JP6040094B2 - ステンレス鋼部品の不動態化処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ステンレス鋼部品の不動態化処理方法に係り、特に、水門等のステンレス鋼部品の不動態化処理方法に関する。
水門や原子力設備部品等のステンレス鋼部品の製作工程において、溶接・切断などの加工によりステンレス鋼部品の耐食性を担う不動態皮膜が除去されることから、一般的に組み立て後は不動態化処理が行われている。ステンレス鋼部品の不動態化処理方法としては、硝酸、フッ酸、クロム酸などの酸性水溶液に浸漬させる方法もしくは酸性およびアルカリ性水溶液でアノード電解させる方法などが提案されている。また、環境負荷低減のために、不動態化処理液として過酸化水素を含む酸性水溶液を用いることが検討されている。
特許文献1には、中性塩電解質濃度が0.1%以上5%以下で、過酸化水素濃度が0.1%以上1%以下含有する溶液を液膜状態に塗布し水洗するステンレス鋼の不動態化処理方法が記載されている。
特開平10−280163号公報
ところで、例えば、特許文献1に記載のようにステンレス鋼部品の表面に不動態化処理液を塗布して不動態皮膜を形成する場合には、不動態化処理液の粘性が低いために、不動態化処理液がステンレス鋼部品の表面で弾かれ易くなると共に、ステンレス鋼部品の表面から流れ易くなる。その結果、不動態化処理液の塗布作業を繰り返し行う必要があるので、不動態化処理の作業性が低下する可能性がある。
そこで、本発明の目的は、ステンレス鋼部品の不動態化処理の作業性をより向上させることが可能なステンレス鋼部品の不動態化処理方法を提供することである。
本発明に係るステンレス鋼部品の不動態化処理方法は、前記ステンレス鋼部品の表面に、過酸化水素と増粘剤とを含む酸性水溶液を塗布する塗布工程と、前記酸性水溶液が塗布されたステンレス鋼部品を乾燥して、前記ステンレス鋼部品の表面に不動態皮膜を形成する乾燥工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係るステンレス鋼部品の不動態化処理方法において、前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナンまたはプロピレングリコールであることを特徴とする。
本発明に係るステンレス鋼部品の不動態化処理方法において、前記増粘剤の含有率は、0質量%より大きく10質量%以下であることを特徴とする。
本発明に係るステンレス鋼部品の不動態化処理方法において、前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロースであり、前記カルボキシメチルセルロースの含有率は、0質量%より大きく2.9質量%以下であることを特徴とする。
本発明に係るステンレス鋼部品の不動態化処理方法において、前記カルボキシメチルセルロースの含有率は、1.4質量%以上2.9質量%以下であることを特徴とする。
本発明に係るステンレス鋼部品の不動態化処理方法は、前記塗布工程の前に、前記ステンレス鋼部品の表面の自然酸化皮膜を除去する前処理工程を備えることを特徴とする。
本発明に係るステンレス鋼部品の不動態化処理方法において、前記ステンレス鋼部品の表面は、非水平面を含むことを特徴とする。
上記構成におけるステンレス鋼部品の不動態化処理方法によれば、不動態化処理液には過酸化水素と増粘剤とを含む酸性水溶液を用いていることから、酸性水溶液が増粘されており、ステンレス鋼部品の表面で酸性水溶液の弾きと流動とが抑えられるので、不動態化処理の作業性をより向上させることが可能となる。
本発明の実施の形態において、ステンレス鋼部品の不動態化処理方法を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態において、不動態化処理したステンレス鋼部品の構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態において、耐食性評価試験結果を示すグラフである。 本発明の実施の形態において、各試験片の腐食速度(単位時間当たりの腐食減量)を示すグラフである。
以下に本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、ステンレス鋼部品の不動態化処理方法を示すフローチャートである。図2は、不動態化処理したステンレス鋼部品10の構成を示す断面図である。
まず、不動態化処理したステンレス鋼部品10の構成について説明する。ステンレス鋼部品12は、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化型ステンレス鋼等で形成されている。これらのステンレス鋼は、Fe−Cr系合金、Fe−Cr−Ni系合金、Fe−Cr−Ni−Mo系合金、Fe−Cr−Ni−Mo―Cu系合金、Fe−Cr−Ni−Mn系合金等からなり、例えば、クロム(Cr)を12質量%以上含有しているFe系合金である。ステンレス鋼部品12としては、例えば、水門、インペラ、原子力設備部品等がある。
ステンレス鋼部品12の表面には、ステンレス鋼部品12に含まれるクロムが酸素と結びついて不動態皮膜14が形成されている。不動態皮膜14は、酸化クロムまたは酸化クロムを主体とする酸化物で形成される。不動態皮膜14の厚みは、例えば、1nmから2nmである。ステンレス鋼部品12の表面に不動態皮膜14を形成することにより、ステンレス鋼部品12の耐食性が向上する。
次に、ステンレス鋼部品12の不動態化処理方法について説明する。
前処理工程(S10)は、ステンレス鋼部品12の表面の自然酸化皮膜を除去する工程である。ステンレス鋼部品12に不動態皮膜14を形成する前に、ステンレス鋼部品12の表面に自然発生的に形成された耐食性が低い自然酸化皮膜を除去することが好ましい。
ステンレス鋼部品12の前処理には、硝フッ酸溶液等を使用した酸洗処理や、機械研磨等の研磨が用いられる。ステンレス鋼部品12の表面を研磨することにより、自然酸化皮膜の除去と共に、溶接や切断等の加工で形成された加工面をより平滑化することができる。なお、ステンレス鋼部品12の前処理として、脱脂洗浄処理を合わせて行うことが好ましい。ステンレス鋼部品12の酸洗処理、脱脂洗浄処理、研磨については、一般的な金属材料の前処理に用いられる方法が適用可能である。
塗布工程(S12)は、ステンレス鋼部品12の表面に、過酸化水素と増粘剤とを含む酸性水溶液を塗布する工程である。酸性水溶液には増粘剤が含まれていることから、酸性水溶液が増粘されて酸性水溶液の粘性がより高くなり、例えば、ゲル状やペースト状になる。その結果、酸性水溶液の密着性が高くなりステンレス鋼部品12の表面に酸性水溶液が保持され易くなることから、酸性水溶液の弾きと流動とが抑えられるので塗布作業性が向上する。また、ステンレス鋼部品12の表面に酸性水溶液が保持され易くなることから、ステンレス鋼部品12の表面に耐食性をより向上させた不動態皮膜14を形成することが可能となる。
また、例えば、大型のステンレス鋼部品12や、ステンレス鋼部品12の表面に非水平面(垂直面、傾斜面、曲面等)を含む場合でも、酸性水溶液が増粘されて粘性が高くなっているので、酸性水溶液の弾きや流動を抑制することができる。
過酸化水素は、酸化剤としての機能を有している。過酸化水素は時間経過に伴って水と酸素とに分解するので、硝酸等の酸化剤と比較して環境負荷の低減が可能となる。酸性水溶液に含まれる過酸化水素の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
過酸化水素の含有率が0.1質量%より少ない場合には、酸化力が弱くなり、不動態皮膜14を形成し難くなるからである。過酸化水素の含有率が10質量%以下であるのは、過酸化水素の含有率が10質量%であれば不動態皮膜14の形成には十分だからである。
増粘剤については、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン、プロピレングリコール等の有機系増粘剤を用いることができる。有機系増粘剤については、過酸化水素に分解されにくい高分子の有機系増粘剤を用いることが好ましい。増粘剤については、これらの有機系増粘剤を単独で用いてもよいし、複数の有機系増粘剤を組み合わせて用いてもよい。
増粘剤には、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムまたはペクチンを用いることが好ましい。カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム及びペクチンは、過酸化水素の水と酸素とへの分解をより抑えることができるからである。また、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム及びペクチンは、それ自身が過酸化水素により分解され難いからである。
増粘剤には、カルボキシメチルセルロースを用いることがより好ましい。増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを用いることにより、不動態皮膜14の耐食性を低下させずに酸性水溶液を増粘させて粘性を高めることができるからである。また、カルボキシメチルセルロースは、キサンガタムやペクチン等よりも安価であるため、製造コストを低減することが可能となる。
増粘剤の含有率は、0質量%よりも大きく10質量%以下であることが好ましく、0質量%よりも大きく5質量%以下であることがより好ましい。増粘剤の含有率が10質量%より多いと、酸性水溶液の粘度が高くなることから、ステンレス鋼部品12の表面に酸性水溶液を塗布し難くなるからである。
増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを用いる場合には、酸性水溶液に含まれるカルボキシメチルセルロースの含有率は、0質量%より大きく2.9質量%以下であることが好ましく、1.4質量%以上2.9質量%以下であることがより好ましい。酸性水溶液に含まれるカルボキシメチルセルロースの含有率が1.4質量%以上である場合には、カルボキシメチルセルロースの含有率が1.4質量%より少ない場合よりも、耐食性をより向上させた不動態皮膜14を形成可能であるからである。また、酸性水溶液に含まれるカルボキシメチルセルロースの含有率が2.9質量%以下であるのは、カルボキシメチルセルロースの含有率が2.9質量%であれば耐食性を向上させた不動態皮膜14の形成が十分可能であるからである。
次に、酸性水溶液の作製方法について説明する。酸性水溶液については、過酸化水素と増粘剤と水とを同時に混合攪拌して作製してもよいし、予め増粘剤と水とを混合攪拌させて増粘剤水溶液を作製した後に、増粘剤水溶液と過酸化水素とを混合攪拌して酸性水溶液を作製してもよい。また、過酸化水素と水とを混合攪拌して過酸化水素水を作製し、増粘剤と水とを混合攪拌して増粘剤水溶液を作製し、過酸化水素水と増粘剤水溶液とを混合攪拌して酸性水溶液を作製してもよい。酸性水溶液中により均一に増粘剤を分散させるために、予め増粘剤と水とを混合させて増粘剤水溶液を作製することが好ましい。また、増粘剤水溶液を作製するときには、増粘剤を水に分散し易くするために加熱してもよい。
酸性水溶液の塗布方法については、刷毛塗り、へら塗り、ローラ塗り、スプレーによる噴霧等の一般的な塗布方法が適用可能である。塗装手段や塗装装置についても、塗料等の塗布に用いられる一般的な刷毛、へら、ローラ、スプレーガン等を用いることができる。
乾燥工程(S14)は、酸性水溶液が塗布されたステンレス鋼部品12を乾燥して不動態皮膜14形成する工程である。乾燥させている間においても、酸性水溶液は増粘されているので弾きと流動とが抑えられ、酸性水溶液に含まれる過酸化水素がステンレス鋼部品12の表面に保持される。それにより、ステンレス鋼部品12の表面に耐食性が向上した不動態皮膜14の形成が可能となる。
乾燥については、常温乾燥(例えば20℃から30℃)または加熱乾燥により行われる。加熱乾燥する場合には、一般的な恒温槽等を用いることが可能である。乾燥時間は、例えば、常温乾燥の場合には1時間から3時間である。また、乾燥後には、水洗処理を行うことが好ましい。このようにして、ステンレス鋼部品12の表面に不動態皮膜14が形成される。
以上、上記構成によれば、ステンレス鋼部品の表面に、過酸化水素と増粘剤とを含む酸性水溶液を塗布する塗布工程と、酸性水溶液が塗布されたステンレス鋼部品を乾燥して、ステンレス鋼部品の表面に不動態皮膜を形成する乾燥工程と、を備えており、酸性水溶液が増粘されていることから酸性水溶液の弾きと流動とが抑えられ、不動態化処理の作業性を向上させることができる。また、乾燥中においても、ステンレス鋼部品の表面に酸性水溶液に含まれる過酸化水素が保持されるので、耐食性をより向上させた不動態皮膜の形成が可能となる。
不動態皮膜の耐孔食性を評価するため耐食性評価試験を行った。
(試験片の前処理)
試験片には、ステンレス鋼SUS304で形成された矩形状の板材を用いた。試験片の寸法については、幅60mm、長さ100mm、板厚1.5mmとした。前処理として、試験片を酸洗処理して自然酸化皮膜を除去した。酸洗処理については、試験片を硝フッ酸溶液に1時間浸漬させることにより行った。硝フッ酸溶液には、ラスノンウエルM500−Fを使用した。
(不動態皮膜の形成)
実施例1の試験片における不動態皮膜の形成方法について説明する。まず、不動態皮膜を形成するための酸性水溶液の作製方法について説明する。酸化剤には、過酸化水素を使用した。増粘剤には、カルボキシメチルセルロースを使用した。カルボキシメチルセルロースを60℃の温水で十分に混合攪拌し、カルボキシメチルセルロースを3質量%含有するカルボキシメチルセルロース水溶液を作製した。次に、96.7gのカルボキシメチルセルロース水溶液と、3.3gの過酸化水素水(過酸化水素を30wt%含有)とを混合攪拌して酸性水溶液を作製した。実施例1の酸性水溶液では、過酸化水素の含有率が1質量%であり、カルボキシメチルセルロースの含有率が2.9質量%である。そして、試験片を略垂直に立て掛けた後に、試験片に酸性水溶液を塗布し、大気中で2時間乾燥させて不動態皮膜を形成した。
実施例2の試験片における不動態皮膜の形成方法について説明する。まず、不動態皮膜を形成するための酸性水溶液の作製方法について説明する。酸化剤には、過酸化水素を使用した。増粘剤には、カルボキシメチルセルロースを使用した。カルボキシメチルセルロースを60℃の温水で十分に混合攪拌し、カルボキシメチルセルロースを3質量%含有するカルボキシメチルセルロース水溶液を作製した。次に、46.7gのカルボキシメチルセルロース水溶液と、3.3gの過酸化水素水(過酸化水素を30wt%含有)と、50gの水と、を混合攪拌して酸性水溶液を作製した。実施例2の酸性水溶液では、過酸化水素の含有率が1質量%であり、カルボキシメチルセルロースの含有率が1.4質量%である。そして、試験片を略垂直に立て掛けた後に、試験片に酸性水溶液を塗布し、大気中で2時間乾燥させて不動態皮膜を形成した。
次に、比較例1の試験片における不動態皮膜の形成方法について説明する。まず、不動態皮膜を形成するための酸性水溶液の作製方法について説明する。3.3gの過酸化水素水(過酸化水素を30wt%含有)と、96.7gの水とを混合攪拌して酸性水溶液を作製した。比較例1の酸性水溶液では、過酸化水素の含有率が1質量%である。比較例1の酸性水溶液では実施例1、2の酸性水溶液と相違し、酸性水溶液にはカルボキシメチルセルロース等の増粘剤が含まれていない。そして、試験片を略垂直に立て掛けた後に、試験片に酸性水溶液を塗布し、大気中で2時間乾燥させて不動態皮膜を形成した。なお、酸性水溶液の塗布作業時には、試験片の表面での酸性水溶液の弾きや流動が多く認められたので、酸性水溶液を繰り返し塗布した。また、比較例2の試験片として酸洗処理をしていない未処理材(自然酸化皮膜を除去していない試験片)を用いた。
(耐食性評価試験)
実施例1、2及び比較例1、2の各試験片について耐孔食性を評価するため耐食性評価試験を行った。まず、耐食性評価試験方法について説明する。耐食性評価試験については、JIS G 0578−2000のステンレス鋼の塩化第二鉄腐食試験方法に準拠して行った。具体的には、各試験片を50℃、0.2mol/L塩酸酸性の20wt%塩化第二鉄溶液に浸漬させて、各試験片の浸漬時間に対する重量変化を測定した。
図3は、耐食性評価試験結果を示すグラフである。図3のグラフでは、横軸に塩化第二鉄溶液への浸漬時間(h)を取り、縦軸に各試験片の腐食減量(単位面積当たりの質量減少量)を取り、実施例1の試験片の腐食減量を黒丸で表し、実施例2の試験片の腐食減量を黒四角形で表し、比較例1の試験片の腐食減量を白菱形で表し、比較例2の試験片の腐食減量を白三角形で表している。
図3のグラフから明らかなように、実施例1、2の試験片の腐食減量は、比較例1、2の試験片の腐食減量よりも小さい結果が得られた。この結果から、カルボキシメチルセルロースを含む酸性水溶液を用いて不動態化処理した試験片は、カルボキシメチルセルロースを含まない酸性水溶液を用いて不動態化処理した試験片、及び自然酸化皮膜が形成されている未処理材からなる試験片より耐食性が向上することが明らかとなった。
また、実施例1の試験片の腐食減量は、実施例2の腐食減量より小さい結果が得られた。この結果から、カルボキシメチルセルロースの含有率が1.4質量%以上2.9質量%以下である酸性水溶液を用いて不動態化処理する場合には、カルボキシメチルセルロースの含有率が0質量%より多く1.4質量%より少ない酸性水溶液を用いて不動態化処理する場合よりも、耐食性をより向上させた不動態皮膜が得られることが明らかになった。この理由については、カルボキシメチルセルロースの含有率が1.4質量%以上2.9質量%以下である酸性水溶液を用いて不動態化処理する場合には、酸性水溶液の粘性がより高くなるので、試験片の表面に酸性水溶液に含まれる過酸化水素がより強固に保持されることによると考えられる。
図4は、各試験片の腐食速度(単位時間当たりの腐食減量)を示すグラフである。各試験片の腐食速度については、図3のグラフにおける各試験片の直線の傾きを最小二乗法で算出して腐食速度(単位時間当たりの腐食減量)を求めた。実施例1の試験片の腐食速度は52.96〔(g/m)/h〕であり、実施例2の試験片の腐食速度は74.67〔(g/m)/h〕であり、比較例1の試験片の腐食速度は75.29〔(g/m)/h〕であり、比較例2の試験片の腐食速度は170.88〔(g/m)/h〕であった。
腐食速度に基づいて比較したところ、実施例1の試験片は、比較例1の試験片に対して約30%耐食性が向上し、比較例2の試験片に対して約69%耐食性が向上していることが明らかになった。また、実施例2の試験片は、比較例1の試験片に対して約1%耐食性が向上し、比較例2の試験片に対して約30%耐食性が向上していることが明らかになった。
この耐食性評価試験結果から、過酸化水素とカルボキシメチルセルロースとを含む酸性水溶液を塗布して不動態皮膜を形成することにより、カルボキシメチルセルロースを含まない不動態化処理液を塗布して不動態皮膜を形成する場合及び自然酸化皮膜が形成されている未処理材よりも、ステンレス鋼部品の耐食性が向上することが明らかとなった。
10 不動態化処理したステンレス鋼部品、12 ステンレス鋼部品、14 不動態皮膜。

Claims (6)

  1. ステンレス鋼部品の不動態化処理方法であって、
    前記ステンレス鋼部品の表面に、過酸化水素と増粘剤とを含む酸性水溶液を塗布する塗布工程と、
    前記酸性水溶液が塗布されたステンレス鋼部品を乾燥して、前記ステンレス鋼部品の表面に不動態皮膜を形成する乾燥工程と、
    を備え
    前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナンまたはプロピレングリコールであることを特徴とするステンレス鋼部品の不動態化処理方法。
  2. 請求項に記載のステンレス鋼部品の不動態化処理方法であって、
    前記増粘剤の含有率は、0質量%より大きく10質量%以下であることを特徴とするステンレス鋼部品の不動態化処理方法。
  3. 請求項に記載のステンレス鋼部品の不動態化処理方法であって、
    前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロースであり、
    前記カルボキシメチルセルロースの含有率は、0質量%より大きく2.9質量%以下であることを特徴とするステンレス鋼部品の不動態化処理方法。
  4. 請求項に記載のステンレス鋼部品の不動態化処理方法であって、
    前記カルボキシメチルセルロースの含有率は、1.4質量%以上2.9質量%以下であることを特徴とするステンレス鋼部品の不動態化処理方法。
  5. 請求項1からのいずれか1つに記載のステンレス鋼部品の不動態化処理方法であって、
    前記塗布工程の前に、前記ステンレス鋼部品の表面の自然酸化皮膜を除去する前処理工程を備えることを特徴とするステンレス鋼部品の不動態化処理方法。
  6. 請求項1からのいずれか1つに記載のステンレス鋼部品の不動態化処理方法であって、
    前記ステンレス鋼部品の表面は、非水平面を含むことを特徴とするステンレス鋼部品の不動態化処理方法。
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