JP6023476B2 - 鉄筋構造 - Google Patents
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Description
このような鉄筋構造では、柱と梁とが接合する柱梁接合部分には、柱用の主筋及びせん断補強筋や、梁用の主筋が配筋されて、コンクリートが打設される。そして、鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説第8版第1刷(社団法人日本建築学会編集)によると、以下の式から求められる許容せん断力Qに応じて接合部分が設計されることが一般的である。
Q=κ(f−0.5)bD(κ:接合部分の形状による係数、f:コンクリートの短期許容せん断応力度、b:接合部分の有効幅、D:柱せい)
特許文献1で示される鉄筋構造では、柱用の主筋は、所定強度であって継手部分を有する普通強度部分と、所定強度よりも高い強度である高強度部分とを備え、普通強度部分は柱用の主筋の中央部に配筋され、高強度部分は梁との接合部分に配筋されている。このような柱用の主筋では、普通強度部分の端部どうしが溶接等の継手手段で接合される。
コンクリート強度を大きくすると、コストがかかる。また、接合部の断面積を大きくすると、柱全体や梁全体の断面積も大きくなり、居住空間が狭くなってしまう。
特許文献1は、強度が変化する鉄筋どうしを確実に継手するという課題を解決するために主筋を部分的に補強したものであり、居住空間が狭くなってしまうことは特許文献1では解決できるものではない。
この構成の本発明では、柱用の主筋の少なくとも一部の降伏点又は0.2%耐力は、JISG3112において鉄筋コンクリート用鋼棒として規定する普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きいため、柱用の主筋の少なくとも一部が高強度である。このため、柱用の各主筋を細くできて隣り合う主筋どうしの間隔を小さくでき、これによって、柱の断面積を小さくできる。
しかも、降伏点又は0.2%耐力が普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きい部位は、梁と接合される柱梁接合部を含む。柱梁接合部は、柱にかかる応力が集中するので、柱用の主筋のうち、少なくとも柱梁接合部が高強度になり、柱梁接合部における柱の耐力を向上できる。
この構成の本発明では、柱用のせん断補強筋の降伏点又は0.2%耐力は普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きいため、せん断補強筋が負担できるせん断力が大きくなり、その分、柱のコンクリート断面の負担分が小さくできる。これによって、柱の断面積をさらに小さくできる。
この構成の本発明では、柱用の主筋は高強度鉄筋部分と普通鉄筋部分とを備えるので、主筋の全部分を高強度にするよりも、コストが低くて済む。
この構成の本発明では、各柱用の主筋の端部は、柱用の別の主筋の端部と重ねることが可能であるため、柱用の別の主筋と連結させるときに、容易に連結できる。
この構成の本発明では、柱用の主筋は、普通鉄筋を焼入れすることによって形成されるため、母材である普通鉄筋よりも確実に強度を高めることができる。
図1は鉄筋構造1の全体の模式図であり、図2は鉄筋構造1の要部断面図であり、図3は主筋21の端部を示す断面図である。
柱2と梁3との接合形態としては、十字形接合S1、ト形接合S2、L形接合S3やT形接合S4があり、本実施形態は、これらの接合S1〜S4の柱梁接合部に適用される。以下では、十字形接合S1を例にとって説明する。
主筋21は、降伏点又は0.2%耐力が、JISG3112で規定する普通鉄筋(以下、単に普通鉄筋という。)の降伏点又は0.2%耐力よりも大きい高強度鉄筋部分21Aと、普通鉄筋から構成される普通鉄筋部分21Bとを備える。本実施形態では、高強度鉄筋部分21Aの降伏点又は0.2%耐力は900MPa(N/mm2)であり、普通鉄筋部分21Bの降伏点又は0.2%耐力は390MPa(N/mm2)である。また、主筋21は、丸鋼でも、異形棒鋼でもよい。
せん断補強筋22は、柱梁接合部200を含め、主筋21が延びている方向に配筋される。
図4は試験装置4を示す。
試験装置4は、反力床41と、反力床41上であって柱2の一端側に固定された第1固定部42A及び柱2の他端側に固定された第2固定部42Bと、柱2の一端側に負荷を付与する第1負荷付与部43A及び柱2の他端側に負荷を付与する第2負荷付与部43Bと、第1固定部42Aと第1負荷付与部43Aとの間に設けられて第1負荷付与部43Aを移動自在に支持する第1計測部44Aと、第2固定部42Bと第2負荷付与部43Bとの間に設けられて第2負荷付与部43Bを移動自在に支持する第2計測部44Bと、梁3の上下端部を保持する保持部45A,45Bとを備える。
第2計測部44Bにも、第2負荷付与部43Bが移動した移動量を計測する図示しないセンサなどが取り付けられている。第2負荷付与部43Bが図4における下方向に移動した場合を正の移動とし、図4における上方向に移動した場合を負の移動とする。
まず、柱2を第1負荷付与部43A及び第2負荷付与部43B上に固定し、梁3を保持部45A,45Bによって保持して鉛直方向に沿って固定する。
ここで、第1負荷付与部43Aからかけた上向きの荷重及び第2負荷付与部43Bからかけた下向きの荷重は、柱2に加えられたせん断力であり、変形量δ1とδ2の平均を柱2の変形量δとする(δ=(δ1+δ2)/2)。
図5に示すように、例えば、せん断力が100kNであった場合には、実線P1で示される主筋21の層間変形角X1は、破線P0で示される普通鉄筋の層間変形角X0よりも小さい(X1<X0)。このことは、試験におけるせん断力の全範囲において成り立つ、すなわちX1<X0である。このため、せん断力に対して、普通鉄筋よりも主筋21のほうが変形しにくく、高強度である。
(1)本実施形態の鉄筋構造1では、柱2用の主筋21の少なくとも一部の降伏点又は0.2%耐力は普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きいため、柱2用の主筋21の少なくとも一部が高強度である。このため、柱2用の各主筋21を細くできて隣り合う主筋21どうしの間隔を小さくでき、これによって、柱2の断面積を小さくできる。
例えば、前記実施形態では、主筋21は、その一部の降伏点又は0.2%耐力が普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きいが、主筋21全体の降伏点又は0.2%耐力が普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きくてもよく、主筋21の少なくとも一部の降伏点又は0.2%耐力が普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きければよい。
また、前記実施形態では、高強度鉄筋部分21Aは、柱梁接合部200を含め、柱梁接合部200よりも上側の上側領域201と柱梁接合部200よりも下側の下側領域202に延びていたが、少なくとも、柱梁接合部200に配筋されていればよく、上側領域201や下側領域202に延びていなくてもよい。
また、前記実施形態では、主筋21の上下端部は、別の主筋21の端部と、主筋21の軸方向と交差する方向(図2における左右方向)において重ねているが、これには限定されず、直列に接続する主筋21の端部どうしが長ナットなどのカプラーによって連結可能となっていてもよい。
Claims (5)
- 梁と接合される複数の柱用の主筋を備え、
前記柱用の主筋の少なくとも一部の降伏点又は0.2%耐力は、JISG3112で規定する普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きく、
降伏点又は0.2%耐力が前記普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きい部位は、前記柱用の主筋のうち、前記梁と接合される柱梁接合部を含み、かつ、前記柱梁接合部の端縁から前記柱用の主筋が延びる方向に所定距離にあり、前記所定距離は柱せいの1.1〜1.3倍である
ことを特徴とする鉄筋構造。 - 請求項1に記載の鉄筋構造において、
前記柱は、前記柱用の主筋の軸方向と交差する平面内において前記柱用の主筋を囲んで配筋された複数の柱用のせん断補強筋を備え、
前記複数の柱用のせん断補強筋の降伏点又は0.2%耐力は前記普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きい
ことを特徴とする鉄筋構造。 - 請求項1又は請求項2に記載の鉄筋構造において、
前記柱用の主筋は、降伏点又は0.2%耐力が前記普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力よりも大きい高強度鉄筋部分と、前記普通鉄筋から構成される普通鉄筋部分とを備える
ことを特徴とする鉄筋構造。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の鉄筋構造において、
各柱用の主筋の端部は、前記柱用の別の主筋の端部と、前記柱用の主筋の軸方向と交差する方向において重ねることが可能である
ことを特徴とする鉄筋構造。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の鉄筋構造において、
前記柱用の主筋は、前記普通鉄筋を焼入れすることによって形成される
ことを特徴とする鉄筋構造。
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