JP2010115139A - 低発芽率胞子形成性納豆菌株および該株を用いて製造した納豆菌胞子の少ない納豆 - Google Patents

低発芽率胞子形成性納豆菌株および該株を用いて製造した納豆菌胞子の少ない納豆 Download PDF

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Abstract

【課題】形成胞子の発芽率が低下した納豆菌を提供するとともに、除菌・殺菌が困難な納豆中の胞子数が少ない納豆を提供する。
【解決手段】sleB遺伝子およびcwlD遺伝子の二重破壊による、胞子発芽能欠損納豆菌変異株NABD(FERMP-21701)の創製、および、当該納豆菌を用いて製造される胞子数の少ない納豆。
【選択図】なし

Description

本発明は、低発芽率胞子形成性納豆菌の創製、および、該納豆菌を用いて製造した納豆菌胞子の少ない納豆に関するものである。より詳しくは、除菌、殺菌が困難である納豆菌胞子の含有量が少ない納豆を提供することにより納豆の利用拡大を図ることに関するものである。
Bacillus属の細菌は活発に活動しているときは栄養細胞の形態をとっているが、生育環境が適さなくなってくると胞子を形成し休眠状態となる。このBacillus属のつくる胞子は物理的、化学的に安定であり、当該胞子を除菌、殺菌することは非常に困難である。たとえば、胞子を形成しない細菌であれば、80℃程度の加熱で殺菌することが可能であるが、胞子の場合は120℃程度の加熱温度が必要である。
納豆製造に利用されている納豆菌もBacllus属に属する胞子形成菌である。従って、納豆中には多量の納豆菌胞子が存在しており、その含有量は納豆1g当たり10〜10個程度である。
納豆は、乾燥した大豆を水につけ吸水させた浸漬大豆を、圧力釜などで煮て煮豆にした後、納豆菌を接種し、容器に盛り込み、40℃前後で18時間前後発酵させた後、4℃前後で熟成させてつくる発酵食品である。従って納豆菌の菌数は納豆の品質を確保する上で非常に重要である。納豆が発酵する過程では納豆菌が1g当たり10個程度に増加する。従って、納豆菌数がこの菌数に達していない場合は良質な納豆をつくることが出来ないが、納豆菌が当該菌数に到達するのは発酵中期頃である。しかし、納豆菌数が十分である発酵中期であっても、納豆の糸引きや旨みは未だ弱く、菌数が十分なだけでは納豆の品質を確保することは出来ない。納豆の特徴的な糸引きや、旨みといった品質は、続く発酵後半過程で形成されるのである。また、この発酵後半過程は、増殖した納豆菌栄養細胞が胞子化し、胞子数が増加する過程でもある。納豆菌が属するBacillus属の細菌は胞子形成期に様々な酵素を産生することが知られているが、まさに納豆の特徴である糸引きや旨みにも当該酵素が関係している。その中には、タンパク質分解酵素であるプロテーゼも含まれているが、当該プロテアーゼは大豆タンパク質を分解し、旨み成分であるアミノ酸を産生するため非常に重要である。また、血栓溶解酵素として期待されている納豆キナーゼも当該プロテアーゼであると考えられており、よって、納豆の品質および機能を十分に発揮させるためには胞子の形成が重要となる。このように納豆の品質を確保するためには、増殖した栄養細胞が充分に胞子化することが必要である。納豆1g当たり10個程度である栄養細胞が、好ましくは10個程度、更に好ましくは10個程度、最も好ましくは10個程度に胞子化することが望まれる。
Bacillus属が形成する胞子の構造は、中心部に高度に脱水化されたコアが存在し、その外周を胞子細胞膜、Germ Cell Wall、コルテックス層、スポアコート層が順に層をなして被っている。コルテックス層は胞子特有のムラミン酸δラクタムを含むペプチドグリカン層であるが、コルテックス層の分解に伴って胞子の耐性が失われることから、コルテックス層の分解は、発芽における重要な過程であると考えられている。枯草菌ではこのコルテックス層の分解を担う酵素としてSleB、CwlJが知られている。また、SleBは胞子特有の成分であるムラミン酸δラクタムを認識してコルテックス層の分解を行っていると考えられている。このムラミン酸δラクタムはCwlDおよびPdaAによって生合成されている。従って、これら酵素の遺伝子の変異は枯草菌の発芽に少なからず影響を与えており、例えば、sleB−cwlJの二重破壊は高度に発芽を抑制することが報告されている(非特許文献1参照)。しかしながら、これら遺伝子の納豆菌における影響は未だ報告がなく、従って納豆の品質に与える影響についても報告がない。
納豆中に存在する胞子は、物理的、化学的に安定である。従って、納豆を加工食品に利用する場合は、当該加工食品はもとより、当該食品の製造ラインにおいても納豆菌胞子の付着が問題となる。例えば、納豆菌胞子の除菌・殺菌が不十分であると、上記製造ラインにおいて納豆を利用しない加工食品を製造する場合、納豆菌胞子の混入の危険性が生じ、その結果納豆の加工食品への利用は限られることになる。納豆中の胞子を減らすためには、120℃程度の加熱が必要であるが、当該加熱条件では納豆の品質を保持することは困難である。また、胞子を形成し難い納豆菌の使用により、あるいは、胞子を形成させない発酵条件によって、納豆中の胞子数を減らすことは可能であっても、納豆の品質は十分には確保し難い。納豆の品質を十分に確保し、かつ納豆中の胞子数が少ない納豆の製造方法は現在のところ確立されていない。
従来、納豆中の胞子数が少ない納豆を製造する方法としては、胞子形成率の低い納豆菌を利用した乾燥納豆に殺菌処理を施すという方法(特許文献1参照)や、胞子形成率の低いタイミングで殺菌を施すという方法(特許文献2参照)が報告されている。乾燥納豆を利用した方法では、生の納豆ではないため、食感の違いが出てしまい、また、胞子形成率の低いタイミングでの殺菌は、栄養細胞の殺菌を主とするものであることから、胞子数を減少させるのには不十分であった。
特開2006−6117号公報 特開2006−141209号公報 Ishikawa S.,、Yamane K. and Sekiguchi J., 1998 "Regulation and characterization of a newly deduced cell wall hydrolase gene (cwlJ) which affects germination of Bacillus subtilis spores." J Bacteriol 180:1375-1380
発明の概要
充分な納豆の品質を確保するためには、胞子の形成は重要であるが、形成された胞子は除菌・殺菌が困難であるため、納豆中における胞子の存在は望ましくはない。一方、納豆菌の近縁種である枯草菌などでは、胞子の形成は正常に行われるものの、発芽が完全にはできない発芽変異株が知られている。通常どおり胞子の形成をするものの発芽する能力がないために一度胞子を形成してしまうと発芽して生育することが出来なくなるということは、胞子が存在していないことに等しいといえると思考するに至り、このような特徴を有する発芽変異株を納豆菌で開発して納豆の製造において利用するならば、胞子の問題を解決できる可能性があることに着目し、更に研究を重ねた。
納豆菌の近縁種である枯草菌では発芽関連遺伝子の変異株が報告されていることから、これらの結果は納豆菌にも応用できることが期待された。そこで、納豆菌の発芽関連遺伝子の破壊株を構築し、発芽への影響を調べてみたところ、納豆菌においても発芽の能力が低下することが判明した。さらに、これらの遺伝子を組み合わせた破壊株を構築し、更に研究を進めたところ、枯草菌で既に報告のある、sleB−cwlJの二重破壊株に加えて新たに、sleB−cwlDの二重破壊株も高度に発芽が抑制されることを見出した。この発芽率が低下した変異株は、該株を用いて製造した納豆においても発芽が強く抑制されており、その上、納豆の品質を充分に確保していたことから、ここに本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、発芽率が1%以下である胞子を形成することを特徴とする納豆菌変異株を提供するものである。
このような本発明は、より具体的な態様として、発芽関連遺伝子が欠損されており、該欠損が、該遺伝子の薬剤耐性遺伝子での置換によるものである納豆菌変異株を提供するものである。更に具体的な態様として、発芽関連遺伝子が、sleB遺伝子、cwlD遺伝子、cwlJ遺伝子およびpdaA遺伝子の少なくとも1つからなる納豆菌変異株を提供するものである。
また、本発明は、sleB遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子で置換され、かつ、cwlD遺伝子がテトラサイクリン耐性遺伝子で置換されている、低発芽率胞子形成性納豆菌変異株 Bacillus subtilis(natto)NABD(FERM P-21701)を提供するものである。
更にまた、本発明は、上記の納豆菌変異株を用いて製造される納豆を提供するものである。
発明の具体的な説明
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において親株として利用する納豆菌としては、特に限定されるものではないが、ごく一般的に納豆製造に利用されている市販の納豆菌、自然界などから分離された納豆菌、および、これら納豆菌をもとに育種された納豆菌などを用いることが好ましい。
具体的には市販納豆菌である、宮城野菌(宮城野納豆製作所)や高橋菌(高橋祐蔵研究所)、宮城野納豆菌からの分離株 NAFM5などが挙げられる。
除菌・殺菌が困難な納豆菌胞子の混入の危険性を低下させるためには、通常の納豆中の胞子数は納豆1g当たり10個から10個程度であることから、発芽可能な納豆中の納豆菌胞子数としては、納豆1g当たり10個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは10個以下、最も好ましくは10個以下であるようにするとよい。胞子の発芽率としては1%以下であることが好ましい。
発芽率の測定は、納豆菌培養液や、納豆懸濁液などの胞子を含む懸濁液中の胞子数から求めることが出来る。すなわち、バクテリア計算盤などにより顕微鏡下で観察された胞子数と、80℃で10分間加熱処理した胞子懸濁液中の生菌数を標準寒天培地を用いて測定した耐熱性菌数から求めることが出来る。具体的には、耐熱性菌数を、上記の顕微鏡下で観察した胞子数で除して求められる。
発芽率を測定するための納豆菌培養液としては、胞子が形成される培地であれば何であっても良い。具体的には、大豆煮汁(Brix 2%、pH 7.3)を用いた培地や、Difco Sporulation Medium(以下、DSM培地という)(0.8% Nutrient broth(Difco)、0.1% KCl、0.012% MgSO4・7H2O、1mM Ca(NO3)2、0.01mM MnCl2、1μM FeSO4、pH 7.0)などが好ましく、これらを用いて納豆菌を37℃で3日間程度振盪培養することが好ましい。また、大豆を用いて納豆を製造しても良く、納豆を製造した場合は、50gの納豆に100mlの生理食塩水を加え、4℃で30分程度撹拌した上澄み液を納豆懸濁液として用いることが好ましい。
胞子の発芽率が低下した納豆菌は、上記のような発芽率の評価方法により自然界からスクリーニングすることができる。また、人為的に変異を導入することによっても得ることが出来る。人為的に変異を導入する方法としては、ニトロソグアニジン(NTG)等の化学的な方法や紫外線やX線照射等の物理的な処理、遺伝子工学的手法等を用いることも可能であり、特に限定されるものではない。
遺伝子工学的手法において、ターゲットとなる遺伝子としては、胞子形成を阻害せず、発芽率を低下させるものであれば何であってもよく、単独または複数同時に係わらず、特に限定されるものではない。好ましくはコルテックス層分解に関与する、sleB、cwlJ、cwlD、pdaA等が挙げられる。特に、sleB−cwlJまたはsleB−cwlDの二重破壊変異が有用である。
遺伝子工学的手法においてターゲット遺伝子に変異を導入する方法としては、ポイントミューテーションや欠失、置換、挿入失活など遺伝子産物の活性を低下させうる方法であれば何であってもよく、特に限定されるものではない。
また、遺伝子工学的手法を納豆菌に利用するためには、納豆菌への遺伝子の導入が必要であるが、そのような方法としては、自然形質転換能を利用したコンピテンス法や、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、ファージを利用した形質導入法などがあるが、遺伝子を導入することが可能な方法であれば何であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明者らは、コンピテンス法を利用して、後述する実施例に準じて、市販納豆菌 NAFM5のsleB遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子で置換され、かつ、cwlD遺伝子がテトラサイクリン耐性遺伝子で置換された低発芽率胞子形成性納豆菌変異株 Bacillus subtilis(natto)NABDを創製し、平成20年10月9日に独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した。該菌株はFERM P-21701として寄託されている。
なお、この菌株は、形成胞子の発芽効率が低下していること以外の菌学的性質は、市販の納豆菌のもの〔食総研報(Rep.Natl.Food Res.Inst.)No.50,18〜21(1987)および大豆月報、12月号、21〜29(1985)参照〕と大差はなかった。即ち、この変異株 NABDは、好気性、グラム染色陽性の桿菌であり、菌(栄養細胞)の大きさ(1×2〜3μm)、生育適温(35〜45℃)、各種の糖の発酵性、DNAのGC含量等の性質がBergey´s Manual 8版の枯草菌(Bacillus subtilis)の性質と一致しており、かつ粘質物を生成し、ビオチン要求性であることから、いわゆる納豆菌(Bacillus subtilis(natto))に属しているものである。
本発明による納豆菌変異株は、形成胞子の発芽率が低下しているので、発芽可能な納豆菌胞子数が納豆1g当たり10個以下の納豆を製造することが出来る。すなわち、本発明の発芽可能な納豆菌胞子数の少ない納豆は、上記本発明の納豆菌変異株を用いて製造されることを特徴とするものである。
本発明の発芽可能な納豆菌胞子数の少ない納豆は、本発明の納豆菌変異株を用いて製造されるのであれば、納豆の大豆原材料、納豆の製造条件および製造工程等に関しては、特に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
育種親株としては、宮城野納豆菌より分離されたNAFM5を用いた。また、納豆菌の形質転換は、Anagnostopoulos C.、Spizizen J., 1961 " Requirements for transformation in Bacillus subtilis." J Bacteriol 81:741-746に記載の方法により行った。
また、胞子の発芽率を低下させる可能性のあるターゲット遺伝子として、pdaA、sleB、cwlD、cwlJを選び、各遺伝子の破壊株を構築した。
遺伝子破壊用のプラスミドは、定法に従い調製したNAFM5ゲノムDNAをテンプレートとして用いて、後述の配列表に記載のプライマーを使用してターゲット遺伝子の上流および下流の約1kbをPCRにより増幅し、ターゲット遺伝子の代わりとして、カナマイシン耐性遺伝子、または、テトラサイクリン耐性遺伝子を挟むようにプラスミドベクターpUC118(タカラバイオ社製)上で構築した。PCRはTaqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を使用してマニュアルに従って行った。また、プラスミドの構築には大腸菌JM109(タカラバイオ社製)を使用した。
具体的には、pdaA遺伝子破壊用のプラスミドとしてpDA4を以下の通り構築した。まず、pdaA遺伝子上流部をプライマーpdaAUP1(配列表の配列番号1の記載参照)およびpdaAUP2(配列表の配列番号2の記載参照)を用いて増幅し、増幅産物をpUC118のKpnIサイトおよびBamHIサイトにライゲーションしてpDA1を構築した。次いで、pDG780(Bacillus Genetic Stock Centerより入手)のカナマイシン耐性遺伝子を、制限酵素BamHIとSalIで切り出し、pDA1の同一サイトにライゲーションしてpDA2を構築した。また、pdaA遺伝子下流部をプライマーpdaADW1(配列表の配列番号3の記載参照)およびpdaADW2(配列表の配列番号4の記載参照)を用いて増幅し、増幅産物をpUC118のSalIサイトおよびHindIIIサイトにライゲーションしてpDA3を構築した。次いで、pDA2のpdaA上流部およびカナマイシン耐性遺伝子を制限酵素KpnIおよびSalIで切り出し、pDA3の同一サイトにライゲーションしてpDA4を構築した。
同様の手順で、sleB遺伝子破壊用のプラスミドとしてpSB4を、プライマーsleBUP1(配列表の配列番号5の記載参照)とプライマーsleBUP2(配列表の配列番号6の記載参照)で増幅したPCR産物と、pDG780のカナマイシン耐性遺伝子およびプライマーsleBDW1(配列表の配列番号7の記載参照)とプライマーsleBDW2(配列表の配列番号8の記載参照)で増幅したPCR産物とから構築した。
また、cwlD遺伝子破壊用のプラスミドとしてpCD4を、プライマーcwlDUP1(配列表の配列番号9の記載参照)とプライマーcwlDUP2(配列表の配列番号10の記載参照)で増幅したPCR産物と、pDG1515(Bacillus Genetic Stock Centerより入手)のテトラサイクリン耐性遺伝子およびプライマーcwlDDW1(配列表の配列番号11の記載参照)とプライマーcwlDDW2(配列表の配列番号12の記載参照)で増幅したPCR産物とから構築した。
また、cwlJ遺伝子破壊用のプラスミドとしてpCJ4を、プライマーcwlJUP1(配列表の配列番号13の記載参照)とプライマーcwlJUP2(配列表の配列番号14の記載参照)で増幅したPCR産物と、pDG1515のテトラサイクリン耐性遺伝子およびプライマーcwlJDW1(配列表の配列番号15の記載参照)とプライマーcwlJDW2(配列表の配列番号16の記載参照)で増幅したPCR産物とから構築した。
次いで、各遺伝子の破壊用プラスミドをベクター部分で1箇所のみ切断する制限酵素で切断して直鎖状にした後、NAFM5に形質転換した。形質転換体の選抜は、カナマイシン20μg/mlまたはテトラサイクリン2μg/mlを添加したLB寒天培地で行った。また、ターゲット遺伝子がマーカー遺伝子で置換されていることは、PCR法によって確認した。
得られた形質転換体の胞子発芽率を確認するため、各破壊株を5mlのDSM培地に接種し、37℃で3日間振盪培養した。培養液中の胞子数をバクテリア計算盤を用いて顕微鏡下で測定した後、80℃で10分間加熱処理を行った。次いで、この加熱処理培養液を適宜希釈した後、標準寒天培地を用いて37℃、48hr培養して生育胞子数を測定した。
それぞれの胞子数および発芽率を表1に示した。
Figure 2010115139
その結果、pdaA遺伝子、sleB遺伝子、cwlD遺伝子およびcwlJ遺伝子は、いずれの破壊においてもバクテリア計算盤で測定した胞子数は親株と変わらず、胞子形成に問題ないことが確認された。しかし、標準寒天培地により計測した耐熱性菌数(コロニー数)は親株よりも少なく、よって、発芽率が低下していることが確認された。その中でもcwlD遺伝子の破壊の効果が高かく、発芽頻度が3.7x10-4にも低下していた。
実施例2
pdaA、sleB、cwlDの組み合わせによる二重破壊、およびsleB−cwlJの二重破壊が、胞子発芽率に与える影響を調べた。
まず、実施例1と同じ手順でpdaA遺伝子破壊用のプラスミドpDA4−Tcを構築した。pDA4−Tc はpDA4のカナマイシン遺伝子の代わりに、pDG1515のテトラサイクリン耐性遺伝子が組み込まれたプラスミドである。
pdaA−sleB二重破壊株は、実施例1で作成したsleB破壊株にpDA4−Tcを形質転換して構築した。また、pdaA−cwlD二重破壊株は、実施例1で作成したpdaA破壊株にpCD4を形質転換して構築した。sleB−cwlD二重破壊株は、実施例1で作成したsleB破壊株にpCD4を形質転換して構築した。sleB−cwlJ二重破壊株は、実施例1で作成したsleB破壊株にpCJ4を形質転換して構築した。
得られた形質転換体の胞子発芽率の評価は実施例1と同様に行い、結果を表2に示した。
Figure 2010115139
その結果、どの二重破壊株でもバクテリア計算盤で測定した胞子数は親株と変わらず、胞子形成に問題ないことが確認された。しかし、標準寒天培地により計測した耐熱性菌数(コロニー数)は親株よりも少なく、よって、発芽率が低下していることが確認された。特に、sleB−cwlJの二重破壊株は標準寒天培地での生育がほとんど認められなかった。また、sleB−cwlDの二重破壊株は更に生育数が少なくなっており、発芽頻度も3.7x10−8にも低下していた。
実施例3
pdaA、sleB、cwlDの単一破壊株およびsleB−cwlD、sleB−cwlJの二重破壊株を用いて実際に納豆を試作し、これら破壊株の納豆での効果を確認した。破壊株は胞子を形成すると発芽しなくなるので、納豆の種菌としては、−80℃で凍結保存しておいた破壊株をLB液体培地で一晩培養したものを用いた。得られた培養液を滅菌水で1000倍に希釈し、種菌液とした。大豆は一晩常温にて水につけておいた丸大豆を、ざるに入れ、121℃で50分間オートクレーブして煮豆とした。この煮豆がさめてから種菌液を煮豆50g当たり1mlの割合で摂取し、40℃で17時間発酵させた。その後4℃で3日間保存して熟成を行い納豆とした。また、コントロールとして親株であるNAFM5についても同様の手順で納豆を試作した。
試作した納豆について、菌膜の被り、糸引き、豆の色、香りの項目を官能評価にてコントロールの親株と比較したところ、どの破壊株も親株と同程度の品質を保持していることがわかった。次いで、これら各納豆50gに生理食塩水100mlを加え、4℃で30分間攪拌して納豆菌懸濁液を調整した。この納豆菌懸濁液中の胞子数を実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2010115139
その結果、バクテリア計算盤で測定した破壊株の納豆の胞子数は、親株のものと変わらず、納豆において胞子形成に問題はなかった。しかし、標準寒天培地により計測した耐熱性菌数(コロニー数)は親株の納豆に比べて減少しており、納豆において発芽率が低下していることが確認された。その中でもsleB−cwlDの二重破壊株がもっとも効果的に発芽を抑制したので、この変異株をNABD株と命名し、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した。
また、NABD株および親株NAFM5で試作した納豆中のグルタミン酸含量、およびアンモニア含量を測定した。グルタミン酸およびアンモニアの測定は、これら納豆の胞子懸濁液をサンプル液とし、F−キットL−グルタミン酸(ロッシュ社製)、および、F−キット アンモニア(ロッシュ社製)を用いて、マニュアルに従い測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2010115139
納豆の旨み成分は、原料の大豆タンパクが分解されて産生されるアミノ酸が主たるものであるが、中でもグルタミン酸がその代表的なものである。NAFM5およびNABDの両試作納豆ともグルタミン酸含量は同程度であったことから、味の面においてNABDの試作品はNAFM5のものと同程度であると云える。また、アンモニアは納豆の発酵後半にから増加することから、発酵の程度、および、においの指標として利用することができる。NABDの試作品はアンモニアの含量もほぼNAFM5のものと同程度であったことから、発酵の程度、および、においも親株のNAFM5の試作品と同程度であることが確認された。
[発明の効果]
本発明の納豆菌変異株によれば、通常どおりの胞子形成が行われることから、納豆の品質に影響を与えることなく、納豆を製造することが可能である。
また、本発明による納豆菌変異株を用いて製造した納豆中の胞子は発芽することが出来ないので、生育可能な胞子の数が少ない納豆を製造することが出来る。従って、除菌・殺菌が困難な納豆菌胞子の混入の危険性が低下することから、除菌・殺菌が通常の納豆よりも容易であり、納豆を原材料とする加工食品への利用拡大が一段と期待出来る。
[配列表]
Figure 2010115139

Claims (6)

  1. 発芽率が1%以下である胞子を形成することを特徴とする納豆菌変異株。
  2. 発芽関連遺伝子が欠損されている、請求項1に記載の納豆菌変異株。
  3. 発芽関連遺伝子の欠損が、該遺伝子の薬剤耐性遺伝子での置換によるものである、請求項2に記載の納豆菌変異株。
  4. 発芽関連遺伝子が、sleB遺伝子、cwlD遺伝子、cwlJ遺伝子およびpdaA遺伝子の少なくとも1つからなる、請求項2又は3に記載の納豆菌変異株。
  5. sleB遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子で置換され、かつ、cwlD遺伝子がテトラサイクリン耐性遺伝子で置換されている、低発芽率胞子形成性納豆菌変異株 Bacillus subtilis(natto)NABD(FERM P-21701)。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の納豆菌変異株を用いて製造されたことを特徴とする納豆。
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