JP6019528B2 - 発酵調味料の製造方法 - Google Patents
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主な枯草菌による発酵食品としては、日本の納豆や豆腐よう(沖縄地方)、中国及び台湾の臭豆腐や豆腐よう、韓国のチョングッチャン、ネパールのキネマ等がある。枯草菌による発酵食品は、低級脂肪酸やピラジン化合物に由来する特徴的な風味があり、栄養価が高く、様々な機能性成分を含有するが、枯草菌が芽胞形成能を有するため、発酵食品中に栄養細胞や芽胞が存在し、品質劣化や枯草菌による製造設備又は他製品への汚染等の問題がある。
項(1)
発酵調味料の製造方法において、自然突然変異による方法により得られる枯草菌の芽胞形成能欠損株を、タンパク質を含有する食品に接種した後、好気的に発酵させる発酵工程と、
該発酵後に発酵物を殺菌する殺菌工程と、
を含むことを特徴とする発酵調味料の製造方法。
項(2)
タンパク質を含む食品が、固形物当たり30%以上のタンパク質を含む食品であることを特徴とする項(1)に記載の発酵調味料の製造方法。
項(3)
自然突然変異による方法が、異化代謝産物抑制(catabolite repression)様現象を利用した方法であることを特徴とする項(1)又は項(2)に記載の発酵調味料の製造方法。
項(4)
発酵前又は発酵工程と並行して、タンパク質を含む食品をプロテアーゼで処理する工程を含むことを特徴とする項(1)乃至項(3)に記載の発酵調味料の製造方法。
項(5)
殺菌工程が、100℃以下で行われることを特徴とする項(1)乃至項(4)のいずれか1項に記載の発酵調味料の製造方法。
グルコース:10g/L、NaNO3:3g/L、K2HPO4:2.5g/L、KH2PO4:1g/L、MgSO4・7H2O:0.5g/L、CaCl2・2H2O:0.2g/L、FeCl3・6H2O:3mg/L、H3BO3:68mg/L、MnCl2・4H2O:7mg/L、ZnCl2:0.6mg/L、CoCl2・6H2O:3mg/L、NiSO4・H2O:0.5mg/L、CuSO4・5H2O:20μg/L、Na2MoO4・2H2O:50μg/L、L−アスコルビン酸:320mg/L、ニコチン酸アミド:44mg/L、パントテン酸カルシウム:24mg/L、チアミン塩酸塩:17mg/L、ピリドキシン塩酸塩:5mg/L、リボフラビン:4mg/L、葉酸:0.8mg/L、ビオチン:0.3mg/L、シアノコバラミン:8μg/L
すなわち、硝酸塩を唯一の窒素源とする培地で枯草菌を、30℃で5〜7日間、繰り返し希釈して培養することにより、芽胞形成能欠損株を集積させる。集積した培養液を適宜希釈して標準寒天培地で培養し、出現したコロニーをピックアップして、さらに適切な培地、例えば以下記載のSchaeffer培地等で、37℃で72時間、培養し、得られた培養液を、加熱処理(例えば80℃、10分間)した後、標準寒天培地で培養し、コロニーが出現しない菌株を芽胞形成能欠損株とする。
ニュートリエントブロス(Difco社製):8g/L、KCl:1g/L、MgSO4・7H2O:0.12g/L、CaCl2:1mM、MnCl2:10μM、FeSO4:1μM、pH7.0
例えば、細切処理又は粉砕処理する方法では、切断、破砕、摩擦、空気圧、水圧等を利用して加工する各種の裁断機、粉砕機等が挙げられ、具体的には、カッター、スライサー、ダイサー、チョッパー、グラインダー、ミキサー、ミル等を用いることができる。細切処理又は粉砕処理したものの例としては、きな粉、呉、挽肉、魚粉等が挙げられる。
また、例えば、抽出処理する方法では、常温抽出、加熱抽出、加圧抽出、撹拌抽出、超音波抽出等が挙げられ、好ましくは、加熱抽出により抽出処理する。通常、抽出処理は、食品加工に用いることのできる水等による溶媒抽出であり、好ましくは、水、アルコール、水−アルコール混合溶液による抽出である。また、その抽出時間及び抽出温度は、被抽出物の物性やその抽出方法により適宜決定されるが、抽出温度については、通常20〜150℃、抽出時間については、通常1分間〜24時間である。
本発明において、タンパク質を含む食品の抽出物は、抽出後そのまま又は固液分離して得られた液部を用いることができるが、好ましくは抽出後固液分離して得られた液部を用いる。また、いずれにおいても、その濃縮物を用いることができる。抽出処理したものの例としては、豆乳、畜肉類エキス、魚介類エキス、酵母エキス等が挙げられる。
本発明においては、発酵調味料中に芽胞が存在しないため、緩和な条件による殺菌処理を行うことができ、殺菌処理後の発酵調味料の風味、色、テクスチャーが損なわれない、風味良好な発酵調味料を提供することができる。
本発明において、加熱殺菌による殺菌処理条件は、殺菌後の物性風味が許容されるものであればよく、適宜設定することができるが、加熱温度は、少なくとも100℃以下であり、好ましくは、70〜100℃であり、加熱時間は、温度に応じて決定され、通常、1〜60分である。
また、本発明による殺菌後の発酵調味料は、殺菌が適切に行われれば、枯草菌による発酵食品としては菌数が顕著に少なく、食品産業において広く利用することができる。
自然突然変異による方法である異化代謝産物抑制(catabolic repression)様現象を利用した方法により、枯草菌の芽胞形成能欠損株を取得した。具体的には、以下の方法による。
枯草菌(Bacillus subtilis)NBRC3013株(以下「NBRC3013株」という)を、硝酸塩を唯一の窒素源とする培地A(本願明細書段落番号0021記載)を用いて、3回繰り返し希釈して振盪培養(30℃、120時間)した後、培養液を適宜希釈して標準寒天培地に塗沫し、30℃で2日間培養した。培養後に生じたコロニーから16菌株ピックアップし、それぞれSchaeffer培地(本願明細書段落0023記載)を用いて37℃で72時間振盪培養した。得られた培養液を80℃で10分間、加熱処理した後、標準寒天培地に塗沫し、30℃で48時間培養したところ、16菌株のうち9菌株についてコロニーが出現した。そこで、16菌株のうちコロニーが出現しなかった7菌株が芽胞形成能欠損株であると判断し、その7菌株のうちからさらに1菌株を任意に選択し、B.3013ΔSpoA株とした。
B.3013ΔSpoA株が、枯草菌の芽胞形成能欠損株であることを確認するために、増殖温度及び耐熱性菌数の測定について試験を行った。
きな粉204gを、水996gと共に2L容ジャーファメンターに入れて混合し、オートクレーブを用いて121℃で15分間殺菌処理をした。殺菌処理後、40℃まで冷却し、枯草菌の芽胞形成能欠損株であるB.3013ΔSpoA株の前培養液(生菌数108個/g程度)を6g接種し、プロテアーゼ(ウマミザイムG)0.6gを添加して、40℃で15時間、通気撹拌発酵した。なお、前培養液については、B.3013ΔSpoA株のコロニーを、水に酵母エキス2重量%とグルコース2重量%を配合した培地に接種して、40℃で7時間、振盪培養することで得られた培養液を前培養液として使用した。
通気撹拌発酵して得られた発酵物(一般生菌数:6.7×107個/g)を、80℃で10分間殺菌することにより、殺菌処理済み大豆発酵調味料(実施例1)1100g(Brix13.6°)を得た。この殺菌処理済み大豆発酵調味料について、一般生菌数を常法により検査した。また、食品分析用テストコンビネーションであるF−キットL−グルタミン酸(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いてL−グルタミン酸含量を測定した。それぞれの結果を表3に示す。
また、得られた殺菌処理済み大豆発酵調味料を官能評価したところ、枯草菌発酵物特有の好ましい風味及び旨みを十分に有しており、調味料素材として良好な風味を有していた。
発酵菌を芽胞形成能を有するNBRC3013株とする以外は、実施例1と同様に通気撹拌発酵した。通気撹拌発酵して得られた発酵物(一般生菌数:4.8×108個/g)を、80℃で10分間殺菌することにより、殺菌処理済み大豆発酵調味料(比較例1)1100g(Brix13.5°)を得た。
この殺菌処理済み大豆発酵調味料について、実施例1と同様にして、生菌数及びL−グルタミン酸含量を測定した。それぞれの結果を表3に示す。
一方、比較例1の殺菌処理済み大豆発酵調味料は、芽胞が存在しているため、一般生菌が3.0×106個/g検出された。
親株として、枯草菌(Bacillus subtilis)NBRC13169株を用いること以外は、取得例1と同様にして、枯草菌の芽胞形成能欠損株B.13169ΔSpoB株を得た。
ポークエキス(Brix60°)10gを、水39g及びグルコース1gと共に200ml容三角フラスコに入れて混合し、オートクレーブを用いて121℃で15分間殺菌処理をした。殺菌処理後、37℃まで冷却し、枯草菌の芽胞形成能欠損株であるB.13169ΔSpoB株の前培養液(生菌数108個/g程度)を1g接種し、プロテアーゼ(スミチームFP)0.05gを添加して、37℃で20時間、振盪発酵した。なお、前培養液については、B.13169ΔSpoB株のコロニーを、水に酵母エキス2重量%とグルコース2重量%を配合した培地に接種して、37℃で7時間、振盪培養することで得られた培養液を前培養液として使用した。
振盪発酵して得られた発酵物(一般生菌数:1.2×108個/g)を、70℃で30分間加熱殺菌することにより、殺菌処理済み発酵ポークエキス(実施例2)40g(Brix13.8°)を得た。
この殺菌処理済み発酵ポークエキスについて、実施例1と同様にして、一般生菌数及びL−グルタミン酸含量を測定した。それぞれの結果を表4に示す。
また、得られた殺菌処理済み発酵ポークエキスを官能評価したところ、枯草菌発酵物特有の好ましい風味及び旨みを有しており、調味料素材として良好な風味を有していた。
発酵菌を芽胞形成能を有するNBRC13169株とする以外は、実施例2と同様にして、振盪発酵した。振盪発酵して得られた発酵物(一般生菌数:5.6×108個/g)を、70℃で30分間加熱殺菌することにより、殺菌処理済み発酵ポークエキス(比較例2)40g(Brix13.8°)を得た。
この殺菌処理済み発酵ポークエキスについて、実施例1と同様にして、一般生菌数及びL−グルタミン酸含量を測定した。それぞれの結果を表4に示す。
一方、比較例2の殺菌処理済み発酵ポークエキスは、芽胞が存在しているため、一般生菌が2.2×106個/g検出された。
チキンエキス(Brix40°)10gを、水40g及びプロテアーゼ(スミチームFP)0.1gと共に200ml容三角フラスコに入れて混合し、50℃で5時間酵素処理した後、オートクレーブを用いて121℃で15分間殺菌処理をした。殺菌処理後、37℃まで冷却し、枯草菌の芽胞形成能欠損株であるB.3013ΔSpoA株の前培養液(生菌数108個/g程度)を1g接種して、37℃で20時間、振盪発酵した。なお、前培養液については、B.3013ΔSpoA株のコロニーを、水に酵母エキス2重量%とグルコース2重量%を配合した培地に接種して、37℃で7時間、振盪培養することで得られた培養液を前培養液として使用した。
振盪発酵して得られた発酵物(一般生菌数:6.0×107個/g)を、70℃で30分間加熱殺菌することにより、殺菌処理済み発酵チキンエキス(実施例3)45g(Brix7.5°)を得た。
この殺菌処理済み発酵チキンエキスについて、実施例1と同様にして、一般生菌数及びL−グルタミン酸含量を測定した。それぞれの結果を表5に示す。
また、得られた殺菌処理済み発酵チキンエキスを官能評価したところ、枯草菌発酵物特有の好ましい風味及び旨みを有しており、調味料素材として良好な風味を有していた。
発酵菌を芽胞形成能を有するNBRC3013株とする以外は、実施例3と同様にして、振盪発酵した。振盪発酵して得られた発酵物(一般生菌数:3.8×108個/g)を、70℃で30分間加熱殺菌することにより、殺菌処理済み発酵チキンエキス(比較例3)45g(Brix7.6°)を得た。
この殺菌処理済み発酵チキンエキスについて、実施例1と同様にして、一般生菌数及びL−グルタミン酸含量を測定した。それぞれの結果を表5に示す。
一方、比較例3の殺菌処理済み発酵チキンエキスは、芽胞が存在しているため、一般生菌が3.0×106個/g検出された。
Claims (3)
- 発酵調味料の製造方法において、
異化代謝産物抑制(catabolite repression)様現象を利用した方法により得られる枯草菌の芽胞形成能欠損株を、固形物当たり30%以上のタンパク質を含有する食品であって、水分を含有しかつ流動性を有するペースト状、スラリー状又は液体の流動物に接種した後、振盪、通気もしくは撹拌又はそれらの組合せにより好気的に発酵させる発酵工程と、
該発酵後に発酵物を100℃以下で殺菌する殺菌工程と、
を含むことを特徴とする発酵調味料の製造方法。 - 食品が、細切処理、粉砕処理、抽出処理を単独又は組み合わせて処理した食品である、請求項1に記載の発酵調味料の製造方法。
- 発酵前又は発酵工程と並行して、タンパク質を含む食品をプロテアーゼで処理する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の発酵調味料の製造方法。
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