JP4778740B2 - フィターゼ酵素低活性納豆菌及び長期安定な納豆 - Google Patents

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Description

本発明は、新規納豆菌及び該納豆菌を用いて製造された新規納豆に関し、さらに詳細には、フィターゼ酵素低活性納豆菌、及び長期安定な納豆に関する。
納豆は発酵終了後、長期間保存することで納豆菌の二次発酵を促し次に挙げる品質の劣化を引き起こす。即ち、チロシン及びストラバイト(リン酸マグネシウムアンモニウム)などの白色析出物が発生し食感を損ねること、豆色の褐変及び菌膜の喪失により外観を悪化させること、アンモニア発生による不快臭の増大などである。
これまで納豆の品質を長期間安定に保つ為、数々の試みが行われてきた。例えば、納豆の容器を酸素透過性の低い材質にし、脱気後密封することで二次発酵の原因である納豆菌の増殖を抑えること(特許文献1参照)、納豆容器中に酸素吸収剤を入れることで二次発酵の原因である納豆菌の増殖を抑えること(特許文献2参照)、納豆菌接種前の蒸煮大豆中に糊化米粉水溶液を添加すること(特許文献3参照)などである。
ただ、上記解決法を行うには容器の変更や添加物の使用など、納豆製造工程におけるコストの増大は避けることができず、そのため納豆菌の育種により、従来法と何ら変わらない製造法による解決法が切望されていた。
特開平7−23728号公報 特開平10−165130号公報 特開2004−236557号公報
本発明は、製造工程の追加や添加物の使用などを行わず、従来製造法のままで納豆菌の育種により長期間安定で高品質の納豆を開発し、提供することを目的とした。
上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、納豆品質の劣化原因のひとつである白色析出物の発生を解決する為、その構成成分の中でも特にリンにはじめて着目した。即ち、大豆中に含まれるリンの約85%がフィチン態を形成している点に着目し、フィチンからのリンの遊離を抑え、白色析出物の原資の供給源を絶つことを試みた。
そこで、フィチンからのリンの遊離はこの納豆菌が生産するフィターゼが主原因であることを想定し、フィターゼをコードするphy遺伝子を破壊することでフィターゼ活性を欠損させた納豆菌を構築し、該株を用いて納豆を作成し評価を行った。
保存試験の結果、仮説通りに親株と比較して有為に白色析出物の発生を抑えることができた。また、さらに驚くべきことには、納豆品質の劣化原因である豆色の褐変及び菌膜の喪失といった外観の悪化についても親株と比較して有意に改善されることを確認した。よって、フィターゼ遺伝子を欠損させた納豆菌を用いて納豆を製造することにより、納豆品質が親株のそれと比較して有為に改善できたことを見出し、本発明を完成させた。
即ち、請求項1の発明は、脱リン酸化酵素の活性を低下、または欠失させたことを特徴とする納豆菌を含むバシラス属の菌についてである。請求項2の発明は、フィターゼ酵素の活性を低下、または欠失させたことを特徴とする納豆菌を含むバシラス属の菌についてである。請求項3の発明は、請求項1または請求項2記載の変異領域がプロモーター領域を含むphy遺伝子である納豆菌を含むバシラス属の菌についてである。請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の変異が遺伝子組換え法により欠損されたことを特徴とする納豆菌を含むバシラス属の菌についてである。請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の変異が突然変異法により欠損されたことを特徴とする納豆菌を含むバシラス属の菌についてである。請求項6の発明は、親株のphy遺伝子を遺伝子組換え法により欠損させてなる納豆菌株Bacillus subtilis phy2(FERM BP−10337)についてである。請求項7の発明は、突然変異法によりフィターゼ酵素活性を欠失させた納豆菌株Bacillus subtilis VPS37(FERM BP−10336)についてである。
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の納豆菌を用いて製造されたことを特徴とする納豆についてである。請求項9の発明は、請求項8記載の納豆がスクロースなどの糖源を添加することで製造されたことを特徴とする納豆についてである。請求項10の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の納豆菌を用いて発酵されたことを特徴とする大豆加工物又は米糠などの穀類についてである。
本発明により、添加物の使用などの工程を加えることなく、該納豆菌で納豆を製造することにより、長期保存条件において、白色析出物の発生抑制、豆色の褐変抑制及び菌膜の維持といった外観の良い高品質納豆を提供できる。また、本発明によれば、フィチン酸含有培地(選択培地)を用いてハローの形成の有無を確認することにより目的納豆菌をスクリーニングして育種する方法も提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
フィターゼとは、フィチンを基質としてイノシトール環からリン酸基を遊離させる酵素である(EC number:3.1.3.8)。今回は大豆成分からリンの遊離を抑制する為にフィターゼに着目したが、それ以外の脱リン酸化酵素も対象として使用可能であり、これらを1種又は2種以上を処理対象として併用することも可能である。
公知の通り、phy遺伝子がコードするフィターゼ(phytase)という酵素によりフィチンからリンが遊離されるが、納豆菌ではその酵素の存在が既に報告されている(Biosci. Biotech. Biochem., 56(8), 1266−1269, 1992)(または、特開平6−38745号公報)ものの、納豆菌が生産する中性フィターゼの特性について言及されているものであり、納豆への応用例などは一切記載されていない。ましてや、phy遺伝子の破壊、欠損による納豆における白色析出物の抑制等の納豆の長期安定化については全く知られていない。
また、納豆菌の近縁種である枯草菌でもその存在が知られており(例えば、「(Journal of Bacteriology)、151巻、p.1102−1108、1982年」参照)(例えば、「(Applied and Environmental Microbiology)、64巻、p.2079−2085、1998年」参照)(例えば、「(Biochemical and Biophysical Research Communications)、268巻、p.365−369、2000年」参照)、その基質特異性や至適条件など酵素の特性が示されている。
本発明で育種改良に用いる元の納豆菌には特に制限はないが、通常納豆工業で使用されている発酵能力に優れた納豆菌や、自然界から分離取得された納豆菌、及びさらに改良を重ねて得られる優れた納豆菌などを用いるのが望ましい。
納豆菌はその形態や遺伝子相同性から、枯草菌バシラス・サチラス(Bacillus subtilis)に分類されているが、粘質物(糸引物質)などの納豆としての特徴をつくり出すことができ、納豆発酵での主体をなす細菌であって、また生育にビオチンを要求するとされるなどの特性を有していることなどから、バシラス・ナットウ(Bacillus natto)として分類されたり、枯草菌の変種としてBacillus subtilis var. natto或いはBacillus subtilis (natto)などと枯草菌と区別して分類する場合もある。納豆菌としては、Bacillus natto IFO3009株、Bacillus subtilis IFO3335株、同IFO3336株、同IFO3936株、同IFO13169株などがある他、各種の納豆菌が広く使用できる。
具体的には、市販納豆から分離したO−2株や該株の形質転換効率向上性変異株であるr22株(特開2000−224982号公報参照)が挙げられ、また市販の納豆種菌である高橋菌(T3株、東京農業大学菌株保存室)や宮城野菌(宮城野納豆製作所)など各種の納豆菌が適宜使用可能である。
本発明では、これら納豆菌のフィターゼ遺伝子を破壊し、該酵素活性を欠損させた納豆菌を育種することにより、フィチンを基質としてリンを遊離しない納豆菌を取得する。
育種方法の一つとして相同組換えを利用した遺伝子改良法が採用可能であるが、本方法の利点は標的遺伝子だけを特異的に欠損させることが可能であり、そのため納豆菌などの工業的に利用される微生物においては、他の優れた特性は壊さずに、欠点となっている性質に関与する遺伝子だけに変異を起こさせて改良することができる。
さらに、スタールらが枯草菌バシラス・サチラス(Bacillus subtilis)において開発した相同組換え能を利用した遺伝子破壊法(例えば、「(Journal of Bacteriology)、158巻、p.411−418、1984年」参照)を納豆菌用に改変した方法も利用可能である。この方法は、最終的には、育種のための遺伝子破壊などの目的で納豆菌に導入した異種遺伝子を完全に除去することができる方法であるため、育種された菌は遺伝子組換え菌とはならないなどの長所を有している。
また、このような遺伝子組換え法を納豆菌で利用するには、納豆菌への遺伝子導入のための形質転換系が必要であるが、納豆菌を遺伝子導入活性が高くなる状態にするいわゆるコンピテンス法(例えば、「(Journal of Molecular Biology)、56巻、p.209−221、1971年」参照)が利用可能である。
また、納豆菌の遺伝子組換え系の一つとしては、ファージベクターを利用した形質導入法が既に開発されており(例えば、「(Applied and Environmental Microbiology)、63巻、p.4083−4089、1997年」参照)、本発明ではこの方法も利用可能である。
本発明においては、上記の育種方法を用いて、納豆菌の脱リン酸に関与する遺伝子を欠損させることによって目的の長期安定な高品質納豆菌を作製する。なお、本発明においては、遺伝子の欠損には、欠失、改変、破壊等を包含するものである。
尚、上記のような遺伝子組換え技術以外によっても、即ち、既に目的遺伝子が欠損している納豆菌を自然界から選抜するいわゆるスクリーニング法や、薬剤やUV変異法などによってこれらの遺伝子を変異欠損させるなどの突然変異法など、従来から実施されているような他の方法によっても育種が可能である。
phy遺伝子欠損納豆菌、フィターゼ酵素その他の脱リン酸化酵素の活性を低下又は欠失させた納豆菌をスクリーニングするためには、例えばフィチン酸を含有する選択培地(例、LBPH培地)を用い、ハローを形成しない株を選択すればよく、本発明は、このような納豆菌を選択するための選択培地及びこれを利用する有用納豆菌の育種方法も提供するものである。
このようにして開発されたフィターゼ欠損納豆菌の納豆生産への利用は、従来から実施されている方法を採用すれば良く、何ら制限がない。
例えば、納豆は丸大豆を原料として製造されたいわゆる丸大豆納豆が一般的であるが、一部には予め挽割った大豆を原料とする挽割り納豆もある。丸大豆納豆の製造方法は、一般に原料である丸大豆を冷水に十数時間浸漬した後、蒸煮釜で加圧蒸気を用いて加圧蒸煮(1.5〜2 Kg/cm2・128〜133℃)して得られた蒸煮大豆に対して、高温状態(70〜100℃)で納豆菌を接種し混合した後、所定の容器に充填してから発酵室に搬入して比較的高温度(40〜55℃程度)で所定時間(12〜48時間程度)発酵させた後、5℃前後で冷蔵熟成(12〜72時間程度)して完成させるのが一般的である。また、挽割り納豆の場合は、予め挽割った大豆を水に浸漬する以外は、通常の丸大豆納豆の場合と同様の方法で製造される。
このような従来の納豆の製造方法において、本発明では発酵工程で用いる納豆菌を、前記方法によって育種改良したフィターゼ欠損納豆菌に代えて使用することによって製造される。
このようにして、フィターゼ欠損納豆菌を用いて生産した納豆と、従来から利用されている通常の納豆菌を用いた納豆とを比較すると、フィターゼ欠損納豆菌で製造した納豆は長期保存条件下において白色析出物の発生抑制、豆色の褐変抑制及び菌膜の維持といった外観の良い高品質納豆であることが確認できる。
このような長期保存条件下で高品質な納豆を目指した場合、このフィターゼ欠損納豆菌の能力と相乗効果を狙うために、蒸煮大豆中にスクロースなどの糖源を添加して発酵させることにより揮発アンモニア量を抑制させる製造法の併用も有効である。
また、今回の実施例での最終形態は蒸煮大豆を発酵させた納豆となるが、例えば豆乳や米糠といった穀類などを基質としてその発酵物を得る場合、本技術で得た株を用いることで品質の向上が期待できる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)フィターゼ欠損納豆菌の作製
(1)基本条件
フィターゼ活性を欠損させる親株としては、納豆菌バシラス・サチラスr22(Bacillus subtilis r22)株(以下、r22株と称する場合もある)(例えば、特開2000−224982号公報参照)を用いた。r22株は、市販納豆から常法により分離した納豆菌であるO−2株を、ニトロソグアニジン(NTG)を用いて化学変異処理することにより取得した形質転換能を高めた変異株である。また、他には大腸菌DH5α(Escherichia coli DH5α)株(タカラバイオ社製)を用いた。プラスミドベクターとしては、pBR322(タカラバイオ社製)及びpC194(ATCCより入手)を用いた。
なお、特に記載しない限り、培養条件、培地及びその他の遺伝子組換え技術は、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、2版(1992)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY」の記載に従った。
また、基本的な培養は以下の表1(LB培地組成)に示すLB培地を用いて行った。
Figure 0004778740
PCRによるDNA断片の増幅には、Ex Taq(Takara社製)を使用し、反応条件は、Ex Taqに添付のマニュアルに従った。
納豆菌の形質転換等は、以下の方法によった。
即ち、納豆菌の染色体DNAは、市販のキットを使用して調製し、形質転換は「(Journal of Molecular Biology)、56巻、p.209−221、1971年」の方法に従った。
納豆菌の胞子は、以下の表2(胞子形成培地組成)に示すSterlini−Madelstam置換培地を用いて調製した。
Figure 0004778740
(2)ベクター構築
ベクター構築に用いた各DNA断片の作製概略を図1に示した。
即ち、r22株のphy遺伝子領域を含む約5Kbpの増幅にはプライマー1(配列表の配列番号1(図4)に記載)及びプライマー2(配列表の配列番号2(図5)に記載)を使用した。
pC194のクロラムフェニコール耐性遺伝子の増幅には、プライマー3(配列表の配列番号3(図6)に記載)及びプライマー4(配列表の配列番号4(図7)に記載)を用いた。
それぞれのプライマーは、phy遺伝子領域をDNA Sequencer(ABI PRISM 3700 DNA Analyzer:PE Applied Biosystems製)を用いて塩基配列を決定し設計した。また、pC194のクロラムフェニコール耐性遺伝子の塩基配列は文献情報(例えば、「(Proceedings of National Academy of Science in U.S.A.)、77巻、12号、p.7079−7083、1980年」参照)を参考にして設計した。
即ち、r22株の全DNAを鋳型にし、プライマー1(配列表の配列番号1(図4)に記載)及びプライマー2(配列表の配列番号2(図5)に記載)を用いphy遺伝子領域を含む約5Kbpを増幅した(DNA断片1)(図1)。
さらに、pC194を鋳型にしプライマー3(配列表の配列番号3(図6)に記載)及びプライマー4(配列表の配列番号4(図7)に記載)を用いクロラムフェニコール耐性遺伝子を増幅するとともに制限酵素サイトStuIを遺伝子両端に導入した(DNA断片2)(図1)。
続いて、上記DNA断片を用いてベクターを構築したが、その概略は図2に示した。即ち、pBR322のマルチクローニングサイト上のNruIサイトにDNA断片1を導入し、次いでDNA断片1内のStuIサイトで切断した。そのStuIサイトへDNA断片2を導入し、プラスミドpBRPC1を得た(図2)。
(3)形質転換
プラスミドpBRPC1のプラスミドDNAを鋳型とし、プライマー1(配列表の配列番号1に記載)及びプライマー2(配列表の配列番号2に記載)を用いphy遺伝子領域及びクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む約6Kbpを増幅したDNAを用いてr22株へ形質転換した。形質転換株の選択はクロラムフェニコール5μg/mlを添加したLB培地で37℃、18時間培養することによって行った。得られた形質転換株バシラス・サチラスphy2(Bacillus subtilis phy2)株(以下、phy2株と称する場合もある)のphy遺伝子は、塩基番号632のStuIサイト内にクロラムフェニコール耐性遺伝子が挿入されていることが、PCR法などによる解析によって確認された(図3)。
このようにして得た形質転換体は、バシラス・サチラス(Bucillus subtilis)phy2と命名し、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM BP−10337として国際寄託した。
(実施例2)納豆試作と品質評価
常法に従い、r22株、およびphy2株の胞子液を調整した。即ち、r22株またはphy2株を表1に示したLB培地に1白菌耳植菌し、37℃、1晩培養後、その培養液を表2に示した胞子形成培地に1%植菌し、37℃、24時間培養して胞子液を調製した。
以下、それぞれの胞子液を種菌として使用し、常法に従い納豆を試作した。即ち、極小大豆を水道水で4℃、1晩浸漬し、圧力蒸煮釜で蒸気圧1.8KPaで18分間蒸煮した。このようにして調製した蒸煮大豆に対して、上記のr22株またはphy2株の胞子液を滅菌水で100倍に希釈し、蒸煮大豆100gあたり0.8ml種菌し、40℃で18時間発酵した。発酵後、4℃で24時間熟成して、納豆を調製した。
phy2株を用いて発酵を行った場合、r22株を用いて発酵した場合と比べて、発酵時間の遅延、発酵中の納豆品温の低下等は見られず、phy2欠損変異が納豆菌の生育に影響を及ぼさないことが分かった。
続いて試作により得られた納豆を、熟練した男女各10名からなるパネルによる官能検査に供した。
その結果、親株(r22株)と変異株(phy2株)とで品質上に違いが見られず、phy2株を種菌に用いて作製した納豆が、納豆として必要な品質を具備していることが確認できた。
(実施例3)フィターゼ欠損納豆菌のフィターゼ活性
納豆菌のフィターゼ活性の測定は以下の方法に従った。即ち、5mlのLB液体培地で培養し、定常期での培養上澄液を粗酵素液とし、等量の基質溶液(100mM Tris−HCl(pH7.0) + 1% phytic acid (from rice) + 2mM CaCl2)と混ぜ、37℃、60〜120分インキュベートした。ブランクとして粗酵素液を5分間煮沸したものを使用した。反応終了後、即座に急冷し、反応液中のリンを定量キット(ホスファC−テストワコー(和光純薬工業製))で測定した。1分間あたり1pmolのリンを遊離させる酵素単位を1Uとして算出した結果を下記表3(フィターゼ活性)に示した(単位:U)。
Figure 0004778740
(実施例4)納豆からの白色析出物の抽出
試作により得られた納豆を長期間保存し、既報の抽出法(例えば、「(栄養と食糧)、26巻、p.473−478、1973年」参照)により白色析出物量を測定した。
保存法は、通常保存条件(10℃保存)と過酷保存条件(25℃保存)の2パターンで試験した。測定結果を、それぞれ、表4(通常保存条件(10℃保存))及び表5(過酷保存条件(25℃保存))に示した(単位:mg/100g)。
Figure 0004778740
Figure 0004778740
(実施例5)豆の色調の変遷
試作により得られた納豆を長期間保存(上記と同様)し、色差計によりL値(明度)の変遷を測定した。尚、色差計はCOLOR READER CR−13(MINOLTA製)を使用した。
保存法は、通常保存条件(10℃保存)と過酷保存条件(25℃保存)、(37℃保存)の3パターンで試験した。測定結果は、それぞれ、表6(通常保存条件(10℃保存)、表7(過酷保存条件(25℃保存)、表8(過酷保存条件(37℃保存))に示した(単位:L値)。
Figure 0004778740
Figure 0004778740
Figure 0004778740
(実施例6)納豆菌膜の変遷
試作により得られた納豆を長期間保存(上記と同様)し、菌膜の状態を比較した。表記は○(不快を感じない)、△(不快を感じる)、×(不快を強く感じる)で表した。
保存法は、通常保存条件(10℃保存)で試験した。測定結果を表9(通常保存条件(10℃))に示した。
Figure 0004778740
(実施例7)納豆菌からのスクリーニング法
前述の遺伝子組換え納豆菌phy2株と同様の野生株をスクリーニングする手段を開発した。即ち、該株を用い以下の表10に示すLBPH培地を用いてハロー法選抜によりスクリーニングするものである。
実際に納豆菌phy2株とその親株であるr22株を該培地にて37℃、一晩培養させたところ、親株は白濁した培地上にそのコロニー周辺に透明なハローを形成したことに対し、phy2株ではハローを形成しなかった。この培地を使用することにより、遺伝子組換え技術を用いない野生株からフィターゼ欠損株をスクリーニングすることが可能である。該方法については、親株を薬剤処理またはUV(紫外線)照射などにより突然変異を誘導させ、スクリーニングを効率化することができる。
薬剤処理法として、例えばニトロソグアニジンを使用する方法がある。即ち、5mlのLB培地に親株を植菌し、37℃で一晩培養させ、その培養液の2%を100mlのLB培地に植菌し3時間培養する。続いて集菌し、50mM Tris−HCl buffer(pH7.0)で2回洗浄する。その後、50mM Tris−HCl buffer(pH7.0)4mlで懸濁し、終濃度200μg/mlのニトロソグアニジン溶液を添加し、30℃で1時間処理する。続いて集菌し、50mM Tris−HCl buffer(pH7.0)5ml及びLB培地5mlでそれぞれ2回ずつ洗浄し、最後にLB培地5mlを添加し37℃で3時間培養させ、適量をLBPH培地に植菌する。表10にLBPH培地組成を示す。
Figure 0004778740
実際に、親株をOUV23481株(特許文献 特開2000−287676号公報)とした納豆菌から、上記薬剤処理法を用いてスクリーニングを行ったところ、ハローを形成しないコロニーを選抜することができた(VPS37株)。VPS37株のフィターゼ活性、過酷条件での保存試験を行ったところ、遺伝子組換え株である納豆菌phy2株と同様の効果を見出し、組換え株以外でも該スクリーニング法により長期保存条件下において白色析出物の発生抑制、豆色の褐変抑制及び菌膜の維持といった外観の良い高品質納豆を作成できる納豆菌を取得することができた。
このようにして分離して得た突然変異株は、バシラス・サチラス(Bucillus subtilis)VPS37と命名し、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM BP−10336として国際寄託した。
VPS37株(FERM BP−10336)のフィターゼ活性を測定し、測定結果を下記表11に示した(単位:U)。
Figure 0004778740
VPS37株(突然変異株)の通常保存条件(10℃)、及び過酷保存条件(25℃)での白色析出物の発生量(mg/100g)の経日変化を、それぞれ、表12及び表13に示した。なお、OUV23481は親株である。
Figure 0004778740
Figure 0004778740
また、VPS37株の通常保存条件(10℃)、及び、過酷保存条件(25℃)において保存した場合の豆の色調の変遷(L値)(経日変化)を、それぞれ、表14及び表15に示した。
Figure 0004778740
Figure 0004778740
更に、VPS37株の通常保存条件(10℃)での納豆菌膜の変遷を表16に示した。表中、○は不快を感じない、△は不快を感じる、×は不快を強く感じるを示し、daysは日数を示す。
Figure 0004778740
DNA断片作製の概略を示した図である。 ベクター構築の概略を示す図である。 phy遺伝子欠損工程の概略を示す図である。 プライマー1を示す。 プライマー2を示す。 プライマー3を示す。 プライマー4を示す。

Claims (9)

  1. フィターゼ酵素の活性を低下、または欠失させたことを特徴とするバシラス・サチラス(Bacillus subtilis)に分類されるフィターゼ欠損納豆菌
  2. 請求項1に記載の変異領域がプロモーター領域を含むphy遺伝子であるバシラス・サチラス(Bacillus subtilis)に分類されるフィターゼ欠損納豆菌
  3. 請求項1又は2に記載の変異が遺伝子組換え法により欠損されたことを特徴とするバシラス・サチラス(Bacillus subtilis)に分類されるフィターゼ欠損納豆菌
  4. 請求項1又は2に記載の変異が突然変異法により欠損されたことを特徴とするバシラス・サチラス(Bacillus subtilis)に分類されるフィターゼ欠損納豆菌
  5. 親株のphy遺伝子を遺伝子組換え法により欠損させてなる納豆菌Bacillus subtilis phy2(FERM BP−10337)。
  6. 突然変異法によりフィターゼ酵素活性を欠損させた納豆菌Bacillus subtilis VPS37(FERM BP−10336)。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の納豆菌を用いて製造されたことを特徴とする納豆。
  8. 請求項7に記載の納豆がスクロースなどの糖源を添加することで製造されたことを特徴とする納豆。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の納豆菌を用いて発酵されたことを特徴とする大豆加工物又は米糠などの穀類。
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