JP6027016B2 - アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩耐亀裂性ガラス - Google Patents

アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩耐亀裂性ガラス Download PDF

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Description

関連出願の説明
本出願は、その内容がここに依拠され、全てが引用される、2010年11月30日に出願された米国仮特許出願第61/418117号の米国法典第35編第119号の下での優先権の恩恵を主張するものである。
携帯式電子装置に使用するための耐久性タッチスクリーン基板およびカバーガラス物品として使用するのに適したガラス材料がここに開示されている。特に、携帯式電子装置のタッチスクリーン基板およびカバーガラス物品として使用できる高い耐亀裂性および耐引掻性を示すアルカリ土類ホウケイ酸塩ガラスが開示されている。
高い耐亀裂性のガラスが、携帯式と据置式の両方の電子装置におけるカバーガラス/ディスプレイに使用されている。概して、高い耐亀裂性は、ソーダ石灰ケイ酸塩、アルカリボロアルミノシリケート、およびアルカリアルミノケイ酸塩(例えば、コード2317およびコード2318などのCorning(登録商標)Gorilla(登録商標)ガラス)などのアルカリ含有ガラスのイオン交換により達成される。ガラス中の小さいアルカリイオン(例えば、リチウム、ナトリウム、または両方)が、大きいアルカリ(カリウム)により置換され、室温への冷却の際に、板の両面のイオン交換された層が相当な圧縮応力を示すのに対し、板の内部は引張応力を示す。圧縮応力は、事実上、割れ目の開始と伝搬に対するバリアとして働く。特に、圧縮応力は、初期の傷の位置から離れるように伝搬する、垂直/放射状割れ目および横方向の割れ目の形成を妨げる。垂直/放射状割れ目は、その向きがガラスの表面に対して垂直であり、それゆえ、ガラス板の曲げ中に強度制限傷として振る舞うので、特に関心深い。
耐亀裂性の1つの尺度は、ビッカースのダイヤモンド圧子を使用した、垂直/放射状割れ目を生じるのに必要とされる荷重である。例えば、イオン交換前の「Corning」「Gorilla」ガラスコード2317では、ビッカースのダイヤモンド圧子チップを使用して垂直/放射状割れ目を生じるために約300グラム重(gf)(約2.94N)が必要であるが、イオン交換後には、垂直/放射状割れ目を生じるのに必要な力は約5000グラム重(約47.5N)に増加する。垂直/放射状割れ目を生じるのに必要な荷重におけるこのかなり大きい改善が、「Corning」「Gorilla」ガラスコード2317が家庭用電子機器用途における使用が益々見出されている主な理由である。
アルカリは、イオン交換性能にとっては非常に望ましいが、ある家庭用電子機器用途、特に、ガラスが、ディスプレイ用途または統合タッチ用途などの半導体に基づく電子機器に使用するための基板である用途にとって有害である。これは、アルカリが、半導体層中に移動し、動作過電圧に影響を与え得るからである。さらに、板が薄くなるにつれて、所定の圧縮層の厚さについて得ることのできる最大圧縮応力が、ガラスの厚さに亘り生じる歪みのために、減少する。その上、イオン交換した板を2つ以上の部品に分割すると、中央張力下にある領域が露出され、縁の強度が極めて損なわれるので、イオン交換は、部品を作製する前の板全体にではなく、板から得られる各部品に行わなければならない。イオン交換は、時間と費用がかかることがあり、多数の部品を必要とする用途において、イオン交換能力は、完成部品の全体のスループットを大幅に制限し得る。最終的に、実際面で、イオン交換により備えられる圧縮応力の量は、任意に大きくはできない。これは、所定のガラスについて中央張力が特定の値を一旦超えると、圧縮応力の層を通じて伝搬する傷が、エネルギーを急に壊滅的に放出し、その部品を多くの小片に激しく破壊するからである。備えられた中央張力のこの最大レベルは、破砕性限界(frangilibity limit)と称される。カバーガラス用途および統合タッチ用途にとって、この破砕性限界を超えることは、何があっても避けなければならない。
これらの理由のために、イオン交換を必要としないことを意味する、割れ目の形成に対する固有の耐性ある組成を特定することが望ましい。そのようなガラスは、電子機器用途のために基板として自由に使用できるように、アルカリを実質的に含まないことがさらに望ましい。ガラスが、典型的な家庭用電子機器用途において、例えば、カバープレートまたは統合タッチ用途の基板として使用できるように、粘弾性特性、モル体積、熱膨張係数、耐久性を有することも望ましい。そのようなガラスには、本来的に備わっている非破砕性あるという点で、イオン交換ガラスと比べて追加の利点があるであろう。
改善された耐擦傷性/耐亀裂性および耐引掻性を示し、携帯式電子機器に使用するためのタッチスクリーン基板および/またはカバーガラス物品として使用するのに特に適しているアルカリ土類ホウケイ酸塩ガラス物品がここに開示されている。
1つの実施の形態において、これらのアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスは、アルカリを実質的に含まず、以下を含む:(1)少なくとも55モル%のSiO2、(2)少なくとも5モル%のAl23、(3)少なくとも1種類のアルカリ土類酸化物RO、(4)1を超える、Al23+B23対ROのモル%比、および(5)0.65を超える、Al23対ROのモル%比。ここに開示されたアルミノホウケイ酸塩ガラスは、加えて、以下の性質を示す:(1)1000g重(約9.8N)超であるビッカース圧子圧入割れ目開始荷重、(2)移動するヌープ圧子により荷重を印加したときに、垂直/横方向の割れ目のないことにより測定される、少なくとも900g重(約8.8N)の耐引掻性、(3)75GPa未満のヤング率値、および(4)27.5cm3/モル超のモル体積。
第2の実施の形態によれば、アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスは、55〜75モル%のSiO2、8〜15モル%のAl23、10〜20モル%のB23、0〜8モル%のMgO、0〜8モル%のCaO、0〜8モル%のSrO、および0〜8モル%のBaOを含む。あるいは、アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスは、59〜64モル%のSiO 2 、8〜12モル%のAl 2 3 、11〜19モル%のB 2 3 、2〜7モル%のMgO、1〜8モル%のCaO、1〜6モル%のSrO、および0〜6モル%のBaOを含む。
ここに開示された無アルカリアルミノケイ酸塩ガラスのタッチスクリーン基板/カバーガラス物品は、様々な家庭用電子製品、例えば、携帯電話および音楽プレーヤー、ノートブック型コンピュータ、PDA、ゲームコントローラ、電子ブックリーダーおよびタッチスクリーン能力を必要とする他の装置などの他の電子装置に使用できる。
ここに記載された実施の形態の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から容易に明らかなるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって認識されるであろう。
先の一般的な説明および以下の詳細の説明の両方とも、様々な実施の形態を示しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されているのが理解されよう。添付図面は、様々な実施の形態をさらに理解するように含まれており、本明細書に含まれ、その一部を構成する。図面は、ここに記載された様々な実施の形態を示しており、説明と共に、請求項の主題の原理および動作を説明する働きをする。
ここに開示されたアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスサンプルに関する実測割れ目開始閾値対モル体積の関係をプロットしたグラフ ここに開示されたアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスサンプルに関する実測割れ目開始閾値対ヤング率の関係をプロットしたグラフ ここに開示された1つの代表的なアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスサンプルに関する1キログラム重(kg重)(1N)のビッカース圧痕の顕微鏡画像の平面図 ここに開示された1つの代表的なアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスサンプルに関する1キログラム重(kg重)(1N)のビッカース圧痕の顕微鏡画像の断面図 比較のガラス基板に関する1キログラム重(kg重)(1N)のビッカース圧痕の顕微鏡画像の平面図 比較のガラス板に関する1キログラム重(kg重)(1N)のビッカース圧痕の顕微鏡画像の断面図
ここに用いたように、「タッチスクリーン」という用語は、全ての種類のタッチスクリーンを称するために使用されるが、特に、携帯式と携帯式ではない家庭用電子製品に使用するためのマルチタッチセンサ・タッチスクリーンを含む、容量性のタッチスクリーンを称するために使用される。特に、この用語は、表示パネル上に配置されるか、または表示パネルに組み込まれた透明基板上の酸化インジウムスズ(ITO)の一層または多層の堆積によって作製されるタッチスクリーンを含む。
以下の説明において、群が、要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つを含むとして記載されている場合はいつでも、その群は、個別か、または互いの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつを含む、から実質的になる、またはからなるものであってよいと理解される。同様に、群が、要素またはその組合せの群の内の少なくとも1つからなるとして記載されている場合はいつでも、その群は、個別か、または互いの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつからなるものであってよいと理解される。別記しない限り、値の範囲は、挙げられた場合、その範囲の上限と下限の両方、およびその間の部分的な範囲を含む。
以下に記載されるように、より耐擦傷性である電子装置のタッチスクリーン基板および/またはカバーガラス物品の産業の需要は、ここに開示された耐久性ガラス物品の使用により満たされる。これらの無アルカリ/アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラスには、携帯電話、音楽プレーヤー、ノートブック型コンピュータ、ゲームコントローラ、電子ブックリーダーおよび他の装置などの電子装置のための特別な用途が見出されている。これらのガラス材料は、タッチスクリーン材料およびカバーガラス材料として現在使用されているソーダ石灰ガラス材料およびアルカリ含有ボロアルミノシリケートガラス材料に勝る、改善された耐擦傷性/耐亀裂性および耐引掻性などの特定の利点を有する。
1つの実施の形態において、これらのアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスは、アルカリを実質的に含まず、以下の成分を含む:(1)少なくとも55モル%のSiO2、(2)少なくとも5モル%のAl23、および(3)少なくとも1種類のアルカリ土類酸化物RO。特定の成分比が、必須の耐擦傷性/耐亀裂性および耐引掻性を有するガラスを達成するように必要であり、特に、(1)1を超える、Al23+B23対ROのモル%比、および(2)0.65を超える、Al23対ROのモル%比。
別の実施の形態によれば、アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスは以下の成分を含む:55〜75モル%のSiO2、8〜15モル%のAl23、10〜20モル%のB23、0〜8モル%のMgO、0〜8モル%のCaO、0〜8モル%のSrO、および0〜8モル%のBaO。
SiO2は、このガラスの網目構造成分である。追加の実施の形態において、SiO2は59〜64モル%の間の量で維持される。SiO2の含有量が55%未満であると、ガラスの耐薬品性が不十分であり、ガラスの歪み点が、ガラスの耐熱性が許容できないほど低下するほど低くなる。
Al23は、カラスの耐熱性および失透傾向を改善する成分である。追加の実施の形態において、Al23は、8〜12モル%の間の量で、さらに別の実施の形態において、8〜10モル%の間の量で維持される。Al23の含有量が8%未満であると、失透温度が著しく上昇して、ガラスにおける失透の発生が増加してしまう。その含有量が15%を超えると、耐酸性、特に、緩衝フッ化水素酸に対する耐性が低下して、ガラス基板の表面のヘイズの発生が増加してしまう。
23は、粘度を低下させ、それによって、ガラスの溶融を促進させる融剤としての機能を果たす成分である。追加の実施の形態において、B23は、11〜19モル%の間の量で維持される。B23の含有量が10%未満であると、その融剤としての効果が不十分になる。他方で、B23の含有量が多くなると、耐酸性が低下する傾向にある。特に、B23含有量が20%を超えると、ガラスの塩化水素酸に対する耐性が減少し、その歪み点が、耐熱性が低下するほど低下してしまう。
上述したように、B23は、ガラスの耐酸性に影響する成分である。その含有量が減少すると、ガラスの酸耐久性が改善される。金属膜またはITO膜が、液晶ディスプレイに使用するための透明ガラス基板の表面に形成される。そのような膜は酸エッチングによってパターン形成されるので、そのガラスは、高度の耐酸性を有さなければならない。したがって、ガラス中のB23の含有量を減少させることが望ましい。しかしながら、B23の含有量を単に減少させると、転じて、溶融能力の低下および気泡の増加を含む、他の問題が引き起こされてしまうであろう。
MgOは、歪み点を低下させずにガラスの高温粘度を低下させ、それによって、ガラスの溶融を促進する成分である。さらに別の実施の形態において、MgOの含有量は2〜7%である。MgOの含有量が8%を超えると、ガラスは、緩衝フッ化水素酸に対する耐性が著しく低減してしまう。
CaOは、MgOと同様の様式で機能する。追加の実施の形態において、CaOは1〜8モル%の間の量で維持される。CaOの含有量が8%を超えると、ガラスは、緩衝フッ化水素酸に対する耐性が著しく低減してしまう。
BaOは、ガラスの化学的耐久性だけでなく、失透傾向も改善する成分である。BaOの含有量が8%を超えると、歪み点が低下して、ガラスの耐熱性が低下してしまう。
SrOは、BaOと類似の様式で影響する。追加の実施の形態において、SrOは、1〜6モル%の間の量で維持される。SrOの含有量が8%を超えると、失透の発生が望ましくなく増加してしまう。
ここに開示されたアルミノホウケイ酸塩ガラスは、加えて、以下の性質を示す:(1)1000g重(約9.8N)超であるビッカース割れ目開始荷重、(2)移動するヌープ圧子により荷重を印加したときに、中央/横方向の割れ目のないことにより測定される、少なくとも900g重(約8.8N)の耐引掻性、(3)75GPa未満のヤング率値、および(4)27.5cm3/モル超のモル体積。このガラス材料は、関係式:25×10-7/℃≦CTE≦40×10-7/℃を満たす、温度範囲0〜300℃に亘る線熱膨張係数(CTE)を含む、電子装置のタッチスクリーンとして使用するのにそのガラス材料を特に適したものとするさらに別の性質を示す。
さらに別の実施の形態において、携帯式電子装置に使用するためのタッチスクリーン基板として使用するためのガラス物品は、ビッカース圧子を使用してガラスに荷重を印加したときに放射状割れ目が存在しないことにより測定される、少なくとも1100g重(約10.8N)の高い損傷閾値を示す無アルカリアルミノケイ酸塩ガラスからなる。さらにまた別の実施の形態において、無アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも1300g重(約12.7N)の高い損傷閾値を示す。
1000g重(約9.8N)の印加荷重まで放射状割れ目のないこととして定義される、高い損傷閾値は、ビッカース圧子を使用して測定できる。ビッカース圧子試験には、標準的なASTM法はないが、有用な試験方法が、文献R. Tandon et al., “Surface Stress Effects on Indentation Fracture Sequences,” J. Am. Ceram Soc. 73 [9] 2619-2627 (1990); R. Tandon et al., “Indentation Behavior of Ion-Exchanged Glasses,” J. Am. Ceram Soc. 73 [4] 970-077 (1990); およびP.H. Kobrin et al., “The Effects of Thin Compressive Films on Indentation Fracture Toughness Measurements,” J. Mater. Sci. 24 [4] 1363-1367 (1989)に記載されている。化学調質/強化SLSガラスは、1000g重(約9.8N)未満の印加荷重の範囲、ほとんどの場合、800g重(約7.8N)の印加荷重の範囲の印加荷重レベルで垂直/放射状割れ目を示す傾向にある。
耐引掻性または垂直/放射状割れ目の閾値は、Micro−Tribometer mod.UMT−2を使用して測定される。UMTは、引掻き試験を含む様々な形態の摩擦試験を可能にする市販の装置(カリフォルニア州、キャンベル所在のCETR Inc.社)である。適切な文献は、V. Le Houerou et al., “Surface Damage of Soda-lime-silica Glasses: Indentation Scratch Behavior,” J. Non-Cryst Solids, 316 [1] 54-63 (2003)である。この試験において、ヌープ圧子が、約100秒間で500グラムの最大荷重まで圧子圧入荷重を増加させながら表面を横切って引っ張られる(ガラスとガラスの差を識別するように)。化学調質/強化SLSガラスは、500g重(約4.9N)未満の印加荷重、ほとんどの場合、200g重(約1.96N)未満の印加荷重の範囲の印加荷重レベルで垂直/放射状割れ目を示す傾向にある。上述したように、本開示の無アルカリ/アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス物品は、一般に、900g重(約8.8N)の印加荷重までの印加荷重で垂直/放射状割れ目の存在を示さない。
本開示において、上述したもののわずかに変更した有用な試験方法を使用して、以下のように、耐引掻性を決定することができる。圧子荷重は、45秒間で0kg重から引掻荷重まで印加される。引掻きは、0.4mm/sの引掻速度で10mmの長さに亘り一定の荷重で行われ、よって、引掻きが行われる時間は25秒間である。荷重は、45秒間で引掻荷重から0kg重まで除かれる。ヌープチップは、前縁が圧子の広角度を含むように方向付けられる。引掻き割れ目閾値は、引掻き軌道の幅の2倍超の長さで引掻きプラスチック変形軌道に対して垂直な方向に延在する垂直/放射状割れ目を生じる引掻荷重と定義される。全ての引掻き試験は、50%の相対湿度において室温で行われる。
この必須の高い損傷閾値(1000g重(約9.8N)の荷重まで放射状割れ目がない)および引掻き抵抗(900g重(約8.8N)の荷重まで垂直/放射状割れ目がない)は、典型的な消費者の使用/アプリケーションに耐えるように十分に強く、耐久性であるタッチスクリーン基板をもたらすように働く。手短に言えば、本実施の形態の無アルカリアルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラスは、SLSガラスと比べた場合、より高度の耐擦傷性を示し、それゆえ、特に機械的信頼性が重要である場合、タッチスクリーンのためのITOまたはDITO基板ガラスとして、またタッチスクリーンのためのカバーガラス物品の用途に特に有益であろう基板を提供する。
典型的なアルミノケイ酸塩ガラスにおいて、ビッカース圧子圧入後に生じた変形は、一部は緻密化により、一部は剪断流により、生じることが知られている。しかしながら、ここに記載されたガラス基板は、最小の表面下剪断断層作用しか経験しないが、代わりに、主に、少なくとも1000g重(9.8N)の圧子圧入荷重下での緻密化による圧子圧入変形を経験するガラスから形成され、これにより、傷/割れ目の開始がより難しくなる。先に説明した緻密化機構は、ガラス構造中の低レベルの非架橋酸素(NBO)、大きいモル体積、ガラス基板の低いヤング率、高いB23の含有量、およびアルカリがないことのせいであり得る。理論により拘束することを望むものではないが、これらのガラス中のアルカリ土類陽イオンの変わった役割の1つの可能な機構は、アルカリと比べて、それらは、酸素との四面体配位においてホウ素を安定化させるのに比較的効果的ではないということである。四面体ホウ素はより緻密な構造をもたらし、圧縮可能ではなくなり、それゆえ、より低い荷重で破損にさらされる。それゆえ、高い割れ目開始閾値にとって四面体ホウ素を避けることが重要である。
上述したように、これらのガラスは、アルカリを実質的に含まず、垂直/放射状割れ目の形成に対して固有の耐性あり、この属性を得るためにイオン交換は必要なく、従来のAMLCD用途に使用されているガラスと類似の物理的性質を有するので、特定の家庭用電子機器用途およびディスプレイ用途にとって非常に望ましい。これのガラスは、液晶ディスプレイ用途に向上した耐擦傷性を提供できる。携帯式装置のためのカバーガラスとして使用される場合、このガラスは、イオン交換ガラスよりも、引掻きおよび点接触を取り囲む目立つ垂直/放射状割れ目の損傷に対してより耐性である。アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスは、あるイオン交換ガラスの典型的な特徴である壊れ易さはない。
特に業界標準および現在使用されているソーダ石灰ケイ酸塩(SLS)ガラスと比べた場合、タッチスクリーン基板のための無アルカリガラスを使用する他の利点としては、以下(1)が挙げられる:
・ 固有の耐擦傷性および耐引掻性のために、これらのガラスを強化する必要がなく、したがって、これらのガラスは、フルシートとして、処理されイオン交換されたSLSガラスがレーザ切断されたSLSである場合に典型的に見られる結果として生じた反りがなく、次いで、レーザ切断することができる;
・ ダウンドロー法を使用して形成された無アルカリアルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラスを使用すると、無垢な薄いガラス(0.1〜1mm厚)を使用できるのに対し、SLSガラスは、典型的に、これらのより薄い仕様を達成するために研磨が必要であろう;
・ イオン交換プロセスがないことは、イオン交換ガラスは、最小のイオン移動度および結果として生じる強度の変化を確実にするために交換温度より低く処理する必要があるので、処理温度が、イオン交換ガラスにおけるよりも、高くて差し支えないことを意味する;
・ 開示された無アルカリアルカリ土類アルミノケイ酸塩のタッチスクリーン用ガラスは、典型的にディスプレイ用ガラスと密接に一致した耐擦傷性を示し、これは転じて、ITOガラスのディスプレイ用ガラスとの将来的なハイブリッド組込みが可能になる;
・ イオン交換がないことは、均一であり、部分的に応力下でも部分的に張力下でもない縁を意味し、これは、適切なサイズに切断されたときに、上面と下面のみが化学強化され、縁の中は強化されておらず張力下にある縁を示すSLSガラスの特徴と対照的である。その結果、無アルカリアルカリ土類アルミノケイ酸塩タッチスクリーン基板は、張力下にある露出縁を有する基板に典型的に存在する、時間の経過と共に縁の強度の減少をもたらすガラス中の疲労効果による置割れの傾向がない。これらの遅延した疲労効果は、ガラスが曝露されたであろう温度または湿度もしくはそれらの組合せに相関するようである。
上述したように、無アルカリアルカリ土類ホウケイ酸塩ガラスからなるガラスには、特にSLSガラス系のタッチスクリーン基板およびカバーガラス物品と比べた場合、それらの十分な耐久性および機械的性質のために、電子装置のタッチスクリーン基板およびカバーガラス物品としての特別な用途が見出されている。
表Iには、ここに記載された請求項の組成範囲と耐擦傷性範囲内の13種類の無アルカリアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスが列挙されており、表IIには、16種類の比較ガラスが列挙されている。
個々の成分の合計が100になるか100に極めて近いので、全ての実用的な目的のために、報告された値は、モルパーセントを表すと考えてよい。実際のバッチ成分は、他のバッチ成分と共に溶融されたときに、適切な比率で所望の酸化物に転化される、酸化物、または他の化合物いずれかのどのような材料を含んでもよい。例えば、SrCO3およびCaCO3は、それぞれ、SrOおよびCaOの供給源を提供できる。
表Iのガラスを調製するために使用される特定のバッチ成分は、微細な砂、アルミナ、ホウ酸、酸化マグネシウム、石灰石、炭酸ストロンチウムまたは硝酸ストロンチウム、および酸化スズであった。
表Iに列挙された例1〜13、および表IIに列挙された例14〜29について、溶融は、研究室規模で、連続的にジュール加熱溶融装置内で行われた。ひとまとめで45.4kgの原材料のバッチをメカニカル・ミキサ中に計り取り、5分間に亘り一緒に混合した。約0.25kgに相当する量の水を、混合の最後の60秒間で混合物に加えて、埃の発生を低減させた。混合物をスクリュー・フィーダを使用して、酸化物電極と、溶融物の表面を焼成する対向するバーナとを備えた、セラミックが裏打ちされた炉に装填した。電極により供給された出力は、1590℃と1610℃の間の温度に対応する、ほぼ一定の抵抗性にガラスを維持することによって、制御した。ガラスは、溶融装置から、高温清澄器からなる白金系調質(conditioning)システムに、その後、撹拌槽へと移動した。清澄器と撹拌槽の温度は実験中ずっと一定に維持したのに対し、セラミックが裏打ちされた溶融装置の溶融温度は、組成により変えられた。ガラスは、加熱されたオリフィスを通じて撹拌槽から排出され、約5mm厚および約30mm幅のリボンに圧延された。このリボンからのガラスを欠陥について定期的に分析した。欠陥は、特定し、計数し、1ポンド(約0.45kg)当たりの欠陥に換算した。組成は、標準的な化学的方法によりリボンから得た。物理的性質は以下に記載するように得た。
表IおよびIIに述べられたガラスの性質は、ガラス業界において慣習的な技法にしたがって決定した。それゆえ、温度範囲0〜300℃に亘る線熱膨張係数(CTE)は、×10-7/℃で表され、ASTM基準E228−85であるファイバ延伸技法から決定した。Mpsiで表されたヤング率値は、ASTM E1875−00e1に述べられた一般タイプの共鳴超音波式分光技法を使用して決定した。
割れ目開始荷重は、以下の様式で測定され、表IおよびIIにも報告されている。荷重は、0.2mm/分で印加し、除去した。最大荷重は10秒間に亘り保持した。圧子圧入割れ目閾値は、10個の圧痕の50%が、圧痕が印加された角から広がるいくつかの放射状/垂直割れ目を示す圧子圧入荷重で定義される。最大荷重は、所定のガラス組成物についてその閾値が満たされるまで増加させた。全ての圧子圧入は、50%の相対湿度において室温で行った。
Figure 0006027016
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図1には、ここに開示された無アルカリ/アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスサンプルおよび比較のガラスサンプルに関する実測割れ目開始閾値対モル体積の関係をプロットしたグラフが示されている。このグラフを観察すると、無アルカリ/アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスサンプル(例1〜13)の全てが27.5を超えたモル体積を示し、それゆえ、27.5を超えたモル体積を示すことが、1000g重(1N)以上の割れ目開始荷重を達成するための重要な要因であることを強調していることが判明した。
図2には、ここに開示された無アルカリ/アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスサンプルおよび比較のガラスサンプルに関する実測割れ目開始閾値対ヤング率の関係をプロットしたグラフが示されている。このグラフを観察すると、無アルカリ/アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスサンプル(例1〜13)の全てが75GPa未満のヤング率を示し、それゆえ、75GPa未満のヤング率を示すことが、1000g重(1N)以上の割れ目開始荷重を達成するための重要な要因であることを強調していることが判明した。
図3aおよび3bには、1キログラム重(kg重)(1N)のビッカース圧子圧入が行われた、表Iからのガラスサンプル番号4に関する表面(または上面)と断面の顕微鏡画像が示されており、このサンプルは、1300g重(約12.7N)と測定された高い割れ目開始荷重(g重)を示した。平面図(図3a)から分かるように、ビッカース圧子が圧入されたサンプルは、ビッカース圧子圧入地点から延びる放射状割れ目を示していない。断面図(図3b)から分かるように、このガラスは、剪断断層が観察されずに、主に緻密化により変形している。さらに、剪断線のないことにより、後で説明する比較ガラスなどの、より割れ目を生じやすいガラスと比べると、このガラスの変形には、塑性流れはより小さい役割しか果たしてしないことが判明した。調査した他の高い耐亀裂性のアルミノホウケイ酸塩ガラスサンプル(1〜3および5〜13)は、緻密化により生じる全体の変形量が、比較のガラス14〜29などの、割れ目開始荷重がより低いガラスにおけるよりも大きい、例4により示された様式と類似の様式で変形すると予測される。
図4aおよび4bには、1キログラム重(kg重)(1N)のビッカース圧子圧入が行われた、表IIからのガラスサンプル番号14に関する表面(または上面)と断面の顕微鏡画像が示されており、このサンプルは、200g重(約1.96N)と測定された非常に低い割れ目開始荷重(g重)を示した。平面図(図4a)から分かるように、ビッカース圧子が圧入されたサンプルは、ビッカース圧子圧入地点から延びる著しい放射状割れ目を示している。断面図(図4b)から分かるように、この比較ガラスは、上述した無アルカリ/アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスのサンプル番号4よりも、小さい緻密化と大きい剪断で変形している。特に、剪断変形が、表面下の剪断線の存在により、変形のより大きい要素として生じることが明らかである。これらの剪断線(剪断割れ目)は、割れ目開始閾値で観察される、より大きい割れ目系である、垂直/放射状割れ目を開始させる。
ここに記載された材料、方法、および物品に、様々な変更および改変を行うことができる。ここに記載された材料、方法、および物品の他の態様が、ここに開示された材料、方法、および物品の実施および本明細書の検討により明白となる。この明細書および実施例は例示と考えることが意図されている。

Claims (6)

  1. アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスであって、アルカリを実質的に含まず、59〜64モル%のSiO28〜12モル%のAl2311〜19モル%のB 2 3 、2〜7モル%のMgO、1〜8モル%のCaO、1〜6モル%のSrO、および0〜6モル%のBaOを含み、Al23(モル%)+B23(モル%)/RO(モル%)≧2.26、およびAl23(モル%)/RO(モル%)>0.65であり、上記式中、ROはアルカリ土類酸化物成分である、アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス。
  2. 少なくとも1000g重(約9.8N)のビッカース垂直/放射状割れ目裂開始閾値を示す、請求項1記載のアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス。
  3. 少なくとも1100g重(約10.8N)のビッカース垂直/放射状割れ目裂開始閾値を示す、請求項1記載のアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス。
  4. 関係式:25×10-7/℃≦CTE≦40×10-7/℃を満たす、温度範囲0〜300℃に亘る線熱膨張係数(CTE)を示す、請求項1から3いずれか1項記載のアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス。
  5. 少なくとも27.5cm3/モルのモル体積を有する、請求項1から4いずれか1項記載のアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス。
  6. 5GPa未満のヤング率を有する、請求項1から5いずれか1項記載のアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス。
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