JP2005029828A - ステンレス鋼用の酸洗剤 - Google Patents
ステンレス鋼用の酸洗剤 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005029828A JP2005029828A JP2003195248A JP2003195248A JP2005029828A JP 2005029828 A JP2005029828 A JP 2005029828A JP 2003195248 A JP2003195248 A JP 2003195248A JP 2003195248 A JP2003195248 A JP 2003195248A JP 2005029828 A JP2005029828 A JP 2005029828A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- acid
- stainless steel
- viscosity
- detergent
- pickling
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C23—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
- C23G—CLEANING OR DE-GREASING OF METALLIC MATERIAL BY CHEMICAL METHODS OTHER THAN ELECTROLYSIS
- C23G1/00—Cleaning or pickling metallic material with solutions or molten salts
- C23G1/02—Cleaning or pickling metallic material with solutions or molten salts with acid solutions
- C23G1/025—Cleaning or pickling metallic material with solutions or molten salts with acid solutions acidic pickling pastes
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Materials Engineering (AREA)
- Mechanical Engineering (AREA)
- Metallurgy (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)
Abstract
【課題】ステンレス鋼に局所的に発生したスケールを、ステンレス鋼の全体を酸洗槽に浸漬することなく除去する事が可能で、且つ環境を汚染する硝酸を含有しない酸洗剤。
【解決手段】硫酸10〜200g/Lあるいは塩酸5〜150g/Lと、フッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムから選ばれる1または2以上を1〜40g/Lと、Fe3+イオン5〜40g/Lとを含有し、粘性付与剤を加えてペースト状にした酸洗剤。更に過酸化水素5〜15g/L、過硫酸ナトリウム5〜10g/Lを含有させることができる。ペーストの粘度は3000〜5000CPSとする事が好ましい
【選択図】なし
【解決手段】硫酸10〜200g/Lあるいは塩酸5〜150g/Lと、フッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムから選ばれる1または2以上を1〜40g/Lと、Fe3+イオン5〜40g/Lとを含有し、粘性付与剤を加えてペースト状にした酸洗剤。更に過酸化水素5〜15g/L、過硫酸ナトリウム5〜10g/Lを含有させることができる。ペーストの粘度は3000〜5000CPSとする事が好ましい
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品等のスケール除去に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼板やステンレス鋼線の製造においてもスケールの除去が行われている。しかしこれ等のステンレス鋼の製造のプロセスにおけるスケールの除去では、例えば酸洗槽等にステンレス鋼板やステンレス鋼線を逐次浸漬し、その全表面を均一に酸洗する。
【0003】
一方、溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品ではスケールは溶接や熱処理が行われた局所に発生する。このためスケールの除去も局所的に行う事が好ましく、全表面を均一に酸洗する従来の方法は不適当である。
【0004】
即ち全表面を均一に酸洗する従来の方法は、酸洗する表面積が広いために大きな酸洗槽が必要であり設備費が高い。一方溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品等では、スケールの除去は局所的であり、従って従来よりも設備費が安い簡易な方法であることが好ましい。
【0005】
ステンレス鋼のスケールの除去では、従来は硝酸や硝弗酸が使用されている。
しかし硝酸は廃棄すると河川や湖沼の窒素成分を富化させて環境汚染を発生させる。ステンレス鋼の全表面を均一に酸洗する従来の方法では多量の硝酸を用いるが、硝酸を無公害化するための高価な処理設備を用いて、環境汚染を防止している。しかしスケールの除去が局所的な、溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品等の場合は作業規模が小さいために硝酸を無公害化するための高価な設備は好ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品等のスケールの除去に関する上記の問題点を解決するためのものである。即ち、全体を酸液等に浸漬することなく、また部品、中間成品、補修品、完成品の形状に係らず局所的に発生するスケールを除去する事が可能であり、また大規模な酸洗槽等の設備が不必要であり、かつ硝酸を無公害化するための高価な設備や処理を必要としない、ステンレス鋼用の酸洗剤の提供を課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明は(1)主成分として硫酸10〜200g/Lあるいは塩酸5〜150g/Lと、フッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムから選ばれる1または2以上を合計で1〜40g/Lと、Fe3+イオンを5〜40g/Lとを含有し、硝酸を含有しない水溶液に粘性付与剤を加えてペースト状にした、ステンレス鋼用の酸洗剤である。
【0008】
また(2)前記(1)に更に、過酸化水素5〜15g/L、過酸化ナトリウム5〜10g/Lの何れかあるいは双方を含有せしめたことを特徴とする、ステンレス鋼用の酸洗剤である。
【0009】
また(3)粘性付与剤が多糖類系、有機ポリマー系、ベントナイト系、モンモリロナイト系の粘性付与剤から選ばれる1または2以上で、該ペースト状の酸洗剤の粘度が3000〜5000CPSである事を特徴とする、前記(1)または(2)のステンレス鋼用の酸洗剤である。
【0010】
本発明のステンレス鋼用の酸洗剤は、硫酸または塩酸を含有する。濃度範囲は、硫酸は10〜200g/L、塩酸は5〜150g/Lである。硫酸が10g/L未満ではデスケールに長時間かかるため好ましくない。しかし200g/L超では酸による侵蝕が激しく発生しステンレス鋼の表面性状が悪くなる。塩酸は硫酸よりも反応性が高いが5g/L未満ではデスケールが能率的に進行しない。一方150g/L超では激しく素地を侵蝕しまたステンレス鋼の表面に孔食を生じる。
【0011】
本発明のステンレス鋼用の酸洗剤は、フッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムから選ばれる1または2以上をそれぞれ1〜40g/L含有する。これ等が含有されていない場合はスケールの除去に長時間を要し、デスケールの能率を阻害する。またこれ等を含有しない場合はデスケール後の表面には激しい凹凸が生じ、ステンレス鋼の表面を劣化させる。これ等の含有量が1g/L未満ではデスケールを促進する効果が小さい。一方40g/L以上では効果が飽和し、経済的ではない。
【0012】
ステンレス鋼の表面は白色に仕上げられていることが多い。この白色のステンレス鋼に局所的に発生したスケールを本発明では除去するが、除去した跡が白色化していると、スケール除去後のステンレス鋼の表面は、一様な白色となり光沢むらが少なく美麗になる。本発明者等の知見では、硝酸を含有する場合は硝酸の強い酸化力がデスケールした跡を白色化する。硝酸を含有しない通常の硫酸、塩酸、フッ酸の場合は酸化力が不十分なために、デスケール後のステンレス鋼の表面は白色化しない。本発明では硝酸に代わる酸化剤としてFe3+を含有せしめる。Fe3+イオンを含有せしめると、その酸化力によって、スケールを除去した跡は白色化した表面となる。Fe3+イオンは硫酸第一鉄を酸化して硫酸第二鉄として添加してもよいし、硫酸第二鉄溶液を添加してもよい。しかしFe3+は5g/L未満では効果がなく、また40g/L超では効果が飽和する。
【0013】
本発明者等の知見によると、過酸化水素や過硫酸ナトリウムもFe3+と同様の作用効果を奏する。過酸化水素は35%濃度の水溶液換算で5g/L〜15g/Lが好ましい。5g/L未満では効果がなく、15g/L超では効果が飽和する。また過硫酸ナトリウムは5g/L未満では効果がなく、10g/L超では効果が飽和する。
【0014】
本発明の酸化剤は硝酸を含有していない。硝酸は廃棄すると、河川や湖沼の水中の窒素成分を富化させて環境汚染を発生させる。本発明の酸洗剤は硝酸を含有していないために、廃棄に際しても硝酸を無公害化するための格別の設備や処理は不必要である。従って本発明の酸洗剤は使用に際しては高価な設備は不必要でありまた、作業も簡易である。
【0015】
本発明では、ステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品の局所に発生したスケールを除去する。スケールが例えば垂直に近い場所に発生した場合は、通常の溶液状の酸洗剤では塗布しても酸洗剤はスケールの場所に滞ることがなく流下し、スケール除去の効率が悪い。また流下した酸洗剤はスケールがない部分のステンレス鋼を不必要に腐食させる。
【0016】
本発明の酸洗剤は、粘性付与剤を加えてペースト状にされている。ペースト状にしたために、本発明の酸洗剤は、溶液系では適用が難しかった例えば垂直に近い部位にも容易に適用する事が可能である。粘性付与剤としては酸性環境でも安定な、有機系粘性付与剤例えば発酵多糖類、有機ポリマー等を、また無機系粘性付与剤例えばベントナイト系、モンモリロナイト系のもの等を用いる事ができる。市販の粘性付与剤、例えばSOLAGUM(SEPPIC社製)、KEIZAN ASX(KELCO社製)等を用いてもよい。粘性付与剤は該酸洗剤の粘度が3000〜5000CPSとなる量が好ましく、例えば上記市販の粘性付与剤の場合は添加量は5g/L〜100g/Lとすることができる。
【0017】
【実施例1】
表1は硫酸系の酸洗剤の例である。No.2,3,6,7,12,13,14,15は本発明例である。No.1は硫酸の濃度が低過ぎる。No.8,9,10,11はフッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムを含有しない比較例、No.1,4,5はFe3+,H2O2,Na2SO5を含有していない比較例である。尚表1のFe3+の添加には12%の硫酸第2鉄溶液を用いた。また表1の各酸洗剤には粘性付与剤としてSOLAGUMを5%を添加し25〜30℃での粘度を3000〜5000CPSに調整した。
【0018】
酸洗されるステンレス鋼試料はJIS SUS 304で、1.0mm厚さ×30mm幅×100mm長さの試料2枚を突合せTIG溶接したものを用いた。この試料には溶接線に沿って酸化スケールが連続的に発生していた。TIG溶接線が水平に対して45°の傾斜になるようにステンレス鋼試料を保持し、溶接線に沿って表1のペースト状の酸洗剤をナイロン製のハケで塗着した。塗着後15分間静置し、その後シャワー水洗でペースト状の酸洗剤を洗い流した。表1のデスケールの欄で○は完全にデスケールされていた場合、×は目視観察でスケールが残存する場合を示す。また表1の白色化欄で×はデスケールの跡が灰色の場合で○はデスケールの跡が白色の場合である。表1にみられる如く、本発明例は何れもデスケールの程度が良好で白色化も十分であった。一方比較例ではデスケールの程度、白色化の何れかがあるいは双方が不十分であった。
【0019】
JIS SUS 430を用いて溶接線を有するステンレス鋼試料を作成し、表1と同様の酸洗液を用いて試験したが、本発明の酸洗剤を用いた場合は何れも、デスケールの程度が良好で白色化も十分であった。
【0020】
表2は塩酸系の酸洗剤の例である。No.2,3,4,5,6,7,14,15は本発明例である。No.1は塩酸の濃度が低過ぎる。No.8,9,10,11はフッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムを含有しない比較例、No.12,13はFe3+,H2O2,Na2SO5を含有していない比較例である。尚酸洗剤の粘性、酸洗するステンレス鋼試料、試験方法、及びデスケールの程度と白色化の程度の評価方法は実施例1の場合と同じである。表2にみられる如く、本発明例ではデスケールの程度も白色化も十分であった。一方比較例ではデスケールの程度、白色化の何れかが、あるいは双方が不十分であった。
【0021】
JIS SUS 430を用いて溶接線を有するステンレス鋼試料を作成し、表2と同様の酸洗液を用いて試験したが、本発明の酸洗剤を用いた場合は何れも、デスケールの程度が良好で白色化も十分であった。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、スケールが発生した部分に局所的に塗布する酸洗剤であるために、ステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品等の酸洗に際し、全体を浸漬する必要がなく、従って高価な酸洗槽がなくても簡易に酸洗することがてきる。また本発明は硝酸を含有していない酸洗剤であるために硝酸を無公害にするための高価で煩瑣な廃液処理が不必要である。本発明はペースト状であり流下しないために、酸洗する場所に所望の時間保持する事ができ、このため少ない使用量で有効にデスケールする事ができる。また本発明ではスケールを除去した跡は白色であり、色むらの少ない酸洗ができる。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品等のスケール除去に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼板やステンレス鋼線の製造においてもスケールの除去が行われている。しかしこれ等のステンレス鋼の製造のプロセスにおけるスケールの除去では、例えば酸洗槽等にステンレス鋼板やステンレス鋼線を逐次浸漬し、その全表面を均一に酸洗する。
【0003】
一方、溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品ではスケールは溶接や熱処理が行われた局所に発生する。このためスケールの除去も局所的に行う事が好ましく、全表面を均一に酸洗する従来の方法は不適当である。
【0004】
即ち全表面を均一に酸洗する従来の方法は、酸洗する表面積が広いために大きな酸洗槽が必要であり設備費が高い。一方溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品等では、スケールの除去は局所的であり、従って従来よりも設備費が安い簡易な方法であることが好ましい。
【0005】
ステンレス鋼のスケールの除去では、従来は硝酸や硝弗酸が使用されている。
しかし硝酸は廃棄すると河川や湖沼の窒素成分を富化させて環境汚染を発生させる。ステンレス鋼の全表面を均一に酸洗する従来の方法では多量の硝酸を用いるが、硝酸を無公害化するための高価な処理設備を用いて、環境汚染を防止している。しかしスケールの除去が局所的な、溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品等の場合は作業規模が小さいために硝酸を無公害化するための高価な設備は好ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶接や熱処理を施したステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品等のスケールの除去に関する上記の問題点を解決するためのものである。即ち、全体を酸液等に浸漬することなく、また部品、中間成品、補修品、完成品の形状に係らず局所的に発生するスケールを除去する事が可能であり、また大規模な酸洗槽等の設備が不必要であり、かつ硝酸を無公害化するための高価な設備や処理を必要としない、ステンレス鋼用の酸洗剤の提供を課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明は(1)主成分として硫酸10〜200g/Lあるいは塩酸5〜150g/Lと、フッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムから選ばれる1または2以上を合計で1〜40g/Lと、Fe3+イオンを5〜40g/Lとを含有し、硝酸を含有しない水溶液に粘性付与剤を加えてペースト状にした、ステンレス鋼用の酸洗剤である。
【0008】
また(2)前記(1)に更に、過酸化水素5〜15g/L、過酸化ナトリウム5〜10g/Lの何れかあるいは双方を含有せしめたことを特徴とする、ステンレス鋼用の酸洗剤である。
【0009】
また(3)粘性付与剤が多糖類系、有機ポリマー系、ベントナイト系、モンモリロナイト系の粘性付与剤から選ばれる1または2以上で、該ペースト状の酸洗剤の粘度が3000〜5000CPSである事を特徴とする、前記(1)または(2)のステンレス鋼用の酸洗剤である。
【0010】
本発明のステンレス鋼用の酸洗剤は、硫酸または塩酸を含有する。濃度範囲は、硫酸は10〜200g/L、塩酸は5〜150g/Lである。硫酸が10g/L未満ではデスケールに長時間かかるため好ましくない。しかし200g/L超では酸による侵蝕が激しく発生しステンレス鋼の表面性状が悪くなる。塩酸は硫酸よりも反応性が高いが5g/L未満ではデスケールが能率的に進行しない。一方150g/L超では激しく素地を侵蝕しまたステンレス鋼の表面に孔食を生じる。
【0011】
本発明のステンレス鋼用の酸洗剤は、フッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムから選ばれる1または2以上をそれぞれ1〜40g/L含有する。これ等が含有されていない場合はスケールの除去に長時間を要し、デスケールの能率を阻害する。またこれ等を含有しない場合はデスケール後の表面には激しい凹凸が生じ、ステンレス鋼の表面を劣化させる。これ等の含有量が1g/L未満ではデスケールを促進する効果が小さい。一方40g/L以上では効果が飽和し、経済的ではない。
【0012】
ステンレス鋼の表面は白色に仕上げられていることが多い。この白色のステンレス鋼に局所的に発生したスケールを本発明では除去するが、除去した跡が白色化していると、スケール除去後のステンレス鋼の表面は、一様な白色となり光沢むらが少なく美麗になる。本発明者等の知見では、硝酸を含有する場合は硝酸の強い酸化力がデスケールした跡を白色化する。硝酸を含有しない通常の硫酸、塩酸、フッ酸の場合は酸化力が不十分なために、デスケール後のステンレス鋼の表面は白色化しない。本発明では硝酸に代わる酸化剤としてFe3+を含有せしめる。Fe3+イオンを含有せしめると、その酸化力によって、スケールを除去した跡は白色化した表面となる。Fe3+イオンは硫酸第一鉄を酸化して硫酸第二鉄として添加してもよいし、硫酸第二鉄溶液を添加してもよい。しかしFe3+は5g/L未満では効果がなく、また40g/L超では効果が飽和する。
【0013】
本発明者等の知見によると、過酸化水素や過硫酸ナトリウムもFe3+と同様の作用効果を奏する。過酸化水素は35%濃度の水溶液換算で5g/L〜15g/Lが好ましい。5g/L未満では効果がなく、15g/L超では効果が飽和する。また過硫酸ナトリウムは5g/L未満では効果がなく、10g/L超では効果が飽和する。
【0014】
本発明の酸化剤は硝酸を含有していない。硝酸は廃棄すると、河川や湖沼の水中の窒素成分を富化させて環境汚染を発生させる。本発明の酸洗剤は硝酸を含有していないために、廃棄に際しても硝酸を無公害化するための格別の設備や処理は不必要である。従って本発明の酸洗剤は使用に際しては高価な設備は不必要でありまた、作業も簡易である。
【0015】
本発明では、ステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品の局所に発生したスケールを除去する。スケールが例えば垂直に近い場所に発生した場合は、通常の溶液状の酸洗剤では塗布しても酸洗剤はスケールの場所に滞ることがなく流下し、スケール除去の効率が悪い。また流下した酸洗剤はスケールがない部分のステンレス鋼を不必要に腐食させる。
【0016】
本発明の酸洗剤は、粘性付与剤を加えてペースト状にされている。ペースト状にしたために、本発明の酸洗剤は、溶液系では適用が難しかった例えば垂直に近い部位にも容易に適用する事が可能である。粘性付与剤としては酸性環境でも安定な、有機系粘性付与剤例えば発酵多糖類、有機ポリマー等を、また無機系粘性付与剤例えばベントナイト系、モンモリロナイト系のもの等を用いる事ができる。市販の粘性付与剤、例えばSOLAGUM(SEPPIC社製)、KEIZAN ASX(KELCO社製)等を用いてもよい。粘性付与剤は該酸洗剤の粘度が3000〜5000CPSとなる量が好ましく、例えば上記市販の粘性付与剤の場合は添加量は5g/L〜100g/Lとすることができる。
【0017】
【実施例1】
表1は硫酸系の酸洗剤の例である。No.2,3,6,7,12,13,14,15は本発明例である。No.1は硫酸の濃度が低過ぎる。No.8,9,10,11はフッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムを含有しない比較例、No.1,4,5はFe3+,H2O2,Na2SO5を含有していない比較例である。尚表1のFe3+の添加には12%の硫酸第2鉄溶液を用いた。また表1の各酸洗剤には粘性付与剤としてSOLAGUMを5%を添加し25〜30℃での粘度を3000〜5000CPSに調整した。
【0018】
酸洗されるステンレス鋼試料はJIS SUS 304で、1.0mm厚さ×30mm幅×100mm長さの試料2枚を突合せTIG溶接したものを用いた。この試料には溶接線に沿って酸化スケールが連続的に発生していた。TIG溶接線が水平に対して45°の傾斜になるようにステンレス鋼試料を保持し、溶接線に沿って表1のペースト状の酸洗剤をナイロン製のハケで塗着した。塗着後15分間静置し、その後シャワー水洗でペースト状の酸洗剤を洗い流した。表1のデスケールの欄で○は完全にデスケールされていた場合、×は目視観察でスケールが残存する場合を示す。また表1の白色化欄で×はデスケールの跡が灰色の場合で○はデスケールの跡が白色の場合である。表1にみられる如く、本発明例は何れもデスケールの程度が良好で白色化も十分であった。一方比較例ではデスケールの程度、白色化の何れかがあるいは双方が不十分であった。
【0019】
JIS SUS 430を用いて溶接線を有するステンレス鋼試料を作成し、表1と同様の酸洗液を用いて試験したが、本発明の酸洗剤を用いた場合は何れも、デスケールの程度が良好で白色化も十分であった。
【0020】
表2は塩酸系の酸洗剤の例である。No.2,3,4,5,6,7,14,15は本発明例である。No.1は塩酸の濃度が低過ぎる。No.8,9,10,11はフッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムを含有しない比較例、No.12,13はFe3+,H2O2,Na2SO5を含有していない比較例である。尚酸洗剤の粘性、酸洗するステンレス鋼試料、試験方法、及びデスケールの程度と白色化の程度の評価方法は実施例1の場合と同じである。表2にみられる如く、本発明例ではデスケールの程度も白色化も十分であった。一方比較例ではデスケールの程度、白色化の何れかが、あるいは双方が不十分であった。
【0021】
JIS SUS 430を用いて溶接線を有するステンレス鋼試料を作成し、表2と同様の酸洗液を用いて試験したが、本発明の酸洗剤を用いた場合は何れも、デスケールの程度が良好で白色化も十分であった。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、スケールが発生した部分に局所的に塗布する酸洗剤であるために、ステンレス鋼の部品、中間成品、補修品、完成品等の酸洗に際し、全体を浸漬する必要がなく、従って高価な酸洗槽がなくても簡易に酸洗することがてきる。また本発明は硝酸を含有していない酸洗剤であるために硝酸を無公害にするための高価で煩瑣な廃液処理が不必要である。本発明はペースト状であり流下しないために、酸洗する場所に所望の時間保持する事ができ、このため少ない使用量で有効にデスケールする事ができる。また本発明ではスケールを除去した跡は白色であり、色むらの少ない酸洗ができる。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
Claims (3)
- 主成分として硫酸10〜200g/Lあるいは塩酸5〜150g/Lと、フッ酸、フッ化珪酸、フッ化ナトリウムから選ばれる1または2以上をそれぞれ1〜40g/Lと、Fe3+イオンを5〜40g/Lとを含有し、硝酸を含有しない水溶液に粘性付与剤を加えてペースト状にした、ステンレス鋼用の酸洗剤。
- 請求項1に更に、濃度が35%に換算での過酸化水素5〜15g/L、過硫酸ナトリウム5〜10g/Lの何れかあるいは双方を含有せしめたことを特徴とする、ステンレス鋼用の酸洗剤。
- 粘性付与剤が多糖類系、有機ポリマー系、ベントナイト系、モンモリロナイト系の粘性付与剤から選ばれる1または2以上で、該ペースト状の酸洗剤の粘度が3000〜5000CPSである事を特徴とする請求項1または2に記載のステンレス鋼用の酸洗剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003195248A JP2005029828A (ja) | 2003-07-10 | 2003-07-10 | ステンレス鋼用の酸洗剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003195248A JP2005029828A (ja) | 2003-07-10 | 2003-07-10 | ステンレス鋼用の酸洗剤 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005029828A true JP2005029828A (ja) | 2005-02-03 |
Family
ID=34206154
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003195248A Pending JP2005029828A (ja) | 2003-07-10 | 2003-07-10 | ステンレス鋼用の酸洗剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005029828A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007154263A (ja) * | 2005-12-06 | 2007-06-21 | Nippon Yakin Kogyo Co Ltd | 表面品質に優れるステンレス鋼、Fe−Ni基合金およびNi基高合金の熱帯酸洗方法 |
CN104532268A (zh) * | 2014-11-28 | 2015-04-22 | 衡阳市金化科技有限公司 | 一种新型钢管除锈剂及其制备方法 |
CN105543865A (zh) * | 2015-12-25 | 2016-05-04 | 安徽工业大学 | 一种400系列不锈钢退火线材催化酸洗液及酸洗方法 |
WO2021200106A1 (ja) | 2020-03-30 | 2021-10-07 | 日鉄ステンレス株式会社 | オーステナイト系ステンレス鋼 |
-
2003
- 2003-07-10 JP JP2003195248A patent/JP2005029828A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007154263A (ja) * | 2005-12-06 | 2007-06-21 | Nippon Yakin Kogyo Co Ltd | 表面品質に優れるステンレス鋼、Fe−Ni基合金およびNi基高合金の熱帯酸洗方法 |
CN104532268A (zh) * | 2014-11-28 | 2015-04-22 | 衡阳市金化科技有限公司 | 一种新型钢管除锈剂及其制备方法 |
CN105543865A (zh) * | 2015-12-25 | 2016-05-04 | 安徽工业大学 | 一种400系列不锈钢退火线材催化酸洗液及酸洗方法 |
CN105543865B (zh) * | 2015-12-25 | 2018-08-03 | 安徽工业大学 | 一种400系列不锈钢退火线材催化酸洗液及酸洗方法 |
WO2021200106A1 (ja) | 2020-03-30 | 2021-10-07 | 日鉄ステンレス株式会社 | オーステナイト系ステンレス鋼 |
KR20220088921A (ko) | 2020-03-30 | 2022-06-28 | 닛테츠 스테인레스 가부시키가이샤 | 오스테나이트계 스테인리스강 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3858047B1 (ja) | 錆取り・防錆剤及びこれを用いた錆取り方法 | |
CN102653868B (zh) | 环保型不锈钢酸洗钝化液 | |
CN107587128B (zh) | 一种不锈钢管的表面处理工艺 | |
CA2205122C (en) | Hydrogen peroxide pickling of stainless steel | |
CN109112556A (zh) | 中性除锈剂及其制备方法 | |
JP2007297697A (ja) | 二相合金ステンレス鋼用の酸洗浄剤及びその酸洗方法 | |
JPH04502785A (ja) | アルミニウム合金用非クロム酸塩脱酸素剤 | |
US20090148335A1 (en) | Process for surface treatment of metals | |
JP2005029828A (ja) | ステンレス鋼用の酸洗剤 | |
US5743968A (en) | Hydrogen peroxide pickling of stainless steel | |
CN105350005B (zh) | 一种含钝化剂的复配酸洗液及其制备方法 | |
JP2012506951A (ja) | ステンレス鋼の表面処理方法 | |
US20050040138A1 (en) | Method of surface-finishing stainless steel after descaling | |
JP2007231413A (ja) | ステンレス鋼の電解研磨法に用いる電解液 | |
US5702534A (en) | Hydrogen peroxide pickling of stainless steel | |
KR20080107036A (ko) | 스테인레스 스틸 파이프의 표면처리 방법 | |
KR101327187B1 (ko) | 스테인레스강용 스케일 제거 및 부동태화처리제 조성물 및 이를 이용한 스테인레스강의 스케일 제거방법 | |
RU2301286C1 (ru) | Состав для удаления продуктов коррозии с поверхности деталей из оцинкованной и кадмированной углеродистой стали | |
JP4320023B2 (ja) | 金属表面処理用水溶液、及び該水溶液を利用する金属表面処理方法 | |
US7041629B2 (en) | Stripper for special steel | |
JP3207636B2 (ja) | スマット除去液 | |
JP6298137B2 (ja) | 除錆剤および除錆剤の製造方法 | |
JP6030791B1 (ja) | 除錆剤および除錆剤の製造方法 | |
CN108486586A (zh) | 金属制件表面清洗方法及水基清洗剂 | |
US20230049815A1 (en) | Methods and compositions for forming magnetite coatings on ferrous metals |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20060703 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20070206 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090421 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20090818 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |