JP6384905B2 - 剛性板耐震壁及び剛性板耐震壁付きのフレーム機構 - Google Patents

剛性板耐震壁及び剛性板耐震壁付きのフレーム機構 Download PDF

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Description

本発明は、剛性板耐震壁、特に略同一形状の剛性板及び開口部が入れ替わりに現れるように構成した剛性板耐震壁、及び剛性板耐震壁付きのフレーム機構に関する。
例えば柱梁架構の内部空間に構築する耐震壁として、上記内部空間に、複数の縦材及び横材を交差箇所で相互に溶接してなる格子状の部材を取り付け、縦材及び横材で囲まれる各開口部の一部に剛性板材をボルト・ナットなどの固定具で締結し、残りの開口部を採光部としてなるものが知られている(特許文献1)。
また柱梁架構の内部空間に、垂直平面に沿って配置された複数の水平材と、これら水平材により支持された壁体とからなり、この壁体は、市松模様状に配置した複数の矩形の剛性板の各角部を相互に連結してなるものが知られている(特許文献2)。
特開2007−16547 特開2010−01632
既存建物の耐震改修において、補強箇所、搬入経路および作業スペースの確保は当該建物の補強を実現する上で重要な要素である。耐震補強工法は単に力学的に耐震性能を向上させる技術としてあるべきではなく、上記の施工性にも重点を置かなければならない。
特許文献1のものでは、格子状部材を内部空間に搬入することに手間がかかる。
特許文献2の市松形の耐震補強工法はこうした施工性に配慮した工法であり、さまざまな条件の建物の耐震改修に適用される。しかしながら、本工法による鋼板壁の地震時水平耐力は四隅をボルトで固定された鋼板のせん断座屈破壊により決定するため、鋼板の強度を十分に発揮できていない。これは、鋼板の四隅部のみを固定しているためであり、せん断座屈耐力式の座屈係数が小さく見積もられるためである。この問題に対して、鋼板の板厚を増して座屈耐力の向上を図ると、壁体の重量が増し、施工性を著しく低下させてしまう。またボルト本数を増やす、溶接して鋼板を固定する等、これらの対処も施工性を損なうことにつながる。
本発明の目的は、施工性を損なうことなく剛性板耐震壁の補強効果を向上させることである。
第1の手段は、一つの仮想平面に沿って、同形同寸の多角形状の剛性板の組み合わせによる一定のパターンを有する壁体と、
少なくとも一部の剛性板の表面に連結された補剛リブと、
を具備し、
上記壁体は、剛性板同士の角部を互いに連接させて、その多角形の角数に相当する数の剛性板で囲まれる開口部を形成するように多角形状の剛性板を配置してなり、
かつ上記連接する角部同士の組み合わせは、これら角部同士を相互に重ね合わせた状態で、各角部に形成した少なくとも一つの固定点を介して当該角部を他の角部に対して固定することで連結されており、
上記剛性板の補剛リブは、当該剛性板の座屈変形を防止するように、隣りの角部の固定点同士を結ぶ仮想線分の全部にそれぞれ近接し或いは交接するように形成した。
本手段は、例えば図7に示すように、剛性板耐震壁10の壁体20を、相互の角部を当接させて組み合わせた複数の剛性板22で構成するとともに、剛性板22で囲まれる開口部40を形成した構造において、それら剛性板22に補剛リブ30を付設することを提案する。それにより各剛性板22の座屈変形を防止することができ、座屈変形に起因する剛性板の角部の局所的変形を低減し、角部を固定するための固定具の数を低減することができる。なお、図1の如く上記壁体20を支持する格子材16を設けることは、好適ではあるが、必須ではなく、これに関しては下位の手段で述べる。
「連接」とは重ねて当接することをいう。
「固定点を介して当該角部を他の角部に対して固定する」とは、図1に示すように角部同士が直接固定されている態様含む。
「近接し或いは交接する」の「近接」とは、剛性板の図形中心よりも仮想線分の近くを通ることをいう。また「交接」とは仮想線分と交わることをいい、内接(1点で交わること)を含む。
「固定点」とは、剛性板の角部を他の剛性板の角部又は格子材に対してボルト・ナットなどの固定具を用いて一点で固定した場合にはその一点を指し、固定具を用いて複数点で固定した場合にはその何れかの点を指すものとする。
「同形同寸の多角形状の剛性板を一定のパターンで組み合わせて」という記載に関して、一定のパターンとしては、四角形状の剛性板及び開口部が2方向に連続して交互に現れるパターン(図1に示す市松模様)や三角形状の剛性板及び開口部が3方向に連続して交互に現れるパターン(図13に示す鱗模様)などがある。
「同形・同寸」に関しては、壁体の端部であって後述のフレーム部と接合する箇所に関しては、本来の剛性板の形状の一部をフレーム部の輪郭に応じて切り落としても構わない。
「補剛リブ」はループ形状(リング状又は多角形状を含む)に形成することができる。
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記連接する角部同士に連なる、各剛性板のそれぞれの辺部は他の剛性板の一の辺部と同じ方向に延びるように対応しており、これら対応する辺部が平行になるように各剛性板を配置し、
補剛リブは、リング状又は多角形状であり、各剛性板の隣り合う角部の固定点を仮想線分で結んでなる多角形の内部領域を通過するように配置した。
本手段は、補剛リブ30を、剛性板22に対して直角な方向から見てリング状(図1参照)又は多角形状(図8参照)に形成することを提案している。図示の多角形は剛性板の輪郭に相似な多角形であるが、非相似な多角形であっても構わない。また補剛リブ30は、各剛性板の隣り合う角部の固定点を仮想線分で結んでなる多角形の内部領域Iを通過するように配置している。これにより少なくとも内部領域Iに生ずる座屈変形をより効果的に防止できる。座屈変形を有効に示すために、補剛リブ30は、内部領域I内のある程度の大きさ(図4に示す例では内部領域の大半)を占めるようにすることが効果的である。「リング状」又は「多角形状」とは、リング又は多角形の輪郭の一部を省略した欠失形状を含むものとする。
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記壁体は、市松模様に配置された複数の4角形の剛性板で構成されており、補剛リブは、上記内部領域内で剛性板の2本の対角線と交差するように形成した。
本手段は、図1に示すように市松模様に組み合わせた4角形の剛性板22の2本の対角線と、補剛リブ30とが、内部領域I内で交差するように形成している。これにより対角線近くに作用する外力に抵抗することができ、座屈変形を阻止する効果が高まる。
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれかを有し、かつ
上記仮想平面に沿って平行に並設された複数の格子材を有する支持手段を具備し、
上記各格子材は、壁体と直交する方向からみて、少なくとも2枚の剛性板の連接する角部の組み合わせと重ね合わせるように配置され、
当該角部の組み合わせを上記重ね合わせ箇所で上記格子材に固定してなる。
本手段では、図3に示すように上記壁体20を支持する格子材16を含む支持手段12を設けることを提案している。これにより壁体20全体の強度を向上させることができる。
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれかを有し、かつ上記補剛リブは剛性板と直角な鋼管であり、当該剛性板に対して溶接している。
本手段では、例えば図5に示す如く補剛リブ30を剛性板22と直角に付設した鋼管として形成することを提案している。補剛リブ30は、既存の鋼板の一部を切り出すことで得られるものとすることができる。
第6の手段は、建造物のフレーム部に第1の手段から第5の手段のいずれかに記載の剛性板耐震壁を適用した剛性板耐震壁付きのフレーム機構であって、上記剛性板の一部はフレーム部に隣接しており、隣接箇所をフレーム部に固定している。
本手段では、図1に示すフレーム部に隣接する剛性板を、フレーム部2に対して固設している。なお、好適な実施例として、図15に示すように、フレーム部に隣接した剛性板には補剛リブを設けず、フレーム部に隣接していない剛性板にのみ補剛リブを設けるようにすることができる。これにより、フレーム部2から離れた座屈し易い剛性板22を補剛するので、効果的に補剛作用を高めることができる。「剛性板をフレーム部に固設する」とは、後述の支持枠の如き介在物を途中に存して介在させて固設することを含む。また、介在物は、フレーム部2の内周辺の四辺に必ずしも設ける必要はなく、適宜な強度と剛性を有する部材であれば、少なくとも一辺はフレーム部2から離れた、その近傍に設ける機構であっても良い。
第1の手段に係る発明によれば、剛性板耐震壁10の壁体20を、相互の角部を当接させて組み合わせた複数の剛性板22で構成するとともに、剛性板22で囲まれる開口部40を形成した構造において、剛性板の補剛リブは、隣りの角部の固定点同士を結ぶ仮想線分の全部に近接し或いは交接するように形成したから、当該剛性板の座屈変形を効果的に防止することができる。これにより耐震壁を構成するために必要な固定具(ボルトなど)の個数数を削減することができ、比較的簡単に施工できる。また補剛リブで補強するから、所定の補剛効果を得るために要する剛性板の厚みを小とすることができる。
第2の手段に係る発明によれば、補剛リブは、各剛性板の連接する角部同士の固定点を仮想線分で結んでなる多角形に形成される内部領域を通過するから、座屈変形に対する抵抗力が向上する。
第3の手段に係る発明によれば、上記壁体は、市松模様に配置された複数の4角形の剛性板で構成したから、剛性板耐震壁を軽量化することができ、この剛性板の2本の対角線と交差するように補剛リブを形成したから、剛性板の座屈をより的確に防止できる。
第4の手段に係る発明によれば、隣接する剛性板の連接する角部の組み合わせを格子材に重ねて固定したから、剛性板耐震壁の強度が向上する。
第5の手段に係る発明によれば、補剛リブを剛性板と直角な鋼管であり、既成の鋼管から切り出して剛性板に溶接すればよいから、簡易に製作することができ、またボルトの使用本数を増やすことなく補剛性能を向上することができる。
第6の手段に係る発明によれば、建造物のフレーム部に剛性板耐震壁を適用したからフレーム部を簡易に補強することができる。
本発明の第1実施形態に係る剛性板耐震壁の正面図である。 図1の剛性板耐震壁の背面図である。 図1の剛性板耐震壁のIII−III方向の断面図である。 図1の剛性板耐震壁の要部の正面図である。 図4の要部の斜視図である。 図4の要部の作用説明図である。 本発明の剛性板耐震壁の原理の説明図であり、同図(A)は、当該剛性板耐震壁の基本的形態を示す図、同図(B)は外力が作用している状態の説明図である。 本発明の第2実施形態に係る剛性板耐震壁の正面図である。 図8の剛性板耐震壁の要部の斜視図である。 図8の剛性板耐震壁のX−X方向の断面図である。 本発明の第3実施形態に係る剛性板耐震壁の正面図である。 図11の剛性板耐震壁のXII−XII方向の断面図である。 本発明の第4実施形態に係る剛性板耐震壁の正面図である。 図13の剛性板耐震壁の断面図であり、同図(A)はXIV(A)−XIV(A)方向の断面図であり、図(B)は剛性板耐震壁のXIV(B)−XIV(B)方向の断面図である。 本発明の第5実施形態に係る剛性板耐震壁の正面図である。 本発明の参考例に係る剛性板耐震壁の正面図である。 耐震壁に係る従来技術の説明のための参考図であり、同図(A)は耐震壁の要部の断面図、同図(B)は当該要部に外力が作用したときの変形状態を示す図である。
図1から図7は、本発明の第1の実施形態に係る剛性板耐震壁10を示している。この剛性板耐震壁は、建造物のフレーム部2の内周面4内に設置されている。このフレーム部は、本実施形態では柱2a及び梁2bからなる柱梁構造としている。なお、図1中、6は梁2bとは異なる方向の梁、8は床スラブである。
剛性板耐震壁10は、本実施形態では、支持手段12と壁体20とで構成される。しかしながら、図7に示す如く、支持手段を省略しても構わない。
上記支持手段12は、上記壁体20をフレーム部2内に支持するための手段であり、少なくともフレーム部2の内周面4の対向する2辺の間に架設する複数の格子材16を具備する。
本実施形態の支持手段12は、内周面4内に取り付けた支持枠14を含み、この支持枠14を介して格子材16を設けている。しかしながらその構造は適宜変更することができ、フレーム部である柱又は梁に格子材16を直接連結しても構わない。上記支持枠14は、縦枠14a及び横枠14bで構成される。図示の縦枠及び横枠は断面L字型の鋼材で形成され、そのL字の一方板部(ウェブ)を接着剤Jでフレーム部2内面に接着するともに他方板部(フランジ部)に剛性板取付け用の取り付け孔15を穿設している。
上記支持枠14はフレーム部2と後述の壁体の剛性板との間の介在物として壁体を支える機能を有する。もっとも当該介在物は、フレーム部2の内周辺の四辺に必ずしも設ける必要はなく、適宜な強度と剛性を有する部材であれば、少なくとも一辺はフレーム部2から離れた、その近傍に設ける機構であっても良い。例えば図1に示すフレーム部に隣接する剛性板のうち、右端部の剛性板の上下2枚分を省略した上で、省略後に生じた右側の端部に位置する格子材16を支持枠14に替えてフレーム部2に連結することでも好適に実施できる。
複数の格子材16は、本実施形態では一定の間隔を存して並設しているが、必要があれば間隔を変更しても構わない。格子材16は、後述の四角形状の剛性板22の2つの辺部Sの何れかの方向(図示例では垂直方向又は水平方向)に一致させ、開口部40を遮ることのないように設置することが好適である。しかしながら、この構造に限定されるものではない。格子材16の両端部16aは、支持枠14の横枠14bに対して適当な手段で固定する。固定手段としては、図示はしないが、溶接やボルト留めなどの従来公知の方法を用いればよい。格子材16は、後述の剛性板22を支持するためのものであり、図示例では、剛性板を固定するための複数の第1留め孔18を好ましくは等間隔で設けている。
壁体20は、相互の間に開口部40を存して開口部と相互に入れ替わるように配列された複数の剛性板22と、剛性板22に付設された補剛リブ30とからなる。壁体20の外周部に位置する剛性板部分は上記支持枠14に対して固設する。これについては後述する。図示例の壁体20は、4角形の剛性板22に対して4角形の開口部40が1対1の割合で出現する市松模様のパターンの構成としているが、剛性板の形は4角形でなくてもよく、また剛性板22と開口部40との比は1対1でなくても構わない。すなわち、同一形状かつ同一寸法の剛性板22を組み合わせてこれら剛性板22の間に剛性板と略同一又は略相似の開口部40が一定のパターンで表れる構造であればよい。
上記剛性板22は、高強度の板材であり、剛性を有するとともに塑性変形可能な材料で形成することが多い。鋼板とすることが好適であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。後述の補剛リブで座屈変形し易い箇所を効果的に補強するため、剛性板22自体の厚さは小とすることができ、また補強リブ付きの剛性板全体の重量を従来のリブ無しの剛性板の重量より小とすることができる。
上記剛性板22は、角部A及び辺部Sを有する多角形に形成される。本実施形態では剛性板22を矩形としており、正方形を含む長方形以外に平行四辺形としてもよい。なお、壁体20の外周部であってフレーム部2の内周面4に接する箇所においては、本来の壁体のパターン(図示例では市松模様)の剛性板22の形状をフレーム部2の形状に対応して切除しても構わない。
本実施形態においては、剛性板22の角部Aに第2留め孔24を開口する。そして剛性板を前後2段に分けて配置し、図4に示すように、後段剛性板22Bの角部Aの上に前段剛性板22Fの角部Aを重ねて当接し、2つの角部の第2留め孔24及び格子材16の第1留め孔18に固定具28を挿通して、重ね合せた角部の組み合わせACを格子材16に固定する。そしてこの角部Aの同士に連なる、2枚の剛性板22の一方の辺部S同士(図1では上下方向に延びる辺部同士)及び他方の辺部同士(図1では水平方向に延びる辺部同士)がそれぞれ平行となるように設け、剛性板22が一定のパターン(図示例では市松模様)で組み合わされるように構成する。壁体20の外周部に位置する場所では、剛性板22の角部Aを支持枠14に重ねて第2留め孔24及び支持枠14の取り付け孔15に固定具28を挿通させ、当該角部Aを支持枠14に固定している。また、壁体20の外周部に位置する場所での固定にあたっては、格子材16の両端部をフレーム部2の方向にそれぞれ延設し、剛性板22の角部Aを支持枠14に重ねて第2留め孔24、支持枠14の取り付け孔15、及び格子材16の図示しない第1留め孔18の順に重ねて固定具28を挿通させ、当該角部Aを支持枠14に固定することも好適に実施できる。つまり、格子材16の両端部16aを延設することで、格子材16の支持枠14に対する固定手段を兼ねることができる。
本実施形態では上述の固定具28と第1留め孔18と第2留め孔24とで固定点Fを形成している。地震などの外力が作用するときには、対角方向の2つの固定点Fの間に引っ張り力又は圧縮力が作用する。
上記補剛リブ30は、上記圧縮力による剛性板22の座屈変形を防ぐために剛性板22の表面(正面又は背面の何れも含む)に溶接などの手段で固設している。好適な図示例では、正面側の体裁を良くするために裏面側に設けているが、正面側に設けても構わない。
上記補剛リブ30は、少なくとも剛性板22の全ての辺部Sに対して等距離の場所を、好ましくは剛性板の図形中心よりも辺部Sの近くを通過するように形成されている。本実施形態では剛性板22に対して垂直な方向から見て円形としている。しかしながらその構造は適宜変更することができ、例えば周方向の一部(剛性板の対角線と交差する箇所を除く)を省略した欠円形状としても構わない。
剛性板の座屈変形の原因となる外力は、主として図4に示す剛性板の内部領域I、すなわち隣り合う固定点F同士を仮想線分Lで結ぶ多角形の内側の領域で作用する。従って補剛リブ30は、少なくとも内部領域Iを通過するように設けることが好適である。しかしながら例えば補剛リブ30を剛性板22の図形中心Cの近傍にのみ設けても、座屈変形を防止できない。そこで補剛リブ30は、剛性板22の隣り合う固定点Fを結ぶ仮想線分Lに近接するように形成する。このとき補剛リブ30で囲まれる領域は内部領域の大半を占めている。この構成は変形することができ、上記補剛リブ30が上記仮想線分と交接してもよい。
図示例では、上記補剛リブ30は、既存の鋼管をリング状に切り出し、その端部の全部又は一部を剛性板22に溶接してなる。図示例では、円形鋼管を切り出しているが、例えば図8に示すような角形鋼管を切り出してもよい。
図7は、本発明に係る剛性板耐震壁の原理を示すための図である。同図(A)は、当該剛性板耐震壁の原理に関わる基本的構成を簡単に表現している。支持手段のうちの格子材は必ずしも必須の構成ではないので、省略している。支持手段の支持枠14は同図に記載されているが、これも省略して剛性板耐震壁を柱梁構造に直接連結しても構わない。同図(B)は剛性板耐震壁を適用したフレーム部に地震力が作用した場合の様子を描いている。 上述の構成によれば、剛性板22同士の角部を固定点で固定するとともに固定点同士を結ぶ仮想線分に近接又は交接する補剛リブ30を付設したから、比較的薄い板材を用いて有効に座屈変形を防止することができる。すなわち、剛性板及び補剛リブの三次元的構造により単に一枚の剛性材の厚みを増加させるよりも効果的に補剛効果を得ることができるので、全体として耐震壁を軽量とすることができる。
ここで参考例である図17と比較して本願発明の作用を説明する。この参考例では、補剛リブを設けない剛性板の角部同士を重ね合わせて一個の固定具で連結して耐震壁を構成するものとしている。図17は、当該方向を一枚の剛性板の対角線が通る位置で切断した形状を描いている。なお、格子材については作図を省略している。参考例では、補剛リブで補剛していない一枚の剛性板の一方の対角線方向に図17に矢示する引っ張り力が作用し、他方の対角線の方向に圧縮力が作用すると、まず剛性板全体が大きく弯曲する。これにより各剛性板の角部同士を連結するボルトも傾き、そして角部Aが反るように変形する。そうすると角部同士の摩擦力が低下する。これを避けるために従来例では、剛性板の角部の複数個所をボルト留めしていた。本願発明では、剛性板22に補剛リブ30を設けたから剛性板22の弯曲を回避することができ、それによりボルトなどの固定具の個数を削減することができる。
以下本発明の他の実施形態について説明をする。これらの説明において、第1実施形態と同じ構成については解説を省略する。
図8から図10は、本発明の第2実施形態に係る剛性板耐震壁を示している。本実施形態では、補剛リブ30を、剛性板22の輪郭と相似な多角形状(図示例では4角形)に形成している。そして補剛リブ30は剛性板22の外周端部に沿って当該端部からの距離が一定となるように配置されており、補剛リブ30が有する4つの隅角部34において第1実施形態に比べて剛性板22の角部Aにより接近するようにしている。これにより前述した剛性板22の角部Aにおける変形を有効に制限できる。
図11から図12は、本発明の第3実施形態に係る剛性板耐震壁を示している。本実施形態では、補剛リブ30を格子材16と反対側(図示例では正面側)に設置したものである。格子材16に邪魔されずに補剛リブ30の大きさを設計することが可能である。例えば補剛リブ30が剛性板22の角部Aの近傍を通過するように設け、当該角部Aの好ましくない変形を抑制することができる。
図13から図14は、本発明の第5実施形態に係る剛性板耐震壁を示している。この実施例では、剛性板22を三角形状としている。隣接する3つの剛性板22の角部A同士を重ね合わせるとともに、この角部同士の組み合わせACを貫通する一個の固定具28で、当該角部同士に連なる対応する2つの辺部Sが平行となるように連結し、全体として規則正しい一定のパターンとなるように構成する。第1実施形態と同様に剛性板22と開口部40とが一対一の割合で出現するので、第1実施形態のものと同様に軽量の剛性板耐震壁10を構成することができる。
剛性板22の形状は、適宜変更することができ、図示例では正三角形状であるが、二等辺三角形状、直角三角形状でも構わない。図示例において、各剛性板22は、基本的に同一形状・同一寸法であるが、フレーム部2の内周面4の輪郭に対応するように、壁体20の外周部に位置する剛性板22は、正三角形状の略半分に相当する直角三角形状としている。また当該剛性板については、補剛リブを設けることを省略している。
図14(A)は、3枚の剛性板22の角部A同士を格子材16に固定した箇所の構造を断面図で示している。すなわち、本実施形態では、同図に示す如く剛性板を前中後の3段に分けて配置し、後段剛性板22Bの角部A、中段剛性板22Mの角部A、及び前段剛性板22Fの角部を順次重ねて、これら角部同士の組み合わせACの第1留め孔18と格子材16の第2留め孔24に固定具28を挿通して固定している。格子材16は、三角形状の剛性板22の3つの辺部Sの何れかの方向(図示例では水平方向)に設置すればよい。
図14(B)は、1枚の剛性板22の角部Aを支持枠14(図示例では上側の横枠)に固定した箇所の構造を示している。この場合、後段剛性板22Bの角部Aを支持枠14に当接した状態において、前段剛性板22Fの角部Aと支持枠14との間、中段剛性板22Mの角部Aと支持枠14との間には間隔が生ずる。このため、後段剛性板22Bの角部Aは支持枠14に直接連結するとともに、中段剛性板22Mは、剛性板一枚分の厚さに相当するスペーサ36を介して、前段剛性板22Fは、剛性板二枚分の厚さに相当するスペーサ36を介してそれぞれ支持枠14に連結する。支持枠14の縦枠14aと一枚の剛性板22の角部Aとの間にも必要により対応する厚さのスペーサを介在させて連結する。支持枠14の下側の横枠においても、剛性板の角部と支持枠との間、或いは剛性板の角部同士の間に、必要によりスペーサを介在させて連結する。
図15は、本発明の第5実施形態に係る剛性板耐震壁を示している。本実施形態では、剛性板22のうちでフレーム部2と隣接するもの(換言すれば、フレーム部に対して連結されたもの)について補剛リブ30の設置を省略している。フレーム部2から離れた剛性板22ほどに好ましくない変形を生じ易いからである。これによって、より少ない材料で効率的に補剛効果を実現することができる。
図16は、本発明の参考例に係る剛性板耐震壁を示している。本参考例では、隣接する剛性板22の角部A同士を、重ね合わせずに近接させ、各角部Aをそれぞれ格子材16に対して固定したものである。固定する方法に関しては第1実施形態と同様に固定具28で固定すればよい。
なお、本発明の実施形態は発明の理解に資するために記載されたものであり、本発明の技術的範囲がこれらの態様に限定されるものと理解すべきではない。
2…フレーム部(柱梁構造) 2a…柱 2b…梁 4…内周面
6…梁 8…床スラブ
10…剛性板耐震壁 12…支持手段
14…支持枠 14a…縦枠 14b…横枠 15…取り付け孔
16…格子材 16a…端部 18…第1留め孔
20…壁体 22…剛性板 22B…後段剛性板 22F…前段剛性板
22M…中段剛性板 24…第2留め孔 28…固定具
30…補剛リブ 32…溶接部 34…隅角部 36…スペーサ
40…開口部
A…角部 AC…角部同士の組み合わせ C…図形中心 F…固定点
I…内部領域 J…接着剤
…仮想線分 L…対角線 S…辺部
V…仮想平面

Claims (6)

  1. 一つの仮想平面に沿って、同形同寸の多角形状の剛性板の組み合わせによる一定のパターンを有する壁体と、
    少なくとも一部の剛性板の表面に連結された補剛リブと、
    を具備し、
    上記壁体は、剛性板同士の角部を互いに連接させて、その多角形の角数に相当する数の剛性板で囲まれる開口部を形成するように多角形状の剛性板を配置してなり、
    かつ上記連接する角部同士の組み合わせは、これら角部同士を相互に重ね合わせた状態で、各角部に形成した少なくとも一つの固定点を介して当該角部を他の角部に対して固定することで連結されており、
    上記剛性板の補剛リブは、当該剛性板の座屈変形を防止するように、隣りの角部の固定点同士を結ぶ仮想線分の全部にそれぞれ近接し或いは交接するように形成したことを特徴とする、剛性板耐震壁。
  2. 上記連接する角部同士に連なる、各剛性板のそれぞれの辺部は他の剛性板の一の辺部と同じ方向に延びるように対応しており、これら対応する辺部が平行になるように各剛性板を配置し、
    補剛リブは、リング状又は多角形状であり、各剛性板の隣り合う角部の固定点を仮想線分で結んでなる多角形の内部領域を通過するように配置したことを特徴とする、請求項1記載の剛性板耐震壁。
  3. 上記壁体は、市松模様に配置された複数の4角形の剛性板で構成されており、補剛リブは、上記内部領域内で剛性板の2本の対角線と交差するように形成したことを特徴とする、請求項2に記載の剛性板耐震壁。
  4. 上記仮想平面に沿って平行に並設された複数の格子材を有する支持手段を具備し、
    上記各格子材は、壁体と直交する方向からみて、少なくとも2枚の剛性板の連接する角部の組み合わせと重ね合わせるように配置され、
    当該角部の組み合わせを上記重ね合わせ箇所で上記格子材に固定してなることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の剛性板耐震壁。
  5. 上記補剛リブは剛性板と直角な鋼管であり、当該剛性板に対して溶接していることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の剛性板耐震壁。
  6. 建造物のフレーム部に請求項1から請求項5のいずれかに記載の剛性板耐震壁を適用した剛性板耐震壁付きのフレーム機構であって、上記剛性板の一部はフレーム部に隣接しており、隣接箇所をフレーム部に固定したことを特徴とする、剛性板耐震壁付きのフレーム機構。
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