JP2014064477A - 酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法 - Google Patents

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一信 松下
Hisaharu Yakushi
寿治 薬師
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Saichana Natsaran
ナツラン サイチャナ
Mitsuteru Nishikura
慎顕 西倉
Theergool Gunjana
ティーラグール ガンジャナ
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Abstract

【課題】高温下での生育能力や酢酸発酵能力を備えた、酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法を提供すること。
【解決手段】酢酸菌の酢酸耐性能、及び耐熱性かつ酢酸過酸化に関与する遺伝子を取得し、該遺伝子がコードするタンパク質の機能を低下又は欠損させるよう改変することによって酢酸生産能が向上した酢酸菌を育種する。この酢酸生産能が向上した酢酸菌をエタノール含有培地で培養することにより、高酢酸濃度の食酢を効率良く製造することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法、より詳しくは、酢酸菌において発現する特定のタンパク質の機能を低下又は欠損させることにより、高温下での生育能力や酢酸生産能が低下せずに酢酸発酵を行うことができる能力(酢酸発酵能力)を発揮することのできる酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法酢酸菌の育種方法に関する。
酢酸菌は食酢製造に広く利用されている微生物であり、特にアセトバクター属(Acetobacter)やグルコンアセトバクター属(Gluconacetobactor)に属する酢酸菌が工業的な酢酸発酵に利用されている。例えば、アセトバクター属酢酸菌の培養においては、発酵温度が30℃より高くなると急激に生育能力及び酢酸発酵能力が低下する。このため、通常の発酵は25℃〜30℃で行われる。しかし、夏期には気温が30℃以上になること、また、発酵によって熱が発生するため、酢酸発酵が進むにつれて発酵層が40〜45℃以上となってしまうことがある。したがって発酵槽を25℃〜30℃に保つための冷却設備が必要となるが、その費用負担は大きい。
また、酢酸発酵では、培地中のエタノールが酢酸菌によって酸化されて酢酸に変換され、その結果、酢酸が培地中に蓄積することになる。しかし、酢酸は酢酸菌にとっても阻害的であり、酢酸の蓄積量が増大して培地中の酢酸濃度が高くなるにつれて、酢酸菌の生育能力や酢酸発酵能力は次第に低下する。さらに、酢酸菌の培養過程において、ある一定の時間が過ぎると、酢酸菌は自らが作り出した酢酸を資化・利用して、再び生育を開始する。この現象を酢酸過酸化というが、この現象もまた、酢酸菌の酢酸生産能に大きく影響を及ぼす。
したがって、酢酸の安定生産を達成するために、高い酢酸生産能を有する酢酸菌、すなわち、高温においても高い生育能力をもち、酢酸過酸化が起こる時期がより遅い酢酸生産能が向上した酢酸菌を開発することが求められている。
高温で育成可能な酢酸菌を開発する試みとして、例えばアセトバクター属の酢酸菌を変異させて高温適応能力を付与した変異株(例えば、非特許文献1参照)が知られている。しかし、この変異株において、酢酸生産能の向上は得られていない。
また、酢酸生産能を向上するために高い耐酸性を持つ酢酸菌を開発する試みとして、例えばアセトバクター属の酢酸菌を変異させて酢酸感受性にした株を元に回復させることのできる酢酸菌由来のクラスターを形成する3つの遺伝子(aarA、aarB、aarC)を増幅した形質転換株(例えば、特許文献1参照)、酢酸菌からクローニングされた膜結合型アルデヒド脱水素酵素(ALDH)をコードする遺伝子を酢酸菌に導入した例(例えば、特許文献2参照)、酢酸菌由来のアコニターゼ遺伝子を過剰発現させた例(例えば、特許文献3参照)、酢酸菌のクオラムセンシングシステムに関与する遺伝子を修飾し該遺伝子がコードするタンパク質の機能を低下ないし欠損させた例(例えば、特許文献4参照)など多くが開示されている。しかし、いずれも十分な酢酸生産能を付与することには成功していないのが現状であり、また、高温下での酢酸菌育成能については一切考慮されていない。
高い酢酸発酵能力をもつ酢酸菌として、アセトバクター属の酢酸菌アセトバクター・パスツリアヌス(A.pasteurianus)SKU1108(例えば、非特許文献2参照)、SKU1108株を変異させたアセトバクター・パスツリアヌス TH−3(例えば、特許文献5参照)が、本発明者らによって開示されている。
特開平3−219878号公報 特開平2−2364号公報 特開2003−289867号公報 特開2008−206413号公報 特開2010−110298号公報
Nucleic Acids Res.、37巻、5768〜5783頁、2009年 Biosci. Biotechnol. Biochem.、61巻、138〜145頁、1997年
本発明の課題は、高温下での生育能力や酢酸発酵能力を備えた、酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法を提供することにある。
本発明者らは、耐熱性酢酸菌であるアセトバクター・パスツリアヌスSKU1108株(寄託番号NBRC101655)を酢酸発酵条件下で高温適応育種を行い、変異株アセトバクター・パスツリアヌスTH−3株(寄託番号P−664)を既に得ていたが、適応育種方法を変えることにより新たに変異株アセトバクター・パスツリアヌスTI株を得ることに成功した。TH−3株とTI株はともにSKU1108よりも高い酢酸生産能を有していたが、それぞれ異なった特徴を有していることを見出した。
そこで、TH−3株とTI株の遺伝的背景を明らかにするために、本発明者らは、SKU1108株、TH−3株、TI株のドラフトゲノム解析を行い、得られたSKU1108株のドラフトゲノム配列に対して、TH−3株あるいはTI株のゲノム情報を個別にマッピングした。その結果、アミノ酸レベルで、TH−3株とTI株とで共通して変異している箇所を初めて同定した。次いで、TH−3株とT−1株とで共通して変異している遺伝子の内、2カ所の遺伝子(marR遺伝子及びpermease遺伝子)をそれぞれ破壊し、得られた遺伝子破壊株2種(marR遺伝子破壊株及びpermease遺伝子破壊株)についてそれぞれ機能解析を行った。その結果、親株であるSKU1108株と比較して、marR遺伝子破壊株では酢酸耐性能力が付与されており、permease遺伝子破壊株では高温生育能力及び酢酸過酸化を遅らせる能力(酢酸過酸化遅延能力)が付与されていることがわかった。このように、marR遺伝子破壊株とpermease遺伝子破壊株のいずれもが、SKU1108株に対し酢酸生産能が向上していることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなる遺伝子がコードするタンパク質、及び/又は、配列番号2に示される塩基配列からなる遺伝子がコードするタンパク質の機能を低下又は欠損させることを特徴とする酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法。
(2)酢酸菌が、アセトバクター属に属する酢酸菌であることを特徴とする上記(1)記載の酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法。
本発明によると、酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法を提供することができる。より具体的には、酢酸耐性能力や、高温生育能力かつ酢酸過酸化遅延能力が付与された酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法を提供することができる。この育種された酢酸生産能が向上した酢酸菌を用いると、高濃度の酢酸を含有する食酢をより効率的に製造することができる。
SKU1108株を39℃で繰り返し培養してTI株を得る際の、SKU118株の生育(上段)及び酢酸生成(下段)の結果を示すである。 37℃条件下における、SKU1108株、TH−3株、TI株、及びmarR遺伝子破壊(ΔmarR)株の、生育(上段左)、酢酸生成(上段右)、及び酢酸耐性能(下段)をそれぞれ比較した結果を示す図である。 SKU1108株、TH−3株及びTI株のゲノムの比較結果を示す図である。 SKU1108株(Wild)、TH−3株、及びpermease遺伝子破壊株(Δaa permease)の、37℃及び39℃における生育と酢酸生成(上段)、並びに耐熱性(下段)をそれぞれ比較した結果を示す図である。
本発明において育種の対象となる酢酸菌(親酢酸菌株)としては特に制限されず、例えば、アルコール酸化能を有するアセトバクター属やグルコンアセトバクター属などの酢酸菌を挙げることができる。アセトバクター属に属する酢酸菌としては、例えば、アセトバクター・パスツリアヌス、アセトバクター・アセチ(A.aceti)、アセトバクター・アルトアセチゲネス(A.altoacetigenes)等を挙げることができ、より具体的には、アセトバクター・パスツリアヌスSKU118株、アセトバクター・アセチNo.1023株、アセトバクター・アセチIFO3283株、アセトバクター・アルトアセチゲネスMH−24株等を挙げることができる。また、グルコンアセトバクター属に属する酢酸菌としては、例えば、グルコンアセトバクター・インターメディウス(G.intermedius)、グルコンアセトバクター・キシリヌス(G.xylinus)、グルコンアセトバクター・ヨーロパエウス(G.europaeus)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(G.diazotrophicus)、グルコンアセトバクター・エンタニイ(G.entanii)等を挙げることができ、より具体的には、グルコンアセトバクター・キシリヌスIFO3288株、グルコンアセトバクター・ヨーロパエウスDSM6160株、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカスATCC49037株、グルコンアセトバクター・インターメディウスNCI1051(FERM BP−10767)株等を挙げることができる。
本発明において「酢酸生産能が向上した酢酸菌」とは、酢酸耐性能力、高温生育能力、酢酸過酸化遅延能力、酢酸発酵能力のうちの少なくとも1つの能力が親酢酸菌株より優れ、かつ、同じ培養条件で培養した場合、酢酸の生産量が親酢酸菌株より優れた酢酸菌をいう。
本発明の「酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法」には、酢酸生産能が向上した酢酸菌の生産方法も含まれる。
本発明における、配列番号1に示される塩基配列からなる遺伝子がコードするタンパク質(marR)、配列番号2に示される塩基配列からなる遺伝子がコードするタンパク質(permease)、及び配列番号3に示される塩基配列からなる遺伝子がコードするタンパク質の機能を低下又は欠損させる方法としては、当該タンパク質をコードする遺伝子を標的として修飾し、タンパク質の機能を低下又は欠損させる方法の他、物理的処理や化学的変異剤を用いて当該タンパク質をコードする遺伝子部分に突然変異を誘導し、タンパク質の機能を低下又は欠損させる方法を挙げることができる。
上記タンパク質をコードする遺伝子を標的として修飾し、タンパク質の機能を低下又は欠損させる方法としては、タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列情報に基づき、遺伝子の部分配列を欠失させたDNAや、遺伝子の内部に薬剤耐性遺伝子等を挿入したDNAを作製し、かかるDNAで親酢酸菌株を形質転換し、染色体上の正常な遺伝子との間で相同組換えを起こさせることにより、染色体上の前記遺伝子を破壊する方法を挙げることができる。酢酸菌の形質転換は、塩化カルシウム法(例えば、Agric. Biol. Chem.、49巻、2091頁、1985年参照)やエレクトロポレーション法(Biosci. Biotechnol. Biochem.、58巻、974頁、1994年参照)等によって行うことができる。
また、上記物理的処理や化学的変異剤を用いて当該タンパク質をコードする遺伝子部分に突然変異を誘導し、タンパク質の機能を低下又は欠損させる方法としては、親酢酸菌株に紫外線照射処理により、あるいは、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、亜硝酸等による変異剤処理により、突然変異を誘発させ、前記遺伝子に変異をおこした酢酸菌を分離する方法を挙げることができる。かかる前記遺伝子に変異をおこした酢酸菌は、前記タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列情報に基づき、プライマー対を作製してPCRを行うことにより分離することができる。
1つの菌株において、前記タンパク質のうち2つ以上のタンパク質の機能を低下又は欠損させるには、まず、上記の突然変異や相同組換え等を利用して、1つのタンパク質の機能を低下又は欠損させた株を作製した後、この株に上記の突然変異や相同組換えなどを利用して、2つめのタンパク質の機能を低下又は欠損させた株を作製する方法を用いることができる。なお、相同組換えを2回行い選択する場合には、異なる2つの薬剤耐性遺伝子を利用すると、形質転換体を効率よく選択することができる。
本発明の育種方法により得られた酢酸生産能が向上した酢酸菌、例えばmarR遺伝子破壊株やpermease遺伝子破壊株を用いて食酢を製造するには、アルコールを含有する培地で酢酸生産能が向上した酢酸菌を培養し、培地中に酢酸を生成蓄積せしめること以外は、従来公知の酢酸の製造方法を採用することができる。また、アルコールを含有する培地としては酢酸発酵に使用する培地であればよく、エタノールなどのアルコール成分の他、炭素源、窒素源、無機物等を含有し、必要があれば使用菌株が生育に要求する栄養源を適当量含有するものを用いることができる。培地は、合成培地でも天然培地でもよい。炭素源としては、グルコースやシュークロースをはじめとする各種炭水化物、各種有機酸を挙げることができる。窒素源としては、ペプトン、発酵菌体分解物等の天然窒素源を用いることができる。また、培養条件としては、静置培養法、振盪培養法、通気攪拌培養法等の好気的条件下、25〜37℃、通常30℃の培養温度、pH2.5〜7、好ましくはpH4.5〜6.5の培地pH、1〜4日間の培養期間等を挙げることができる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが,本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[酢酸菌変異株Acetobacter pasteurianus TIの作製]
Acetobacter pasteurianus SKU1108株を、5mLのポテト培地を入れた試験管で37℃、200rpmで濁度が150Klett Unitになるまで前培養した。この前培養液5mLを100mLのYPGD培地が入った500mLのフラスコに無菌的に接種し、4%エタノールを加えて39℃、200rpmで培養した。
菌の生育は、kltt unitを測定することにより確認した。この測定には、kllett−summerson光電比色計(富士工業製)を用いた。酢酸生成能は、酸性度を測定することにより確認した。培地の酸性度は、発酵液に対してフェノールフタレインを指示薬として用いて、0.8N NaOHでアルカリ滴定を行い、得られた滴定量を0.12倍にして酢酸濃度換算した値を酸度とし、%で表わした。
菌の生育及び酢酸発酵が認められ、目的のフェーズ(Klett Unitにして60〜120程度、酸性度が1〜1.8%)に達したら、その培養液の一部を種菌として5mL取り、新しい培地に接種して同じ条件で培養を行った。この過程を11回繰り返すことにより、延べ1150時間培養を行った。
図1は、39℃で繰り返し培養を行った際(最初の9回の培養)の生育能(図1上段)及び酢酸生成能力(図1下段)を調べたものである。(図1上段)は横軸が培養時間で、縦軸が濁度Klett Unit、(図1下段)は横軸が培養時間、縦軸が酸性度(%)を示す。(図1上段)の左から順に繰り返し培養の1回目、2回目と順に9回培養した場合の生育を示し、それぞれに対応する酸性度を示すデータが(図1下段)となる。こうして、39℃の条件下での培養でも生育及び酢酸発酵を行うことができるアセトバクター・パスツリアヌスTI株を得ることができた。
[T−1株等の酢酸発酵試験]
実施例1で得られたTI株、親株であるSKU1108、TI株と同じくSKU1108株を親株とするTH−3株、及びmarR遺伝子破壊(ΔmarR)株の4種の酢酸菌の酢酸発酵能を比較した。具体的には、5Lのミニジャー(丸菱バイオエンジ製、MDIACS−S5)を用いて、エタノール4%、グルコース0.5%、酵母エキス0.5%、ポリペプトン0.5%、カナマイシン50μg/mL(ΔmarRの場合)、消泡剤0.01%を含む2Lの培地にて、37℃、500rpm、0.5vvmの通気攪拌培養を行った。結果を図2(上段)にまとめた。
図2(上段左)は、SKU1108株、TH−3株、TI株、及びΔmarR株の生育能を比較した結果である。SKU1108株は、2日以内に培地に添加されているエタノールを使い切るため生育が止まるが、5日目以降酢酸過酸化が起こり再び生育が起こっていることが示された。これに対し、TH−3株には酢酸過酸化が見られないことが示された。また、TI株やΔmarR株はSKU1108株に比べて酢酸過酸化の遅延に優れているが、TH−3株には及ばないことが示された。
図2(上段右)は、SKU1108株、TH−3株、TI株、及びΔmarR株の37℃での酢酸生成能を比較した結果である。SKU1108株は、5日目以降酢酸過酸化が起こるため酢酸生成量が減少していることが示された。これに対し、TH−3株には酢酸過酸化が見られないため、酢酸生成能が落ちないことが示された。また、TI株やΔmarR株はSKU1108株よりは酢酸生成能に優れているが、TH−3株には及ばないことが示された。
SKU1108株、TH−3株、及びΔmarR株のそれぞれ休止菌体を、1%酢酸+10mM乳酸、2%酢酸+10mM乳酸、3%酢酸+10mM乳酸、1%酢酸を含む150mM KClの各溶液で30分間処理した後、細胞を遠心で集め、1mLの150mM KClに懸濁し、さらに10−1、10−2、10−3、10−4倍に希釈して、原液とこれら4種の希釈液をそれぞれ70μLずつ、YPGD寒天培地にスポットし、37℃で培養することにより、残存菌数を比較した。また、酢酸及び乳酸を含まない溶液で処理したものを対照とした。結果を図2(下段)にまとめた。
図2(下段)は、SKU1108株、TH−3株、及びΔmarR株の酢酸耐性能を比較した結果である。ΔmarR株は、SKU1108株に比べて酢酸耐性能力が付与されていたが、TH−3株には及ばないことが示された。
[TH−3株およびTI株における遺伝子変異箇所の取得]
SKU1108株とTH−3株及びTI株において、変異した遺伝子を特定するために、ドラフトゲノム解析を行った。具体的には、DNeasy Blood & Tissue Kit(キアゲン製)を用いて精製した染色体DNAを、北海道システム・サイエンス社がIllumina sequencer(GAII platform)を用いてドラフト・シーケンス解析を行った。得られたSKU1108株のドラフトゲノム配列に対して、個別にTH−3株あるいはTI株のゲノム情報をマッピングすることで変異部位を解析した。
図3は、SKU1108株とTH−3株及びTI株における、ゲノムの比較を示したものである。SKU1108株と比較して、アミノ酸レベルの変異箇所を、TH−3株で11カ所、TI株で6カ所それぞれ同定した。また、SKU1108株と比較して、TH−3株とTI株で共通して変異している箇所を3カ所同定した。TH−3株とTI株で共通して変異していた3カ所の配列をそれぞれ、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3で示す。
[marR破壊株の作製]
実施例3で取得した配列番号1の塩基配列に基づいて、プライマー1(配列表の配列番号4参照)及びプライマー2(配列表の配列番号5参照)を合成し、SKU1108株の染色体DNAを鋳型にして、PCR法により配列番号1の塩基配列がコードする遺伝子を増幅した。該増幅産物を制限酵素BglII(東洋紡製)で切断した後、Blunting High (東洋紡製)を用いて平滑末端化を行い、pTKm由来のKmcassetteを含むEcoRV−fragmentへ挿入し(Microbiology、149巻、431〜444頁、2003年)、DNA断片(DNA断片1)を調製した。
染色体DNAはDNeasy Blood & Tissue Kit(キアゲン製)を用いて抽出した。また、PCR反応はmGeneAmpPCR System 2400(パーキンエルマー製)を用い、変性95℃で30秒を1サイクル、その後、95℃で30秒、55℃で1分、68℃で1分を25サイクル行い、すべてのサイクルが終了すると最後は37℃に保つ方法で行なった。
次にDNA断片1を、pGEM−T easyベクター(プロメガ製)に導入した。このようにして調製したDNAを、酢酸菌SKU1108株にエレクトロポレーション法(Biosci. Biotechnol. Biochem.、58巻、974頁、1994年参照)により導入することによって形質転換した。
形質転換酢酸菌株は、50μg/mLのカナマイシンを添加したYPGD寒天培地で選択した(Bisci. Biotechnol. Biochem. 69巻、1120〜1129頁、2005年参照)。
実施例3で取得した配列番号1の塩基配列情報に基づいて、プライマー3(配列番号6参照)及びプライマー4(配列番号7参照)を合成した。選択培地上で生育したカナマイシン耐性の形質転換株の染色体DNAを、同上のキットを用いて抽出した。得られた染色体DNAを鋳型とし、プライマー3及びプライマー4を用いてPCR法を行い、選択培地上で生育したカナマイシン耐性の形質転換株のmarR遺伝子が破壊されていることを確認した。
marR遺伝子破壊株の酢酸発酵試験等の結果は、上記図2に示されている。
[permease遺伝子破壊株の作製]
実施例3で取得した配列番号2の塩基配列に基づいて、プライマー5(配列番号8参照)及びプライマー6(配列番号9参照)を合成し、SKU1108株の染色体DNAを鋳型にして、ヘラクレスDNAポリメラーゼ(ストラタジーン製)を用いたPCR法により、配列番号2の塩基配列がコードする遺伝子を増幅した。該増幅産物を制限酵素SphI(東洋紡製)及び制限酵素SmaI(東洋紡製)で切断し、DNA断片(DNA断片2)を調製した。
染色体DNAは同上のキットを用いて抽出した。また、PCR反応は同上の機器を用い、変性94℃で60秒を1サイクル、その後、94℃で30秒、55℃で30秒、68℃で3分を25サイクル行い、すべてのサイクルが終了すると最後は4℃に保つ方法で行なった。
実施例3で取得した配列番号2の塩基配列に基づいて、プライマー5とプライマー7(配列番号10参照)を合成し、SKU1108株の染色体DNAを鋳型にして、ヘラクレスDNAポリメラーゼ(ストラタジーン製)を用いたPCR法により、配列番号2の塩基配列がコードする遺伝子の5’領域のみを増幅した。該増幅産物を制限酵素SphI(東洋紡製)及び制限酵素XbaI(東洋紡製)で切断し、DNA断片(DNA断片3)を調製した。
染色体DNAは同上のキットを用いて抽出した。また、PCR反応は同上の機器を用い、同上の条件で行なった。
DNA断片2及び3を、pK19mobGII(Appl. Environ. Microbiol. 65巻、278〜282貢、1999年参照)に導入した。調製したDNAと大腸菌HB101/pKR2013株を用いて、三系交雑法(Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 76巻、1648〜52貢、1979年参照)を行い、酢酸菌SKU1108株を形質転換した。
形質転換酢酸菌株はまず、50μg/mLのカナマイシンおよび40μg/mLの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(シクロヘキシルアンモニウム塩)を添加したYPGD寒天培地でβ−グルクロニダーゼ活性陽性かつカナマイシン耐性コロニーを選択した。次に、このコロニーを再び培養し、グルクロニドを含みカナマイシンを含まない寒天培地で、β−グルクロニダーゼ活性陰性のコロニーを選び、その中からカナマイシン感受性であったものを最終的に選択した。
このようにして選択されたβ−グルクロニダーゼ陰性かつカナマイシン感受性の形質転換株の染色体DNAを、同上のキットを用いて抽出した。得られた染色体DNAを鋳型とし、プライマー5及びプライマー6を用いてPCR法を行い、選択培地上で生育した形質転換株のpermease遺伝子が破壊されていることを確認した。
[permease遺伝子破壊株の酢酸発酵試験]
実施例6で得られたpermease遺伝子が破壊されたpermease遺伝子破壊(Δaa permease)株について、親株であるSKU1108やTH−3株と酢酸発酵能を比較した。具体的には、5Lのミニジャー(丸菱バイオエンジ製)を用いて、エタノール4%、グルコース0.5%、酵母エキス0.5%、ポリペプトン0.5%を含む2Lの培地にて、37℃もしくは39℃、500rpm、0.5vvmの通気攪拌培養を行った。結果を図4(上段)にまとめた。
図4(上段)は、SKU118株、TH−3株、及びΔaa permease株の酢酸生成能を比較した結果である。図4(上段)は、横軸が培養時間で、縦軸が濁度Klett Unitあるいは酸性度(%)を示している。37℃条件下での酢酸生育能を比較すると、Δaa permease株はSKU1108株やTH−3株、特にSKU1108株に比べ酢酸過酸化が遅れて起こっている。これより、37℃条件下でΔaa permease株は、SKU1108株に比べ優れた酢酸生産能を有していることを示した。また、酢酸生成量を比較すると、Δaa permease株はSKU1108株に比べ酢酸生成量が多いことが示された。
これに対し、39℃条件下での酢酸生育能および酢酸生産量を比較すると、SKU1108株が全く生育せず酢酸生産も行うことができないのに対し、ΔATP1698株は、TH−3株にやや劣るものの、優れた生育能や酢酸生産能を有していることが示された。
SKU1108株、TH−3株、及びΔaa permease株をそれぞれ、5mLのポテト培地でKlett Unit150まで培養し、滅菌水で10−1、10−2、10−3、10−4に希釈し、原液とこれら4種の希釈駅をそれぞれ70μLずつ、YPGDE寒天培地にスポットし、37℃、39℃、40℃のそれぞれの条件下で培養した。結果を図4(下段)にまとめた。
図4(下段)は、SKU1108株、TH−3株、及びΔaa permease株の耐熱性能を比較した結果である。SKU1108株は、37℃では生育できるが、40℃では生育できないことが示された。これに対してΔaa permease株は、40℃でも生育しており、TH−3株同様、SKU1108株よりも高い耐熱性を有していることが示された。
本発明によると、酢酸生産能が向上した酢酸菌が提供されるので、高濃度の酢酸を含有する食酢のより効率的な製造を行うことができ、食酢産業において有用である。

Claims (2)

  1. 配列番号1に示される塩基配列からなる遺伝子がコードするタンパク質、及び/又は、配列番号2に示される塩基配列からなる遺伝子がコードするタンパク質の機能を低下又は欠損させることを特徴とする酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法。
  2. 酢酸菌が、アセトバクター属に属する酢酸菌であることを特徴とする請求項1記載の酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法。
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