以下においては、説明の便宜上、横型電極構成を有する半導体発光素子の半導体構造層におけるp電極及びn電極が形成された主面を電極形成面、その反対側の主面を対向面と称する。また、電極形成面におけるp電極とn電極との間の領域を電極間領域、電極間領域に対向する対向面上の領域を対向領域と称する。
以下の実施例においては、半導体発光素子が上面視において正方形の半導体構造層を有する場合、すなわち半導体構造層の電極形成面及び対向面が正方形の形状を有する場合について説明する。また、n電極が電極形成面における1つの端部領域に設けられ、p電極が電極形成面上の他の領域に設けられている場合について説明する。しかし、半導体構造層の形状及び電極の位置関係は上記に限定されるものではない。
本発明は、n電極とp電極との間の半導体構造層内の電流路に対し、半導体構造層の面内方向(半導体構造層に平行な平面内の方向)において相対的に高い電気抵抗を有する高抵抗方向と低い電気抵抗を有する低抵抗方向とが存在することに着目してなされたものである。本発明による種々の実施例及びその変形例に係る半導体発光素子は、半導体構造層内に、当該高抵抗方向及び低抵抗方向に応じた異なる電流路の開口(aperture又はopening)を有するトレンチを有している。当該トレンチは、電極間を流れる電流に対する開口の大きさ、すなわち電流路の開口部の電気抵抗値を制御する。
以下、図9(a)を用いて、高抵抗方向、低抵抗方向、高抵抗方向領域及び低抵抗方向領域について簡単に説明する。なお、図9(a)は、後述する実施例1に係る半導体発光素子10の上面視における半導体構造層11、p電極14及びn電極15を模式的に示している。
まず、半導体構造層11に平行な方向におけるn電極15とp電極14上のn電極15からの最遠点との間の異なる2方向の直線を決定する。そして、当該2つの直線のうち、その直線距離が大きい方の方向を高抵抗方向HD、小さい方の方向を低抵抗方向LDと区別する。
具体的には、半導体構造層11が正方形の形状を有し、図9(a)に示すような電極構成の場合、電極間における半導体構造層11の面内方向における直線距離は、辺方向が最も短く、対角方向が最も長い。すなわち、辺方向から対角方向に向かって電極間の電流路における電気抵抗が高くなる。従って、半導体構造層11の面内方向において、辺方向が低抵抗方向LD、対角方向が高抵抗方向HDと区別することができる。また、図9(b)に示すように、半導体構造層11は、相対的に低い電気抵抗を有する電流路の領域である低抵抗方向領域11L、相対的に低い電気抵抗を有する電流路の領域である高抵抗方向領域11Hに区画することができる。
以下において、図を参照しつつ本発明の実施例に係る半導体発光素子におけるトレンチについて具体的に説明する。
図1(a)は、本発明の実施例1に係る半導体発光素子10の斜視図である。半導体発光素子10は、半導体構造層11の同一主面側にp電極(第1の電極)14及びn電極(第2の電極)15の両方が形成された横型電極構成を有している。以下においては、説明の便宜上、p電極14及びn電極15が形成されている側の半導体構造層11の主面を電極形成面(第1の主面)12、電極形成面12の反対側の半導体構造層11の主面を対向面(第2の主面)13と称する。電極形成面12及び対向面13は、例えば一辺が350μm又は1mmの長さを有する正方形の形状を有する。
図1(a)を参照すると、半導体発光素子10は、電極形成面12のp電極14とn電極15との間の領域(電極間領域)12Aとその対向する対向面13の領域(対向領域)13Aとの間に設けられた半導体構造層11の電極間内部領域(以下、単に内部領域と称する)11Aに、トレンチ17及び18からなる電流路狭窄部16を有している。
電流路狭窄部16は、半導体構造層11内におけるp電極14とn電極15との間の電流に対し、半導体構造層11の面内方向において異なる電気抵抗を有する2方向のうち、相対的に高い電気抵抗を有する高抵抗方向HDと低い電気抵抗を有する低抵抗方向LDとの間で電流路の開口の大きさが異なるようなトレンチ17及び18から構成されている。
第1トレンチ17は、一定の深さで形成され、第2トレンチ18は、第1トレンチ17と第2トレンチ18によって形成される半導体構造層11内の電流路の開口部における電気抵抗値が低抵抗方向LDにおいて大となるような位置及び深さで形成されている。
第1トレンチ17は、p電極14とn電極15との間の半導体構造層11の電極形成面12の電極間領域12Aから対向面13の対向領域13Aに向かって、かつ電極形成面12におけるn電極15の形成領域15Aを囲むように形成されている。第1トレンチ17は、発光層20を貫通し、半導体構造層11とn電極15との接触面よりも対向面13側に至る深さで形成されている。すなわち、第1トレンチ17の底部は、半導体構造層11とn電極15との接触面よりも対向面13に近い位置に形成されている。
第2トレンチは、低抵抗方向LDにおける対向面13の対向領域13Aから電極形成面12の電極間領域12Aに向かって形成されている。第2トレンチ18は、低抵抗方向LDの電流路の一部を貫通するように対向領域13Aから電極間領域12Aに向かって形成されている。
第1トレンチ17及び第2トレンチ18は、それぞれ半導体構造層11における電極形成面12の電極間領域12A及び対向面13の対向領域13Aに形成された凹部からなる。例えば、第1トレンチ17は、フォトリソグラフィによって電極形成面12上にパターニングが施されたマスクを成膜し、反応性イオンエッチングなどの既知の加工方法によって凹部を形成した後、マスクを除去することによって形成される。また、第2トレンチ18は、対向面13に対して上記と同様の方法によって形成されることができる。
図1(b)は、図1(a)において、半導体発光素子10を面OPQRに沿って切断したときの断面図を示している。なお、面OPQRは、半導体構造層11の辺方向に沿った平面である。なお、後述する面STUVは、半導体構造層11の対角方向に沿った平面である。面OPQR及び面STUVは、図1(a)の一点鎖線によって囲まれた面である。
まず、図1(b)を参照して、半導体構造層11、p電極14及びn電極15について説明する。半導体構造層11は、図1(b)の断面図に示されているように、発光層20がn型半導体層(第2の半導体層)19とp型半導体層(第1の半導体層)21との間に形成された構造を有している。半導体構造層11は、AlxInyGazN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)の組成を有している。例えば、n型半導体層19はn−GaN層、p型半導体層21はp−GaN層からなり、n型半導体層19及びp型半導体層21は、それぞれ5μm及び150nmの層厚を有している。以下においては、半導体構造層11の電極形成面12がp型半導体層21の表面からなり、対向面13がn型半導体層19の表面からなる場合について説明する。
p電極14は、半導体構造層11の電極形成面12上に形成されている。p電極14は、例えば、p型半導体層21上にフォトリソグラフィを用いてマスク材料のパターニングを行い、スパッタ法などにより電極材料を形成した後、マスクを除去することによって形成される。p電極15は、既知の電極材料、例えば、Al、Pt、Ag、Rh、Auなどを用いて形成される。
n電極15は、半導体構造層11の電極形成面12側から、p型半導体層14及び発光層13を貫通し、n型半導体層11に接続されている。n電極15は、例えば、半導体構造層11のp型半導体層21上にp電極14が形成されない領域を設け、当該領域において、p型半導体層21の表面からp型半導体層21及び発光層20を貫通してn型半導体層19に至る開口部を形成した後、当該開口部に電極材料を形成することによって形成される。n電極15は、p電極14と同様の材料を用いて形成される。
図1(b)は、半導体発光素子10の低抵抗方向LDにおける断面図を示している。低抵抗方向LDにおいては、半導体構造層11における電極形成面12の電極間領域12Aから対向面13の対向領域13Aに向かって第1トレンチ17が形成されており、第1トレンチ17の形成領域に対向する対向面13の領域から電極形成面12の電極間領域12Aに向かって第2トレンチ18が形成されている。
第1トレンチ17は、電極形成面12の電極間領域12Aからp型半導体層21及び発光層20を貫通してn型半導体層19の一部に至る深さで形成されている。第2トレンチ18の底部は、第1トレンチ17の底部よりも対向面13側に形成されている。すなわち、第2トレンチ18は、対向面13の対向領域13Aからn型半導体層19の一部に至って、第1トレンチ17に達しない深さで形成されている。低抵抗方向LDにおける電流路の開口AP1は、第1トレンチ17及び第2トレンチ18によって画定される。
図1(c)は、図1(a)において、半導体発光素子10を面STUVに沿って切断したときの断面図を示している。図1(c)は、半導体発光素子10の高抵抗方向HDにおける断面図を示している。高抵抗方向HDにおいては、低抵抗方向LDと同様に第1トレンチ17が形成されているが、第2トレンチ18は形成されていない。換言すれば、高抵抗方向HDには第1トレンチ17のみが形成されている。高抵抗方向HDにおける電流路の開口AP2は、第1トレンチ17及び対向面13によって画定される。
なお、上記した開口AP1及びAP2については、その開口部の大きさによって電流路の電気抵抗値が変化する。例えば、開口が大きい(開口が広い)ほど開口の電気抵抗は低い。
図2(a)は、半導体発光素子10の対向面13を対向面13に垂直な方向から見たとき、すなわち対向面13の上面視における平面図を示している。上記したように、半導体発光素子10の対向面13における対向領域13Aの低抵抗方向LDには、第2トレンチ18が形成されている。具体的には、半導体構造層11の内部領域11Aは、相対的に低い電気抵抗を有する電流路の領域である低抵抗方向領域11ALと、相対的に高い電気抵抗を有する電流路の領域である高抵抗方向領域11AHと、に区画される。第2トレンチ18は、この低抵抗方向領域11ALに亘って形成されている。また、第2トレンチ18は、第1トレンチ17及び第2トレンチ18によって形成される電流路の開口部における電気抵抗値が低抵抗方向領域11ALにおいて大となるような位置及び深さで形成されている
図2(b)は、半導体発光素子10の電極形成面12を電極形成面12に垂直な方向から見たとき、すなわち電極形成面12の上面視における平面図を示している。電極形成面12の電極間領域12Aには、第1トレンチ16がn電極15を囲むように形成されている。従って、第1トレンチ17は、内部領域11Aにおける低抵抗方向領域11AL及び高抵抗方向領域11AHの両方に形成されている。
図3(a)は、低抵抗方向LDにおける半導体構造層11内の電流路を説明する図である。図3(a)及び後述する図3(b)は、図1(b)及び図1(c)と同様の断面図であるが、電流路の説明のためにハッチングを省略してある。低抵抗方向LDにおいては、第1トレンチ17及び第2トレンチ18の両方が成されている。このため、半導体構造層11内の電流路の開口が小さくなり、開口AP1を通過する電流路C1及びC2の電気抵抗は第2トレンチ18がない場合よりも大きくなる。
図3(b)は、高抵抗方向HDにおける半導体構造層11内の電流路を説明する図である。高抵抗方向HDには、第1トレンチ17のみが形成されている。従って、高抵抗方向HDにおける電流路の開口AP2は、低抵抗方向LDにおける開口AP1よりも大きい。このため、高抵抗方向HDには低抵抗方向LDに比べて電流路の開口部における電気抵抗値が低く、大きな電流が流れやすい。
換言すれば、電流路C1と電流路C3が同じ長さであっても、電流路C1における電気抵抗は電流路C3における電気抵抗よりも、開口AP1による電気抵抗の上昇分だけ大きい。同様に、電流路C2と電流路C4が同じ長さであっても、電流路C2における電気抵抗は電流路C4における電気抵抗よりも、開口AP1による電気抵抗の上昇分だけ大きいものとなる。従って、例えば、高抵抗方向HDにおける電流路C5と低抵抗方向LDにおける電流路C2とを流れる電流の大きさがほぼ同等となるように開口AP1の大きさを調整することが可能となる。
第1トレンチ17は、電極形成面12におけるn電極15の形成領域15Aを囲むように形成されている。従って、図1(b)及び図1(c)に示すように、第1トレンチ17は高抵抗方向HD及び低抵抗方向LDの両方に形成されている。第1トレンチ17は、電流路の長さに起因する抵抗の変化率を減ずることができる。すなわち、第1トレンチ17を導入すると、短い電流路、例えば電極間距離の短い電流路C1及びC3の抵抗の上昇率は、それより長い電流路C2、C4及びC5における電気抵抗の上昇率よりも大きくなる。従って、電極間距離が最も短い電流路C1及びC3に過度の電流が集中することを抑制することができる。
第1トレンチ17は、n型半導体層19の層厚の10%〜80%の層厚を有していることが好ましい。第1トレンチ17がn型半導体層19の10%未満の層厚を有している場合、比較的短い電流路上に大きな電流が流れてしまい、均一な電流を所定の方向における発光層20の全体に分配することができないからである。また、第1トレンチ17がn型半導体層19の80%を超える層厚を有している場合、電流路の開口が非常に小さくなり、開口部における大幅な抵抗値の上昇、素子の機械的強度の低下などを引き起こすからである。
上記したように、半導体発光素子10の第1トレンチ17及び第2トレンチ18は、発光層20を含む半導体構造層11内におけるp電極14からn電極15に向かう電流路の面内方向における方向のうち、相対的に高い電気抵抗を有する高抵抗方向HDと低い電気抵抗を有する低抵抗方向LDとの間で電流路の開口の大きさが異なるように形成されている。従って、発光層20の全体に均一に電流を分配することができ、均一な発光強度を有する光を発光層20から放出させることができる。また、低抵抗方向LD上の電流路と高抵抗方向HD上の電流路との間の電気抵抗の差が小さいものとなる。従って、発光素子の発光効率が上昇し、駆動電圧を低下させる又は駆動電圧の上昇を最小限に抑えることができる。
なお、第2トレンチ18は、第1トレンチ17よりも半導体構造層11の面内方向においてn電極15に近い位置から、電極間領域12Aに向かって形成されていても良い。本実施例の変形例1として、図4(a)に、半導体構造層11の面内方向において第1トレンチ17よりもn電極15に近い位置(領域12B内の位置)に形成された第2トレンチ18Aを有し、その他については半導体発光素子10と同様の構成を有する半導体発光素子10Aの低抵抗方向LDにおける断面図を示す。
また、第2トレンチ18は、第1トレンチ17よりも半導体構造層11の面内方向においてp電極14に近い位置から、電極間領域12Aに向かって形成されていても良い。本実施例の変形例2として、図4(b)に、半導体構造層11の面内方向において第1トレンチ17よりもp電極14に近い位置(領域12C内の位置)に形成された第2トレンチ18Bを有し、その他については半導体発光素子10と同様の構成を有する半導体発光素子10Bの低抵抗方向LDにおける断面図を示す。
また、本実施例においては、第2トレンチ18が第1トレンチ17の底部に達しない深さで形成される場合について説明した。しかし、変形例1及び変形例2のように、第2トレンチが第1トレンチ17よりも面内方向においてn電極15又はp電極14に近い位置(それぞれ領域12B又は12C内の位置)に形成される場合、第2トレンチは第1トレンチ17に達する深さで形成されていても良い。すなわち、第2トレンチ18A及び18Bは、半導体構造層11の内部領域11Aにおいて、第1トレンチ17の底部を越える深さで形成されていてもよい。
本実施例の変形例3として、図4(c)に、変形例1の第2トレンチ18Aが第1トレンチ17の底部を越える深さで形成された(第2トレンチ18Cを有する)場合の半導体発光素子10Cの低抵抗方向LDにおける断面図を示す。また、本実施例の変形例4として、図4(d)に、変形例2の第2トレンチ18Bが第1トレンチ17の底部を越える深さで形成された(第2トレンチ18Dを有する)場合の半導体発光素子10Dの低抵抗方向LDにおける断面図を示す。なお、変形例3及び4においては、上記以外は半導体発光素子10と同様の構成を有している。
変形例1〜4においては、本実施例と同様に、第2のトレンチが、第1トレンチと第2トレンチによって形成される半導体構造層11内の電流路の開口部における電気抵抗値が低抵抗方向LD(低抵抗方向領域11AL)において大となるような位置及び深さで形成されている。すなわち、いずれも低抵抗方向LDにおける電流路の開口AP1が高抵抗方向HDにおける電流路の開口AP2(図1(c)参照)よりも小さい。従って、高抵抗方向HDの電流路には低抵抗方向LDよりも大きな電流が流れることとなる。従って、発光層の全体に均一に電流を分配することができる。
さらに、変形例1〜4においては、本実施例に比べて、第2トレンチにおける対向面13上の形成位置及び形成深さ(底部位置)の範囲を広く選択することができるという効果を有している。まず、第2トレンチが第1トレンチの形成領域の直上に形成されるようにアライメントを行うことを必要としない。また、第2トレンチの形成深さが第1トレンチの底部の位置に影響されず、半導体構造層を貫通しない範囲で第2トレンチの形成深さ(底部の位置)を変更することができる。従って、上記したこれら変形例は、本実施例に比べて、設計自由度が向上し、かつ歩留りの低減を図ることができる。
また、本実施例においては、第1トレンチ17及び第2トレンチ18が凹部からなる場合について説明したが、第1トレンチ17又は第2トレンチ18の凹部には、絶縁材料、例えばSiO2及びSiNが充填されていてもよい。
本実施例の変形例5として、半導体発光素子10Eの低抵抗方向LD及び高抵抗方向HDにおける断面図をそれぞれ図5(a)及び(b)に示す。半導体発光素子10Eは、それぞれ第1トレンチ及び第2トレンチの凹部に絶縁材料が充填された第1絶縁部22及び第2絶縁部23を有することを除いては実施例1の半導体発光素子10と同様の構成を有している。
本変形例においては、第1トレンチ17及び第2トレンチ18を構成する凹部に絶縁材料が充填(埋設)されている。従って、例えば、素子製造中の埃、水分、金属粉などが第1トレンチ及び第2トレンチに侵入することがない。従って、品質の高い半導体発光素子を提供することができる。なお、本変形例(変形例5)は、本実施例(実施例1)のみならず、変形例1〜4、後述する他の実施例及び変形例にも適用することができる。
図6(a)は、本発明の実施例2に係る半導体発光素子30の斜視図である。半導体発光素子30は、トレンチの構成を除いては実施例1の半導体発光素子10と同様の構成を有している。半導体構造層31、p電極34及びn電極35は、半導体発光素子10における半導体構造層11、p電極14及びn電極15とそれぞれ同様の構成を有している。
半導体発光素子30は、実施例1の第1トレンチ17及び第2トレンチ17と同様の第1トレンチ37及び第2のトレンチ38に加え、高抵抗方向HDにおける対向面33の対向領域33Aから電極形成面32の電極間領域32Aに向かって形成された第3トレンチ39を有している。第3トレンチ39は、高抵抗方向HDの電流路の一部を貫通するように形成されている。ただし、第3トレンチ39は、その底部が第2トレンチ38の底部よりも対向面33側に形成されている。すなわち、第3トレンチ39は、第2トレンチ39よりも浅く形成されている。第3トレンチ39は、形成深さを除いては第2トレンチ38と同様の手法を用いて形成された凹部からなる。
図6(a)に示すように、第3トレンチ39は、その側面において第2トレンチ38の側面に接続されている。すなわち、第2トレンチ38及び第3トレンチ39は、低抵抗方向LDと高抵抗方向HDとで深さが異なる一連のトレンチを形成しているともいえる。
図6(b)は、半導体発光素子30の低抵抗方向LDにおける断面図である。半導体発光素子30は、低抵抗方向LDにおいては第1トレンチ37及び第2トレンチ38を有している。半導体発光素子30は、低抵抗方向LDについては半導体発光素子10と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
図6(c)は、半導体発光素子30の高抵抗方向HDにおける断面図である。半導体発光素子30は、高抵抗方向HDにおいては、第1トレンチ37と、第1トレンチ37の形成領域に対向する対向面33の領域から形成され、かつ第2トレンチ38よりも浅い第3トレンチ39と、を有している。従って、低抵抗方向LDにおける電流路の開口AP1に比べて高抵抗方向HDにおける電流路の開口AP2が大きい。
半導体発光素子30は、実施例1とは異なり、電極形成面32の電極間領域32Aから対向面33に向かって形成された第1トレンチ39と、対向領域33Aから互いに異なる深さで形成された第2トレンチ38及び第3トレンチ39と、を有している。従って、第3トレンチ39の深さを変更することによって、電極間の電流路の開口をより厳密に調節することができる。
本実施例は、実施例1に対する変形例1及び2と同様に、第3トレンチ39は、第2トレンチ38よりも浅く形成されていれば、様々な対向面33上の対向領域33Aから形成することができる。例えば、第2トレンチ38及び第3トレンチ39の両方が半導体構造層31の面内方向において第1トレンチ37よりもn電極35に近い位置に形成されていてもよい。また、第2トレンチ38が第1トレンチ37よりもn電極35に近い位置に形成され、第3トレンチ39が第1トレンチ37よりもp電極34に近い位置に形成されていてもよい。
また、実施例1に対する変形例3及び4と同様に、第3トレンチ39は、第1トレンチ37よりも面内方向においてn電極34又はp電極35に近い位置に形成される場合、第2トレンチ38よりも浅く形成される範囲内で、第1トレンチ37の底部を越える深さで形成されていてもよい。例えば、第2トレンチ38及び第3トレンチ39の両方が、第1トレンチ37の底部に達しない深さで形成されていてもよい。また、第2トレンチ38が第1トレンチ37に達する深さで形成され、第3トレンチ39が第1トレンチ37に達しない深さで形成されていてもよい。
図7(a)は、本発明の実施例3に係る半導体発光素子50の斜視図である。半導体発光素子50は、トレンチの構成を除いては実施例1の半導体発光素子10と同様の構成を有している。半導体構造層51、p電極54及びn電極55は、半導体発光素子10における半導体構造層11、p電極14及びn電極15とそれぞれ同様の構成を有している。
半導体発光素子50は、実施例1の第1トレンチ17及び第2トレンチ17と同様の第1トレンチ57及び第2トレンチ58に加え、高抵抗方向HDにおける対向面53の対向領域53Aから電極形成面52の電極間領域52Aに向かって形成された第4トレンチ59を有している。第4トレンチは、高抵抗方向HDの電流路の一部を貫通するように形成されている。ただし、第4トレンチ59は、第2トレンチ58よりも、半導体構造層51の面内方向において第1トレンチ57から離れて形成されている。すなわち、第4トレンチ59と第1トレンチ57との間の半導体構造層51に平行な面内における距離は、第2トレンチ58と第1トレンチ57との間の半導体構造層51に平行な面内における距離よりも大きい。
図7(a)に示すように、第4トレンチ59は、その側面において第2トレンチ58の側面に接続されている。すなわち、第2トレンチ58及び第4トレンチ59は、低抵抗方向LDと高抵抗方向HDとで形成位置が異なる一連のトレンチを形成しているともいえる。
図7(b)及び図7(c)に示すように、半導体構造層51の面内方向における第1トレンチ57から第2トレンチ58までの距離D1と、第1トレンチ57から第4トレンチ59までの距離D2と、の間には、D1<D2の関係が成り立つ。半導体発光素子50の上面視における第1トレンチ57、第2トレンチ58及び第4トレンチ59の位置関係を図8に模式的に示す。
半導体発光素子50は、実施例1とは異なり、半導体構造層51の電極間領域52に第1トレンチ59と、第1トレンチ59との面内方向における距離が互いに異なる第2トレンチ58及び第4トレンチ59と、を有している。第4トレンチ59は、第2トレンチ58と同じ深さを有している。従って、第2トレンチ58及び第4トレンチ59を形成するパターニングのマスクを用いて、一回のプロセスにて第2トレンチ58及び第4トレンチ59の両方を形成することができるという効果を有している。また、第4トレンチ59の形成領域を調節することによって、電極間の電流路の開口をより厳密に調節することができるという効果を有している。
本実施例においては、第2トレンチ58及び第4トレンチ59の両方が半導体構造層51の面内方向において第1トレンチ57よりもn電極55に近い位置に形成されている場合について説明した。しかし、第4トレンチ59は、第2トレンチ58よりも第1トレンチ57との面内方向における距離が大きい範囲内で、対向領域53の様々な位置から形成されることができる。例えば、第2トレンチ58及び第4トレンチ59の両方が第1トレンチ57よりもp電極54に近い位置に形成されていてもよい。また、第2トレンチ58が第1トレンチ57よりもp電極54に近い位置に形成され、第4トレンチ58が第1トレンチ57よりもn電極55に近い位置に形成されていてもよい。また、第2トレンチ58が第1トレンチ57の直上に設けられ、第4トレンチ59は面内方向において第1トレンチ57から離れて形成されていてもよい。
また、本実施例においては、実施例1に対する変形例3及び4と同様に、第2トレンチ58及び第4トレンチ59が第1トレンチ57よりもp電極54又はn電極55に近い位置に形成される場合、第2トレンチ58及び第4トレンチ59は、第1トレンチ57の底部を越える深さで形成されていてもよい。
上記の実施例においては、正方形の形状の主面を有する半導体構造層を有する場合について説明したが、半導体構造層の主面の形状は正方形に限定されるものではない。例えば、半導体構造層の主面は、長方形、多角形状及び円形状を有していてもよい。いずれの形状の半導体構造層を有する場合であっても、高抵抗方向と低抵抗方向との間で電流路の開口が異なるトレンチを形成することによって、発光層に均一に電流を分配することができる。従って、輝度ムラのない高発光効率の発光素子を提供することができる。
また、上記の実施例においては、半導体構造層を高抵抗方向及び低抵抗方向の2つの方向の領域に区別し、それぞれの方向領域における電流路の開口の大きさが異なるようにトレンチを形成する場合について説明したが、半導体構造層は高抵抗方向及び低抵抗方向の2つの方向に区別することに限定されない。例えば、半導体構造層を高抵抗方向、中抵抗方向及び低抵抗方向の3つの方向の領域に区画し、それぞれの方向領域において電流路の開口の大きさが異なるトレンチを形成してもよい。さらに、半導体構造層を4つ以上の方向の領域に区画した上で、より詳細に電流路の開口を制御するトレンチを形成することも可能である。方向領域の区別及び電流路の開口の大きさの制御をより厳密に行うことにより、発光層へ分配する電流の大きさをより均一化することが可能となる。
また、上記の実施例においては、第2トレンチ、第3トレンチ及び第4トレンチは、半導体構造層の電極間内部領域において、対向領域から電極間領域に向かって形成されている場合について説明したが、第2〜第4トレンチは対向領域から電極間領域に向かって形成されていなくてもよい。例えば、第2〜第4トレンチは、面内方向においてn電極に重なるように対向面から電極形成面に向かって(すなわち電極形成面におけるn電極の形成領域に対向する対向面上の位置からn電極の形成領域に向かって)形成されている場合であっても一定の効果を得ることができる。しかし、第2〜第4トレンチは、面内方向においてp電極に重ならないように形成されていることが好ましい。第2〜第4トレンチが面内方向においてp電極に重なるように形成されていると、比較的短距離の電流路に電流が集中する可能性があるからである。すなわち、第2トレンチ、第3トレンチ及び第4トレンチは、面内方向においてp電極に重ならないように対向面から電極形成面に向かって形成されていることが好ましい。
上記したように、発光層を含む半導体構造層と、半導体構造層の第1の主面側に第1の電極及び第2の電極の両方が形成されている構成を有し、半導体構造層内に第1トレンチ及び第2トレンチを有し、第1トレンチ及び第2トレンチは、第1の電極から第1の電極に向かう面内方向の電流路の方向のうち、相対的に高い電気抵抗を有する高抵抗方向と低い電気抵抗を有する低抵抗方向との間で電流路の開口の大きさが異なるように形成されている。従って、半導体構造層内の電流密度の分布を均一化することができ、発光層から均一な発光強度を有する光を放出させることができる。