JP6045623B2 - 延伸フィルム、偏光フィルム及びそれを含む偏光板 - Google Patents

延伸フィルム、偏光フィルム及びそれを含む偏光板 Download PDF

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Description

本発明は、延伸フィルム、偏光フィルム及びそれを含む偏光板に関する。
偏光板は、液晶表示装置を代表とする画像表示装置等に広く用いられている。偏光板としては、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素等の二色性色素を吸着配向させてなる偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムを貼合した構成のものが一般的である。近年、画像表示装置のモバイル機器や薄型テレビ等への展開に伴い、偏光板、ひいては偏光フィルムの薄膜化が益々求められている。
特許第4691205号公報(特許文献1)には、基材フィルム上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、これを基材フィルムと一体で延伸、染色して偏光フィルムを得ることにより、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの単層体による偏光フィルムの製造方法に比べ、薄型偏光フィルムをより均一に製造できることが記載されている。
特許第4691205号公報
偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は親水性であるため、延伸したフィルムを染色液に浸漬させる等の製造工程において水溶液中に溶解しやすい(以下、「溶解性」ともいう)という問題があった。ポリビニルアルコール系樹脂が溶解すると、外観不良、膜強度の低下、偏光性能の低下等を引き起こす。基材フィルム上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、これを基材と一体で延伸、染色して偏光フィルムを得る方法においては、基材があることにより、ポリビニルアルコール系樹脂層の完全な破断を防ぐことができるものの、ポリビニルアルコール系樹脂が溶解する問題を解決できるものではない。
特許文献1には、ポリビニルアルコール系樹脂層が染色工程で溶解することを防ぐために、染色液に浸漬する前に、予め延伸した積層体をホウ酸水溶液に浸漬する不溶化工程を行なうことが開示されている。
しかしながら、不溶化工程を設ける場合、製造工程が煩雑となり、また不溶化工程を経たポリビニルアルコール系樹脂からなる延伸フィルムは、染色工程における染色液の浸透性(以下、「染色性」ともいう)が低下する。染色液を十分に浸透させるために染色時間を長くすると、生産性が低下し、また膜強度が低下する場合がある。
本発明は、溶解性が抑制され、かつ優れた染色性を有する延伸フィルム、当該延伸フィルムを用いて製造される偏光フィルム及び偏光板を提供することを目的とする。
本発明は、以下に示す延伸フィルム、偏光フィルム及び偏光板を提供する。
[1] ラメラ型結晶を含むポリビニルアルコール系樹脂からなる延伸フィルムであって、
前記延伸フィルムの示差走査熱量測定で測定される結晶融解ピーク温度T(K)を用いて下記式(1)により算出される前記ラメラ型結晶の厚みL(nm)が13.0nm以上45.0nm以下である、偏光フィルムの製造に用いられる延伸フィルム。
L=0.66×{516/(516−T)} ・・・(1)
[2] 前記ポリビニルアルコール系樹脂は、前記ラメラ型結晶の厚みL(nm)を調整するモノマーを構成モノマーとして含む、[1]に記載の延伸フィルム。
[3] 基材フィルム上に設けられたポリビニルアルコール系樹脂層を延伸して得られる、[1]または[2]に記載の延伸フィルム。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の延伸フィルムを二色性色素で染色して得られる、偏光フィルム。
[5] 単位厚み当たりの突刺強度が6.0g/μm以上である、[4]に記載の偏光フィルム。
[6] [4]または[5]に記載の偏光フィルムと、
前記偏光フィルムの少なくとも一方の面上に積層される保護フィルムと、を含む、偏光板。
本発明によれば、溶解性が抑制され、かつ優れた染色性を有する延伸フィルム、当該延伸フィルムを用いて製造される偏光フィルム及び偏光板を提供することができる。
ラメラ型結晶を構成するポリマー鎖の一部を示す模式図である。 本発明に係る偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る偏光板の層構成の他の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る偏光板の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。 樹脂層形成工程で得られる積層フィルムの層構成の一例を示す概略断面図である。 延伸工程で得られる延伸積層フィルムの層構成の一例を示す概略断面図である。 染色工程で得られる偏光性積層フィルムの層構成の一例を示す概略断面図である。 第1貼合工程で得られる貼合フィルムの層構成の一例を示す概略断面図である。
<延伸フィルム>
本発明に係る延伸フィルムは、偏光フィルムの製造に用いられるものである。延伸フィルムは、ラメラ型結晶を含むポリビニルアルコール系樹脂からなる。ポリビニルアルコール系樹脂に含まれるラメラ型結晶は、示差走査熱量測定(DSC)で測定される結晶融解ピーク温度T(K)を用いて下記式(1)により求められる厚みL(nm)が13.0nm以上45.0nm以下であることを特徴とする。なお、ラメラ型結晶の厚みL(nm)を下記式(1)により算出できることは公知である。
L(nm)=0.66×{516/(516−T)} ・・・(1)
延伸フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を製膜し、延伸したものである。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法で製膜することができるが、厚みの小さい偏光フィルムが得られやすく、工程中における薄膜の偏光フィルムの取扱性にも優れることから、ポリビニルアルコール系樹脂の溶液を基材フィルム上に塗工して製膜する方法が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜した後に延伸する方法は限定されないが好ましくは一軸延伸である。
延伸フィルムの厚みは、偏光フィルムを製造する工程においてさらに延伸がされるかによって適宜選択されるものであるが、例えば30μm以下、さらには20μm以下であることができるが、偏光板の薄型化の観点から10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。延伸フィルムの厚みは、通常2μm以上である。なお、さらに延伸されて偏光フィルムが製造される場合には、上述の厚みよりも厚いものであっても好適に用いられる。
(ポリビニルアルコール系樹脂)
延伸フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100〜10000であり、より好ましくは1500〜8000であり、さらに好ましくは2000〜5000である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度もJIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。
(ラメラ型結晶)
ポリビニルアルコール系樹脂は、一般にラメラ型結晶と呼ばれる、ポリマー鎖が幾重にも折り返されて形成される折り畳み構造の結晶を形成することが知られている。図1は、ラメラ型結晶を構成するポリマー鎖の一部を示す模式図である。ラメラ型結晶50は、ポリマー鎖51が幅方向に幾重にも折り返されて折り畳み構造を形成し、またかかる折り畳み構造が奥行方向にも幾重にも連なって形成されることにより構成されている。ラメラ型結晶50の厚みLは、折り畳み構造を形成しているポリマー鎖51の長さ方向の距離である。ラメラ型結晶50の幅Xは、ポリマー鎖51の折り畳み方向の距離であり、折り返し回数に応じて大きくなる。ラメラ型結晶50の奥行Yは、ポリマー鎖51による折り畳み構造の奥行方向の距離である。
ラメラ型結晶50において、厚みLは安定性に影響を与える。厚みLが大きいほどラメラ型結晶50は安定である。本発明は、延伸フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂が含むラメラ型結晶の厚みLを、13.0nm以上45.0nm以下とすることにより、溶解性が抑制され、かつ染色性が良好であることを見出した。本発明の延伸フィルムを用いた場合、染色水溶液等へのポリビニルアルコール系樹脂の溶解を抑制することができるので、外観が良好で、優れた膜強度、優れた偏光性能を有する偏光フィルムを得ることができる。また、染色性が良好であるので、偏光フィルムの製造工程において高い生産性を維持することができる。
ラメラ型結晶の厚みLが13.0nm未満であると、ポリビニルアルコール系樹脂が染色水溶液に溶解しやすく、耐水性が高いポリビニルアルコール−ヨウ素(I)錯体が選択的に抜け落ちて青色に色抜けしたり、肌荒れを引き起こしたり、配向したポリビニルアルコール系樹脂の配向が緩和し偏光フィルムにおける偏光性能の低下を引き起こす場合がある。ラメラ型結晶の厚みLは14.0nm以上であることが好ましく、15.5nm以上であることがさらに好ましい。
ラメラ型結晶の厚みLが45.0nmを超えると、後段の偏光フィルムの製造過程において、染色性が低下して生産性を損ねる場合がある。ラメラ型結晶の厚みLは35.0nm以下であることがより好ましい。
ラメラ型結晶の厚みLは、例えば、ラメラ型結晶の厚みLを制御するモノマーを構成モノマー(以下、「ラメラ成長制御モノマーユニット」ともいう)として導入し、かかるラメラ成長制御モノマーユニットの位置及び頻度により調整することができる。ラメラ成長制御モノマーユニットは、一定以上の嵩高さを有し、立体障害のために、結晶化時にラメラ型結晶の結晶格子内には存在しがたい傾向にある置換基を1つ以上有するモノマーユニットであることが好ましい。このような置換基を有するラメラ成長制御モノマーユニットは、折り畳み構造を構成するポリマー鎖の折り返し部分に存在する確率が高くなる。したがって、ラメラ成長制御モノマーユニットのポリマー鎖中での位置及び頻度がラメラ型結晶の厚みLに影響を与える。このようなラメラ成長制御モノマーユニットの頻度が高いほど、ポリマー鎖のラメラ型結晶は厚みLが短くなる。
ラメラ成長制御モノマーユニットにおける一定以上の嵩高さを有する置換基の長さは、3.0Å以上であることが好ましい。通常、原子間の結合は1.2〜1.6Åであるから、長さ3.0Å以上の置換基の場合、折り畳み構造の障害となり折り畳み構造からはじき出される可能性が高くなる。例えば、置換基がn−プロピル基である場合、C−C結合が3つ連なるので、C−C結合の標準長さである1.5Åから計算すると、長さが4.5Åとなる。したがって、一定以上の嵩高さを有する置換基として好適であることがわかる。
ラメラ成長制御モノマーユニットは、嵩高い置換基を1つ有する、例えば以下の化学式(1)で表される。
Figure 0006045623
化学式(1)において、置換基Xは一定以上の嵩高さを有し、上述のように長さが3.0Å以上であることが好ましい。このような置換基Xは水素(H)以外の原子を2つ以上有するものであることが好ましい。水素(H)以外の原子が2つ未満である場合、置換基Xの嵩高さが十分ではなく、ラメラ型結晶の折り畳み構造からはじき出される可能性が低い。例えば、置換基XがCHであったり、Hであったりする場合、ポリビニルアルコール中にかかるユニットが単独または連続して存在してもラメラ型結晶の折り畳み構造の障害とはならず、ラメラ型結晶の折り返し部分を制御することはできない。また、置換基Xが大きすぎる場合、結晶化そのものを阻害してしまう場合があることから、置換基Xが有する水素(H)以外の原子の数は10個以下であることが好ましい。水素(H)以外の原子としては、炭素(C)、酸素(O)、塩素(Cl)などが挙げられるが、これらに限定されない。
置換基Xとしては、例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが好適である。置換基Xは、飽和結合以外にC=C、C=Oのような不飽和結合を含んでいてもよく、アリル基、プロピニル基、ブテニル基、ブチニル基、ブトキシカルボニル基などであってもよい。置換基Xは、鎖中にエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合などの結合を含んでいてもよく、ヒドロキシ基などが含まれていてもよい。
ラメラ成長制御モノマーユニットは、上記化学式(1)で表されるものに限定されることはなく、置換基を2つ有する、例えば以下の化学式(2)で表されるものであってもよい。
Figure 0006045623
化学式(2)において、置換基Xは一定以上の嵩高さを有するものであり、化学式(1)における置換基Xについて説明したとおりである。置換基Yは、一定以上の嵩高さを有するものであっても有しないものであってもよい。置換基Yが一定以上の嵩高さを有するものである場合、化学式(1)における置換基Xについて説明したとおりである。この場合、置換基Xと同じものであっても、異なるものであってもよい。
なお、ポリマー鎖におけるラメラ成長制御モノマーユニットは、ポリマー鎖の折り返し部分を制御するとともに、ポリマー鎖の折り返し部分から次の折り返し部分までに連続するビニルアルコールモノマーユニット(結晶格子の立体障害とはならないモノマーユニットを含むものであってもよい。以下においても同様。)の数を制御する。すなわち、ラメラ成長制御モノマーユニットの位置及び頻度の調整は、ポリマー鎖において連続するビニルアルコールモノマーユニットの数に反映されるので、ポリマー鎖において連続するビニルアルコールモノマーユニットの数の平均値(以下、「平均連続ユニット数」ともいう)と相関がある。連続するビニルアルコールモノマーユニットの数の平均値が大きいほど、ラメラ型結晶の厚みLが大きくなる傾向がある。
延伸フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂のラメラ型結晶の厚みLを調整する方法として、ポリビニルアルコール系樹脂に含まれるラメラ成長制御モノマーユニットの位置及び頻度を調整する方法は、偏光子フィルムにおける偏光度や収縮力といった重要な物性値を変化させることなく、ラメラ型結晶の厚みLを調整することができる点に好適である。
なお、延伸フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂のラメラ型結晶の厚みLを調整する方法として、延伸倍率や熱履歴を調整する方法を用いることもできる。延伸倍率が高いほど、ラメラ型結晶の厚みLが大きくなる傾向がある。延伸倍率は、偏光性能や収縮力が問題とならない範囲で適宜調整することが好ましい。熱履歴の調整は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の製膜乾燥時に印加する熱量、すなわち、温度や時間を調整したり、延伸温度を調整したりする。なお、熱履歴により調整できるラメラ型結晶の厚みLの範囲は、ラメラ成長制御モノマーユニットの位置及び頻度を調整する上述の方法と比較すると小さい。したがって、ラメラ型結晶の厚みLを調整する方法としては、ラメラ成長制御モノマーユニットの位置及び頻度を調整する上述の方法を単独で行うか、これに他の方法を組み合わせて行なうことが好ましい。
本明細書でいうラメラ型結晶の厚みLは、延伸フィルムの示差走査熱量測定(DSC)で測定される結晶融解ピーク温度T(K)を用いて上記式(1)により求められる厚みLである。示差熱量測定は、示差熱量測定計を用いて50℃から250℃までを10℃/分で温度を掃引しながら吸収された熱量を測定する。ポリビニルアルコール系樹脂の結晶溶解は200℃を超えたあたりから始まり、その後結晶融解ピークが現れる。結晶に由来する200℃〜250℃の間にある結晶融解ピークのピーク位置の温度を結晶融解ピーク温度T(K)とする。示差熱量測定計としては、セイコーインスツル(株)製の”DSC6220”などが挙げられる。
ラメラ型結晶50における幅Xと奥行Yは、ラメラ型結晶50の熱力学的な安定性そのものには影響を与えないものの、結晶サイズ及び結晶化度に影響を与えるため、ポリビニルアルコール系樹脂が溶解するのに要する時間に影響を与える。結晶サイズ及び結晶化度と溶解速度は相関があるからである。
ラメラ型結晶50の幅Xと奥行Yは、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の熱履歴によって調整することができる。熱履歴の調整は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の製膜乾燥時に印加する熱量、すなわち、温度や時間を調整したり、延伸温度を調整したりする。ポリビニルアルコール系樹脂の結晶化度は、溶解速度を抑制する観点から、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。したがって、かかる結晶化度となるように、ポリビニルアルコール系樹脂における熱履歴を選択し、ラメラ型結晶50の幅X及び奥行Yを適宜調整することが好ましい。
<偏光フィルム>
本発明の偏光フィルムは、上述の延伸フィルムを用いて製造されたものであり、上述の延伸フィルムを二色性色素で染色して得られるものである。上述の延伸フィルムを用いることにより、染色水溶液へのポリビニルアルコール系樹脂の溶解が抑制されるので、外観が良好で、優れた膜強度、優れた偏光性能を有する偏光フィルムを得ることができる。また、上述の延伸フィルムは染色性が良好であるので、偏光フィルムの製造工程において高い生産性を維持することができる。
偏光フィルムの偏光性能についてより詳しく説明すると、偏光性能は通常、「視感度補正単体透過率Ty」、「視感度補正偏光度Py」と呼ばれる2つのパラメーターで評価される。これらのパラメーターはそれぞれ、人間の目の感度が最も高い550nm付近の重み付けが最も大きくなるように補正を行った可視域(波長380〜780nm)における透過率、偏光度である。波長380nm未満の光は人間の目には視認できないため、Ty及びPyにおいては考慮されない。
偏光フィルムの視感度補正単体透過率Tyは、当該偏光フィルムやこれを含む偏光板が適用される液晶表示装置等の画像表示装置において通常求められる値であることができ、具体的には40〜47%の範囲内であることが好ましい。Tyは、より好ましくは41〜45%の範囲内であり、この場合、TyとPyとのバランスがより良好となる。Tyが高すぎるとPyが低下して画像表示装置の表示品位が低下する。Tyが過度に低い場合、画像表示装置の輝度が低下して表示品位が低下するか、又は輝度を十分に高くするために投入電力を大きくする必要が生じる。偏光フィルムの視感度補正偏光度Pyは、99.9%以上であることが好ましく、99.95%以上であることがより好ましい。
偏光フィルムの厚みは例えば30μm以下、さらには20μm以下であることができるが、偏光板の薄型化の観点から10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。偏光フィルムの厚みは、通常2μm以上である。
偏光フィルムは、単位厚み当たりの突刺強度が6.0g/μm以上であることが好ましい。突刺強度が6.0g/μm以上であれば、ヒートショック試験などの耐久性試験で偏光フィルムのワレの発生率を著しく抑制することができる。
<偏光板>
(1)偏光板の層構成
図2は、本発明に係る偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。図2に示される偏光板1のように本発明の偏光板は、偏光フィルム5と、その一方の面上に積層される第1保護フィルム10とを備える片面保護フィルム付偏光板であることができる。第1保護フィルム10は、第1接着剤層15を介して偏光フィルム5上に積層することができる。
また本発明に係る偏光板は、偏光フィルム5の他方の面に保護フィルムをさらに貼合したものであってもよく、具体的には、図3に示される偏光板2のように、偏光フィルム5と、その一方の面上に積層される第1保護フィルム10と、他方の面上に積層される第2保護フィルム20とを備える両面保護フィルム付偏光板であることもできる。第2保護フィルム20は、第2接着剤層25を介して偏光フィルム5上に積層することができる。
本発明に係る偏光板は、液晶表示装置のような画像表示装置に組み込まれるとき、液晶セルのような画像表示素子の視認(前面)側に配置される偏光板であってもよいし、画像表示素子の背面側(例えば液晶表示装置のバックライト側)に配置される偏光板であってもよい。
(2)偏光フィルム
本発明に係る偏光板は、偏光フィルム5として、上述の本発明に係る偏光フィルムを含む。従って、偏光フィルム5の詳細については、上述の記載が引用される。
(3)第1保護フィルム
第1保護フィルム10は、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなるフィルムであることができる。
第1保護フィルム10は、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートを含む。また、これらの共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものを用いることもできる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース:TAC)が特に好ましい。
ポリエステル系樹脂はエステル結合を有する、上記セルロースエステル系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としてはジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしてはジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートを含む。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステルを主成分とする重合体が用いられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
第1保護フィルム10における偏光フィルム5とは反対側の表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を形成することもできる。また第1保護フィルム10は、滑剤、可塑剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤のような添加剤を1種又は2種以上含有することができる。
第1保護フィルム10の厚みは、偏光板の薄型化の観点から、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。第1保護フィルム10の厚みは、強度及び取扱性の観点から、通常5μm以上である。
(4)第1接着剤層
第1接着剤層15は、偏光フィルム5の一方の面に第1保護フィルム10を接着固定するための層である。第1接着剤層15を形成する接着剤は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含有する活性エネルギー線硬化性接着剤や、ポリビニルアルコール系樹脂のような接着剤成分を水に溶解又は分散させた水系接着剤であることができる。
第1接着剤層15を形成する活性エネルギー線硬化性接着剤としては、良好な接着性を示すことから、カチオン重合性の硬化性化合物及び/又はラジカル重合性の硬化性化合物を含む活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を好ましく用いることができる。活性エネルギー線硬化性接着剤は、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤及び/又はラジカル重合開始剤をさらに含むことができる。
カチオン重合性の硬化性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物(分子内に1個又は2個以上のエポキシ基を有する化合物)や、オキセタン系化合物(分子内に1個又は2個以上のオキセタン環を有する化合物)、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。ラジカル重合性の硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)や、ラジカル重合性の二重結合を有するその他のビニル系化合物、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。カチオン重合性の硬化性化合物とラジカル重合性の硬化性化合物とを併用してもよい。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、必要に応じて、カチオン重合促進剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、溶剤等の添加剤を含有することができる。
第1接着剤層15の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01〜3μmである。
(5)第2保護フィルム
図3に示される両面保護フィルム付偏光板2が有する第2保護フィルム20は、第1保護フィルム10と同様、上で例示した熱可塑性樹脂からなるフィルムであることができ、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであってもよい。第2保護フィルム20が有し得る表面処理層及びフィルムの厚み等については、第1保護フィルム10について述べた上の記載が引用される。第1保護フィルム10と第2保護フィルム20とは、互いに同種の樹脂からなる保護フィルムであってもよいし、異種の樹脂からなる保護フィルムであってもよい。
(6)第2接着剤層
第2接着剤層25は、偏光フィルム5の他方の面に第2保護フィルム20を接着固定するための層である。第2接着剤層25の詳細については、上述の第1接着剤層15についての記載が引用される。第2接着剤層25を形成する接着剤は、第1接着剤層15を形成する接着剤と同じ組成を有していてもよいし異なる組成を有していてもよい。
(7)粘着剤層
図2に示される片面保護フィルム付偏光板1における偏光フィルム5上、又は図3に示される両面保護フィルム付偏光板2における第1保護フィルム10若しくは第2保護フィルム20上に、偏光板を他の部材(例えば液晶表示装置に適用する場合における液晶セル)に貼合するための粘着剤層を積層してもよい。粘着剤層を形成する粘着剤は通常、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等をベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物のような架橋剤を加えた粘着剤組成物からなる。さらに微粒子を含有させて光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。粘着剤層の厚みは通常、1〜40μmであり、好ましくは3〜25μmである。
(8)その他の光学層
本発明に係る偏光板は、その第1及び/又は第2保護フィルム10,20や偏光フィルム5上に積層される他の光学層をさらに含むことができる。他の光学層としては、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム;表面に凹凸形状を有する防眩機能付フィルム;表面反射防止機能付フィルム;表面に反射機能を有する反射フィルム;反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム;視野角補償フィルム等が挙げられる。
<延伸フィルム、偏光フィルム及び偏光板の製造方法>
本発明の延伸フィルム、偏光フィルム及び偏光板は、図4に示される方法によって好適に製造することができる。図4に示される製造方法は、下記工程:
(1)基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工した後、乾燥させることによりポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程S10、
(2)積層フィルムを延伸して基材フィルム上に延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層である延伸フィルムを有する延伸積層フィルムを得る延伸工程S20、
(3)延伸積層フィルムの延伸フィルムをヨウ素で染色して偏光フィルム(偏光子層)を形成することにより偏光性積層フィルムを得る染色工程S30、
(4)偏光性積層フィルムの偏光フィルム上に保護フィルムを貼合して貼合フィルムを得る第1貼合工程S40、
(5)貼合フィルムから基材フィルムを剥離除去して片面保護フィルム付偏光板を得る剥離工程S50、
をこの順で含む。
図3に示されるような両面保護フィルム付偏光板2を製造する場合には、剥離工程S50の後に、さらに
(6)片面保護フィルム付偏光板の偏光フィルム面に保護フィルムを貼合する第2貼合工程S60、
を含む。
以下、図5〜図8を参照しながら各工程について説明する。なお樹脂層形成工程S10において、ポリビニルアルコール系樹脂層を基材フィルムの両面に形成してもよいが、以下では主に片面に形成する場合について説明する。
(1)樹脂層形成工程S10
図5を参照して本工程は、基材フィルム30の少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層6を形成して積層フィルム100を得る工程である。このポリビニルアルコール系樹脂層6は、延伸工程S20を経て延伸フィルム6’となり、さらに染色工程S30を経て偏光フィルム5となる層である。ポリビニルアルコール系樹脂層6は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を基材フィルム30の片面又は両面に塗工し、塗工層を乾燥させることにより形成することができる。このような塗工によりポリビニルアルコール系樹脂層を形成する方法は、薄膜の偏光フィルム5を得やすい点で有利である。
基材フィルム30は熱可塑性樹脂から構成することができ、中でも透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から構成することが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;及びこれらの混合物、共重合物を含む。
基材フィルム30は、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる1つの樹脂層からなる単層構造であってもよいし、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を複数積層した多層構造であってもよい。基材フィルム30は、後述する延伸工程S20にて積層フィルム100を延伸する際、ポリビニルアルコール系樹脂層6を延伸するのに好適な延伸温度で延伸できるような樹脂で構成されることが好ましい。
基材フィルム30は、添加剤を含有することができる。添加剤の具体例は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、及び着色剤を含む。
基材フィルム30の厚みは通常、強度や取扱性等の点から1〜500μmであり、好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは5〜150μmである。
基材フィルム30に塗工する塗工液は、好ましくはポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒(例えば水)に溶解させて得られるポリビニルアルコール系樹脂溶液である。ポリビニルアルコール系樹脂の詳細は、上述のとおりである。塗工液は必要に応じて、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
上記塗工液を基材フィルム30に塗工する方法は、ワイヤーバーコーティング法;リバースコーティング、グラビアコーティングのようなロールコーティング法;ダイコート法;カンマコート法;リップコート法;スピンコーティング法;スクリーンコーティング法;ファウンテンコーティング法;ディッピング法;スプレー法等の方法から適宜選択することができる。
塗工層(乾燥前のポリビニルアルコール系樹脂層)の乾燥温度及び乾燥時間は塗工液に含まれる溶媒の種類に応じて設定される。乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。溶媒が水を含む場合、乾燥温度は80℃以上であることが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂層6は、基材フィルム30の一方の面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。両面に形成すると偏光性積層フィルム300(図7参照)の製造時に発生し得るフィルムのカールを抑制できるとともに、1枚の偏光性積層フィルム300から2枚の偏光板を得ることができるので、偏光板の生産効率の面でも有利である。
積層フィルム100におけるポリビニルアルコール系樹脂層6の厚みは、好ましくは3〜30μmであり、より好ましくは5〜20μmである。この範囲内の厚みを有するポリビニルアルコール系樹脂層6であれば、後述する延伸工程S20及び染色工程S30を経て、ヨウ素の染色性が良好で偏光性能に優れ、かつ十分に薄い(例えば厚み10μm以下の)偏光フィルム5を得ることができる。
塗工液の塗工に先立ち、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との密着性を向上させるために、少なくともポリビニルアルコール系樹脂層6が形成される側の基材フィルム30の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム(火炎)処理等を施してもよい。また同様の理由で、基材フィルム30上にプライマー層等を介してポリビニルアルコール系樹脂層6を形成してもよい。
プライマー層は、プライマー層形成用塗工液を基材フィルム30の表面に塗工した後、乾燥させることにより形成することができる。この塗工液は、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との両方にある程度強い密着力を発揮する成分を含み、通常は、このような密着力を付与する樹脂成分と溶媒とを含む。樹脂成分としては、好ましくは透明性、熱安定性、延伸性等に優れる熱可塑樹脂が用いられ、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。中でも、良好な密着力を与えるポリビニルアルコール系樹脂が好ましく用いられる。より好ましくは、ポリビニルアルコール樹脂である。溶媒としては通常、上記樹脂成分を溶解できる一般的な有機溶媒や水系溶媒が用いられるが、水を溶媒とする塗工液からプライマー層を形成することが好ましい。
プライマー層の強度を上げるために、プライマー層形成用塗工液に架橋剤を添加してもよい。架橋剤の具体例は、エポキシ系、イソシアネート系、ジアルデヒド系、金属系(例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物)、高分子系の架橋剤を含む。プライマー層を形成する樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合は、ポリアミドエポキシ樹脂、メチロール化メラミン樹脂、ジアルデヒド系架橋剤、金属キレート化合物系架橋剤等が好適に用いられる。
プライマー層の厚みは、0.05〜1μm程度であることが好ましく、0.1〜0.4μmであることがより好ましい。0.05μmより薄くなると、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との密着力向上の効果が小さく、1μmより厚くなると、偏光板の薄膜化に不利である。
プライマー層形成用塗工液を基材フィルム30に塗工する方法は、ポリビニルアルコール系樹脂層形成用の塗工液と同様であることができる。プライマー層形成用塗工液からなる塗工層の乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。溶媒が水を含む場合、乾燥温度は80℃以上であることが好ましい。
(2)延伸工程S20
図6を参照して本工程は、基材フィルム30及びポリビニルアルコール系樹脂層6からなる積層フィルム100を延伸して、延伸された基材フィルム30’上に、延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層である延伸フィルム6’を有する延伸積層フィルム200を得る工程である。延伸処理は通常、一軸延伸である。
積層フィルム100の延伸倍率は、所望する偏光特性及びラメラ型結晶の厚みLに応じて適宜選択することができる。好ましくは、積層フィルム100の元長に対して1.1倍〜17倍であり、より好ましくは、1.5倍〜8倍である。延伸倍率が17倍を超えると、延伸時にフィルムの破断が生じ易くなるとともに、延伸積層フィルム200の厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性及び取扱性が低下するおそれがある。
延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行うこともできる。この場合、多段階の延伸処理のすべてを染色工程S30の前に連続的に行ってもよいし、二段階目以降の延伸処理を染色工程S30における染色処理及び/又は架橋処理と同時に行ってもよい。このように多段で延伸処理を行う場合は、延伸処理の全段を合わせて4倍超の延伸倍率となるように延伸処理を行うことが好ましい。
延伸処理は、フィルム長手方向(フィルム搬送方向)に延伸する縦延伸であることができるほか、フィルム幅方向に延伸する横延伸又は斜め延伸等であってもよい。縦延伸方式としては、ロールを用いて延伸するロール間延伸、圧縮延伸、チャック(クリップ)を用いた延伸等が挙げられ、横延伸方式としては、テンター法等が挙げられる。延伸処理は、湿潤式延伸方法、乾式延伸方法のいずれも採用できるが、乾式延伸方法を用いる方が、延伸温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
延伸温度は、ポリビニルアルコール系樹脂層6及び基材フィルム30全体が延伸可能な程度に流動性を示す温度以上に設定され、好ましくは基材フィルム30の相転移温度(融点又はガラス転移温度)の−30℃から+30℃の範囲であり、より好ましくは−30℃から+5℃の範囲であり、さらに好ましくは−25℃から+0℃の範囲である。基材フィルム30が複数の樹脂層からなる場合、上記相転移温度は該複数の樹脂層が示す相転移温度のうち、最も高い相転移温度を意味する。
延伸温度を相転移温度の−30℃より低くすると、4倍超の高倍率延伸が達成されにくいか、又は、基材フィルム30の流動性が低すぎて延伸処理が困難になる傾向にある。延伸温度が相転移温度の+30℃を超えると、基材フィルム30の流動性が大きすぎて延伸が困難になる傾向にある。4倍超の高延伸倍率をより達成しやすいことから、延伸温度は上記範囲内であって、さらに好ましくは120℃以上である。
延伸処理における積層フィルム100の加熱方法としては、ゾーン加熱法(例えば、熱風を吹き込み所定の温度に調整した加熱炉のような延伸ゾーン内で加熱する方法。);ロールを用いて延伸する場合において、ロール自体を加熱する方法;ヒーター加熱法(赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等を積層フィルム100の上下に設置し輻射熱で加熱する方法)等がある。ロール間延伸方式においては、延伸温度の均一性の観点からゾーン加熱法が好ましい。
なお、延伸温度とは、ゾーン加熱法の場合、ゾーン内(例えば加熱炉内)の雰囲気温度を意味し、ヒーター加熱法においても炉内で加熱を行う場合は炉内の雰囲気温度を意味する。また、ロール自体を加熱する方法の場合は、ロールの表面温度を意味する。
延伸工程S20に先立ち、積層フィルム100を予熱する予熱処理工程を設けてもよい。予熱方法としては、延伸処理における加熱方法と同様の方法を用いることができる。予熱温度は、延伸温度の−50℃から±0℃の範囲であることが好ましく、延伸温度の−40℃から−10℃の範囲であることがより好ましい。
また、延伸工程S20における延伸処理の後に、熱固定処理工程を設けてもよい。熱固定処理は、延伸積層フィルム200の端部をクリップにより把持した状態で緊張状態に維持しながら、結晶化温度以上で熱処理を行う処理である。この熱固定処理によって延伸フィルム6’の結晶化が促進される。熱固定処理の温度は、延伸温度の−0℃〜−80℃の範囲であることが好ましく、延伸温度の−0℃〜−50℃の範囲であることがより好ましい。
(3)染色工程S30
図7を参照して本工程は、延伸積層フィルム200の延伸フィルム6’をヨウ素で染色してこれを吸着配向させ、偏光フィルム5とする工程である。本工程を経て基材フィルム30’の片面又は両面に偏光フィルム5が積層された偏光性積層フィルム300が得られる。
染色工程は、ヨウ素を含有する溶液(染色水溶液)に延伸積層フィルム200全体を浸漬することにより行うことができる。染色水溶液としては、ヨウ素を溶媒に溶解した溶液を使用できる。溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されてもよい。染色水溶液におけるヨウ素の濃度は、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.02〜7重量%である。
染色効率を向上できることから、染色水溶液にヨウ化物をさらに添加することが好ましい。ヨウ化物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。染色水溶液におけるヨウ化物の濃度は、好ましくは0.01〜20重量%である。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムとの割合は重量比で、好ましくは1:5〜1:100であり、より好ましくは1:6〜1:80である。染色水溶液の温度は、好ましくは10〜60℃であり、より好ましくは20〜40℃である。
染色工程S30は、染色処理に引き続いて実施される架橋処理工程を含むことができる。架橋処理は、架橋剤を溶媒に溶解した溶液(架橋溶液)中に染色されたフィルムを浸漬することにより行うことができる。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂のようなホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。架橋剤は1種のみを使用してもよいし2種以上を併用してもよい。架橋溶液の溶媒としては、水が使用できるが、水と相溶性のある有機溶媒をさらに含んでもよい。架橋溶液における架橋剤の濃度は、好ましくは0.2〜20重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%である。
架橋溶液はヨウ化物をさらに含むことができる。ヨウ化物の添加により、偏光フィルム5の面内における偏光性能をより均一化させることができる。ヨウ化物の具体例は上記と同様である。架橋溶液におけるヨウ化物の濃度は、好ましくは0.05〜15重量%であり、より好ましくは0.5〜8重量%である。架橋溶液の温度は、好ましくは1〜90℃である。
なお架橋処理は、架橋剤を染色水溶液中に配合することにより、染色処理と同時に行うこともできる。また、組成の異なる2種以上の架橋溶液を用いて、架橋溶液に浸漬する処理を2回以上行ってもよい。
染色工程S30の後、後述する第1貼合工程S40の前に洗浄工程及び乾燥工程を行うことが好ましい。洗浄工程は通常、水洗浄工程を含む。水洗浄処理は、イオン交換水、蒸留水のような純水に染色処理後の又は架橋処理後のフィルムを浸漬することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4〜20℃である。洗浄工程は、水洗浄工程とヨウ化物溶液による洗浄工程との組み合わせであってもよい。洗浄工程の後に行われる乾燥工程としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等の任意の適切な方法を採用し得る。例えば加熱乾燥の場合、乾燥温度は通常20〜95℃である。
(4)第1貼合工程S40
図8を参照して本工程は、偏光性積層フィルム300の偏光フィルム5上、すなわち、偏光フィルム5の基材フィルム30’側とは反対側の面に接着剤層を介して保護フィルムを貼合することで貼合フィルム400を得る工程である。図8には第1接着剤層15を介して第1保護フィルム10を貼合する例を示しているが、両面保護フィルム付偏光板2を製造する場合には、第2接着剤層25を介して第2保護フィルム20を貼合するようにしてもよい。第1接着剤層15や第2接着剤層25を形成する接着剤については上述のとおりである。
なお、偏光性積層フィルム300が基材フィルム30’の両面に偏光フィルム5を有する場合は通常、両面の偏光フィルム5上にそれぞれ保護フィルムが貼合される。この場合、これらの保護フィルムは同種の保護フィルムであってもよいし、異種の保護フィルムであってもよい。
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて、第1保護フィルム10を貼合する場合を例に、保護フィルムの貼合接着方法について説明すると、第1接着剤層15となる活性エネルギー線硬化性接着剤を介して第1保護フィルム10を偏光フィルム5上に積層した後、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線を照射して接着剤層を硬化させる。中でも紫外線が好適であり、この場合の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
偏光フィルム5に保護フィルムを貼合するにあたり、保護フィルム及び/又は偏光フィルム5の貼合面には、偏光フィルム5との接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面処理(易接着処理)を行うことができ、中でも、プラズマ処理、コロナ処理又はケン化処理を行うことが好ましい。
(5)剥離工程S50
本工程は、貼合フィルム400から基材フィルム30’を剥離除去する工程である。この工程を経て、図2と同様の片面保護フィルム付偏光板が得られる。偏光性積層フィルム300が基材フィルム30’の両面に偏光フィルム5を有し、これら両方の偏光フィルム5に保護フィルムを貼合した場合には、この剥離工程S50により、1枚の偏光性積層フィルム300から2枚の片面保護フィルム付偏光板が得られる。
基材フィルム30’を剥離除去する方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われるセパレータ(剥離フィルム)の剥離工程と同様の方法で剥離できる。基材フィルム30’は、第1貼合工程S40の後、そのまますぐ剥離してもよいし、第1貼合工程S40の後、一度ロール状に巻き取り、その後の工程で巻き出しながら剥離してもよい。
(6)第2貼合工程S60
本工程は、片面保護フィルム付偏光板の偏光フィルム5上、すなわち第1貼合工程S40にて貼合した保護フィルムとは反対側の面に、さらに保護フィルムを貼合し、図3に示される構成の両面保護フィルム付偏光板2を得る工程である。第1貼合工程S40にて第1保護フィルム10が貼合される場合には、本工程にて第2保護フィルム20が貼合され、第1貼合工程S40にて第2保護フィルム20が貼合される場合には、本工程にて第1保護フィルム10が貼合される。第2接着剤層25を介した第2保護フィルム20の貼合は、第1保護フィルム10の貼合と同様にして行うことができる。
以上、基材フィルム上に塗工したポリビニルアルコール系樹脂層から偏光フィルムを形成し、次いで偏光板を製造する方法について詳述したが、これに制限されるものではなく、単体(単独)フィルムからなる偏光フィルム5に第1保護フィルム10、又は第1及び第2保護フィルム10,20を貼合して偏光板を製造してもよい。
単体(単独)フィルムからなる延伸フィルム6’および偏光フィルム5は、例えば溶融押出法、溶剤キャスト法のような公知の方法によりポリビニルアルコール系樹脂フィルムを作製する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸して延伸フィルム6’を得る工程;延伸フィルムをヨウ素で染色し、これを吸着させる工程;ヨウ素が吸着された延伸フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程;及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗し偏光フィルム5を得る工程、によって製造することができる。一軸延伸は、ヨウ素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
第1及び第2保護フィルム10,20の双方を貼合して両面保護フィルム付偏光板を製造する場合において、これらの保護フィルムは、接着剤層を介して順次貼合されてもよいし、同時に貼合されてもよい。
(7)延伸フィルム中のポリビニルアルコール系樹脂のラメラ型結晶の厚みLの調整
延伸フィルム中のポリビニルアルコール系樹脂のラメラ型結晶の厚みLを上記所定の範囲内とする方法は特に制限されないが、上述のようにラメラ成長制御モノマーユニットの位置及び頻度を調整したポリビニルアルコール系樹脂を用いて製膜する方法が好ましく採用される。ポリビニルアルコール系樹脂におけるラメラ成長制御モノマーユニットの位置及び頻度の調整程度は、ポリビニルアルコール系樹脂において連続するビニルアルコールモノマーユニットの数の平均値によって確認することができる。
また、上記方法と組み合わせて、または単独でポリビニルアルコール系樹脂層の延伸倍率、熱履歴等を調整することにより、延伸フィルム中のポリビニルアルコール系樹脂のラメラ型結晶の厚みLを上記所定の範囲内とすることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<実施例1>
(1)プライマー層形成工程
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製の「Z−200」、平均重合度1100、ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(田岡化学工業(株)製の「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部の割合で混合して、プライマー層形成用塗工液を得た。
次に、基材フィルムとして厚み90μmの未延伸のポリプロピレン(PP)フィルム(融点:163℃)を用意し、その片面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に小径グラビアコーターを用いて上記プライマー層形成用塗工液を塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。
(2)積層フィルムの作製(樹脂層形成工程)
平均連続ユニット数が30であるポリビニルアルコール系樹脂粉末を95℃の熱水に溶解し、濃度7.5重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、これをポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液とした。
上記(1)で作製したプライマー層を有する基材フィルムのプライマー層表面にダイコーターを用いて上記ポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液を塗工した後、70℃の熱風を吹き付けながら乾燥を実施し、プライマー層上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層からなる積層フィルムを得た。乾燥後のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは9.2μmであった。
(3)延伸積層フィルムの作製(延伸工程)
上記(2)で作製した積層フィルムに対し、フローティングの縦一軸延伸装置を用いて(空中延伸)、空中延伸時の最大温度150℃で5.3倍の自由端一軸延伸を実施し、基材フィルム上にポリビニルアルコール系樹脂からなる延伸フィルムが設けられた延伸積層フィルムを得た。延伸後のポリビニルアルコール系樹脂からなる延伸フィルムの厚みは5.1μmであった。
(4)偏光性積層フィルムの作製(染色工程)
上記(3)で作製した延伸積層フィルムを、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む30℃の染色水溶液(水100重量部あたりヨウ素を0.35重量部(ヨウ素濃度13.8mM)、ヨウ化カリウムを10.0重量部含む。)に、後の評価で測定される視感度補正単体透過率Tyが41.5%となるように適宜浸漬時間を調整して延伸フィルムの染色処理を行った後、10℃の純水で余分な染色水溶液を洗い流した。染色水溶液への染色時間を表1に示す。
次いで、ホウ酸を含む78℃の第1架橋水溶液(水100重量部あたりホウ酸を10.4重量部含む。)に120秒間浸漬し、次いで、ホウ酸及びヨウ化カリウムを含む70℃の第2架橋水溶液(水100重量部あたりホウ酸を5.0重量部、ヨウ化カリウムを12.0重量部含む。)に60秒間浸漬し、さらに10℃の純水に約10秒間浸漬して架橋処理を行った。その後ただちに、エアブロワーを用いて両面に付着した液体を取り除き、偏光フィルムを含む偏光性積層フィルムを得た。
(5)片面保護フィルム付偏光板の作製(第1貼合工程、剥離工程)
上記(4)で作製した偏光性積層フィルムの偏光フィルム上に、紫外線硬化性接着剤(ADEKA(株)製の「KR−75T」)からなる接着剤層を介して、保護フィルム〔トリアセチルセルロース(TAC)からなる透明保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製の「KC−2UAW」)〕を貼合した。次いで、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することにより接着剤層を硬化させて、保護フィルム/接着剤層/偏光フィルム/基材フィルムの層構成からなる貼合フィルムを得た(第1貼合工程)。その後、得られた貼合フィルムから基材フィルムを剥離除去して、片面保護フィルム付偏光板を得た(剥離工程)。
<実施例2〜13、比較例1〜5>
実施例2〜13は、実施例1において、上記(2)で用いたポリビニルアルコール系樹脂粉末として表1に示す平均連続ユニット数のポリビニルアルコール系樹脂粉末を用いた点、上記(3)での延伸時の温度を表1に示す温度とした点、上記(3)での延伸倍率を表1に示す倍率とした点と、実施例10〜13及び比較例3〜5では、上記(4)の第1架橋水溶液中で3.0倍または1.1倍の自由端一軸延伸を行なった点以外は、実施例1と同じ方法で行なった。表1に示す第1架橋水溶液中での延伸倍率が「1.0倍」となっている場合は、第1架橋水溶液中で延伸を行なっていないことを示す。
〔ラメラ型結晶の厚みLの算出〕
上記(3)で得られらた延伸積層フィルムから、基材フィルムを剥離し、延伸フィルムを取り出して、23℃55%RH環境下で1日調湿した後に、5mgを測定用アルミパンに詰めて密閉したものを評価用サンプルとした。リファレンスとして、空のアルミパンを密閉したものを用いた。評価用サンプルとリファレンスについて、示差走査熱量計(製品名:DSC6220、セイコーインスツル(株)製)を用いて、50℃から250℃までを10℃/分で温度を掃引しながら吸収された熱量を測定した。結晶に由来する200℃〜250℃の間にある結晶融解ピークのピーク位置の温度を結晶融解ピーク温度T(K)とし、式(1)によりラメラ型結晶の厚みLを算出した。結果を表1に示す。
〔染色性の評価〕
上記(4)で要した染色水溶液(ヨウ素濃度が13.8mM)への浸漬時間(染色時間)に応じて、染色時間が300秒以内であった場合を「良好」とし、染色時間が300秒を超えた場合を「不良」として評価した。結果を表1に示す。
染色性評価の基準を300秒とした理由は、一定水準の生産性を得られるライン速度は10m/分以上であり、この場合300秒を超える染色滞留時間を確保するためには、ライン滞留長を50m以上設ける必要があり、生産性が悪化するからである。染色後に架橋槽、補色槽等を設ける場合には、さらにライン滞留長が長くなる。染色時間が例えば100秒である場合、ライン滞留長を20m以内とすることができるので、一般的な染色設備で十分に実施することができる。
なお、染色水溶液のヨウ素濃度を上げることで滞留時間を短くすることができるが、高濃度のヨウ素は設備腐食を引き起こすことから、20.0mM以上のヨウ素濃度の染色水溶液で連続して生産することを長期で続けることは難しい。また、染色水溶液のヨウ素濃度が高くなると染色水溶液による腐食だけでなく、染色水溶液から昇華したヨウ素上記による染色槽外の腐食も引き起こされることがあるので、染色水溶液のヨウ素濃度は15.0mM以下であることが好ましい。
〔外観性の評価〕
上記(4)の染色工程において、染色槽でのポリビニルアルコール系樹脂の溶解による溶出、色抜けを目視で確認した。溶解および色抜けがともに確認されず、外観も良好であった場合を「良好」とし、溶解または色抜けのいずれかが観察された場合を「不良」とした。結果を表1に示す。
〔突刺強度の測定〕
上記(4)で得られた偏光性積層フィルムから、基材フィルムを剥離し、偏光フィルムを取り出して評価用サンプルを得た。まず、評価用サンプルの偏光フィルムの厚みを接触式膜厚計(ニコン(株)製の商品名”DIGIMICRO MH−15M”)で測定した。その後、先端径1mmφ、0.5Rのニードルを装着したカトーテック(株)製のハンディー圧縮試験機”KES−G5 ニードル貫通力測定仕様”を使用し、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒の測定条件下で偏光フィルムへの突刺しを行い、偏光フィルムを貫通したときのニードルにかかった力を測定した。この測定を評価サンプル12枚に対して行い、その平均値をそのサンプルの測定値とした。かかる測定値を偏光フィルムの厚みで除することにより単位厚み当たりの突刺強度を算出した。結果を表1に示す。
〔Ty及びPyの測定〕
上記(5)で得られた片面保護フィルム付偏光板の偏光フィルム側の面にコロナ処理をしながら、(メタ)アクリル樹脂系の粘着剤(リンテック(株)製の「P−3132」)を貼合した。得られた粘着剤層付偏光板をその粘着剤層を用いてガラスに貼合し、評価用サンプルを得た。評価用サンプルの偏光板について、積分球付き吸光光度計(日本分光(株)製の「V7100」)を用い、得られた透過率、偏光度に対してJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率Ty及び視感度補正偏光度Pyを測定した。測定にあたっては、ガラス側に入射光が照射されるように評価用サンプルをセットした。結果を表1に示す。
Figure 0006045623

1,2 偏光板、5 偏光フィルム、6 ポリビニルアルコール系樹脂層、6’ 延伸フィルム(延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層)、10 第1保護フィルム、15 第1接着剤層、20 第2保護フィルム、25 第2接着剤層、30 基材フィルム、30’ 延伸された基材フィルム、50 ラメラ型結晶、51 ポリマー鎖、100 積層フィルム、200 延伸積層フィルム、300 偏光性積層フィルム、400 貼合フィルム。

Claims (7)

  1. ラメラ型結晶を含むポリビニルアルコール系樹脂からなる延伸フィルムであって、
    前記延伸フィルムの示差走査熱量測定で測定される結晶融解ピーク温度T(K)を用いて下記式(1)により算出される前記ラメラ型結晶の厚みL(nm)が13.0nm以上45.0nm以下である、偏光フィルムの製造に用いられる延伸フィルム。
    L=0.66×{516/(516−T)} ・・・(1)
  2. 前記ポリビニルアルコール系樹脂は、前記ラメラ型結晶の厚みL(nm)を制御するモノマーを構成モノマーとして含む、請求項1に記載の延伸フィルム。
  3. 基材フィルム上に設けられたポリビニルアルコール系樹脂層を延伸してなる、請求項1または2に記載の延伸フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の延伸フィルムを二色性色素で染色してなる、偏光フィルム。
  5. 厚さが10μm以下である、請求項4に記載の偏光フィルム。
  6. 単位厚み当たりの突刺強度が6.0g/μm以上である、請求項4または5に記載の偏光フィルム。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項に記載の偏光フィルムと、
    前記偏光フィルムの少なくとも一方の面上に積層される保護フィルムと、を含む、偏光板。
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