<第1実施形態>
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の一例について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態を示す全体構成図である。
(全体構成)
このインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙(記録媒体)Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置であり、主として、用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(描画面)に所定の処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部18と、画像記録部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20で乾燥処理された用紙PにUV照射処理(定着処理)を行って画像を定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理された用紙Pへ送風して冷却する用紙冷却部23と、用紙冷却部23で冷却された用紙Pを排紙する排紙部24と、を備えている。
(給紙部)
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙手段の一例としての給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とで構成されている。
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
記録媒体としての用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
サッカー装置32は、給紙台30に積載されている用紙Pを上から順に1枚ずつ取り上げて、給紙ローラ対34に給紙する。サッカー装置32は、昇降自在かつ揺動自在に設けられたサクションフット32Aを備え、このサクションフット32Aによって用紙Pの上面を吸着保持して、用紙Pを給紙台30から給紙ローラ対34に移送する。この際、サクションフット32Aは、束の最上位に位置する用紙Pの先端側の上面を吸着保持して、用紙Pを引き上げ、引き上げた用紙Pの先端を給紙ローラ対34を構成する一対のローラ34A、34Bの間に挿入する。
給紙ローラ対34は、互いに押圧当接された上下一対のローラ34A、34Bで構成されている。上下一対のローラ34A、34Bは、一方が駆動ローラ(ローラ34A)、他方が従動ローラ(ローラ34B)とされ、駆動ローラ(ローラ34A)は、図示しないモータに駆動されて回転する。モータは、用紙Pの給紙に連動して駆動され、サッカー装置32から用紙Pが給紙されると、そのタイミングに合わせて駆動ローラ(ローラ34A)を回転させる。上下一対のローラ34A、34Bの間に挿入された用紙Pは、このローラ34A、34Bにニップされて、ローラ34A、34Bの回転方向(フィーダボード36の設置方向)に送り出される。
フィーダボード36は、用紙幅に対応して形成され、給紙ローラ対34から送り出された用紙Pを受けて、前当て38までガイドする。このフィーダボード36は、下方に向けて傾斜して設置され、その搬送面の上に載置された用紙Pを搬送面に沿って滑らせて前当て38までガイドする。
フィーダボード36には、用紙Pを搬送するためのテープフィーダ36Aが幅方向に間隔をおいて複数設置される。テープフィーダ36Aは、無端状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。フィーダボード36の搬送面に載置された用紙Pは、このテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を搬送される。
また、フィーダボード36の上には、リテーナ36Bとコロ36Cとが設置される。
リテーナ36Bは、用紙Pの搬送面に沿って前後に縦列して複数配置される(本例では2つ)。このリテーナ36Bは、用紙幅に対応した幅を有する板バネで構成され、搬送面に押圧当接されて設置される。テープフィーダ36Aによってフィーダボード36の上を搬送される用紙Pは、このリテーナ36Bを通過することにより、凹凸が矯正される。なお、リテーナ36Bは、フィーダボード36との間に用紙Pを導入しやすくするため、後端部がカールして形成される。
コロ36Cは、前後のリテーナ36Bの間に配設される。このコロ36Cは、用紙Pの搬送面に押圧当接されて設置される。前後のリテーナ36Bの間を搬送される用紙Pは、このコロ36Cによって上面が抑えられながら搬送される。
前当て38は、用紙Pの姿勢を矯正する。この前当て38は、板状に形成され、用紙Pの搬送方向Aと直交して配置される。また、図示しないモータに駆動されて、揺動可能に設けられる。フィーダボード36の上を搬送された用紙Pは、その先端が前当て38に当接されて、姿勢が矯正される(いわゆる、スキュー防止)。前当て38は、給紙ドラム40への用紙の給紙に連動して揺動し、姿勢を矯正した用紙Pを給紙ドラム40に受け渡す。
給紙ドラム40は、前当て38を介してフィーダボード36から給紙される用紙Pを受け取り、処理液付与部14へと搬送する。給紙ドラム40は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。給紙ドラム40の外周面上には、グリッパ40Aが備えられ、このグリッパ40Aによって用紙Pの先端が把持される。給紙ドラム40は、グリッパ40Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液付与部14へと用紙Pを搬送する。
給紙部12は、以上のように構成されている。給紙台30の上に積載された用紙Pは、サッカー装置32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34に給紙される。給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、その給紙ローラ対34を構成する上下一対のローラ34A、34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。そして、その搬送過程でリテーナ36Bによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、その給紙ドラム40によって処理液付与部14へと搬送される。
(処理液付与部)
処理液付与部14は、用紙Pの表面(描画面)に所定の処理液を付与する。この処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44とで構成されている。
処理液付与ドラム42は、給紙部12の給紙ドラム40から用紙Pを受け取り、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する。処理液付与ドラム42は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液付与ドラム42の外周面上には、グリッパ42Aが備えられ、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液付与ドラム42は、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する(1回転で1枚の用紙Pを搬送する。)。処理液付与ドラム42と給紙ドラム40は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
処理液付与ユニット44は、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液をローラ塗布する。この処理液付与ユニット44は、主として、用紙Pに処理液を塗布する塗布ローラ44Aと、処理液が貯留される処理液槽44Bと、処理液槽44Bに貯留された処理液を汲み上げて、塗布ローラ44Aに供給する汲み上げローラ44Cとで構成されている。汲み上げローラ44Cは、塗布ローラ44Aに押圧当接して設置されるとともに、一部を処理液槽44Bに貯留された処理液に浸漬させて設置される。この汲み上げローラ44Cは、処理液を計量して汲み上げ、塗布ローラ44Aの周面に一定の厚さで処理液を付与する。塗布ローラ44Aは、用紙幅に対応して設けられ、用紙Pに押圧当接されて、その周面に付与された処理液を用紙Pに塗布する。塗布ローラ44Aは、図示しない当接離間機構に駆動されて、処理液付与ドラム42の周面に当接する当接位置と、処理液付与ドラム42の周面から離間する離間位置との間を移動する。当接離間機構は、用紙Pの通過タイミングに合わせて、塗布ローラ44Aを移動させ、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液を塗布する。
なお、本実施形態では、処理液をローラ塗布する構成としているが、処理液を付与する方法は、これに限定されるものではない。この他、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより付与する構成を採用することもできる。
処理液付与部14は、以上のように構成されている。給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム42で受け取られる。処理液付与ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して、回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。この搬送過程で塗布ローラ44Aが用紙Pの表面に押圧当接され、用紙Pの表面に処理液が塗布される。
ここで、この用紙Pの表面に塗布する処理液は、後段の画像記録部18で用紙Pに打滴する水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。このような処理液を用紙Pの表面に塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
(処理液乾燥処理部)
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。この処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの印刷面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とで構成されている。
処理液乾燥処理ドラム46は、処理液付与部14の処理液付与ドラム42から用紙Pを受け取り、画像記録部18へと用紙Pを搬送する。処理液乾燥処理ドラム46は、円筒状に組んだ枠体で構成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液乾燥処理ドラム46の外周面上には、グリッパ46Aが備えられ、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液乾燥処理ドラム46は、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、画像記録部18に用紙Pを搬送する。なお、本実施形態の処理液乾燥処理ドラム46は、外周面上の2カ所にグリッパ42Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。処理液乾燥処理ドラム46と処理液付与ドラム42は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
用紙搬送ガイド48は、処理液乾燥処理ドラム46による用紙Pの搬送経路に沿って配設され、用紙Pの搬送をガイドする。
処理液乾燥処理ユニット50は、処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。本例では、2台の処理液乾燥処理ユニット50が、処理液乾燥処理ドラム内に配設され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てる構成とされている。
処理液乾燥処理部16は、以上のように構成されている。処理液付与部14の処理液付与ドラム42から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの先端をグリッパ46Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。この際、処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。すなわち、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
(画像記録部)
画像記録部18は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部18は、主として、用紙Pを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出する吐出ヘッドの一例としてのインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62とで構成されている。
画像記録ドラム52は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパ52Aが備えられ、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム52は、その周面に多数の吸引孔(図示せず)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引孔から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平滑性をもって用紙Pを搬送することができる。
なお、この吸引孔からの吸引は一定の範囲でのみ作用し、所定の吸引開始位置から所定の吸引終了位置との間で作用する。吸引開始位置は、用紙押さえローラ54の設置位置に設定され、吸引終了位置は、インラインセンサ58の設置位置の下流側に設定される(たとえば、インク乾燥処理部20に用紙を受け渡す位置に設定される。)。すなわち、少なくともインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの設置位置(画像記録位置)とインラインセンサ58の設置位置(画像読取位置)では、用紙Pが画像記録ドラム52の周面に吸着保持されるように設定される。
なお、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持させる機構は、上記の負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
また、本例の画像記録ドラム52は、外周面上の2カ所にグリッパ52Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。画像記録ドラム52と処理液乾燥処理ドラム46は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置(処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配設される。この用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧当接させて設置される。処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、この用紙押さえローラ54を通過することによりニップされ、画像記録ドラム52の周面に密着させられる。
4台のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。このインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、ノズル面が画像記録ドラム52の周面に対向するように配置される。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。
なお、上記のように、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kから吐出させるインクは、水性UVインクが用いられる。水性UVインクは、打滴後に紫外線(UV)を照射することにより、硬化させることができる。
インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向に対して、最後尾のインクジェットヘッド56Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kで記録された画像を読み取る。このインラインセンサ58は、たとえば、ラインスキャナで構成され、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pからインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって記録された画像を読み取る。
なお、インラインセンサ58の下流側には、インラインセンサ58に近接して接触防止板59が設置される。この接触防止板59は、搬送の不具合等によって用紙Pに浮きが生じた場合に、用紙Pがインラインセンサ58に接触するのを防止する。
ミストフィルタ60は、最後尾のインクジェットヘッド56Kとインラインセンサ58との間に配設され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉する。このように、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉することにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入を防止でき、読み取り不良等の発生を防止できる。
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。このドラム冷却ユニット62は、主として、図示しないエアコン(エア・コンディショナー)と、そのエアコンから供給される冷気を画像記録ドラム52の周面に吹き当てるダクト62Aとで構成されている。ダクト62Aは、画像記録ドラム52に対して、用紙Pの搬送領域以外の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。本例では、画像記録ドラム52のほぼ上側半分の円弧面に沿って用紙Pが搬送されるので、ダクト62Aは、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する構成とされている。具体的には、ダクト62Aの吹出口が、画像記録ドラム52のほぼ下側半分を覆うように円弧状に形成され、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気が吹き当てられる構成とされている。
ここで、画像記録ドラム52を冷却する温度は、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度よりも低い温度となるように冷却される。これにより、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに結露が生じるのを防止することができる。すなわち、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kよりも画像記録ドラム52の温度を低くすることにより、画像記録ドラム側に結露を誘発することができ、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに生じる結露(特にノズル面に生じる結露)を防止することができる。
画像記録部18は、以上のように構成されている。処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、用紙Pの先端をグリッパ52Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、まず、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着穴から吸引されて、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、この状態で搬送されて、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。
インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって画像が記録された用紙Pは、次いで、インラインセンサ58を通過する。そして、そのインラインセンサ58の通過時に表面に記録された画像が読み取られる。この記録画像の読み取りは必要に応じて行われ、読み取られた画像から吐出不良等の検査が行われる。読み取りを行う際は、画像記録ドラム52に吸着保持された状態で読み取りが行われるので、高精度に読み取りを行うことができる。また、画像記録直後に読み取りが行われるので、たとえば、吐出不良等の異常を直ちに検出することができ、その対応を迅速に行うことができる。これにより、無駄な記録を防止できるとともに、損紙の発生を最小限に抑えることができる。この後、用紙Pは、吸着が解除された後、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
(インク乾燥処理部)
インク乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを加熱乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部20は、主として、画像が記録された用紙Pを搬送する搬送手段としてのチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pを乾燥処理する乾燥手段の一例としてのインク乾燥処理ユニット68とで構成されている。
チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22、用紙冷却部23、排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像記録部18から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
このチェーングリッパ64は、主として、画像記録ドラム52に近接して設置される第1スプロケット64Aと、排紙部24に設置される第2スプロケット64Bと、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる無端状のチェーン64Cと、チェーン64Cの走行をガイドする複数のチェーンガイド(図示せず)と、チェーン64Cに一定の間隔をもって取り付けられる把持部としての複数のグリッパ64Dとで構成されている。第1スプロケット64Aと、第2スプロケット64Bと、チェーン64Cと、チェーンガイドとは、それぞれ一対で構成され、用紙Pの幅方向の両側に配設される。グリッパ64Dは、一対で設けられるチェーン64Cに掛け渡されて設置される。
第1スプロケット64Aは、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pをグリッパ64Dで受け取ることができるように、画像記録ドラム52に近接して設置される。この第1スプロケット64Aは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられるとともに、図示しないモータが連結される。第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに巻き掛けられるチェーン64Cは、このモータを駆動することにより走行する。
第2スプロケット64Bは、画像記録ドラム52から受け取った用紙Pを排紙部24で回収できるように、排紙部24に設置される。すなわち、この第2スプロケット64Bの設置位置が、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路の終端とされる。この第2スプロケット64Bは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられる。
チェーン64Cは、無端状に形成され、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる。
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーン64Cが所定の経路を走行するようにガイドする(=用紙Pが所定の搬送経路を走行して搬送されるようにガイドする。)。本例のインクジェット記録装置10では、第2スプロケット64Bが第1スプロケット64Aよりも高い位置に配設される。このため、チェーン64Cが、途中で傾斜するような走行経路が形成される。具体的には、第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとで構成されている。
第1水平搬送経路70Aは、第1スプロケット64Aと同じ高さに設定され、第1スプロケット64Aに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。第2水平搬送経路70Cは、第2スプロケット64Bと同じ高さに設定され、第2スプロケット64Bに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。傾斜搬送経路70Bは、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間に設定され、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間を結ぶように設定される。
チェーンガイドは、この第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとを形成するように配設される。具体的には、少なくとも第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとの接合ポイント、及び、傾斜搬送経路70Bと第2水平搬送経路70Cとの接合ポイントに配設される。
グリッパ64Dは、チェーン64Cに一定の間隔をもって複数取り付けられる。このグリッパ64Dの取り付け間隔は、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。すなわち、画像記録ドラム52から順次受け渡される用紙Pをタイミングを合わせて画像記録ドラム52から受け取ることができるように、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。
チェーングリッパ64は、以上のように構成されている。上記のように、第1スプロケット64Aに接続されたモータ(図示せず)を駆動すると、チェーン64Cが走行する。チェーン64Cは、画像記録ドラム52の周速度と同じ速度で走行する。また、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pが、各グリッパ64Dで受け取れるようにタイミングが合わせられる。
バックテンション付与機構66は、グリッパ64Dによって先端を把持されながら搬送される用紙Pにバックテンションを付与する。このバックテンション付与機構66は、主として、インク乾燥処理部20、及びUV照射処理部22に配置されるガイドプレート72を備えている。
ガイドプレート72は、用紙Pの用紙幅に対応した幅を有する中空状のボックスプレートで構成されている。また、ガイドプレート72の上面には多数の吸引孔が形成されており、この吸引孔から空気を吸引する吸引ファンを備えている。そして、吸引孔から空気が吸引されることにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pの裏面が吸引される。これにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションが付与される。
上記のように、ガイドプレート72は、第1水平搬送経路70Aを走行するチェーン64Cに沿って配設されるので、用紙Pが第1水平搬送経路70Aを搬送されている間、バックテンションが付与される。
インク乾燥処理ユニット68は、チェーングリッパ64の内部(特に第1水平搬送経路70Aを構成する部位の前半側)に設置され、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施す。このインク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥処理する。インク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aに沿って複数台配置される。この設置数は、インク乾燥処理ユニット68の処理能力や用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、画像記録部18から受け取った用紙Pが第1水平搬送経路70Aを搬送されている間に乾燥させることができるように設定される。したがって、第1水平搬送経路70Aの長さも、このインク乾燥処理ユニット68の能力を考慮して設定される。
インク乾燥処理部20は、以上のように構成されている。画像記録部18の画像記録ドラム52から受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64は、用紙Pの先端をグリッパ64Dで把持して、平面状のガイドプレート72に沿わせて用紙Pを搬送する。チェーングリッパ64に受け渡された用紙Pは、まず、第1水平搬送経路70Aを搬送される。この第1水平搬送経路70Aを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたインク乾燥処理ユニット68によって乾燥処理が施される。すなわち、表面(描画面)に熱風が吹き当てられて、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながら乾燥処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら乾燥処理することができる。続いて、用紙Pは、UV照射処理部22へ搬送される。
(UV照射処理部)
UV照射処理部22は、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線(UV)を照射して、画像を定着させる。このUV照射処理部22は、主として、用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線を照射するUV照射ユニット74とで構成されている。
上記のように、チェーングリッパ64とバックテンション付与機構66は、インク乾燥処理部20及び排紙部24と共に共通して使用される。
UV照射ユニット74は、第1水平搬送経路70Aのインク乾燥処理ユニット68より搬送方向の下流側に設置され、搬送される用紙Pの表面(描画面)に紫外線を照射する。このUV照射ユニット74は、紫外線ランプ(UVランプ)を備え、第1水平搬送経路70Aに沿って複数配設される。そして、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pの表面(描画面)に向けて紫外線を照射する。このUV照射ユニット74の設置数は、用紙Pの搬送速度(印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、用紙Pが第1水平搬送経路70Aを搬送されている間に照射した紫外線によって画像を定着させることができるように設定される。したがって、第1水平搬送経路70Aの長さは、用紙Pの搬送速度等を考慮して設定される。
UV照射処理部22は、以上のように構成されている。チェーングリッパ64に搬送されてインク乾燥処理部20で乾燥処理が施された用紙Pは、引き続き第1水平搬送経路70Aを搬送され、チェーングリッパ64の内部に設置されたUV照射ユニット74によりUV照射処理が施される。すなわち、UV照射ユニット74から表面に向けて紫外線が照射される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながらUV照射処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながらUV照射処理を施すことができる。また、用紙Pが搬送途中でグリッパ64Dから落下した場合であっても、ガイドプレート72に支持される。
(用紙冷却部)
用紙冷却部23は、インク乾燥処理部20で加熱乾燥され、UV照射処理部22で紫外線が照射された用紙Pを冷却する。この用紙冷却部23は、主として、UV照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pを支持して用紙Pと摺接する搬送面の一例としての支持板82と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pへ送風する送風ユニット78とで構成されている。
上記のように、チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20及びUV照射処理部22と共に共通して使用される。支持板82は、第1水平搬送経路70A及び傾斜搬送経路70Bを走行するチェーン64Cに沿って配設されており、図2に示すように、支持板82には複数の貫通孔82Aが均等に形成されている。本実施形態では、一例として、支持板82として開口率が50%程度のパンチングメタルを用いている。
なお、複数の貫通孔82Aが形成されていれば、パンチングメタルでなく他の材質で支持板82を形成してもよい。また、支持板82には、必ずしも貫通孔82Aが形成されている必要はなく、無孔の板材であってもよい。
送風ユニット78は、図1に示すように、支持板82(搬送面)と対向して複数配設されており、本実施形態では、一例として、第1水平搬送経路70Aに配設された支持板82と対向して2台の送風ユニット78が設けられており、傾斜搬送経路70Bに配設された支持板82と対向して3台の送風ユニット78が設けられており、各々の送風ユニット78から用紙Pへ空気を吹き付けて用紙Pの表面(描画面)を冷却する。冷却された用紙Pは、第2水平搬送経路70Cへ搬送される。
〈排紙部〉
排紙部24は、第2水平搬送経路70Cに設けられており、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを回収する。この排紙部24は、主として、UV照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76とで構成されている。
上記のように、チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22、及び用紙冷却部23と共に共通して使用される。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。
排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。この排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(図示せず)。
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
〈用紙冷却部の詳細〉
次に、本実施形態のインクジェット記録装置10の主要部である用紙冷却部23について、さらに詳しく説明する。
図2に示すように、用紙冷却部23は、支持板82(搬送面)と対向して配設された複数の送風ユニット78を備えている。送風ユニット78は、主として、送風手段の一例としての送風ファン79と、送風ファン79からの送風を用紙Pへ吹き付ける複数のノズル部84A、84Bを備えた送風箱84とで構成されている。
送風ファン79は、主として、筐体80と、筐体80の内部に設けられた複数の回転羽81とで構成されており、本実施形態では一例として、3枚の羽からなる回転羽81を採用しているが、これに限らず、2枚、又は4枚以上の羽からなる回転羽81でもよい。回転羽81は、筐体80に対して回転可能に設けられており、図示しないモータ等の駆動手段に接続されている。これにより、駆動手段を駆動させると、筐体80に対して回転羽81が回転し、送風ファン79の上方から空気を取り込んで下方へ送風する。
ここで、送風ファン79は、用紙Pの搬送方向Dと交差する方向に間隔を空けて複数配列されており、本実施形態では一例として、1つの送風ユニット78に8個の送風ファン79が配列されている(図2では、8個の送風ファン79のうち、3個のみ図示されている)。各送風ファン79は、筐体80によって仕切られており、互いに隣り合う送風ファン79の気流の影響を受けないようにされているが、これに限らず、1つの筐体に複数の送風ファン79を配設してもよい。また、送風ファン79の数は、要求される風量や用紙Pの幅に応じて適宜設定される。
送風ファン79の下方には、送風ファン79と接続するように送風箱84が設けられている。送風箱84は、搬送方向Dと交差する方向を長手方向とする長尺の部材であり、送風ファン79の筐体80の下端部に取り付けられた外筒部88と、外筒部88の内周面に取り付けられた整流部材90とで構成されている。
外筒部88は、平面視で矩形状の略角筒状の部材であり、外筒部88の上端部は送風ファン79で塞がれている。また、外筒部88の内周側には、長尺の整流部材90が取り付けられている。
整流部材90は、送風箱84の長手方向に延びており、搬送方向と交差する方向(用紙Pの幅方向)から見ると、上方に凸となるように屈曲して山型に形成されている(図3参照)。また、整流部材90の両端部は、用紙Pの幅方向に対向した外筒部88の内周面に溶接されている。なお、本実施形態では、整流部材90を外筒部88に溶接して送風箱84を形成したが、これに限らず、整流部材90にフランジを設けてボルト等で外筒部88へ締結してもよい。
図3に示すように、送風箱84の下部には、外筒部88と整流部材90とでノズル部84A、84Bが形成されている。ノズル部84A、84Bは、搬送方向Dと交差する方向に延びており、ノズル部84Aは、外筒部88の搬送方向下流側の内壁と整流部材90とで形成されており、ノズル部84Bは、外筒部88の搬送方向上流側の内壁と整流部材90とで形成されている。このため、搬送方向と交差する方向から見て二列のノズル部84A、84Bが設けられており、外筒部88の内部の通風路86は、それぞれのノズル部84A、84Bへ分岐している。
ノズル部84A、84Bにはそれぞれ、絞り部84Cと直線部84Dとが設けられている。絞り部84Cは、山型となっている整流部材90の斜面と外筒部88の内壁とで構成されており、下方(支持板82側)に向かって通風路86の搬送方向Dの幅が狭幅となっている。なお、本実施形態では、整流部材90だけを傾斜させて絞り部84Cとしているが、これに限らず、外筒部88の内壁を傾斜して絞り部84Cを形成してもよい。
絞り部84Cの下端部には、直線部84Dが設けられている。直線部84Dは、整流部材90の下端部を外筒部88の内壁と平行に伸ばして形成されており、本実施形態では支持板82に対して垂直に形成している。
直線部84Dの下端部には、用紙Pの幅方向に延びたスリット状の吹出口84Eが形成されている。吹出口84Eは、一定の開口幅Wで形成されており、本実施形態では、一例として、吹出口84Eの開口幅Wが10mmで形成されている。また、直線部84Dの長さHは、30mmで形成されている。上記のように、直線部84Dの長さHを吹出口84Eの幅Wの2倍以上(H>2W)の長さで形成することにより、吹出口84Eから吹き出した空気が拡散しないように方向付けているが、必ずしも上記の関係式を満たす必要はなく、直線部84Dの長さHが吹出口84Eの幅Wの2倍以下でもよい。
図2に示すように、隣り合う送風ユニット78において、一方の送風ユニット78に形成されたノズル部84Aと、他方の送風ユニット78に形成されたノズル部84Bとの中心間距離L1は、一方の送風ユニット78におけるノズル部84Aとノズル部84Bとの搬送方向Dの中心間距離L2より間隔が広くなっている。本実施形態では、一例として、一方の送風ユニット78に形成されたノズル部84Aと、他方の送風ユニット78に形成されたノズル部84Bとの中心間距離L1は、70mmで形成されており、一方の送風ユニット78におけるノズル部84Aとノズル部84Bとの搬送方向Dの中心間距離L2は、90mmで形成されている。
なお、本実施形態では、支持板82を形成して用紙Pの搬送面としているが、これに限らず、インク乾燥処理部20やUV照射処理部22のように、ガイドプレート72と同様のプレートを配設してもよい。この場合、プレートの上面側に冷却液が流れる冷却流路を設けることで、プレートと摺接している用紙Pの描画面とは反対側の面を冷却できる。
(作用及び効果)
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の作用及び効果について説明する。
図1に示すように、画像記録部18で表面にインクの液滴が吐出された用紙Pは、インク乾燥処理部20で加熱乾燥され、さらにUV照射処理部22でUV照射されることで、用紙Pの温度が上昇する。用紙Pの温度が高い状態で、排紙部24の排紙台76に用紙Pが積み重ねられると、用紙P同士が接着する現象、いわゆるブロッキングが発生しやすくなる。ここで、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、UV照射処理部22より搬送方向Dの下流側に用紙冷却部23を備え、用紙冷却部23の送風ユニット78から用紙Pへ送風して用紙Pの温度を低下させることでブロッキングの発生を抑制できる。
以下、送風ユニット78から用紙Pへ送風した空気の流れを説明する。図4に示すように、チェーングリッパ64のグリッパ64Dで用紙Pの先端が把持され、この状態で搬送方向Dに用紙Pが搬送される。このとき、用紙Pの後端部は、支持板82に支持されており、用紙Pは、支持板82に引き摺られながら搬送される。
ここで、駆動手段が送風ファン79の回転羽81を回転させると、送風ファン79から送風箱84の通風路86へ空気が送風される。通風路86へ送風された空気は、図中矢印で示すように、ノズル部84A側の絞り部84Cと、ノズル部84B側の絞り部84Cとに分岐して流れ込む。ここで、各ノズル部に形成された絞り部84Cにより、上方から下方へ向かって通風路86の幅が狭くなっているので、直線部84Dへ向かって通風路86の圧力が徐々に高くなり、通風路86を流れる空気の風速が速くなる。
直線部84Dへ到達した空気は、速い風速を維持したまま吹出口84Eから吹き出して用紙Pへ吹き付けられる。このとき、絞り部84Cから直線部84Dを介して空気を吹き出すことで、空気の流れが支持板82に対して垂直方向に方向付けされ、吹出口84Eから吹き出した空気が拡散するのを抑制できる。
また、風速が速い状態で用紙Pへ垂直に空気を吹き付けるため、用紙Pに接触する空気が循環されて用紙Pの冷却効率を向上できる。すなわち、用紙Pに対して平行に流れる空気は、用紙Pから熱を奪った後も用紙Pの表面近傍に滞留するため、用紙Pの表面近傍の空気の温度が上がり、高い冷却効果を期待できない。一方、本実施形態のように用紙Pに対して垂直に送風すれば、用紙Pに接触した空気が用紙Pの表面近傍に滞留することなく用紙Pから離れる。これにより、用紙Pには常に温度の低い空気が吹き付けられ、冷却効果を向上できる。また、垂直に空気を吹き付けることで、用紙Pを支持板82に押さえ付けているので、用紙Pが支持板82から離れて煽られるのを抑制できる。
さらに、本実施形態では、ノズル部84Aが二列で形成されているので、冷却効果の高い垂直方向の送風を二カ所で行うことができる。これにより、用紙Pの一カ所に送風する場合と比べて、用紙Pに接触する垂直成分の空気が増え、冷却効率を向上できる。
図5に示すように、用紙Pが送風ユニット78を半分程度通過すると、搬送方向Dの上流側のノズル部84Bの吹出口84Eから吹き出された空気は用紙Pに当たらず、その大半が支持板82の貫通孔82Aを通過して支持板82の下方へ流れる。このように、空気を支持板82の下方へ抜ける構成とすることで、支持板82の上面に沿って流れた空気により用紙Pの後端部が浮き上がるのを抑制できる。
なお、本実施形態では、支持板82に対して垂直に空気を送風することで冷却効率を高めているが、これに限らず、送風ユニット78の取付スペースにより、支持板82に対して傾斜した方向から送風を行う構成であってもよい。
また、ノズル部84A及びノズル部84Bは、送風箱84の搬送方向Dの両端部に形成されているが、ノズル部84A、84B間の間隔を確保できれば、これに限らず他の部分にノズル部84A、84Bを形成してもよい。すなわち、例えば、図4に示した送風箱84の搬送方向中央部に別のノズルを形成した場合、隣り合うノズル間の間隔が狭くなり、それぞれのノズルから吹き出された空気が互いに干渉して、風速が低下したり、用紙Pへ到達する空気の量が減少することがある。このため、ノズル部84A、84B間の間隔を確保して、それぞれのノズル部84A、84Bから吹き出された空気を干渉させないようにするのが好ましい。
さらに、本実施形態では、送風手段として、回転羽81を有する送風ファン79を用いているが、これに限らず、冷風を送出するエアコン(エア・コンディショナー)を用いて送風箱84へ送風してもよい。
また、本実施形態では、送風ファン79は、用紙冷却部23近傍の空気を送風箱84へ送風しているが、これに限らず、送風ユニット78を覆うようにダクトを設けて、インクジェット記録装置10の外部から温度の低い空気を送風ファン79へ供給してもよい。
また、本実施形態では、搬送手段としてチェーングリッパ64で用紙Pを搬送したが、これに限らず、無端状のベルトの上に用紙Pを載せて回転搬送するベルト搬送を採用してもよい。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、送風ユニット100を除いて第1実施形態と同様の構成である。図6に示すように、本実施形態に係る送風ユニット100は、主として、送風ファン102と、送風箱108とで構成されており、送風ファン102は、筐体104と、筐体104の内部に回転可能に設けられた回転羽106を備えている。なお、本実施形態に係る回転羽106は、第1実施形態に係る回転羽81より大径のものが用いられているが、これに限らず、第1実施形態と同じサイズの回転羽81でもよい。
送風箱108は、第1実施形態に係る送風箱84より搬送方向Dに長く形成されており、送風ファン102と連通する外筒部110と、外筒部110の内周側に設けられた2つの整流部材112、114とで構成されている。
外筒部110は、平面視で角筒状の部材であり、整流部材112、114は、互いに平行に形成されており、それぞれ用紙Pの幅方向に延びて外筒部110の内壁に溶接されている。ここで、送風箱108には、外筒部110と整流部材112、114とで三列のノズル部108A、108B、108Cが形成されている。それぞれのノズル部108A、108B、108Cは、搬送方向Dと交差する方向に延びており、用紙Pの幅より長く形成されている。
ノズル部108Aは、外筒部110の搬送方向Dの下流側の内壁と整流部材112とで形成されており、ノズル部108Cは、外筒部110の搬送方向Dの上流側の内壁と整流部材114とで形成されている。さらに、ノズル部108Bは、2つの整流部材112、114で形成されており、各ノズル部の間隔は等しく形成されている。本実施形態では、一例として、各ノズルの中心間距離は、70mmで形成されている。また、各ノズル部108A、108B、108Cは、外筒部110の上部を構成する絞り部108Dと、絞り部108Dと吹出口108Fとを繋ぐ直線部108Eとで構成されている。
本実施形態に係るインクジェット記録装置によれば、駆動手段が送付ファン102の回転羽106を回転させると、送風ファン102から送風箱108へ空気が送風される。送風箱108へ送風された空気は、図中矢印の方向に流れて三列のノズル部108A、108B、108Cへ分岐し、各ノズル部の絞り部108Dへ到達する。
絞り部108Dへ到達した空気は、直線部108Eを通過して三列の吹出口108Fから吹き出される。以上のように、三列のノズル部108A、108B、108Cから用紙Pへ空気を吹き付けるので、第1実施形態より用紙Pへ吹き付ける垂直成分の送風量が増え、冷却効率を向上できる。その他の作用については、第1実施形態と同様である。
なお、本実施形態では、三列のノズル部108A、108B、108Cを設けたが、これに限らず、さらにノズルの数を増やしてもよい。この場合、各ノズルから吹き出された空気が互いに干渉しないようにするため、ノズル間の間隔が70mm以上となるように送風箱108の寸法を調整するのが好ましい。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、送風ユニット150を除いて第1実施形態と同様の構成である。図7に示すように、本実施形態に係る送風ユニット150は、第1実施形態と同様の送風ファン79、及びノズル部84A、84Bが形成された送風箱84を備えており、ノズル部84A、84Bの直下には、乱流発生部材としての円柱体152が設けられている。
円柱体152は、ノズル部84A、84Bの吹出口84Eの下方に1つずつ設けられており、ノズル部84A、84Bと平行に搬送方向Dと交差する方向に延びて図示しないインクジェット記録装置の筐体に固定されている。
なお、本実施形態では、円柱体152の大きさをノズル部84Aの直線部84Dの幅より一回り大きく形成しているが、これに限らず、吹出口84Eと円柱体152との距離などに応じて適宜設定される。
本実施形態に係るインクジェット記録装置によれば、駆動手段が送風ファン79の回転羽81を回転させると、送風ファン79から送風箱84の基部へ空気が送風される。基部へ送風された空気は、通風路86を図中矢印の方向に流れて二列のノズル部84A、84Bへ分岐し、各ノズル部の絞り部84Cへ到達する。
絞り部84Cから直線部84Dを経て吹出口84Eより吹き出された空気は、円柱体152の外周面に吹き付けられ、円柱体152を迂回するように円柱体152の外周面に沿って下方へ流れる。
これにより、円柱体152より下方では、空気が互いに干渉し合い、用紙Pの近傍で乱流となる。乱流は、層流と比べて流速が速く、様々な方向に流れるため、用紙Pの近傍における空気は常に入れ替わるようになる。
以上のようにして、用紙Pの近傍の空気が用紙Pの熱を奪った後、他の空気と入れ替わるので、用紙Pの冷却効率を向上できる。なお、本実施形態では、円柱体152を乱流発生部材として用いたが、乱流を発生できる形状であれば、形状を特に制限しない。例えば、断面が多角形状の部材でもよい。
また、本実施形態では、送風箱84に二列のノズル部84A、84Bを形成したが、これに限らず、三列以上のノズル部を形成してもよい。
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
例えば、インクジェット記録装置10では、チェーングリッパ64により用紙Pを搬送しながら、インク乾燥処理ユニットで用紙Pを乾燥し、UV照射ユニットで用紙P上のインクを硬化させる構成としたが、これに限定されず、ドラム(圧胴)により用紙Pを搬送しながら、ドラム(圧胴)と対向配置されるインク乾燥処理ユニット68で用紙Pを乾燥し、UV照射ユニットで用紙P上のインクを硬化させる構成としてもよい。この場合、ドラム(圧胴)の周りに送風ユニット78を配設し、ドラム(圧胴)の外周面に対して垂直に送風するようにノズル部84A、84Bの角度を調整するのが好ましい。