JP6045236B2 - 動的接触角低下剤 - Google Patents
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1. 炭素数8〜12の飽和脂肪酸と平均重合度2以上、且つ3未満のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)、及び炭素数8〜14の飽和脂肪酸と平均重合度3〜12のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の両者から構成され、両者の混合比率(A)/(B)が、10質量%/90質量%から90質量%/10質量%である混合物で、且つ、該混合物の0.033質量%水溶液を、25℃においてパラフィルムM(商品名、American National Can Co.製、以下同じ)に対して5μL滴下した際の、動的接触角測定装置を用いて評価される液滴の転落開始直前における後退接触角が59°未満であるポリグリセリン脂肪酸エステル組成物からなる動的接触角低下剤。
3. ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)と、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)との混合比率が(A)/(B)=20質量%/80質量%〜80質量%/20質量%であることを特徴とする上記1又は2に記載の動的接触角低下剤。
4. ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)として、ジグリセリンモノカプリル酸エステルを含み、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として平均重合度5以上7以下、又は、9以上11以下のポリグリセリンモノラウリン酸エステル、又は平均重合度は9以上11以下のポリグリセリンモノミリスチン酸エステルを含む上記1〜3の何れか一項に記載の動的接触角低下剤。
6.炭素数8〜12の飽和脂肪酸と平均重合度2以上、且つ3未満のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)、及び炭素数8〜14の飽和脂肪酸と平均重合度3〜12のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の両者から構成され、両者の混合比率(A)/(B)が、10質量%/90質量%から90質量%/10質量%である混合物で、且つ、該混合物の0.033質量%水溶液を、25℃においてパラフィルムM(商品名)に対して5μL滴下した際の、動的接触角測定装置を用いて評価される液滴の転落開始直前における後退接触角が59°未満であるポリグリセリン脂肪酸エステル組成物からなる動的接触角を低下させる表面張力低下剤。
7.上記1〜4の何れか一項に記載の動的接触角低下剤又は上記6に記載の表面張力低下剤を含有する食品材料、化粧品材料、医薬品材料、医薬部外品材料、日用品材料、及び工業材料。
本発明の動的接触角低下剤又は表面張力低下剤は特定の2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する組成物で構成される。即ち、炭素数8〜12の飽和脂肪酸で、平均重合度が2以上、且つ3未満のポリグリセリンをエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステル(A)と、炭素数8〜14の飽和脂肪酸で、平均重合度が3以上、好ましくは3〜12のポリグリセリンをエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の両者を含有する組成物である。
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、グリセリンの脱水縮合反応、又は、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリセリンハロヒドリン(ハロゲノ−1,2−プロパンジオール)等のグリシドール若しくはその反応性誘導体から合成することができる。また、合成グリセリンのグリセリン蒸留残分からの分離回収等によっても得ることができる。一般的には、グリセリンに少量のアルカリ触媒を加えて200℃以上の高温に加熱し、生成する水を除去しながら重縮合させる方法によって得られる。反応は逐次的な分子間脱水反応により、順次高重合体が生成するが、反応組成物は均質なものではなく、未反応グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等の複雑な混合組成物となり、反応温度が高いほど、あるいは反応時間が長いほど反応は高重合度側にシフトする。また、未反応のグリセリンは減圧蒸留による蒸留が可能であり、ジグリセリンは分子蒸留による蒸留が可能であるため、一般的にはジグリセリンは高純度品を得ることが出来る。それ以上の重合度のポリグリセリンは、複雑な多成分の混合物として得られる。また、グリセリン、ジグリセリンを蒸留した残分のポリグリセリンを使用することも出来る。本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの合成に使用されるポリグリセリンは、通常の反応で合成できるポリグリセリンであり、一般に市販のジグリセリン、又は、平均重合度3以上のポリグリセリン等を使用することが出来る。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)、及び(B)においては、それぞれの平均重合度の範囲のポリグリセリンを単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、次式(式1)および(式2)から平均重合度が算出される。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
上記(式2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシ基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、2003年度版」に準じて算出される。
平均重合度が2であるジグリセリンにおいては、分子量分布を有する平均重合度2のジグリセリンを使用することもできるが、通常高純度の単一な重合体であるジグリセリンが販売されているので、それを使用するのが好ましい。
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルに使用されるポリグリセリン混合物の水酸基価から算出される平均重合度としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)においては、2以上、且つ3未満、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)においては3以上、好ましくは3〜12、より好ましくは4〜10、更に好ましくは5〜7又は9〜11、最も好ましくは6又は10であれば、平均重合度が上記の下限、及び上記の上限を超えるようなポリグリセリンが含まれていても使用できる。
ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル又はデカグリセリンモノラウリン酸エステルの好ましいHLBは、10以上、16未満であり、より好ましくは10〜15であり、更に好ましくは12〜15であり、デカグリセリンモノミリスチン酸エステルの好ましいHLBは、13〜15である。
なお、本明細書において、「ヘキサグリセリン」又は「デカグリセリン」など、又は平均重合度「6」又は「10」のように、平均重合度が、一つの数値で表される場合、例えば「ヘキサ」又は「6」は、最も広い、5<6<7の意味で使用され、好ましくは5.5以上6.5未満の意味で使用され、「デカ」又は「10」など他の数値についても同様な意味で使用される。
なお、ここで後退接触角とは、25℃において、ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の0.033質量%水溶液を、パラフィルムM(商品名)の表面に5μL滴下し、動的接触角測定装置を用いて測定される液滴の転落開始直前における後退する側の接触角の測定値であり、一例として、動的接触角測定装置DSA100S(KRUSS GmbH社製)を用いて滑落法により測定することができる。
また、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステル組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の0.033質量%水溶液の表面張力が36mN/m以下が好ましく、より好ましくは34mN/m以下であり、最も好ましくは30mN/m以下である。下限は低い方が好ましいが、該組成物で達成出来るのは27mN/m程度である。
本発明のより好ましいポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の一つは、25℃において、ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の0.033質量%水溶液が、後退接触角が50°以下であり、表面張力が34mN/m以下となる組成物である。
また、炭素数8〜14の飽和脂肪酸と平均重合度が3以上のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)のHLBは通常9.5以上、好ましくは12以上、16未満であり、より好ましくは13以上、15未満である。なお、(B)成分としては、本発明の効果を達成される限り、上記のHLBのものと共に、その範囲外のHLBのものも含んでいてもよいが、通常、上記のHLBを有するものの含量は、(B)成分の総量に対して、少なくとも40%以上で、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは、90〜100質量%である。最も好ましくは、(B)成分の全量が上記HLBの範囲内に入るものである場合である。
ここで、HLBは、Hydrophile ― Lipophile Balance の頭文字をとった略称であり、界面活性剤(本発明においてはポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及び(B))の水と油への親和性の程度を表す値である。一般に、HLBを算出する方法として、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法と種々の方法が知られるが、その中でも本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、次に示すグリフィンの式より算出したものである。
(式)HLB=(親水基部分の分子量/界面活性剤の分子量)×20
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステル組成物は、上記(A)成分及び(B)成分以外に、必要に応じて他の成分を含むことができるが、上記(A)成分及び(B)成分の合計が、該ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の総量に対して、80〜100質量%を占める方が好ましく、より好ましくは90〜100質量%であり、最も好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステル組成物が、上記(A)成分及び(B)成分で、100質量%構成される場合である。
本発明のより好ましい態様の例を挙げると下記の通りである。
(1)本発明の組成物において、上記(A)成分として、HLBが7〜10のジグリセリンモノカプリル酸エステルを含み、その含量が、(A)成分の総量に対して、少なくとも40質量%、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%含み、かつ、本発明の組成物の総量に対して、20〜85質量%含む態様。
(2)本発明の組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)としてHLBが9〜15であり、平均重合度が4〜10である、ポリグリセリンモノラウリン酸エステル、又は、ポリグリセリンモノミリスチン酸エステルを含み、その含量が、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは、(B)成分の総量であり、かつ、本発明の組成物の総量に対して、15〜80質量%含む態様。
(3)上記(2)におけるポリグリセリンモノラウリン酸エステル、又は、ポリグリセリンモノミリスチン酸エステルが、平均重合度5以上7以下、又は、9以上11以下のポリグリセリンモノラウリン酸エステル、又は、平均重合度9以上11以下のポリグリセリンモノミリスチン酸エステルであり、(B)成分の総量に対して、50〜100質量%である上記(2)の態様。
(4)本発明の組成物において、上記(1)の態様と(2)又は(3)の態様を組合わせた態様。
本発明の動的接触角低下剤又は表面張力低下剤が使用できる好ましい対象としては、特に限定されないが、表面張力の低下と共に、動的接触角の低下を必要とするものであれば、何れも好適に使用できる。例えば食品材料、化粧品材料、医薬品材料、医薬部外品材料、日用品材料、及び工業材料を挙げることが出来る。
(ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE1〜19)の合成)
ジグリセリンSを436.0gと、カプリル酸416.0gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムを添加し、窒素気流下にて180℃で2時間、220℃に昇温して3時間反応させ、酸価が0.1mgKOH/gであるジグリセリンモノカプリル酸エステル(PGFE1)を得た。
以下同様に、ポリグリセリンと脂肪酸の種類及び、ポリグリセリンと脂肪酸の仕込み量、反応温度、反応時間を、下記表1に示す通り、変化させてPGFE2〜19を製造した。
上記で得られた各々のポリグリセリン脂肪酸エステルを後記表2に示す。
(ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE20)の合成)
グリセリン92.1gと85%リン酸0.1gを加え、140℃に加熟した。次いで、反応温度を140℃に保ちながらグリシドール666.7gを5時間かけて滴下し、さらに24時間反応させた。冷却後、水酸化ナトリウムを加え、90℃で1時間撹拌した後、5〜10mmHg、115℃〜125℃で1時間脱水した。90℃に冷却して、吸着剤として0.5gのケイソウ土を加え、1時間撹拌した後、濾過してデカグリセリンを720g得た。得られたデカグリセリン600gに、ラウリン酸と水酸化ナトリウムを添加した。
なお、ラウリン酸の仕込み量は、ラウリン酸/ポリグリセリンモル比が1.3/1となる様にした。窒素気流下にて235℃に昇温して反応させ、酸価が0.1mgKOH/gであるデカグリセリンモノラウリン酸エステル(PGFE20)を得た。得られたポリグリセリン飽和脂肪酸エステルを、合成例1で得られたポリグリセリン飽和脂肪酸エステルと共に下記表2に示す。
各々のポリグリセリン脂肪酸エステルについて、イオン交換水を用いて0.033重量%の水溶液を調製した。各々の水溶液を25℃のインキュベータで一日静置したサンプルを測定した。測定は、界面張力計DM−300(協和界面科学株式会社製)を用いて、懸滴法により行い、Young―Laplace法による解析を行った。各試料につき、5回ずつ測定し、その平均値に水/大気の密度差0.997g/cm3を掛けた値を表面張力とした。
各々のポリグリセリン脂肪酸エステルについて、イオン交換水を用いて0.033質量%の水溶液を調製した。各々の水溶液を25℃のインキュベータで一日静置したサンプルを測定した。25℃において、ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の0.033質量%水溶液をパラフィルムM(商品名)に対して5μL滴下し、液滴の転落開始直前における後退接触角を求めた。なお、測定は、動的接触角測定装置DSA100S(KRUSS GmbH社製)を用いて、滑落法により測定した。
Claims (6)
- 炭素数8〜12の飽和脂肪酸と平均重合度2以上、且つ3未満のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)、及び炭素数8〜14の飽和脂肪酸と平均重合度3〜12のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の両者から構成され、両者の混合比率(A)/(B)が、10質量%/90質量%から90質量%/10質量%である混合物で、且つ、該混合物の0.033質量%水溶液を、25℃においてパラフィルムM(商品名)に対して5μL滴下した際の、動的接触角測定装置を用いて評価される液滴の転落開始直前における後退接触角が59°未満であるポリグリセリン脂肪酸エステル組成物からなる動的接触角低下剤であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)として、ジグリセリンモノカプリル酸エステルを含み、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として平均重合度5以上7以下、又は、9以上11以下のポリグリセリンモノラウリン酸エステル、又は、平均重合度は9以上11以下のポリグリセリンモノミリスチン酸エステルを含むことを特徴とする動的接触角低下剤。 - ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)として、HLBが7以上、11未満であるものを、(A)成分の総量に対して、少なくとも50質量%含み、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、HLBが9.5以上、16未満であるものを、(B)成分の総量に対して、少なくとも50質量%含むことを特徴とする請求項1記載の動的接触角低下剤。
- ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)と、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)との混合比率が(A)/(B)=20質量%/80質量%〜80質量%/20質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の動的接触角低下剤。
- 炭素数8〜12の飽和脂肪酸と平均重合度2以上、且つ3未満のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)、及び炭素数8〜14の飽和脂肪酸と平均重合度3〜12のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の両者から構成され、両者の混合比率(A)/(B)が、10質量%/90質量%から90質量%/10質量%である混合物で、且つ、該混合物の0.033質量%水溶液を、25℃においてパラフィルムM(商品名)に対して5μL滴下した際の、動的接触角測定装置を用いて評価される液滴の転落開始直前における後退接触角が30°以上〜59°未満であるポリグリセリン脂肪酸エステル組成物であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)として、ジグリセリンモノカプリル酸エステルを含み、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として平均重合度5以上7以下、又は、9以上11以下のポリグリセリンモノラウリン酸エステル、又は、平均重合度は9以上11以下のポリグリセリンモノミリスチン酸エステルを含むことを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステル組成物。 - 炭素数8〜12の飽和脂肪酸と平均重合度2以上、且つ3未満のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)、及び炭素数8〜14の飽和脂肪酸と平均重合度3〜12のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の両者から構成され、両者の混合比率(A)/(B)が、10質量%/90質量%から90質量%/10質量%である混合物で、且つ、該混合物の0.033質量%水溶液を、25℃においてパラフィルムM(商品名)に対して5μL滴下した際の、動的接触角測定装置を用いて評価される液滴の転落開始直前における後退接触角が59°未満であるポリグリセリン脂肪酸エステル組成物からなる動的接触角を低下させる表面張力低下剤であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)として、ジグリセリンモノカプリル酸エステルを含み、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として平均重合度5以上7以下、又は、9以上11以下のポリグリセリンモノラウリン酸エステル、又は、平均重合度は9以上11以下のポリグリセリンモノミリスチン酸エステルを含むことを特徴とする表面張力低下剤。 - 請求項1〜3の何れか一項に記載の動的接触角低下剤、又は請求項5に記載の表面張力低下剤を含有する食品材料、化粧品材料、医薬品材料、医薬部外品材料、日用品材料、又は工業材料。
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