JP6043940B2 - リンゴの皮の色素抽出方法、抽出した色素素材の製造法、色素素材及び当該色素素材を利用した食品 - Google Patents

リンゴの皮の色素抽出方法、抽出した色素素材の製造法、色素素材及び当該色素素材を利用した食品 Download PDF

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Description

本発明は、リンゴの皮の色素抽出方法、抽出した色素素材の製造法、色素素材及び当該色素素材を利用した食品に関するものであり、更に詳しくは、天然色素として有用なアントシアニン系の赤色色素を多く含むリンゴ果皮から効果的に当該色素を抽出する方法、抽出した色素素材の製造方法、その色素素材及び当該色素素材を利用した食品に関するものである。本発明は、リンゴ果皮に含まれる天然色素のアントシアニン系色素の抽出と製造方法、当該色素素材及びその用途に関する新技術・新製品を提供するものである。
リンゴは、その果皮にアントシアニン系の赤色色素を含むことが知られているが、リンゴを加工利用する場合は、主にリンゴの果肉のみを利用するため、果皮の色素は利用されずに廃棄されることが多い。そのため、リンゴの加工品は、無色、あるいは果肉の果汁の白濁した色を有するため、外見だけではリンゴの加工品であることが消費者にアピールできない、あるいは色素添加物などを添加する必要がある、という課題が有る。
リンゴの果肉又は果皮からアントシアニン系色素を抽出する発明としては、先行技術として、例えば、リンゴ赤色色素とその製造方法、並びに赤色色素画分(他のポリフェノールを含む)を有効成分とする酸化防止剤などの用途(特許文献1)、が提案されている。しかし、当該発明は、野生種のリンゴからポリフェノール成分を抽出することを目的にしているため、抽出対象がリンゴの果皮だけでなく果肉も対象となっていて、主に果肉に含まれる色素の酸化を抑制するために、亜硫酸を添加して粉砕をしている。また、色素抽出には、エタノールやメタノールというアルコールを抽出溶媒としている。
そのため、上記発明では、減圧濃縮によりアルコールを留去した後に、濃縮液を有機溶媒で分配及び濾過して清澄果汁を得ている。このため、抽出方法が煩雑となり、大量生産する産業規模での実用化のためには、大量のアルコールを使用することが必要とされる。そのため、危険を伴い、更に、食品として利用できない溶媒を使用していることから、色素素材として食品に利用するためには、有機溶媒の除去工程も必要となり、少なくてもこのままでは、実用化は難しいと考えられる。
次に、従来、発表されている既存の技術としては、例えば、リンゴ果皮の色素抽出法及び抽出色素の利用法(非特許文献1)、が提案されている。当該方法では、以下の表1に示した配合で、エタノールや酢酸、クエン酸などの有機酸を用いてリンゴの皮から色素を抽出する技術が開発されているが、抽出は、リンゴ果皮を、室温で一昼夜、皮の3倍量の溶媒中に浸漬するもので、抽出時間が長く、抽出効率も、抽出溶媒を一定にしても、品種ごとの抽出効率が一定でない。
また、最も抽出液の濃度が高い溶媒は、10%エタノール+10%酢酸溶液であり、用途によっては、エタノールの除去が必要である。更に、同一の抽出溶媒を用いた品種別の果皮からの抽出効率も一様でない。抽出した色素溶液を白菜や大根の漬物に添加した場合、5%酢酸溶液や10%クエン酸溶液抽出色素溶液、それらの8倍濃縮色素溶液を用いても、着色にむらがあり、中心まで十分に着色することができない。リンゴ果汁においては、添加量を増やすと着色がやや濃くなるが、酸味が強く味のバランスが崩れる。
以上のことから、当技術分野においては、リンゴの果肉及び果皮のうち、特に、リンゴの皮から簡便に効率よく色素を抽出でき、食品加工に利用できるアントシアニン系の赤色色素を得る新しい技術を開発することが強く求められていた。
特開平8−319433号公報
農林水産省食品総合研究所「平成7年度 食品試験研究成績・計画概要集(公立編)」第489−490頁(平成7年9月)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、従来の技術より短時間の抽出で、抽出効率が高い、リンゴ果皮を対象とした新しい色素抽出方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、食品に利用できる有機酸の1%溶液のみを抽出溶媒とし、かつ抽出効率の高い新しい抽出方法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。尚、本明細書において、「%」とは、質量百分率のことを意味する。
本発明は、リンゴの皮に含まれるアントシアニン系色素を、効率よく、簡便に抽出、製造する方法、食品用として利用できる色素素材及び当該色素素材を利用した加工食品を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)リンゴ果皮由来食品用赤色色素を抽出する方法であって、1)リンゴの皮に含まれる512nmに吸光度(OD値)を有するリンゴ果皮色素をアルコールを含まない抽出溶媒として有機酸溶液を用いて抽出すること、2)上記1)の抽出の際に、リンゴの皮を1%(質量百分率、以下同様)以下の有機酸溶液で加熱抽出処理した後、ろ過してリンゴ果皮の色素を含む色素抽出液を得ること、3)有機酸溶液として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、又は酢酸の水溶液を用いること、4)上記1)〜3)の工程により、5℃で静置抽出した色素抽出液に比べて耐熱性に優れている色素抽出液を得ること、を特徴とするリンゴ果皮由来食品用色素の抽出方法。
(2)リンゴの皮を、1%以下の有機酸溶液で50〜120℃の温度条件で4〜60分の加熱時間で加熱処理する、前記(1)に記載の抽出方法。
(3)抽出液を予めペクチン分解酵素で処理した後、減圧加熱濃縮又は加熱濃縮して粘度が10mp・s以下の濃縮色素液を得る、前記(1)又は(2)に記載の抽出方法。
(4)抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、加熱濃縮して色素粉末用濃縮色素液を得る、前記(1)又は(2)に記載の抽出方法。
(5)前記(1)又は(2)に記載の抽出方法を用いて、リンゴ果皮由来食品用赤色色素素材を製造する方法であって、1)リンゴの果皮に含まれる512nmに吸光度(OD値)を有するリンゴ果皮色素をアルコールを含まない抽出溶媒として有機酸溶液を用いて抽出すること、2)上記1)の抽出の際に、リンゴの果皮を1%以下の有機酸溶液で加熱抽出処理した後、ろ過してリンゴ果皮の色素を含む色素抽出液を得ること、3)有機酸溶液として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、又は酢酸の水溶液を用いること、4)上記1)〜3)の工程により、5℃で静置抽出した色素抽出液に比べて耐熱性に優れている色素抽出液からなるリンゴ果皮由来食品用色素素材を製造することを特徴とするリンゴ果皮色素素材の製造方法。
(6)抽出液を予めペクチン分解酵素で処理した後、減圧加熱濃縮又は加熱濃縮して粘度が10mp・s以下の濃縮色素液を得る、前記(5)に記載のリンゴ果皮色素素材の製造方法。
(7)抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、加熱濃縮して色素粉末用濃縮色素液を得る、前記(5)に記載のリンゴ果皮色素素材の製造方法。
(8)抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、直接、凍結乾燥、通風乾燥、又は、噴霧乾燥により乾燥させて色素粉末を得る、前記(5)に記載のリンゴ果皮色素素材の製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、リンゴ果皮の赤色色素の抽出方法であって、リンゴの皮に含まれる512nmに吸光度(OD値)を有するリンゴ果皮の色素を、アルコールを含まない抽出溶媒を用いて抽出する方法であって、リンゴの皮を1%以下の有機酸溶液で加熱処理した後、ろ過して上記色素を含む抽出液を得ることを特徴とするものである。
本発明では、上記抽出方法において、リンゴの皮を、食品利用に適用できる1%以下の有機酸溶液で、50〜120℃の温度条件で、4〜60分の加熱時間で加熱処理すること、有機酸液として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、又は酢酸の水溶液を用いること、抽出液を予めペクチン分解酵素で処理した後、減圧加熱濃縮又は加熱濃縮して濃縮色素液を得ること、抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、加熱濃縮して濃縮色素液を得ること、を好ましい実施態様としている。
また、本発明は、上記の抽出方法を用いて、リンゴ果皮色素素材を製造する方法であって、リンゴの皮に含まれる512nmに吸光度(OD値)を有するリンゴ色素素材をアルコールを含まない抽出溶媒を用いて抽出する工程と、その際に、リンゴの皮を1%以下の有機酸溶液で加熱処理した後、ろ過して色素を含む抽出液を得る工程により、上記リンゴ色素素材を製造することを特徴とするものである。
本発明では、上記製造方法において、抽出液を予めペクチン分解酵素で処理した後、減圧加熱濃縮又は加熱濃縮して濃縮色素液を得ること、抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、加熱濃縮して濃縮色素液を得ること、抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、直接、凍結乾燥、通風乾燥、又は噴霧加熱乾燥により乾燥させて色素乾燥粉末を得ること、を好ましい実施態様としている。
更に、本発明は、上記のいずれかに記載の製造方法により製造された、512nmに吸光度(OD値)を有する色素を含む抽出液、その濃縮液又は乾燥物からなるリンゴ果皮由来の食品用色素素材、並びに当該リンゴ果皮由来食品用色素素材を利用した加工食品の点に特徴を有するものである。
本発明では、食品に適用できる有機酸の1%溶液のみを抽出溶媒とし、抽出法は、リンゴ果皮に1%有機酸を加えて加熱抽出を用いることで、従来の技術より短時間の抽出で、抽出効率の高い色素抽出方法を確立した。
具体的には、リンゴ(秋星、ふじ、紅玉などのすべてのリンゴ品種)の皮に、1%有機酸溶液、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸など食品利用に認可されているすべての有機酸の溶液を添加し、1時間以内で加熱(20−120℃)抽出するものである。
抽出液を減圧濃縮する場合は、ペクチン分解酵素処理することで、減圧濃縮時の突沸を抑制して、効率よく減圧濃縮して濃縮液を得ることができる。また、ペクチン分解酵素の有無にかかわらず抽出液を加熱濃縮して濃縮液を得ることができる。更に、色素粉末を得るためには、抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、直接、凍結乾燥、通風乾燥、又は噴霧乾燥することで吸湿性の低い色素粉末を得ることができる。
本発明を開発するに当たり、以下の項目、すなわち、1)加熱抽出の有効性の検討、2)前処理としての緩慢冷解凍の有効性の検討、3)有機酸の種類の検討、4)加熱抽出条件(加熱時間、皮の添加量、抽出液の調製方法)の検討、5)抽出した色素の特性の検討、について各検討を実施した。
そこで、まず、1)加熱抽出の有効性、2)前処理としての緩慢冷解凍の有効性、3)有機酸の種類について検討するために、有機酸の1%溶液を用いて、加熱抽出の有効性を検討した。検討した条件は、次のとおり、すなわち、前処理:−5℃での緩慢冷解凍の有無、1%有機酸溶液:乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、加熱処理:100℃加熱:沸騰水浴中で15分間加熱、120℃加熱:オートクレーブで15分間加熱、とした。
抽出は、リンゴの皮3gと1%有機酸溶液30mlを混合して加熱処理し、抽出液は、加熱処理したリンゴの皮の入った溶液をろ過して得るとともに、ろ液の評価は、512nmでの吸光度(OD値)と写真撮影で行った。
その結果、加熱条件では、120℃より100℃による抽出液の方が、抽出した色素の色調が濃いこと、有機酸の種類では、乳酸>クエン酸>リンゴ酸>酢酸の順で色素の抽出効率が高かったこと、リンゴの皮を事前に緩慢冷解凍することによる色素の抽出効率への影響は無いこと、が分かった。以上の結果及び加工食品への利用適性から、リンゴの皮の色素抽出条件を1%クエン酸溶液で100℃加熱の条件で検討した。
まず、加熱抽出条件(加熱時間、皮の添加量、抽出液の調製方法)について、加熱時間と、皮の添加量について検討した。加熱時間は、4〜60分、好ましくは8〜30分、8分と23分で得られた抽出液の色調が濃かったが、15分加熱で色調が低下していることを考慮して、より好ましくは23分前後、すなわち20〜30分であった。
皮の添加量は、1%クエン酸30ml当たり3〜15gの範囲で検討した添加量の中では、1%クエン酸30ml当たり15gの条件で得られた抽出液の色調が最も濃かった。添加量を増やすと、皮に抽出液が吸収されること、抽出液にペクチンなどの粘質物が抽出されていることから、ろ紙によるろ過が困難で抽出液の量が低下する傾向であった。そのため、皮の添加量は、1%クエン酸30ml当たり5〜15gで、15gが限界と考えられた。
抽出のスケールを2倍にして加熱抽出後に抽出液と皮をジューサーで粉砕し、15000回転で15分遠心分離した上澄みを抽出液として回収した。抽出液の回収率は、1%クエン酸溶液30ml、皮添加量15gの時に45%であったが、これが、55.8%に向上した。また、遠心分離で得られた沈殿に再度1%クエン酸溶液を60ml添加して同様の抽出を行ったところ、抽出液に粘性がなく、ろ紙で効率よくろ過できた。
次に、抽出した色素の特性については、抽出前の1%クエン酸溶液のpHは、2.21であったが、1%クエン酸溶液30mlにリンゴの皮3g添加では、pHが2.5、上記抽出条件で得られた色素溶液のpHは、3.11であった。これは、リンゴの皮から抽出された成分によってpHが若干アルカリ側に移行したと考えられた。同じ色素でも濃度が薄いと、pHが高くなるにつれて色が薄くなった。しかし、濃度が濃いと色の変化が少なかった。
次に、抽出液の濃縮について検討した。色素濃度の濃い抽出液は、ペクチン含量も高いため粘性が高いことが分かった。そのため、そのまま減圧濃縮すると抽出液が突沸して濃縮が困難であった。そこで、これを改善するために抽出液をペクチン分解酵素で反応させて抽出溶液の粘性が低下させるために、酵素濃度、酵素の種類の検討を行った。
酵素濃度については、抽出液の粘度を低下させるための酵素処理の酵素濃度を検討した。ペクチナーゼSSで酵素処理した抽出液を濃縮後に粘度をB型粘度計で測定した。酵素濃度0.005〜0.02%の何れで処理した場合でも抽出液の粘度が無処理区である対照の粘度に比べ1/10以下に低下した。
この結果より、抽出液の粘度を低下させるための酵素処理濃度は、0.005%で十分であると判断した。また、酵素の種類については、確立した酵素処理条件で粘度低下出きる酵素の種類を検討するために、ペクチナーゼSS、スミチームAP2、可溶性ペクチナーゼを用いて酵素処理した抽出液を濃縮前と後に粘度をB型粘度計で測定し、抽出液の濃縮時の突沸状況、濃縮時加熱温度を評価した。
その結果、検討した3種類の酵素剤ともに0.005%濃度で15分処理においても無処理の対照の粘度に比べ半分以下の粘度に低下した。抽出液の減圧加熱濃縮の状況は、無処理の対照においては、濃縮時の突沸が頻繁に起こるため加熱温度を40℃から60℃へ上昇させなければならなかった。
これに対して、酵素処理した抽出液は、検討した全ての酵素処理条件においても、減圧加熱濃縮の温度を40℃に維持しても、突沸が軽く2回起こっただけで、対象に比べ効率よく濃縮することが可能であった。また、濃縮後の抽出液の粘度は、対照では、濃縮前の5倍以上に上昇するため、色素液として利用しにくいことが分かった。一方、酵素処理した抽出液は、粘度がすべて10mpa・s以下であり、色素液として利用しやすいことが分かった。
しかし、抽出液を凍結乾燥する場合は、ペクチン分解酵素処理の有無で乾燥物の収量を比較したところ、酵素処理した溶液の方が少なかった。また、酵素処理した色素乾燥粉末は、酵素処理しないものに比べて吸湿性が高くなり扱いにくくなるとともに、水に対する溶解性が低下した。
以上のことから、リンゴの皮の抽出液を濃縮して色素液として利用する場合は、ペクチン分解酵素処理が有効であるが、凍結乾燥、通風乾燥、噴霧加熱乾燥などで抽出液を乾燥させて色素乾燥粉末として利用する場合は、ペクチン分解酵素処理をせずに、直接、乾燥することが有効であることが分かった。
上記の技術を品種「ふじ」に応用できるか調べるために、ふじ皮の色素抽出方法について検討した。その結果、対照の蒸留水に比べて1%リンゴ酸、1%乳酸、1%クエン酸のうち、何れの有機酸及び加熱温度においても、色素の抽出効率は高かった。また、加熱温度20〜120℃のうち、どの有機酸においても、加熱温度によって、抽出効率が異なった。50〜100℃で抽出効率は高いが、リンゴ酸とクエン酸は、70℃が最も抽出効率が高く、乳酸は、100℃が最も抽出効率が高かった。
加熱抽出時間については、加熱時間4〜60分のうち、どの有機酸においても抽出時間によって抽出量が異なり、何れの有機酸も、抽出時間8分が最も抽出量が高かった。有機酸による抽出効率の差は、殆ど無かった。皮の添加量については、何れの有機酸においても、皮の添加量が多いほど色素の抽出量は向上した。また、同じ皮の添加量においては、5gまでは、乳酸>クエン酸>リンゴ酸の順で抽出効率が高かったが、15g以上では、クエン酸>乳酸>リンゴ酸の順で抽出効率が高かった。何れの条件においても、皮の添加量は、20gが良好であった。
次に、上記技術を品種「紅玉」に応用できるか調べるために、紅玉皮の色素抽出方法について検討した。その結果、対照の蒸留水に比べて1%リンゴ酸、1%乳酸、1%クエン酸のうち、何れの有機酸及び加熱温度においても、色素の抽出効率は高かった。また、加熱温度20〜120分のうち、どの有機酸においても、加熱温度によって、抽出効率が異なった。乳酸とクエン酸は、70℃が最も抽出効率が高かったが、リンゴ酸は、100℃が最も抽出効率が高かく、どの条件よりも高かった。
加熱抽出時間については、加熱温度4〜60分のうち、各有機酸で最も抽出量が多い抽出時間が異なり、リンゴ酸で23分、乳酸で30分、クエン酸で15分であった。最も抽出量が多いのは、リンゴ酸の23分であった。皮の添加量については、添加量3〜20gのうち、1%リンゴ酸、1%乳酸、1%クエン酸の何れの有機酸においても、果皮の添加量が多いほど色素の抽出量は向上した。また、どの添加量においてもリンゴ酸が最も高い抽出効率を示した。いずれの条件においても果皮の添加量は、20gが良好であった。
本発明では、抽出液を予めペクチン分解酵素で処理した後、減圧加熱濃縮又は加熱濃縮して濃縮色素を得ることができるが、この場合、抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、加熱濃縮して濃縮色素を得ることができる。本発明では、ペクチン分解酵素による処理の有無と、濃縮方法との関係について検討した。
その結果、各濃縮方法で濃縮した色素抽出液について、吸光度(OD値)で比較すると、抽出前の原液に比べ、いずれの濃縮法でも吸光度が向上したが、その値は、減圧濃縮>加熱濃縮(酵素無)>加熱濃縮(酵素有)の順であった。減圧濃縮と加熱濃縮(酵素無)は、原液に比べ、ほぼ10倍以上の値であったが、加熱濃縮(酵素有)は、約8倍程度にとどまった。
また、原液との色差(ΔE)については、減圧濃縮>加熱濃縮(酵素無)>加熱濃縮(酵素有)の順で色差の値が小さく、減圧濃縮が最も色調が近かった。しかし、加熱濃縮(酵素無)も、色差が11程度で、視覚的にはほとんど違いが認められなかった。以上のことから、減圧濃縮だけでなく、加熱濃縮(酵素無)の濃縮方法でも、十分利用可能な色素液が得られることが分かった。
次に、加熱抽出による色素溶液には、耐熱性に優れているという優位性がある。すなわち、加熱抽出による色素溶液の優位性を評価した結果、抽出した色素の吸光度による濃度は、静置抽出で最も濃いものと比べても、加熱抽出した色素液の吸光度は、約2倍であった。平均値での比較では、加熱抽出した色素液の吸光度の方が、静置抽出1:2に比べて、2.5倍以上濃い濃度であり、また、抽出に必要な液量も、加熱抽出液が最も少なく効率的であることが分かった。
次に、加熱抽出液の5倍希釈液と静置抽出液を用いて、耐熱性を評価した結果、各色素抽出液の加熱後の色調を比較すると、100℃、120℃のどちらの場合でも、静置抽出に比べ、加熱抽出(5倍希釈)の方が、退色が約半分程度に抑えられ、加熱抽出した色素抽出液は、静置抽出した色素抽出液に比べ、耐熱性に優れていることが分かった。
従来技術では、リンゴ果肉又は果皮からアントシアニン色素を抽出する方法が幾つか提案されているが、抽出対象が果皮だけではなく果肉も対象となっているため、主に果肉に含まれる色素の酸化を抑制するために、亜硫酸を添加して粉砕をしたり、色素抽出には、エタノールやメタノールなどのアルコールを抽出溶媒として用いているため、食品利用の用途に用いるためには、これらの成分を完全に除去する工程が不可欠であった。
これに対して、本発明は、リンゴ果皮のみを抽出対象とし、しかも、アルコールを含まない抽出溶媒である、食品に適用可能な1%以下の有機酸溶媒を使用し、所定の条件で加熱処理するのみで、リンゴの品種によってもほぼ一定の抽出効率で、簡便な工程で、短時間にリンゴ果皮色素を抽出することが可能な新しいリンゴ果皮色素材の抽出、製造方法と、食品利用が可能な色素素材、及び当該リンゴ果皮由来食品用色素素材を利用した加工食品を提供するとともに、抽出色素素材を大量生産するための実用化技術を提供するものである。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)リンゴの果皮に含まれるアントシアニン系色素を効率よく簡便に抽出することを可能とする色素抽出方法を提供することができる。
(2)食品用として利用できるリンゴ果皮から抽出した色素素材を提供することができる。
(3)上記抽出方法は、抽出時間が短かく、リンゴの品種ごとの抽出効率がほぼ一定な抽出方法として有用である。
(4)上記方法は、抽出方法が簡便で、抽出色素素材を大量生産する実用化技術として有用である。
(5)食品利用に適用可能な抽出溶媒を使用しているので、食品用の色素素材として有用である。
(6)抽出液を、直接、凍結乾燥、通風乾燥又は噴霧乾燥することで、吸湿性の低い色素粉末を得ることができる。
(7)抽出した色素溶液を食品に添加した場合、着色にむらがなく、添加量を増やしても、従来材に見られるような酸味が強くなったり、味のバランスが崩れることがない。
抽出方法別秋星皮色素の抽出効率を示す。 秋星皮の色素の加熱抽出時間の検討結果を示す。 色素抽出時の秋星皮の添加量の検討結果を示す。 色素抽出時の秋星皮の添加量の検討結果を示す。 濃度別酵素で処理した抽出液の濃縮後粘度を示す。 酵素処理抽出液の粘度(濃縮前)を示す。 酵素処理抽出液の粘度(濃縮後)を示す。 抽出温度の異なる1%有機酸溶液別リンゴ「ふじ」果皮からの色素抽出効率を示す。 抽出時間の異なる1%有機酸溶液別リンゴ「ふじ」果皮からの色素抽出効率を示す。 皮の添加量の異なる1%有機酸溶液別リンゴ「ふじ」果皮からの色素抽出効率を示す。 抽出温度の異なる1%有機酸溶液別リンゴ「紅玉」果皮からの色素抽出効率を示す。 加熱抽出時間の異なる1%有機酸溶液別リンゴ「紅玉」果皮からの色素抽出効率を示す。 皮の添加量の異なる1%有機酸溶液別リンゴ「紅玉」果皮からの色素抽出効率を示す。 濃縮処理別色素液の吸光度を示す。 濃縮処理別色素液の10倍希釈液と抽出原液との色差を示す。 同じ果皮から静置法で3回抽出を繰り返した場合の512nm吸光度の推移を示す。加熱法は1回目と2回目の抽出液を混合したものを測定した。 抽出方法及び希釈倍率による色素抽出液の512nm吸光度を示す。 抽出法の違いによる加熱前後の色差(ΔE*ab値)を示す。各抽出液の加熱前後のL*a*b*値を基準として、加熱後のL*a*b*値を算出した。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、秋星皮の色素抽出方法について調べた。有機酸の1%溶液を用いて、加熱抽出の有効性を検討した。検討した条件は、1)前処理:−5℃での緩慢冷解凍の有無、2)1%有機酸溶液:乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、3)加熱処理:20〜120℃加熱で、100℃加熱:沸騰水浴中で15分間加熱、120℃加熱:オートクレーブで15分間加熱、とした。抽出は、秋星の皮3gと1%有機酸溶液30mlを混合して加熱処理した。抽出液は、加熱処理した秋星の皮の入った溶液をろ過して得た。ろ液の評価は、512nmでの吸光度(OD値)と写真撮影で行った。
その結果を図1に示した。図に示される通り、加熱温度条件では、50〜120℃のうち、120℃より100℃による抽出液の方は、抽出した色素の色調が濃いことが分かった。有機酸の種類では、乳酸>クエン酸>リンゴ酸>酢酸の順で色素の抽出効率が高かった。秋星の皮を事前に緩慢冷解凍することによる色素の抽出効率への影響は、無かった。以上の結果及び加工食品への利用適性から、好適には秋星皮の色素抽出条件を1%クエン酸溶液で100℃加熱の条件であった。
次に、加熱抽出条件(加熱時間、皮の添加量、抽出液の調製方法)を検討した。加熱時間は、8分、15分、23分、30分、60分とした。その結果を図2に示した。図に示される通り、加熱時間は、8分と23分で得られた抽出液の色調が濃かったが、15分加熱で色調が低下していることを考慮して、好適には23分であった。
次に、皮の添加量を検討した。皮の添加量は、3g、5g、10g、15gで、1%クエン酸30ml、加熱条件は100℃、23分とした。その結果を図3に示した。図に示される通り、皮の添加量は、検討した添加量の中では、1%クエン酸30ml当たり15gの条件で得られた抽出液の色調が最も濃かった。
また、色素抽出時の秋星の皮の添加量について調べた。皮の添加量は、6g、10g、20g、30gで、1%クエン酸60ml、加熱条件は100℃、23分とした。その結果を図4に示した。添加量を増やすと皮に抽出液が吸収されること、抽出液にペクチンなどの粘質物が抽出されていることから、ろ紙によるろ過が困難で抽出液の量が低下する傾向であった。そのため、皮の添加量は、15gが限界と考えられた。
抽出のスケールを2倍にして加熱抽出後に抽出液と皮をジューサーで粉砕し、15000回転で15分遠心分離した上澄みを抽出液として回収した。抽出液の回収率は、1%クエン酸溶液30ml、皮の添加量15gの時に45%であったが、55.8%に向上した。また、遠心分離で得られた沈殿に再度1%クエン酸溶液を60ml添加して同様の抽出を行ったところ、抽出液に粘性がなく、ろ紙で効率よくろ過できた。
抽出した色素の特性については、抽出前の1%クエン酸溶液のpHは、2.21であったが、1%クエン酸溶液30mlに秋星皮3g添加では、pHが2.5、秋星の皮30g添加の抽出条件で得られた色素溶液のpHは、3.11であった。これは、秋星の皮から抽出された成分によってpHが若干アルカリ側に移行したと考えられる。同じ色素でも濃度が薄いとpHが高くなるにつれて色が薄くなる。しかし、濃度が濃いと色の変化が少なかった。
次に、抽出液の濃縮について調べた。色素濃度の濃い抽出液は、ペクチン含量も高いため粘性が高い。そのため、そのまま減圧濃縮すると抽出液が突沸して濃縮が困難であった。そこで、これを改善するために抽出液をペクチン分解酵素で反応させて抽出溶液の粘性を低下させる酵素濃度、酵素の種類の検討を行った。
抽出液の粘度を低下させるための酵素処理の酵素濃度を、以下の条件で検討した。
検討した酵素:ペクチナーゼSS
検討した酵素濃度:無処理、0.005%、0.01%、0.02%
検討した反応時間:1,2,4時間、反応温度:40℃
評価項目:酵素処理した抽出液を濃縮後に粘度をB型粘度計で測定
その結果を図5に示した。酵素濃度0.005〜0.02%の何れで処理した場合でも抽出液の粘度が無処理区である対照の粘度に比べ1/10以下に低下した。この結果より、抽出液の粘度を低下させるための酵素処理濃度は、0.005%で十分であると判断した。
次に、酵素の種類を調べるために、上記で確立した酵素処理条件で粘度低下出きる酵素の種類を以下の条件で検討し、また、反応時間を1時間以内で再度検討した。
検討した酵素 ペクチナーゼSS 、スミチームAP2、可溶性ペクチナーゼ
検討した反応条件:酵素濃度0.005%、酵素反応温度40℃
検討した反応時間:0,15,30,45,60分
評価項目:酵素処理した抽出液を濃縮前と後に粘度をB型粘度計で測定、更に、抽出液の濃縮時の突沸状況、濃縮時加熱温度を評価
その結果を、図6〜7、及び以下の表2に示した。検討した3種類の酵素剤ともに0.005%濃度で15分処理においても無処理の対照の粘度に比べ半分以下の粘度に低下した。抽出液の減圧加熱濃縮の状況は、無処理の対照においては、濃縮時の突沸が頻繁に起こるため、加熱温度を40℃から60℃へ上昇させなければならなかった。
これに対して、酵素処理した抽出液どの条件においても、減圧加熱濃縮の温度を40℃に維持しても、突沸が軽く2回起こっただけで、対象に比べ効率よく濃縮することが可能であった。また、濃縮後の抽出液の粘度は、対照では、濃縮前の5倍以上に上昇するため、色素液として利用しにくいことが分かった。一方、酵素処理した抽出液は、粘度がすべて10mpa・s以下であり、色素液として利用しやすいことが分かった。
しかし、抽出液を凍結乾燥する場合は、ペクチン分解酵素処理の有無で乾燥物の収量を比較したところ、酵素処理した溶液の方が少なかった。また、酵素処理した色素乾燥粉末は、酵素処理しないものに比べて吸湿性が高くなり扱いにくくなるとともに、水に対する溶解性が低下した。以上のことから、リンゴの皮の抽出液を濃縮して色素液として利用する場合は、ペクチン分解酵素処理が有効であるが、凍結乾燥、通風乾燥、噴霧加熱乾燥などで抽出液を乾燥させて色素乾燥粉末として利用する場合は、ペクチン分解酵素処理をせずに、直接、乾燥することが有効であることが分かった。以下の表3に、秋星の皮の抽出液の乾燥粉末収量を示した。
本実施例では、実施例1の技術を品種「ふじ」に応用できるか調べるために、「ふじ」の皮の色素抽出方法の検討を行った。検討項目は、加熱抽出温度、加熱抽出時間、皮の添加量について行った。加熱抽出温度は、以下の条件で検討した。
加熱抽出温度:20,50,70,100,120℃
リンゴ「ふじ」の皮:3g
抽出溶媒:対照(蒸留水)、1%リンゴ酸、1%乳酸、1%クエン酸
抽出溶媒液量:30ml、加熱抽出時間:15分
その結果を図8に示した。図に示される通り、対照の蒸留水に比べて何れの有機酸及び加熱温度においても、色素の抽出効率は高かった。また、どの有機酸においても加熱温度によって抽出効率が異なった。加熱温度20〜120℃のうち、リンゴ酸とクエン酸は、70℃が最も抽出効率が高かったが、乳酸は、100℃が最も抽出効率が高かった。
次に、加熱抽出時間は、以下の条件で検討した。
加熱抽出時間:4,8,14,23,30,60分
リンゴ「ふじ」の皮:3g
抽出溶媒:対照(蒸留水)、1%リンゴ酸、1%乳酸、1%クエン酸
抽出溶媒液量:30ml、加熱抽出温度:100℃
その結果を図9に示した。図に示される通り、どの有機酸においても抽出時間によって抽出量が異なり、抽出時間8〜60分のうち、いずれの有機酸も抽出時間8分が最も抽出量が高かった。有機酸による抽出効率の差は、殆ど無かった。
次に、皮の添加量は、以下の条件で検討した。
リンゴ「ふじ」の皮:3,5,15,20g
抽出溶媒:対照(蒸留水)、1%リンゴ酸、1%乳酸、1%クエン酸
抽出溶媒液量:30ml、加熱抽出時間:23分、加熱抽出温度:100℃
その結果を図10に示した。図に示される通り、皮の添加量3〜20gのうち、いずれの有機酸においても皮の添加量が多いほど色素の抽出量は向上した。また、同じ皮の添加量においては、5gまでは、乳酸>クエン酸>リンゴ酸の順で抽出効率が高かったが、15g以上では、クエン酸>乳酸>リンゴ酸の順で抽出効率が高かった。いずれの条件においても、皮の添加量は、20gが良好であった。
本実施例では、実施例1の技術を品種「紅玉」に応用できるか調べるために、「紅玉」の皮の色素抽出方法の検討を行った。検討項目は、加熱抽出温度、加熱抽出時間、皮の添加量について行った。加熱抽出温度は、以下の条件で検討した。
加熱抽出温度:20,50,70,100,120℃
リンゴ「紅玉」の皮:3g
抽出溶媒:対照(蒸留水)、1%リンゴ酸、1%乳酸、1%クエン酸
抽出溶媒液量:30ml、加熱抽出時間:15分
その結果を図11に示した。図に示される通り、加熱抽出温度20〜120℃のうち、対照の蒸留水に比べて何れの有機酸及び加熱温度においても、色素の抽出効率は高かった。また、どの有機酸においても加熱温度によって抽出効率が異なった。乳酸とクエン酸は、70℃が最も抽出効率が高かったが、リンゴ酸は、100℃が最も抽出効率が高かく、どの条件よりも高かった。
加熱抽出時間は、以下の条件で検討した。
加熱抽出時間:4,8,14,23,30,60分
リンゴ「紅玉」の皮:3g
抽出溶媒:対照(蒸留水)、1%リンゴ酸、1%乳酸、1%クエン酸
抽出溶媒液量:30ml、加熱抽出温度:100℃
その結果を図12に示した。図の示される通り、加熱抽出時間4〜60分のうち、各有機酸で最も抽出量が多い抽出時間が異なり、リンゴ酸で23分、乳酸で30分、クエン酸で15分であった。最も抽出量が多いのは、リンゴ酸の23分であった。
皮の添加量は、以下の条件で検討した。
リンゴ「紅玉」の皮:3,5,15,20g
抽出溶媒:対照(蒸留水)、1%リンゴ酸、1%乳酸、1%クエン酸
抽出溶媒液量:30ml、加熱抽出時間:23分、加熱抽出温度:100℃
その結果を図13に示した。図に示される通り、皮の添加量3〜20gのうち、いずれの有機酸においても皮の添加量が多いほど色素の抽出量は向上した。また、どの添加量においてもリンゴ酸が最も高い抽出効率を示した。いずれの条件においても、皮の添加量は、20gが良好であった。
[抽出液の濃縮]
本実施例では、加熱濃縮について検討した。これまで、抽出液の濃縮は、減圧加熱濃縮、又は凍結乾燥で検討して来たが、いずれの方法も、濃縮に用いる特殊な装置が必要となる。そこで、実用的にスケールアップできる、より簡易な方法として想定される、加熱濃縮について検討した。
(1)実験方法
1)リンゴ皮抽出液
秋星の皮30gに対して、1%リンゴ酸溶液60mlを加え、100℃で、23分加熱抽出して得られた処理液を、遠心分離(15,000回転15分)に供して、上澄みを抽出液とした。
2)ペクチン分解酵素処理
ペクチン分解酵素として、ペクチナーゼSS(ヤクルト社製)の0.005%濃度液を用いて、2時間、40℃の条件で、酵素処理を行った。
3)濃縮方法
濃縮方法として、a)減圧濃縮(酵素処理有)、b)加熱濃縮(100℃:酵素処理無)、c)加熱濃縮(100℃:酵素処理有)、について検討した。
4)評価方法
色素抽出液の色調について、512nmでの吸光度(OD値)と色差(ΔE)で評価した。
(2)結果
各濃縮方法で濃縮した色素抽出液について、吸光度で比較すると、抽出前の原液に比べ、いずれの濃縮法でも吸光度が向上したが、減圧濃縮>加熱濃縮(酵素無)>加熱濃縮(酵素有)の順で値が高かった。減圧濃縮と加熱濃縮(酵素無)は、原液に比べ、ほぼ10倍以上の値であったが、加熱濃縮(酵素有)は、約8倍程度にとどまった。図14に、濃縮処理別色素液の吸光度を示し、図15に、濃縮処理別色素液の10倍希釈液と抽出原液との色差(ΔE)を示した。
また、原液との色差については、減圧濃縮>加熱濃縮(酵素無)>加熱濃縮(酵素有)の順で色差の値が小さく、減圧濃縮が最も色調が近いことを示した。しかし、加熱濃縮(酵素無)も、色差が11程度で、視覚的にはほとんど違いが認められなかった。しかし、加熱濃縮(酵素有)は、色差が25で、視覚的にも色の違いが分かるほどであった。
これについては、ペクチン分解酵素処理により、ペクチンを糖に分解したのちに加熱濃縮したために、糖の加熱による褐変が起こり、色調が変化したと考えられる。以上のことから、減圧濃縮だけでなく、加熱濃縮(酵素無)の濃縮方法でも、十分利用可能な色素液が得られることが確認された。
[加熱抽出による色素溶液の優位性]
本実施例では、本発明の抽出方法と、これまでに発表されている有機酸溶液を使用した常温での静置抽出による方法との比較をして、加熱抽出による色素溶液の優位性を評価した。
(1)方法
1)供試品種
供試品種として、‘秋星’を用いた。
2)試験区
試験区は、静置抽出(果皮重量:有機酸水溶液=1:10、1:2)、加熱抽出(対照)、とした。
3)静置抽出法
1cm幅に刻んだ‘秋星’果皮に、所定量の1%乳酸水溶液を加え、5℃で、一昼夜静置したのち、ろ過して、1回目抽出液を回収した。供試品種の果皮残さに、所定量の1%乳酸水溶液を加えてミキサーで粉砕し、5℃で、一昼夜静置したのち、ろ過して、2回目抽出液を回収した。同様の操作を繰り返し、3回目抽出液を回収した。
4)加熱抽出法
果皮に、重量による所定量の1%乳酸水溶液を加え、沸騰水中で23分加熱し、粉砕後にろ過して、濾液を回収した。濾過後の残さに、再度、所定量の乳酸水溶液を加えて抽出操作を繰り返し、2回分を合わせて抽出液原液とした。
5)評価法
各々、抽出液について、512nm吸光度を測定した。
6)色素の加熱耐性評価
色素抽出液[加熱抽出液、加熱抽出液(5倍希釈)、静置抽出液(1:10一回抽出)]について、100℃、120℃で、5分加熱して、色差(ΔE)を評価した。
(2)結果
図16に、同じ果皮から静置法で3回抽出を繰り返した場合の512nm吸光度の推移を示した。また、表4に、抽出法の違いによる吸光度の平均値と抽出に必要な添加液量を示した。
抽出した色素の吸光度による濃度は、静置抽出で最も濃いものと比べても、加熱抽出した色素液の吸光度は、約2倍であった。平均値での比較では、加熱抽出した色素液の吸光度の方が、静置抽出1:2に比べて、2.5倍以上濃い濃度であった。また、抽出に必要な液量も、加熱抽出液が最も少なく効率的であった。
更に、図17に、抽出方法及び希釈倍率による色素抽出液の512nm吸光度を示した。加熱抽出による色素抽出液は、静置抽出に比べ吸光度が4倍以上高く、静置抽出より加熱抽出の方が効率良く色素抽出できることを再度確認した。また、加熱抽出による色素液を5倍希釈することで静置抽出による色素抽出液と同程度の吸光度であることを確認した。
そこで、加熱抽出液の5倍希釈液と静置抽出液を用いて、耐熱性を評価した。図18に、抽出法の違いによる加熱前後の色差(ΔE*ab値)を示した。各色素抽出液の加熱後の色調を比較すると、100℃、120℃のどちらの場合でも、静置抽出に比べ、加熱抽出(5倍希釈)の方が、退色が約半分程度に抑えられた。このことから、加熱抽出した色素抽出液は、静置抽出した色素抽出液に比べ、耐熱性に優れていることが明らかとなった。
以上詳述した通り、本発明は、リンゴの皮の色素抽出方法、抽出した色素素材の製造法及び色素素材に係るものであり、本発明により、リンゴの皮に含まれるアントシアニン系色素を効率よく簡便に抽出することを可能とする色素抽出方法を提供することができ、食品用として利用できる抽出した色素素材を提供することができる。上記抽出方法は、抽出時間が短かく、リンゴの品種ごとの抽出効率がほぼ一定な抽出方法として有用である。本発明は、抽出方法が簡便で、抽出色素素材を大量生産する実用化技術として有用であり、また、食品利用に好適な抽出溶媒を使用しているので、食品用の色素素材として利用することを可能にするものとして有用である。

Claims (8)

  1. リンゴ果皮由来食品用赤色色素を抽出する方法であって、1)リンゴの皮に含まれる512nmに吸光度(OD値)を有するリンゴ果皮色素をアルコールを含まない抽出溶媒として有機酸溶液を用いて抽出すること、2)上記1)の抽出の際に、リンゴの皮を1%(質量百分率、以下同様)以下の有機酸溶液で加熱抽出処理した後、ろ過してリンゴ果皮の色素を含む色素抽出液を得ること、3)有機酸溶液として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、又は酢酸の水溶液を用いること、4)上記1)〜3)の工程により、5℃で静置抽出した色素抽出液に比べて耐熱性に優れている色素抽出液を得ること、を特徴とするリンゴ果皮由来食品用色素の抽出方法。
  2. リンゴの皮を、1%以下の有機酸溶液で50〜120℃の温度条件で4〜60分の加熱時間で加熱処理する、請求項1に記載の抽出方法。
  3. 抽出液を予めペクチン分解酵素で処理した後、減圧加熱濃縮又は加熱濃縮して粘度が10mp・s以下の濃縮色素液を得る、請求項1又は2に記載の抽出方法。
  4. 抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、加熱濃縮して色素粉末用濃縮色素液を得る、請求項1又は2に記載の抽出方法。
  5. 請求項1又は2に記載の抽出方法を用いて、リンゴ果皮由来食品用赤色色素素材を製造する方法であって、1)リンゴの果皮に含まれる512nmに吸光度(OD値)を有するリンゴ果皮色素をアルコールを含まない抽出溶媒として有機酸溶液を用いて抽出すること、2)上記1)の抽出の際に、リンゴの果皮を1%以下の有機酸溶液で加熱抽出処理した後、ろ過してリンゴ果皮の色素を含む色素抽出液を得ること、3)有機酸溶液として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、又は酢酸の水溶液を用いること、4)上記1)〜3)の工程により、5℃で静置抽出した色素抽出液に比べて耐熱性に優れている色素抽出液からなるリンゴ果皮由来食品用色素素材を製造することを特徴とするリンゴ果皮色素素材の製造方法。
  6. 抽出液を予めペクチン分解酵素で処理した後、減圧加熱濃縮又は加熱濃縮して粘度が10mp・s以下の濃縮色素液を得る、請求項5に記載のリンゴ果皮色素素材の製造方法。
  7. 抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、加熱濃縮して色素粉末用濃縮色素液を得る、請求項5に記載のリンゴ果皮色素素材の製造方法。
  8. 抽出液をペクチン分解酵素で処理することなく、直接、凍結乾燥、通風乾燥、又は、噴霧乾燥により乾燥させて色素粉末を得る、請求項5に記載のリンゴ果皮色素素材の製造方法。
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