以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部を説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図12を用いて詳細に説明する。図1において、エンジン2と図示しないモータの双方の駆動力で走行するハイブリッド車の電池4の温調システム1が図示されている。なお、ハイブリッド車は、バッテリを外部電源で充電できるようにしたプラグインハイブリッド車であってもよい。
温度調整システム1は、エンジン2を温調するためのエンジン冷却水回路3を有している。運転スイッチ(イグニッションスイッチまたはIGスイッチ)21SがONされて作動するエンジン2は、熱発生機器を構成する。
また、電池4を温調するための電池冷却水回路5が設けられている。電池冷却水回路5には、電池冷却水が流れる。電池4は、複数の単位電池を電気的に接続され電池内熱交換器15を一体に備え、電池パックとも呼ばれる。
電池冷却水回路5に電池冷却水を送るためのウォータポンプ(単にポンプとも言う)6を備える。また、電池冷却水回路5に温熱または冷熱のうちの一方または双方を供給するための電池用熱交換器7と、当該電池用熱交換器7を迂回させるための三方制御弁8を有する。三方制御弁8は、電池用冷却水が電池用熱交換器7を迂回する迂回回路9に接続されている。電池用熱交換器7は、電池冷却水と空気(外気)との熱交換を行う。
エンジン冷却水回路3と電池冷却水回路5の間で冷却水の熱をやり取りするために、エンジン冷却水回路3と電池冷却水回路5の間に切替弁10を設けている。同様に、エンジン冷却水回路3にもエンジン温調ポンプ11とエンジン温調制御弁12が設けられている。
エンジン温調制御弁12は、サーモスタット(T/S)を使用した弁として周知である。このエンジン温調制御弁12の流路の切替によりエンジン冷却水が、エンジン用ラジエータ13を流れたり、ラジエータバイパス回路14を流れたりして、エンジン冷却水の温度が制御される。エンジン用ラジエータ13は、周知のようにエンジン冷却水と空気(外気)との熱交換を行う。
図2は、上記実施形態に使用する電池4を示している。なお、この電池4は、単位電池の集合体であり、下部に電池内熱交換器15が一体に設けられている。電池4内では複数の単位電池(セルとも言う)同士が電気的に接続されている。電池4は電池適正温度範囲から外れると、出力および入力が低下してしまう。この実施形態では、停車後の車両に残っており従来は廃棄されていたエンジン2の熱を、電池温調に利用する。そうすることで、駐車時に電力を使用することなく電池温調を行うものである。
電池4の暖機時においては、エンジン冷却水を電池4に送ることで電池4を暖機することができる。電池4の底部には、電池内熱交換器15が設けられている。電池内熱交換器15には、温調入口配管部14aと温調出口配管部14bとが設けられている。
図3を用いて、上記実施形態の制御の流れを説明する。上述のように、この実施形態では、作動する際に熱を放出する熱発生機器は、エンジン2である。エンジン冷却水の温度を検知する温度検出センサは、周知のものを使用できる。
運転スイッチ21SがOFFであり、かつエンジン冷却水温度が、電池冷却水の下限温度BLLより高い場合においては、エンジン冷却水の熱を利用するためにエンジン冷却水を電池4まで連通して流すようにしている。つまり、エンジン冷却水を電池4まで連通させて、電池を加熱している。駐車後、エンジン冷却水には温熱が余っている。この余った温熱を電池4の暖機に用いることで、従来廃棄していた温熱を有効に使いつつ暖機することができる。
以下、図3について制御のフローチャートを説明する。ステップS30において、制御がスタートすると、ステップS31で運転スイッチ21SがOFFしているかを判定する。運転スイッチ21SがOFFであれば、ステップS32において電池温度が暖機開始温度WSより小さいか否かを判定する。ステップS32において、電池温度が暖機開始温度WSより小さい場合(YESの場合)は、ステップS33に進み、そうでない場合はリターンする。
ステップS33では、エンジン冷却水温度が電池冷却水の下限温度BLL以上か否かを判定する。ステップS33でエンジン冷却水温度が電池冷却水の下限温度BLL以上の場合(YESの場合)は、ステップS34に進む。ステップS34では、エンジン冷却水温度が電池冷却水の上限温度BUL以下か否かを判定する。なお、エンジン冷却水温度は、直接センシングしてもよいし、運転スイッチ21SがOFFした時のエンジン冷却水温度と、その後の経過時間からエンジン冷却水温度を推測しても良い。
ステップS34でエンジン冷却水温度が電池冷却水の上限温度以下の場合(YESの場合)は、ステップS35に進む。エンジン冷却水が極端に高くなく電池冷却水の上限温度BUL以下の場合は、ステップS35において、エンジン冷却水が電池冷却水回路5に図1の矢印Y11〜Y15のように流れるように切替弁10を切替え制御する。切替弁10は、制御装置200(図1)によって制御される。また、図3のフローチャートは、制御装置200内で実行される。制御装置200から切替弁10等への配線は省略されている。
図4は、上記実施形態において、エンジン冷却水が電池適正温度範囲よりも高い場合の配管内の水の流れを示している。図3のステップS34では、エンジン冷却水が電池冷却水の上限温度BUL以下か否かを判定している。この判定の結果、エンジン冷却水の温度が高く、電池冷却水の上限温度BUL以下でない場合は、ステップS36において、エンジン冷却水をエンジン用ラジエータ13(図4)で放熱させる。この場合は、エンジン冷却水が、図4の矢印Y41、Y42のように流れるよう切替弁10を制御装置200が切替え制御する。
このように、エンジン冷却水が電池冷却水の上限温度BULよりも高い場合、エンジン冷却水をエンジン用ラジエータ13で冷やして電池適正温度範囲内に入れることで、電池4の温度が高くなりすぎるのを防いでいる。
図5を用いて、上記実施形態に使用する電池適正温度を説明する。図5において、横軸に電池4の温度(単位℃)を示し、縦軸に電池入出力(単位kw)を示している。縦軸は、0を境にして上側が出力(放電)を示し、下側が入力(充電)を示している。
電池温度を適切な範囲(電池適正温度範囲)に保てば、入出力できる電力を大きくすることができる。換言すれば、図5から判明するように、電池4は、電池適正温度範囲から外れると出力(放電)時および入力(充電)時の電力が低下してしまう。
図6を用いて、上記実施形態において電池4が暖機運転されるときの電池4の温度とエンジン冷却水の温度との関係を説明する。図6において、縦軸は、電池4またはエンジン冷却水の温度を表している。矢印Y61、Y62は、電池適正温度範囲の幅を表している。また、横軸は、電池とエンジン冷却水を示している。更に、電池4を温調する電池冷却水の下限温度をBLLで示している。
図6の(a)では電池4の温度が電池冷却水の下限温度BLLより低い状態である。一方エンジン冷却水の温度は、電池適正温度範囲内に存在する。図6の(b)では電池の温度が電池冷却水の下限温度BLLと同じ値である。エンジン冷却水の温度は、電池適正温度範囲内に存在する。
電池4の温度と、電池冷却水の下限温度BLLとの関係は、図6の(a)、(b)のいずれの状態であっても電池の温度をエンジン冷却水の熱を利用して電池適正温度範囲内まで高めることができる。
図1のように、熱を持ったエンジン冷却水を電池4まで連通させるように切替弁10が制御される。エンジン冷却水を電池4まで連通させることで、必要なときに限り、電池4を暖機することができる。
次に、図7を用いて、上記実施形態において暖機運転がなされるときの暖機開始温度WSと電池冷却水の上限温度BULと、電池冷却水の下限温度BLLと、電池4の温度と、エンジン冷却水の温度との関係を説明する。
図7の(a)ように、電池冷却水の下限温度BLLは、電池適正温度範囲よりも下か、または、電池適正温度範囲の下半分内に位置していることが望ましい。暖機開始温度WSもまた、電池適正温度範囲よりも下か、または、電池適正温度範囲の下半分内に位置していることが望ましい。また、図7の(b)のように、電池冷却水の上限温度BULは、電池適正温度範囲よりも上、または、電池適正温度範囲の上半分内に位置することが望ましい。
図3のステップS34において、エンジン冷却水温度が、電池冷却水の上限温度BUL以下と判定したときに、ステップS35に進んでいる。ステップS35では、電池冷却水の上限温度BULより低いエンジン冷却水を電池4まで連通させて、電池4を暖機している。このことは、エンジン冷却水温度が、電池温調上限温度BUL以下と判定される図7の(b)の場合に、エンジン冷却水を電池4まで連通させて電池4を暖機していることを表している。
これにより、駐車後、エンジン冷却水には温熱が余っているが、この温熱の温度が高すぎる場合は、電池適正温度範囲から高温側に外れてしまう懸念がある。そこで、エンジン冷却水温度が電池温調上限温度BUL以下の場合に、エンジン冷却水を電池4まで連通させ、電池4に熱を与えることで、上記懸念事項が解消されている。
図8を用いて、上記実施形態においてエンジン冷却水を急速に冷却する場合を説明する。エンジン冷却水が電池冷却水の上限温度BULを超えているときは、急速に冷却する必要がある。この場合は、図3のステップS34において、エンジン冷却水温度が高く、電池冷却水の上限温度BUL以下でない。この場合は、ステップS36において、エンジン冷却水をエンジン用ラジエータ13で放熱させる。
つまり、図4のようにエンジン冷却水が、矢印Y41、Y42のように流れるよう切替弁10を制御装置200で切替え制御する。エンジン冷却水をエンジン用ラジエータ13で冷やして電池適正温度範囲内に入れることで、電池4の温度が高くなりすぎるのを防止できる。
この第1実施形態においては、電池冷却水回路5とエンジン冷却水回路3とが設けられ、夫々の回路にポンプ6、11が設けられている。また、電池冷却水回路5とエンジン冷却水回路3とが切替弁10により連通されるように構成されている。電池冷却水回路5とエンジン冷却水回路3とが切替弁10により連通しない状態では、電池冷却水回路5とエンジン冷却水回路3とは夫々独立して冷却水を流す。
図9を用いて、エンジン冷却水と電池冷却水の熱を混合させる場合の冷却水の流れを説明する。また、図10を用いて、図9の場合においてエンジン冷却水の熱と電池冷却水の熱とを混合させて温調する場合を説明する。
図10において、エンジン冷却水の温度は電池冷却水の上限温度BULを超えている。この場合に、制御装置200は、エンジン冷却水温度が電池冷却水の上限温度BULより高いと判定する。そして、図9のように、電池入口配管における電池冷却水の温度が、電池冷却水の上限温度BULよりも低くなるように、エンジン冷却水と電池冷却水とを混合させて、電池4に送る。
このように、エンジン冷却水と電池冷却水を混合させて電池冷却水回路5に送ることにより、熱の無駄をできる限り少なくして、電池4を暖機できる。この場合、電池冷却水の温度が、図10の電池適正温度範囲内に入るように、切替弁10の切替え角度、ウォータポンプ6の回転数等で流量分配を制御する。
図11を用いて、上記実施形態においてエンジン冷却水の温度が低い場合の冷却水の流れを説明する。エンジン冷却水がエンジン用ラジエータ13を経由して冷却されているときに、サーモスタットから成るエンジン温調制御弁12によって、図11のようにエンジン用ラジエータ13をバイパスしてエンジン冷却水が流れる。
更に、図12は、上記実施形態においてエンジン冷却水の温度が低い場合の特性を示している。エンジン冷却水温度が、電池冷却水の下限温度BLLより低く、かつ、エンジンの温度が電池冷却水の下限温度BLLより高い場合は、エンジン冷却水と電池冷却水とで熱交換しない。
この場合、図11のエンジン用ラジエータ13で放熱しないように、エンジン2にエンジン冷却水を流す。これにより、エンジン2に残っている残熱分もエンジン冷却水に回収して、後の電池4の暖機に使うことができるようになる。
(第1実施形態の作用効果)
上記第1実施形態においては、図3、図7に示したように、運転スイッチ21Sがオンされて作動する際に熱を発生する熱発生機器2(例えば、エンジン、以下同じ)が備えられている。また、熱発生機器2から熱を受け取るため、熱発生機器2に熱発生機器用熱輸送媒体(エンジン冷却水)を流す熱発生機器温調回路(エンジン冷却水回路)3が備えられている。
温度制御される適正温度範囲(電池適正温度範囲)を有する被温調機器(電池)4が備えられている。運転スイッチ21Sがオフであり、かつ熱発生機器用熱輸送媒体の温度が、被温調機器4を流れる被温調機器用熱輸送媒体(電池冷却水)の下限温度BLLより高い場合に、熱伝達が行われる。この熱伝達は、熱発生機器用熱輸送媒体の熱を被温調機器用熱輸送媒体まで伝達する熱伝達手段(四方弁から成る切替弁)10によって行われる。
これによれば、運転スイッチ21Sがオフされた運転停止後に、熱発生機器用熱輸送媒体には温熱が余っていることに鑑みて、この余っている温熱を被温調機器4の暖機に用いることで、従来捨てている熱を有効に使いつつ被温調機器4を暖機することができる。
また、図3、図7のように、熱伝達手段10は、被温調機器4の温度が、被温調機器4の予め定めた暖機開始温度WSより低い場合に、熱発生機器用熱輸送媒体の熱を被温調機器用熱輸送媒体まで伝達する。
これによれば、被温調機器4の温度が、被温調機器4の予め定めた暖機開始温度WSより低い場合に、被温調機器4の暖機を行うことができる。
更に、図3、図7のように、熱伝達手段10は、熱発生機器用熱輸送媒体の温度が、被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULよりも低いと判定された場合に、熱発生機器用熱輸送媒体の熱を被温調機器用熱輸送媒体まで伝達する。
これによれば、運転スイッチ21Sがオフされた後、熱発生機器用熱輸送媒体には温熱が余っているが、この温熱の温度が高い場合は、被温調機器4の適正温度帯の高温側に外れてしまう懸念がある。そこで、熱発生機器用熱輸送媒体の温度が被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULより低い場合に、被温調機器用熱輸送媒体に熱を与えることで上記懸念事項を解消することができる。
次に、図4のように、熱発生機器用熱輸送媒体から熱を放散させる放熱機器13、170が備えられている。図8のように、熱発生機器用熱輸送媒体の温度が、被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULよりも高いと判定された場合に、熱発生機器用熱輸送媒体の熱を放熱機器(エンジン用ラジエータ)13が放熱させる。そして、熱発生機器用熱輸送媒体の温度を下降させる。
これによれば、熱発生機器用熱輸送媒体の温度を被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULより低くする際、放熱機器13、170例えばエンジン用ラジエータ13にて、放熱させることができる。従って、短時間で熱発生機器用熱輸送媒体の温度を被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULよりも低くすることができる。
また、放熱機器13は、車両が走行する場合に、車両内で使用される放熱機器13を含む。これによれば、放熱機器13は、車両が走行する場合に、車両内で使用される放熱機器13例えばエンジン用ラジエータを含むから、既存の車両走行に必要な機器から放熱機器13を構成できる。
更に、図9、図10のように、熱発生機器用熱輸送媒体の温度が被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULよりも高いと判定された場合に、被温調機器4に流れ込む被温調機器用熱輸送媒体の温度が上限温度BULよりも低くなるようにしている。このために、熱伝達手段10が、熱発生機器用熱輸送媒体と被温調機器用熱輸送媒体とを混合して被温調機器4に送る。
これによれば、熱伝達手段10は、熱発生機器用熱輸送媒体の温度が、被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULよりも高いと判定された場合に、被温調機器用熱輸送媒体の温度が、上限温度BULよりも低くなるようにする。すなわち、熱発生機器用熱輸送媒体と被温調機器用熱輸送媒体とを混合させる。よって、熱の無駄をできる限り少なくして、被温調機器用熱輸送媒体の温度を上限温度BULよりも低くして被温調機器4を暖機することができる。
次に、図11、図12のように、熱発生機器用熱輸送媒体の温度が被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLより低く、かつ熱発生機器2の温度が被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLより高いと判定された場合には、次の制御を行う。つまり、熱伝達手段10は、熱発生機器熱輸送媒体と被温調機器熱輸送媒体との間で熱交換しないようにする。かつ放熱機器13で放熱しないように放熱機器13を迂回させて熱発生機器用熱輸送媒体を流す。
これによれば、熱発生機器用熱輸送媒体の温度が被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLより低く、かつ熱発生機器2の温度が被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLより高い場合には、熱交換しない。具体的には、熱伝達手段10は、熱発生機器熱輸送媒体と被温調機器熱輸送媒体との間で熱交換しないようにし、かつ放熱機器13で放熱しないように放熱機器13、170を迂回させて熱発生機器用熱輸送媒体を流す。従って、熱発生機器2に残っている熱エネルギー分を、放熱機器13で無駄に捨てることなく、熱発生機器用熱輸送媒体に回収して、被温調機器4の暖機に使うことができる。
なお、被温調機器4は、電池からなる。従って、電池の温度を調整することにより、電池の効率を良くすることができる。
また、熱発生機器用熱輸送媒体の温度が、被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULよりも高いと判定された場合に、熱発生機器用熱輸送媒体(エンジン冷却水)から熱を放散させる放熱機器となるエンジン用ラジエータ13により放熱させても良い。これにより、熱発生機器用熱輸送媒体の温度を下降させることができる。
これによれば、熱発生機器用熱輸送媒体の温度を被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULより低くする際、放熱機器13(エンジン用ラジエータ13)にて、放熱させることができる。従って、短時間で熱発生機器用熱輸送媒体の温度を被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULよりも低くすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。なお、第2実施例以下については、第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明が援用される。
第1実施形態では、エンジン冷却水と電池冷却水との間に切替弁を設け、エンジン冷却水と電池冷却水とが互いに交じり合うようにしたが、エンジン電池間熱交換器を介してエンジン冷却水と電池冷却水とが互い熱交換するようにしてもよい。
図13を用いて、本発明の第2実施形態を示す温度調整システム1を説明する。図13において、第1実施形態の切替弁10に代わり、エンジン電池間熱交換器20と、該エンジン電池間熱交換器20に選択的に冷却水を流すエンジン側熱交換切替弁21と、電池側熱交換切替弁22とが設けられている。
これにより、エンジン2側を流れるエンジン冷却水と電池4側を流れる電池冷却水とが熱交換するときは、矢印Y131、Y132のように冷却水が流れるようにエンジン側熱交換切替弁21と、電池側熱交換切替弁22とを切り替える。また、エンジン冷却水と電池冷却水とが熱交換しないときは、矢印Y133、Y134のように冷却水が流れるようにエンジン側熱交換切替弁21と、電池側熱交換切替弁22とを切り替える。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図14を用いて、本発明の第3実施形態を示す車両の温度調整システムにおいて、電池をブロワで温度調整する方式を説明する。
第1実施形態では、エンジン冷却水(エンジン用熱輸送媒体)と、電池冷却水(電池用熱輸送媒体)とは、それぞれ水としたが、電池4用の熱輸送媒体は空気でもよい。図14は、本発明の第3実施形態を示す車両の電池温調システムにおいて電池をブロワで温調する方式を示している。この図14は、放熱機器(エンジン)用の熱輸送媒体として水を使用し、被温調機器(電池)用の熱輸送媒体として空気を用いている。
図14において、エンジン冷却水は、上記実施形態と同じように、エンジン2とエンジン用ラジエータ13とエンジン温調制御弁12とウォータポンプ11とを流れる。エンジン用ラジエータ13を流れないときはバイパス回路14を流れる。
エンジン冷却水で電池を暖機するときは、エンジン冷却水をエンジン電池間熱交換器20に流すようにエンジン側熱交換切替弁21を切り替える。また、エンジン電池間熱交換器20の熱が電池に伝わるようにドア23を破線から実線のように切替えてブロワ14Bを運転し、エンジン電池間熱交換器20を通過した温風を矢印Y141のように電池4に吹きつける。
そして、電池4の温度調整のために、エンジン電池間熱交換器20に流れるエンジン冷却水の量を三方制御弁を成すエンジン側熱交換切替弁21の開度で制御してもよい。また、ウォータポンプ11の吐出流量またはブロワ14Bの吐出流量を制御してもよい。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。第1実施形態では、エンジン2用の熱輸送媒体と、電池4用の熱輸送媒体とは、それぞれ水としたが、この第4実施形態のようにエンジン用の熱輸送媒体を空気としてもよい。
図15を用いて、本発明の第4実施形態を示す車両の温度調整システムにおいて、放熱機器と成るインバータ215の熱をブロワ15Bで電池4側に伝達する方式を説明する。図15において、電池冷却水は、第1実施形態と同じように電池4と電池用熱交換器7と三方制御弁8とウォータポンプ6と電池用熱交換器20とを流れる。電池用熱交換器20を流れないときは電池用バイパス回路20Bを流れるように電池側熱交換切替弁22が流れを切り替える。
放熱機器となるインバータ215の熱で電池4を暖機するときは、インバータ215周辺の温度の高い空気をインバータ電池間熱交換器20に矢印Y15のように流す。このために、ドア15Dを破線の位置から実線の位置に切り替える。
また、電池用熱交換器20の熱が電池4に伝わるようにウォータポンプ6を回転させ、電池用熱交換器20を通過した電池冷却水を電池4の下部に密接した電池内熱交換器15に流す。なお、電池内熱交換器15は、電池4の内部に存在する必要はなく、電池4と密接し一体化されていればよい。
そして、電池4の温度調整のために、電池用熱交換器20に流れる電池冷却水の量を電池側熱交換切替弁22の開度で制御してもよい。また、ウォータポンプ6の吐出流量、ブロワ15Bの吐出流量うちから1つ以上を制御してもよい。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。第1実施形態では熱発生機器用の熱輸送媒体と、被温調機器用の熱輸送媒体とはそれぞれ水としたが、この第5実施形態では、熱発生機器用の熱輸送媒体は空気とし、被温調機器用の熱輸送媒体も空気としている。
図16を用いて、本発明の第5実施形態を示す車両の電池温調システムにおいて熱発生機器の熱をブロワで電池に伝達する方式を説明する。図16において、電池4の下部に設けられた電池内熱交換器15にはブロワ16Bからの空気が流れる。
放熱機器となるインバータ215の熱で電池4を暖機するときは、インバータ215周辺の温度の高い空気を、ブロワ15Bを回転させて矢印Y161のように流す。このために、ドア16D1、16D2を破線の位置から実線の位置に切り替える。
そして、電池4の温度調整は、インバータ215の周辺を流れる空気の量をブロワ15Bの送風量で調整して行う。または、電池4の周辺を流れる空気の量をブロワ16Bの送風量で切替えて電池4の温度を制御してもよい。また、ドア16D1、16D2の開度で電池4の温度調整を行ってもよい。更に、ドア16D1、16D2を破線の位置にしているときは、矢印Y162、Y163のように空気が流れる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図17を用いて、本発明の第6実施形態を示す車両の電池温調システムにおいて蓄熱器170を用いた方式を説明する。また、図18は、図17の電池温調システムにおいて蓄熱器170に蓄熱してエンジン冷却水を温調するときの特性を示している。
図17において、蓄熱器170が電池冷却水が流れる電池冷却水回路5に設けられている。図17の矢印Y171〜Y177の用に冷却水が流れる時、エンジン冷却水の熱が蓄熱器170に蓄えられる。蓄熱器170に蓄えられた熱は、電池4の暖機、次回始動時のエンジン2の暖機に使用できる。なお、エンジン冷却水が図示しない車両用空調装置のヒータコアを流れるようにすれば、蓄熱器170に蓄えられた熱は、次回始動時の車室内空調に使用することもできる。
図18は、エンジン冷却水の温度が電池適正温度範囲より高いため、蓄熱器170にエンジン冷却水の温度を蓄えて蓄熱させつつエンジン冷却水を冷却している状態を図示している。また、図19は、図17の温度調整システムにおいて、蓄熱器170内の蓄熱材の相変化温度帯を図示している。図19において、電池4の温度は、電池冷却水の下限温度BLLより低く、エンジン冷却水の温度は、電池冷却水の下限温度BLLと電池冷却水の上限温度BULとの間にある。
電池冷却水の上限温度BULを超える温度帯R191に、相変化温度帯があると電池4の温度が電池適正温度範囲上限を超えるおそれがある。また、暖機開始温度WSに満たない温度帯R192に、相変化温度帯があると蓄熱器170が放熱手段の役割を果たさない。従って、電池冷却水の上限温度BULと暖機開始温度WSとの間に蓄熱器170の相変化温度帯R193があることが好ましい。
(第6実施形態の作用効果)
上記第6実施形態においては、図17のように、熱発生機器用熱輸送媒体から熱を放散させる放熱機器と成る蓄熱器170が備えられている。熱発生機器用熱輸送媒体(エンジン冷却水)の温度が、被温調機器用熱輸送媒体(電池冷却水)の上限温度BULよりも高いと判定された場合に、熱発生機器用熱輸送媒体の熱を放熱機器170が放熱させる。そして、熱発生機器用熱輸送媒体の温度を下降させる。
これによれば、熱発生機器用熱輸送媒体の温度を被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULより低くする際、放熱機器170を成す蓄熱器170にて、放熱させることができる。従って、短時間で熱発生機器用熱輸送媒体の温度を被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULよりも低くすることができる。また、放熱機器は、蓄熱器170を含む。従って、熱発生機器(エンジン)2が発生した熱を蓄熱して有効に使用することができる。
更に、蓄熱器170の蓄熱材の相変化温度は、被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BUL以下であり、かつ被温調機器の暖機開始温度WS以上である。
これによれば、蓄熱器170の相変化温度が被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BUL以下であり、かつ被温調機器4の暖機開始温度WS以上であるから、熱発生機器2が放熱する熱を蓄熱して被温調機器4を適正な温度範囲に保つことができる。また、蓄熱器170が放熱機器の役割を果たし、被温調機器4が適正温度範囲上限を超えることを抑制できる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図20を用いて、本発明の第7実施形態を示す車両の電池温調システムにおいて冷熱を放散する吸熱機器(冷熱発生機器)となるチラー41の冷熱にて電池を温調する方式を説明する。
チラー41は、図示しない車両用空調装置の蒸発器が空調用低温水と熱交換を行う部分である。このチラー41で冷却された空調用冷却水が、車両用空調装置のダクト内のクーラコア42に流れて空調用空気を温調する。
電池冷却水回路5と空調用低温水回路3aとは切替弁10で接続されている。なお図20においては、クーラコア42に空調風を流すブロワ43は停止し、チラー41の冷熱は電池4用に専ら使用されている。従って、図20の矢印Y20等のように空調用低温水が電池4側に流れることでチラー41の低温を利用して電池4を冷却することができる。
この実施形態において、作動する際に熱を吸収する吸熱機器は、チラー41から成る。そして、チラー41から冷熱を受け取るため、空調用低温水が流れる空調用低温水回路3aは、チラー41、ポンプ11、クーラコア42、切替弁10を含む。
この場合、空調用低温水回路3aの温度を検知する温度検出手段として、図示しない空調用低温水温度センサが設けられ、制御装置200に温度信号を送信している。これにより、空調用低温水は、電池適正温度範囲内に温度コントロールされる。
図20の制御装置200は、運転スイッチ21SがOFF、かつ空調用低温水の温度が、電池冷却水の上限温度BULより低く、かつ、空調用低温水の温度が電池冷却水の下限温度BLLより高いことを条件として、電池4を空調用低温水で冷却する。つまり、チラー41の冷熱を持った空調用低温水を図20のように電池4まで連通させ、電池4を冷却するようにしている。
これにより、駐車後、チラー41(吸熱機器)用の熱輸送媒体である空調用低温水に冷熱が余っている場合において、この冷熱を電池4の冷却に用いることで、従来捨てている冷熱を有効に使いつつ、電池を冷却することができる。
図21は、図20の電池温調システムにおいて電池適正温度範囲と電池の温度と空調用低温水の温度との関係を示している。空調用低温水が流れることでチラー41の低温を利用して電池4を冷却するためには、図21の(a)のように、電池温度が電池温調上限温度BULより大きいか、または、図21の(b)のように、電池温度が電池温調上限温度BULと等しければよい。
図22を用いて、図20の電池温調システムにおいて、電池適正温度範囲と冷却開始温度CSと、電池冷却水の上限温度BULと、電池冷却水の下限温度BLLとの関係を説明する。図22の(a)で示すように、電池冷却水の上限温度BUL、は電池適正温度範囲の上あるいは電池適正温度範囲の上半分に存在することが望ましい。また、チラー41の空調用低温水を利用して電池4を冷却するためには、冷却開始温度CSの位置(大きさ)は、電池適正温度範囲の上あるいは電池適正温度範囲の上半分に存在することが望ましい。
また、図22の(b)に示すように、電池冷却水の下限温度BLLは、電池適正温度範囲よりも下あるいは電池適正温度範囲の下半分にあることが望ましい。なお、空調用低温水の温度は、直接センサで測定してもよいし、運転スイッチOFF後の経過時間から推測してもよい。
図22において、電池4の温度が、冷却開始温度CSより高いとき、空調用低温水の冷熱を電池4まで連通させるようにする、つまり、図20のように、電池冷却水回路まで切替弁10を介して空調用低温水を流す。これにより、必要なときに限り、電池4の冷却を行うことができる。なお、空調用低温水の温度が、電池冷却水の下限温度BLLよりも高いと判定したときに、空調用低温水の冷熱を電池4まで連通させる。
駐車後、チラー41を流れる空調用低温水には冷熱が余っているが、この冷熱の温度が低すぎる場合は、電池4の温度が電池適正温度帯の低温側に外れてしまう懸念がある。そこで、図22の(b)のように、空調用低温水が電池冷却水の下限温度BLLより高い場合に、電池4にチラー41の冷熱を与えることで上記懸念事項が解消されるようにしている。
図23を用いて、上記第7実施形態を示す車両における温度調整システムにおいて、電池4とチラー41とが熱交換しない場合の熱輸送媒体の流れを説明する。この場合は、チラー41を流れる空調用低温水は、空調用低温水回路3aを流れて車両用空調装置のダクト内に配置されたクーラコア42を冷却する。クーラコア42には車両用空調装置のブロワ43からの空調風が通過し、車両室内を冷房する。
図24は、図23の電池温調システムにおいて空調用低温水を急速に温度上昇させる状態を示している。チラー41から冷熱を奪う放熱機器としての役割をクーラコア42が持つ。空調用低温水の温度が、図24のように電池冷却水の下限温度BLLよりも低いと制御装置200が判定した場合に、チラー41の冷熱を放熱機器を成すクーラコア42で放熱させる。これにより、急速に空調用低温水の温度を上昇させ、短時間で電池冷却水の下限温度BLLよりも高くすることができ、電池4を電池適正温度範囲に維持するために空調用低温水が使用できる。
図25を用いて、上記第7実施形態を示す車両における温度調整システムにおいて、チラー41側の熱輸送媒体と電池4側の熱輸送媒体とを混合する場合の熱輸送媒体の流れを説明する。この場合は、チラー41を通過する空調用低温水を電池冷却水回路5にも流している。クーラコア42に空調風を流す車両用空調装置のブロワ43は停止している。
図26は、図25の電池温調システムにおいて空調用低温水を温度上昇させる状態を示している。チラー41を流れる空調用低温水の温度が、電池冷却水の下限温度BLLよりも低いと判定した場合は、空調用低温水の温度が、電池冷却水の下限温度BLLよりも高くなるようにする。
このために、図25の矢印Y25等のようにチラー41内を流れる空調用低温水の熱と電池冷却水の熱とを混合させている。これにより、熱の無駄をできる限り少なくして、電池4を温調できるようになる。また、電池冷却水の温度が、電池適正温度範囲の中に入るように、図25の切替弁10の開度と、ウォータポンプ6、11の回転数との少なくともいずれかを制御する。
図27は、上記第7実施形態を示す車両の電池温調システムにおいてチラー41に残る冷熱により、高すぎる空調用低温水の温度を下げる場合の熱輸送媒体の流れを示している。また、図28は、図27の電池温調システムにおいてチラー41のコアに残る冷熱を空調用低温水に回収する場合を示している。
チラー41を流れる空調用低温水の温度が、電池冷却水の上限温度BULより高い場合は、空調用低温水で電池を温調することができない。そこで、空調用低温水の温度が、電池冷却水の上限温度BULより高く、かつチラー41のコアの温度が空調用低温水の温度より低い図28の場合は、電池冷却水と空調用低温水との間で熱交換を行わない。
このような場合は、クーラコア42(図27)で冷熱が放熱しないように車両用空調装置のブロワ43をOFFにして(ブロワ43を停止させて)空調用低温水をチラー41、クーラコア42、ポンプ11と経由して流す。これにより、チラー41に残っている熱容積分の冷熱を空調用低温水に回収して、空調用低温水の温度を下げ、電池4の温調に使うことができる。
(第7実施形態の作用効果)
上記第7実施形態においては、図20のように、運転スイッチ21Sがオンされて作動する際に熱を吸収する吸熱機器(車両用空調装置のチラー)41を備える。かつ、吸熱機器41に吸熱機器用熱輸送媒体(空調用低温水)を流す吸熱機器低温水回路(空調用低温水回路)3aと、適正温度範囲に温度制御されることが望ましい被温調機器4と、が備えられている。
そして、運転スイッチ21Sがオフであり、図22のように、吸熱機器用熱輸送媒体(空調用低温水)の温度が、被温調機器4を流れる被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULより低い場合に、吸熱機器用熱輸送媒体の冷熱を被温調機器熱輸送媒体まで伝達する。この熱伝達は、熱伝達手段10をなす切替弁によって行われる。
これによれば、運転スイッチ21Sがオフされた運転停止後に、吸熱機器用熱輸送媒体には冷熱が余っていることに鑑みて、この余っている冷熱を被温調機器4の冷却に用いることで、従来捨てている冷熱を有効に使いつつ被温調機器4を冷却することができる。
また、熱伝達手段10は、被温調機器4の温度が、被温調機器4予め定めた冷却開始温度CSより高い場合に、吸熱機器用熱輸送媒体の熱を被温調機器用熱輸送媒体まで伝達する。これによれば、被温調機器4の温度が被温調機器4の予め定めた冷却開始温度CSより高い、冷却が必要な場合に限り、被温調機器4の冷却を行うことができる。
更に、図22のように、熱伝達手段10は、吸熱機器用熱輸送媒体の温度が、被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLよりも高いと判定された場合に、吸熱機器用熱輸送媒体の熱を被温調機器用熱輸送媒体まで伝達する。
これによれば、運転スイッチ21Sがオフした後、吸熱機器用熱輸送媒体には冷熱が余っているが、この冷熱の温度が低すぎる場合は、被温調機器4の適正温度帯の低温側に外れてしまう懸念がある。そこで、吸熱機器用熱輸送媒体の温度が被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLより高い場合に、吸熱機器用熱輸送媒体から被温調機器用熱輸送媒体に冷熱を与えることで上記懸念事項を解消することができる。
次に、図23のように、吸熱機器用熱輸送媒体から冷熱を放散する冷熱放散手段42となるクーラコアが備えられている。図24のように、吸熱機器用熱輸送媒体の温度が、被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLよりも低いと判定された場合に、吸熱機器用熱輸送媒体の冷熱を冷熱放散手段42、290で放散させる。そして、吸熱機器用熱輸送媒体の温度を上昇させる。
これによれば、吸熱機器用熱輸送媒体の温度を被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLより高くする際、冷熱放散手段42、290にて積極的に冷熱を放散させる。そして、このようにすることで、吸熱機器用熱輸送媒体の温度を短時間で被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLよりも高くすることができる。
また、図21のように、冷熱放散手段42は、車両内に設けられ、かつ該車両が走行する場合に車両内で使用され冷熱を放散する冷熱放散機器42から成る。従って、冷熱放散機器42として、例えば、車両用空調装置のクーラコア42を使用できるから、簡素化を図ることができる。
更に、図25、図26のように、吸熱機器用熱輸送媒体(空調用低温水)の温度が、被温調機器用熱輸送媒体(電池冷却水)の下限温度BLLよりも低いかどうかを判定している。そして、低いと判定された場合に、被温調機器4に流れ込む被温調機器用熱輸送媒体の温度が、下限温度BLLよりも高くなるようにしている。
このために、熱伝達手段10が、吸熱機器用熱輸送媒体と被温調機器用熱輸送媒体とを混合して被温調機器4に送り、被温調機器4を冷却している。これによれば、吸熱機器用熱輸送媒体と被温調機器用熱輸送媒体とを混合するから、熱の無駄をできる限り少なくして、被温調機器4を冷却することができる。
次に、図27、図28のように、吸熱機器用熱輸送媒体の温度が、被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULより高く、かつ吸熱機器41の温度が被温調機器用熱輸送媒体の上限温度BULより低い場合には、熱交換を行わない。具体的には、吸熱機器用熱輸送媒体と、被温調機器用熱輸送媒体との間で熱交換しないようにし、かつ、冷熱放散手段42で冷熱を放散しないように、冷熱放散手段42に吸熱機器用熱輸送媒体を流す。
これによれば、吸熱機器用熱輸送媒体と、被温調機器用熱輸送媒体との間で熱交換しないようにして、かつ、冷熱放散手段42で冷熱を放散しないようにしながら冷熱放散手段42に吸熱機器用熱輸送媒体を流す。例えば、ブロワを停止させてクーラコア42に空調用低温水を流すから、吸熱機器41に残っている冷熱エネルギー分も吸熱機器用熱輸送媒体に回収して、被温調機器4の冷却に使うことができる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図29を用いて、本発明の第8実施形態を示す車両の電池温調システムにおいて冷熱を蓄冷器290に蓄える場合の熱輸送媒体の流れを説明する。チラー41からの冷熱が切替弁10を介して流れる電池4の入口側配管に蓄冷器290が設けられている。
図30は、図29の電池温調システムにおいて蓄冷させつつ空調用冷温水を昇温させる場合を示している。図30において、電池4の温度は、電池冷却水の上限温度BULよりも高く、冷却する必要がある。空調用低温水は電池冷却水の下限温度BLLよりも低いため昇温する必要がある。そこで、図29のように、温度が低すぎる空調低温水を電池冷却水と混合して蓄冷器290に冷熱を蓄積しつつ空調用低温水の温度を上昇させている。
図31において、図29の電池温調システムにおいて蓄冷器290内の蓄冷材の相変化温度帯を説明する。図31において、電池4の温度は、電池冷却水の上限温度BULより高く、空調用低温水の温度は、電池冷却水の下限温度BLLと電池冷却水の上限温度BULとの間にある。
電池4の冷却開始温度CSを超える温度帯R311に、蓄冷器290内の蓄冷材の相変化温度帯があると、蓄冷器290内の蓄冷材が放熱手段の役割を果たさない。また、電池冷却水の下限温度BLLに満たない温度帯R312に、蓄冷器290内の蓄冷材の相変化温度帯があると、電池4が電池適正温度範囲の下限を下回るおそれがある。従って、電池4の冷却開始温度CSと電池冷却水の下限温度BLLとの間の温度帯R313に蓄冷器290の蓄冷材の相変化温度帯があることが好ましい。
(第8実施形態の作用効果)
上記第8実施形態においては、図29のように、吸熱機器用熱輸送媒体から冷熱を放散する冷熱放散手段290を成す蓄冷器が備えられている。そして、図30のように、吸熱機器用熱輸送媒体の温度が、被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLよりも低いと判定された場合に、吸熱機器用熱輸送媒体の冷熱を冷熱放散手段290で放散させる。そして、吸熱機器用熱輸送媒体の温度を上昇させる。
これによれば、吸熱機器用熱輸送媒体の温度を被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLより高くする際、冷熱放散手段290を成す蓄冷器にて積極的に冷熱を放散させる。この結果、吸熱機器用熱輸送媒体の温度を短時間で被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLLよりも高くすることができる。また、冷熱放散手段290は、蓄冷器を含む。従って、吸熱機器41が発生した冷熱を蓄冷器290に蓄熱して有効に使用することができる。
更に、蓄冷器290の蓄熱材の相変化温度は、被温調機器用熱輸送媒体の下限温度BLL以上であり、かつ被温調機器4の冷却開始温度CS以下である。これによれば、蓄冷器290が冷熱散手段の役割を果たし、かつ被温調機器4が適正温度範囲下限を下回ることが無いので、被温調機器4を適正な温度範囲に保つことができる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものである。
図32において、本発明のその他の実施形態を示す車両における温度調整システムにおける熱発生機器の例を説明する。上記実施形態では主としてエンジン単体またはインバータ単体を熱発生機器として用いた。しかし、図32の(a)〜(c)のように、エンジン以外の機器の組合せで熱発生機器を構成してもよい。例えば、インバータ215と、電動発電機321と、DC−DCコンバータ322とのいずれかの組合せで熱発生機器を構成してもよい。または、車両用空調装置のコンデンサ(凝縮器)323を熱発生機器としてもよい。