチレングリコールジメタクリレートを1w
t%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイオン
伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲルの評
価結果を表3に示す。
【0091】<実施例28>実施例15の架橋性単量体
の代わりにトリエチレングリコールジメタクリレートを
5wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイ
オン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲル
の評価結果を表3に示す。
【0092】<実施例29>実施例15の架橋性単量体
の代わりにテトラエチレングリコールジメタクリレート
を5wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にして
イオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲ
ルの評価結果を表3に示す。
【0093】<実施例30>実施例15の架橋性単量体
の代わりにトリメチロールプロパントリアクリレートを
10wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にして
イオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲ
ルの評価結果を表3に示す。
【0094】<実施例31>実施例15の架橋性単量体
の代わりにトリメチロールプロパントリアクリレートを
2wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイ
オン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲル
の評価結果を表3に示す。
【0095】<実施例32>実施例15の架橋性単量体
の代わりにトリメチロールプロパントリアクリレートを
1wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイ
オン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲル
の評価結果を表3に示す。
【0096】<比較例5>実施例15の架橋性単量体の
代わりにエチレングリコールジメタクリレートを11w
t%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイオン
伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲルの評
価結果を表3に示す。
【0097】<比較例6>実施例15の架橋性単量体の
代わりにエチレングリコールジメタクリレートを0.5
wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイオ
ン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲルの
評価結果を表3に示す。
【0098】<比較例7>実施例15の架橋性単量体の
代わりにトリメチロールプロパントリアクリレートを1
1wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にしてイ
オン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性ゲル
の評価結果を表3に示す。
【0099】<比較例8>実施例15の架橋性単量体の
代わりにトリメチロールプロパントリアクリレートを
0.5wt%用いたこと以外は、実施例15と同様にし
てイオン伝導性ゲルを作製した。得られたイオン伝導性
ゲルの評価結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】表3に示されるように、実施例15〜32
で作製されたイオン伝導性ゲルは、いずれも耐熱性テス
トの結果が形態保持であり、20℃において2.6×1
-3S/cm以上の高いイオン伝導度を示し、いずれも
強度/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分
耐えることができる。
【0102】これに対し、比較例5及び比較例7で作製
した試料の耐熱性テストの結果はゲルの形態は保持して
はいるものの、ゲル自体が固くなり成形加工が困難な状
態にまでなっていた。また、比較例6及び比較例8で作
製した試料の耐熱性テストの結果は、「溶融」乃至は
「分離」で実用的でない。そのため比較例6及び比較例
8の試料ではイオン伝導度を測定することができなかっ
た。
【0103】
【発明の効果】本発明で採用するイオン伝導性ゲルが、
高いイオン伝導度を有し、80℃でも「溶融」せず、液
体−固体の「分離」もせずに、「形態保持」する理由は
解明するに到っていないが、おおよそ次に示す理由によ
ると推定している。すなわち、本発明で採用する架橋重
合体は分子レベルでイオン伝導性ゲル内に均一に存在し
ているため、高温下においても溶融するような領域が存
在しないということ、および架橋重合体が単量体段階で
は有機溶媒(c)に溶解することから判るように、有機
溶媒(c)との相溶性が良いため架橋重合体−有機溶媒
(c)の相互作用が強く、結果として多量の電解液を保
持できるためである。
【0104】また、対象材と密着できるような適当な弾
性と、成形加工に耐え得る強度を有するイオン伝導性ゲ
ルを、工業的有利に安全に提供できるという理由は、前
述の如く架橋重合体が溶媒と相溶性が良いため、高分子
本来の性質である粘弾性が働き対象材の環境変化に追随
できるためと推定する。
【0105】また、本発明のイオン伝導性ゲルが、工業
的有利かつ安全であるのは、揮発性溶媒を蒸発させる工
程を特に必要としないため、溶媒による空気汚染や人体
への影響の心配がないためである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 AB012 AD032 BC012 BD042 BD102 BE022 BE052 BG012 BG042 BG052 BG072 BG101 BG102 BG132 BM002 CH021 CH022 CK022 CL002 GQ00 HA05 5H029 AJ02 AJ12 AJ14 AM00 AM02 AM03 AM04 AM05 AM07 AM16 CJ01 CJ08 CJ11 CJ13 HJ01 HJ02 HJ04 HJ14 HJ16

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】・カチオンとしてリチウムイオンを含有す
    る電解質(a):4.5wt%〜14wt%、 ・ポリエチレングリコール系又はポリアクリロニトリル
    系重合体(b):3wt%〜10wt%、 ・電解質(a)及び重合体(b)を溶解する有機溶媒
    (c):91.5wt%〜66wt%でなる電解質含有
    重合体溶液と、 ・単量体は有機溶媒(c)に溶解するが重合体は該有機
    溶媒(c)に不溶である架橋重合体(d)1wt%〜1
    0wt%が分子レベルで混合されてなり、 ・20℃におけるイオン伝導度が1.5×10-3S/c
    m以上であることを特徴とするイオン伝導性ゲル。(但
    し、wt%はゲル総量に対する比率である)
  2. 【請求項2】 1μmから1000μmの厚みを有する
    膜である、請求項1に記載のイオン伝導性ゲル。
  3. 【請求項3】 架橋重合体(d)を構成する単量体が2
    個以上のビニル基を有する付加重合性単量体であること
    を特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載
    のイオン伝導性ゲル。
  4. 【請求項4】 イオン伝導性ゲルの製造方法であって、 1)カチオンとしてリチウムイオンを含有する電解質
    (a)、ポリエチレングリコール系またはポリアクリロ
    ニトリル系重合体(b)、該電解質(a)及び重合体
    (b)を溶解する有機溶媒(c)から電解質含有重合体
    溶液を形成する工程; 2)該重合体溶液に、単量体は有機溶媒(c)に溶解す
    るが重合体は該有機溶媒(c)に不溶である架橋重合体
    (d)を与える単量体と重合開始剤を溶解せしめる工
    程; 3)該溶液中の架橋重合体(d)を与える単量体を重合
    せしめることにより、架橋重合体(d)の形成並びに該
    溶液のゲル化を惹起させる工程;からなる方法。
  5. 【請求項5】 工程1)と工程2)を一工程で行って、
    電解質含有重合体溶液に架橋重合体(d)を与える単量
    体と重合開始剤を溶解した溶液を形成することを特徴と
    する請求項4に記載のイオン伝導性ゲルの製造方法。
  6. 【請求項6】 工程3)に先立って、溶液を膜状に形成
    することを特徴とする請求項4または5に記載のイオン
    伝導性ゲルの製造方法。
  7. 【請求項7】 架橋重合体(d)を与える単量体が2個
    以上のビニル基を有する付加重合性単量体であり、該単
    量体の重合の開始を紫外線照射により行うことを特徴と
    する請求項4〜6のいずれかに記載のイオン伝導性ゲル
    の製造方法。
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