JP5588212B2 - ユニット建物、及びユニット建物の構造計算方法 - Google Patents
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Description
このような2階建のユニット建物において、例えば、1階の天井梁の板厚と2階の床梁の板厚とを同一とした場合、以下の問題がある。
さらに、高層ユニット建物では、下階の建物ユニットの梁に板厚の厚いものを選んでいるが、上下階を有するユニット建物における梁の撓みを考慮して梁の板厚を変化させているものは無かった。
即ち、従来のユニット建物では、梁に対してユニット建物全体としての最適板厚設計がなされていなかった。
請求項1に記載のユニット建物は、下階の建物ユニットと下階の建物ユニットの上側に配置される上階の建物ユニットからなる上下一対のペアユニットを少なくとも1つ備え、複数の建物ユニットを連結することで2階以上に構築されている。
なお、上階の床梁は、例えば、床材、家具、居住者等を含んだ大きな荷重が作用するので撓み易い。請求項1に記載のユニット建物では、上階鉛直構面の床梁の板厚が下階鉛直構面の天井梁の板厚よりも厚く設定されているので、上階の撓む部位、即ち、上階の床梁の撓みが効果的に抑えられる。
さらに、請求項1に記載の建物ユニットでは、柱レス部分を下階に設けたことで、下階において柱の無い広い室内空間を確保することができる。両端部を柱に接合した天井梁に比較して、一方の端部のみが柱で支持された天井梁は、上側に位置する床梁をアシストする、即ち、補強する効果が低い。請求項1に記載の建物ユニットでは、柱の連結されない端部を有する下階の天井梁の上側に位置する上階の床梁の板厚を該下階の天井梁の板厚よりも厚く設定しているので、床梁自身を撓み難くすることができ、下側に位置する天井梁の補強効果が低くとも床梁の撓みを抑えることが出来る。
請求項2に記載のユニット建物は、複数の建物ユニットを連結することで構築されるユニット建物であって、下階の建物ユニットと前記下階の建物ユニットの上部に載置される上階の建物ユニットからなる上下一対のペアユニットを少なくとも1つ備え、前記ペアユニットは、前記下階の建物ユニットの下階鉛直構面を構成している天井梁の板厚と、前記天井梁と隣接して平行に配置されて前記上階の建物ユニットの上階鉛直構面を構成している床梁の板厚とが異なる架構面を少なくとも1つ備えており、上階は、柱の連結されない端部を各々有する前記床梁及び前記天井梁を含んだ複数の前記建物ユニットを、前記柱の連結されない端部同士が互いに隣接するように複数個配置することにより、前記柱の配置されない柱レス部分が少なくとも一部に形成されている。
次に、請求項2に記載のユニット建物の作用を説明する。
請求項2に記載のユニット建物は、下階の建物ユニットと下階の建物ユニットの上側に配置される上階の建物ユニットからなる上下一対のペアユニットを少なくとも1つ備え、複数の建物ユニットを連結することで2階以上に構築されている。
また、この建物ユニットは、下階の建物ユニットの下階鉛直構面を構成している天井梁の板厚と、天井梁と隣接して平行に配置されて上階の建物ユニットの上階鉛直構面を構成している床梁の板厚とが異なる架構面を少なくとも1つ備えたペアユニットを、少なくとも1つ含んで構築されている。
即ち、この上記ペアユニットは、下階の建物ユニットの下階鉛直構面を構成している天井梁の板厚と、天井梁と隣接して平行に配置されて上階の建物ユニットの上階鉛直構面を構成している床梁の板厚とが同一に設定されている従来のペアユニットと比較して、天井梁及び床梁の何れか一方の板厚が相対的に厚くなっていることとなり、天井梁及び床梁の両方の板厚を厚くして材料使用量が増大させる場合に比較して材料使用量が抑えられ、かつ梁の撓みを効果的に抑えられるユニット建物とすることができる。
また、請求項2に記載の建物ユニットでは、柱レス部分を有する上階を設けたことで、上階において柱の無い広い室内空間を確保することができる。柱レス部分を備えた下階の上に、柱レス部分を有する上階を設けた場合、上階の床梁が最も撓み易くなる。なお、下階の天井梁も上階の床梁の撓みの影響を受けて撓むが、居住者や物が直接載る部分では無いため、床の撓みに比較して問題の度合いは小さい。請求項2に記載の建物ユニットでは、最も撓み易く問題となり易い上階の床梁の板厚が厚く設定されているので、上階及び下階共に柱レス部分を有する場合であっても、上階の床梁の撓みを抑えることができる。
上階の床梁は、例えば、床材、家具、居住者等を含んだ大きな荷重が作用するので撓み易い。
請求項3に記載のユニット建物では、上階鉛直構面の床梁の板厚が下階鉛直構面の天井梁の板厚よりも厚く設定されているので、上階の撓む部位、即ち、上階の床梁の撓みが効果的に抑えられる。
上階の床梁は、例えば、床材、家具、居住者等を含んだ大きな荷重が作用するので撓み易い。
請求項4に記載のユニット建物では、下階鉛直構面の天井梁の板厚が上階鉛直構面の床梁の板厚よりも厚く設定されているので、板厚の厚く設定された下階の天井梁が、上階の床梁を効果的にアシストすることができ、上階の床梁の撓みを抑えることが出来る。
ペアユニットがオーバーハング構造とされている場合、上階の床梁が下階の柱よりも建物外側へ延びるため、鉛直荷重時及び水平荷重時の応力、撓みが厳しいのは上記建物外側面と交差する方向の上階の床梁となる。
建物ユニット内にて、家具等の荷重が何れかの床梁に対して偏って作用する場合、荷重が大きく作用する方の床梁が撓み易くなる。また、桁側の床梁は、妻側の床梁よりも長いため、妻側の床梁よりも撓み易い。
桁側の梁は妻側の梁よりも長く撓み易いため、桁側の架構面において天井梁の板厚と床梁の板厚とを異ならせることで、長い桁側の床梁の撓みを抑えることが出来る。
これにより、同じ板厚に設定することで問題となる撓み易い床梁及び天井梁の何れかの板厚が増加し、床梁の撓み難くいユニット建物を設計することが出来る。
請求項2に記載のユニット建物によれば、最適板厚設計がなされた梁を有するので、材料使用量を抑えつつ、梁の撓みを抑えることができる、という優れた効果を有する。また、上階において柱の無い広い室内空間を確保することができる。
以下、図1〜図3を用いて、本発明の第1の実施形態に係るユニット建物10について説明する。
図1には、複数個(本実施形態では8個)の同一形状の建物ユニット12からなる2階建てのユニット建物10が示されている。
本実施形態では、天井梁16,18、及び床梁20,22に、断面コ字形状のチャンネル鋼(溝形鋼)が用いられている。
同様に、床フレーム26は四隅に床仕口部(柱)30を備えており、この床仕口部30に長さが異なる床梁20,22の長手方向の端部が溶接されている。
本実施形態において、1階(下階)1Fの建物ユニット12における天井梁16、床梁20、及び4本の柱14で形成される矩形枠部分(所謂ラーメン)が、本発明の下階鉛直構面に相当し、2階(上階)2Fの建物ユニット12における天井梁16、床梁20、及び4本の柱14で形成される矩形枠部分が、本発明の上階鉛直構面に相当する。また、本発明の架構面とは、上記下階鉛直構面と、その上に位置する上階鉛直構面とを合わせた構面のことである。
したがって、本実施形態のユニット建物10では、建物中央側に本発明の架構面を4面有することとなる。
次に、本実施形態のユニット建物10の作用を説明する。
図3は、本実施形態の1階1Fの建物ユニット12とその上に載置される2階2Fの建物ユニット12とで構成されるペアユニットを模式的に示したものである。
先ず、第1のステップにおいて、全ての梁を、初期の板厚に設定してユニット建物の応力解析を行う。初期の板厚は、予め用意しておいた値を入力しても良く、構造計算する際に任意の値を入力しても良い。また、応力解析を行う際の荷重としては、例えば、(1)鉛直荷重時のみ、(2)鉛直荷重+水平荷重時、の双方を用いる。ここでは、梁は全て同種の断面形状(例えば、C字断面形状)とし、外形寸法も同一とする。
ここで、応力または変位が予め設定した目標値に対して未達となっていた梁について、応力または変位が予め設定した目標値に達したならば次のステップへ移り、目標に未達であれば、さらに板厚を増加して再度応力計算を行う。即ち、全ての梁において、応力または変位が予め設定した目標値に達するまで、板厚の増加、及び応力計算を繰り返す。なお、応力または変位が予め設定した目標値に対した梁は、その板厚を該梁に対応させて記憶する。
なお、ここでの板厚の増加は、例えば0.1mmとすることができるが、増加する板厚はこれに限るものではない。
また、目標値に対して未達となっていた梁の板厚を増加した後、他の梁が目標値を大きく上回る場合、場合によっては、該目標値を大きく上回る梁の板厚を減少させても良い。
また、例えば、板厚が3種類となった場合、板厚の薄い方の梁を、一段上の板厚にすることで、板厚を2種類に減らすこともできる(例えば、板厚3.2mmの梁を板厚4.5mmの梁に変更することで、板厚4.5mmの梁と板厚6.0mmの梁の2種類の梁とする。また、例えば、板厚4.5mmの梁を板厚6.0mmの梁に変更することで、板厚3.2mmの梁と板厚6.0mmの梁の2種類の梁とする。)。これにより、梁に用いる鋼材の種類を減らすこともできる。
以下、図4を用いて、本発明の第2の実施形態に係るユニット建物10について説明する。なお、第1の実施形態と同一構成に関しては同一符合を付し、その説明は省略する。
図4には、本実施形態のユニット建物10のペアユニットが模式的に記載されており、2階2Fの建物ユニット12は、1階1Fの建物ユニット12に比較してユニットサイズ(桁方向の寸法)が短くなっている。このため、2階2Fの建物ユニットの建物外側(図4の紙面右側)の柱14の位置は、1階1Fの建物ユニット12の建物外側の柱14の位置よりも建物内側へオフセットして配置されており、本ペアユニットは所謂セットバック構造となっている。
以下、図5を用いて、本発明の第3の実施形態に係るユニット建物10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成に関しては同一符合を付し、その説明は省略する。
図5には、本実施形態のユニット建物10のペアユニットが模式的に記載されており、1階1Fの建物ユニット12は、2階2Fの建物ユニット12に比較してユニットサイズ(桁方向の寸法)が短くなっている。このため、1階1Fの建物ユニットの建物外側(図5の紙面右側)の柱14の位置は、2階2Fの建物ユニット12の建物外側の柱14の位置よりも建物内側へオフセットして配置されており、本ペアユニットは所謂オーバーハング構造となっている。
以下、図6〜9を用いて、本発明の第4の実施形態に係るユニット建物10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成に関しては同一符合を付し、その説明は省略する。
図6,7に示すように、本実施形態のユニット建物10は、1階1Fにおいて、建物中央部分の柱14が除去され、複数の建物ユニット12の室内空間が連続して広い室内空間が確保されている。なお、建物中央部分の柱14の無い部分が、柱レス部分Aである。
より具体的には、図8,9に示すように、1階の妻側の天井梁18同士と、2階2Fの妻側の床梁22同士を連結すると共に、1階の妻側の天井梁18と2階2Fの妻側の床梁22とを連結している。
以下、図10を用いて、本発明の第5の実施形態に係るユニット建物10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成に関しては同一符合を付し、その説明は省略する。
図10に示すように、本実施形態のユニット建物10では、1階1Fの一方側(図面左側)及び2階2Fの一方側(図面左側)に、柱14の無い柱レス部分Aが設けられている。
以下、図11を用いて、本発明の第6の実施形態に係るユニット建物10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成に関しては同一符合を付し、その説明は省略する。
床梁と天井梁との板厚の関係は、上記実施形態で説明したものに限定されるものでは無く、種々のバリエーションがある。図12に、上記実施形態で説明した以外のバリエーション(上記実施形態も含まれる)の一例を参考までに示す。
12 建物ユニット
14 柱
16 天井梁
18 天井梁
20 床梁
22 床梁
Claims (9)
- 複数の建物ユニットを連結することで構築されるユニット建物であって、
下階の建物ユニットと前記下階の建物ユニットの上部に載置される上階の建物ユニットからなる上下一対のペアユニットを少なくとも1つ備え、
前記ペアユニットは、前記下階の建物ユニットの下階鉛直構面を構成している天井梁の板厚と、前記天井梁と隣接して平行に配置されて前記上階の建物ユニットの上階鉛直構面を構成している床梁の板厚とが異なる架構面を少なくとも1つ備えており、
前記上階鉛直構面の床梁の板厚が、前記下階鉛直構面の天井梁の板厚よりも厚く設定され、
下階は、柱の連結されない端部を各々有する前記床梁及び前記天井梁を含んだ複数の前記建物ユニットを、前記柱の連結されない端部同士が互いに隣接するように複数個配置することにより、前記柱の配置されない柱レス部分が少なくとも一部に形成されており、
前記柱の連結されない端部を有する前記天井梁の上側に位置する前記上階の前記床梁の板厚が、前記柱の連結されない端部を有する前記天井梁の板厚よりも厚く設定されている、ユニット建物。 - 複数の建物ユニットを連結することで構築されるユニット建物であって、
下階の建物ユニットと前記下階の建物ユニットの上部に載置される上階の建物ユニットからなる上下一対のペアユニットを少なくとも1つ備え、
前記ペアユニットは、前記下階の建物ユニットの下階鉛直構面を構成している天井梁の板厚と、前記天井梁と隣接して平行に配置されて前記上階の建物ユニットの上階鉛直構面を構成している床梁の板厚とが異なる架構面を少なくとも1つ備えており、
上階は、柱の連結されない端部を各々有する前記床梁及び前記天井梁を含んだ複数の前記建物ユニットを、前記柱の連結されない端部同士が互いに隣接するように複数個配置することにより、前記柱の配置されない柱レス部分が少なくとも一部に形成されている、ユニット建物。 - 前記上階鉛直構面の床梁の板厚が、前記下階鉛直構面の天井梁の板厚よりも厚く設定されている、請求項2に記載のユニット建物。
- 前記下階鉛直構面の天井梁の板厚が、前記上階鉛直構面の床梁の板厚よりも厚く設定されている、請求項2に記載のユニット建物。
- 前記ペアユニットは、前記下階の建物ユニットの建物外側面側の柱の位置が、前記上階の建物ユニットの建物外側面側の柱の位置よりも建物内方側へオフセットされているオーバーハング構造とされている、請求項1に記載のユニット建物。
- 前記ペアユニットを構成する前記下階の前記建物ユニット及び上階の前記建物ユニットは、少なくとも桁面と平行な建物ユニット中心線を挟んで一方側の床梁と他方側の床梁とでは板厚が異なっている、請求項1または請求項5に記載のユニット建物。
- 前記ペアユニットでは、桁側の前記架構面において前記天井梁の板厚と前記床梁の板厚とが異なっている、請求項1〜5の何れか1項に記載のユニット建物。
- 請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のユニット建物の構造計算方法であって、
前記床梁及び前記天井梁を初期の板厚に設定して応力解析を行う第1の工程と、
前記応力解析の結果、応力または変位が予め設定した目標値に対して未達となった前記床梁及び前記天井梁の板厚を前記初期の板厚よりも増加する第2の工程と、
を有するユニット建物の構造計算方法。 - 前記第2の工程は、鉛直荷重負荷時及び水平荷重負荷時の双方で、前記応力及び前記変位が前記目標値に到達するまで前記板厚を増加させる、請求項8に記載のユニット建物の構造計算方法。
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