JP5512177B2 - 胞子形成能低下納豆菌株および該株を用いて製造した胞子数の少ない納豆 - Google Patents

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Description

本発明は、胞子形成能低下納豆菌の創製、および、該納豆菌を用いて製造した納豆菌胞子の少ない納豆に関するものである。より詳しくは、除菌、殺菌が困難である胞子の含有量が少ない納豆を提供することにより、納豆の利用拡大を図ることに関するものである。
Bacillus属の細菌は活発に活動しているときは栄養細胞の形態をとっているが、生育環境が適さなくなってくると胞子を形成し休眠状態となる。このBacillus属のつくる胞子は物理的、化学的に安定であり、当該胞子を除菌、殺菌することは非常に困難である。たとえば、胞子を形成しない細菌であれば、80℃程度の加熱で殺菌することが可能であるが、胞子の場合は120℃程度の加熱温度が必要である。
納豆製造に利用されている納豆菌もBacillus属に属する胞子形成菌である。従って、納豆中には多量の納豆菌胞子が存在しており、その含有量は1g当たり、10〜10個程度である。
納豆は、乾燥した大豆を水につけて吸水させた浸漬大豆を、圧力釜などで煮て煮豆にした後、納豆菌を接種し、容器に盛り込み、40℃前後で18時間前後発酵させた後、4℃前後で熟成させてつくる発酵食品である。従って納豆菌の菌数は納豆の品質を確保する上で非常に重要である。納豆が発酵する過程では納豆菌が1g当たり10個程度に増加する。従って、納豆菌数がこの菌数に達していない場合は良質な納豆をつくることが出来ないが、納豆菌が当該菌数に到達するのは発酵中期頃である。しかし、納豆菌数が十分な発酵中期であっても、納豆の糸引きや旨みは未だ弱く、菌数が十分なだけでは納豆の品質を確保することは出来ない。納豆の特徴的な糸引きや、旨みといった品質は、続く発酵後半過程で形成されるのである。また、この発酵後半過程は、増殖した納豆菌栄養細胞が胞子化して胞子数が増加してくる過程でもある。納豆菌が属するBacillus属の細菌は胞子形成期に様々な酵素を産生することが知られているが、まさに納豆の特徴である糸引きや旨みにも当該酵素が関係している。その中には、タンパク質分解酵素であるプロテーゼも含まれているが、当該プロテアーゼは大豆タンパク質を分解し、うまみ成分であるアミノ酸を産生するため非常に重要である。また、血栓溶解酵素として期待されている納豆キナーゼも当該プロテアーゼであると考えられており、よって、納豆の品質および機能を十分に発揮させるためには胞子の形成が重要であると考えられている。
この胞子の形成には、数多くの遺伝子が関係しており、当該遺伝子が順序よく発現していくことが必要である。また、当該遺伝子の発現は、複数のシグマ因子により制御されている。シグマ因子とは、遺伝子が発現するときに必要な蛋白質因子で転写位置(転写遺伝子)の認識に関与している。胞子の形成はこのシグマ因子が順序よく入れ替わることによって、その制御下にある遺伝子が決められた場所、決められたタイミングで発現されることにより行われている。このように、胞子の形成は段階的に行われているため、途中の遺伝子が欠損すると、胞子形成がその段階で止まってしまう。
前述のように、納豆の品質には胞子の形成が重要であると考えられているが、胞子形成のどの段階までが納豆の品質に重要であるのかはわかっていない。
納豆中に存在する胞子は、物理的、化学的に安定である。従って、納豆を加工食品に利用する場合は、当該加工食品はもとより、当該食品の製造ラインにおいても納豆菌胞子の付着が問題となる。例えば、納豆菌胞子の除菌・殺菌が不十分であると、上記製造ラインにおいて納豆を利用しない加工食品を製造する場合、納豆菌胞子の混入の危険性が生じ、その結果納豆の加工食品への利用は限られることになる。納豆中の胞子を減らすためには、120℃程度の加熱が必要であるが、当該加熱条件では納豆の品質を保持することは困難である。また、胞子を形成し難い納豆菌の使用により、あるいは、胞子を形成させない発酵条件によって、納豆中の胞子数を減らすことは可能であっても、納豆の品質は十分には確保し難い。
従来、納豆中の胞子数が少ない納豆を製造する方法としては、胞子形成率の低い納豆菌を利用した乾燥納豆に殺菌処理を施すという方法(特許文献1参照)や、胞子形成率の低いタイミングで殺菌を施すという方法(特許文献2参照)が報告されている。乾燥納豆を利用した方法では、生の納豆ではないため、食感の違いが出てしまい、また、胞子形成率の低いタイミングでの殺菌は、栄養細胞の殺菌を主とするものであることから、胞子数を減少させるのには不十分であった。
特開2006−6117号公報 特開2006−141209号公報
充分な納豆の品質を確保するためには、胞子の形成は重要であるが、形成された胞子は除菌・殺菌が困難であるため、納豆中における胞子の存在は望ましくはない。胞子の形成は、段階的に行われており、多数の遺伝子が関与している。また、当該遺伝子の中には、破壊により胞子形成が阻害され、それ以降の胞子形成段階に移行できずに、胞子形成が止まってしまう遺伝子があることから、このような事例を利用するならば、納豆の品質に必要な胞子形成段階を明確にできる可能性があることに着目し、更に研究を重ねた。
納豆菌の近縁種である枯草菌では、胞子形成の開始にはSpo0Aタンパク質が関与していることが報告されており、当該タンパク質のリン酸化が胞子形成遺伝子を誘導すると考えられている。遺伝子が発現するためには、RNA合成酵素が遺伝子上流のプロモーター領域からメッセンジャーRNA合成を行う必要があるが、RNA合成にはRNA合成酵素のコアタンパク質以外にシグマタンパク質が必要とされている。シグマタンパク質は、遺伝子上流のプロモーター配列を認識し、認識された遺伝子が発現する。栄養細胞増殖期ではほとんどの遺伝子はシグマAにより発現されているが、胞子形成の初期では、シグマHにより、中期ではシグマEとシグマFにより、後期では、シグマKとシグマGにより発現される遺伝子が胞子形成に関与している。すなわち、Spo0A、シグマH、シグマE、シグマF、シグマK、シグマGは胞子形成に重要な働きをしており、これらのタンパク質をコードするspo0A遺伝子、sigH遺伝子、sigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子およびsigG遺伝子を破壊すれば、胞子形成を初期、中期、後期でとめることが可能となる。そこで、納豆菌の当該遺伝子の破壊株を構築し、胞子形成への影響を調べてみたところ、いずれの破壊株も胞子を形成していないことが判明した。更に、このような胞子を作れない納豆菌で納豆を作ってみたところ、納豆においても胞子を形成しない性質を維持していた。更に、sigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子およびsigG遺伝子の破壊株ではいずれも納豆の品質を充分に確保していた。
このように胞子形成過程に着目し、胞子形成にとって重要である各シグマ因子の破壊株を作成し、特定の段階で胞子形成がストップする変異株を作成し、更に創意研究を重ねた結果、胞子形成期の初期段階では納豆の品質は充分ではなかったが、完全に胞子を形成させなくても納豆の品質を確保出来ることが判明したことから、ここに本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、胞子形成能が低下した納豆菌変異株を提供するものである。このような本発明は、より具体的な態様として、胞子形成遺伝子が欠損されており、該欠損が、該遺伝子の薬剤耐性遺伝子での置換によるものである納豆菌変異株を提供するものである。更に具体的な態様として、胞子形成遺伝子の欠損が、spo0A遺伝子、sigH遺伝子、sigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子およびsigG遺伝子の少なくとも1つからなる納豆菌変異株を提供するものである。
また、本発明は、sigK遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子で置換されている、胞子形成能低下納豆菌変異株 Bacillus subtilis(natto)SPDK(FERM P−21811)を提供するものである。
更にまた、本発明は、上記の納豆菌変異株を用いて製造される納豆を提供するものである。
発明の具体的な説明
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において親株として利用する納豆菌としては、特に限定されるものではないが、ごく一般的に納豆製造に利用されている市販の納豆菌、自然界などから分離された納豆菌、および、これらの納豆菌をもとに育種された納豆菌などを用いることが好ましい。
具体的には、市販納豆菌である宮城野菌(宮城野納豆製作所)、高橋菌(高橋祐蔵研究所)および成瀬菌(成瀬発酵化学研究所)の他、宮城野納豆菌からの分離株 NAFM5などが挙げられる。
除菌・殺菌が困難な納豆菌胞子の混入の危険性を低下させるためには、通常の納豆中の胞子数は納豆1g当たり10個から10個程度であることから、納豆中の胞子数としては、納豆1g当たり10個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは10個以下、最も好ましくは10個以下であるようにするとよい。
胞子数の測定は、納豆菌培養液や、納豆懸濁液などの胞子を含む懸濁液中の胞子数の測定により行える。例えば、80℃で10分間加熱処理した胞子懸濁液中の生菌数は、標準寒天培地を用いて測定した耐熱性菌数として求めることが出来る。
胞子数を測定するための納豆菌の培養液としては、胞子が形成されうる培地であれば何であっても良く、具体的には、大豆煮汁(Brix 2% pH7.3)を用いた培地や、Difco Sporulation Medium(以下、DSM培地という)(0.8% Nutrient broth(Difco)、0.1% KCl、0.012% MgSO・7HO、1mM Ca(NO、0.01mM MnCl、1μM FeSO、pH 7.0)などが好ましく、これらを用いて納豆菌を37℃で3日間程度振盪培養し、納豆菌培養液とするのが好ましい。また、大豆を用いて納豆を製造しても良く、納豆を製造した場合は、50gの納豆に100mlの生理食塩水を加え、4℃で30分程度撹拌した上澄み液を納豆懸濁液として用いるのが好ましい。
胞子形成能が低下した納豆菌は、上記のような胞子数の測定法により自然界からスクリーニングすることができる。また、人為的に変異を導入することによっても得ることが出来る。人為的に変異を導入する方法としては、ニトロソグアニジン(NTG)等の化学的な方法や紫外線やX線照射等の物理的な処理、遺伝子工学的手法等を用いることも可能であり、特に限定されるものではない。
遺伝子工学的手法において、ターゲットとなる遺伝子としては、胞子形成を阻害されうるものであれば何であってもよく、単独または複数同時に係わらず、特に限定されるものではない。好ましくはspo0A遺伝子、sigH遺伝子、sigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子およびsigG遺伝子などが挙げられる。特にsigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子およびsigG遺伝子が有用である。
遺伝子工学的手法においてターゲット遺伝子に変異を導入する方法としては、ポイントミューテーションや欠失、置換、挿入失活など遺伝子産物の活性を低下させうる方法であれば何であってもよく、特に限定されるものではない。
また、遺伝子工学的手法を納豆菌に利用するためには、納豆菌への変異用遺伝子の導入が必要であるが、そのような方法としては、自然形質転換能を利用したコンピテンス法や、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、ファージを利用した形質導入法などがあるが、変異用遺伝子を導入することが可能な方法であれば何であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明者らは、コンピテンス法を利用して、後述する実施例に準じて、納豆菌NAFM5(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所からの分譲菌株)のsigK遺伝子をカナマイシン耐性遺伝子で置換した胞子形成能低下納豆菌変異株 Bacillus subtilis(natto)SPDKを創製し、平成21年5月20日に独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した。該菌株はFERM P−21811として寄託されている。
なお、この菌株は、胞子形成能が低下していること以外の菌学的性質は、市販の納豆菌のもの〔食総研報(Rep.Natl.Food Res.Inst.)No.50,18〜21(1987)および大豆月報、12月号、21〜29(1985)参照〕と大差はなかった。即ち、この変異株SPDKは、好気性、グラム染色陽性の桿菌であり、菌(栄養細胞)の大きさ(1×2〜3μm)、生育適温(35〜45℃)、各種の糖の発酵性、DNAのGC含量等の性質がBergey´s Manual 8版の枯草菌(Bacillus subtilis)の性質と一致しており、かつ粘質物を生成し、ビオチン要求性であることから、いわゆる納豆菌(Bacillus subtilis(natto))に属しているものである。
本発明による納豆菌変異株は、胞子形成能が低下しているので、納豆菌胞子数が納豆1g当たり10個以下の納豆を製造することが出来る。すなわち、本発明の納豆菌胞子数の少ない納豆は、本発明の納豆菌変異株を用いて製造されるものであれば、納豆の大豆原材料、納豆の製造条件および製造工程等に関しては、特に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
育種親株としては、宮城野納豆菌より分離されたNAFM5を用いた。また、納豆菌の形質転換はAnagnostopoulos C.、Spizizen J., 1961 " Requirements for transformation in Bacillus subtilis." J. Bacteriol. 81:741-746に記載の方法により行った。
また、胞子形成能を低下させうる可能性のあるターゲット遺伝子として、spo0A遺伝子、sigH遺伝子、sigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子およびsigG遺伝子を選び、各遺伝子の破壊株を構築した。
遺伝子破壊用のDNAの構築は、まず、定法に従い調製したNAFM5ゲノムDNAをテンプレートとして、後述の配列表に記載のプライマーを使用してターゲット遺伝子の上流および下流の約1kbをPCRにより増幅し、また、pDG780由来のカナマイシン耐性遺伝子をテンプレートとして、後述の配列表に記載のプライマーを使用してカナマイシン耐性遺伝子を増幅し、次いで、ターゲット遺伝子の代わりとして、カナマイシン耐性遺伝子を挟むように、それぞれ増幅したターゲット遺伝子の上流、カナマイシン耐性遺伝子およびターゲット遺伝子の下流をPCRライゲーションにより連結して行った。なお、PCRはTaqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を使用してマニュアルに従って行った。
具体的には、spo0A遺伝子破壊用のDNAとしてΔspo0A::Kmを以下の通り構築した。まず、spo0A遺伝子上流部を後述の配列表の配列番号1および配列番号2に記載のプライマーを用いて、また、spo0A遺伝子下流部を配列番号3および配列番号4に記載のプライマーを用いて、それぞれNAFM5のゲノムDNAをテンプレートにしてPCRにより増幅した。また、カナマイシン耐性遺伝子を、配列表の配列番号5および配列番号6に記載のプライマーを用いて、pDG780由来のカナマイシン耐性遺伝子をテンプレートにしてPCRにより増幅した。次いで、これら増幅産物と、配列番号1および配列番号4に記載のプライマーとを用いてPCRを行い、3つの増幅産物が結合されたΔspo0A::Kmを構築した。
同様の手順で、sigH遺伝子破壊用のDNAとしてΔsigH::Km、sigE遺伝子破壊用のDNAとしてΔsigE::Km、sigF遺伝子破壊用のDNAとしてΔsigF::Km、sigK遺伝子破壊用のDNAとしてΔsigK::Km、および、sigG遺伝子破壊用のDNAとしてΔsigG::Kmを構築した。なお、ΔsigH::Kmの構築には配列番号1〜4の代わりに配列番号7〜10を、ΔsigE::Kmの構築には配列番号1〜4の代わりに配列番号11〜14を、ΔsigF::Kmの構築には配列番号1〜4の代わりに配列番号15〜18を、ΔsigK::Kmの構築には配列番号1〜4の代わりに配列番号19〜22を、ΔsigG::Kmの構築には配列番号1〜4の代わりに配列番号23〜26を使用した。
次いで、各遺伝子の破壊用DNAを、それぞれNAFM5に形質転換し、spo0A遺伝子、sigH遺伝子、sigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子、およびsigG遺伝子の破壊株、NAFM5(Δspo0A)、NAFM5(ΔsigH)、NAFM5(ΔsigE)、NAFM5(ΔsigF)、NAFM5(ΔsigK)、およびNAFM5(ΔsigG)を構築した。なお、形質転換体の選抜は、いずれもカナマイシン20μg/mlを添加したLB寒天培地を用いて行った。また、ターゲット遺伝子がマーカー遺伝子で置換されているかはPCR法によって確認した。
得られた形質転換体の胞子形成能を確認するため、親株、および、各破壊株をそれぞれ5mlのDSM培地に接種し、37℃で3日間振盪培養した。培養液中の胞子を80℃で10分間加熱処理した。次いで、この加熱処理培養液をそれぞれ適宜希釈した後、標準寒天培地を用いて37℃で48hr培養して生育胞子数を測定した。
それぞれの胞子数測定結果を表1に示す。
Figure 0005512177
その結果、培養液中の胞子数は、親株では1.2×10cfu/mlであったが、破壊株では全ての株で生育コロニーが観察されず、胞子が形成されていなかった。
実施例2
親株、および、spo0A遺伝子、sigH遺伝子、sigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子およびsigG遺伝子の各破壊株を用いて実際に納豆を試作し、これら破壊株の納豆での効果を確認した。納豆の種菌としては、−80℃で凍結保存しておいたこれらの破壊株を、いずれもLB液体培地で培養し、得られた培養液を滅菌水で1,000倍に希釈したものを種菌液とした。大豆は一晩常温にて水につけておいた丸大豆を、ざるに入れ、121℃で50分間オートクレーブして煮豆とした。この煮豆がさめてから種菌液を50gあたり1mlの割合で接種し、40℃で17時間発酵させた。その後4℃で3日間保存して熟成を行い、納豆とした。また、コントロールとして親株であるNAFM5についても同様の手順で納豆を試作した。
試作した納豆について、菌膜の被り、糸引き、豆の色および香りの項目を官能評価により、コントロールのNAFM5の試作品と比較した。その結果を表2に示す。
Figure 0005512177
その結果、sigK遺伝子およびsigG遺伝子の破壊株では親株と同程度の品質を保持していた。
試作した各納豆50gに生理食塩水100mlを加え、4℃で30分間攪拌して納豆菌懸濁液を調整した。この納豆菌懸濁液中の胞子数を実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
Figure 0005512177
その結果、納豆中の胞子数は、親株では9.1×10cfu/mlであったが、破壊株では全ての株で生育コロニーが観察されず、実施例1と同様に胞子が形成されていなかった。
また、上記試作納豆中のグルタミン酸含量、およびアンモニア含量を測定した。グルタミン酸及びアンモニアの測定は、これら納豆の納豆菌懸濁液をサンプル液とし、F−キットL−グルタミン酸(ロッシュ社製)、および、F−キット アンモニア(ロッシュ社製)を用いて、添付のマニュアルに従い測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0005512177
納豆のうま味成分は、原料の大豆タンパクが分解されて産生されるアミノ酸が主たるものであるが、中でもグルタミン酸がその代表的なものである。sigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子およびsigG遺伝子の破壊株はグルタミン酸、およびアンモニアが親株よりも若干多い傾向が見られ、味の面においても、親株と同程またはそれ以上であった。中でもsigK遺伝子の破壊株は糸引きなどの官能結果も親株と同程度であり、グルタミン酸量も多かったので、この変異株をSPDK株と命名し、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した。
[発明の効果]
本発明の納豆菌変異株によれば、納豆の品質に影響を与えることなく、納豆菌胞子の少ない納豆を製造することが可能である。従って、除菌・殺菌が困難な納豆菌胞子の混入の危険性が低下することから、除菌・殺菌が通常の納豆よりも容易であり、納豆を原材料とする加工食品への利用拡大が一段と期待出来る。

Claims (5)

  1. 胞子形成能が低下した納豆菌変異株であって、
    sigE遺伝子、sigF遺伝子、sigK遺伝子およびsigG遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの胞子形成遺伝子が欠損されている、納豆菌変異株。
  2. 胞子形成遺伝子の欠損が、該遺伝子の薬剤耐性遺伝子での置換によるものである、請求項に記載の納豆菌変異株。
  3. sigK遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子で置換されている、胞子形成能低下納豆菌変異株 Bacillus subtilis(natto)SPDK(FERM P−21811)。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の納豆菌変異株を用いて製造されたことを特徴とする納豆。
  5. 納豆中の胞子数が、納豆1g当たり10個以下であり、かつ、グルタミン酸含量が親株よりも多い、請求項4に記載の納豆。
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