JP2005126743A - ステンレス鋼の高耐食化表面処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 強酸や強酸化剤を用いることなくステンレス鋼の不動態皮膜を強化するため、アルカリ性水溶液を用いた高耐食化表面処理方法を提供する。
【解決手段】 非酸化性アルカリ水溶液にステンレス鋼を24時間以上浸漬することを特徴とするステンレス鋼の表面処理方法。また非酸化性アルカリ水溶液としては、NaOH 40mass%以上60mass%以下を含有した70〜100℃の水溶液が好ましい。本発明は非酸化性アルカリ水溶液にステンレス鋼を浸漬することで、従来技術による不動態皮膜と比べ非常に厚い皮膜を形成することができる。さらに本発明の方法により得られる皮膜は、Cr濃度がFe濃度より多くなり、緻密な非晶質皮膜となって高い耐食性を発揮する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、大気・淡水・化学プラント・薬品タンク環境など、塩化物環境で使用する高耐食ステンレス鋼及び耐食性を向上させる表面処理方法に関するものである。
ステンレス鋼の耐食性を向上させる目的で実施される不動態化処理方法は、大きく分けて、(l)硝酸その他強力な酸化剤を含む溶液に浸漬する方法、(2)酸素または清浄な空気中における低温加熱による方法、(3)酸化剤を含む溶液中における陽極分極による方法、の3方法が知られている。
ステンレス鋼表面の不動態皮膜の構造はまだ完全には明確になっていないが、本質的にはCr23・nH2Oで表されるような、厚さが1〜3nmの酸化膜で、ガラスのような固体の非晶質であり、均一で薄い化学的に安定な膜になっていると考えられている。硝弗酸や硝酸中での不動態化処理は、不動態皮膜中のCr元素の濃縮により、安定な不動態皮膜を形成させると考えられている(非特許文献2)。
このうち一般的なのは(1)による方法で、約1%HF、30%HNO3、残りH2Oからなる硝弗酸、もしくは10〜30%硝酸などの、酸化性の強い酸液中で浸漬あるいは電解処理する方法が、非特許文献1に開示されている。また特許文献1には、硝酸を5〜40%、塩酸を0.5〜2.0%を含み、残りが水およびインヒビタ0.1g〜10g/lからなる50〜70℃の液に30〜90秒ステンレス鋼を浸漬するステンレス鋼表面の不動態化処理方法が開示されている。
これらの不動態化処理方法のうち、弗化水素酸(HF)は労働安全衛生法施行令特定化学物質等第2類物質に指定されていること、および、硝酸との混合物においては窒素酸化物が発生するため、これを用いない工程の開発が望まれている。また、不動態化処理後の廃酸については中和処理など廃棄のための処理工程が必要で、また電解する場合は電解設備が必要であり、いずれも製造コストの上昇に繋がる。
さらには、ステンレス鋼材を組立てる製造現場において、溶接スケール除去、グラインダ手入れの後に不動態処理を施す場合がある。このような屋外の製造現場では、特に廃酸の処理工程を簡略化できる不動態化処理方法が望まれている。
また、さらに厚い皮膜を形成させる方法としては化学着色法が実用化されている。湿式酸化法としては、(1)酸性酸化法(インコ(InternationalNickelCompany)法が代表的)、(2)アルカリ酸化法、(3)溶融塩酸化法がある。このうち(2)のアルカリ酸化法については、カセイソーダと過酸化鉛の溶液への浸漬を特徴とする。このうち高酸化性溶液の使用あるいはさらにステンレス鋼を電解処理することを特徴とする。(非特許文献3)
特開昭52−106333号公報 ステンレス鋼便覧、1973年8月30日、日刊工業新聞社発行、p.846 ステンレス鋼便覧第3版、1995年1月24日、日刊工業新聞社発行、p.427 ステンレス鋼便覧第3版、1995年1月24日、日刊工業新聞社発行、p.1149
従来技術による不動態化処理は、弗酸、硝酸あるいは塩酸のごとき強酸を用いており、また化学着色においても強酸化剤を用いている。そこで本発明はこれらの有害物質や強酸の使用を極力抑えることを課題として、アルカリ性の溶液を用いた高耐食化表面処理方法を提供することを目的とする。
以上の課題に対し、以下の本発明によって解決を図る。
(1) 非酸化性アルカリ水溶液にステンレス鋼を24時間以上浸漬することを特徴とするステンレス鋼の表面処理方法。
(2) 非酸化性アルカリ水溶液が、NaOH 40mass%以上60mass%以下を含有した70〜100℃の水溶液であることを特徴とする(1)のステンレス鋼の表面処理方法。
本発明によれば、硝弗酸や硝酸を用いた従来法と同等以上に安定した高耐食性酸化皮膜を形成できる。また強酸や特別な酸化剤を用いないため薬液処理に関わる環境負荷を低減できる。
本発明者がこの表面処理方法を発明したのは、以下の現象を知見したことによる。50質量%のNaOH水溶液に浸漬したステンレス鋼の耐食性を調査したところ、浸漬前に比べて非常に耐食性が高くなっているステンレス鋼板があることが判明した。その理由は、表面のGDS(GlowDischargeSpectroscopy:グロー放電発光分光分析法)を使った元素分析の結果、NaOH溶解作用と表面の酸素による酸化作用が表面のCr量の増大、Fe量の減少及びCr酸化物の増大をもたらし、その酸化物が下地金属を保護して耐食性を上昇させるためであると考えた。
そこで、50質量%のNaOH水溶液を80℃に保ち、それに10日間浸漬した18%Cr−(8〜12)%Niを基本成分とするオーステナイト系ステンレス鋼について、80℃、人工海水溶液中で孔食発生電位を測定した結果、浸漬しない同鋼種材に比較し500〜850mV孔食電位が上回っていた。
以下に本発明の限定条件について説明する。本発明は非酸化性アルカリ水溶液にステンレス鋼を浸漬することで、従来技術による不動態皮膜と比べ非常に厚い皮膜を形成することができる。さらに本発明の方法により得られる皮膜は、Cr濃度がFe濃度より多くなり、緻密な非晶質皮膜となって高い耐食性を発揮する。このような皮膜を形成するには、アルカリ水溶液への浸漬処理時間として24時間以上、好ましくは数日間浸漬しておくことが好ましい。
また非酸化性アルカリ水溶液としては、NaOH、KOHなどが代表としてあげられるが、NaOHの場合は、濃度を40mass%以上60mass%以下の範囲とするのが、反応性や溶液の取扱いの面から好ましい。
また、水溶液の温度は70〜100℃とするのが好ましい。70℃より低い温度では皮膜形成非常に遅く、実用可能な作業時間内ではほとんど効果が得られない。一方100℃を超えると反応が速く進みすぎ、下地の侵食が現れ始めるからである。
なお、本発明は鋼板を酸化させることを特徴とすることから、溶液には酸素が供給されることが必要である。通常は水溶液が大気に触れていれば良いが、バブリングにより酸素または空気を供給すれば、反応速度をある程度向上させることができる。
また、アルカリ処理に先立って表面を清浄にしておくことで、皮膜形成速度の向上と皮膜の均一化を図ることができる。
また、浸漬処理の後、低温で熱処理することにより、浸漬処理により形成された表面酸化膜をより緻密な耐食皮膜に改善させることができる。熱処理温度は150℃より温度が低い場合は効果がなく、300℃を超えた場合は新たな酸化が進むためかえって耐食性を損なうことになる。
表1に示す成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるオーステナイト形ステンレス鋼を供試材とし、表2に示す条件で処理を行った後、GDSにより皮膜の主な組成と厚みを測定し、また80℃人工海水中での孔食発生電位を測定した結果を表2に示す。本表面処理を施したステンレス鋼板は、孔食発生電位が平均で500mV〜850mV上回っており、耐孔食性の向上が明らかである。
Figure 2005126743
Figure 2005126743

Claims (2)

  1. 非酸化性アルカリ水溶液にステンレス鋼を24時間以上浸漬することを特徴とするステンレス鋼の表面処理方法。
  2. 非酸化性アルカリ水溶液が、NaOH 40mass%以上60mass%以下を含有した70〜100℃の水溶液であることを特徴とする請求項1記載のステンレス鋼の表面処理方法。
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