JP6032991B2 - 水溶性香料の製造方法 - Google Patents
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通常、水溶性香料の製造では、天然香料を含水エタノール中に添加し、及び攪拌した後、低温下で放置して、香料物質を含有する下層(含水エタノール層)と水不溶性成分を含有する上層とに分離させ、濾紙を用いた濾過などの手段により下層の含水エタノール層を回収することが行われている。
しかしながら、この方法では水に不溶性であるワックス等の成分が上層と下層の分離を阻害し、その結果、清澄な水溶性香料を得るには長い時間を要するという問題があった。
しかし、本発明者らが、この方法による水溶性香料の製造を試みたところ、油層を完全に除去することができず、清澄な水溶性香料を得ることができなかった。
圧搾法又は抽出法により得られた天然香料を用意する第1工程、
前記天然香料と含水エタノールとを混合する第2工程
前記第2工程で得られた混合物に塩化ナトリウムを添加及び攪拌する第3工程、
前記第3工程後の混合物を、疎水性フィルターを通過させる第4工程
を備える
水溶性香料の製造方法。
項2.
前記天然香料が、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、ユズ、シソ、ホップ、コショウ、及びジンジャーから選択される1種以上の植物に由来する天然香料である項1に記載の製造方法。
項3.
前記第2工程で得られる混合物のエタノール含量が20〜95w/w%である項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記第3工程において、前記第2工程で得られた混合物100重量部に対する、前記塩化ナトリウムの添加量が0.05〜5重量部である項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5.
前記疎水性フィルターがポリプロピレン樹脂から形成されたフィルターである項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
項6.
前記疎水性フィルターが0.5〜10μmの濾過精度を有する項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
圧搾法又は抽出法により得られた天然香料を用意する第1工程、
前記天然香料と含水エタノールとを混合する第2工程
前記第2工程で得られた混合物に塩化ナトリウムを添加及び攪拌する第3工程、
前記第3工程後の混合物を、コアレッサーエレメントを通過させる第4工程
を備える。
第1工程では、圧搾法又は抽出法により得られた天然香料を用意する。
圧搾法は、前記のような原料(例、柑橘果皮)を冷時圧搾することを含む方法である。圧搾法で得られた天然香料(精油)はプレスオイルと呼ばれ、なかでも冷時圧搾で得られた精油はコールドプレスオイル(CPO)と呼ばれる。
このCPOを−20〜−30℃で1ヶ月以上静置し、析出したワックス分を取り除いた(脱ワックス)ものは、脱ワックスオイルと呼ばれる。
抽出法は、前記のような原料を、石油エーテル、ヘキサン、又はベンゼン等の溶媒を用いて室温や加熱下で攪拌抽出又は静置抽出して溶媒層を得ること、及び当該溶媒層を減圧濃縮することを含む方法、あるいは液化二酸化炭素や超臨界二酸化炭素で抽出する方法である。
また、このような天然香料は、商業的に入手可能である。
これらの天然香料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いられる天然香料は、好ましくは、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、ユズ、シソ、ホップ、コショウ、及びジンジャーから選択される1種以上の植物に由来する天然香料である。
これらの天然香料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2工程では、前記天然香料と含水エタノールとを混合する。
これにより、天然香料中の香料物質は含水エタノールによって抽出される。
含水エタノールは、本発明の効果が奏される限度において、水及びエタノール以外の成分を含有していてもよく、そのような成分としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
また、第2工程では、前記天然香料と含水エタノールとが混合されればよく、これらとともに、これら以外の他の成分が混合されてもよい。そのような成分としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリンを挙げることができる。
第3工程では、前記第2工程で得られた混合物に塩化ナトリウムを添加及び攪拌する。
塩化ナトリウムは、完全に溶解されることが好ましい。
第4工程では、前記第3工程後の混合物を、コアレッサーエレメントに通過させる。
これにより、前記混合物中の油層(油滴)が凝集し、油層が分離し易くなる。
当該コアレッサーエレメントとしては、例えば、ネクシスNXA、ネクシスNXT、プロファイルII(日本ポール社)、CUNOベータファイン(住友スリーエム社)、CPフィルター(JNCフィルター社)が挙げられるが、これに限定されることはない。
なお、本明細書中、濾過精度がX(μm)であることは、特に記載ない場合を除き粒子径X(μm)の粒子を99.9%除去できる精度を意味する。
すなわち、第3工程における「前記第2工程で得られた混合物」は、第2工程で直接得られたものでなくてもよい。また、「前記第3工程後の混合物」は、第3工程で直接得られたものでなくてもよい。
当該静置は、通常、−20〜0℃の温度で、0分〜24時間、実施される。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
流速 (500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 2500L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、555kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例1に比較して、実施例1では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
ペルー産キーライム コールドプレスオイル(2倍濃縮品:AIB社)の55kgを冷却機能を備えたタンクへ投入し、55%エタノール1792kgによって40分間撹拌抽出した後、精製塩1.85kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
流速 (1500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 6150L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例2と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、1464kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例2に比較して、実施例2では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
インド産ブラックペッパー溶剤抽出オイル(ジボダン社)4kg、インド産ブラックペッパーオレオレジン(KANCOR社)1.5kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、60%エタノール94.5kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.1kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
流速 (500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 350L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例3と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、70kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例3に比較して、実施例3では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
インド産ジンジャー炭酸ガス抽出オイル(富士フレーバー社)5kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、70%プロピレングリコール95kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.1kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、180分程度静置することで油水層を分液させた。
流速 (100L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 300L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例4と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、81.7kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例4に比較して、実施例4では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
表1の各天然香料(精油)を原料として、実施例2又は比較例2と同様の方法で水溶性香料を製造した。蒸留精油は対照例である。
分液性、及び水溶性香料の濁りへの影響の判定を、次の基準に従って行った。
◎:極めて良好(水層澄明)
○:良好(水層澄明性あり)
△:不良(水層澄明性ほとんどなし)
×:極めて不良(水層澄明性全くなし)
また、使用した各コールドプレス精油中のワックス含量、及び不揮発性成分含量を測定した。
結果を表1及び表2に示す。
また、脱ワックスした天然香料を原料として、比較例2の方法で製造した水溶性香料は透明性がほとんどないことから、水溶性香料の製造時の分液性、及び水溶性香料の濁り原因は、ワックスだけではなく、色素成分等、他の不揮発性成分も影響していることが判った。
実施例2の方法で塩化ナトリウムの量のみを変えて、塩化ナトリウムの添加量の分液性への影響を検討した。
分液性への影響の判定を、次の基準に従って行った。
◎:極めて良好(水層澄明)
○:良好(水層澄明性あり)
△:不良(水層澄明性ほとんどなし)
×:極めて不良(水層澄明性全くなし)
結果を表3に示す。
オレンジオイル5%を50%エタノールで抽出後、塩化ナトリウムを0.1%添加し、−15±5℃に冷却後、コアレッシングに用いるコアレッサーエレメント(ネクシスNXA、日本ポール社)の濾過精度を0.5〜30μmの各条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、水溶性香料を製造した。
当該水溶性香料の分液性、及び水溶性香料の濁りへの影響の判定を、次の基準に従って行った。
○:極めて良好(水層澄明)
△:良好(水層澄明性あり)
×:不良(水層澄明性ほとんどなし)
結果を表4に示す。
また、同一コアレッサーエレメント径において公称濾過精度(ネクシスNXT、日本ポール社)と比較しても同様の効果が得られた。
チェコ産ホップ炭酸ガス抽出オイル(BOTANIX社)0.4kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、50%エタノール38kg、グリセリン1.6kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.04kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
流速 (170L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 130L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例5と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、37kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
高知県産ユズオイル(西川製油社)3kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、70%エタノール97kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.1kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
流速 (500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 350L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例6と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を72時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、87.4kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
Claims (7)
- 圧搾法又は抽出法により得られた天然香料を用意する第1工程、
前記天然香料と含水エタノールとを混合する第2工程
前記第2工程で得られた混合物に塩化ナトリウムを添加及び攪拌する第3工程、
前記第3工程後の混合物を、ポリプロピレン系樹脂、又はポリエチレン系樹脂から形成されたフィルターを通過させる第4工程
を備える
水溶性香料の製造方法。 - 前記天然香料が、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、ユズ、シソ、ホップ、コショウ、及びジンジャーから選択される1種以上の植物に由来する天然香料である請求項1に記載の製造方法。
- 前記第2工程で得られる混合物のエタノール含量が20〜95w/w%である請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記第3工程において、前記第2工程で得られた混合物100重量部に対する、前記塩化ナトリウムの添加量が0.05〜5重量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記疎水性フィルターがポリプロピレン樹脂から形成されたフィルターである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記疎水性フィルターが0.5〜10μmの濾過精度を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 更に、油層と水層とを分離し、及び水層を回収する第5工程を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
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