JP4128245B2 - 乳化安定化剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水中油型乳化組成物に配合して優れた乳化安定化機能を発揮する乳化安定化剤に係わるものである。更に詳しくは、前記乳化組成物中に配合することによって、その乳化安定性を著しく向上させる機能をもち、かつ安全性も極めて高く、食品、化粧品、医薬品、農薬、飼料等の幅広い分野の水中油型乳化組成物に利用できる部分エステル化生成物からなる乳化安定化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水と油脂、炭化水素あるいは溶剤等とを均一に乳化し安定化する目的で種々の乳化剤や乳化安定化剤と呼ばれる原材料が用いられてきた。一般に、乳化剤には、乳化性能として、水と油のように極性が大きく異なる物質間の界面張力を低下させて乳化粒子を微細化しやすくさせ、かつ安定に保つ機能が必要となる。この機能は親水性物質および親油性物質の種類や配合比率等の条件によっても様々に異なり、このため使用する乳化剤については適合条件を詳細に検討する必要があり、通常は複数の乳化剤を組み合わせて用いることが多い。さらに、特に人体に係わるような分野、例えば食品、化粧品、医薬品等の製品では安全性が高いことも要求される。
【0003】
水中油型乳化組成物において、乳化能力が極めて高く汎用的に使用されている乳化剤として、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがあるが、安全性の点での問題が指摘されている。一方、安全性が極めて高いポリグリセリン脂肪酸エステルはその乳化力において完全に満足できるものではない。
【0004】
乳化安定化能が不足する処方系においては、補助的手段として乳化安定化剤が用いられる。この代表的なものにセタノールやコレステロールがある。セタノールは乳化系の界面に配向して液晶を形成し、界面を硬くすることにより乳化系全体の流動性を失わしめて乳化状態を安定化する。しかし、セタノールだけでは安定化機能は不十分であるうえ、温度変化により分離しやすい。また、乳化系が硬くなる結果、乳化組成物のきめも荒くなりやすい。一方、コレステロールは界面張力を低下させて乳化粒子を細かくすることに寄与するが、安定させる乳化系が限定され、さらに乳化物の粘度は増大しないためにクリーミング現象を生じやすい。また、これらとは別に乳化系の粘度を上昇させることにより乳化安定性を増強させるキサンタンガム、カルボキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の高分子系素材がある。これらはいずれも外相(水)を増粘させて安定化させるものであるが、乳化組成物が糊状になったり、ぬめり感等の使用感から敬遠されることが多い。
【0005】
このように、これまではある目的のために乳化処方系が設計される場合、該処方を種々に調整することにより前記欠点を補いながら全体をまとめあげて所望の物性、感触へ仕上げていくプロセスを経ていた。しかしながら、従来の乳化関連資材を用いる範囲では、感触が柔らかく、きめが細かい上に乳化安定性が優れている乳化組成物を作り出すことは非常に困難を伴う作業であった。
【0006】
本発明者らは、かかる実情に鑑み、水中油型を主体とする乳化系において乳化安定性を向上させるために、従来と異なる位置づけで使用できる材料の開発に取り組んだ。すなわち、水中油型乳化系において少量添加することで乳化安定化の機能を発揮し、かつ乳化系の物性をあまり変化させないような機能を有する材料の開発を目指して、種々の物質のスクリーニングを行った。その結果、特定のオリゴエステル化物が、乳化助剤と乳化安定剤の両方の機能を満たし、乳化物の粘度の増加を伴わないにもかかわらず乳化状態を非常に安定化させるすることを見い出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、乳化処方系に添加することによって、あるいは他の乳化剤を用いずに水中油型乳化系を極めて安定なものとする機能を有する乳化安定化剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、多価アルコール、脂肪酸および二塩基酸を構成要素とするオリゴエステル化物が乳化組成物の安定性にとって有用であることを見出した。さらに詳細に検討を行った結果、この中で特定の条件を満たすものが従来にはない極めて優れた乳化安定化機能を発現することを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、(1)グリセリン重合物と、(2)炭素数8〜18の直鎖脂肪酸、不飽和脂肪酸および分枝脂肪酸からなる群から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸(以下、単に脂肪酸ということがある)と、(3)炭素数9〜20の脂肪族飽和二塩基酸(以下、単に二塩基酸ということがある)とのエステル化生成物であって、(1)の1モルに対して(3)が0.3〜0.5モルであり、かつ(1)の水酸基の数のうち50〜75%を残存させた部分エステル化生成物からなる乳化安定化剤が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のエステル化生成物を製造するための必須原料成分としては、まず、グリセリン重合物がある。本発明において、グリセリン重合物の好適な重合度は平均重合度として5以上のものをさすが、とりわけ平均重合度が6以上のものが好ましく、さらには10程度までのグリセリン重合物であり、具体的にはペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、オクタグリセリン、デカグリセリン等を例示でき、これらは単独もしくは任意の組み合わせの混合物として使用できる。
【0010】
次に、脂肪酸は、炭素数が8〜18の直鎖脂肪酸、不飽和脂肪酸および分枝脂肪酸からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを必須とする。具体的にはn−オクタン酸、n−デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の直鎖脂肪酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、イソオクチル酸(2−エチルヘキサン酸)、イソパルミチン酸(2−ヘキシルデカン酸)、イソステアリン酸(エメリー社製、商品名「Emersol 875 Isostearic Acid 」、ユニケマ社製、商品名「PRISORINE ISAC 3505 」等)等の分枝脂肪酸を例としてあげることができ、本発明ではこれらを単独で使用しあるいは任意の組み合わせの混合物で使用してもさしつかえない。これらのうち望ましい脂肪酸は、炭素数が16ないし18のもので、具体的にはステアリン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸およびオレイン酸からなる群から選ばれる1種または2種以上である。なお、本発明においては、不飽和度の高い脂肪酸を多く使用すると、本発明のエステル化生成物の保存安定性が低下する場合があるため注意が必要である。また、かかる脂肪酸の炭素数が7未満あるいは20以上であると、その場合のエステル化生成物は本発明でいうところの乳化安定化機能を発揮しにくくなる。最大の乳化安定化機能を発現するのは、脂肪酸として炭素数が16〜18のものを用いたときである。
【0011】
また二塩基酸としては、炭素数が9〜20の脂肪族飽和状二塩基酸であることを必須とする。不飽和結合を有するものや炭素数が8未満の二塩基酸を用いた場合のエステル化生成物では乳化安定化機能が低下し、また炭素数が21を超える二塩基酸は工業的原料として入手しにくい。したがって本発明では、ノナン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の二塩基酸を単独または任意に混合して使用すればよい。これらのうち望ましいものはエイコサン二酸である。
【0012】
前記原料は適宜に組み合わせて用いることができ、本発明のエステル化生成物を得るには、次に述べる方法がある。すなわち、グリセリン重合物、脂肪酸および二塩基酸を同時にオリゴエステル化反応するか、グリセリン重合物と脂肪酸とをまずエステル化せしめ、これをさらに二塩基酸とオリゴエステル化反応あるいはエステル交換反応させるか、グリセリン重合物と二塩基酸とをまずオリゴエステル化せしめ、次いでこれを脂肪酸とエステル化反応させる方法がある。これらの方法のうち、好ましくはグリセリン重合物と二塩基酸とをまずオリゴエステル化せしめ、次いでこれを脂肪酸とエステル化反応させる方法が、同じ比率で合成を試みた場合にも最も好ましい結果が得られる。
【0013】
二塩基酸はグリセリン重合物に対して30〜50%のモル比で使用することが重要である。30モル%未満では通常の乳化剤の機能に近くなり、本発明で特徴的な乳化安定化機能が発現しなくなり、50モル%超過すなわち平均オリゴマー度が二量体を超えた場合には単なる高粘性またはワックス状の油剤として働くようになる。
【0014】
エステル化反応は、前記各原料を適当な反応容器に仕込み、酸、アルカリまたは金属触媒の存在下あるいは非存在下、好ましくは該反応に不活性な有機溶媒または/および気体中で、100〜240℃にて数時間〜20時間程度まで、副生する水を除去しながら行う。またエステル交換反応は、金属アルコラートまたはリパーゼ等の触媒を用い、20〜140℃にて数十分〜数十時間行う。前記反応経過は、反応系中の酸価あるいは遊離状態の酸成分の組成を測定することにより評価でき、これにより反応の終了時点を決定すればよい。
【0015】
なお、エステル化反応を完全に終結させずに遊離のカルボキシル基をオリゴエステル構造中に残すことも可能だが、本発明ではほぼ完全にエステル基とすることが望ましい。エステル化反応物またはエステル交換反応物は、未反応のグリセリン重合物、脂肪酸および/または二塩基酸を含むことがあり、この他に副生する脂肪酸、比較的低分子量の部分エステル化物等が混在することがあるため、要すればこれらを水洗、アルカリ脱酸、シリカゲル等の吸着剤処理等の公知の方法で分離除去し、さらに要すれば脱色、脱臭処理を施して精製する。
【0016】
かくして得られる本発明のエステル化生成物は、グリセリン重合物、脂肪酸および二塩基酸が直鎖状または/および分枝状にオリゴエステル化された混合物であり、常温において高粘性液体〜ワックス状となる。なお、エステル化生成物の残存水酸基の数は、原料であるグリセリン重合物の水酸基の数の半分以上75%まで残存させることを必須とする。残存水酸基数が出発グリセン重合物の半分未満になると、本発明で対象とする水中油型乳化組成物において乳化性がほとんど発現されず、あるいは溶解性や分散性が著しく劣り、乳化物は容易に分離する。水酸基数の残存率が75%を超えた場合、水中油型の乳化性は保持しているものの、保油能力が低下し、乳化物の上部への油分分離が認められるようになる。エステル化生成物において、出発原料のひとつであるグリセリン重合物の全水酸基数の55〜75%が残存しているとき、水中油型乳化組成物における乳化安定性がもっとも優れる。本発明のエステル化生成物の水酸基価は、原料の配合割合すなわちグリセリン重合物の反応モル当量と脂肪酸および二塩基酸の各反応モル当量とから容易に算出でき調節できる。また反応温度、反応時間、反応の進行にともなう生成水の量によっても調節可能である。
【0017】
本発明のエステル化生成物は、これを単独あるいは任意に混合して、親油性物質および水、必要に応じて親水性物質(多価アルコール、糖類等)を主体とする混合物に添加して極めて安定な水中油型乳化組成物を形成することができる。ここに、親油性物質としては流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素、大豆油、ゴマ油、米胚芽油、サフラワー油、パーム油、オリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、月見草油、ヒマシ油、ミンク油、牛脂等の動植物油脂やその硬化油や分別油、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、ライスワックス等のワックス類、イソプロピルミリステート、トリオクタン酸グリセリド、ジオクタン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールエステル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸イソオクチル等の合成エステルやシリコーンオイル等を例示することができる。
【0018】
前記親油性物質に対して本発明のエステル化生成物を0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%添加し、要すれば約80℃程度に加温して攪拌・溶解した油相を、常温あるいは加温した状態で攪拌下の水相に添加し乳化させる。あるいは、本発明のエステル化生成物を水相に添加する、さらには本発明のエステル化生成物を油相及び水相の両相にともに添加する方法も可能である。乳化方法としては上記のような通常の乳化法のほか、ショ糖、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ソルビトール等のアルコール類に本発明のエステル化生成物を添加したのち、油相を加えるD相乳化法や転相乳化法も用いることができる。このようにして得られた水中油型乳化組成物は常温において油分や水分の分離をおこしにくく極めて安定な処方物であり、系全体が均一状態を保持する。
【0019】
なお、本発明の乳化安定化機能を有する油剤を含む乳化物組成物は、油分と水分と前記エステル化生成物の単独または混合物とのみを配合してなるものが基本であるが、本発明の目的を逸脱しない範囲で、これにさらに適量の従来既知の乳化剤、例えばポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン付加アルキルエーテル、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン付加アルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン付加アルキルエステル、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン付加ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、脂肪族アルコールリン酸エステル塩、脂肪酸アミドスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩等の陰イオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤や両性界面活性剤等を配合することができる。その他、必要に応じて脂肪酸、アルコール類、無機塩類、ワックス類、高分子化合物、顔料、色素、香料等の成分を配合することも可能である。
【0020】
【実施例】
以下の合成例及び実施例において、%は重量基準である。
合成例1
攪拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取付けた四ツ口フラスコに、デカグリセリン150g(0.2モル、ただし固形分換算)およびエイコサン二酸27.4g(0.08モル)を仕込み、触媒としてp−トルエンスルホン酸を対仕込量0.1%、還流溶媒としてキシレンを対仕込量5%加え、窒素ガス気流中、180〜200℃で、酸価の低下が認められなくなるまで5時間、エステル化反応を行わせた。さらに室温まで冷却後、ステアリン酸284g(0.6モル)を加え、さらに反応を進める。酸価の低下が認められなくなるまで6時間、エステル化反応を行い、該反応終了後、白土および活性炭を各1%加え、減圧下にて脱色処理してろ過、さらに水蒸気吹き込みによる脱臭処理を施して、本発明のエステル化生成物(試料No.1とする)360gを得た。このものは酸価:0.5、水酸基価:278であった。
【0021】
比較合成例1
原料として、デカグリセリン150g(0.2モル、ただし固形分換算)、エイコサン二酸44.5g(0.13モル)およびステアリン酸170.4g(0.6モル)を用いるほかは同様に操作、処理し、エステル化生成物(試料No.9)410gを得た。このものは酸価:0.6、水酸基価:243であった。
【0022】
合成例2〜8、比較合成例2〜6
前記同様の方法により各種ポリグリセリン、脂肪酸および二塩基酸を組み合わせて合成例(試料No.2〜8)、比較合成例(試料No.10〜14)のエステル化生成物を得た。
【0023】
エステル化反応の原料配合およびエステル化生成物の性状、分析値をまとめて表1、表2に示す。なお、表中の原料は次のものを用いた。また、原料配合における数値はモル数を示す。
デカグリセリン:阪本薬品工業(株)製、商品名「ポリグリセリン#750」
ヘキサグリセリン:阪本薬品工業(株)製、商品名「ポリグリセリン#500」
テトラグリセリン:阪本薬品工業(株)製、商品名「ポリグリセリン#310」
エイコサン二酸:岡村製油(株)製、商品名「SL−20」
ベヘン酸:新日本理化(株)製、商品名「ベヘニン酸」
ステアリン酸:花王(株)製、商品名「LUNAC S98」
イソステアリン酸:日産化学工業(株)製、商品名「イソステアリン酸N」
オレイン酸 :日本精化(株)製、商品名「パモリン#100」
n−オクタン酸 :新日本理化(株)製、商品名「カプリル酸」
【0024】
【表1】
表1 合成例の原料配合、分析値
【0025】
【表2】
表2 比較合成例の原料配合、分析値
【0026】
実施例1〜10、比較例1〜9(通常の水中油型乳化機能の評価)
合成例1〜7および比較合成例1〜6で得られたエステル化生成物について水中油型乳化組成物における能力を以下の方法により評価した。すなわち、合成例1〜7で得たエステル化生成物(試料No.1〜7)のいずれか1gを80℃の水59gに添加、攪拌して均一に溶解または分散させ、さらにホモミキサー(特殊機化工業(株)製、TKホモミキサー)を用いて3000rpm の攪拌下で、80℃に加熱したトリオクタン酸グリセリル(日清製油(株)製、商品名「TIO」)40gを徐々に添加した。添加終了後さらに5分間攪拌を行った後、攪拌を続けながら30℃まで冷却し、水中油型乳化物を調製した。得られた乳化物を目盛付きシリンダーに入れ、調製直後、および20℃にて24時間保存時の状態を観察した(実施例1〜8)。この結果を表3に示す。また、比較合成例1〜6で得たエステル化生成物(試料No.9〜14)および既存の乳化剤各種についても同様にして乳化物を調製し乳化能評価を行った(比較例1〜6および比較例7〜9)。この結果を表4および表5に示す。さらに、前記既存乳化剤と本発明のエステル化生成物(試料No.1)とを併用した場合についても同様にして乳化物を調製し乳化能評価を行った(実施例9、10)。この結果を表6に示す。
【0027】
なお、表3〜表5において評価指標は次の基準および計算方法によるものである。
(乳化状態)
◎・・・・全体に均一な乳化物
○・・・・表面に若干油滴が認められる乳化物
△・・・・表面にかなり油滴が認められる乳化物
×・・・・ほとんど乳化せず
(離水率)
【0028】
【表3】
表3 エステル化生成物の乳化安定化機能評価
【0029】
【表4】
表4 エステル化生成物の乳化安定化機能評価
【0030】
【表5】
表5 従来の乳化剤の乳化安定化機能の評価
注)*:脂肪酸を予め油相に溶解し、乳化物を調製する工程で水酸化ナトリウムによりせっけん化した。
〔使用原料〕
ポリオキシエチレンソルビタンステアレート(POE):花王(株)製、商品名「レオドールTW−S120」
ソルビタンモノオレート:日清製油(株)製、商品名「コスモール82」
脂肪酸:花王(株)製、商品名「LUNAC S98」
グリセリン脂肪酸エステル(MG):理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムS100」
セタノール:花王(株)製、商品名「カルコール68」
【0031】
【表6】
表6 従来の乳化剤との併用による乳化安定化機能評価
注)*および使用原料:表5の注釈と同じ。
乳化状態を表す記号、離水率:表3と同じ。
【0032】
表3〜表6に示したデータから、本発明のエステル化生成物(試料No.1〜8)は、従来の乳化剤を使用して得た乳化状態をさらに安定化させ、該乳化状態を長期に維持できることが明らかになった。これは、比較合成例で調製したエステル化生成物(試料No.9〜14)や従来既知の乳化剤を使用して作成した水中油型乳化物の場合に比べて顕著な効果があり、また従来既知の乳化剤を使用して作成した水中油型乳化物の乳化状態を安定化させる乳化安定剤として本発明の生成物が有用であることを意味する。
【0033】
実施例11〜14(ゲル乳化法による水中油型乳化機能の評価)
合成例1、3、5および7で得たエステル化生成物(試料No.1、3、5および7)のいずれか1gをグリセリン10g、水2gと80℃で混合し、さらにディスパーミキサー(特殊機化工業(株)製)2000rpm の攪拌下で、80℃に加熱したトリオクタン酸グリセリル(日清製油(株)製、商品名「TIO」)30gを徐々に添加した。添加終了後5分間攪拌を行いゲル状とした後、さらに80℃に加熱したイオン交換水57gを徐々に攪拌下で添加した。その後攪拌しながら30℃まで冷却し、水中油型乳化物を得た。得られた乳化物を目盛付きシリンダーに入れ、調製直後、および20℃にて10日後の状態を観察した。この結果を表7に示す。
【0034】
【表7】
表7 エステル化生成物の乳化安定化機能評価
注)乳化状態を表す記号、離水率:表3と同じ。
乳化粒子径:平均粒子径を表示。COULTER 社製、N4型
サブミクロン粒子分析装置で測定。
表7のデータから、本発明のエステル化生成物は、ゲル乳化法による乳化が可能であり 非常に均一で安定な水中油型乳化物を形成することが確認された。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、グリセリン重合物と、炭素数8〜18の脂肪酸と、炭素数9〜20の脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物であって、グリセリン重合物:脂肪族飽和二塩基酸=1:0.3〜0.5(モル比率)であり、かつ前記グリセリン重合物の水酸基数の1/2から3/4を残存させた部分エステル化生成物からなる水中油型乳化組成物の乳化安定剤を提供できる。この乳化安定剤を水中油型乳化系の処方中に少量添加することで、均一かつ非常に安定性の高い水中油型乳化組成物を得ることができる。また本発明のエステル化生成物は、既知の乳化剤に添加して非常に安定な乳化状態を形成するだけではなく、単独で用いても良好な乳化状態を作ることが可能であり、安全性も極めて高い。かかる乳化安定化機能を有する本発明のエステル化生成物は、化粧品、医薬品等の身体に関わる分野のほか一般工業用としても広範囲の産業の乳化製品に応用することができ、極めて有用である。
Claims (3)
- (1)デカグリセリンと、(2)炭素数8〜18直鎖脂肪酸、不飽和脂肪酸および分枝脂肪酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸と、(3)エイコサン二酸との部分エステル化生成物からなる乳化安定化剤であって、エステル化反応の際の仕込み比が(1)の1モルに対して(3)が0.4モルであり、(1)の水酸基の数のうち50〜75%を残存させた部分エステル化生成物からなる乳化安定化剤。
- 脂肪酸が、ステアリン酸、n−オクタン酸、イソステアリン酸及びオレイン酸からなる群から選ばれるものである請求項1に記載の乳化安定化剤。
- 請求項1又は2に記載の乳化安定化剤、親油性物質及び水を含有する水中油型乳化物であって、前記親油性物質に対する前記乳化安定化剤の含量が1〜5重量%である水中油型乳化物。
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