JP3057033B2 - ステンレス鋼防食表面処理方法 - Google Patents

ステンレス鋼防食表面処理方法

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JP3057033B2 JP9202558A JP20255897A JP3057033B2 JP 3057033 B2 JP3057033 B2 JP 3057033B2 JP 9202558 A JP9202558 A JP 9202558A JP 20255897 A JP20255897 A JP 20255897A JP 3057033 B2 JP3057033 B2 JP 3057033B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼の防
食性を向上させるための表面処理方法に関し、詳しく
は、ステンレス鋼の表面に電気化学的に不働態被膜を形
成することによりステンレス鋼の防食性を向上させる方
法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ステン
レス鋼は、空気やその他の酸化剤が存在する酸化性の環
境下では、Crを主成分とした安定な不働態被膜をその
表面に形成するため、優れた防食性を示す。しかし、還
元性の環境下においては、酸化性の環境下におけるよう
な不働態被膜をその表面に形成することができず、腐食
を招く場合がある。例えば、配管継手の隙間腐食などは
その一例である。
【0003】また、塩化物を含有する物質を扱うことが
多い食品工業などにおいては、不働態被膜が形成される
ような雰囲気で使用される場合であっても、塩化物によ
るステンレス鋼の腐食に悩まされているのが実情であ
る。
【0004】そこで、ステンレス鋼を予め強力な酸化性
雰囲気にさらして、その表面に不働態被膜を形成する処
理が行われている。しかし、ステンレス鋼の表面には自
然放置の状態においても酸化被膜が存在しており、この
酸化被膜が不働態化処理反応の進行を妨げるため、防食
性に優れた不働態被膜を十分に生成することができない
場合がある。
【0005】そのため、ステンレス鋼の表面に不働態被
膜を形成する際の効果を高める目的で、前処理(活性化
処理)を行い、ステンレス鋼の表面を活性状態にしてお
く方法がある。例えば、SUS304鋼を50%硫
酸、50℃の溶液に浸漬する方法、10%硝酸+2〜
3%HF,70〜80℃の溶液に浸漬する方法などがこ
れに相当する。しかし、これらの方法においては、活性
化処理の際にも酸化被膜が形成されたり、また、処理後
の水洗工程や、大気と接触する工程において酸化被膜が
形成されたりして、不働態化処理反応が妨げられるとい
う問題点がある。
【0006】そこで、このような問題点を解決するため
に、ステンレス鋼が不働態化を起こしうる処理液中で、
ステンレス鋼の表面の被膜を機械的に破壊して除去し、
新しい不働態被膜をステンレス鋼の表面に形成する方法
が提案されている(特開昭62−235476号公
報)。しかし、この、表面の被膜を機械的に破壊して除
去する方法では、前処理工程でステンレス鋼の表面の被
膜を機械的に破壊して除去することが必要になり、設備
の構造が複雑になってコストの増大を招くという問題点
がある。また、この方法の場合、表面の被膜は強制的に
除去されるが、不働態被膜の形成自体はその環境(処理
液条件)に支配されることになるため、必ずしも所望の
防食性を得ることができないという問題点がある。
【0007】本発明は、上記問題点を解決するものであ
り、機械的に酸化被膜を除去することが不要で、しか
も、ステンレス鋼の表面に十分に不働態被膜を形成し
て、防食性を大幅に向上させることが可能なステンレス
鋼防食表面処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のステンレス鋼防食表面処理方法は、ステン
レス鋼の表面に不働態被膜を形成することにより、ステ
ンレス鋼の防食性を向上させるための表面処理方法であ
って、1〜20重量%の硫酸を含有する、溶存酸素を除
去した硫酸水溶液中にステンレス鋼を浸漬し、 (a)処理電位:−0.1〜1.0V(NHE基準)、 (b)掃引速度:0.01〜0.10V/min、 (c)分極終了電位:ステンレス鋼の不働態化電位より貴
で、かつ、過不働態化電位より卑の電位領域(不働態
域)において、実質的に電流値が最も小さくなる電位領
域、 (d)終了電位保持時間:0〜30分の条件でステンレス
鋼を陽極として分極を行うことを特徴としている。
【0009】硫酸を含有する処理液中でステンレス鋼を
分極し、過不働態化電位より卑の電位でステンレス鋼の
分極を停止することにより、機械的に酸化被膜を除去し
たりすることなく、ステンレス鋼の表面に十分に不働態
被膜を形成することが可能になり、防食性を大幅に向上
させることが可能になる。すなわち、分極の条件や時間
などを制御することにより、不働態被膜を十分に形成す
ることが可能になり、意図する防食特性を実現すること
が可能になる。なお、本発明において、「過不働態化電
位より卑の電位」とは、図9の活性溶解域(B域)と不
働態域(C域)の境界点Ep(不働態化電位)より貴の
電位で、不働態域(C域)と過不働態域(D域)との境
界点の電位(過不働態化電位)より卑な電位を意味する
ものである。図9は、ポテンショスタットを用い、ステ
ンレス鋼を所定の処理液中で分極した場合の曲線(分極
曲線)を示す図であり、図9において、A域がカソード
域、B域が活性溶解域、C域が不働態域、D域が過不働
態域と呼ばれる領域である。なお、活性溶解域(B域)
においては、電位が貴になるにしたがい、急激に電流が
流れ、ステンレス鋼の表面が腐食する。そして、電位が
さらに貴になり、活性溶解域(B域)と不働態域(C
域)の境界点Ep(不働態化電位)に達すると、電流は
減少しはじめ、不働態域(C域)では電流が非常に少な
くなって腐食が抑制される。それから、さらに電位が貴
になり、過不働態域(D域)に達すると、再び電流が流
れはじめ、ステンレス鋼の表面が腐食されるようにな
る。
【0010】また、本発明のステンレス鋼防食表面処理
方法は、処理液として、1〜20重量%の硫酸を含有す
る水溶液を用いるようにしているので、ステンレス鋼の
表面に十分に不働態被膜を形成することが可能になり、
防食性を大幅に向上させることが可能になる。
【0011】なお、処理液中の硫酸の含有率を1〜20
重量%としているのは、硫酸の含有量が1重量%未満に
なると活性溶解域での腐食電流値が小さくなる(表面の
腐食量が少なくなる)ため十分な防食性被膜が形成され
ず、また、20重量%を越えると活性溶解域での腐食電
流値が大きくなる(表面の腐食量が増大する)ため、処
理中のステンレス鋼の表面が腐食してしまうことによ
る。
【0012】また、本発明のステンレス鋼防食表面処理
方法は、処理液として、溶存酸素を除去したものを用い
ているので、ステンレス鋼の表面をさらに効率よく分極
して、その表面に不働態被膜を形成することが可能にな
り、本発明をより実効あらしめることができる。なお、
溶存酸素を除去する方法としては、処理液を沸騰させて
溶存酸素を除去する方法や不活性ガスを通気して酸素を
除去する方法など、種々の方法を用いることが可能であ
る。
【0013】なお、本発明のステンレス鋼防食表面処理
方法においては、具体的には、 (a)処理電位:−0.1〜1.0V(NHE基準)、 (b)掃引速度:0.01〜0.10V/min、 (c)分極終了電位:ステンレス鋼の不働態化電位より貴
で、かつ、過不働態化電位より卑の電位領域(不働態
域)において、実質的に電流値が最も小さくなる電位領
域、 (d)終了電位保持時間:0〜30分。 の条件でステンレ
ス鋼を陽極として分極を行うようにしており、かかる条
件で分極処理を行うことにより、ステンレス鋼の表面に
不働態被膜を効率よく形成するとともに、ステンレス鋼
の表面状態、すなわち、不働態被膜の状態を、より確実
に最も腐食されにくい状態とすることが可能になる。
【0014】また、請求項2のステンレス鋼防食表面処
理方法は、前記処理液として、1〜20重量%の硫酸を
含有する水溶液を沸騰させたものを用いることを特徴と
している。
【0015】沸騰状態の硫酸水溶液を処理液として用い
た場合、酸素を含まない処理液中で分極を確実に行うこ
とが可能になり、より確実に十分な不働態被膜を形成し
て防食性を大幅に向上させることが可能になる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示し
て、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0017】[実施形態1(分極による防食表面処理の
効果の確認)] (1)防食表面処理(分極処理) 試料として、SUS316試験片を用意し、これを処理
液に浸漬して、以下の条件で分極による防食表面処理を
行い、被検試料(実施例1)を得た。 処理液組成 :硫酸1.0重量%を含有する水溶液 温度 :沸点(大気圧) 処理電位 :−0.30〜0.50V(vs飽和K
Cl Ag/AgCl電極) 掃引速度 :0.020V/min 終了電位保持時間:0分
【0018】また、比較のため、防食表面処理を全く行
わない試料(比較試料1)と、SUS316試験片を硝
酸30重量%を含有する水溶液(温度50〜60℃)に
1時間浸漬して不働態化処理した試料(比較試料2)を
用意した。
【0019】(2)防食性評価 それから、上記各試料について、以下の条件で、塩化物
環境における防食性評価(孔食電位測定)を行った。 試験溶液 : 5重量%NaCl水溶液(通気) 温度 : 50℃ 掃引速度 : 0.020V/min pH : 5.5及び7.0
【0020】図1にpH5.5のときの分極曲線を示す
とともに、孔食電位の測定結果を図2及び図3に示す。
なお、図2はpH5.5のときの孔食電位の測定結果、
図3はpH7.0のときの孔食電位の測定結果を示して
いる。
【0021】まず、図1の分極曲線から、分極による防
食表面処理を行った電気化学的不働態処理材(実施例
1)は、未処理材(比較試料1)及び硝酸不働態処理材
(比較試料2)に比べて防食性が大幅に向上しているこ
とがわかる。また、図2に示すように、pH5.5のと
き、比較試料1(未処理材)では、孔食電位が約0.1
5〜0.32V、比較試料2(硝酸不働態処理材)で
は、孔食電位が約0.50〜0.60Vであるのに対し
て、実施例1の試料では、0.95〜1.00Vとなっ
ており、塩化物環境に対する防食性が大幅に向上してい
ることがわかる。
【0022】また、図3に示すように、pH7.0のと
き、比較試料1(未処理材)では、孔食電位が約0.1
5〜0.30V、比較試料2(硝酸不働態処理材)で
は、孔食電位が約0.60〜0.80Vであるのに対し
て、実施例1の試料では、0.90〜1.00Vとなっ
ており、塩化物環境に対する防食性が大幅に向上してい
ることがわかる。
【0023】なお、この防食性評価試験において、上記
実施例1の試料に関して得られた特性(孔食電位)は、
図4に示すように、ハステロイC−22やハステロイC
−276と遜色のないものである。
【0024】[実施形態2(塩化物環境に対する防食性
確認試験)] (1)防食表面処理(分極処理) 試料として、SUS316試験片を用意し、これを処理
液に浸漬して、以下の条件で分極による防食表面処理を
行い被検試料を得た。 処理液組成 :硫酸1.0重量%を含有する水溶液 温度 :沸点(大気圧) 処理電位 :−0.30〜0.40V(vs飽和K
Cl Ag/AgCl電極)(NHE基準) 掃引速度 :0.020V/min 終了電位保持時間:10分 なお、終了電位は、不働態化電位より貴で、過不働態化
電位より卑の電位領域(不働態域)において、実質的に
最も電流値の小さくなる電位である。
【0025】上記電気化学的不働態処理を行うにあたっ
ては、参照電極として飽和KClAg/AgCl電極を
使用し、系外からの不純物の混入を防ぐために塩橋を使
用した。また、飽和KCl Ag/AgCl電極測定電
位は、下記の式によりNHE基準電位に換算した。 NHE基準電位=飽和KCl Ag/AgCl電極測定
電位+0.199V
【0026】(2)防食性評価 上記のようにして得た被検試料につき、表1に示すよう
な塩化物環境の下で防食性評価(孔食電位測定)を行っ
た。なお、被検試料としては、上記の方法により防食表
面処理(分極処理)を行った後、一日放置したものを用
いた。
【0027】
【表1】
【0028】各試験溶液で測定した孔食電位を図5〜図
8に示す。図5(a),(b)は孔食電位の温度依存性を、
図6(a),(b)は孔食電位のNaCl濃度依存性を、図
7(a),(b),(c)は各温度における孔食電位の各温度
におけるpH依存性を、さらに、図8(a),(b)は孔食
電位に対する温度と濃度の関係を示している。なお、図
5〜図8は、同一データを縦軸及び横軸にとる項目を変
えてグラフ化したものである。
【0029】図5〜図8に示すように、例えば、防食性
判断の基準電位を孔食電位0.60V(vs飽和KCl
Ag/AgCl電極)とした場合、NaClが3重量
%、5重量%、及び10重量%のすべての場合におい
て、30℃では、pH1.0及びpH5.0のいずれの
場合にも孔食電位が0.60V(vs飽和KCl Ag
/AgCl電極)以上であり、十分な防食性を有してい
ることがわかる。
【0030】しかし、温度が50℃以上になるとpH
1.0では、NaClが3重量%、5重量%、及び10
重量%のすべての場合において、孔食電位が基準電位を
下回り、防食性が不十分であるという結果になってい
る。
【0031】一方、pH5.0では、温度が50℃にな
っても、NaClが3重量%、5重量%、及び10重量
%のすべての場合において、孔食電位がほぼ基準電位以
上になっており、80℃の場合にも、NaClが3重量
%及び5重量%の場合には、孔食電位が基準電位をわず
かに下回っているだけであることがわかる(ただし、N
aClが10重量%の場合には、孔食電位が基準電位を
相当に下回っている)。
【0032】また、孔食電位に対する温度と濃度の関係
を示す図8(a),(b)から明らかなように、pH1.0
では、温度30℃の場合に、孔食電位が基準電位0.6
0V(vs飽和KCl Ag/AgCl電極)を上回っ
ており、pH5.0では、温度30℃及び50℃の場合
に、孔食電位が基準電位0.60V(vs飽和KClA
g/AgCl電極)を上回っていることがわかる。
【0033】上記の結果より、本発明の防食表面処理方
法により処理を行った場合、防食性が大幅に向上するこ
とがわかる。
【0034】なお、上記実施形態2では、pHの低下、
NaCl濃度の上昇、温度の上昇などにより孔食電位が
低下する傾向が認められているが、これは、ハステロイ
などの高級ステンレス鋼などにもみられる傾向であり、
特別なものではない。
【0035】また、上記実施形態1及び2では、被検試
料として、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS
316を用いた場合について説明したが、SUS304
などの他のオーステナイト系ステンレス鋼や、さらには
オーステナイト系以外のフェライト系ステンレス鋼(S
US405,SUS430など)、2相系ステンレス鋼
(SUS329JIなど)、高Ni合金(Alloy8
00)、Ni基合金(Alloy600)などにも本発
明を適用することが可能である。
【0036】また、上記実施形態1,2では、掃引速度
を0.020V/minとした場合について説明したが、
本発明のステンレス鋼防食表面処理方法において、掃引
速度には特別の制約はない。ただし、掃引速度があまり
大きくなると孔食電位測定結果のバラツキが大きくなる
傾向があるので、通常は、0.050V/min以下とす
ることが望ましい。
【0037】また、上記実施形態2では、終了電位保持
時間を10分とした場合について説明したが、終了電位
保持時間は、これに限られるものではなく、10分より
短くすることも可能であり、また、10分より長くする
ことも可能である。
【0038】また、上記実施形態1,2では、硫酸1.
0重量%を含有する水溶液を処理液として用いた場合に
ついて説明したが、処理液組成はこれに限られるもので
はなく、硫酸濃度を変化させることも可能であり、ま
た、硫酸以外の成分を添加することも可能である。さら
に、硫酸を含まない、例えば、分極を行った場合に、活
性溶解域が観測され、不働態化を起こしうるような種々
の処理液を用いることも可能である。
【0039】さらに、上記実施形態1,2では、上記処
理液を沸騰状態にすることにより、酸素を含まない状態
として用いているが、酸素不含のガスを通気して酸素を
除去した処理液を用いることも可能である。
【0040】本発明は、さらにその他の点においても上
記実施形態に限定されるものではなく、分極を行う際の
具体的な処理電位、処理液中の溶存酸素を除去する方
法、分極を行う際の具体的な電位領域などに関し、発明
の要旨の範囲内において種々の応用、変形を加えること
が可能である。
【0041】
【発明の効果】上述のように、本発明のステンレス鋼防
食表面処理方法は、1〜20重量%の硫酸を含有する、
溶存酸素を除去した硫酸水溶液中にステンレス鋼を浸漬
し、 (a)処理電位:−0.1〜1.0V(NHE基準)、 (b)掃引速度:0.01〜0.10V/min、 (c)分極終了電位:ステンレス鋼の不働態化電位より貴
で、かつ、過不働態化電位より卑の電位領域(不働態
域)において、実質的に電流値が最も小さくなる電位領
域、 (d)終了電位保持時間:0〜30分の条件でステンレス
鋼を陽極として分極を行うようにしているので、 機械的
に酸化被膜を除去したりすることなく、ステンレス鋼の
表面に十分に不働態被膜を形成することが可能になり、
防食性を大幅に向上させることができる。すなわち、分
極の条件や時間などを制御することにより、不働態被膜
を十分に形成することが可能になり、意図する防食特性
を実現することができる。
【0042】具体的には、1〜20重量%の硫酸を含有
する、溶存酸素を除去した硫酸水溶液中に、ステンレス
鋼を浸漬し、処理電位:−0.1〜1.0V(NHE基
準)、掃引速度:0.01〜0.10V/min、分極終
了電位:ステンレス鋼の不働態化電位より貴で、かつ、
過不働態化電位より卑の電位領域(不働態域)におい
て、実質的に電流値が最も小さくなる電位領域、終了電
位保持時間:1〜30分の条件で、ステンレス鋼を陽極
として分極を行うことにより、ステンレス鋼の表面に不
働態被膜を効率よく形成することができる。
【0043】また、沸騰状態の硫酸水溶液を処理液とし
て用いた場合、酸素を含まない処理液中で分極を確実に
行うことが可能になり、より確実に十分な不働態被膜を
形成して防食性を大幅に向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により不働態処理を行った材料、
従来の方法で不働態処理を行った材料、及び未処理材に
ついての分極曲線を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるステンレス鋼防食
表面処理方法により処理を行った後の、pH5.5にお
ける孔食電位の測定結果を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるステンレス鋼防食
表面処理方法により処理を行った後の、pH7.0にお
ける孔食電位の測定結果を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるステンレス鋼防食
表面処理方法により処理を行った後の試料とハステロイ
C−22及びハステロイC−276の性能を比較するた
めの線図である。
【図5】(a),(b)は、いずれも本発明の一実施形態に
かかるステンレス鋼防食表面処理方法により処理を行っ
た試料の孔食電位の温度依存性を示す図である。
【図6】(a),(b)は、いずれも本発明の一実施形態に
かかるステンレス鋼防食表面処理方法により処理を行っ
た試料の孔食電位のNaCl濃度依存性を示す図であ
る。
【図7】(a),(b),(c)は、いずれも本発明の一実施
形態にかかるステンレス鋼防食表面処理方法により処理
を行った試料の孔食電位の各温度におけるpH依存性を
示す図である。
【図8】(a),(b)は、いずれも本発明の一実施形態に
かかるステンレス鋼防食表面処理方法により処理を行っ
た試料の孔食電位に対する温度と濃度の関係を示してい
る。
【図9】ステンレス鋼の分極曲線を模式的に示す線図で
ある。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ステンレス鋼の表面に不働態被膜を形成す
    ることにより、ステンレス鋼の防食性を向上させるため
    の表面処理方法であって、1〜20重量%の硫酸を含有する、溶存酸素を除去した
    硫酸水溶液中にステンレス鋼を浸漬し、 (a)処理電位:−0.1〜1.0V(NHE基準)、 (b)掃引速度:0.01〜0.10V/min、 (c)分極終了電位:ステンレス鋼の不働態化電位より貴
    で、かつ、過不働態化電位より卑の電位領域(不働態
    域)において、実質的に電流値が最も小さくなる電位領
    域、 (d)終了電位保持時間:0〜30分の条件でステンレス
    鋼を陽極として分極を行うことを特徴とするステンレス
    鋼防食表面処理方法。
  2. 【請求項2】前記処理液として、1〜20重量%の硫酸
    を含有する水溶液を沸騰させたものを用いることを特徴
    とする請求項1記載のステンレス鋼防食表面処理方法。
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