図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図1に示すように、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36にリングギヤが接続されたシングルピニオン式のプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸36に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりする高電圧バッテリ50と、高電圧バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、家庭用電源などの外部電源に接続されて高電圧バッテリ50を充電可能な充電器60と、車両の構成要素でない外部機器(例えば、家庭用電化製品など)のプラグを差込可能なコンセント94と、コンセント94に外部機器のプラグが差し込まれているときにインバータ41,42や高電圧バッテリ50が接続された電力ライン54の直流電力を所定電圧(例えば100Vなど)の交流電力に変換してコンセント94(外部機器)に供給可能なDC/AC変換器96と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70と、を備える。なお、コンセント94とDC/AC変換器96とが本発明の「外部電力供給装置」に相当する。
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサからのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサからの冷却水温Tw,スロットルバルブのポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサからのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータからの吸入空気量Qaなどの信号が入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁への駆動信号や、スロットルバルブのポジションを調節するスロットルモータへの駆動信号、イグニッションコイルへの制御信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力ポートを介して入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、モータECU40は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転角速度ωm1,ωm2や回転数Nm1,Nm2も演算している。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、高電圧バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、高電圧バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからの端子間電圧Vbや高電圧バッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた電流センサ51bからの充放電電流Ib,高電圧バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じて高電圧バッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に送信する。また、バッテリECU52は、高電圧バッテリ50を管理するために、電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてそのときの高電圧バッテリ50から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいて高電圧バッテリ50を充放電してもよい許容入出力電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、高電圧バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、高電圧バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
充電器60は、リレー62を介して高電圧系電力ライン54aに接続されており、電源プラグ68を介して供給される外部電源からの交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ66と、AC/DCコンバータ66からの直流電力の電圧を変換して高電圧系電力ライン54a側に供給するDC/DCコンバータ64と、を備える。
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号やシフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,外気温度センサ89からの外気温度Tout,SOC回復指示スイッチ90のオンオフを示すSOC回復指示信号,モータ走行指示スイッチ92のオンオフを示すモータ走行指示信号などが入力ポートを介して入力されている。HVECU70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、シフトポジションSPとしては、駐車ポジション(Pポジション)や中立ポジション(Nポジション),前進走行用のドライブポジション(Dポジション),後進走行用のリバースポジション(Rポジション)などがある。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を計算し、この要求トルクTr*に対応する要求動力が駆動軸36に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2との運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力と高電圧バッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共に高電圧バッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸36に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードとは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御するモードであり、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
また、実施例のハイブリッド自動車20では、自宅や予め設定された充電ポイントで車両をシステム停止した後に電源プラグ68が外部電源に接続されてその接続が接続検出センサ69によって検出されると、システムメインリレー55とリレー62とをオンとし、充電器60を制御して外部電源からの電力により高電圧バッテリ50を充電する。そして、高電圧バッテリ50の充電後にシステム起動したときには、高電圧バッテリ50の蓄電割合SOCがエンジン22の始動を行なうことができる程度に設定された閾値Shv(例えば、20%や30%など)に至るまでは、エンジン22からの動力とモータMG2からの動力とを用いて走行するハイブリッド走行に比してモータMG2からの動力だけを用いて走行するモータ走行を優先して走行するモータ走行優先モードによって走行し、高電圧バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shvに至った以降は、モータ走行に比してハイブリッド走行を優先して走行するハイブリッド走行優先モードによって走行する。
モータ走行優先モードでは、アクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて走行に要求される(駆動軸36に出力すべき)要求トルクTr*を設定すると共に設定した要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算する。そして、走行用パワーPdrv*が高電圧バッテリ50の出力制限Wout以下のときには、エンジン22の運転を停止した状態でモータMG2から走行用パワーPdrv*を出力して駆動軸36に要求トルクTr*が出力されるようモータMG2を制御して、モータ走行によって走行する。走行用パワーPdrv*が高電圧バッテリ50の出力制限Woutより大きくなると、エンジン22を始動して、走行用パワーPdrv*をエンジン22から出力すべき要求パワーPe*に設定し、エンジン22から要求パワーPe*が出力されると共に駆動軸36に要求トルクTr*が出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御して、ハイブリッド走行によって走行する。その後に、走行用パワーPdrv*が高電圧バッテリ50の出力制限Wout以下になると、エンジン22を運転を停止して、エンジン22の運転を停止して、モータMG2から走行用パワーPdrv*を出力して走行するモータ走行に戻る。
ハイブリッド走行優先モードでは、高電圧バッテリ50の蓄電割合SOCに応じて高電圧バッテリ50の充放電要求パワーPb*(高電圧バッテリ50から放電するときが正の値)を設定すると共に設定した充放電要求パワーPb*を走行用パワーPdrv*から減じてエンジン22から出力すべき要求パワーPe*を設定し、要求パワーPe*がエンジン22を比較的効率よく運転することができる最低パワーとして予め定められた運転用閾値Pop以上のときには、エンジン22から要求パワーPe*が出力されると共に駆動軸36に要求トルクTr*が出力されるようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御して、ハイブリッド走行によって走行する。要求パワーPe*が運転用閾値Pop未満になると、エンジン22を比較的効率よく運転できないため、エンジン22の運転を停止してモータMG2から走行用パワーPdrv*を出力して走行するモータ走行に移行する。モータ走行によって走行している最中に運転者がアクセルペダル83を踏み込んで走行用パワーPdrv*が大きくなって要求パワーPe*が運転用閾値Pop以上になると、エンジン22を始動してエンジン22から要求パワーPe*を出力して走行するハイブリッド走行に移行する。なお、運転用閾値Popは、高電圧バッテリ50の出力制限Woutに比してかなり小さな値として定められている。
次に、実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、ユーザによりSOC回復指示スイッチ90がオンされたときの動作について説明する。図2は、HVECU70により実行される充電促進指示時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、ユーザによりSOC回復指示スイッチ90がオンされたときに、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
充電促進指示時駆動制御ルーチンが実行されると、HVECU70のCPU72は、SOC回復指示スイッチ90からのSOC回復指示信号に基づいてSOC回復指示スイッチ90がオンされているか否かを判定する処理を実行する(ステップS100)。SOC回復指示スイッチ90がオンされているときには、後述する充電促進走行モードによる走行するようエンジン22やモータMG1,MG2を制御する充電促進制御を実行して(ステップS120)、本ルーチンを終了する。ここで、充電促進制御の詳細について説明する。
図3は、HVECU70により実行される充電促進制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。なお、モータ走行中であるときには、エンジン22を始動した後に本ルーチンが実行される。充電促進制御ルーチンが実行されると、HVECU70のCPU72は2まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,蓄電割合SOC、高電圧バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS200)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、高電圧バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、高電圧バッテリ50の電池温度Tbと高電圧バッテリ50の蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪38a,38bに連結された駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*と走行に必要な走行用パワーPdr*とを設定する(ステップS210)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用マップの一例を示す。走行用パワーPdrv*は、設定した要求トルクTr*にモータMG2の回転数Nm2を乗じたものとロスLossとの和として計算することができる。
続いて、SOC回復指示スイッチ90がオンされて最初に本ルーチンが実行されたとき、すなわち、SOC回復指示スイッチ90がオンされた直後である否かを判定し(ステップS220)、SOC回復指示スイッチ90がオンされた直後である場合には、蓄電割合SOCに所定割合Srefを加えたものと高電圧バッテリ50に許容される蓄電割合SOCの上限値より若干小さい中心上限値Slimとのうち小さいほうの値を蓄電割合SOCの目標値である目標蓄電割合SOC*に設定する(ステップS230)。ここで、所定割合Srefは、高電圧バッテリ50を充電する際に充電電力が比較的緩やかに上昇する蓄電割合の増加率として予め定めたものを用いるものとした。
こうして目標蓄電割合SOC*を設定したら、蓄電割合SOCと目標蓄電割合SOC*とROM74に記憶されている充放電要求パワー設定マップとを用いて蓄電割合SOCを目標蓄電割合SOC*にするパワーである充放電要求パワーPb*を設定する(ステップS260)。充放電要求パワー設定マップの一例を図5に示す。図示するように、充放電要求パワーPb*は、蓄電割合SOCが目標蓄電割合SOC*より大きいときには目標蓄電割合SOC*と蓄電割合SOCとの差を打ち消すようにこの差が大きくなるほど絶対値が大きくなる傾向の正の値のパワーが設定され、蓄電割合SOCが目標蓄電割合SOC*より小さいときには目標蓄電割合SOC*と蓄電割合SOCとの差を打ち消すようにこの差が大きくなるほど大きくなる傾向の負の値のパワーが設定される。このように充放電要求パワーPb*を設定することにより、蓄電割合SOCを目標蓄電割合SOCにすることができる。なお、充放電要求パワー設定マップは、目標蓄電割合SOC*毎にROM74に記憶されているものとする。
こうして充放電要求パワーPb*を設定したら、走行用パワーPdrv*から充放電要求パワーPb*を減じたものをエンジン22から出力すべき要求パワーPe*を設定し(ステップS270)、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS280)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図6に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
続いて、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2とプラネタリギヤ30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算したモータMG1の目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS290)。式(1)は、プラネタリギヤ30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力しながら走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図7に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2であるリングギヤの回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されて駆動軸36に作用するトルクと、モータMG2から出力されて駆動軸36に作用するトルクとを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/ρ (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
次に、次式(3)に示すように、モータMG1のトルク指令Tm1*をプラネタリギヤ30のギヤ比ρ(サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)で除したものを要求トルクTr*に加えてモータMG2の仮トルクTm2tmpに設定し(ステップS300)、式(4),(5)に示すように、高電圧バッテリ50の入出力制限Win,WoutからモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)を減じた値をモータMG2の回転数Nm2で除してモータMG2のトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算し(ステップS310)、式(6)に示すように、仮トルクTm2tmpをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS320)、エンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信して(ステップS330)、本ルーチンを終了する。ここで、式(3)は、図7の共線図から容易に導くことができる。また、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、高電圧バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*(走行用パワーPdrv*)を駆動軸36に出力して走行することができる。このとき、ステップS230の処理で、中心上限値Slimより小さい範囲内で蓄電割合SOCに所定割合Srefを加えたものを目標蓄電割合SOC*に設定したから、高電圧バッテリ50を充電して高電圧バッテリ50の蓄電量SOCを上昇させることができる。
Tm2tmp=Tr*+Tm1*/ρ (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
SOC回復指示スイッチ90がオンされた直後でないときには(ステップS220)、現在の蓄電割合SOCが前回本ルーチンが実行されたときに用いられた目標蓄電割合SOC*である前回SOC*以上であるか否かを判定し(ステップS240)、蓄電割合SOCが目標蓄電割合SOC*以上であるときには、中心上限値Slimより小さい範囲内で蓄電割合SOCに所定割合Srefを加えたものを目標蓄電割合SOC*に設定し(ステップS230)、蓄電割合SOCが目標蓄電割合SOC*未満であるときには、前回SOC*を目標蓄電割合SOC*に設定し(ステップS250)、蓄電割合SOCと目標蓄電割合SOC*とROM74に記憶されている充放電要求パワー設定マップとを用いて充放電要求パワーPb*を設定し(ステップS260)、走行用パワーPdrv*に充放電要求パワーPb*を加えたものを要求パワーPe*として設定し(ステップS270)、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し(ステップS280)、上述の式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算したモータMG1の目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて上述の式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算し(ステップS290)、上述の式(3)によりモータMG2の仮トルクTm2tmpに設定し(ステップS300)、式(4),(5)に示すように、モータMG2のトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算し(ステップS310)、上述の式(6)に示すように、仮トルクTm2tmpをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS320)、エンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信して(ステップS330)、本ルーチンを終了する。図8に目標蓄電割合SOC*とSOC回復指示スイッチ90の状態の時間変化の一例を示す。こうした処理により、図示するように、SOC回復指示スイッチ90がオンされたときには、蓄電割合SOC*と増加したときには目標蓄電割合SOC*を増加させ、蓄電割合SOC*が減少したときには目標蓄電割合SOC*を保持するから、SOC回復指示スイッチ90がオンされたときに直ちに目標蓄電割合SOC*を比較的大きな値に設定するものより、高電圧バッテリ50が大きな電力で充電させることを抑制することができ、高電圧バッテリ50の劣化を抑制することができる。以上、充電促進制御について説明した。
こうして高電圧バッテリ50を充電している際にSOC回復指示スイッチ90がオフされたときには、さらに、モータ走行指示スイッチ92がオンされているか否かを判定する(ステップS110)。モータ走行指示スイッチ92がオフであるとき、すなわち、ユーザによりモータ走行モードでの走行指示がなされていないときには、充電促進制御の実行を継続する(ステップS120)。SOC回復指示スイッチ90がオフされた直後は高電圧バッテリ50の蓄電量SOCは高くなっているから、SOC回復指示スイッチ90がオフされて直ちに充電促進走行モードからハイブリッド走行優先モードやモータ走行優先モードに移行すると、モータ走行による走行が開始されて高電圧バッテリ50の蓄電量SOCが低下すると考えられる。こうした状況は、高電圧バッテリ50の蓄電量SOCを高くすることを期待してSOC回復指示スイッチ90をオンにしたユーザに使い勝手の悪さを感じさせてしまう。実施例では、ユーザによりモータ走行モードでの走行指示がなされておらず、且つ、SOC回復指示スイッチ90がオフされてから所定時間trefが経過していないときには、充電促進モードを継続することにより、図9に示すように、SOC回復指示スイッチ90がオフされた後でも高電圧バッテリ50の蓄電量SOCの低下を抑制することができ、例えば、その後のモータ走行に備えることができる。
こうして充電促進制御を実行している最中に、モータ走行指示スイッチ92がオンされたときには(ステップS110)、充電促進制御を停止してエンジン22の運転を停止してモータMG2からの動力だけを用いて走行するモータ走行モードにより走行するようエンジン22やモータMG1,MG2を制御するモータ走行制御を実行して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。これにより、モータ走行指示スイッチ92がオンされたときには、充電促進制御を停止してモータ走行制御に移行することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20では、SOC回復指示スイッチ90がオンされたときには充電促進制御を実行することにより、高電圧バッテリ50の蓄電量SOCを増加させることができる。また、その後、SOC回復指示スイッチ90がオフされたときには、モータ走行指示スイッチ92をオフするまで、充電促進モードを継続することにより、SOC回復指示スイッチ90がオフされたときの高電圧バッテリ50の蓄電量SOCの低下を抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、図3に例示した充電促進制御ルーチンで、蓄電割合SOCが目標蓄電割合SOC*以上であるであるときには目標蓄電割合SOC*に所定割合Srefを加えたものを目標蓄電割合SOC*に設定し、蓄電割合SOCが目標蓄電割合SOC*未満であるときには前回SOC*を目標蓄電割合SOC*を設定するものとしたが、高電圧バッテリ50の蓄電量SOCが増加するよう目標蓄電割合SOC*を設定すればよいから、蓄電割合SOCが目標蓄電割合SOC*以上であるか否かに拘わらず、中心上限値Slim以下の範囲内で目標蓄電割合SOC*に所定割合Srefを加えたものを目標蓄電割合SOC*に設定したり、SOC回復指示スイッチ90がオンされたときに直ちに目標蓄電割合SOC*を中心上限値Slim程度の割合に設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、SOC回復指示スイッチ90がオフされたときには、モータ走行指示スイッチ92をオフするまで、充電促進モードを継続するものとしたが、このとき、図10に示したように、蓄電割合SOCが目標蓄電割合SOC*より大きいときの充放電パワーPb*、つまり、放電電力としての充放電パワーPb*をSOC回復指示スイッチ90がオンのときより小さくするものとしてもよい。充電促進モードを継続すると、車両の走行状態によっては蓄電割合SOCが低くなる場合があるため、図10に例示した変形例の充放電パワー設定用マップを用いることにより、蓄電割合SOCの低下を抑制することができる。なお、図中、破線は図5に例示した充放電設定用マップを示し、実線は変形例の充放電設定用マップを示している。さらに、SOC回復指示スイッチ90がオフされたときには、モータ走行指示スイッチ92をオフするまで、充電促進モードを継続せずに、SOC回復指示スイッチ90がオフされたときの蓄電割合SOCが維持されるよう充放電パワーPb*を設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2からの動力を駆動軸36に出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2からの動力を駆動軸36が接続された車軸(駆動輪38a,38bが接続された車軸)とは異なる車軸(図11における車輪39a,39bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力するものとしたが、図12の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフトに接続されたインナーロータ232と駆動輪38a,38bに動力を出力する駆動軸36に接続されたアウターロータ234とを有しエンジン22からの動力の一部を駆動軸36に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸36に出力するものとしたが、図13の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、走行用の動力を出力するモータMG2と、エンジン22からの動力により発電するモータMG1と、を備えるいわゆるシリーズ型のハイブリッド車としても構わない。また、駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に無段変速機を介してモータを取り付けると共にモータの回転軸にクラッチを介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータの回転軸と無段変速機とを介して駆動軸に出力すると共にモータからの動力を無段変速機を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。さらに、こうした外部電源からの交流電力を直流電力に変換してバッテリを充電するためのDC/DCコンバータやAC/DCコンバータを有する充電器60を備えるいわゆるプラグインハイブリッド車に適用されるものに限定されるものではなく、図14の変形例のハイブリッド自動車420に例示するように、プラネタリギヤ30に接続されたエンジン22およびモータMG1と、駆動軸36に動力を入出力可能なモータMG2と、を備えるハイブリッド自動車420に適用するものとしてもよい。、
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG1やモータMG2が「モータ」に相当し、SOC回復指示スイッチ90が「充電促進指示スイッチ」に相当し、SOC回復指示スイッチ90がオンされたときには充電促進制御を実行し、SOC回復指示スイッチ90がオフされてから所定時間trefが経過していないときには充電促進モードを継続する図3の駆動制御ルーチンや図4の充電促進制御ルーチンを実行するHVECU70やエンジンECU24とモータECU40とが「制御手段」に相当する。
ここで、「エンジン」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力するものに限定されるものではなく、水素エンジンなど走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるタイプのエンジンであっても構わない。「モータ」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1やモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を出力するものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「バッテリ」としては、二次電池としての高電圧バッテリ50に限定されるものではなく、モータと電力をやりとりするものであれば如何なるものとしても構わない。「充電促進指示スイッチ」としては、SOC回復指示スイッチ90に限定されるものではなく、バッテリの充電の促進を指示するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、SOC回復指示スイッチ90がオンされたときには充電促進制御を実行し、SOC回復指示スイッチ90がオフされてからモータ走行指示スイッチがオンされるまで充電促進モードを継続するものに限定されるものではなく、充電促進指示スイッチがオンされたときには、バッテリの蓄電量が増加するようエンジンおよびモータの少なくとも一方を制御する充電促進制御を実行し、充電促進指示スイッチがオフされたときには、所定の操作がなされるまで、蓄電割合が保持または増加されるようエンジンおよびモータの少なくとも一方を制御するものであれば、如何なるものとしても構わない。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。