JP2007297697A - 二相合金ステンレス鋼用の酸洗浄剤及びその酸洗方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は耐食性の優れたオーステナイト・フェライト系二相合金ステンレス鋼の酸洗において、スプレー塗りや刷毛塗りが可能な粘稠性があり、高い洗浄効果を得ることができる酸洗浄剤、およびこれを用いた二相合金ステンレス鋼の酸洗方法を提供する。
【解決手段】 硝酸、フッ酸、フッ硝酸以外の無機酸、有機酸、マグネシウム化合物、界面活性剤を含有した構成をもつ酸洗浄剤、および前記酸洗浄剤を用いたオーステナイト・フェライト系二相合金ステンレス鋼の酸洗方法。
【解決手段】 硝酸、フッ酸、フッ硝酸以外の無機酸、有機酸、マグネシウム化合物、界面活性剤を含有した構成をもつ酸洗浄剤、および前記酸洗浄剤を用いたオーステナイト・フェライト系二相合金ステンレス鋼の酸洗方法。
Description
本発明はオーステナイト・フェライト系二相合金ステンレス鋼の酸洗において、当該ステンレス鋼の表面に発生した酸化スケール、赤錆、もらい錆を洗浄するのに好適な酸洗浄剤およびこの酸洗浄剤を用いた二相合金ステンレス鋼の酸洗方法に関するものである。
従来、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系などのステンレス鋼の酸洗浄剤としてフッ酸、硝酸などの混酸が用いられてきた。
近年、より耐食性の優れたステンレス鋼として、オーステナイト・フェライト系の二相合金ステンレス鋼が市場で使用される機会が多くなり、日本工業規格(JIS)においてもSUS329J4Lの成分等がすでに規定されている。この二相合金ステンレス鋼は、その優れた耐食性のため、従来の酸洗方法ではスケールや金属表面の脱クロム層を充分に除去できなく、より酸濃度の高い酸洗浄剤に長時間浸漬して洗浄するなど厳しい酸洗条件が必要であった。
また、加工後起立した状態の材料とか、浸漬槽に入らない大きな材料などにおいては浸漬槽での酸洗が困難であるため、溶接部の熱酸化皮膜の除去にはワイヤーブラシ等による機械的洗浄と、汎用ステンレス鋼酸洗浄剤の化学的洗浄の併用による非効率な作業を強いられていた。このような材料の酸洗に使用される酸洗浄剤には、刷毛塗り、スプレー塗りでの酸洗を可能にするため、粘稠であることが必要であった。
一方二相合金ステンレス鋼の優れた耐食性をもつ表面を仕上げるためには、従来にも増して強力な酸濃度が必要となる。しかし酸濃度を濃くしすぎると、粘性を上げるための増粘剤の効果が発揮できなくなるなどの理由で未だ二相合金ステンレス鋼用の高粘性タイプの酸洗浄剤は開発されていなく、この開発が望まれていた。
従来のステンレス鋼の酸洗浄剤に比較して、耐食性の高い二相合金ステンレス鋼を酸洗するためには、より酸濃度の高い酸洗浄剤が必要であり、かつ、これを刷毛塗りタイプ、スプレー塗りタイプの酸洗浄剤にするためには、高い粘度を持つことが同時に必要となる。従来の増粘剤を使用しても酸濃度が高いため、表面に洗浄塗膜を保持するための充分な粘性が得られなくなる。
刷毛塗り、スプレー塗りタイプの高い洗浄効果のある二相合金ステンレス鋼の酸洗浄剤を製造するためには、酸濃度を高くした状態で、なおかつ高い粘度を保つことができる酸洗浄剤を開発することが課題となる。
本発明の酸洗浄剤を用いることにより、耐食性の優れたオーステナイト・フェライト系二相合金ステンレス鋼の酸洗が常温で、短時間に容易に行えるようになった。特に、刷毛塗り、スプレー塗りが可能で粘稠なタイプの酸洗浄剤が得られることにより、浸漬槽で酸洗できない加工後に起立した状態などの材料についても容易に酸洗が可能となった。
また、ワイヤーブラシによるスケール除去と通常の酸洗の併用といった酸洗作業者に負担がかかり、かつ非効率なスケール除去方法から、作業性の容易で効率的な二相合金ステンレス鋼の酸洗作業方法が可能になった。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
前記述べたように、高粘性と高酸濃度の両特性をもった酸洗浄剤を開発すべく検討した結果、マグネシウム化合物とフッ硝酸で複塩化し、粘性をコントロールすることを考え、これら原料から一旦粘稠性の中間生成物をつくり、順次、フッ硝酸、無機酸、有機酸、界面活性剤を段階的に加え、酸濃度を上げることで、酸濃度の高く、かつ粘稠性のある酸洗浄剤を開発することができた。
本発明の酸洗浄剤は、硝酸と、フッ酸と、フッ硝酸以外の無機酸と、有機酸と、界面活性剤と、を含有した構成を有しているが、各構成成分には以下に述べる配合目的、作用があり、この構成により高粘性、高酸濃度の酸洗浄剤の提供が可能になった。
(1)従来、通常のステンレス鋼酸洗浄剤の酸濃度は、通常40%以下で行われている。この酸洗浄剤を使用して、二相合金ステンレス鋼の酸洗を行っても、その表面の頑強さから酸洗浄できないことがわかっている。そこで、酸の濃度を上げる必要があり、40%以上の酸濃度がないと、二相合金ステンレス鋼の表面を洗浄できないことがわかった。さらに酸濃度は上がるほど良い洗浄効果をもたらすが、粘性を支配するマグネシウム化合物など他の構成成分の必要量から制限され、酸濃度の高さには限度がある。
(2)無機酸は、揮発性のフッ硝酸の混合量を減らして酸濃度をさらに上げるために用いられる。フッ硝酸の酸濃度を高くすると揮発性の酸から有害ガスが発生し作業環境上からも好ましくなく、作業者への負担も大きいことから不揮発性の無機酸の混合により酸臭の抑制効果が得られる。さらに硫酸、リン酸には増粘の補助効果が得られることより混合した。
(3)有機酸は、酸洗速度を制御し、ステンレス鋼表面に光沢を増す効果があった。
(4)マグネシウム化合物はフッ硝酸と反応して、複塩を生成し、これが、洗浄剤の粘性を上げることに寄与している。そこで複塩化剤として最適量のマグネシウム化合物を用い、かつフッ硝酸濃度を調整することにより、酸洗浄剤の粘度を適度に増加させるとともに、二相合金ステンレス鋼の酸洗に必要な高い酸濃度の酸洗浄剤が得られることがわかった。
(5)界面活性剤は酸洗浄剤の金属表面への拡散を均一にするために少量混合した。使用する界面活性剤としては環境ホルモン(内分泌撹乱物質)を含まない非イオン性界面活性剤が適している。
(2)無機酸は、揮発性のフッ硝酸の混合量を減らして酸濃度をさらに上げるために用いられる。フッ硝酸の酸濃度を高くすると揮発性の酸から有害ガスが発生し作業環境上からも好ましくなく、作業者への負担も大きいことから不揮発性の無機酸の混合により酸臭の抑制効果が得られる。さらに硫酸、リン酸には増粘の補助効果が得られることより混合した。
(3)有機酸は、酸洗速度を制御し、ステンレス鋼表面に光沢を増す効果があった。
(4)マグネシウム化合物はフッ硝酸と反応して、複塩を生成し、これが、洗浄剤の粘性を上げることに寄与している。そこで複塩化剤として最適量のマグネシウム化合物を用い、かつフッ硝酸濃度を調整することにより、酸洗浄剤の粘度を適度に増加させるとともに、二相合金ステンレス鋼の酸洗に必要な高い酸濃度の酸洗浄剤が得られることがわかった。
(5)界面活性剤は酸洗浄剤の金属表面への拡散を均一にするために少量混合した。使用する界面活性剤としては環境ホルモン(内分泌撹乱物質)を含まない非イオン性界面活性剤が適している。
次に本発明の具体的実施例を説明する。
使用した薬品として、硝酸は濃度67.5wt%のものを、フッ酸は濃度55.5%のものを、無機酸としての硫酸は濃度98wt%のものを、リン酸は濃度89wt%のものを、有機酸としてはシュウ酸を、マグネシウム化合物は工業用硫酸マグネシウムを、界面活性剤はポリオキシアルキレンアルキルエーテルを、水は通常の用水を用いて試験した。
(酸洗浄剤の調整)
実施例1では、硝酸15%、フッ酸35%、硫酸18%、シュウ酸2%、硫酸マグネシウム30%、界面活性剤1%以下を、段階的に混合して酸洗浄剤を調合した。調合した酸洗浄剤は高い粘稠性があり、刷毛塗りタイプの製剤が得られた。
実施例1では、硝酸15%、フッ酸35%、硫酸18%、シュウ酸2%、硫酸マグネシウム30%、界面活性剤1%以下を、段階的に混合して酸洗浄剤を調合した。調合した酸洗浄剤は高い粘稠性があり、刷毛塗りタイプの製剤が得られた。
実施例2では硝酸20%、フッ酸35%、硫酸+リン酸13%、シュウ酸2%、硫酸マグネシウム25%、界面活性剤と水5%を、段階的に混合して酸洗浄剤を調合した。この酸洗浄剤は適度に粘性があり、スプレー塗りタイプの製剤が得られた。
比較例1では、硝酸20%、フッ酸20%、硫酸3%、シュウ酸2%、硫酸マグネシウム25%、界面活性剤と水をあわせて30%を、混合して酸洗浄剤を得た。この酸洗浄剤は粘性があり、スプレー塗りタイプの製剤が得られた。
比較例2では、硝酸15%、フッ酸20%、硫酸を25%、シュウ酸2%、硫酸マグネシウム10%、界面活性剤と水28%を、混合して酸洗浄剤を得た。この酸洗浄剤はマグネシウム化合物が少なく、フッ酸との複塩の生成が少ないことより粘性の低い製剤が得られた。
実施例、比較例の各構成成分の配合割合、粘性、試験片による塗布試験結果を表−1に示す。
(試験片によるスケール除去試験)
二相合金ステンレス鋼に一部溶接を施した10cm角の試験片を用い、前記のとおり調整した4種の酸洗浄剤を使用し、スケール除去具合を確認するための塗布試験を実施した。試験は、実施例1では刷毛を、他はスプレーを使用して、酸洗浄剤を試験片に均一に塗布した。室温で2時間塗布した後、充分に試験片を水洗して試験片表面を目視観察し評価した。
二相合金ステンレス鋼に一部溶接を施した10cm角の試験片を用い、前記のとおり調整した4種の酸洗浄剤を使用し、スケール除去具合を確認するための塗布試験を実施した。試験は、実施例1では刷毛を、他はスプレーを使用して、酸洗浄剤を試験片に均一に塗布した。室温で2時間塗布した後、充分に試験片を水洗して試験片表面を目視観察し評価した。
実施例1、2の酸洗浄剤の試験では、試験片表面は光沢があり、スケールも完全に除去できた。比較例1では、黒っぽいシミが残り、良好な洗浄効果は得られなかった。比較例2では、粘性が充分でないことより、液ダレが起こり、試験片表面に酸洗浄液が付着せず、全く洗浄できなかった。
Claims (4)
- 硝酸と、フッ酸と、フッ硝酸以外の無機酸と、有機酸と、マグネシウム化合物と、界面活性剤と、を含有することを特徴とする酸洗浄剤。
- 前記無機酸が硫酸、リン酸、塩酸のうちいずれか1種以上からなり、前記有機酸がシュウ酸、クエン酸、酒石酸のうちいずれか1種以上からなり、前記マグネシウム化合物が硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムのうちいずれか1種以上からなり、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤のうちの1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の酸洗浄剤。
- 前記硝酸が5〜20%、好ましくは10〜15%、前記フッ酸が10〜25%、好ましくは15〜20%、前記無機酸が10〜25%、前記有機酸が1〜5%、前記マグネシウム化合物が15〜30%、前記界面活性剤が0.01〜3%からなる請求項1乃至請求項2に記載の酸洗浄剤。
- オーステナイト・フェライト系二相合金ステンレス鋼を酸洗する際に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酸洗浄剤を用いることを特徴とする酸洗方法。
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JP2011032396A (ja) * | 2009-08-03 | 2011-02-17 | Niitaka:Kk | 茹で麺装置用酸性洗浄剤及び茹で麺装置の洗浄方法 |
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CN103424300A (zh) * | 2013-08-19 | 2013-12-04 | 南京钢铁股份有限公司 | 一种适用于轴承钢组织及奥氏体晶粒度检测的快速浸蚀方法 |
CN103743615A (zh) * | 2014-01-23 | 2014-04-23 | 国家电网公司 | 一种中、低合金耐热钢金相抛光浸蚀剂及其处理方法 |
CN104277932A (zh) * | 2014-09-25 | 2015-01-14 | 苏州长盛机电有限公司 | 一种水垢清洗剂及其制备方法 |
CN104562056A (zh) * | 2014-11-14 | 2015-04-29 | 无锡信大气象传感网科技有限公司 | 一种传感器镀锌外壳用除垢除锈剂 |
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CN105543862A (zh) * | 2015-12-22 | 2016-05-04 | 芜湖恒坤汽车部件有限公司 | 金属除锈剂材料组合物和金属除锈剂的制备方法 |
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