以下、本発明の第1の実施の形態にかかる車両空調システム1について説明する。図1は車両空調システム1の全体構成を示すシステム構成図、図2は車両空調システム1の熱交換装置4の内部構成を示す図である。図1に示すように、車両空調システム1は、主に、車内熱交換経路2、ポンプ8a、熱交換装置4、ヒータ10、車内熱交換器9、制御部5等を備える。熱交換装置4は、車内熱交換経路2と接続された熱交換器41、熱交換器41と一方の面で接続されたペルチェ素子43、ペルチェ素子43の他方の面と接続された蓄熱部45を備える。車両空調システム1は、自動車内の暖房を行うための空調システムである。
車内熱交換経路2は、車内熱交換経路2内を循環する熱媒体と、車内を暖房するためのエアとを熱交換するための経路である。車内熱交換経路2には、ポンプ8a、熱交換器41、ヒータ10、車内熱交換器9等が設けられ、熱媒体として水等が循環する。また、車内熱交換経路2の循環方向(図中矢印A方向)に対して、熱交換装置4の熱交換器41の下流側にヒータ10が設けられ、更にヒータ10の下流側に車内熱交換器9が設けられる。
ポンプ8aは、車内熱交換経路2内の熱媒体(以下、本第1の実施の形態において暖房水ともいう)を循環させるものである(図中矢印A方向)。車内熱交換器9は、車内熱交換経路2内を循環する熱媒体の熱と車内を暖房するためのエアの熱を熱交換し、エアを車内に送り込む。ヒータ10は、車内熱交換経路2内の熱媒体を加熱する部位である。ヒータ10は、制御部5に接続される。
熱交換装置4は、車内熱交換経路2を循環する熱媒体の熱を取り込み、蓄熱部45との間で熱交換するものである。熱交換装置4は制御部5に接続される。
図2に示すように、熱交換装置4は、熱交換器41、ペルチェ素子43、蓄熱部45を備える。熱交換器41は車内熱交換経路2に接続される。ペルチェ素子43は、熱交換器41に片面が接続され、反対面が蓄熱部45の熱伝導体453に接続される。
熱交換器41は、車内熱交換経路2内の熱媒体(暖房水)と蓄熱部45との間で熱交換を行うものである。熱交換器41は、例えば、内部にフィン411が設けられた中空の熱伝導体412により構成される。熱交換器41は、車内熱交換経路2内を循環する熱媒体(暖房水)を取り込み、フィン411及び熱伝導体412を介して熱媒体(暖房水)と蓄熱部45(ペルチェ素子43)との間で熱交換を行う。熱交換器41は、車内熱交換経路2内の熱媒体の循環方向に対して、ヒータ10の上流に配置される。このように配置すれば、ヒータ10は蓄熱部45により温められた高温の熱媒体に対して加温すればよいため、ヒータ10の使用を抑制できる。
ペルチェ素子43は、所定電圧を印加すると一方の面が吸熱するとともに反対面が発熱し、印加電圧の極性を反転するとその関係が反転する特性を有する。このようなペルチェ素子43の特性を利用して、蓄熱部45と熱交換器41との間の熱移動の方向を変更できる。上述したように、ペルチェ素子43は、一方の面で蓄熱部45に接続され、他方の面で熱交換器41と接続される。したがって、ペルチェ素子43に順電圧を印加するとペルチェ素子43は蓄熱部45の熱を吸熱し、熱交換器41側に放熱するため、熱交換器41内部の熱媒体を加温できる。また、ペルチェ素子43に逆電圧を印加するとペルチェ素子43は熱交換器41内部の熱媒体の熱を吸熱し、蓄熱部45側に放熱するため、蓄熱部45に蓄熱できる。
制御部5は、ペルチェ素子43へ印加する電圧の極性を所定のタイミングで切り替える。また、ヒータ10のON/OFFを切り替える。例えば、制御部5は、車両走行開始時において、ペルチェ素子43に順電圧を印加する。そうすることで、ペルチェ素子43が蓄熱部45の熱を吸熱し、熱交換器41側に放熱して、熱交換器41内部の熱媒体を加温する(放熱動作)。またヒータ10をONし、熱媒体を更に加温する。これにより、即時に車内熱交換経路2内を循環する熱媒体を温めることが可能となる。また、しばらくすると蓄熱材451の温度が所定の温度T1まで下がるため、ペルチェ素子43への電圧印加を停止して、蓄熱部45からの吸熱を停止し、ヒータ10による定常暖房を行う。このとき、制御部5は図示しない温度検出部によって蓄熱材451の温度を監視し、定常暖房に切り替えるようにしてもよいし、車両走行開始から予め定めた所定時間経過後に定常暖房に切り替えるようにしてもよい。また、制御部5は、車両が走行を停止すると、ペルチェ素子43に対し、逆極性の電圧を印加し、熱交換器41の熱を蓄熱部45側へ移動させる(蓄熱動作)。
蓄熱部45は、蓄熱材451、熱伝導体453等を備える。周囲を断熱材452により覆うことが望ましい。蓄熱部45は、ペルチェ素子43から熱伝導体453を介して熱を受熱して蓄熱するものである。蓄熱部45に用いる蓄熱材451の材料は、一時的に熱を蓄えることができればよく、例えば、パラフィンや関東商事社製の「パッサーモ」(商品名)等を使用することができる。
また、蓄熱材451に、潜熱蓄熱材を用いることもできる。潜熱蓄熱材は、蓄熱材(酢酸ナトリウム3水塩や硫酸ナトリウム10水塩)などを用い、物質の相変化に伴う潜熱を蓄熱することができる。特に、過冷却型蓄熱材は、凝固点温度以下になっても相変化(結晶化)が起きない状態を保ち、液体にある衝撃や振動や摩擦といったエネルギーを加えることで結晶の種を生成し、今まで不規則に浮遊していた分子やイオンが突如、種結晶に向かって結合(凝固)を始めて、一気に凝固熱を周囲に放出するものである。潜熱蓄熱材を用いれば、走行開始時に、蓄熱された熱を一気に利用して、瞬時に暖房を利用可能とすることもできる。
次に、図3〜図5を参照して、車両空調システム1の機能及び制御について説明する。なお、図3のフローチャートの説明では、車両走行開始時において、蓄熱部45は、前回の走行時に発生した熱等によって蓄熱されているものとする。
走行開始直後、制御部5は、ヒータ10をONするとともに、ペルチェ素子に順電圧を印加する(ステップS101)。これにより図4(A)に示すように、ペルチェ素子43が蓄熱部45の熱を吸熱し、反対面の熱交換器41に放熱する。こうして、熱交換器41内に取り込まれている車内熱交換経路2内の熱媒体に熱が伝達される。
温められた熱媒体はポンプ8aによって車内熱交換経路2内を循環し(図4中矢印A方向)、ヒータ10によってさらに加熱され、車内熱交換器9にて外部から取り込まれたエアを加熱する。これにより車内に暖気が送られる。このように、走行開始直後は、蓄熱部45の熱とヒータ10による加熱とを併用できるため、車両スタート時の即暖に効果がある。
また、車両が走行してしばらくすると、蓄熱部45の熱は上述のペルチェ素子43の吸熱により奪われ、所定の温度T1に到達する(ステップS102;Yes)。すると、制御部5はヒータ10はONのまま、ペルチェ素子43への電圧印加を停止(OFF)する(ステップS103)。図4(B)に示すように、車内熱交換経路2内を循環する熱媒体(暖房水)はヒータ10にて加熱されて、車内熱交換器9にて外部から取り込まれたエアを加熱する。これにより車内に暖気が送られ続ける。
また、車両が走行を停止した場合(ステップS104;Yes)、制御部5はヒータ10をOFFする。また、走行停止した直後は、車内熱交換経路2内の熱媒体は上述したように車内の暖気によって温められている。そこで、制御部5はペルチェ素子43に逆極性の電圧を印加するよう切り替える(ステップS105)。すると、図4(C)に示すように、ペルチェ素子43は、熱交換器41に取り込まれている熱媒体から熱を吸熱し、蓄熱部45側に放熱する。これにより蓄熱部45が蓄熱される。蓄熱部45に蓄えられた熱は、次回走行開始時の即暖に利用可能である。
その後、蓄熱材451の温度が上限に到達すると(ステップS106;Yes)、制御部5はペルチェ素子43への電圧の印加を停止(OFF)する。蓄熱部45は保温状態となる(ステップS107)。
その後、車両が走行を再開した場合は(ステップS108;Yes)、ステップS101へ戻る。制御部5は、ペルチェ素子43に正電圧を印加し、蓄熱部45から吸熱して、暖房水へ放熱し、加熱するとともにヒータ10をONし、更に暖房水を加熱する。
車両が走行を開始しない場合(ステップS108;No)、すなわち、駐車した場合等は、処理を終了する。
図5は、図3の手順で行われた動作における蓄熱材451、車内熱交換経路2内を循環する熱媒体(暖房水)の温度変化を示すグラフである。また、図5のグラフの下にはペルチェ素子43に印加する電圧の極性を示している。図5のグラフの横軸は車両走行開始からの時間(分)、縦軸は温度(°C)を示す。また、図5のグラフにおいて、太い破線は蓄熱材の温度変化を示し、太い実線は車内熱交換経路2内を循環する熱媒体(暖房水)の温度変化を示している。
図5に示すように、車両走行開始直後は、蓄熱部45の温度は60°Cに保たれ、暖房水の温度は外気温と同程度(10°C)であるとする。車両走行開始とともに、ペルチェ素子43に正電圧が印加され、ヒータ10がONされる。これにより、ペルチェ素子43は蓄熱部45から吸熱するため、蓄熱部45の温度が下がる。一方、ペルチェ素子43は熱交換器41側に放熱するため暖房水に熱が移動し、温度が上昇する。また、ヒータ10が駆動されているため暖房水の温度は更に上昇する。
走行開始から時間s1が経過すると、蓄熱材451の温度が下限温度T1まで下がる。すると制御部5はペルチェ素子43をOFFする。暖房水の熱は、車内熱交換器9によって車内に放熱されるため、温度が下がる。ヒータ10はONのままであるため、暖房水温度は45°C程度に保たれる(定常暖房)。
車両が走行を停止すると、ペルチェ素子43に印加する電圧が負電圧に切り替えられる。すると、ペルチェ素子43は、暖房水の熱を吸熱し、蓄熱部45側に放熱(蓄熱)する。一方、暖房水は温度が下降する。蓄熱材451が上限温度に達すると、制御部5はペルチェ素子43への電圧印加を停止し、保温状態を保つようにすればよい。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態の車両空調システム1によれば、暖房により温められた熱媒体の熱を熱交換器41と接続されたペルチェ素子43によって吸熱し、蓄熱部45に蓄熱しておくことができる。また、暖房水との熱交換器41と蓄熱部45とがそれぞれペルチェ素子43に直接接続されるため、暖房水の熱を効率よく蓄熱部に蓄熱することができる。
また、蓄熱部45に蓄熱された熱をペルチェ素子43によって吸熱し、車内熱交換経路2の熱媒体へ放熱することができる。このため、即時に車内熱交換経路2内を循環する熱媒体を温めることができ、即暖に効果がある。
なお、図1の車両空調システム1において、車内熱交換経路2に設けられたヒータ10は必須構成要素ではなく、熱交換装置4(ペルチェ素子43)によって暖房水(車内熱交換経路2内の熱媒体)の加熱を十分行えるようであればヒータ10は不要である。
次に、第2の実施形態に係る車両空調システム1aについて説明する。なお、第2の実施の形態において、図1に示す車両空調システム1と同様の機能を奏する構成については、図1と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図6は第2の実施の形態の車両空調システム1aの構成を示すシステム構成図であり、図7は車両空調システム1aの熱交換装置4aの内部構成を示す図である。図6に示すように、車両空調システム1aは、主に、車内熱交換経路2、熱源側冷却経路3、熱交換装置4a、制御部5等を備える。熱交換装置4aは、車内熱交換経路2と接続された第1熱交換器41a、第1熱交換器41aと一方の面で接続された第1ペルチェ素子43a、第1ペルチェ素子43aの他方の面で接続された蓄熱部45、蓄熱部45と一方の面で接続された第2ペルチェ素子44、第2ペルチェ素子44の他方の面と接続された第2熱交換器42を備える。車両空調システム1は、自動車内の暖房及び冷房を行うための空調システムである。
車内熱交換経路2は、第1の実施の形態と同様に、車内熱交換経路2内を循環する熱媒体と、車内を暖房するためのエアとを熱交換するための経路である。車内熱交換経路2には、ポンプ8a、第1熱交換器41a、車内熱交換器9等が設けられ、熱媒体として水等が循環する。また、車内熱交換経路2の循環方向(図中矢印A方向)に対して、熱交換装置4aの第1熱交換器41aの下流側に車内熱交換器9が設けられる。
ポンプ8aは、車内熱交換経路2内の熱媒体を循環させるものである(図中矢印A方向)。車内熱交換器9は、車内熱交換経路2内を循環する熱媒体の熱と車内を冷暖房するためのエアの熱を熱交換し、エアを車内に送り込む。
熱源側冷却経路3は、例えばエンジンやモータなどの自動車の駆動部を冷却する経路である。熱源側冷却経路3には、モータ6、第2熱交換器42、外気熱交換器7、ポンプ8b等が設けられ、熱媒体として冷却水等が循環する。また、熱源側冷却経路3の循環方向(図中矢印B方向)に対して、モータ6の下流であってモータ6と外気熱交換器7との間に熱交換装置4aの第2熱交換器42が接続される。
モータ6は、自動車の駆動部であり、熱源となる部位である。なお、本第2の実施形態においては、熱源がモータ6のみである電気自動車の例を示すが、本発明はこれに限られない。例えば、熱源として、通常のエンジンであっても良く、その両者が配置されても良い。また、熱源としては、駆動部のみに限られず、自動車の走行等において発熱する部位であればよい。
ポンプ8bは、熱源側冷却経路3内の熱媒体(冷却水)を循環させるものである(図中矢印B方向)。外気熱交換器7はラジエータ等であり、モータ6により加熱された熱源側冷却経路3内の熱媒体(冷却水)を冷却する部位であり、熱を外部に放出する。
熱交換装置4aは、車内熱交換経路2及び熱源側冷却経路3を循環する各熱媒体の熱を取り込み、蓄熱部45との間で熱交換するものである。また、熱交換装置4は制御部5に接続される。
図7に示すように、熱交換装置4aは、第1熱交換器41a、第2熱交換器42、第1ペルチェ素子43a、第2ペルチェ素子44、及び蓄熱部45等を備える。第1熱交換器41aは車内熱交換経路2に接続される。また、第2熱交換器42は熱源側冷却経路3に接続される。第1ペルチェ素子43aは、第1熱交換器41aに片面が接続され、反対面が蓄熱部45に接続される。第2ペルチェ素子44は、第2熱交換器42に片面が接続され、反対面が蓄熱部45に接続される。
第1熱交換器41aは、第1ペルチェ素子43aを介して接続された蓄熱部45と車内熱交換経路2内の熱媒体との間で熱交換を行うものである。第1熱交換器41aは、例えば、内部にフィン411が設けられた中空の熱伝導体412により構成され、車内熱交換経路2内を循環する熱媒体を取り込み、フィン411及び熱伝導体412を介して熱媒体(暖房水)と蓄熱材451との間で熱交換を行う。第1熱交換器41aは、車内熱交換経路2内の熱媒体の循環方向に対して、車内熱交換器9の上流に配置される。熱交換装置4から受けた直後の熱を効率よく車内のエアと熱交換するためである。
第2熱交換器42は、第2ペルチェ素子44を介して接続された蓄熱部45と、熱源側冷却経路3内の熱媒体(冷却水)との間で熱交換を行うものである。第2熱交換器42は、第1熱交換器41aと同様に、例えば、内部にフィン421が設けられた中空の熱伝導体422により構成され、熱源側冷却経路3内の熱媒体(冷却水)を取り込み、フィン421及び熱伝導体422を介して熱媒体(冷却水)とペルチェ素子43との間で熱交換を行う。第2熱交換器42は、熱源側冷却経路3内の熱媒体の循環方向に対して、モータ6から外気熱交換器7までの間に配置される。モータ6から熱を受けた直後の、より高温の熱媒体と熱交換を行わせるためである。
第1ペルチェ素子43a、第2ペルチェ素子44は、所定電圧を印加すると一方の面が吸熱するとともに反対面が発熱し、印加電圧の極性を反転するとその関係が反転する特性を有する。このようなペルチェ素子の特性を利用して、蓄熱部45と第1熱交換器41aとの間の熱移動の方向、及び蓄熱部45と第2熱交換器42との間の熱移動の方向を変更できる。第1の実施の形態のペルチェ素子43と同様に、第1ペルチェ素子43aは、一方の面で蓄熱部45に接続され、他方の面で第1熱交換器41aと接続される。したがって、第1ペルチェ素子43aに順電圧を印加すると第1ペルチェ素子43aは蓄熱部45の熱を吸熱し、第1熱交換器41a側に放熱するため、第1熱交換器41a内部の熱媒体を加温できる。また、第1ペルチェ素子43aに逆電圧を印加すると第1ペルチェ素子43aは第1熱交換器41a内部の熱媒体の熱を吸熱し、蓄熱部45側に放熱するため、蓄熱部45を蓄熱できる。
第2ペルチェ素子44は、一方の面で蓄熱部45に接続され、他方の面で第2熱交換器42と接続される。したがって、第2ペルチェ素子44に順電圧を印加すると第2ペルチェ素子44は蓄熱部45の熱を吸熱し、第2熱交換器42側に放熱するため、第2熱交換器42内部の熱媒体を加温できる。また、第2ペルチェ素子44に逆電圧を印加すると第2ペルチェ素子44は第2熱交換器42内部の熱媒体の熱を吸熱し、蓄熱部45側に放熱するため、蓄熱部45を蓄熱できる。
制御部5は、第1ペルチェ素子43a及び第2ペルチェ素子44へ印加する電圧の極性を所定のタイミングで切り替える。
次に、図8〜図11を参照して、車両空調システム1aにおける暖房時の制御フローについて説明する。なお、暖房を行う際、車両走行開始時において、蓄熱部45は、前回の走行時に発生した熱等によって高温(60°C程度)に蓄熱されているものとする。
走行開始直後は、熱源側冷却経路3内を循環する熱媒体(冷却水)は低温である。そこで、制御部5は第1ペルチェ素子43aに所定電圧を印加し、蓄熱部45からの吸熱を行わせる(ステップS201)。これにより図9(A)に示すように、第1ペルチェ素子43aが蓄熱部45の熱を吸熱し、反対面の第1熱交換器41aに放熱する。こうして、第1熱交換器41a内に取り込まれている車内熱交換経路2内の熱媒体に熱が伝達される。
温められた熱媒体はポンプ8aによって車内熱交換経路2内を循環し(図6中矢印A方向)、車内熱交換器9にて外部から取り込まれたエア(不図示)を加熱する。これにより車内に暖気が送られる。このように、走行開始直後は、蓄熱部45の熱を利用できるため、車両スタート時の即暖に効果がある。
また、車両が走行してしばらくすると、蓄熱部45の熱は上述の第1ペルチェ素子43aの吸熱により奪われる。一方、モータ6の駆動により生じた熱によって熱源側冷却経路3内を循環する熱媒体(冷却水)が徐々に加熱される。蓄熱材451の温度が所定温度まで下がると(ステップS202;Yes)、制御部5は、第2ペルチェ素子44もON(順電圧を印加)する(ステップS203)。すると、図9(B)に示すように、熱源側冷却経路3内を循環する熱媒体(冷却水)は第2熱交換器42に取り込まれ、その熱が第2ペルチェ素子44により吸熱され、反対面の蓄熱部45へ放熱され、蓄熱材451に熱が移動する。また、第1ペルチェ素子43aもONであるので、蓄熱材451の熱は吸熱され、第1熱交換器41a側へ放熱される。これにより、熱源側冷却経路3の熱(廃熱)を車内熱交換経路2内の熱媒体に伝達し、車内の暖房に利用することができる。
また、車両が走行を停止した場合(ステップS204;Yes)、走行停止した直後は、車内熱交換経路2内の熱媒体は上述したように車内の暖気によって温められている。そこで、制御部5は第1ペルチェ素子43aに逆極性の電圧を印加し、第2ペルチェ素子44をOFFするよう切り替える(ステップS205)。すると、図10に示すように、第1ペルチェ素子43aは、第1熱交換器41aに取り込まれている熱媒体から熱を吸熱し、蓄熱部45に放熱する。これにより蓄熱材451に蓄熱される。蓄熱部45に蓄えられた熱は、次回走行開始時の即暖に利用可能である。蓄熱材451の温度が所定温度まで上昇すると(ステップS206;Yes)、制御部5は第1ペルチェ素子43aをOFFする(ステップS207)。
その後、車両が走行を再開した場合は(ステップS208;Yes)、ステップS201へ戻る。制御部5は、第1ペルチェ素子43aに順電圧を印加し、蓄熱部45から吸熱する。
車両が走行を開始しない場合(ステップS208;No)、すなわち、駐車した場合等は、所定時間経過後、処理を終了する。
図11は、図8の手順で行われた暖房時の動作における蓄熱部45、車内熱交換経路2内を循環する熱媒体(暖房水)の温度変化を示すグラフである。また、図11のグラフの下には第1ペルチェ素子43a、第2ペルチェ素子44に印加する電圧の極性を示している。図11のグラフの横軸は車両走行開始からの時間(分)、縦軸は温度(°C)を示す。また、図11のグラフにおいて、太い破線は蓄熱材451の温度変化を示し、太い実線は車内熱交換経路2内を循環する熱媒体(暖房水)の温度変化を示している。
図11に示すように、車両走行開始直後は、蓄熱部45の温度は60°Cに保たれ、暖房水の温度は外気温と同程度(10°C)とする。車両走行開始とともに、第1ペルチェ素子43aに正電圧が印加される。これにより、第1ペルチェ素子43aは蓄熱部45から吸熱するため、蓄熱部45の温度が下がる。一方、第1ペルチェ素子43aは第2熱交換器42側に放熱するため暖房水の温度が上昇する。この間、モータ6が駆動されて発熱するため冷却水の温度は上昇する。
時間s1が程経過すると、蓄熱部45の熱が所定の温度T1まで下がる。すると、制御部5は、第2ペルチェ素子44をONし、正電圧を印加する。すると、暖房水の温度は第2ペルチェ素子44に吸熱されて下がり、蓄熱部45側へ放熱される。第1ペルチェ素子43aもONであるので、蓄熱部45へ移動した熱は第1ペルチェ素子43aにより吸熱されて第1熱交換器41a側へ移動し、車内熱交換経路2内の熱媒体(暖房水)へ移動する。温められた暖房水の熱は、車内熱交換器9によってエアと熱交換されるため、例えば45°C前後に保たれて定常暖房となる。
車両が走行を停止すると、第1ペルチェ素子43aに印加する電圧が負電圧に切り替えられる。すると、第1ペルチェ素子43aは、温められた暖房水の熱を吸熱し、蓄熱部45側に放熱(蓄熱)する。暖房水の温度は下降する。蓄熱材451の温度が上限に達すると、第1ペルチェ素子43aへの電圧印加を停止する。
以上が、暖房時の動作であるが、冷房時についても図8と同様の制御を行えばよい。ただし、車両走行開始時において、蓄熱材451の温度は低温(0°C程度)に保たれているものとする。
図12、図13を参照して、冷房時の動作について説明する。図12において、図中太矢印は、熱(高温)の移動が示されている。図13のグラフにおいて、太い破線は蓄熱材451の温度変化を示し、太い実線は車内熱交換経路2内を循環する熱媒体(冷房水)の温度変化を示している。
図13に示すように、車両走行開始直後は、蓄熱部45の温度は0°C程度に保たれ、冷房水の温度は外気温と同程度(40°C程度)とする。車両走行開始とともに、第1ペルチェ素子43aに負電圧が印加される。これにより、第1ペルチェ素子43aは第1熱交換器41aから吸熱するため、冷房水の温度が下降する。一方、第1ペルチェ素子43aは蓄熱部45側に放熱するため低温であった蓄熱部45の温度が上がる。図12に示すように、車内から取り込まれた暖気は車内熱交換器9によって冷却水と熱交換される。冷却水は車内熱交換経路2を循環し、第1熱交換器41aに取り込まれ、第1ペルチェ素子43aによって蓄熱部45から得た低温の熱と熱交換される。逆に言うと、図12の太矢印に示すように、高温の熱が蓄熱部45に移動することとなる。
時間s1が経過すると、蓄熱材451の熱が所定の温度T2まで上がる。すると、制御部5は、第2ペルチェ素子44もONし、負電圧を印加する。蓄熱部45に移動した熱は第2ペルチェ素子44により吸熱されて熱源側冷却経路3側へ移動する。すなわち、図12(B)に示すように、車内熱交換経路2側から蓄熱材451に入った熱と同程度の熱が熱源側冷却経路3側へ移動して外気熱交換器7によって外部へ排出され、蓄熱材451の温度はT2程度に保たれる。このようにして冷房水の温度も10°C程度に保たれ、定常冷房となる。
車両が走行を停止すると、第2ペルチェ素子44をOFFし、熱源側冷却経路3と蓄熱部45の間を断熱する。一方、第1ペルチェ素子43aに印加する電圧を正電圧に切り替える。すると、第1ペルチェ素子43aは、蓄熱材451から吸熱し、第1熱交換器41aへ放熱するので、蓄熱材451の温度は下がり、冷房水は温度が上昇する。蓄熱材451の温度が下限に達すると、保冷状態となり、第1ペルチェ素子43aへの電圧印加を停止する。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態の車両空調システム1aによれば、モータ6等の熱源の熱を第2ペルチェ素子44によって吸熱し、車内熱交換経路2側へ熱移動させ、車内の暖房に使用することができる。また、外気に排出されるはずの熱を第1ペルチェ素子43aの切り替えにより蓄熱部45に蓄熱することができるため、次回走行時に空調に使用することができる。蓄熱部45に蓄えられた熱(高温または低温)は初暖、初冷に使用することができる。
また、蓄熱部45を第1ペルチェ素子43a及び第2ペルチェ素子44で挟み込む構造としているため、蓄熱部45から外部への廃熱を少なくできる。よって、長時間駐車しても次回走行時に蓄熱部45に蓄えた熱を使用できる。
なお、第2の実施の形態の車両空調システム1aにおいて、熱源側冷却経路3に外気熱交換器7を経由しない分岐経路を更に設けるようにしても良い。すなわち、第2熱交換器42と外気熱交換器7との間に分岐経路及び弁を設け、モータ6、第2熱交換器42、ポンプ8bの間で冷却水が循環できるようにすることが望ましい。暖房時において分岐経路側を使用することで、冷たい外気との熱交換を行わずに冷却水の熱を蓄熱部45にて吸熱し、車内熱交換経路2側へ移動させることができるため、更に暖房効率が向上する。
次に、第3の実施形態に係る車両空調システム1bについて説明する。図14は、第3の実施の形態に係る車両空調システム1bの全体構成を示す図である。車両空調システム1bは、車両空調システム1または1aの構成に加え、記憶部51、現在位置取得部52を備える。記憶部51及び現在位置取得部52は制御部5に接続される。
記憶部51には、例えば、カーナビゲーションシステム等で利用される地図情報が格納されている。地図情報には、道路情報の他、場所に関する情報が含まれる。場所に関する情報とは、例えば、公園、ショッピングモール、コンビニエンスストア、自宅等といった場所の種別を表す情報である。また、記憶部51には、場所の種別に応じて、短時間停車する場所か、1時間を超えるような駐車を行う場所であるかを定義したデータテーブルが格納される。現在位置取得部52は、例えばGPS(Global Positioning System)等であり、車両の現在位置を取得し、制御部5へ出力する。
第3の実施の形態において、制御部5は、現在位置取得部52から現在位置情報を取得し、取得した位置情報に関連付けられている場所情報を記憶部51の地図情報から取得し、取得した場所情報に応じて、第1ペルチェ素子43aの動作を切り替える。例えば、車両が走行を停止した位置がコンビニエンスストアの駐車場である場合は、停車時間が短いと推測されるため、暖房水から蓄熱部45へ蓄熱するより、暖房水が温かいまま次の走行を再開する方が効率が良い。そのため、制御部5は、第1ペルチェ素子43aの駆動を停止するよう制御する。
一方、車両が停止した位置がショッピングモール等の駐車場である場合は、停車時間が長いと推測されるため、暖房水が自然放熱してしまう。そのため、暖房水の熱を吸熱して蓄熱部45へ蓄熱する。そのため、制御部5は第1ペルチェ素子43aに負電圧を印加するよう制御し、第1熱交換器41aから吸熱し、蓄熱部45へ放熱させて蓄熱部45を蓄熱する。
図15は、車両空調システム1bの制御フローを示すフローチャートである。第2の実施の形態と同様に、暖房時、走行開始直後は、熱源側冷却経路3内を循環する熱媒体(冷却水)は低温であるとする。
ステップS301〜ステップS303は、第2の実施の形態のステップS201〜ステップS203と同様である。
車両が走行を停止した場合(ステップS304;Yes)、制御部5は、現在位置情報取得部203から現在位置情報を取得する(ステップS305)。また制御部5は、記憶部51に記憶されている地図情報から場所に関する情報を取得し、場所に関する情報に基づいて、短時間停車と推測されるか否かを判定する(ステップS306)。短時間停車と推測される場合は(ステップS306;短時間駐車場所)、第1ペルチェ素子43aの駆動を停止する(ステップS309)。これは、温まっている暖房水をそのまま次回走行に利用するためである。
1時間を超えるような長時間駐車と推測される場合は(ステップS306;長時間駐車場所)、制御部5は第1ペルチェ素子43aに逆極性の電圧を印加し、第2ペルチェ素子44をOFFするよう切り替える(ステップS307)。すると、第1ペルチェ素子43aは、図10に示すように、第1熱交換器41aに取り込まれている熱媒体から熱を吸熱し、蓄熱部45に放熱する。これにより蓄熱部45が蓄熱される。蓄熱部45に蓄えられた熱は、次回走行開始時の即暖に利用可能である。
その後、蓄熱部45の温度が所定温度に到達すると(ステップS308;Yes)、制御部5は第1ペルチェ素子43aの駆動を停止する(ステップS309)。車両が走行を開始した場合は(ステップS310;Yes)、ステップS301へ戻る。制御部5は第1ペルチェ素子43aに正電圧を印加し、蓄熱部45の熱を暖房に使用する。車両が走行を開始しない場合(ステップS310;No)、処理を終了する。
以上により、例えばカーナビゲーションシステムで用いられる地図情報等を利用して、車両が停車した場所に応じて第1ペルチェ素子43aの動作(吸熱、蓄熱)を切り替えることができる。これにより、ユーザが特に意識しなくても停車中に効率よく熱利用することが可能となる。
なお、本第3の実施の形態では、第2の実施の形態の車両空調システム1aに記憶部51及び現在位置取得部52を設ける構成としたが、これに限定されるものでなく、第1の実施の形態の車両空調システム1に記憶部51及び現在位置取得部52を設ける構成とし、車両が停車した場所に応じてペルチェ素子43の動作(吸熱、蓄熱)を切り替えるようにしてもよい。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。